説明

レボドパの肺送達

ある局面において、本発明は、患者の気道に約90重量パーセント(wt%)を超えるレボドパを含む粒子を投与することを含む、パーキンソン病を患う患者の治療方法に関する。該粒子は、患者の肺系、好ましくは肺胞または深肺に送達される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年3月20日に提出した米国特許仮出願60/366,471号の利益を主張する。前記出願の全ての教示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
パーキンソン病は、基底核中のドパミンニューロンの変性により神経病理学的に、そして消耗性の震え、動作の緩慢および平衡性の問題により神経学的に特徴づけられる。パーキンソン病を患う人は100万人を超えると推定される。ほとんど全ての患者は、ドパミン前駆物質レボドパまたはL−ドパを、しばしばドパ−デカルボキシラーゼインヒビター、カルビドパ(carbidopa)と組み合わせて受けている。L−ドパは、パーキンソン病の徴候をこの病気の初期の段階で適切に抑える。しかしながら、これは、この疾患の過程において、数ヶ月〜数年の間の期間後に効力を失う傾向がある。
【0003】
パーキンソン病患者におけるL−ドパの様々な効力は、少なくとも部分的には、L−ドパの血中濃度半減期に関連しており、これは極めて短い傾向にあり、カルビドパを同時に投与した場合でも1〜3時間の範囲である。この疾患の初期段階では、この要因は、標的となる線条ニューロンのドパミン蓄積能により緩和される。L−ドパは、ニューロンにより吸収され、蓄積され、時間がたてば放出される。しかしながら、この疾患が進行するにつれて、ドパミン作用ニューロンが変性し、ドパミン蓄積能が低減する。したがって、L−ドパの陽性作用は、L−ドパの血漿レベルの変動にますます関連する。また、患者は、L−ドパの胃内容排出および貧弱な腸での吸収を含む問題を抱える傾向がある。患者は、血漿レベルが一次的にL−ドパ投与後に一時的に高く増大する場合のいわゆる運動障害から血漿が低下する場合の典型的なパーキンソン病の症状に戻るまでの、パーキンソン病の徴候の極めて顕著な規則的変動を示す。
【0004】
疾患が進行するにつれて、従来のL−ドパ治療は、かなり頻繁であるが、より低い投与量のスケジュールを含む。多くの患者は、たとえば、2〜3時間毎にL−ドパを受ける。しかしながら、L−ドパの頻繁な投与でさえ、パーキンソン病の徴候を抑えるには不十分であることがわかっている。また、それらは患者にとって都合が悪く、しばしばノンコンプライアンスを生じる。
【0005】
1日に6〜10倍のL−ドパ用量を用いても、血漿L−ドパレベルは危険なまでに低下し得、患者はかなり重篤なパーキンソン病の徴候に直面することもわかっている。これが発生した場合、脳ドパミン活性を急速に増加するために追加のL−ドパが干渉治療として投与される。しかしながら、経口的に投与される治療は、いたずらに患者が苦しむ間の約30〜45分の初期の期間に関連する。また、正規に予定された容量と複合した干渉治療の効果は、入院を必要とし得る過剰投与を引き起こす。たとえば、皮下投与されるドパミンレセプターアゴニスト(アポモルヒネ)は、しばしばドパミンで誘導される吐き気を抑えるために局所作用ドパミンアンタゴニスト、たとえば、ドンぺリドンを必要とし、不都合で、かつ侵襲的である。
【0006】
したがって、従来の治療と少なくとも同じ効果があり、また上記の問題を最小にするもしくは解消した、パーキンソン病に罹患している患者を処置する方法が必要とされている。
【0007】
発明の要約
本発明は、中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法に関する。より具体的には、本発明は、パーキンソン病を処置するのに適切な薬剤、たとえばレボドパを肺に送達するための粒子および方法に関する。
【0008】
一つの面において、本発明は、患者の気道に約90重量パーセント(wt%)を超えるレボドパを含む粒子を投与することを含む、パーキンソン病を患う患者の治療方法に関する。該粒子は、患者の肺系、好ましくは深肺の肺胞領域に送達される。
【0009】
本発明の一つの態様において、前記粒子は、また、非還元糖、たとえば、トレハロース、および任意に塩、たとえば、塩化ナトリウム(NaCl)を含む。
【0010】
本発明の別の態様において、前記粒子は、また、リン脂質、たとえば、DPPC、またはリン脂質の組み合わせ、および任意に塩、たとえば、NaClを含む。
【0011】
本発明は、高い含有量(たとえば、約90wt%を超える)のL−ドパを有する噴霧乾燥粒子の調製方法にも関する。該方法は、水溶液を形成するためにL−ドパ、トレハロース、NaClおよび水を組み合わせ、有機溶液(たとえば、エタノール)を調製し、該水溶液と有機溶液を混合して液体供給混合物を形成し、液体供給混合物を噴霧乾燥し、それにより噴霧乾燥粒子を形成することを含む。
【0012】
本発明は、少数の工程で、好ましくは1回の呼吸活性化工程でL−ドパの治療用量を肺系に投与する方法にも関する。本発明は、少数の呼吸で、好ましくは1回の呼吸でL−ドパの治療用量を肺系に投与する方法にも関する。
【0013】
本発明は、多くの利点を有する。本発明の粒子は、全ての段階のパーキンソン病を処置するのに、たとえば、この疾患の治療技術を前進する、ならびに緊急治療を提供するのに有用である。前記粒子は、高含有量のL−ドパを有し、したがって、所定の吸入カプセルに含まれ、投与され得る薬剤の量は、増加され、それにより、臨床的に有効な投与量を送達するのに必要とされる呼吸の数を低減する。本発明の方法は、乾燥、非粘着性粒子を高収率で形成し、材料の損失および製造コストを最小限にする。前記粒子は、肺送達、特に深肺への送達に有用であることを示す空気力学的特性および分散特性を有する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の特徴および多の詳細は、本発明の段階または本発明の部分の組み合わせのいずれかとしてより詳しく記載され、特許請求の範囲で示される。本発明の特定の態様が図面により示され、本発明を限定するものではないことは理解されるだろう。本発明の本質的な特徴は、発明の範囲を逸脱することなく種々の態様で使用されるだろう。
【0015】
本発明は、一般に、パーキンソン病の処置方法に関する。本明細書に記載の方法及び粒子は、本明細書に記載の方法が求済治療を提供するのに特に良好に適している場合、パーキンソン病の継続中の(非求済)処置に使用することができる。本明細書で使用される場合、「求済治療」は、疾患の徴候を低減するまたは抑えるために、必要に応じて患者へ薬剤を急激に送達することを意味する。
【0016】
パーキンソン病を処置するために使用される化合物としては、レボドパ(L−ドパ)およびカルビドパが挙げられる。
【0017】
カルビドパの構造は、以下に示される:
【0018】
【化1】

【0019】
L−ドパの構造は、以下に示される:
【0020】
【化2】

【0021】
一般に、パーキンソン病の処置に投与され、本発明の方法に適し得る他の薬剤としては、たとえば、エトスクシミド、ドパミンアゴニスト(たとえば、限定されないが、カルビドパ、アポモルヒネ、ソピニロール、プラミペキソール、ペルゴリン、ブロナオクリプチン、およびロピニロール)が挙げられる。L−ドパまたは他のドパミンの前駆物質もしくはアゴニストは、処置されている患者において生物学的に活性な任意の形態または誘導体であり得る。薬剤の組み合わせも使用することができる。
【0022】
本発明の一つの態様において、前記粒子は、前記L−ドパまたは他のドパミンの前駆物質もしくはアゴニストを含む。特に好ましくは、約90重量パーセント(wt%)を超える、たとえば、少なくとも93wt%のL−ドパを含む粒子である。一つの態様において、前記粒子は、少なくとも95wt%のL−ドパを含む。別の態様において、非還元糖の存在または塩の存在は、本明細書で記載されるように、好ましい特徴を維持しながら、L−ドパのより低いwt%を促進する。L−ドパのwt%は、約75wt%、または約50wt%、約20wt%まで低くし得る。
【0023】
さらなる態様において、本発明の粒子は、また、1以上のさらなる成分を、一般には、10重量パーセント未満の量で含むことができる。
【0024】
一つの態様において、さらなる成分は、非還元糖、たとえば、特に限定されないが、トレハロース、スクロース、フルクトースである。トレハロースが好ましい。非還元糖の組み合わせも使用することができる。本発明の粒子中に存在する非還元糖(たとえば、トレハロース)の量は、一般に、10wt%未満であり、たとえば、限定はないが、8wt%未満、または6wt%未満である。
【0025】
本発明の特定の解釈に執着することを望まないが、非還元糖は、たとえば、ラクトースを還元している糖と潜在的に反応することができる化学基(たとえば、アミン基)を有するL−ドパなどの薬剤の安定性を増強すると考えられる。
還元糖よりも非還元糖の存在が、他の生物活性剤または薬剤(たとえば、カルビドパ、エピネフリンおよび他のカテコールアミンなど)を含む組成物のためにもなり得ることがさらに考えられる。
【0026】
別の態様において、本発明の粒子は、L−ドパに加えて、1以上のリン脂質を含む。リン脂質の具体例としては、限定されないが、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。本発明の粒子に存在するリン脂質(たとえば、DPPC)の量は、一般に、10wt%未満である。
【0027】
リン脂質またはその組み合わせおよび所望の放出特性を有する粒子の調製方法は、代理人整理番号2685.1012-004で2001年2月23日に提出された「乾燥粉末製剤からの放出の調節(Modulation of Release from Dry Powder Formulations)」と題する米国出願第09/792,869号に記載され、これは代理人整理番号2685.1012-001で2000年8月23日に提出された「乾燥粉末製剤からの放出の調節(Modulation of Release from Dry Powder Formulations)」と題する米国出願第09/644,736号の一部継続出願であり、両者は、1999年8月25日に提出された「マトリックス転移を制御することによる乾燥粉末製剤からの放出の調節(Modulation of Release From Dry Powder Formulations by Controlling Matrix Transition)」と題する米国特許出願第60/150,742号の利益を主張する。3つ全ての出願の内容は、参考としてその全体が本明細書中に援用される。
【0028】
任意に、前記粒子は、非還元糖またはリン脂質に加えて、少量の強電解質の塩、限定はされないが、塩化ナトリウム(NaCl)などを含む。使用され得る他の塩としては、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。一般に、前記粒子中に存在する塩の量は、10wt%未満、例えば、少なくとも5wt%未満である。
【0029】
90重量%を超える薬剤、たとえば、L−ドパを含有する粒子は、該粒子の表面上に局部電荷を有し得る。粒子の表面上のこの静電気は、粒子が望ましくない方法で機能する原因となる。たとえば、静電気の存在は、粒子が噴霧乾燥チャンバーの壁やスプレードライヤーから導入されるに導管に固着したり、バグハウス内に固着したりする原因となり、それにより、得られる収率パーセントが有意に低減する。さらに、静電気は、カプセル系システムに設置された場合、粒子が塊になる原因となる傾向があり得る。これらの塊を分散することは、困難であり得、このことは乏しい放出用量、乏しい微粒子画分、または両方により明らかにされる。さらに、粒子の充填は、また、静電気の存在により影響を受け得る。密接に近接した電荷様を有する粒子は、互いに反発して粉末ベッドにおいて隙間を残す。これは、所定の質量の、静電気を持たない同じ粉末よりも大きな場所をとる、所定の質量の、静電気を持つ粒子を生じる。このため、これは、一つの容器に送達され得る上限の用量を制限する。
【0030】
本発明の特定の解釈に執着することを望まないが、NaClなどの塩は、可動な対イオン源を提供すると考えられる。表面に局所帯電領域を有する粒子への小さい塩の添加は、表面上の帯電領域に関連する可動な対イオン源を提供することにより、最終粉末に存在する静電気の量を低減するだろう。それにより、製造される粉末の収率は、粉末凝集を低減し、微粒子画分(FPF)および粒子の放出量を改善し、より大量の粒子を一つの容器に詰め込むことができる。表1に示されるように、L−ドパおよび、トレハロースまたはDPPCのいずれかを、塩化ナトリウムに加えて含有する粒子は、約50〜60倍の収率の増大を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表2は、微粒子画分ならびにL−ドパおよび、トレハロースまたはDPPCのいずれかを含有する粒子の放出量における塩化ナトリウムの効果を示す。
【0033】
【表2】

【0034】
前記の塩の効果は、L−ドパよりも他の生物活性剤を含む組成物に役立つことが考えられる。かかる生物活性剤の例としては、限定されないが、カルビドパ、
エピネフリン、アルブテロール、他のカテコールアミン、サルメテロール、ロピニロールおよびピロキシカンが挙げられる。さらに、90%以下の生物活性剤、たとえば、L−ドパを含む組成物は、また、前記のような塩を添加することによって利益を得る。
【0035】
本発明の粒子は、界面活性剤を含有することができる。本明細書中で使用される場合、用語「界面活性剤」は、水と有機系ポリマー溶液間の界面、水/空気界面または有機系溶剤/空気界面などの2つの非混和性相間の界面に優先的に吸収する任意の薬剤をいう。界面活性剤は、一般に、微粒子に吸収する際に、同様にコートされた粒子を引き付けない部分を外部環境に対して提示する傾向にあるような親水性部分および親油性部分を有し、それにより粒子の凝集が低減される。界面活性剤はまた、治療剤または診断剤の吸収を促進し得、該薬剤のバイオアベイラビリティを増大しうる。
【0036】
本発明の粒子を調製するのに使用され得る適切な界面活性剤としては、Tween20;Tween80;ヘキサデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)等の脂肪アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;グリココール酸塩;サーファクチン(surfactin) ;ポロキソマー(poloxomer) ;トリオレイン酸ソルビタン(Span85)などのソルビタン脂肪酸エステル;およびチロキサポールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
薬物の放出動力学を促進して速くする他の材料もまた、用い得る。例えば、生体適合性の、および好ましくは生物分解性のポリマーを用い得る。かかる多量体材料を含有する粒子は、1999年2月23日にEdwardsらに発行された米国特許第5,874,064号に記載されており、その教示は本明細書中に参照によって全体が援用されている。
【0038】
粒子はまた、例えばデキストラン、多糖、ラクトース、シクロデキストリン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、脂肪酸、無機化合物、リン酸塩のような材料を含み得る。
【0039】
本発明の粒子は、肺系へのL-ドパの送達に適している。気道に投与される粒子は、上気道(中咽頭および喉頭)、その後に気管支および細気管支への分岐点に続く気管を含む下気道を通過し、最終的な呼吸領域である肺胞または深肺へと至る呼吸細気管支に順に分かれる末端細気管支を通過する。粒子は、粒子群のほとんどが深肺または肺胞に沈着するように操作され得る。
【0040】
本発明の粒子は、医薬配合物の一部として、または経口、肺、注射または他の投与様式による他の治療法と組み合わせて投与され得る。本明細書中に記載されるように、特に有用な肺の製剤は、標的の肺での沈着を補助する物理的特徴を有する噴霧乾燥粒子であり、放出プロフィールおよびバイオアベイラビリティプロフィールを最適化するために配合される。
【0041】
本発明の粒子は、肺系への薬物送達に適した組成物中で用いられ得る。例えば、かかる組成物には、患者への投与、好ましくは吸入による投与のための粒子および薬学上許容され得るキャリアが含まれ得る。
【0042】
本発明の粒子は、肺系、特に深肺へのL-ドパの送達に有用である。粒子は乾燥粉末の形態であり、微粒子画分(FPF)、幾何学的および空気力学的面積によって、および以下にさらに述べられるような他の特性によって特徴付けられる。
【0043】
カスケードインパクタを用いる重量分析(gravimetric analysis)は、空気で運ばれる粒子のサイズ分布を測定する方法である。アンダーソンカスケードインパクタ(Andersen Cascade Impactor)(ACI)は、空気力学的サイズに基づいてエーロゾルを9つの異なる画分に分離し得る8段階のインパクタである。各段階のサイズのカットオフは、ACIが作動される流速に依存する。好ましくは、ACIは60 L/分に調整される。ある態様において、粒子最適化に2段崩壊ACIが用いられる。2段崩壊ACIは8段ACIのステージ0、2およびFからなり、2つの別々の粉末画分の回収が可能である。各ステージにおいて、エーロゾルの流れはノズルを通過し、表面に衝突する。エーロゾルの流れの中の、慣性の十分大きな粒子は、プレートに衝突する。プレートに衝突するのに十分な慣性を有しないより小さな粒子は、エーロゾルの流れの中に残り、次のステージに運ばれる。
【0044】
ACIは、最初のステージで回収された粉末の画分が微粒子画分(FPF)(5.6)と呼ばれるように較正される。このFPFは、空気力学的直径が5.6 μm未満の粒子の%に相当する。ACIの最初のステージを通過し、回収フィルター上に沈着した粉末の画分は、FPF(3.4)と呼ばれる。これは空気力学的直径が3.4 μm未満の粒子の%に相当する。
【0045】
FPF(5.6)画分は、患者の肺に沈着する粉末の画分と互いに関連することが示されたが、FPF(3.4)は患者の深肺に到達する粉末の画分と互いに関係があることが示された。
【0046】
本発明の粒子の少なくとも50%のFPFは約5.6 μm未満である。例えば、粒子中のFPFの少なくとも60%、または70%、または80%、または90%は約5,6 μm未満であるが、これらに限定されない。
【0047】
空気で運ばれる粒子のサイズ分布を測定するための別の方法は、多段階液体インピンジャー(MSLI)である。多段階液体インピンジャー(MSLI)は、アンダーソンカスケードインパクタ(ACI)と同じ原理で稼動するが、8つのステージの代わりに、MSLIには5つのステージがある。さらに、固体プレートからなる各ステージの代わりに、各MSLIのステージはメタノール湿式ガラスフリット(methanol-wetted glass frit)からなる。湿式ステージはACIを用いると起こり得る垂直方向振動(bouncing)および再飛散(re-entrainment)を防ぐのに用いられる。MSLIは、粉末に依存した流速の指標を提供するのに用いられる。これは、MSLIを30、60および90 L/分で稼動することおよびステージ1および回収フィルターで回収された粉末の画分を測定することによってなされ得る。各ステージにおける画分が異なる流速の間で比較的一定のままである場合、その粉末は流速に依存していないに等しいと考えられる。
【0048】
本発明の粒子は、約0.4 g/cm3未満のタップ密度を有する。約0.4 g/cm3未満のタップ密度を有する粒子は、本明細書中で「空気力学的に軽い粒子」と呼ばれる。例えば、粒子は約0.3 g/cm3未満のタップ密度、または約0.2 g/cm3未満のタップ密度、約0.1 g/cm3未満のタップ密度を有する。タップ密度は、デュアル・プラットフォーム・マイクロプロセッサー・コントロールド・タップ密度テスター(Dual Platform Microprocessor Controlled Tap Density Tester)(Vankel、NC)またはGeoPycTM装置(Micrometrics Instrument Corp.、Norcross、GA 30093)のような、当業者に公知の装置を用いることによって測定され得る。タップ密度はエンベロープ質量密度の標準的な測定法である。タップ密度はUSPバルク密度およびタップ密度(Bulk Density and Tapped Density)の方法、米国薬局方協約(convention)、Rockville、MD、10thSupplement、4950-4951、1999を用いて測定され得る。低いタップ密度に寄与し得る特性には、不均一な表面テクスチャーおよび多孔性の構造が含まれる。
【0049】
等方性の粒子のエンベロープ質量密度は、それが封入され得る最小の球体エンベロープ体積によって分割される粒子の質量として定義される。本発明のある態様において、粒子は約0.4 g/cm3未満のエンベロープ質量密度を有する。
【0050】
本発明の粒子は、好ましいサイズ、例えば少なくとも約1ミクロン(μm)の体積メジアン幾何学的直径(VMGD)を有する。ある態様においては、VMGDは約1 μm〜30 μm、または約1 μm〜30 μmに含まれる任意の下位の範囲(subrange)であり、例えば約5μm〜約30 μm、または約10 μm〜30 μmであるが、これらに限定されない。例えば、粒子は約1 μm〜10 μm、または約3 μm〜7 μm、または約5 μm〜15 μmまたは約9 μm〜約30 μmのVMGDを有する。粒子は、少なくとも1 μm、例えば5 μmまたは約10 μm近くもしくはそれより大きいメジアン直径、質量メジアン直径(MMD)、質量メジアンエンベロープ直径(MMED)または質量メジアン幾何学的直径(MMGD)を有する。例えば、粒子は約1 μmより大きく、約30 μmに及ぶMMGDを有し、または任意の下位の範囲には約1 μm〜30 μm、例えば約5 μm〜30 μmまたは約10 μm〜約30 μmが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
噴霧乾燥粒子の直径、例えばVMGDは、レーザー回折装置(例えばSympatec、Princeton、NJ製のHelos)を用いて測定され得る。粒径を測定するための他の装置は、当該分野で周知である。サンプル中の粒子の直径は、粒子組成物および合成方法のような要因によって分布する。サンプル中の粒子のサイズの分布は、気道内の標的部位への最適な沈着を可能にするように選択され得る。
【0052】
空気力学的に軽い粒子は、好ましくは本明細書中で「空気力学的直径」とも呼ばれる、約1μm〜約5μm、または約1μm〜約5μmに含まれる任意の部分的な範囲の「質量メジアン空気力学的直径」(MMAD)を有する。例えば、MMADは約1μm〜約3μmであるか、またはMMADは約3μm〜約5μmであるが、これらに限定されない。
【0053】
実験的には、空気力学的直径は、重力沈降法を使用することにより決定され得、それにより、粒子の全体が一定の距離沈降する時間が、粒子の空気力学的直径を直接推測するのに使用される。質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を測定するための間接的な方法は多段階液体インピンジャー(MSLI)である。
【0054】
空気力学的直径、daer は、式:
【0055】
【数1】

【0056】
から算出され得る。
(式中、dgは、幾何学的直径、例えば、MMGDであり、ρは、粉末密度である)
【0057】
約0.4g/cm3未満のタップ密度、少なくとも約1μm、例えば少なくとも約5μmのメジアン直径、および約1μm〜約5μm、好ましくは約1μm〜約3μmの空気力学的直径を有する粒子は、口咽頭領域における内部沈着および重力沈着をより免れ得、気道、特に深肺に標的化される。より大きくより多孔性である粒子の使用は、現在吸入療法に使用されているもののようなより小さく、より高密度のエーロゾル粒子に比べてより効率よくエーロゾル化し得るので、有利である。
【0058】
より小さく、比較的密度の高い粒子と比較して、好ましくは少なくとも約5μmのメジアン直径を有するより大きな、空気力学的に軽い粒子はまた、食細胞のサイトゾル空間からの粒子のサイズ排除のために、肺胞マクロファージによる食作用飲み込みおよび肺からの除去を潜在的により首尾よく避けることができる。粒子直径が約 3μm を越えて増加すると、肺胞マクロファージによる粒子の食作用が急に低下する。Kawaguchi, H. ら、Biomaterials 7:61-66(1986); Krenis, L. J. およびStrauss, B.、Proc. Soc. Exp. Med.、107: 748-750(1961);およびRudt, S.およびMuller, R. H.、J. Contr. Rel.、22: 263-272(1992)。粗い表面を有する球体などの統計的に等方性の形状の粒子に関して、粒子エンベロープ容積(particle envelope volume)は、完全な粒子食作用のためにマクロファージ内に必要なサイトゾル空間の容積にほぼ等しい。
【0059】
粒子は、深肺または上気道もしくは中央気道などの気道の選択された領域への局所送達のために、適切な材料、表面の粗さ、直径およびタップ密度を用いて作製されうる。例えば、より高い密度またはより大きな粒子は、上気道送達に使用され得るか、または同じもしくは異なる治療剤で提供されるサンプル中の様々なサイズの粒子の混合物が、1回の投与で肺の異なる領域を標的化するために投与され得る。約3〜約5μmの範囲の空気力学的直径を有する粒子は、中央気道および上気道への送達に好ましい。約1〜約3μmの範囲の空気力学的直径を有する粒子は、深肺への送達に好ましい。
【0060】
エーロゾルの内部衝突および重力沈降は、通常の呼吸条件の間の気道および肺細葉における優勢な沈着機構である。Edwards, D. A.、J. Aerosol Sci.、26: 293-317(1995))。両方の沈着機構の重要性は、粒子(またはエンベロープ)容積ではなく、エーロゾルの質量に比例して増大する。肺におけるエーロゾル沈着の部位は、エーロゾルの質量により決定されるので(少なくとも、約 1μm より大きな平均空気力学的直径の粒子に対して)、粒子表面の不均一性および粒子の多孔性の増大によるタップ密度の低下は、全ての他の物理的パラメータが同じであるより大きな粒子エンベロープ容積の肺への送達を可能にする。
【0061】
タップ密度が低い粒子は、実際のエンベロープ球体直径に比べて小さな空気力学的直径を有する。空気力学的直径、daerは、式:
【0062】
【数2】

【0063】
(式中、エンベロープ質量ρは、g/cm3の単位である)
によってエンベロープ球体直径、dに関係づけられる(Gonda,I. 「エーロゾル送達における物理−化学的原理(Physico-chemical principles in aerosol delivery) 」Topics in Pharmaceutical Sciences 1991(D.J.A.CrommelinおよびK.K.Midha 編)、pp.95〜117、Stuttgart:Medpharm Scientific Publishers、1992))。ヒト肺の肺胞領域における単分散エーロゾル粒子の最大限の沈着(約60%)は、約daer=3μmの空気力学的直径について起こる。Heyder,J. ら、J.Aerosol Sci.、17:811-825(1986)。その小さなエンベロープ質量密度により、最大深肺沈着を示す単分散吸入粉末を含む空気力学的に軽い粒子の実際の直径dは:
【0064】
【数3】

【0065】
(式中、dは常に3μmより大きい)
である。例えば、エンベロープ質量密度、ρ=0.1g/cm3を示す空気力学的に軽い粒子は、9.5 μmの大きさのエンベロープ直径を有する粒子について最大沈着を示す。粒子サイズが大きくなると、粒子間接着力が低下する。Visser,J.、Powder Technology、58:1-10。従って、大きな粒子サイズは、より低い食作用損失に寄与することに加えて、エンベロープ質量密度の低い粒子に関して深肺へのエーロゾル適用の効率を高める。
【0066】
空気力学的直径は、肺内での最大沈着を提供するように算出され得る。以前は、これは直径が約5ミクロン未満、好ましくは約1〜約3ミクロンの極めて小さい粒子を用いることによって達成され、これらは次いで食作用に供される。より大きな直径を有するが十分に軽い(すなわち「空気力学的に軽い」特徴づけ)粒子の選択は、肺への等しい送達をもたらすが、より大きなサイズの粒子は食作用を受けない。粗い、または不均質な表面を有する粒子を用いることによって、滑らかな表面を有するものと比べて、改良された送達が達成され得る。
【0067】
本発明の別の態様においては、粒子は本明細書中で「質量密度」とも呼ばれる、約0.4 g/cm3未満のエンベロープ質量密度を有する。質量密度、ならびに質量密度、平均直径および空気力学的直径の間の関係は、2001年7月3日にEdwardsらに発行された、米国特許第6,254,854号で考察されており、それは全体が参照として本明細書中に援用されている。
【0068】
本発明はまた、前記組成および空気力学的特性を有する粒子を製造することに関する。この方法は、噴霧乾燥を含む。一般に、噴霧乾燥技術は、例えば、K. マスターズ(Masters)による「噴霧乾燥ハンドブック(Spray Drying Handbook)」、John Wiley & Sons、New York、1984に記載されている。
【0069】
本発明はまた、乾燥粉末組成物を調製するための方法にも関する。この方法において、第1および第2の成分が調製され、その一方は活性剤を含有する。例えば、第1の成分は水性溶媒に溶解した活性剤を含有し、第2の成分は有機溶媒に溶解した賦形剤を含有する。第1および第2の成分は直接、またはスタティックミキサーを通してのいずれかで配合され、配合物を形成する。第1および第2の成分は、それらを組み合わせることにより一方の成分の分解を引き起こすようなものである。例えば、活性剤はもう一方の成分と相容れない。かかる方法においては、相容れない活性剤は最後に添加される。配合物は、乾燥されて乾燥粒子を形成する小滴を作るために噴霧される。この方法のある側面として、噴霧処置は、成分がスタティックミキサー中で配合された後直ちに行なわれる。
【0070】
噴霧乾燥されている混合物中に存在し得る適切な有機溶媒としては、アルコール、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。他の有機溶媒としては、パーフルオロカーボン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。フィード混合物中に存在し得る水性溶媒には水および緩衝化溶液が含まれる。有機溶媒および水性溶媒は、いずれも噴霧乾燥器に送り込まれる噴霧乾燥混合物中に存在し得る。ある態様においては、エタノール/水溶媒は、約20:80〜約80:20の範囲のエタノール:水比を有することが好ましい。混合物は、酸性またはアルカリ性pHを有し得る。任意に、pHバッファーが含有され得る。好ましくは、pHは約3〜約10、例えば約6〜約8の範囲であり得る。
【0071】
乾燥粉末組成物を調製するための方法が提供される。かかる方法において、第1の相はL-ドパおよびトレハロースならびに任意に塩を含有するように調製される。第2の相は、エタノールを含有するように調製される。第1および第2の相はスタティックミキサー内で配合されて、配合物を形成する。配合物は噴霧され、乾燥されて乾燥粒子を形成する小滴を形成する。他の方法において、第1の相のみが調製されて噴霧され、乾燥されて乾燥粒子を形成する小滴を形成する。
【0072】
乾燥粉末組成物を調製するための方法が提供される。かかる方法において、第1の相はL-ドパおよび任意に塩を含有するように調製される。第2の相はエタノール中にDPPCを含有するように調製される。第1および第2の相は、スタティックミキサー内で配合されて配合物を形成する。配合物は噴霧され、乾燥されて乾燥粒子を形成する小滴を作る。
【0073】
乾燥粉末組成物を調製するための装置が提供される。装置には、入口端および出口端を有するスタティックミキサー(例えば、本明細書中に参照により援用されている米国特許第4,511,258号に、より完全に述べられているようなスタティックミキサー、または限定されないがモデル1/4-21、Koflo Corporation製のような、他の適切なスタティックミキサー)が含まれる。スタティックミキサーは、水性成分を有機成分と配合し、配合物を形成するように作動可能である。スタティックミキサーの入口端に水性成分および有機成分を輸送するための、手段が提供される。アトマイザーは、配合物を小滴に細分化するために、流体によってスタティックミキサーの出口端と連絡されている。小滴は乾燥器中で乾燥され、乾燥粒子を形成する。アトマイザーは、ロータリーアトマイザーであり得る。かかるロータリーアトマイザーは羽根なしであり得、または複数の羽根を含み得る。あるいは、アトマイザーは二液ミキシングノズルであり得る。かかる二液ミキシングノズルは、内部ミキシングノズルまたは外部ミキシングノズルであり得る。水性および有機成分を輸送するための手段は2つの分離したポンプまたは単一のポンプであり得る。水性および有機成分は、実質的に同じ速度でスタティックミキサーに輸送される。この装置はまた、乾燥粒子の幾何学的直径を測定する幾何学的粒子寸法測定機および乾燥粒子の空気力学的直径を測定する空気力学的粒子寸法測定機を含み得る。
【0074】
L-ドパ 溶液を構成する水性溶媒および有機溶媒は、直接、またはスタティックミキサーを通してのいずれかで配合される。次いでL-ドパ溶液は流速約5〜28 g/分(質量)および約6〜80 ml/分(体積測定による)でロータリーアトマイザー(アカ噴霧乾燥器(aka spray dryer))に移される。例えば、L-ドパ溶液は流速30 g/分および31 ml/分で噴霧乾燥器に移される。二液ノズルは液体溶液を分散させて細かい小滴のしぶきにし、これは以下の条件下で、加熱された乾燥空気または加熱された乾燥ガス(例えば窒素)に接触する:
【0075】
ノズル内の圧力は約10 psi〜100 psi;加熱された空気またはガスの供給速度は約80〜110 kg/時であり、噴霧流速は約13〜67 g/分(質量)および液体フィード10〜70 ml/分(体積測定による);ガス対液体比約1:3〜6:1;入口温度約90℃〜150℃;出口温度約40℃〜71℃;バグハウス(baghouse)出口温度約42℃〜55℃。例えば、ノズル内の圧力は75 psiに設定され;加熱されたガスの供給速度は95 kg/時であり;かつアトマイザーガス流速22.5 g/分および液体供給速度70 ml/分;ガス対液体比は1:3であり;入口温度は121℃であり;出口温度は48℃であり;かつバグハウス温度は43℃である。
【0076】
加熱された窒素と液体小滴の間の接触によって、液体は蒸発し、多孔性粒子が生じる。得られたガス-固体の流れは製品フィルターに送り込まれ、フィルターは細かい固体粒子を保持し、乾燥ガス、蒸発した水およびエタノールを含有する熱いガスの流れを通過させる。製剤化および噴霧乾燥パラメータが処理され、望ましい物理的および化学的特性を有する粒子を得る。他の噴霧乾燥技術は、当業者に周知である。ロータリー噴霧を用いる適切な噴霧乾燥器の一例として、Niro, Denmarkにより製造されたモービル・ニロ(Mobile Niro)噴霧乾燥器が挙げられる。熱いガスは、例えば空気、窒素、二酸化炭素またはアルゴンであり得る。
【0077】
本発明の粒子は、約90℃〜約150℃の入口温度および約40℃〜約70℃の出口温度を用いる噴霧乾燥によって得られる。
【0078】
粒子は、粒子の凝集物を減少させ、粉末の流動性を改良するために表面のきめを粗く製造され得る。噴霧乾燥粒子は、改良されたエーロゾル化特性を有する。噴霧乾燥された粒子は、乾燥粉末吸入装置によるエーロゾル化を高める特性を有するように製造され得、口、喉および吸入装置中のより下方での沈着をもたらす。
【0079】
本発明の粒子を形成するのに適した方法および装置は、代理人書類番号00166.0115-US00下で2002年3月20日に出願された「乾燥粒子製造の方法および装置(Method and Apparatus for Producing Dry Particles)」の発明の名称を持つ米国特許出願第10/101,536号の一部継続出願である、代理人書類番号00166.0115-US01下で本出願と同時に出願された「乾燥粒子製造の方法および装置(Method and Apparatus for Producing Dry Particles)」の発明の名称を持つ米国特許出願に記載される。本発明の粒子を形成するのに適した方法および装置は、代理人書類番号00166.0115-WO01下で本出願と同時に出願された「乾燥粒子製造の方法および装置(Method and Apparatus for Producing Dry Particles)」の発明の名称を持つPCT特許出願に記載される。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0080】
呼吸系への粒子の投与は、当該分野で公知のような手段によりうる。例えば、粒子は、乾燥粉体吸入器(DPI)などの吸入デバイスにより送達される。定量吸入器(MDI)、ネブライザーまたは点滴注入技術もまた使用されうる。
【0081】
患者の気道に粒子を投与するために使用されうる吸入の種々の適切なデバイスおよび方法は、当該分野で公知である。例えば、適切な吸入器が、1976年8 月5 日にValentini らに発行された米国特許第4,069,819 号明細書、1991年2 月26日にValentini らに発行された米国特許第4,995,385 号明細書、および1999年12月7 日にPattonらに発行された米国特許第5,997,848 号明細書に記載されている。適切な吸入器の他の例としては、限定されないが、スピンヘイラー(Spinhaler)(登録商標)(Fisons, Loughborough, U.K.)、ロタヘイラー(Rotahaler)(登録商標)(Glaxo-Wellcome, Research Triangle Technology Park, North Carolina)、フローキャップ(FlowCaps)(登録商標)(Hovione, Loures, Portugal)、インハレーター(Inhalator)(登録商標)(Boeringer-Ingelheim, Germany)、およびエアロライザー(Aerolizer)(登録商標)(Novartis, Switzerland)、ディスクヘイラー(Diskhaler)(登録商標)(Glaxo-Wellcome, RTP, NC) および当業者に公知の他のものが挙げられる。一態様において、使用され得る吸入器は、代理人整理番号00166.0109.US00下で2001年4月16日に出願された、David A. Edwardsらによる米国特許出願第09/835,302号、発明の名称「吸入装置および方法(Inhalation Device and Method)」および2002年10月10日に出願された、David A. Edwardsらによる米国特許出願第10/268,059号、発明の名称「吸入装置および方法(Inhalation Device and Method)」に記載されている。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0082】
粒子の肺系への送達は、2000年6月9日に出願された米国特許出願、「大きな治療用質量エアロゾールの高効率送達(High Efficient Delivery of a Large Therapeutic Mass Aerosol)」、出願番号09/591,307号、および2001年6月8日に出願された米国特許出願、「大きな治療用質量エアロゾールの高効率送達(Highly Efficient Delivery of A Large Therapeutic Mass Aerosol)」、出願番号09/878,146号に記載された方法による。これらの両方の出願の全内容は参照により本明細書に援用される。そこに開示されているように、粒子は容器中に保持され、含有され、貯蔵され、または封入される。好ましくは、容器、例えば、カプセルまたはブリスターは少なくとも約0.37cm3の容量を有し、乾燥粉末吸入器で用いるのに好適なデザインを有し得る。少なくとも約0.48cm3、0.67cm3または0.95cm3の容量を有するより大きな容器もまた使用され得る。
【0083】
また、本発明の方法は、容器に封入され得る、本発明の粒子および/または該粒子を含む組成物を被験体の気道に投与することに関する。本明細書中に記載するように、本発明は、本発明の粒子を送達する方法に関し、または、本発明は、本発明の粒子を含む呼吸に適した組成物を送達する方法に関する。本明細書中で用いる場合、用語「容器」としては、限定されるものではないが、例えば、カプセル、ブリスター、フィルム被覆コンテナウェル、チャンバおよび当業者に公知の吸入デバイス中に粒子、粉末または呼吸に適した組成物を貯蔵する他の好適な手段が挙げられる。医薬組成物を含む容器は2〜8℃で保存される。
【0084】
また、本発明は、カプセル(例えば、2、1、0、00または000のような特定のカプセルサイズで設計されたカプセル)である容器に関する。好適なカプセルは、例えば、Shionogi(Rockville, MD)から得ることができる。ブリスターは、例えば、Hueck Foils(Wall, NJ)から得ることができる。本発明で用いるのに適した他の容器および他のその容量は当業者に公知である。
【0085】
特定の実施例において、95%のL-ドパ負荷量、すなわち23.75 mg L-ドパを有する25 mg名目上粉体投与量を保持する乾燥粉体吸入器容器、例えばカプセルからの乾燥粉体が、単回呼吸で投与されうる。保守的な(conservative)4倍投与量アドバンテージに基づくと、単回呼吸で送達される23.75 mgは、経口投与に必要なL-ドパの約95 mgに相当する。かかるカプセルのいくつかを、より高い投与量のL-ドパを送達するのに用い得る。例えば、(同じ保守的4倍投与量アドバンテージを考慮して)200 mg経口投与量の代わりに使用するために、サイズ4のカプセルを50 mgのL-ドパを肺系に送達するのに用い得る。
【0086】
本発明は、さらに、少数回のステップで、好ましくは単回呼吸活性化ステップで治療投与量の医薬を肺系に投与する方法に関する。本発明はまた、少数回の呼吸で、好ましくは1または2回の単回呼吸で治療投与量の薬物を肺系に送達する方法に関する。該方法は、ある質量の粒子を有する、保持、含有、保管または封入している容器から被験体の気道に粒子を投与することを含む。
【0087】
1つの実施例において、吸入器容器に保管された粒子の質量の少なくとも80%が、被験体の呼吸系に単回呼吸活性化ステップで送達される。別の態様では、容器に封入された粒子を被験体の気道に単回呼吸で投与することにより、少なくとも1ミリグラムのL-ドパが送達される。好ましくは、少なくとも10ミリグラムのL-ドパが被験体の気道に送達される。15、20、25、30、35、40および50ミリグラム程の高量が送達され得る。
【0088】
単回呼吸活性化ステップでの粒子の肺系への送達は、例えば被験体の吸入により典型的に供給されるエネルギーなどの、比較的低エネルギーで分散される粒子を使用することにより増強される。かかるエネルギーを、本明細書では「低い」という。本明細書で使用する場合、「低エネルギー投与」は、粒子を分散および/または吸入するために負荷されるエネルギーが、被験体により吸入の際に典型的に供給される範囲内である投与をいう。
【0089】
本発明はまた、肺系に粉体粒子を効率的に送達する方法に関する。例えば、名目上粉体投与量の少なくとも約70%または少なくとも約80%が実際に送達されるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「名目上粉体投与量」は、吸入装置に使用されるものなどの容器内に保管された粉体の合計である。本明細書で使用する場合、名目上薬物投与量という用語は、名目上粉体量に含まれる医薬の合計量である。名目上粉体投与量は、粉体中の薬物の負荷パーセントによって名目上薬物投与量と関連する。
【0090】
この粒子の性質は、他の粒子が、強く吸入する能力が充分でない患者には効果がないことがわかった場合、高度に欠陥のある肺を有する患者(若年患者、高齢患者、虚弱患者、喘息または他の呼吸困難を伴う患者など)への送達を可能にする。さらに、種々の病気の併発に苦しむ患者は、単純に充分に吸入する能力が充分でない場合がある。したがって、本発明の方法および粒子を用いると、弱い吸入であっても、所望の投与量を送達するのに充分である。これは、パーキンソン病の衰弱性の病気に苦しむ患者の救難治療として本発明の粒子を使用する場合に特に重要である。
【0091】
エーロゾル用量、処方および送達系は、例えば、ゴンダ(Gonda), I.「気道への治療剤および診断剤の送達のためのエーロゾル」Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 6: 273-313, 1990; およびモレン(Moren)「エーロゾル投与形態および製剤(Aerosol dosage forms and formulations)」Aerosols in Medicine, Principles, Diagnosis and Therapy, モレンら編、Esevier, Amsterdam, 1985 に記載されているように、特定の治療適用に対して選択され得る。
【0092】
本発明の方法は、例えば、上記の医薬などの医薬の有効量を肺系に送達することを含む。本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、所望の効果または効力を達成するのに必要な量を意味する。薬物の実際の有効量は、利用される特定の薬物またはその組合せ、製剤化される特定の組成物、投与の形態、患者の年齢、体重、状態、ならびに処置対象の発現症状の重篤度により変化し得る。ドパミン前駆体、アゴニストまたはその組み合わせの場合、それは、治療を必要とするパーキンソン症状を低減する量である。特定の患者に対する用量は、本明細書に記載されており、従来の考察を用いて(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコルによる)当業者により決定され得る。例えば、経口L-ドパの有効量は、約50ミリグラム (mg)〜約500 mgの範囲である。多くの場合、一般的な現行の(経口)L-ドパ処置計画は1日8回100 mgである。
【0093】
本発明において、L-ドパ投与量の肺送達は、体重に対して標準化すると、経口投与と比べて血漿レベルおよび治療的利益において少なくとも2倍増加をもたらすことがわかった。経口投与と比べ、有意に高い血漿レベルおよび治療的利益が可能である。1つの実施例において、L-ドパの肺送達は、経口投与と比べた場合、約2倍〜約10倍の範囲の血漿レベル増加をもたらす。静脈内注射で得られるものに近いか、または同様の血漿レベルが得られ得る。
【0094】
用量を増加してもバイオアベイラビリティは同じままであると仮定すると、本発明の方法による肺送達でもたらされるものに匹敵する血漿レベルを達成するのに必要とされる経口薬、例えば、L-ドパの量は、投与後のある特定の点で決定され得る。特定の実施例において、経口投与および本発明の方法による投与後2分での血漿レベルは、それぞれ、1μg/ml L-ドパおよび5μg/ml L-ドパである。したがって、本発明の方法を用いて薬物を投与することにより得られる5μg/ml レベルを達成するためには、5回の経口投薬が必要であろう。別の実施例では、投与後120分でのL-ドパ血漿レベルは、経口投与と比較した場合、本発明の方法では2倍も高い。したがって、本発明の方法を用いて投与される量と比べると、経口投与につづく1μg/ml投与後、2倍も多くのL-ドパが必要である。
【0095】
投与後のある特定の時点である特定の薬物血漿濃度を得るのに、薬物が本発明の方法により送達される場合では、経口投与された場合よりも必要とされる薬物は少量である。一般に、従来の経口投与において使用される投与量と比べ、本発明の方法では少なくとも2倍の投与量削減を使用することができる。もっと多い投与量削減が可能である。本発明の1つの態様において、経口投与量と比べて、投与量の5倍削減が使用され、約10倍もの削減が使用され得る。
【0096】
また、静脈内投与以外の他の投与経路(例えば、筋肉内、皮下、口内、鼻腔内、腹腔内、経直腸など)と比べても、少なくとも2倍の投与量削減が使用される。
【0097】
上記の薬物動態学的効果(例えば、血清レベル、投薬量アドバンテージ)に加え、またはそれに代わり、パーキンソン病を処置するために使用される薬物、例えばL-ドパの肺送達によりもたらされる投薬量アドバンテージもまた、薬物動態学的応答により説明され得る。経口経路と比較すると、本発明の方法は、医薬の腸による適合しない取込み、食後の取込み遅滞の回避、循環中の薬物の初回通過異化作用の回避および大動脈を経由する肺から脳への迅速送達を回避する。
【0098】
好ましくは、有効量は、作用部位への血液の「初回通過」で送達される。「初回通過」は、薬物が肺から脈管系に通過する点から標的器官およびその内部に初めて薬物が血液によって運ばれた時である。一般に、L-ドパは、血流中に放出され、処置対象の患者に治療を提供するのに充分短い時間以内にその作用部位に送達される。多くの場合において、L-ドパは、約10分未満で中枢神経系に達し得、しばしば2分という早さで、それより早いことさえある。
【0099】
好ましくは、患者の症状は、数分以内に、通常1時間以内に和らぐ。本発明の1つの態様において、医薬の放出速度論は、静脈内経路により達成される薬物の速度論に実質的に類似する。本発明の別の態様では、血流中のL-ドパのTmaxは、約1〜約10分の範囲である。本明細書で使用する場合、用語Tmaxは、レベルが最大濃度に達する点を意味する。多くの場合において、本発明の方法を使用することにより得られる処置の発現は、経口送達で得られる処置の発現よりも少なくとも2倍速い。有意により速い処置の発現が得られ得る。1つの実施例において、処置の発現は、経口送達で見られるものより約2倍〜約10倍速い。
【0100】
L-ドパを肺系に送達するための粒子および方法は、2000年9月19日に提出された「中枢神経系障害の処置における肺送達(Pulmonary Delivery In Treating Disorders of the Central Nervous System)」の発明の名称の米国特許出願第09/665,252号、現在は2003年1月4日に発行された米国特許第6,514,482号明細書、および2001年6月8日に出願された「中枢神経系障害の処置における肺送達(Pulmonary Delivery In Treating Disorders of the Central Nervous System)」の発明の名称の米国特許出願第09/877,734号に記載されており、両方の内容は参照によりそのまま本明細書に援用される。
【0101】
所望により、救難治療に適した高速放出速度論を有する粒子を、症状の慢性局面の処置に適した、徐放性を有する粒子と組み合わせ得る。例えば、パーキンソン病の場合、救難治療を提供するために設計された粒子を、制御放出性を有する粒子と同時投与することができる。
【0102】
1つを超えるドパミン前駆体、アゴニストまたはその組み合わせ、特にL-ドパ、カルビドパ、アポモルフィンおよび他の薬物の投与が、同時または経時的に提供され得る。例えば、カルビドパは、しばしば、末梢カルボキシラーゼ活性を完全に遮断するために投与される。筋肉内、皮下、経口および他の投与経路が使用され得る。1つの態様において、これらの他の薬剤が肺系に送達される。これらの化合物または組成物は、前、後または同時に投与され得る。好ましい態様において、気道に投与される粒子は、L-ドパおよびカルビドパの両方を含む。用語「同時投与」は、本明細書では、本明細書に記載の発現症状および潜在状態を処置するために、特定のドパミン前駆体、アゴニストもしくはその組み合わせおよび/または他の組成物を時々に投与することを意味するために使用する。
【0103】
1つの態様において、長期L-ドパ療法は、経口カルビドパを併用したL-ドパの肺送達を含む。別の態様において、L-ドパの肺送達は、症状発現中に提供されるが、長期処置では従来のL-ドパ/カルビドパの経口投与を使用することができる。
【0104】
以下の制限されない実施例を参照することにより、本発明はさらに理解されよう。
【0105】
実施例
L-ドパを含有する乾燥粒子の調製
実施例1−L-ドパおよびトレハロースを含有する粒子
L-ドパおよびトレハロースを含有する製剤を含む粒子を、以下のようにして調製した。水溶液を、2.375 g L-ドパおよび125 mgトレハロースを700 mlのUSP水に添加することにより形成した。有機溶液は300 mlのエタノールから構成された。水溶液および有機溶液をスタティックミキサー中で合わせた。合わせた容量で合計1 Lを使用し、全溶質濃度は、30/70エタノール/水中2.5 g/Lであった。合わせた溶液はスタティックミキサーから2液アトマイザー内へと流れ、得られた霧化液滴を以下の処理条件下で噴霧乾燥した。
供給口温度 約135℃
乾燥ドラムからの排出口温度 約49〜53℃
窒素乾燥用ガス=95 kg/時
霧化速度=14 g/分
2液内部混合ノズルアトマイザー
液体供給速度=70 ml/分
乾燥チャンバ内の圧力=水中で-2.0
【0106】
得られた粒子は、33%のFPF (5.6)および12%のFPF (3.4)(ともに2段ACIを用いて測定)を有した。
【0107】
スタティックミキサーから流出している混合溶液を、回転式アトマイザー内に送り込んだ。アトマイザーからの霧化液滴と加熱された窒素との接触によって液滴から液体を蒸発させ、乾燥多孔性粒子を得た。生じた気体-固体流を、得られた乾燥粒子を保持するバッグフィルターに送り込み、乾燥ガス(窒素)、蒸発水およびエタノールを含む高温ガス流を通過させた。乾燥粒子を生成物回収容器内に回収した。
【0108】
特定の物理的特性および化学的特性を有する乾燥粒子を得るため、上記のように、完成品乾燥粒子に関してインビトロ特性付け試験を行ない、それに応じて処理パラメータを調整することができる。この方法を用いて95 wt% L-ドパおよび5 wt%トレハロースを含有する粒子を作製した。このようにして、これらの粒子について、作製プロセス中にリアルタイムで所望の空気力学的直径、幾何学的直径および粒子密度を得ることができた。
【0109】
実施例2−L-ドパ、トレハロースおよび塩化ナトリウムを含有する粒子
L-ドパ、トレハロースおよび塩化ナトリウムを含有する製剤を含む粒子を、以下のようにして調製した。水溶液を、2.325 g L-ドパ、125 mgトレハロースおよび50 mg塩化ナトリウムを700 mlのUSP水に添加することにより形成した。有機溶液は300 mlのエタノールから構成された。水溶液および有機溶液をスタティックミキサー中で合わせた。合わせた容量で合計1 Lを使用し、全溶質濃度は、30/70エタノール/水中2.5 g/Lであった。合わせた溶液はスタティックミキサーから2液アトマイザー内へと流れ、得られた霧化液滴を以下の処理条件下で噴霧乾燥した。
供給口温度 約135℃
乾燥ドラムからの排出口温度 約49〜53℃
窒素乾燥用ガス=95 kg/時
霧化速度=14 g/分
2液内部混合ノズルアトマイザー
液体供給速度=70 ml/分
液体供給温度 約50℃
乾燥チャンバ内の圧力=水中で-2.0
【0110】
得られた粒子は、59%のFPF (5.6)および40%のFPF (3.4)(ともに2段ACIを用いて測定)を有した。体積平均幾何学的直径は、1.0バールで17μmであった。
【0111】
スタティックミキサーから流出している混合溶液を、2液アトマイザー内に送り込んだ。アトマイザーからの霧化液滴と加熱された窒素との接触によって液滴から液体を蒸発させ、乾燥多孔性粒子を得た。生じた気体-固体流を、得られた乾燥粒子を保持するバッグフィルターに送り込み、乾燥ガス(窒素)、蒸発水およびエタノールを含む高温ガス流を通過させた。乾燥粒子を生成物回収容器内に回収した。
【0112】
特定の物理的特性および化学的特性を有する乾燥粒子を得るため、上記のように、完成品乾燥粒子に関してインビトロ特性付け試験を行ない、それに応じて処理パラメータを調整することができる。この方法を用いて作製した、93 wt% L-ドパ、5 wt%トレハロースおよび2 wt%塩化ナトリウムを含有する粒子は、1バールでRodosにより測定した17μmのVMGD、および2バールで12μmのVMGD、59%のFPF (5.6)を有した。このようにして、これらの粒子について、作製プロセス中にリアルタイムで所望の空気力学的直径、幾何学的直径および粒子密度を得ることができた。
【0113】
実施例3−L-ドパおよびDPPCを含有する粒子
L-ドパおよびDPPCを含有する製剤を含む粒子を、以下のようにして調製した。水溶液を、1.1875 g L-ドパを300 mlのUSP水に添加することにより形成した。有機溶液は、700 mlのエタノール中の62.5 mg DPPCから構成された。水溶液および有機溶液をスタティックミキサー中で合わせた。合わせた容量で合計1 Lを使用し、全溶質濃度は、70/30エタノール/水中1.25 g/Lであった。合わせた溶液はスタティックミキサーから2液アトマイザー内へと流れ、得られた霧化液滴を以下の処理条件下で噴霧乾燥した。
供給口温度 約108℃
乾燥ドラムからの排出口温度 約49〜53℃
窒素乾燥用ガス=95 kg/時
霧化速度=18 g/分
2液内部混合ノズルアトマイザー
液体供給速度=70 ml/分
液体供給温度 約50℃
乾燥チャンバ内の圧力=水中で-2.0
【0114】
得られた粒子は、29%のFPF (5.6)および10%のFPF (3.4)(ともに2段ACIを用いて測定)を有した。体積平均幾何学的直径は、1バールで7.9μmであった。
【0115】
スタティックミキサーから流出している混合溶液を、回転式アトマイザー内に送り込んだ。アトマイザーからの霧化液滴と加熱された窒素との接触によって液滴から液体を蒸発させ、乾燥多孔性粒子を得た。生じた気体-固体流を、得られた乾燥粒子を保持するバッグフィルターに送り込み、乾燥ガス(窒素)、蒸発水およびエタノールを含む高温ガス流を通過させた。乾燥粒子を生成物回収容器内に回収した。
【0116】
特定の物理的特性および化学的特性を有する乾燥粒子を得るため、上記のように、完成品乾燥粒子に関してインビトロ特性付け試験を行ない、それに応じて処理パラメータを調整することができる。この方法を用いて95 wt% L-ドパおよび5 wt% DPPCを含有する粒子を作製した。このようにして、これらの粒子について、作製プロセス中にリアルタイムで所望の空気力学的直径、幾何学的直径および粒子密度を得ることができた。
【0117】
実施例4−L-ドパ、DPPCおよび塩化ナトリウムを含有する粒子
L-ドパ、DPPCおよび塩化ナトリウムを含有する製剤を含む粒子を、以下のようにして調製した。水溶液を、1.125 g L-ドパおよび25 mg塩化ナトリウムを300 mlのUSP水に添加することにより形成した。有機溶液は、700 mlのエタノール中の100 mg DPPCから構成された。水溶液および有機溶液をスタティックミキサー中で合わせた。合わせた容量で合計1 Lを使用し、全溶質濃度は、70/30エタノール/水中1.25 g/Lであった。合わせた溶液はスタティックミキサーから2液アトマイザー内へと流れ、得られた霧化液滴を以下の処理条件下で噴霧乾燥した。
供給口温度 約108℃
乾燥ドラムからの排出口温度 約49〜53℃
窒素乾燥用ガス=95 kg/時
霧化速度=18 g/分
2液内部混合ノズルアトマイザー
液体供給速度=70 ml/分
液体供給温度 約50℃
乾燥チャンバ内の圧力=水中で-2.0
【0118】
得られた粒子は、70%のFPF (5.6)および40%のFPF (3.4)(ともに2段ACIを用いて測定)を有した。体積平均幾何学的直径は、1.0バールで14μmであった。
【0119】
スタティックミキサーから流出している混合溶液を、回転式アトマイザー内に送り込んだ。アトマイザーからの霧化液滴と加熱された窒素との接触によって液滴から液体を蒸発させ、乾燥多孔性粒子を得た。生じた気体-固体流を、得られた乾燥粒子を保持するバッグフィルターに送り込み、乾燥ガス(窒素)、蒸発水およびエタノールを含む高温ガス流を通過させた。乾燥粒子を生成物回収容器内に回収した。
【0120】
特定の物理的特性および化学的特性を有する乾燥粒子を得るため、上記のように、完成品乾燥粒子に関してインビトロ特性付け試験を行ない、それに応じて処理パラメータを調整することができる。この方法を用いて作製した、90 wt% L-ドパ、8 wt% DPPCおよび2 wt%塩化ナトリウムを含有する粒子は、1バールでRodosにより測定された14μmのVMGD、および2バールで11μmのVMGD、70%のFPF (5.6)を有した。このようにして、これらの粒子について、作製プロセス中にリアルタイムで所望の空気力学的直径、幾何学的直径および粒子密度を得ることができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の気道に、約90重量パーセントを超えるレボドパと、非還元糖、リン脂質およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる物質とを含む粒子を投与する工程を含み、該粒子が肺系に送達される、パーキンソン病患者の治療方法。
【請求項2】
粒子が塩をさらに含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者の気道に、約90重量パーセントを超えるレボドパ、非還元糖、またはリン脂質、および任意に塩から本質的になる粒子を投与する工程を含み、該粒子が肺系に送達され、約0.4g/cm未満のタップ密度、約5マイクロメートルを超える容積メジアン幾何学的直径、および約1マイクロメートル〜約5マイクロメートルの空気力学的直径を有する、パーキンソン病患者の治療方法。
【請求項4】
粒子が、約1マイクロメートル〜約3マイクロメートルの空気力学的直径を有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
粒子が、約3マイクロメートル〜約5マイクロメートルの空気力学的直径を有する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
粒子が約0.3g/cm未満のタップ密度を有する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
粒子が約0.2g/cm未満のタップ密度を有する、請求項3記載の方法。
【請求項8】
粒子が約0.1g/cm未満のタップ密度を有する、請求項3記載の方法。
【請求項9】
患者の気道に、約90重量パーセントを超えるレボドパおよび非還元糖を含む粒子を投与する工程を有し、該粒子が肺系に送達される、パーキンソン病患者の治療方法。
【請求項10】
粒子が塩をさらに含有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
非還元糖がトレハロースである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
患者の気道に、約90重量パーセントを超えるレボドパおよびリン脂質またはリン脂質の組み合わせを含む粒子を投与する工程を有し、該粒子が肺系に送達される、パーキンソン病患者の治療方法。
【請求項13】
粒子が塩をさらに含有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
リン脂質がDPPCである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
a)L−ドパおよびトレハロースを含む水溶液を形成する工程、
b)前記水溶液と有機溶液とを静かに混合して液体供給混合物を形成する工程、
c)前記液体供給混合物を噴霧乾燥する工程、ならびに
d)形成された噴霧乾燥粒子を回収する工程
を含み、改良点が噴霧乾燥前にNaClを該水溶液に添加することを含む、噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項16】
有機溶液がエタノールを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
a)L−ドパ、トレハロースおよびNaClを含む水溶液を形成する工程、
b)前記水溶液と有機溶液とを静かに混合して液体供給混合物を形成する工程、ならびに
c)前記液体供給混合物を噴霧乾燥して、それにより噴霧乾燥粒子が形成される工程
を含む、噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項18】
有機溶液がエタノールを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
a)L−ドパを含む水溶液を形成する工程、
b)DPPCを含む有機溶液を形成する工程、
c)前記水溶液と有機溶液とを静かに混合して液体供給混合物を形成する工程、
d)前記液体供給混合物を噴霧乾燥する工程、ならびに
e)形成された噴霧乾燥粒子を回収する工程
を含み、改良点が噴霧乾燥前にNaClを該水溶液に添加することを含む、噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項20】
有機溶液がエタノールを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
a)L−ドパおよびNaClを含む水溶液を形成する工程、
b)DPPCを含む有機溶液を形成する工程、
c)前記水溶液と有機溶液とを静かに混合して液体供給混合物を形成する工程、ならびに
d)前記液体供給混合物を噴霧乾燥して、噴霧乾燥粒子を形成する工程
を含む、噴霧乾燥粒子の製造方法。
【請求項22】
有機溶液がエタノールを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
約90重量%を超えるL−ドパおよび約10重量%未満のトレハロースを含む生体適合性粒子群。
【請求項24】
約3重量%未満の塩化ナトリウムをさらに含む、請求項23記載の粒子群。
【請求項25】
約90重量%を超えるL−ドパおよび約10重量%未満のDPPCを含む生体適合性粒子群。
【請求項26】
約3重量%未満の塩化ナトリウムをさらに含む、請求項25記載の粒子群。
【請求項27】
L−ドパ、トレハロースおよびNaClから本質的になり、L−ドパが約90重量%を超える生体適合性粒子群。
【請求項28】
L−ドパ、DPPCおよびNaClから本質的になり、L−ドパが約90重量%を超える生体適合性粒子群。
【請求項29】
約90重量%を超えるL−ドパおよび約10重量%未満のトレハロースまたはDPPCを含む粒子群を提供する工程、該粒子群を有する容器から分散と吸入とを同時に経て、粒子をヒトの被験体の気道に投与する工程を含む、肺系に有効量のL−ドパを送達する方法。
【請求項30】
粒子が約3重量%未満の塩化ナトリウムをさらに含む、請求項29記載の方法。


【公表番号】特表2006−507218(P2006−507218A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−577824(P2003−577824)
【出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/008659
【国際公開番号】WO2003/079992
【国際公開日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(500581847)アドバンスト インハレーション リサーチ,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】