説明

レベルチェッカ

【課題】受信アンテナの向きを調整する作業の手間を軽減可能なレベルチェッカを提供する。
【解決手段】ユーザに選択させたテレビ放送波の送信元となる人工衛星の位置(設備位置)を、ROMに記憶された設置位置テーブルから求めると共に、レベルチェッカ自身の位置である装置位置を取得する(S110〜S130)。更に、レベルチェッカ10に設定された基準軸方向の磁北に対する傾きを取得すると共に、先に取得した装置位置に基づいて磁気偏角を求め、その磁気偏角に従って、基準軸方向の傾きを、磁北に対する傾きから真北に対する傾きに修正することで装置方位を求める(S140〜S150)。そして、装置位置から設備位置に向かう方向(選択されたテレビ放送波の到来方向)の方位角及び仰角を算出し、その方位角を示す矢印及び仰角を示す数字が示された電波到来方向指示画像を作成し、表示画面に表示する(S160〜S180)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ放送波の受信レベルを測定するレベルチェッカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工衛星からの送信電波(テレビ放送波)を受信する受信アンテナの向き(方位角,仰角)を調整する際にレベルチェッカが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のレベルチェッカは、通常、受信アンテナからの受信信号を伝送する伝送線に接続して使用され、対象となる人工衛星が提供するいずれかのチャンネル(トランスポンダ)を指定すると、その指定したチャンネルについて受信信号の信号レベルを測定し、その測定結果を数値やバーグラフ等を用いて表示するように構成されている。
【0004】
そして、受信アンテナの向きを調整する際には、最初は人工衛星が存在するだいたいの位置に受信アンテナを向け、アンテナを左右上下に振って、信号強度が強くなる位置を探している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−295363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法では、受信アンテナを最初に向けた方向が、実際の方向から大きく外れている場合、他の人工衛星からの送信電波を捉えてしまう可能性が高くなるだけでなく、広い範囲を手動で探索する必要があり、調整に手間を要するという問題があった。
【0007】
つまり、受信アンテナを最初にどの方向に向けるかによって、受信アンテナの向きを調整する作業の手間が大幅に増大してしまう可能性があるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、受信アンテナの向きを調整する作業の手間を軽減可能なレベルチェッカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、各種表示を行うための表示画面と、チェック対象となるテレビ放送波を指定する指定手段と、前記指定手段にて指定されたテレビ放送波の信号レベルを測定する測定手段と、前記測定手段での測定結果を前記表示画面に表示させる結果表示手段とを備えたレベルチェッカにおいて、テレビ放送波と該テレビ放送波の送信元となる設備の位置とを対応付けて記憶させた設備位置記憶手段と、当該レベルチェッカの位置である装置位置を検出する装置位置検出手段と、当該レベルチェッカに設定された基準軸の向きである装置方位を検出する装置方位検出手段と、前記指定手段にて指定されたテレビ放送波に対応して前記設備位置記憶手段に記憶されている位置を対象設備位置として、前記装置位置から前記対象設備位置への向きである設備方位を求める設備方位検出手段と、前記装置方位と前記設備方位とに基づき、前記表示画面が水平且つ上向きに保持されているものとして、前記設備方位を指し示す画像を前記表示画面に表示させる方位表示手段とを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレベルチェッカにおいて、前記装置位置と前記対象設備位置とに基づき、前記装置位置から前記対象設備位置を見た仰角を表す数値を前記表示画面に表示させる仰角表示手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレベルチェッカにおいて、前記設備は、衛星放送用の人工衛星であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレベルチェッカにおいて、前記設備は、地上波デジタル放送用の放送局及び中継局であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレベルチェッカにおいて、前記装置位置検出手段は、GPSを用いることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレベルチェッカにおいて、前記装置方位検出手段は、磁気センサを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のレベルチェッカによれば、受信アンテナの向きを調整する際に、表示画面に表示された画像が指し示す方向に受信アンテナを向けることによって、概ね正しい方向に受信アンテナを向けることができ、また、受信アンテナの向きを振る時にも、その方向を中心にして振ればよいため、調整作業の手間を大幅に軽減することができる。
【0013】
請求項2に記載のレベルチェッカによれば、水平面内での方位角だけでなく、仰角も表示されるため、調整作業の手間を更に軽減することができる。
特に、人工衛星からの送信波を受信するアンテナでは、アンテナの仰角を示すメモリが記されているものも多いため、そのようなアンテナであれば、レベルチェッカ以外の機器を使用することなく、表示画面に示された仰角の数値から概ね正しい仰角にアンテナを設定することができる。
【0014】
請求項3に記載のレベルチェッカによれば、衛星放送用の受信アンテナの設置作業に好適に用いることができる。
請求項4に記載のレベルチェッカによれば、地上波デジタル放送用の受信アンテナの設置作業に好適に用いることができる。
【0015】
請求項5に記載のレベルチェッカによれば、装置位置の緯度,経度,高度を取得することができるため、設備の設置位置も緯度,経度,高度で記憶しておくことにより、設備方位や仰角を容易に算出することができる。
【0016】
請求項6に記載のレベルチェッカによれば、磁北または磁北を磁気偏角で補正した方位(即ち、真北)を基準として、装置方位ひいては設備方位を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】レベルチェッカの全体構成を示すブロック図。
【図2】設備位置テーブルの構成を示す説明図。
【図3】制御部が実行する電波到来方向表示処理の内容を示すフローチャート。
【図4】電波到来方向表示処理による画面の表示例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<概要>
図1は、本発明が適用されたレベルチェッカ10の全体構成を示すブロック図である。
【0019】
なお、レベルチェッカ10は、テレビ放送波(BSデジタル放送/CS放送等)を受信し、指定されたテレビ放送波における指定された物理チャンネルの信号レベル及び伝送品質(BER,MER)の測定を行うものである。
【0020】
<構成>
図1に示すように、レベルチェッカ10は、放送信号を伝送する伝送線路に接続される入力端子11と、測定結果等を表示するための表示画面を有した表示部12と、当該レベルチェッカ10に対する各種指令を入力するための操作部13とを備えている。
【0021】
なお、入力端子11は、テレビ受像機やチューナに設けられた放送信号の入力端子と同型のコネクタによって構成されている。
表示部12は、液晶ディスプレイ(LCD)からなる周知のものである。
【0022】
操作部13は、キーマトリクス等で構成され、表示部12の表示と連動して、少なくとも、測定対象となるテレビ放送波の種類(バンド名)や物理チャンネル/周波数の指定や表示部12での表示内容を規定する表示モードの切替を行うための入力操作が可能なように構成されている。
【0023】
また、レベルチェッカ10は、受信アンテナが受信した信号を増幅するブースタの電源となる直流成分を入力端子11に接続された伝送線を介して供給すると共に、入力端子11に接続された伝送線を介して入力される受信信号を直流成分から分離する電源分離フィルタ15と、ブースタに供給する直流成分の生成を行う電源供給部17と電源分離フィルタ15にて分離された受信信号から、指定されたチャンネルの信号を抽出して、その信号レベルを測定すると共に、その抽出した信号に対して復調、誤り訂正処理等を施してTSパケットを表すビット列を生成し、その復調時に得られる情報を用いて指定チャンネルの伝送品質(MER,BER)を測定する測定部16とを備えている。
【0024】
また、レベルチェッカ10は、GPS衛星からの信号に基づいて当該装置の位置(緯度,経度,高度)を検出する周知のGPSユニットからなる位置検出部18と、当該レベルチェッカ10に設定された基準軸方向(例えば、表示画面の上下方向)に対する磁北の傾きを検出する周知の磁気センサからなる方位検出部19と、操作部13での操作に従って、当該装置の各部を制御し、測定部16での測定結果に基づいて生成される測定結果画像や、位置検出部18や方位検出部19での検出結果に基づいて生成される電波到来方向指示画像等を表示部12に表示させる制御部20とを備えている。
【0025】
<測定部>
測定部16は、指定チャンネルの信号を抽出する選局回路、選局回路の出力を検波する検波回路、指定チャンネルの信号をダイレクト復調する復調回路、復調によって得られたビット列に対して誤り訂正処理等を施すことによって、誤り訂正されたビット列を生成する誤り訂正回路等を備え、復調回路や誤り訂正回路から得られる伝送品質(MER,BER等)の算出に必要な情報を制御部20に供給するように構成された周知のチューナーモジュールからなる。
【0026】
<制御部>
制御部20は、CPU,ROM,RAMを中心に構成された周知のマイクロコンピュータからなり、測定部16からの出力に従って、指定チャンネルの信号レベル,伝送品質の測定や測定結果の表示を行う測定処理や、位置検出部18や方位検出部19での検出結果に従って、受信アンテナを向けるべき設備が位置する方位を表示する電波到来方向表示処理等を実行する。
【0027】
なお、測定処理は、レベルチェッカにおける周知の処理であるため説明を省略し、以下では、本発明の主要部となる電波到来方向表示処理について説明する。
なお、ROMには、測定処理や電波到来方向表示処理を実行するためのプログラムの他、図2に示すように、テレビ放送波を送出する人工衛星と、その人工衛星の位置(緯度,経度,高度)とを対応付けて示した設備位置テーブルが少なくとも記憶されている。
【0028】
<<電波到来方向表示処理>>
ここで制御部20が実行する電波到来方向表示処理を、図4に示すフローチャートに沿って説明する。
【0029】
なお、本処理は、レベルチェッカ10の電源が投入された後、操作部13にて、本処理を起動するための操作が行われると起動する。
本処理が起動すると、まずS110では、テレビ放送波(BS,CSなど)を選択する画面を表示部12に表示させ、操作部13を介してユーザに選択を行わせる。
【0030】
S120では、S110にて選択されたテレビ放送波の送信元となる人工衛星(以下「対象衛星」という)の位置(以下「設備位置」という)を、ROMに記憶された設置位置テーブルから求める。
【0031】
S130では、位置検出部18での測位結果、即ち、緯度,経度,高度で表された装置位置を取得してRAMに記憶する。
S140では、方位検出部19での測位結果、即ち、当該レベルチェッカ10に設けられた基準軸方向の磁北に対する傾きを取得する。
【0032】
S150では、S130での測位結果(特に、緯度,経度)に基づいて、磁気偏角を求め、その磁気偏角に従って、S140にて取得された基準軸方向の傾きを、磁北に対する傾きから真北に対する傾きに修正し、これを装置方位としてRAMに記憶する。
【0033】
S160では、S120にて求めた設備位置とS130にて取得された装置位置に基づき、装置位置から設備位置に向かう方向、即ちレベルチェッカ10の位置から見て対象衛星からのテレビ放送波が到来する方向の方位角(真北を基準とした水平面内での角度)及び仰角を算出する。
【0034】
S170では、S160で算出された方位角を、装置方位に基づいて、緯度,経度に基づく地表の座標系で示された値から、基準軸を用いる表示画面上の座標系で示された値に変換し、その変換した方位角を指し示す矢印、及びS160にて算出された仰角を示す数字が示された電波到来方向指示画像を作成し、それを表示画面に表示して、本処理を終了する。
【0035】
なお、図4は、電波到来方向指示画像の表示例を示す。
<作用効果>
このように構成されたレベルチェッカ10では、表示画面が水平面と一致し且つ上方を向くように当該レベルチェッカ10を保持した状態で、電波到来方向表示処理を起動すると、選択したテレビ放送波の到来方向(送信元となる人工衛星が位置する方向)の方位角が矢印で、仰角が数値で表示画面上に表示される。
【0036】
従って、レベルチェッカ10によれば、受信アンテナの向きを調整する際に、表示画面に表示された矢印が指し示す方向及び数値で示された仰角に従って受信アンテナを向けることによって、概ね正しい方向に受信アンテナを向けることができ、また、受信アンテナの向きを振る時にも、その方向を中心にして振ればよいため、調整作業の手間を大幅に軽減することができる。
【0037】
<発明との対応>
本実施形態において、表示部12,操作部13及びS110が指定手段、測定部16及び測定処理が測定手段、測定処理の一部が結果表示手段、制御部20を構成するROMの設備位置テーブルを記憶するエリアが設備位置記憶手段、位置検出部18及びS130が装置位置検出手段、方位検出部19及びS140〜S150が装置方位検出手段、S160〜S170が設備方位検出手段、S180が方位表示手段及び仰角表示手段に相当する。
【0038】
<他の実施形態>
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、テレビ放送波の送信元となる設備が人工衛星である場合について説明したが、その設備は地上波デジタル放送の放送局や中継局であってもよい。
また、その場合、位置検出部18から取得される装置位置と、測定部16での測定結果(信号レベル)とを対応付けたデータを、地上波デジタル放送の電界強度地図作成用データとして収集できるように構成してもよい。
【0040】
上記実施形態では、電波到来方向指示画面に、方位角を示す矢印と仰角を示す数値とが表示されているが、これと共に、測定部16での測定結果(信号レベル等)を表示させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…レベルチェッカ 11…入力端子 12…表示部 13…操作部 15…電源分離フィルタ 16…測定部 17…電源供給部 18…位置検出部 19…方位検出部 20…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種表示を行うための表示画面と、
チェック対象となるテレビ放送波を指定する指定手段と、
前記指定手段にて指定されたテレビ放送波の信号レベルを測定する測定手段と、
前記測定手段での測定結果を前記表示画面に表示させる結果表示手段と、
を備えたレベルチェッカにおいて、
テレビ放送波と該テレビ放送波の送信元となる設備の位置とを対応付けて記憶させた設備位置記憶手段と、
当該レベルチェッカの位置である装置位置を検出する装置位置検出手段と、
当該レベルチェッカに設定された基準軸の向きである装置方位を検出する装置方位検出手段と、
前記指定手段にて指定されたテレビ放送波に対応して前記設備位置記憶手段に記憶されている位置を対象設備位置として、前記装置位置から前記対象設備位置への向きである設備方位を求める設備方位検出手段と、
前記装置方位と前記設備方位とに基づき、前記表示画面が水平且つ上向きに保持されているものとして、前記設備方位を指し示す画像を前記表示画面に表示させる方位表示手段と、
を設けたことを特徴とするレベルチェッカ。
【請求項2】
前記装置位置と前記対象設備位置とに基づき、前記装置位置から前記対象設備位置を見た仰角を表す数値を前記表示画面に表示させる仰角表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のレベルチェッカ。
【請求項3】
前記設備は、衛星放送用の人工衛星であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレベルチェッカ。
【請求項4】
前記設備は、地上波デジタル放送用の放送局及び中継局であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレベルチェッカ。
【請求項5】
前記装置位置検出手段は、GPSを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレベルチェッカ。
【請求項6】
前記装置方位検出手段は、磁気センサを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のレベルチェッカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239539(P2010−239539A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87186(P2009−87186)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】