説明

レンズの染色方法およびレンズ染色装置

【課題】染色液の蒸発などによる液面高さの変化に対応して、常に正確な所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができるレンズの染色方法、およびレンズ染色装置を提供する。
【解決手段】レンズ染色装置100を用いて、レンズ保持具6に保持されたプラスチックレンズLと、染色槽1に貯留された染色液Sの液面位置を検出する液面検出部3の一対の電極板311,312とが、上下移動装置2の下降移動によって、共に染色液Sの液面に対する鉛直方向に下降して、一対の電極板311,312が染色液Sに接触した位置を染色するプラスチックレンズLの染色上限位置DMとして、プラスチックレンズLを染色液S中から引上げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施す。一対の電極板311,312は、染色液Sに接触したとき、電流検出回路32において電極板311,312の間に流れる電流を検出して、染色液Sの液面位置を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの染色方法およびレンズ染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性、加工性、染色性などに優れ、しかも割れにくく安全性も高いため、眼鏡レンズ分野において急速に普及し、その大部分を占めている。
プラスチック眼鏡レンズは、その優れた染色性から色彩変化に富むファッション性豊かなレンズを得ることができる。特に、レンズ表面に連続的な濃度変化を付与したハーフ染色レンズ(ぼかしレンズまたはグラデーションレンズとも呼ばれている)は、高いファッション性を有する。また、プラスチック眼鏡レンズを染色する方法としては、レンズ表面に染料被膜を形成した後、加熱処理して染料をレンズ内に拡散させて染色する技術や、レンズを染料液に浸漬して染色する技術が知られている。
【0003】
例えば、染色液中にプラスチックレンズの表面に濃度勾配を付与する部分まで浸漬し、染色液中から引上げる一往復の上下移動をすることにより、プラスチックレンズに濃度勾配を有する染色を行うハーフ染色方法および染色装置が提案されている(特許文献1、参照)。
また、プラスチックレンズをハーフ染色する際に、染色液などの液位を一定に保つことを目的に、一つまたは複数の作業用容器と、液位を検出するための液位検出容器を接続手段により接続し、液位検出容器内の液位変化を検出手段で検知することで作業用容器内の液位を管理する液位検出方法および液位検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−145929号公報
【特許文献2】特開2001−41800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、染色液は蒸発し易く、しかも湯煎などにより90℃程度の温度に加熱して用いられる。したがって、特許文献1に記載されるような染色装置を用いてプラスチックレンズをハーフ染色する際には、色相ズレや染色位置ズレなどを防ぐために染色液の蒸発による液面高さの変化(低下)を考慮する必要がある。また、染色液の液面高さは、染色するプラスチックレンズのレンズ外径、球面度数および乱視度数などによって異なるレンズ体積(外径及び/又は厚さ)に伴って変化すると言う課題も存在する。
一方、特許文献2に示されるような液位検出装置を備えた染色装置は、同一色の染色を大量に行う際には有効であるが、異なる色の染色を少量生産する場合には、製造コストが嵩むという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例に係るレンズの染色方法は、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズの染色方法であって、前記プラスチックレンズと前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段とが、共に前記染色液の液面に対する鉛直方向に下降移動して、前記液面検出手段が前記液面位置を検出したとき、前記下降移動を停止し、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げてレンズ表面にハーフ染色を施すことを特徴とする。
【0008】
これによれば、染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するプラスチックレンズと、染色液の液面位置を検出する液面検出手段とが、共に染色液の液面に対する鉛直方向に下降移動して、液面検出手段が液面位置を検出したとき下降移動を停止し、プラスチックレンズを染色液中から引上げてレンズ表面にハーフ染色を施すことにより、染色液の蒸発などによる液面高さの変化があっても常に所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。また、レンズ外径、球面度数および乱視度数などによってレンズ体積(外径及び/又は厚さ)の異なるプラスチックレンズであっても、染色液の液面高さの変化に対応した所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。すなわち、常にハーフ染色領域のバラツキを抑えたプラスチックレンズが得られる。
【0009】
[適用例2]
本適用例に係るレンズの染色方法は、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズの染色方法であって、前記プラスチックレンズと前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段とが、共に前記染色液の液面に対する鉛直方向に下降移動して、前記液面検出手段が前記染色液に接触した位置を前記プラスチックレンズの染色上限位置として、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことを特徴とする。
【0010】
これによれば、染色液中に吊り下げてハーフ染色するプラスチックレンズと、染色液の液面位置を検出する液面検出手段とが、共に染色液の液面に対する鉛直方向に下降移動して、液面検出手段が染色液に接触した位置をプラスチックレンズの染色上限位置として、プラスチックレンズを染色液中から引上げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことにより、染色液の蒸発などによる液面高さの変化があっても常に所定の一定位置(染色上限位置)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。また、レンズ外径、球面度数および乱視度数などによってレンズ体積(外径及び/又は厚さ)の異なるプラスチックレンズであっても、染色液の液面高さの変化に対応した所定の一定位置(染色上限位置)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。すなわち、常にハーフ染色領域のバラツキを抑えたプラスチックレンズが得られる。
【0011】
[適用例3]
上記適用例に係るレンズの染色方法において、前記液面検出手段は、電源に接続する一対の電極板を有し、前記一対の電極板が前記染色液に接触したとき前記一対の電極板の間に流れる電流を検出して、前記染色液の液面位置を検知するのが好ましい。
【0012】
これによれば、液面検出手段が電源に接続する一対の電極板を有し、一対の電極板が染色液に接触したとき一対の電極板の間に流れる電流を検出して、染色液の液面位置を正確に検知することができる。これは、染色液が導電性を有することにより液面位置を正確に検知することが可能となる。なお、一対の電極板には、少なくとも1.5V程度の直流電源を接続すれば良い。
【0013】
[適用例4]
本適用例に係るレンズ染色装置は、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズ染色装置であって、前記レンズ染色装置は、前記プラスチックレンズを前記染色液中に浸漬する上下移動装置と、前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段と、を備え、前記液面検出手段は、前記プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板を有し、前記上下移動装置が下降移動して前記一対の電極板が前記染色液に接触したとき、前記一対の電極板の間に電流が流れたことを検知して、前記上下移動装置の下降移動を停止し、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げて、前記プラスチックレンズのレンズ表面にハーフ染色を施すことを特徴とする。
【0014】
これによれば、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズ染色装置が、プラスチックレンズを染色液中に浸漬する上下移動装置と、染色液の液面位置を検出する液面検出手段とを備え、液面検出手段は、プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板を有し、上下移動装置が下降移動して一対の電極板が染色液に接触したとき、一対の電極板の間に電流が流れたことを検出して、上下移動装置の下降移動を停止し、プラスチックレンズを染色液中から引上げて、プラスチックレンズのレンズ表面にハーフ染色を施すことにより、染色液の蒸発などによる液面高さの変化があっても常に所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことが可能なレンズ染色装置が得られる。また、レンズ外径、球面度数および乱視度数などによってレンズ体積(外径及び/又は厚さ)の異なるプラスチックレンズであっても、染色液の液面高さの変化に対応した正確な所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。すなわち、ハーフ染色領域のバラツキを抑えたレンズ染色装置が得られる。さらに、レンズ染色装置は、従来より用いられている染色装置に液面検出手段を付加するだけで良く、特に、異なる色のハーフ染色を少量生産する場合などにおいて、製造コストの低減や作業効率の向上に寄与することができる。
【0015】
[適用例5]
本適用例に係るレンズ染色装置は、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を行うレンズ染色装置であって、前記レンズ染色装置は、前記プラスチックレンズを前記染色液中に浸漬する上下移動装置と、前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段と、を備え、前記液面検出手段は、前記プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板を有し、前記上下移動装置が下降移動して前記一対の電極板が前記染色液に接触したとき、前記一対の電極板の間に電流が流れたことを検知して、前記上下移動装置の下降移動を停止し、前記上下移動装置が停止した位置を前記プラスチックレンズの染色上限位置として、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げて、前記プラスチックレンズのレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことを特徴とする。
【0016】
これによれば、プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を行うレンズ染色装置が、プラスチックレンズを染色液中に浸漬する上下移動装置と、染色液の液面位置を検出する液面検出手段とを備え、液面検出手段は、プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板を有し、上下移動装置が下降移動して一対の電極板が染色液に接触したとき、一対の電極板の間に電流が流れたことを検出して、上下移動装置の下降移動を停止し、上下移動装置が停止した位置をプラスチックレンズの染色上限位置として、プラスチックレンズを染色液中から引上げて、プラスチックレンズのレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことにより、染色液の蒸発などによる液面高さの変化があっても常に所定の一定位置(染色上限位置)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことが可能なレンズ染色装置が得られる。また、レンズ外径、球面度数および乱視度数などによってレンズ体積(外径及び/又は厚さ)の異なるプラスチックレンズであっても、染色液の液面高さの変化に対応した正確な所定の一定位置(染色上限位置)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。すなわち、ハーフ染色領域のバラツキを抑えたレンズ染色装置が得られる。さらに、レンズ染色装置は、従来より用いられている染色装置に液面検出手段を付加するだけで良く、特に、異なる色のハーフ染色を少量生産する場合などにおいて、製造コストの低減や作業効率の向上に寄与することができる。
【0017】
[適用例6]
上記適用例に係るレンズ染色装置において、前記一対の電極板は、前記上下移動装置上に移動可能に取付けられているのが好ましい。
これによれば、プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板が、上下移動装置上に移動(位置調節)可能に取付けられていることにより、レンズ外形寸法や染色上限位置の異なるプラスチックレンズに容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、プラスチックレンズをハーフ染色するレンズ染色装置の構成を説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るレンズ染色装置の概略構成を示す模式図であり、レンズ保持具に保持されたプラスチックレンズがレンズ染色装置にセットされた態様で示す。図1(b)は、レンズ染色装置にセットされたレンズ保持具を、図1(a)中に矢印aで示す方向から矢視した部分側面図である。
【0019】
図1(a)において、レンズ染色装置100は、染色槽1と、上下移動装置2と、液面検出手段としての液面検出部3と、制御部4と、入力部5とを備えている。
このレンズ染色装置(以後、染色装置と表す場合がある)100は、染色槽1内に貯留された染色液SにプラスチックレンズLを浸漬する時間を変化させると共に、その浸漬位置を変化させることにより、プラスチックレンズLの表面に連続的な染色濃度勾配を付与することができる。
【0020】
染色槽1は、プラスチックレンズLをハーフ染色する染色液Sを貯留する槽であり、予め染色槽1内に染色液Sが貯留されている。染色槽1の形状は、限定されないが、用いる染色液Sの貯留効率などを考慮すると、開口形状が円形の円筒形が好ましい。なお、以後において、プラスチックレンズLをレンズL、ハーフ染色を染色と表す場合がある。
【0021】
染色液Sは、純水などの溶媒中に、分散染料、分散染料のレンズL内部への含浸を促進させるキャリア剤、分散染料に対する分散剤としての界面活性剤などを添加して攪拌した分散・溶解液である。染色液Sは、染料濃度を染色するレンズLの染色程度に対応して0.1重量%〜5重量%に適宜調整し、70℃〜100℃の液温で用いられる。
なお、染色液Sは導電性を有する。染色液Sの導電率は、用いる分散染料、キャリア剤および界面活性剤の種類や添加量、あるいは用いる液温などによって変化するが、染色液S中に溶媒としての純水の占める割合が高いことから、少なくとも0.06μS(マイクロジーメンス)/cm程度(常温における純水の導電率)以上の値を有する。
【0022】
上下移動装置2は、筐体21上に、モーター22、タイミングプーリ23,24、タイミングベルト25、スライドガイド26、スライドガイドレール27などが配設されている。また、スライドガイド26には、取付け具28、支持具29およびフック30が取付けられている。
【0023】
モーター22は、例えばサーボモーターであり、筐体21の上端部に回動可能に固定されている。このモーター22は、後述する制御部4から出力される回転制御信号により回動(正逆回転)する。
タイミングプーリ23は、モーター22の回転軸上に固着されている。一方、タイミングプーリ24は、タイミングプーリ23の鉛直方向の下方に所定距離はなれた位置の筐体21上に、回転可能に軸着されている。
【0024】
タイミングプーリ23とタイミングプーリ24との間には、タイミングベルト25がベルト掛けされている。
また、タイミングベルト25には、ベルト上にスライドガイド26が固着されている。このタイミングベルト25は、モーター22が回動(回転)することによってタイミングプーリ23,24上を鉛直方向に往復動(上下移動)する。
【0025】
スライドガイドレール27は、タイミングベルト25(タイミングプーリ23およびタイミングプーリ24)と、略平行に並置した位置に固定されている。
このスライドガイドレール27上には、タイミングベルト25に固着されたスライドガイド26が載置されている。スライドガイド26は、モーター22の回動によるタイミングベルト25の上下移動に同期して、スライドガイドレール27上を鉛直方向に往復スライド(上下移動)する。なお、モーター22の回転は、例えば正回転(紙面における右回転)することによってスライドガイド26が上昇し、逆回転(紙面における左回転)することによってスライドガイド26が下降する。
【0026】
また、スライドガイドレール27の両端部には、スライドガイド26の移動範囲を規制するストッパーST1,ST2を備えている。このストッパーST1,ST2は、タイミングプーリ23とタイミングプーリ24の回転軸間の内側の所定の位置にそれぞれ取り付けられて、スライドガイド26の上下移動の範囲を制限することにより、モーター22の暴走、および後述するレンズ保持具6(レンズL)の落下を防止する。
【0027】
取付け具28は、スライドガイド26の本体から、スライドガイドレール27(タイミングベルト25)に対して略直角方向に延伸するアームの先端に取り付けられている。
取付け具28には、スライドガイドレール27(すなわち、タイミングベルト25)と略平行に鉛直方向の下方に延伸する棒状の支持具29が取付けられている。
支持具29の下端部には、染色するレンズLを保持するレンズ保持具6をセットするためのフック30が、支持具29に沿って固着されている。
【0028】
図1(b)および図1(a)に示すように、このフック30には、支持具29に略直交する方向に延伸する丸棒より成る保持具固定軸7に取付け固定された2つのレンズ保持具6が、保持具固定軸7を介して吊り下げられている。なお、レンズ保持具6が取付け固定された保持具固定軸7は、フック30上に支持具29に対して略直交する水平姿勢で、しかも取外し可能に吊り下げられている。
【0029】
フック30に吊り下げられた2つのレンズ保持具6には、染色するレンズLがそれぞれ保持されている。
レンズLは、テープモールド法などを用いて、重合性組成物を硬化して製造された透明プラスチック樹脂より成るプラスチック眼鏡レンズである。また、レンズLは、眼鏡フレームの内周縁の形状に合わせる玉型加工(縁摺り加工)などが施される以前のレンズであり、外径が65mm〜80mm程度の円形形状を成しており、レンズLの一方または両方のレンズ面に、所定の球面、トーリック面、回転対称非球面、非回転対称非球面、トーリック面と非球面とを合成した曲面、累進面または累進面とトーリック面とを合成した曲面などの形状が形成されている。
【0030】
なお、染色されるレンズLは、重合性組成物を硬化した透明プラスチック樹脂であれば限定されない。例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ポリウレタン系樹脂、チオウレタン系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。
【0031】
2つのレンズ保持具6に保持されたレンズLは、眼鏡の左右レンズとして用いられる一対(2つ)のレンズであり、ハーフ染色の際に同時に染色される。また、2つのレンズ保持具6に保持されたレンズLは、染色上限位置DM(レンズL中に一点鎖線で示す)まで染色液S中に浸漬した後、染色上限位置DMから下方の外縁方向に向うレンズ表面領域に染色が施される。
【0032】
レンズLを保持した2つのレンズ保持具6は、レンズLを取り外し可能に構成された同一構造の保持具である。
2つのレンズ保持具6は、鉛直方向の下方に延伸する支持具29に沿う方向に、互いに略平行になるように、且つレンズ保持具6に保持されたレンズLの取付け・取り外し方向が、それぞれ保持具固定軸7の両端側と成るようにして保持具固定軸7に相対して取付け固定されている。したがって、フック30上に吊り下げられた2つのレンズ保持具6(レンズL)は、保持具固定軸7の軸方向視、略重なるように保持具固定軸7に取付け固定されている。
【0033】
なお、レンズ保持具6は、薄板状のバネ部材が曲線状および直線状に屈曲・屈折されて略半円弧状に互いに対向して延伸した一対のアーム61と、一対のアーム61を溶接固定して鉛直方向に吊り下げた態様に保持具固定軸7に固着したアーム固定板62とから成る。レンズ保持具6は、一対のアーム61のバネ性によりアーム61間にレンズLが保持固定されている。したがって、レンズ保持具6は、50mm〜90mm程度のレンズ外径寸法の異なるレンズLを保持固定することができる。
【0034】
液面検出手段としての液面検出部3は、検出リード部31と、電流検出回路32を備えている。検出リード部31は、一対(2つ)の電極板311,312、リード線313,314、リード管315,316、リード管固定枠317、固定ネジ318を含み構成されている。
【0035】
電極板311,312は、銅板よりなる矩形状の金属電極板である。
リード線313,314は、銅の導線を耐熱性および耐薬品性などに優れたフッ素樹脂(PFA)を被覆したプラスチック被覆線であり、それぞれの導線の一端に電極板311,312が溶接などにより電気的に導通するように接続され、他端が後述する電流検出回路32に接続されている。
【0036】
リード管315,316は、同一形状を成した極細ステンレス(SUS304)チューブであり、チューブ内に電極板311,312が接続されたリード線313,314がそれぞれ嵌挿されている。リード管315,316は、それぞれの一端がリード管固定枠317に固着されて、支持具29に沿って鉛直方向の下方に延伸した後、支持具29から離間する方向に屈折して、フック30上に相対して吊り下げられた2つのレンズ保持具6(レンズL)の外側となる位置で再び支持具29に沿う鉛直方向の下方に延伸している。すなわち、リード管315,316を介して保持されたリード線313,314の一端に接続固定された電極板311,312が、2つのレンズ保持具6に保持固定されたレンズLの両側外方向に、レンズLに対して略平行に相対している。
【0037】
リード管315,316が固着されたリード管固定枠317は、支持具29に遊嵌して案内され、支持具29上を移動可能に構成されている。このリード管固定枠317は、固定ネジ318によって支持具29の所定の位置に固定される。したがって、リード管315,316を介して保持されたリード線313,314の一端に接続された電極板311,312は、上下移動装置2の鉛直方向の往復動(上下移動)に同期して、フック30上に吊り下げられた2つのレンズ保持具6(レンズL)と共に上下移動する。
【0038】
なお、支持具29上を移動可能に構成されたリード管固定枠317は、リード管315,316を介して保持された電極板311,312の位置を、2つのレンズ保持具6に保持されたレンズLの外径寸法やハーフ染色する染色上限位置DMに対応した所望の位置に位置調節して固定することができる。
【0039】
電流検出回路32は、いずれも図示しない直流電源、電流検出用抵抗、差動増幅器などを具備している。
電極板311,312が接続固定されたリード線313,314の内のどちらか一方が直流電源に接続し、他方が電流検出用抵抗に接続している。差動増幅器は電流検出用抵抗の両端子間に接続し、電流検出用抵抗間に電流を検出したとき、電流検出出力のON/OFF信号を後述する制御部4に出力する。
【0040】
なお、直流電源は、少なくとも電流検出用抵抗間の電流の検出が確認できる電圧が有ればよく、本実施形態における直流電源電圧は、例えば1.5Vである。直流電源としては、マンガン乾電池、リチウム電池などの一次電池や、アルカリ乾電池、リチウムイオン電池などの二次電池などを用いることができる。
【0041】
このように構成された液面検出部3は、フック30上に吊り下げられた2つのレンズ保持具6に保持されたレンズLをハーフ染色する際、電極板311,312が染色槽1内に貯留された染色液Sに接触したことを検出する機能を有する。すなわち、液面検出部3は、染色液Sの液面位置を検出することができる。
【0042】
制御部4は、上下移動装置2に配設されたモーター22を駆動するパルス数や移動速度などの演算および制御指示を行うCPU(Central Processing Unit)、レンズLを染色する染色濃度勾配データ(染色液Sに浸漬する時間に対する染色する濃度の関係を計量把握したデータ)や各種制御プログラムを格納するROM、染色するレンズLの染色情報などを一時的に格納するRAMなどで構成され、モーター22、入力部5および液面検出部3(電流検出回路32)と電気的に接続している。
【0043】
入力部5は、いずれも図示しないデジタルスイッチ、表示器などを備え、デジタルスイッチを操作して、染色するレンズLの染色情報(レンズLの外径、染色上限位置DMなど)の入力、上下移動装置2のスタート操作などを行う。
なお、染色装置100には、これらの構成要素の他に、染色槽1内に収容された染色液Sを、所定の温度に加熱・保温するための温度調節装置や、染色液Sを攪拌する攪拌装置などを備えることができる。
【0044】
また、染色液Sを貯留した染色槽1は、フック30にセットして吊り下げられた2つのレンズ保持具6およびリード管315,316のチューブ内に嵌挿されたリード線313,314に接続された電極板311,312の鉛直方向の下方、すなわち上下移動装置2の支持具29が延伸する鉛直方向の下方に位置するように配設されている。
また、2つのレンズ保持具6(レンズL)および電極板311,312は、上下移動装置2が鉛直方向に上下移動することによって、染色液Sの液面から離間した位置(スタート位置)と染色槽1内に貯留された染色液Sの所定の液面位置との間を上下移動(下降および上昇)する。
【0045】
次に、レンズ染色装置100の動作を説明する。
染色装置100は、一対のレンズ保持具6に保持されたレンズLを、上下移動装置2のモーター22を回動(逆回転)して、染色上限位置DMが染色槽1内に貯留された染色液Sの略液面と一致する位置まで下降した後、モーター22の回動(正回転)を微細に制御して上昇することにより、レンズL表面の染色上限位置DMから下方の外縁方向領域に外縁方向に向かってハーフ染色を行う。
ここで、ハーフ染色は、染色上限位置DMから下方の外縁方向領域全体を一様に染色しても良く、染色上限位置DMから下方の外縁方向領域に、外縁方向に向かって連続的な染色濃度勾配を付与する染色を行っても良い。
【0046】
先ず、入力部5のデジタルスイッチを操作して、染色するレンズLの染色情報(レンズLの外径、染色上限位置DMなど)を入力する。
そして、支持具29上のリード管固定枠317を、リード管315,316を介して保持されたリード線313,314に接続された矩形状の電極板311,312の下端面が、染色するレンズLの染色上限位置DMに対する所定の位置になるように調節した後、固定ネジ318で支持具29に固定する。染色上限位置DMに対する電極板311,312の下端面の所定の位置は、染色上限位置DMから鉛直方向の下方に距離αの位置であり(後述する図2(a),(c)参照)、その値は0.3mm程度である。
【0047】
そして、上下移動装置2の支持具29の下端部に固着されたフック30に、ハーフ染色するレンズLが保持された一対のレンズ保持具6が取付け固定された保持具固定軸7を掛着する。保持具固定軸7を介してフック30に掛着された2つのレンズ保持具6は鉛直方向に吊り下げられる。この時、吊り下げられたレンズ保持具6(レンズL)、および液面検出部3のリード管315,316を介して保持された電極板311,312は、染色槽1に貯留された染色液Sの液面から離間した位置(スタート位置)に停止している。
【0048】
そして、入力部5の上下移動装置2のスタートスイッチをON操作する。これにより、制御部4からの制御信号に基づいてモーター22が回動(逆回転)して、一対のレンズ保持具6に保持されたレンズLの染色上限位置DMが、染色槽1に貯留された染色液Sの液面となる位置まで下降して停止する。すなわち、レンズ保持具6に保持されたレンズLが、染色液S中に染色上限位置DMまで浸漬される。
【0049】
レンズLの染色上限位置DMまでの下降は次のように行われる。
先ず、レンズ保持具6に保持されたレンズLと共に下降する電極板311,312の下端面が染色槽1内に貯留された染色液Sに接触したとき、電極板311と電極板312とが導電性を有する染色液Sを介して電気的に導通する。そして、電流検出回路32の電流検出用抵抗の両端子間に接続する差動増幅器から電流検出信号を制御部4に出力する。制御部4では、電流検出回路32から入力した電流検出信号に基づいて、モーター22にモーター22の回動を停止する制御信号を出力する。
なお、電極板311と電極板312は、染色液Sに浸漬された電極板311,312の面積および2つの電極板間の距離によって異なるが、少なくとも染色液S中に0.3mm程度(前記距離αに相当する)浸漬された時点で染色液Sの液面位置を検出することができる。
【0050】
そして、制御部4のCPUにおいて、先に入力部5から入力されたレンズの染色情報と、予めROMに格納された該当製品の染色濃度勾配データに基づいて上下移動装置2のモーター22に出力するパルス数(すなわち、移動量)および移動速度を演算し、演算されたパルス列から成る制御信号をモーター22に出力する。
【0051】
モーター22は、制御部4から入力されたパルス列に従って回動(正回転)し、レンズ保持具6に取り付けられたレンズLが上昇して、レンズLの表面に染色液S中に浸漬した位置(染色上限位置DM)から下方の外縁方向に向かって所定のハーフ染色が施される。
レンズLをハーフ染色する所定の染色移動が終了すると、モーター22が急速回転して、レンズ保持具6(レンズL)が上昇し、スタート位置に停止する。これにより、レンズLの所定のハーフ染色が終了する。
【0052】
このようにレンズLを染色する際に上下移動(下降および上昇)する上下移動装置2の動作を、より具体的に説明する。
モーター22は、上記したように制御部4からの制御信号に基づいて正逆回転する。モーター22が回動(回転)すると、モーター22に固着されたタイミングプーリ23が、モーター22と同期して回動し、このタイミングプーリ23とタイミングプーリ24にベルト掛けされたタイミングベルト25が、タイミングプーリ23,24上を往復動する。
【0053】
そして、タイミングベルト25が往復動すると、タイミングベルト25に固着されたスライドガイド26が、タイミングベルト25と略平行に並置して固定されたスライドガイドレール27上を、タイミングベルト25の往復動と同期して、上下移動(上昇および下降)する。同時に、このスライドガイド26と一体に構成された取付け具28、および取付け具28に取り付けられた支持具29が、タイミングベルト25の往復動と同期して上下移動する。したがって、支持具29の先端のフック30に掛着された2つのレンズ保持具6に保持されたレンズL、および支持具29にリード管固定枠317によって固定されたリード管315,316を介して保持されたリード線313,314の一端に接続された電極板311,312が、上下移動する。
【0054】
次に、レンズ染色装置100を用いたレンズLの染色方法について説明する。なお、レンズLの染色方法は、図1(a),(b)を参照しながら、図2に基づいて説明する。
【0055】
図2(a)〜図2(d)は、レンズ保持具に保持されたレンズの染色工程毎の態様を示すレンズ染色装置の部分説明図であり、具体的には、図2(a)〜図2(c)は、この順に下降工程の下降開始状態、レンズが染色液に浸漬する下降中途状態、下降終了状態を示す。また、図2(d)は引上げ工程における態様を示す。
【0056】
先ず、入力部5のデジタルスイッチを操作して、染色するレンズLの染色情報(レンズLの外径、染色上限位置DMなど)を入力する。また、リード管315,316を介して保持されたリード線313,314に接続された矩形状の電極板311,312の下端面が、染色するレンズLの染色上限位置DMに対する所定の位置になるように、支持具29上のリード管固定枠317の位置調節を行った後、支持具29にリード管固定枠317を固定ネジ318で固定する(図1参照)。そして、図2(a)に示すように、ハーフ染色するレンズLが保持された2つのレンズ保持具6が取付け固定された保持具固定軸7を上下移動装置2のフック30に掛着する(染色準備工程)。
【0057】
なお、染色上限位置DMに対する電極板311,312の下端面の所定の位置は、染色上限位置DMから鉛直方向の下方に距離αの位置であり、その値は0.3mm程度である。
これにより、フック30に掛着されて鉛直方向に吊り下げられた2つのレンズ保持具6(レンズL)、およびリード管315,316を介して保持された電極板311,312は、染色槽1に貯留された染色液Sの液面から離間した位置(スタート位置)に保持される。
そして、下降工程に移行する。
【0058】
下降工程では、入力部5の上下移動装置2の下降スイッチをON操作する。これによりフック30に掛着されたレンズ保持具6に保持されたレンズLが、電極板311,312と共にスタート位置から染色槽1に貯留された染色液Sに向かって下降(矢印Aで示す)を開始する。
レンズ保持具6(レンズL)および電極板311,312は、制御部4からの制御信号に基づいてモーター22が回動(逆回転)して下降する。
【0059】
そして、図2(b)に示すように、レンズ保持具6に保持されたレンズLが染色槽1内に貯留された染色液S中に下降(破線の矢印Aで示す)して、染色液S中に下降(浸漬)するに従って、染色液Sの液面が、図2(b)中に一点鎖線で示す当初の液面位置から上昇する。
【0060】
そして、図2(c)に示すように、レンズ保持具6に保持されたレンズLが、さらに下降(矢印Bで示す)して、レンズ保持具6に保持されたレンズLと共に下降する電極板311,312の下端面が、染色液Sの液面に接触した時、導電性を有する染色液Sを介して電極板311と電極板312とが電気的に導通して、電極板311,312が接続する電流検出回路32から電流検出信号を制御部4に出力する。なお、電極板311,312の下端面が染色液Sの液面に接触した時とは、電極板311,312の下端面が染色液Sの液面から0.3mm(距離α)程度の位置に浸漬された時である。
そして、制御部4では、電流検出回路32からの電流検出信号に基づいて、モーター22にモーター22の回動を停止する制御信号を出力して、上下移動装置2の下降を停止する。
【0061】
上下移動装置2の下降の停止により、2つのレンズ保持具6に保持されたレンズLの染色上限位置DMを、レンズLの浸漬によって当初の液面位置から上昇した染色液Sの液面と略一致した位置にして、染色上限位置DMから下方の外縁方向領域のレンズLが染色液S中に浸漬される。これによって下降工程が終了する。
そして、引上げ工程に移行する。
【0062】
図2(d)に示す引上げ工程では、制御部4のCPUにおいて、先に入力部5から入力されたレンズLの染色情報と、予めROMに格納された該当製品の染色濃度勾配データに基づいて上下移動装置2のモーター22に出力するパルス数(すなわち、移動量)および移動速度を演算し、その演算されたパルス列から成る制御信号をモーター22に出力する。
【0063】
そして、モーター22は、制御部4から入力された制御信号に従って回動(正回転)して、レンズ保持具6に取り付けられたレンズLが上昇(矢印Cで示す)する。これにより、染色液S中に浸漬した染色上限位置DMから下方の外縁方向のレンズ表面領域に、外縁方向に向かって連続的な染色濃度勾配が付与されたハーフ染色(図2(d)中のレンズLにドットで示す)が施される。
レンズLをハーフ染色する所定の染色移動が終了すると、モーター22が急速回転して、レンズ保持具6(レンズL)が上昇し、スタート位置に停止する。これにより、レンズLの所定のハーフ染色が終了する。
【0064】
一対のレンズLのハーフ染色が終了した染色装置100は、レンズ保持具6に同一染色条件の新たなレンズL、または染色上限位置DMの異なる新たなレンズLを取付けて、同様の工程によってレンズLのハーフ染色を行うことができる。
なお、新たな染色上限位置DMを有する新たなレンズLにハーフ染色を施す場合には、染色準備工程において、レンズLの染色情報を入力すると共に、支持具29上に固定されたリード管固定枠317を移動して、リード管315,316を介して保持された電極板311,312の位置が、レンズ保持具6に保持された新たなレンズLの外径寸法や染色上限位置DMに対応する位置になるように位置調節した後、再固定を行う。
【0065】
このようにレンズ表面にハーフ染色を施した一対のレンズLは、純水洗浄またはアセトン洗浄を行った後、眼鏡フレームの内周縁の形状に合わせる玉型加工(縁摺り加工)などが施される。そして、眼鏡フレームに嵌め込まれてファッション性豊かな眼鏡が完成する。
【0066】
以上のように、本実施形態のレンズの染色方法によれば、染色液S中に吊り下げてハーフ染色するレンズ(プラスチックレンズ)Lと、染色液Sの液面位置を検出する液面検出手段とが、共に染色液Sの液面に対する鉛直方向に下降移動して、液面検出手段としての液面検出部3を構成する電極板311,312が染色液Sに接触した位置をレンズLの染色上限位置DMとして、レンズLを染色液S中から引上げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことにより、染色液Sの蒸発などによる液面高さの変化があっても常にレンズ表面の所定の一定位置(染色上限位置DM)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。また、レンズ外径、球面度数および乱視度数などによってレンズ体積(外径及び/又は厚さ)の異なるレンズLであっても、染色液Sの液面高さの変化に対応した正確な所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。すなわち、常にハーフ染色領域のバラツキを抑えたレンズLが得られる。
【0067】
レンズ厚み(体積)の異なるレンズLの一例を説明すれば、例えば、内径が10.5cmの染色槽1内に、外径が75mm、球面度数が+(プラス)4.0、内面TCが4.0の一対のレンズLをレンズ中心位置まで浸漬した場合と、同様に外径が75mm、球面度数が−(マイナス)2.0の一対のレンズLをレンズ中心位置まで浸漬した場合とにおける染色液Sの液面高さは、略3.5mmの異差が生じる。こうした場合であっても本実施形態のレンズの染色方法によれば、液面高さの変化があっても常にレンズ表面の所定の一定位置(染色上限位置DM)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。
【0068】
また、本実施形態のレンズ染色装置によれば、レンズ(プラスチックレンズ)Lを染色液S中に吊り下げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を行うレンズ染色装置100が、レンズLを染色液S中に浸漬する上下移動装置2と、染色液Sの液面位置を検出する液面検出部3とを備え、液面検出部3は、レンズLと共に上下移動する一対の電極板311,312を有し、上下移動装置2が下降して一対の電極板311,312が染色液Sに接触したとき、一対の電極板311,312の間に電流が流れたことを検出して、上下移動装置2の下降を停止し、上下移動装置2が停止した位置をレンズLの染色上限位置DMとして、レンズLを染色液S中から引上げて、染色液Sの蒸発などによる液面高さの変化があっても常に所定の一定位置(染色上限位置)のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことが可能なレンズ染色装置100が得られる。
【0069】
また、球面度数や乱視度数などによってレンズ体積(外径及び/又は厚さ)の異なるレンズLであっても、染色液Sの液面高さの変化に対応して正確な所定の一定位置のレンズ表面領域にハーフ染色を施すことができる。さらに、レンズLと共に上下移動する一対の電極板311,312が、上下移動装置2上に移動可能に取付けられていることにより、レンズ外形寸法や染色上限位置DMの異なるレンズLに容易に対応することができる。
【0070】
以上の本実施形態において、眼鏡の左右レンズとして用いられる一対のレンズLを2つのレンズ保持具6に保持する場合で説明したが、本実施形態のレンズの染色方法を用いると、レンズLの大きさ(体積)に係らずバラツキを抑えた正確な染色上限位置DMまでのレンズ面に所定のハーフ染色を施すことができるので、2つのレンズ保持具6に保持するレンズLは、眼鏡の左右レンズとして用いられる一対のレンズでなくても良いし、保持具固定軸7に一つのレンズ保持具6を取付け固定した構成であっても良い。
【0071】
また、ハーフ染色するレンズLとしてプラスチック眼鏡レンズの場合で説明したが、プラスチック眼鏡レンズに限定されず、光学用プラスチックレンズであれば同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係るレンズ染色装置の概構成を示す模式図。
【図2】(a)〜(d)は、レンズ保持具に保持されたレンズの染色工程毎の態様を示すレンズ染色装置の部分説明図。
【符号の説明】
【0073】
1…染色槽、2…上下移動装置、22…モーター、23,24…タイミングプーリ、25…タイミングベルト、26…スライドガイド、27…スライドガイドレール、28…取付け具、29…支持具、3…液面検出手段としての液面検出部、31…検出リード部、311,312…電極板、313,314…リード線、315,316…リード管、317…リード管固定枠、318…固定ネジ、32…電流検出回路、4…制御部、5…入力部、6…レンズ保持具、61…アーム、62…アーム固定板、7…保持具固定軸、30…フック、100…レンズ染色装置、DM…染色上限位置、L…プラスチックレンズ、S…染色液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズの染色方法であって、
前記プラスチックレンズと前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段とが、共に前記染色液の液面に対する鉛直方向に下降移動して、
前記液面検出手段が前記液面位置を検出したとき、前記下降移動を停止し、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げてレンズ表面にハーフ染色を施すことを特徴とするレンズの染色方法。
【請求項2】
プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズの染色方法であって、
前記プラスチックレンズと前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段とが、共に前記染色液の液面に対する鉛直方向に下降移動して、
前記液面検出手段が前記染色液に接触した位置を前記プラスチックレンズの染色上限位置として、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことを特徴とするレンズの染色方法。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズの染色方法であって、
前記液面検出手段は、電源に接続する一対の電極板を有し、前記一対の電極板が前記染色液に接触したとき前記一対の電極板の間に流れる電流を検出して、前記染色液の液面位置を検知することを特徴とするレンズの染色方法。
【請求項4】
プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面をハーフ染色するレンズ染色装置であって、
前記レンズ染色装置は、前記プラスチックレンズを前記染色液中に浸漬する上下移動装置と、前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段と、を備え、
前記液面検出手段は、前記プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板を有し、
前記上下移動装置が下降移動して前記一対の電極板が前記染色液に接触したとき、前記一対の電極板の間に電流が流れたことを検知して、前記上下移動装置の下降移動を停止し、
前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げて、前記プラスチックレンズのレンズ表面にハーフ染色を施すことを特徴とするレンズ染色装置。
【請求項5】
プラスチックレンズを染色液中に吊り下げてレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を行うレンズ染色装置であって、
前記レンズ染色装置は、前記プラスチックレンズを前記染色液中に浸漬する上下移動装置と、前記染色液の液面位置を検出する液面検出手段と、を備え、
前記液面検出手段は、前記プラスチックレンズと共に上下移動する一対の電極板を有し、
前記上下移動装置が下降移動して前記一対の電極板が前記染色液に接触したとき、前記一対の電極板の間に電流が流れたことを検知して、前記上下移動装置の下降移動を停止し、
前記上下移動装置が停止した位置を前記プラスチックレンズの染色上限位置として、前記プラスチックレンズを前記染色液中から引上げて、前記プラスチックレンズのレンズ表面に濃度勾配を付与するハーフ染色を施すことを特徴とするレンズ染色装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレンズ染色装置であって、
前記一対の電極板は、前記上下移動装置上に移動可能に取付けられていることを特徴とするレンズ染色装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−107701(P2010−107701A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279331(P2008−279331)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】