説明

レボキセチン含有徐放錠

【課題】経口送達錠剤の形態の徐放剤組成物に使用するてんぷんの適合性決定方法および錠剤製造方法を提供する。
【解決手段】引張強度を推定することによるでんぷんの適合性決定方法であって、該徐放剤組成物は、親水性ポリマーと、錠剤の代表な固形分級において少なくとも約0.15kNcm-2の引張強度を有するでんぷんとを含むマトリックス中に分散された、約10mg/ml以上の溶解度を有する活性薬剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤、さらに特には、水溶性ドラック又はプロドラッグの経口送達のための徐放錠組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラッグ及びプロドラッグを含む多くの活性薬剤は、経口送達型剤の形態で製剤化されており、これらの薬剤が一定時間有効に徐放(あるいは遅延徐放又は広範囲徐放として知られる)されることにより、1日1回の投与が可能となっている。よく知られた当該剤形の製剤化様式は、当該薬剤が分散されたポリマーを含有するマトリックスを含むものである。すなわち、当該薬剤はマトリックスを溶解又は浸食して胃腸管に一定時間に渡って徐放される。当該マトリックス様式を含む徐放剤形は、圧縮錠、ここでは「マトリックス錠」として記述するが、として簡便に調製される。
【0003】
比較的高い水溶性、例えば約10mg/mlもしくはこれ以上の溶解度を有するドラッグやプロドラッグは、徐放剤形を提供しようとする製剤者に大きな問題を提示する。すなわち、溶解度が高ければ高い程、問題は大きくなる。かかる問題は、約200mg/mlの水溶性を有するプラミペキソール ジハイドロクロリド及び約250mg/mlの水溶性を有するレボキセチン メシレートのケースでよく説明できる。
【0004】
プラミペキソール(I)は、パーキンソン病の治療に有用なドーパミンD2リセプターアゴニストである。プラミペキソールはそのジヒドロクロリド塩として、ファルマシア
アンド アップジョンのミラペックス(登録商標)錠として米国で市販されている。これらは、0.125mg、0.25mg、0.5mg、1.0mg及び1.5mgの強度の迅速性徐放錠であり、1日に3回1錠を経口投与すると、0.375〜4.5mgの日用量が提供できるように設計されている。外科医のディスクリファレンス57版(2003)、2768−2772を参照。ここでの用量は、特に断わらなければ、プラミペキソール
ジハイドロクロリド モノハイドレートの量で示される。すなわち、1.0mgプラミペキソール ジハイドロクロリド モノハイドレートは、約0.7mgプラミペキソール塩基当量である。
【0005】
【化1】

【0006】
迅速性徐放プラミペキソール ジハイドロクロリド錠の1日3回の処方は、大へんな我慢を要するが、1日1回の処方が可能ならば、患者の忍耐はもっと改善されるだろう。この点、パーキンソン病治療薬の主な症状は、加齢に伴ってより一般的になる苦痛であり、記憶の減退をよく伴うことは注目されるだろう。1日1回の投与計画は高齢の患者の忍耐を改善するには特に有用である。
【0007】
プラミペキソール ジハイドロクロリド モノハイドレートの親水性マトリックス錠への製剤化は、一般的に1日1回の投与に匹敵する徐放特性を付与するには十分でない。徐放特性は、錠剤を徐放層でコーティングすることにより更に変化させることができる。コーティングは、通常は疎水性ポリマー及び親水性細孔フォーマー(former)を含む。
【0008】
マトリックス錠をコーティングする必要性は更に問題を招く。コーティング工程に含まれる更なるハンドリング操作は、操作中、特に高速製造状況でも錠剤が破損及び/又は縮小しないように、錠剤の十分な硬度を必要とする。
【0009】
レボキセチン(II)は、うつ病の治療に有用な選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)である。レボキセチンは、そのメタンスルホネート(メシレート)塩として、イギリスで市販され、またファルマシア
アンド アップジョンのエドロナックス(登録商標)錠としてどこででも入手できる。これらは、分配を促進するための切り込み線を有する迅速性錠である。各エドロナックス(登録商標)錠は、4mgのレボキセチンを含有し、必要ならば分けてもよいが、1日に2回経口投与すると4〜12mgの日用量が供給できるように設計されている。イギリス国立製剤処方41版(2001)、196参照。ここでの用量は、特に断わらなければレボキセチン塩基量で示される。
【0010】
【化2】



【0011】
迅速性徐放レボキセチン錠を1日2回投与する処方は大変な忍耐を要するが、副作用の可能性を実質的に増加させることなく1日1回の処方が可能ならば、患者の忍耐はもっと改善されるだろう。この点、うつ病薬の主な症状は、忍耐の不十分さによく伴う苦痛であることは注目されるだろう。
【0012】
親水性マトリックス錠へのレボキセチン塩の製剤化により、1日1回の投与に匹敵する徐放特性を付与できることが本発明者らにより見出されている。しかしながら、得られた錠剤は、取扱い中、特に高速錠剤化中に破損及び/又は浸食されやすい。
【0013】
ドラッグは、プラミペキソール又はレボキセチンの塩の場合と同様に比較的高い溶解度を有するので、徐放性と取扱い特性を好適に組み合わせた錠剤の処方は困難であることが判かっている。
【0014】
米国特許第6,197,339号は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)とでんぷんを含むマトリックス中に、(R)−5,6−ジハイドロ−5−(メチルアミノ)−4H−イミダゾ〔4,5−イジ〕−キノリン−2(1H)−オン(Z)−2−ブテンジオエート(1:1)(スマニロールマレエート)を含有する徐放錠を開示している。当該錠剤は、パーキンソン病の治療に有用であることが開示されている。ここで、好適と開示されているでんぷんは、アルファー化(未ゼラチン化)でんぷんを含む。
【0015】
米国特許第5,458,887号は、HPMCやポリエチレンオキサイド等の水膨張性成分との混合物中にドラッグを含有する浸透性核、及び細孔フォーマーとして働く水難溶性ポリマーと少量の水溶性化合物とを含有するコーティングを含む徐放制御錠を開示している。水溶性化合物の分解によりコーティングに細孔が生じると、水膨張性剤は核を広げ、胃腸液と接するドラッグリッチな表面を提供すると言われている。
【0016】
米国特許第5,656,296号は、ドラッグ及び低沸点賦形剤を含む核と、pH非依存性水難溶性ポリマー及び水溶性フィルム調製ポリマーを含む核のコーティング層とを含有する二重制御徐放製剤を開示している。欧州特許第0933079号は、高硬度を有するが、水溶液に直ちに分解できる錠剤の調製に好適とされているでんぷんを開示している。最終的に得られる錠剤の引張強度は、硬度から計算される。
【0017】
上述の特許公報及び刊行物は、参考として本明細書に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、1日1回の経口投与に適した水溶性ドラッグ又はプロドラッグの徐放錠組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、高速錠剤化、特に、コーティング層の調製中に浸食に耐え得る十分な硬度を有する組成物を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、1日1回投与した場合に患者の中枢神経(CNS)に一日がかりで治療効果を及ぼす薬錠を提供することにある。特に、本発明の目的は、1日1回投与した場合に、実質的に副作用を増加させることなく、ドーパミンアゴニストとして一日がかりで作用する錠剤を提供することにあり、さらに特には、水溶性ドラッグとしてプラミペキソール塩を提供することにある。
本発明の別の特別な目的は、実質的に副作用を増加させることなく、1日1回投与した場合にSNRIとして治療効果を有する錠剤を提供することにあり、さらに特には、水溶性ドラッグとしてレボキセチン又はそのエナンチオマーの塩、例えば(S,S)−レボキセチンを提供することにある。
なおさらに本発明の目的は、水溶性ドラッグ又はプロドラッグに徐放性を付与するためにマトリックス錠中にでんぷんを内包適合させる試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、親水性ポリマーと、錠剤の代表的な固形分級において少なくとも約0.15kNcm-2の引張強度を有するでんぷんとを含むマトリックス中に分散された、約10mg/ml以上の溶解度を有する、活性薬剤を含有する経口送達錠剤形態の徐放剤組成物を提供する。
【0020】
更に、経口送達錠剤として徐放医薬組成物を調製する方法を提供するものである。当該方法は、錠剤の代表的な固形分級において少なくとも約0.15kNcm-2の引張強度を有する好適なでんぷんを選択し;当該選択したでんぷんを親水性ポリマー及び約10mg/ml以上の溶解度を有する活性薬剤と混合して、当該薬剤がポリマーとでんぷんとを含むマトリックス中に分散された混合物を得;そして当該混合物を圧縮して錠剤を調製する、ことを含む。
【0021】
特に簡易な試験方法は、それ自体、発明をさらに具体化するものであるが、自動錠剤プレス上でんぷん試料のコンパクトをあるレンジの圧縮力で調製し;当該コンパクトの硬度を計測し;当該コンパクトの固形分級を測定し;当該硬度から当該コンパクトの引張強度及び当該コンパクトの大きさを計算し;当該引張強度対当該コンパクトの固形分級の関係を求め;そして当該関係から所望の錠剤の代表的な固形分級における引張強度を推定する、ことを含む。
【0022】
更にまた、約10mg/ml以上の溶解度を有する活性薬剤を処方する症状又疾患を有する患者の治療方法であって、徐放医薬組成物を、親水性ポリマーと、錠剤の代表的な分級において少なくとも0.15kNcm-2の引張強度を有するでんぷんとを含有するマトリックス中に分散された薬剤を含む錠剤として患者に経口投与する方法を提供する。
【0023】
ここで、「活性薬剤」とは診断剤を含み、ドラッグもしくはプロドラッグ又はそれらの塩でもよい。特に断わらない限り、ここで、「溶解度」とは、生理的に許容されるpH、例えば約4〜8の範囲のpHにおける20〜25℃の水に対する溶解度を意味する。塩の場合には、水に対する溶解度は薬剤の塩をいい、薬剤の遊離酸又は遊離塩基ではない。
【0024】
ここで、「経口送達」の語は、経口及び口中(例えば舌下又は口内)投与を含み、経口用に適したものを意味するが、本発明の錠剤は、主に経口投与用、すなわち通常はそっくりそのまま又は破壊して、水や他の飲料の助けを借りて嚥下用として使用される。
ここで、「コンパクト」とは、例えば錠剤プレス上で調製される圧縮錠剤であって、引張強度を測定するよう意図されたでんぷん試料のみからなるものである。
「固形分級」は、コンパクトの絶対密度の見かけ密度に対する比である。「錠剤の代表的な固形分級」は、本発明に従って調製された錠剤の固形分級に近似するよう選択された固形分級である。通常は約0.75〜0.85、特に0.8の固形分級が選ばれる。
【0025】
ここで、「患者」とは、いかなる種の動物でもよく、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。
ここでいう特定の薬剤が「処方」される患者の症状及び疾患は、その薬剤が行政機関により特別に承認されている症状及び疾患を有する患者に限定されないが、その薬剤による治療に従うものと医師により知られ又は考えられている他の症状及び疾患を有する患者も含む。
ここで、「治療薬」とは、文脈が他の意を要求しなければ、予防薬を包含する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の組成物は、好ましくは、当該組成物を必要としている患者に1日に1回以下経口投与すると有効な治療成績が得られるのに十分な徐放特性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、水溶性活性薬剤を含有する、経口送達錠剤形態の医薬組成物を提供する。この組成物は、好ましくは1日に1回以下経口投与する場合に治療効果を提供するために充分な徐放特性を示す。
【0028】
本発明は、通常は迅速徐放組成物として製剤された場合に、1日1回の投与に適さない薬剤に特に有用である。この不適性は次の制限を含み、当該薬剤の1又はそれ以上の特性から生じている。
(a)血流中の薬剤又はその活性代謝物の短半減期(T1/2)である。すなわち、治療上有効濃度を維持するように、血漿濃度が1日よりも短い間隔で「最高値」になることが求められている;
(b)薬剤又はその治療活性代謝物の最高血漿濃度(Cmax)から生ずる望ましくない副作用の可能性である。
【0029】
約10mg/ml以上の溶解度を有する薬剤は、ほとんどが非イオン性化合物である。ほとんどが遊離酸又は遊離塩基として存在する化合物であり、本発明の組成物中には、そのような形で又はより一般的には薬学上許容できる塩として存在する。
【0030】
薬剤の溶解度は、好ましくは約50mg/ml以上、より好ましくは約100mg/ml以上である。本発明の目的によれば、米国薬局方 24版(2000)(USP24)に「非常に溶解的」又は「十分に溶解的」と分類されている薬剤は、約100mg/ml以上の溶解度を有し、USP24に「溶解性」又は「控え目に溶解性」と分類されている薬剤は、約10mg/ml以上の溶解度を有にすると考えられる。
【0031】
ここで有用な活性薬剤は、いずれの治療カテゴリーに属していてもよい。例えば、メルクインデックス13版(2001)に掲載された治療カテゴリーならばいずれでもよい。本発明で有用な薬剤のリストの一部を以下に例示する。1つの薬剤の1又はそれ以上の塩が掲載されているが、約10mg/ml以上の溶解度を有する他の薬学的に許容される塩(「類似塩」)がこれらに置換できることは明らかである。
【0032】
アバカヴィア サルフェート
アカルボス
アセブトロール ハイドロクロリド
アセチルサルチル酸 カルシウム塩
アシクロヴィア ナトリウム
アルブテロール サルフェート
アレンドロネート ナトリウム
アルフェンタニル ハイドロクロリド
アルモトリプタン マレエート
アロセトロン ハイドロクロリド
アマンタジン ハイドロクロリド
アムジノシリン
アミノレブリン酸 ハイドロクロリド
アミノフィリン
p−アミノサルチルエステル カルシウム、ナトリウム及びカリウム塩
アミトリプティリィン ハイドロクロリド
アムロジピン アセテート、ハイドロクロリド塩及びメシレート塩
アンフェタミン ホスフェート塩及びサルフェート塩
アルブタミン
アセノロール
アトロピン サルフェート
アズロシリン ナトリウム
バルサラザイド 二ナトリウム
ベナズプリル ハイドロクロリド
ベンズトロピン メシレート
ベタンコール クロリド
ビソプロロール フマレート
ブロムフェニラミン マレエート
ブプロピオン ハイドロクロリド
カフェイン及びカフェイン シトレート
カペチタビン
【0033】
カプトプリル
カルベニシリン 二ナトリウム
カルベタペンタン シトレート
カルビノキサミン マレエート
セファクラー
セフメタゾール ナトリウム
セフォジジン 二ナトリウム
セフテゾール ナトリウム
セフテオファ ナトリウム
セフトリアクソン 二ナトリウム
セフロキシム ナトリウム
セフゾナム ナトリウム
セチリジン ハイドロクロリド
セヴィメリン ハイドロクロリド
クロルジアズエポキシド ハイドロクロリド
クロロキン ホスフェート
クロルフェニラミン マレエート
クロルプロヤジン ハイドロクロリド
シラスタチン ナトリウム
シメチジン ハイドロクロリド
クリンダマイシン ハイドロクロリド
クリンダマイシン フォスフェート
クロミプラミン ハイドロクロリド
クロニジン ハイドロクロリド
クロラゼペイト 二カリウム
コデイン ハイドロクロリド塩及びサルフェート塩
コデイン ホスフェート
シクロベンザプリン ハイドロクロリド
シクロペプタジン ハイドロクロリド
【0034】
システアミン ハイドロクロリド
ダクノルビシン ハイドロクロリド
デシプラミン ハイドロクロリド
デキサメタソン 21−ホスフェート ナトリウム
デクストロメトルファン ハイドロブロミド
ジベカシン(dibekacin)
ジクロフェナク カリウム
ジシクロミン ハイドロクロリド
ジダノシン
ジハイドロコデイン
ディルチタゼム ハイドロクロリド
ジフェンヒドラシン ハイドロクロリド
ジサルフィラム(disulfiram)
ドラセトロン メシレート
ドネペジル ハイドロクロリド
ドーパミン ハイドロクロリド
ドルゾラミド ハイドロクロリド
ドキセピン ハイドロクロリド
ドキシシクリン ハイクレート
エレトリプタン ヘミサルフェート
エナラプリル マレエート
エピナスチン ハイドロクロリド
エリスロマイシン グルコペプタネート及びラクトビオネート塩
エトサクスイミド(ethosuximide)
エチドロニック酸及び二ナトリウム塩
エトペリドン ハイドロクロリド
ファドラゾール ハイドロクロリド
ファムシ クロヴィア
フェンタニル シトレート
【0035】
フルシトシン
フルダラビン フォスフェート
フルロキセチン ハイドロクロリド
フルバスタチン ナトリウム
ホスホマイシン及びホスホマイシン トロメタミン
ホスホサル
フォシノプリル ナトリウム
ホスフェニトイン 二ナトリウム
フロバトリプタン スクシネート
ガバペンチン
ガチフロキサシン
グリコピロレート
グラニセトロン ハイドロクロリド
グアイニフェネシン(guaifenesin)
ハロペラドール ハイドロクロリド
ハマトロピン メチルブロミド
ハイドラジン ハイドロクロリド
ハイドロコダン 二タートレート及びハイドロクロリド塩
ハイドロモルホン ハイドロクロリド
ハイドロキシクロロキン サルフェート
ハイドロキシジン ジハイドロクロリド
ハイオスシアミン ハイドロブロミド
イマチニブ メシレート
イミプラミン ハイドロクロリド
インカドロネート 二ナトリウム
インディナヴィア サルフェート
イソニアジド(isoniazid)
イソクスサプリン ハイドロクロリド
ケトロラク トロメタミン
ラベタロール ハイドロクロリド
【0036】
ラミバジン
レバミソール ハイドロクロリド
レベチラセタム
リドカイン ハイドロクロリド
リシノプリル
ロサルタン カリウム
マフェニド アセテート
メカミラミン ハイドロクロリド
メデトシジン ハイドロクロリド
メグルトール
メペリジン ハイドロクロリド
メタラミノール 二タートレート
メトフォルミン ハイドロクロリド
メタドン ハイドロクロリド
メタアンフェタミン ハイドロクロリド
メチナミン
メチマゾール
メススコポラミン ブロミド
メチルドーパ
メチルフェニデート ハイドロクロリド
メチルプレドニソロン 21−スクシネート ナトリウム
メトクロプラミド
メトプロロール スクシネート
メトラリンドール ハイドロクロリド
メキシルチン ハイドロクロリド
メズロシリン ナトリウム
ミダゾラム ハイドロクロリド
ミドドリン ハイドロクロリド
ミグリトール
ミゾリビン
モエキシプリル ハイドロクロリド
モリンドン ハイドロクロリド
モンテラカスト ナトリウム
モルフィン ハイドロクロリド
モルフィン サルフェート
モルフィン サリシレート
ナルメフェン ハイドロクロリド
ナロキソン ハイドロクロリド
ナプロキセン ナトリウム
ナラトリプタン ハイドロクロリド
ネドクロミル 二ナトリウム
ネオスティグミンブロミド塩及びメチルサルフェート塩
ニコチンニタートレート、サリシレート及びサルフェート塩
ニトロフラントニン
ニザチジン
ノルトリプチリン ハイドロクロリド
オフロキサシン
オルサラジン ナトリウム
オンダンセトロン ハイドロクロリド
オルフェナドリン ハイドロクロリド
オキシブチニン ハイドロクロリド
オキシコドン ハイドロクロリド
パントプラゾール ナトリウム
パレコキシブ ナトリウム
ペリロラスト カリウム
ペンシラミン
ペニシリンGナトリウム塩及びカリウム塩
ペニシリンV カリウム
ペンタミジン イセチオネート
【0037】
ペントバルビタール ナトリウム
ペントサン ポリサルフェート ナトリウム
ペントキシフィリン
ペリンドリル エルブミン
フェンジメトラジン タートレート
フェネルジン サルフェート
フェノキシベンザミン ハイドロクロリド
フェンテルミン ハイドロクロリド
フェニルエフィリン ハイドロクロリド
フェニルプロパノールアミン ハイドロクロリド
フェニイトイン ナトリウム
フェニルトロキサミン シトレート
ピドチモ(pidotimod)
ピロカルピン ハイドロクロリド
ピペラシリン ナトリウム
ピレンゼピン ジハイドロクロリド
プラミペキソール ジハイドロクロリド
プラバスタチン ナトリウム
プレドニソロン ナトリウム フォスフェート
プロカイナミド ハイドロクロリド
プロカルバジン ハイドロクロリド
プロコダゾール
プロメタジン ハイドロクロリド
プロパセタモール ハイドロクロリド
プロポキシフェン ハイドロクロリド
プロプラノロール ハイドロクロリド
プロトリプチリン ハイドロクロリド
プソイドエフェドリン ハイドロクロリド
プリドスティグミン ブロミド
キチアピン ヘミフマレート
【0038】
キナプリル ハイドロクロリド
キニン ビサルフェート
ラベプラゾール ナトリウム
ラルティトレックス(raltitrexed)
ラモセトロン ハイドロクロリド
ラニチジン ハイドロクロリド
レボキセチン メシレート塩及びスクシネート塩
リバヴィリン
リマンタジン ハイドロクロリド
リセドロネート ナトリウム
リバスティグミン タートレート
リザトリプタン ベンゾエート
ロピニロール ハイドロクロリド
スコポルアミン ハイドロブロミド
セレギリン ハイドロクロリド
ソタロール ハイドロクロリド
スタバジン(stavudine)
サルベニシリン 二ナトリウム
サルファセトアミド ナトリウム
サマニトロール マレエート
サマトリプタン スクシネート
タクリン ハイドロクロリド
トゥーロリジン(taurolidine)
テラゾシン ハイドロクロリド
テトラサイクリン ハイドロクロリド
セロブロミン ナトリウム アセテート及びセロブロミン ナトリウム サリシレート
セロフィリン エタノールアミン及びセロフィリン イソプロパノールアミン
セロフィリン ナトリウムアセテート及びセロフィリン ナトリウム グリシネート
チオリダジン ハイドロクロリド
【0039】
チロキシン ナトリウム
ティクロビジン ハイドロクロリド
ティモロール マレエート
トルティロジン タートレート
トラマドール ハイドロクロリド
トリエンチン ハイドロクロリド
トリフルオロペラジン ジハイドロクロリド
バラシクロヴィア ハイドロクロリド
バルガンシシクロヴィア ハイドロクロリド
バルプロエート ナトリウム
ベンラファキシン ハイドロクロリド
ベラパミル ハイドロクロリド
ワーファリン ナトリウム
ゾルミトリプタン(zolmitriptan)
ゾルピデム ヘミタートレート
【0040】
本発明で有用な他の薬剤には、N−〔5−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−2−〔(3−フルオロフェニル)スルホニル〕フェニル〕アセトアミド、N−〔(3R)−1−アザビシクロ〔2,2,2〕ポト−3−イル〕フロ〔2,3−c〕ピリジン−5−カルボキサミド及びこれらの塩が含まれる。
【0041】
ここで、活性薬剤には、ラセミ体、エナンチオマー、多形水和物及びその溶媒和物が含まれる。
【0042】
本発明は、強い薬効のドラッグ及びプロドラッグに特に適する。具体的には、低い日用量、例えば、約100mg/日以下、特に約50mg/日以下、さらに特には約25mg/日以下、とりわけさらに特には約10mg/日以下、最も特には約5mg/日以下で治療効果を発揮するドラッグ及びプロドラッグである。
【0043】
一つの具体例を挙げれば、活性薬剤は、中枢神経(CNS)に治療効果がある。ここで「CNS剤」と言われる薬剤は、CNS疾患の治療又は予防に有用であり、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗赤痢薬、鎮痙薬、抗躁病薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗強迫観念薬、抗パーキンソン薬、抗精神薬、鎮痙薬、コリン作動性薬、CNS刺激薬、ドーパミンリセプターアゴニスト、ドーパミンリセプターアンタゴニスト、催眠剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、精神遮断薬、神経保護剤、NMDAリセプターアゴニスト、脳機能改善薬、プロラクチン阻害剤、鎮静剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、平静剤、セロトニンリセプターアゴニスト、セロトニンリセプターアンタゴニスト及びトランキライザーを含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明で有用である代表的なCNS剤としては、スマニロール、レボキセチン及びプラミペキソールの塩を含む。スマニロールは、好ましくは、そのR−エナンチオマー、(R)−5,6−ジヒドロ−5−(メチルアミノ)−4H−イミダゾ〔4,5−イジ〕−キノリン−2(1H)−オン(III)及びチオカルボニル基で置換された(R)−5,6−ジヒドロ−5−(メチルアミノ)−4H−イミダゾ〔4,5−イジ〕−キノリン−2(1H)−チオン(IV)として用いられる。
【0045】
【化3】



【0046】
化合物(III)又は(IV)のいずれかの場合に、好適な塩には、ハイドロクロリド、ハイドロブロミド、ハイドロアイオダイド、サルフェート、ホスフェート、アセテート、プロピオネート、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンサルファメート、メシレート(メタンスルホネート)、エシレート(エタンスルホネート)、ベンシレート(ベンゼンスルホネート)及びトシレート(p−トルエンスルホネート)の塩が含まれる。マレイン酸塩が好ましい。
【0047】
本発明のスマニロール組成物は、1日2回以下、好ましくは1日1回以下の投与に適する。当該組成物は、スマニロールが治療効果を発揮するCNS症状又は疾患の治療ならいずれの治療にも有用であり、特にパーキンソン病とこれに関連した疾患に有用である。
【0048】
レボキセチン(II)は、(R,R)−レボキセチン、(S,S)−レボキセチン、(R,S)−レボキセチン及び(S,R)−レボキセチンの2以上を含有するラセミ体混合物を、あるいはこれらのエナンチオマーのうちのいずれかを使用してもよい。好ましくは(S,S)−レボキセチンが使用される。
【0049】
レボキセチンの好適な塩には、ハイドロクロリド、ハイドロブロミド、ハイドロアイオダイド、サルフェート、ホスフェート、アセテート、プロピオネート、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンサルファメート、メシレート、エシレート、ベンシレート及びトシレートの塩が含まれる。レボキセチンラセミ体の場合は、メシレート塩が好ましい。(S,S)−レボキセチンの場合は、コハク酸塩及びフマル酸塩、より好ましくはコハク酸塩が好ましい。
【0050】
本発明のレボキセチン及び(S,S)−レボキセチン組成物は、好ましくは1日に1回以下の投与に適する。当該組成物は、レボキセチン及びそのエナンチオマーが治療効果を発揮するいずれかのCNS症状又は疾患の治療に有用であり、特にヘルペス神経痛や糖尿病性神経障害を含み、うつ病や神経障害性疼痛に有用である。
【0051】
プラミペキソール(I)は、好ましくはそのS−エナンチオマー、(S)−2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−6−(プロピルアミノ)−ベンゾチアゾールが用いられる。プラミペキソールの好ましい塩は、ジハイドロクロリド塩、より好ましくはそのモノハイドレートである。
【0052】
本発明のプラミペキソール組成物は、好ましくは1日1回以下の投与に適する。当該組成物は、プラミペキソールが治療効果を発揮するCNS症状又は疾患の治療ならいずれの治療にも有用であり、特にパーキンソン病とこれに関連した疾患に有用である。
【0053】
本発明で有用な活性薬物はすべて、それ自体公知の方法で調製されるが、この方法には、興味深い特定の薬剤に関連した特許公報や他の刊行物に開示された方法も含まれる。
【0054】
本発明の組成物中に存在する活性薬剤の量は、その薬剤の薬効によるが、1錠から複数錠、例えば一回で投与される錠剤のうちの1〜4錠で、充分に日量を供給できる。日用量が1錠で送達されることが好ましい。ほとんどの場合、1錠剤当たりの薬剤の量は、約0.1〜約空200mg、好ましくは約0.2〜約100mgである。組成物の重量%で表わすと、薬剤の量は、通常は約0.01〜約25%、好ましくは約0.05〜約20%である。薬剤が塩の場合、ここでいう薬剤の量は、特に断わらなければ、遊離酸又は遊離塩基当量で表わされる。
【0055】
スマニロールの場合を例にとると、一錠当たり約0.5〜約25mg、あるいは組成物の約0.1〜約15重量%が一般的に好適である。ここで計画されている一錠当たりの特定の用量には、スマニロールマレイン酸塩として0.5、1、2、4、8、12及び24mgのスマニロールが含まれる。
【0056】
プラミペキソールの場合には、一錠当たり約0.1〜約10mg、あるいは組成物の約0.05〜約5重量%が一般的に好適である。好ましくは、一錠当たり約0.2〜約6mg、さらに好ましくは約0.3〜約5mgのプラミペキソールが含まれる。ここで計画されている一錠当たりの特定の用量には、0.375、0.5、0.75、1.0、1.5、3.0及び4.5mgのプラミペキソール ジハイドロクロリド モノハイドレートが含まれる。
【0057】
(S,S)−レボキセチンの場合、一錠当たり約0.2〜約15mg、あるいは組成物の約0.1〜約10重量%が一般的に好適である。好ましくは一錠当たり約1〜約12mgのレボキセチン又は(S,S)−レボキセチンが含まれる。ここで計画されている一錠当たりの特定の用量には、1、2、4、6、8及び12mgのレボキセチンがそのメシレート塩として、(S,S)−レボキセチンがそのコハク酸塩として含まれる。
【0058】
本発明の組成物は、前記定義の活性薬剤を含有し、当該活性薬剤は、親水性ポリマーと、錠剤の代表的な固形分級が例えば約0.75〜約0.85、特に0.8において、少なくとも約0.15kNcm-2の引張強度を有するでんぷんとを含有するマトリックス中に分散されている。
【0059】
ここで有用な親水性ポリマーは、水酸基及びカルボキシ基のような親水性置換基を充分な数と分配で有し、ポリマー全体に親水性を付与できる。薬学的に許容されるポリマー性材料である。好適な親水性ポリマーとしては、特に限定されず、メチルセルロース、HPMC(ハイプロメロース)、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)のナトリウム塩及びカーボナー(ポリアクリル酸)である。当該ポリマーの1以上を任意に使用できる。
【0060】
HMPCは、好ましい親水性ポリマーである。種々のタイプ及び等級のHPMCが入手できる。HPMC型2208を一例にとれば、好ましくはUSP
24等の標準薬局方に記載の仕様が使用される。HPMC型2208は、19.24重量%のメトキシ置換基及び4〜12重量%のハイドロキシプロポキシ置換基を含む。
特に好適なHPMCは、約100〜約10,000mPa・sの見掛け密度を有し、更に好適なHPMC型2208は、約4000mPa・sの見掛け密度、約3000〜約5600mPa・sの測定密度を有する。
当該HPMCは、例えばダウケミカル社からメトセル(登録商標)K4MPとして入手でき、実質的に当価な製品が他の製造者から入手できる。
【0061】
本組成物中の親水性ポリマーの量は、選ばれる特定のポリマー、活性薬剤及び所望の徐放プロフィルに依存する。しかしながら、通常は、親水性ポリマーは、組成物中に約20〜約70重量%、好ましくは約30〜約60重量%、より好ましくは約35〜約50重量%の量で含有される。HPMC型2208の代表例では、好適な量は、一般的に組成物中約30〜約60重量%の範囲、好ましくは約35〜約50重量%の範囲、例えば約40重量%である。
【0062】
理論的根拠があるわけではないが、親水性ポリマーは、例えば、胃腸管液中で徐々にポリマーが分解又は浸食されて、活性薬剤が広範囲に放出あるいは徐放するように機能する、と考えられている。
【0063】
ここで有用なでんぷんには、例えばとうもろこし、麦、米、タピオカ、ポテト等の好適な植物源から得られるでんぷんならいずれも含まれる。
【0064】
好ましいでんぷんは、アシロペクチンに対して比較的高いアミロース比を有するもの、例えば、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも25%のアミロースを含有するものである。特に好ましくは、アルファー化でんぷんであり、これはでんぷんに流動性を付与し、直接、圧縮性を付与するため加工された修飾型でんぷんである。
【0065】
理論的根拠があるわけではないが、本発明の組成物中のでんぷんの主な役割は、結合剤であると考えられる。ここで定義されるでんぷんの引張強度基準は、「超バインダー」と表現してもよい。
【0066】
本組成物中のでんぷん量は、概して、錠剤中にバインダーとして通常存在する量よりも多い。好適な量は、一般的に約25〜約75重量%である。好ましいでんぷん量は、組成物中、約40〜約70重量%、より好ましくは約45〜約65重量%、例えば約50重量%である。
【0067】
でんぷん試料の引張強度は、好適な試験ならいずれの試験でも測定できる。代表的な試験方法は、当該項に参考として記載されている、Hiestand
& Smith(1984)、粉体技術38、145−159、及びHiestand & Smith(1991)、国際薬学誌67、231−246に記述されている。
【0068】
引張強度試験の一例を示せば、でんぷん試料の一連のコンパクトを調製し、コンピュータ化された多機能錠剤テスト(MTT)を使用してそのコンパクトの引張強度を測定する必要がある(ここでは、「3軸引張強度試験」と言われる)。コンパクトは種々の程度の圧縮力により調製され、一定の固形分級をもつコンパクトが得られる。徐放錠は、通常約0.8の固形分級を有するので、当該固形分級に近似したコンパクトの調製に有用である。でんぷん試料の絶対密度は、ヘリウムガスピクノメーターを使って測定できる。
【0069】
コンピュータ制御された3軸錠剤プレスは、コンパクトの調製に用いられる。パンチからの電圧と錠剤プレスのダイス型充填セルは、最初はゼロになっている。パンチとダイス型は、ステアリン酸マグネシウム粉体により潤滑され、ダイス型アッセンブリは、プレス中に設置されている。圧力及び減圧パラメータは、コンピュータ上で選ばれる。圧縮される所望のでんぷん量が計量され、ダイス型空洞に注入される。得られる粉体床は、スパチュラで水平化される。パンチはダイス型に押入され、コンピュータ制御の圧縮/減圧サイクルが開始される。
【0070】
圧縮段階の終了直前に、LVDTにより測定されるコンパクトの厚さが記載される。圧縮段階の最後では、パンチ充填セルの電圧により測定される最終圧縮力が記録される。
【0071】
減圧段階の最後では、パンチとダイス型ラムが引っ込む。コンパクトはダイス型より除かれ、クラッキングやスティッキング(sticking)等の欠陥が点検される。クラッキングは、圧縮時間を増やすことにより減ずることができる。コンパクトに欠陥がなければ、コンパクトの長さ、幅、厚さ及び重さが計測され、見掛け密度が計算できる。固形分級は、見掛け密度と絶対密度とに分けて計算される。
【0072】
引張強度を決定するためのMTTの準備に際し、好適なソフトウェアプログラムが進行する。プラテン(platen)は、MTTの充填セルにねじで取り付けられ、引張強度アッセンブリは、プラテンの反対側のMTTにスライドされる。充填セル信号は、コンピュータによりモニターされ、信号コンディショナー上のゼロオフセットは、ゼロに可能な限り近い正のベースライン電圧を与えるよう調節される。正の速度は、約15秒の定時間(通常、選択される速度は約0.8〜約1.2mmS-1)となるように選ばれる。
【0073】
試験されたコンパクトは、引張強度アッセンブリのホルダー内に置かれる。モーターはコンピュータで作動開始し、コンパクトの表面が検知されるまでコンパクト方向にプラテンが作動し、コンパクトから数ミリメートルのところでプラテンを停止させる。オシロスコープは、コンパクトに加えられる力を記録するため、トリガー(triger)され、モーターが再始動する。プラテンは、クラックが視覚又は音で検知されるまでコンパクト方向に動き、モーターは直ちに逆走する。
【0074】
ピーク力がオシロスコープ痕跡から記録される。引張強度は適当なコンピュータソフトウェアを利用したピーク力から計算される。
【0075】
データは、0.8付近の固形分級値のコンパクトを使用した複数群からプロットされ、固形分級0.8の引張強度が推定される。固形分級0.8の引張強度は、約0.15kNcm-2又はそれ以上であり、当該でんぷん試料は、本発明による組成物の調製に好適に使用できると考えられる。
【0076】
より簡単な試験、すなわち製造設備の実行に従順な試験が、でんぷん試料の引張強度、特に、でんぷん試料が所望の徐放錠の代表的な固形分級において少なくとも約0.15kNcm-2の引張強度を有するかを推定するために使用できることは、驚くべきことにここで発見されたことである。
【0077】
当該試験によれば、でんぷん試料のコンパクトは、一定の圧縮力の下、標準自動錠剤プレス上で調製される。例えば、好適な直径(例えば、300mgのコンパクトに対し、10/32インチから約0.7cm)の平面状ツーリングが取り付けられたカルバープレス(例えば、モデル3888.1DT0000)は、少なくとも約4秒の滞留時間で約4〜約6kN(約900〜約3600 1bf)の圧縮力を有するが、このツーリングは満足な結果を与えることが判かった。とりわけ、当該コンパクトは1000、1500、2000及び3000
1bf(4.45、6.67、8.90及び13.34kN)で調製できる。
【0078】
好ましくは少なくとも約10秒、より好ましくは少なくとも約30秒、さらに好ましくは少なくとも約60秒の滞留時間が用いられる。特に、90秒の滞留時間にすると、満足な結果が得られることが判明した。各々のコンパクトの重さ、直径及び厚さが正確に計測されると(あるいは直径はツーリングの直径に匹敵すると考えられる)、見掛け密度及び固形分級が計算でき、絶対密度は、上述の方法、例えばヘリウムガスピコノメーターで計測される。
【0079】
このようにして調製された各コンパクトの硬度は、例えばKey HT500硬度テスターのような好適な錠剤硬度試験ならいかなる試験によっても計測できる。硬度は、コンパクトのクラッシュを引き起こすために必要な力の指標であり、通常は、キロポンド(kp)又はストロング−コブ(Strong−Cobb)単位(SCU)等の単位で表示される。約10.2kp又は約14.4SCUの硬度は、0.1kNの力に相当する。
【0080】
本発明の目的では、コンパクトのクラッシュ力は引張強度に等しいと考えられる。すなわち、引張強度(kNcm-2では、σT)は、次式から計算される。
σT=2F/πDH
(Fは、クラッシュを起こすに必要な力(kN)、Dはコンパクトの直径(cm)及びHはコンパクトの厚さ(cm)である。)
例えば、硬度20SCU(0.139kNの力と等価)で、直径0.7cm及び厚さ0.4cmのコンパクトは、引張強度0.316kNcm-2と計算される。
【0081】
次に、でんぷん試料について、引張強度と固形分級との関係を確立する。引張強度と固形分級のデータをグラフにプロットする(固形分級は、コンパクトの調製中に圧縮力が増すにつれて大きくなる)、又は回帰分析することにより、行うことができる。この関係から、固形分級の標準値での引張強度が見積られる。選ばれる標準値は、例えば0.8のように所望の徐放錠の代表的な値である。
【0082】
コンパクト材料がアルファー化でんぷんである場合に、すぐ上で述べた簡便試験で測定される引張強度は、前記の3軸引張強度試験方法、すなわち、これは、Hiestand
& Smith(1984)により開示された技術における周知の方法と本質的に類似しているが、によって決定される「真」の引張強度測定値に驚くべきことに近似していることが判かる。
【0083】
本発明の試験方法において、例えば90秒のような長い滞留時間は、例えば4秒のような非常に短い滞留時間よりも、3軸引張強度とよりよい相関関係をもたらす。以下の実施例1及び図1、2を参照。
【0084】
次に、本発明の1つの具体例を挙げれば、親水性ポリマー及びでんぷんを含有するマトリックス中に分散された、約10mg/ml以上の溶解度を有する活性薬剤を含有する徐放経口送達錠に使用するためのでんぷんの適合性を決定する方法が提供される。その方法は、次のステップを含む。すなわち、
(a)少なくとも約4秒の滞留時間で加えられる一定のレンジの圧縮力で自動錠剤プレス上で、上記でんぷんの試料のコンパクトを調製し;
(b)上記コンパクトをクラッシュするために必要な力として表わされる各コンパクトの硬度を計測し;
(c)上記各コンパクトの固形分級を計測し;
(d)次式
σT=2F/πDH
(ここで、Fはクラッシュを引き起こすに必要な力であり、Dはコンパクトの直径であり、そひてHはコンパクトの厚さである。)
から上記各コンパクトの引張強度σTを計算し;
(e)上記コンパクトの引張強度対固形分級の関係を、例えば、これらのパラメータをグラフ上にプロットする及び/又は回帰分析することにより求め;次いで、
(f)ステップ(e)で求めた関係を用いて、所望の徐放錠の代表的な引張強度、例えば固形分級0.8を推定する。
【0085】
このようにして推定された引張強度が少なくとも約0.15kNcm-2ならば、当該でんぷんは上記使用に好適なものと考えられる。
【0086】
特に好ましいでんぷんは、所望の徐放錠の代表的な固形分級において少なくとも約0.175kNcm-2、さらにより好ましくは少なくとも約0.2kNcm-2の引張強度を有する。市販のアルファー化でんぷんの中で、本発明の組成物中に使用できる好ましいでんぷんとしては、かなりの種類のものが上記引張強度中に存在する。本発明で確立した引張強度基準に合致しないアルファー化でんぷんは、例えば上で開示した方法により、試験を実施しなければ容易には区別されない。
かかるアルファー化でんぷんは、以下のように直ちに溶解してしまうという問題があるため、一般的に、水溶性ドラッグ又はプロドラッグの徐放マトリックス錠の市販品としては不適当である。
【0087】
非被覆錠又はコーティング前の錠核は、でんぷんと、水溶性ドラッグ又はプロドラッグ用のマトリックスとして働く親水性ポリマーとを含有するが、これは、高速錠剤化(容器までの全工程と容器への錠剤の充填を含む)中に負った応力による破損及び/又は浸食に耐えられるような最小硬度を有することが必要である。
最小許容硬度は応力の苛酷さを含み、多くの要因によるが、通常は、少なくとも約20SCU、好ましくは少なくとも約22SCU、より好ましくは少なくとも約24SCU(約17kp)である。
【0088】
錠剤プレスにより加えられる圧縮力を増すと、硬度は高くなるが、それもある程度までである。少なくとも、本発明で述べた錠剤の場合には、ある圧縮力以上では、圧縮力をさらに増しても錠剤硬度はほとんど高くならないか全く高くならない。言い換えれば、特定のでんぷん、親水性ポリマー、活性薬剤の圧縮により達せられる最高硬度が存在する。高速錠剤化の応力に十分に耐えられない最高硬度を有するでんぷんは、本目的には不適当である。
【0089】
図3に示すように、アルファー化でんぷんは、20SCU又はそれ以下の最高硬度を示すことが判かった。すなわち、これらは、現在、低引張強度(90秒の滞留時間を用いる本発明の試験方法によれば、0.1kNcm-2又はそれ以下)を有するでんぷんとして区別されている。
少なくとも約20SCUの最高硬度が得られさえすれば、非常に高い圧縮力を用いるだけで当該硬度が得られる低引張強度でんぷんでもよい。当該圧縮力を要求すると、速度や効率を減じ、錠剤化のコストを増やし、これらの理由から望ましくない。
【0090】
錠剤を圧縮後に更に別の工程、特にコーティング工程に供す場合には、応力の影響が非常に大きくなる。そのため、好ましい具体例としては、本発明の徐放錠を更にコーティングする。
【0091】
本発明で明記した高水溶性ドラッグ又はプロドラッグについては、親水性ポリマーマトリックスは十分な時間に渡って徐放し、1日1回の投与を可能とするには適当でない場合が多い。当該ドラッグは、胃腸液等の水性媒体に接触すると親水性マトリックスから直ちに浸出すると考えられる。そのため、錠剤の周りを徐放制御コーティングして、ドラッグの徐放工程を更に遅延させることが望ましい。かかるコーティング層は、通常は、エチルセルロース等の疎水性又は難水溶性ポリマー成分を、HPMC等の親水性又は水溶性細孔形成成分と一緒に含有する。
【0092】
錠剤の代表的な固形分級(例えば、約0.75〜0.85)において少なくとも約0.15kNcm-2、好ましくは少なくとも約0.175kNcm-2、より好ましくは約0.2kNcm-2の引張強度を有するでんぷんが使用されている場合に、当該組成物は、錠剤を徐放制御層でコーティングする工程を含む高速錠剤化に特に適合することが見出されている。
【0093】
徐放コーティング層成分としてエチルセルロース及びHPMCの代わりに、他のセルロースポリマー(例えば、メチルセルロース、ハイドキシプロピルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースアセテート等のセルロースエステル)、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、アクリル酸とメタクリル酸及びそのエステルのポリマーやコポリマー、ポリエチレングリコール、カラギーナン及び他のガム等が含まれる。
【0094】
徐放制御層は、存在するとしたら、通常錠剤全体の約1〜15重量%、好ましくは約2.5〜10重量%を占める。疎水性又は水難溶性成分は、好ましくはエチルセルロースを含み、錠剤全体の約1〜10重量%、好ましくは約2〜7%を占める。
【0095】
細孔形成成分としては、好ましくはHPMCを含むが、通常は水難溶性又は疎水性成分の約5〜50重量%、好ましくは約10〜40重量%存在する。
【0096】
コーティングは、もし存在するならば、更に可塑剤、染料等の薬学的に許容される賦形剤を任意に含んでもよい。とりわけ、錠核の約2.5〜5重量%の量の徐放制御層(すなわち、コーティングを除いた錠剤重量)は、エチルセルロース系材料(例えば、コロルコン社のシュアリース[Surelease(登録商標)]及びHPMC系材料(例えば、コロルコン社のオパドライ[Opadrys(登録商標)]を、約3:1〜4:1の重量比で含有する。
【0097】
徐放制御層又はコーティングは、活性薬剤の徐放速度をできるだけ最適にコントロールするために一定の厚さが使用される必要がある。
【0098】
その他、あるいは上記に加えて、本発明の徐放錠は非機能性コーティングを含む。非機能性コーティングは、例えばHPMC等のポリマー成分を、必要ならば例えば1つ以上の可塑剤、着色剤等と共に含んでもよい。本文脈において「非機能性」の語は、錠剤の徐放特性に実質的な影響を与えないことを意味し、コーティングが有用な目的を何ら持たないことを示唆するものではない。
【0099】
例えば、かかるコーティングは、錠剤に特殊な表面を付与し、パッキングや輸送中の浸食から保護し、嚥下を容易にする他、他の利点も有する。非機能性コーティングは、錠剤を完全に被覆するに十分な量が使用され、通常、錠剤全体の約1〜10重量%、好ましくは約2.5〜5重量%が好適である。
【0100】
非被覆錠剤及び本発明のコーティング錠の核は、上述のでんぷん及び親水性ポリマー成分に加えて、任意に1以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。かかる賦形剤は、滑沢剤及び潤滑剤に制限されない。当該分野で知られている他の慣用的な賦形剤も含まれる。
【0101】
滑沢剤は錠剤化の前及び錠剤化中に粉体流動性を向上させ、ケーキングを減じるために使われる。好適な滑沢剤は、コロイド状二酸化ケイ素、マグネシウムトリシリケート、粉末セルロース、でんぷん、タルク、三塩基カルシウムホスフェート等を含む。1つの具体例としては、コロイド状二酸化ケイ素は、滑沢剤として、錠剤中約2重量%まで、好ましくは約0.2〜0.6重量%含まれる。
【0102】
潤滑剤は、例えば上穿孔面に付着(「引き抜き」)又は下穿孔面に付着(「接着」)しないようにすることによって、成形に使われた容器から錠剤の取り出しを容易にするのに使われる。
【0103】
好適な潤滑剤は、マグネシウムステアリレート、カルシウムステアリレート、キャノラ油、グリセリルパルミトステアリレート、水素化植物油、マグネシウムオキサイド、鉱物油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ポリビニル、アルコール、ナトリウムベンゾエート、ナトリウムラウリルサルフェート、ナトリウムステアリルフマレート、ステアリン酸、タルク、亜鉛ステアリレート等を含む。1つの具体例を示すと、マグネシウムステアリレートは、潤滑剤として、錠剤中約0.1〜1.5重量%、好ましくは約0.3〜1重量%含まれる。
【0104】
錠剤はいかなる大きさであってもよく、また、例えば丸型、楕円型、多角形型又は枕型のいずれの形でもよい。特にコーティング錠の場合には、そのまま飲み込めるように設計されていることが好ましく、そのため、通常は切り込み線を入れない。
【0105】
本発明の錠剤は、例えば、用量や投与処方、逆処方、注意、ドラッグの併用による作用及び副作用等の適切な情報を付与する包装折り込みビラと併せて容器に包装することができる。
【0106】
本発明では、約10mg/ml以上の溶解度を有する活性薬剤が処方されている症状又は疾患を有する患者の治療方法も提供される。この方法は、徐放医薬組成物を、親水性ポリマーと、錠剤の代表的な固形分級において少なくとも約0.15kNcm-2の引張強度を有するでんぷんとを含有するマトリックス中に分散された薬剤を含む錠剤として経口投与することを含む方法である。好ましくは、当該組成物は1日に1回以上投与しない。
【0107】
1つの具体例を示すと、当該症状又は疾患は、本発明で定義したCNS症状又は疾患であり、当該薬剤はCNS剤である。CNS症状又は疾患は、神経医学及び/又は精神医学的要素を有する症状又は疾患を含む。
【0108】
本発明の方法により治療し得る代表的なCNS症状又は疾患は、例えば、偏執症、分裂病質、精神分裂型、二極性の、大げさな、妄想性の、自己陶酔性の、感情不安定の精神病的人格障害及び社会病質人格障害を含む人格障害;病的ギャンブル、窃盗、抜毛狂等の習慣性及び衝動的障害;強迫観念障害;消極的・挑戦的障害;急性・一時的精神障害;うつ病;分裂情動性障害;心気症;循環症;気分変調;躁うつ病;大うつ病性障害;治療耐性障害;大人と子供の初期精神分裂症;オピオイド、麻薬、バルビタール酸塩、アルコール、ベンゾジアゼピン、アンフェタミン、コカイン、カンナビノイド、幻覚剤、刺激剤、ニコチン(タバコ)及び溶剤の悪用、乱用、常用、依存を含む薬物依存;引き込もり混乱状態、憂うつ及び薬物依存に関連した精神障害;性的衝動自発抑制障害、性的嫌悪又は性的回避及び勃起障害を含む性機能障害;性同一性障害;性的嗜好障害;一般的不安症;社会的不安症;不安症とうつ病の混在障害;注意欠如過敏障害(ADHD)及びそれに関連するうつ病と不安症;精神発達の遅延に関連するうつ病、不安症及び心身障害;自閉症、アスペルゲル症候群及びレット症候群を含む発達障害;幼児行為と愛着障害;月経前の発育障害;分娩後のうつ病;社会的恐怖、広所恐怖及び病院、注射、放血等に関連した特定の恐怖を含む恐怖症;外傷後のストレス障害;分娩後分裂症;ブリケット症候群;うつ病、二極性障害及び再発性うつ病を含む情動障害;頭部の損傷、頭蓋内塊、脳卒中等から起こる脳損傷又は脳機能障害器質的憂うつ不安症及び感情不安定障害;慢性疲労;ストレスからくる精神病性エピソード;早老痴呆、ピック病、血管性痴呆、多発性硬化症、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病に関連した痴呆、HIV関連痴呆を含む痴呆症;パーキンソン病及びハンチントン病を含む他の神経性障害;自殺行為;拒食症、大食症及び過食性障害を含む摂食障害;適応障害;身体性障害;身体性自律神経機能疼痛;身体型疼痛障害;不安発作;パニック障害;記憶喪失;神経障害性疼痛;線維筋肉痛;片頭痛;てんかん;耳鳴り;遺尿症;不眠症、睡眠過剰、ナルコレプシー(narcolepsy)、悪夢及び夜驚症を含む睡眠障害;精神錯乱;脳震盪後症候群;多発性硬化症;震え;筋肉けいれん;下肢静止不能症候群;レノックス・ガストー症候群;運動性及び発声障害;トゥーレット症候群;核上麻痺;シュイ・ドラガー症候群;三叉神経痛;ベル麻痺;筋萎縮性側索硬化症等の運動ニューロン病;糖尿病、感染症、不妊症、アレルギー、乾癬、喘息、高血圧、過活動膀胱、甲状腺障害、肥満症、免疫不全及び癌等の非CNS病に関連した精神身体医学的及び心理社会的状態を含む。
【0109】
特別な具体例を示すと、当該症状又は疾患は、ドーパミンD2レセプターアゴニスト治療又はSNRI治療に対する症状又は疾患であり、当該活性薬剤は、ドーパミンD2レセプターアゴニストもしくはSNRI又はそれらのプロドラッグである。現在、本発明の方法に従って使用される好ましいドーパミンD2レセプターアゴニストはプラミペキソール及びスマニトロールの塩を含む。かかるドーパミンD2レセプターアゴニストは、特にパーキンソン病の治療に有用である。現在、本発明の方法に従って使用される好ましいSNRIは、レボキセチン及び(S,S)−レボキセチンの塩を含む。かかるSNRIは、ヘルペス性神経痛及び糖尿病性神経障害を含み、特にうつ病及び神経性疼痛の治療に有用である。
【0110】
とりわけ、スマニロールの場合には、好適な日用量として、0.5、1、2、4、8、12及び24mgのスマニロールをスマニロールマレエートの形で含む。
プラミペキソールの場合には、好適な日用量として、0.375、0.5、0.75、1.0、1.5、3.0及び4.5mgのプラミペキソール ジハイドロクロリド モノハイドレートを含む。
レボキセチン又は(S,S)−レボキセチンの場合には、好適な日用量として、1、2、4、6、8及び12mgのレボキセチンをそのメシレートの形で、又は(S,S)−レボキセチンについてはそのコハク酸塩の形で含む。
【0111】
さらに具体例を示すと、本発明の組成物は、1以上の追加ドラッグ又はプロドラッグとの併用療法において投与される。ここで、「併用療法」の語は、本発明の組成物により提供される薬剤と第2の薬剤が個々に、連続して又は同時に投与され、これらの治療剤の相互作用により有益な効果が得られる治療計画を意味する。かかる有益な効果は、治療剤の薬効学的相互作用又は薬物動態学的相互作用を含むが、これらに限定されない。例えば、併用療法は、単独治療で通常投与される1剤又は2剤のより低用量投与を可能にし、高用量に関連して生ずる危険や副作用を減ずることができる。
あるいは、併用療法では、単独治療における各薬剤の通常の用量で、高い治療効果が得られる。ここで、「併用療法」とは、各々が独立した単独治療計画が偶発的にかつ付随的に連続又は同時となることがあるが、この単独治療の各々のパートとして2以上の治療剤を投与することを包含するものではない。
【0112】
本発明の組成物は、併用療法、とりわけ2次剤が1日1回投与され又は投与され得る場合に特に適している。併用療法の両成分が同時にしかも同じ頻度で投与される場合には、患者の便宜及び忍耐の点で重要な利点がある。このことは、老人患者又は記憶障害患者の場合には、特に当てはまる。
【0113】
併用療法の2つの成分が同時に投与される場合には、当該2つの成分は、別個の剤形又は副剤、すなわち単一の剤形で投与される。連続して又は別個の剤形で投与される場合には、2次剤は、好適な方法ならいかなるルートでも、薬学的に許容される剤形であればいかなる剤形でも投与できる。例えば本組成物以外の1ルート及び/又は1剤形でも投与できる。好ましい具体例としては、併用療法の両成分は単回投与で一緒に処方される。
【0114】
代表的な併用療法は、例えばレボキセチン、(S,S)−レボキセチン等のSNRIを含む本発明の組成物の1日1回投与と、例えばフルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、それらの塩等のSSRIを含む本発明の組成物の1日1回投与とを含む。
【0115】
SNRIとSSRIとの併用療法は、Forbes & Rogers(2003)、「神経学及び精神医学の進歩」7(2)、10−14に開示されている治療抵抗性うつ病に関して提案されている。すなわち、本発明によれば、かかる併用療法の両成分は、患者の忍耐が改善されるに伴い、1日に1回投与される。
【実施例】
【0116】
実施例1
アルファー化でんぷんの6つの市販品ロットの引張強度は、先述の3軸引張強度試験方法を用いて決定した。固形分級0.8の引張強度のデータを表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
アルファー化でんぷんの引張強度が、0.074〜0.323kNcm-2に渡って大きく変化していることが判かった。ロット3及び4は、引張強度の最低値を示すが、同一の製造者から入手した。ロット1、5及び6は、引張強度の最高値を示すが、別の製造者から入手した。ロット2は引張強度の中間値を示すが、さらに別の製造者から入手した。
【0119】
実施例2
アルファー化でんぷんの同一の6ロットの引張強度は、次の簡易試験方法により決定した。
【0120】
各々のでんぷんロットのコンパクトは、10/32インチ(0.7cm)平面状ツーリングが取り付けられたカルバー(Carver)プレス、モデル3888.1DT0000で、4〜90秒の滞留時間に1000、1500、2000及び3000
1bf(4.45、6.67、8.90及び13.34kN)の圧縮力をかけて調製した。
【0121】
同一の製造者からロット3及び4として入手した、アルファー化でんぷんのさらに別の3ロット(ロット7、8及び9)のコンパクトは、滞留時間90秒ちょうどで調製した。
各コンパクトの重さと厚さは、(ツーリングの直径と等しい直径)と測定され、これにより見掛け密度の計算が可能となった。各でんぷんロットの絶対密度は、ヘリウムガス
ピコノメトリーにより測定した。固形分級は、見掛け密度の絶対密度に対する比として計算した。
【0122】
各コンパクトの硬度(クラッシュを起こすための力)は、Key HT500硬度テスターを用いて決定した。引張強度は、この力より計算し、コンパクトの大きさは、次式により計算した。
σT=2F/πDH
【0123】
回帰分析により、各ロットの引張強度対固形分級の関係を決定し、標準固形分級0.8での引張強度を計算した。データを表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
4秒の滞留時間(当該実施例)を用いて簡易試験により測定された引張強度と、実施例1の3軸テスト方法により測定された引張強度との関係を、図1にグラフとして示す。
【0126】
90秒の滞留時間(当該実施例)を用いて簡易試験により測定された引張強度と、実施例1の3軸テスト方法により測定された引張強度との関係を、図2にグラフとして示す。
【0127】
両滞留時間において強い相関関係を示したが、当該関係は90秒の滞留時間を用いた簡易試験の場合に特に近似した。本発明で述べた簡易試験は、でんぷんロットが本発明の徐放錠の調製に好適であるかを予測する目的で、でんぷんロットの引張強度の推定に使用可能であると結論できる。
【0128】
実施例3
スマニロールマレエート徐放錠は、表3に示す組成で調製した。1mg当たりの錠強度はスマニロール塩基として表わされる。
【0129】
【表3】

【0130】
潤滑剤(マグネシウム ステアレート)を除く全成分は、固まりを除くためふるいにかけ、24rpmで作動する低剪断ミキサーで10〜30分間全体を混合した。
【0131】
次に、潤滑剤をミキサーにふるい入れ、成分を更に2〜5分間混合した。得られた潤滑剤混合物は、キリアン(Kilian)S100錠剤装置を用いて、枕型錠350mgに圧縮した。
【0132】
実施例4
実施例3の錠剤と同様な錠剤は、実施例1及び2でテストしたアルファー化でんぷんのロット1〜6を用いて調製した。各アルファー化でんぷんロットを用いて得られる錠剤の最高硬度を計測した。
【0133】
最高硬度は、使用したアルファー化でんぷんロットの引張強度と相関関係を示した。この引張強度は90秒の滞留時間を用いて実施例2の簡易試験で測定されたものである。結果を図3に示す。相関関係はほぼ直線的であった。
【0134】
次の試験では、異なった硬度の錠剤をコーティングの核として用い、高速コーティング中の耐侵食性について試験した。少なくとも約24SCU(約17kp)の硬度を有する錠核は、耐侵食性であることが判明した。図3に示すように、この硬度は、少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて得られる。
ロット3及び4のアルファー化でんぷんは、約0.15kNcm-2未満の引張強度を示し、約20SCU(約14kp)以下の最高硬度をもつ錠剤を提供するので、好適ではなかった。
【0135】
実施例5
プラミペキソール ジハイドロクロリド徐放錠は、表4に示す組成で調製した。
【0136】
【表4】

【0137】
実施例3で述べた方法により、少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて錠剤を調製した。
【0138】
実施例6
プラミペキソール ジハイドロクロリドの被覆徐放錠は、表5に示す組成で調製した。
【0139】
【表5】

【0140】
少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて実施例5と同様にして錠核を調製した。
【0141】
コーティング溶液は以下のようにして調製した。オパドライ(Opadry)(登録商標)HPMC系材料6.004gを水106.682gに加え、45分間混合し、HPMC混合物を得た。次いで、シュアリース(Surelease)(登録商標)エチルセルロース系材料72.045gをこのHPMC混合物に加え、さらに30分間混合し、コーティング溶液を得た。
【0142】
コーティング溶液は、錠核に対し3重量%増加する量を用いた。得られた被覆錠は、12インチ(約30cm)ベクター(Vector)LCDS又は24インチ(約60cm)トーマスアクセラコータ(Thomas Accela−Coata)コーティングパンを用いて、少なくとも約70℃の床温度で約15分間養生した。養生後、温度を約8分間で下げ、約45℃の温度とした。
【0143】
実施例7
プラミペキソール ジハイドロクロリドの被覆徐放錠は、表6に示す組成で調製した。
【0144】
【表6】

【0145】
錠核は実施例5と同様にして、少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて調製した。
コーティング溶液は、次のようにして調製した。オパドライ(登録商標)HPMC系材料4.801gを水103.041gに加え、45分間混合してHPMC混合物を得た。次いで、シュアリース(登録商標)エチルセルロース系材料をこの混合物に加え、さらに30分間混合し、コーティング溶液を得た。
【0146】
実施例6と同様にして、錠核に対し3重量%増のコーティング溶液を用い、被覆錠を養生した。
【0147】
実施例8
プラミペキソール ジハイドロクロリドの被覆錠は、表7に示す組成で調製した。
【0148】
【表7】

【0149】
錠核は、実施例5と同様にして、少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて調製した。
コーティング溶液は、次のようにして調製した。オパドライ(登録商標)HPMC系材料10.003gを水177.737gに加え、45分間混合してHPMC混合物を得た。次いで、シュアリース(登録商標)エチレンセルロース系材料をこの混合物に加え、さらに30分間混合し、コーティング溶液を得た。
【0150】
実施例6と同様にして、錠核に対し3重量%増のコーティング溶液を用い、被覆錠を養生した。最初の養生後、コーティングをくり返して全体で約5重量%の錠剤を得、少なくとも約70℃の床温度で約15分間養生した。養生後、温度を約8分間に渡って下げ、約45℃の温度とした。
【0151】
実施例9
プラミペキソール ジハイドロクロリド被覆錠は、表8に示す組成で調製した。
【0152】
【表8】

【0153】
実施例5と同様にして、少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて錠核を調製した。
コーティング溶液は、次のようにして調製した。オパドライ(登録商標)HPMC系材料8.002gを水171.735gに加え、45分間混合してHPMC混合物を得た。次いで、シュアリース(登録商標)エチルセルロース系材料をこの混合物に加え、さらに30分間混合し、コーティング溶液を得た。
【0154】
実施例8と同様にして、錠核に対し5重量%増のコーティング溶液を用い、被覆錠を養生した。
【0155】
実施例10
各実施例5、6及び9のプラミペキソール ジハイドロクロリド錠0.375mgの溶解プロファイルは、次条件に従い、標準in
vitro USP溶解アッセイで評価した。USP装置1を使用し、溶解媒体(pH6.8の0.05Mリン酸緩衝液900ml)を100rpmの回転速度、温度37℃で撹拌した。
【0156】
データを図4に示す。実施例5の非被覆錠と、25%の細孔フォーマーを含有した3%コーティング層を有する実施例6の錠剤は、非常に似近した溶解プロフィルを示した。しかしながら、厳密な試験をすると、実施例5の非被覆錠は、1時間及び2時間のサンプリングタイムでの溶解率が高く、実施例6の被覆錠に比べて初期溶解が速いことが判かるだろう。
例えば、1時間のサンプリングタイムでは、実施例5の非被覆錠は、15%の溶解度を示したが、実施例6の被覆錠は11%の溶解度しか示さなかった。同様に2時間では、実施例5の非被覆錠は、24%の溶解度を示したが、実施例6の被覆錠は20%以下の溶解度を示した。
【0157】
20%の細孔フォーマーを含有した5%コーティング層を有する実施例9の錠剤の溶解度は、実施例5又は実施例6のいずれの錠剤と比べても、遅い溶解プロファイルを示した。
【0158】
実施例11
(S,S)−レボキセチン スクシネート徐放錠は、表9に示す組成で調製した。各錠剤は、(S,S)−レボキセチン塩基4mgと等価な(S,S)−レボキセチン スクシネート5.5mgを含有することが判かる。
【0159】
【表9】

【0160】
実施例3に記載の方法により、少なくとも約0.175kNcm-2の引張強度を有するアルファー化でんぷんを用いて錠剤を調製した。
【0161】
実施例12
実施例11の(S,S)−レボキセチン錠4mgの溶解プロファイルは、次条件に従い、標準in
vitro USP溶解アッセイで評価した。USP装置2を使用し、溶解媒体(pH6.8の0.05Mリン酸緩衝液1リットル)を、回転速度50rpm及び温度37℃で撹拌した。次いで、媒体をろ過し、試料をUV検知器で分析した。データを図5に示す。全重量100mgの錠剤は、最も速い溶解度を示し、全重量400mgの錠剤は、最も遅い溶解度を示した。全重量200mgの錠剤は、中間の溶解速度を示した。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は、(実施例1に記載の)4秒の滞留時間を用いる本発明の試験方法によって決定されたアルファー化でんぷんのロットの引張強度と、3軸引張強度との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、(実施例1に記載の)90秒の滞留時間を用いる本発明の試験方法によって決定されたアルファー化でんぷんのロットの引張強度と、3軸引張強度との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、アルファー化でんぷんのロットの引張強度と、これらのロットを含有する錠剤の最高硬度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例10で詳述した3種のプラミペキソール ジハイドロクロリド モノハイドレート0.375mgの徐放錠のin vitroによる溶解プロファイルを示す図である。
【図5】図5は、実施例12で詳述した3種の(S,S)−レボキセチン スクシネート4mgの徐放錠のinvitroによる溶解プロファイルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10mg/ml以上の溶解度を有する活性薬剤を含む徐放経口送達錠に使用するためのでんぷんの適合性を決定する方法であって、以下のステップ
(a)自動錠剤プレス上で、少なくとも約4秒の滞留時間で加えられる一定のレンジの圧縮力で上記でんぷん試料のコンパクトを調製し;
(b)上記コンパクトをクラッシュするために必要な力として表わされる各コンパクトの硬度を計測し;
(c)上記各コンパクトの固形分級を測定し;
(d)次式
σT=2F/πDH
[式中、Fは、クラッシュを引き起こすために必要な力であり、Dはコンパクトの直径であり、そしてHはコンパクトの厚さである。]
から各々のコンパクトの引張強度σTを計算し;
(e)上記コンパクトの引張強度対固形分級の関係を求め;そして
(f)上記関係を用いて、所望の徐放錠剤の代表的な固形分級における引張強度を推定する;
を含み、
ここで、上記のように推定された引張強度が少なくとも約0.15kNcm-2である場合、当該でんぷんを上記使用に好適なものとする前記方法。
【請求項2】
活性薬剤であるプラミペキソール又はその塩を含む、経口送達錠剤の形態にある徐放医薬組成物の製造方法であって、好適な試験により当該錠剤に代表的な固形分級において少なくとも0.15kNcm-2の引張強度を有するでんぷんを選択し;当該選択したでんぷんを親水性ポリマー及びプラミペキソール又はその塩と混合して、当該ポリマーと当該でんぷんを含むマトリックス中に当該薬剤が分散された混合物を得;そして当該混合物を圧縮して前記錠剤に形成する、ことを含む前記方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−185051(P2009−185051A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97049(P2009−97049)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願2004−524874(P2004−524874)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(304048436)ファルマシア コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】