説明

レンズを製造するための方法

眼科用レンズを製造する一つの方法は、そのレンズを界面活性剤含有水溶液に接触させ、そのレンズを検査し包装する工程に先立って、そのレンズからごみを除去する工程を包含する。この水溶液は、緩衝剤および/または塩化ナトリウムをさらに含み得る。好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポロキサマーまたはポロキサミンなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。本方法はまた、眼科用移植片などのさらなる生物医学的デバイスのために用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、コンタクトレンズまたは眼内レンズなどの眼科用レンズのための製造方法に関する。特に、本発明は、製造段階の間で、界面活性剤含有組成物を用いてそのようなレンズからごみの除去を提供する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
コンタクトレンズは、剛直な気体透過性材料、柔らかい弾性材料、および柔らかいヒドロゲル材料などが挙げられる様々なポリマー材料から製造される。今日販売される大多数のコンタクトレンズは、柔らかいヒドロゲル材料から製造される。ヒドロゲルは、代表的には10〜80重量パーセントの水を、そして特に20〜70パーセントの水を吸収し保持する架橋ポリマー系である。ヒドロゲルレンズは、一般に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、グリセロールメタクリレート、およびメタクリル酸などの少なくとも一つの親水性モノマーを含有するレンズ形成モノマー混合物を重合することにより調製される。シリコーンヒドロゲルレンズの場合には、シリコーン含有モノマーが、上記親水性モノマーと共重合される。
【0003】
コンタクトレンズを製造するための様々なプロセスが公知である。静的型成型と呼ばれる一つのプロセスは、二部型中で、レンズ形成モノマーの混合物を成型する工程を包含する。一方の型部品は、その前面のレンズ表面を形成するための成型表面を備え、そしてその第2の型部品は、その裏面のレンズ表面を形成するための成型表面を備える。上記二部型中にある状態で、上記モノマー混合物は重合され、または硬化され、コンタクトレンズが形成される。スピンキャスト法と呼ばれる代替的なプロセスは、レンズ形成モノマー混合物を、ワンピース前面型中で成型する工程を包含する。この型は、上記裏面のレンズ表面を形成する様式で回転され、上記モノマー混合物は、この金型が回転されている間に重合させられる。これらの成型方法は、大規模な製造を可能にし、このような製造としては、作業者のエラーおよび取扱いを低減し、そして製造コストを低減するための自動化された加工または半自動化された加工が挙げられる。
【0004】
上記コンタクトレンズの成型に続いて、この成型レンズは様々な下流プロセスに供される。非シリコーン製のヒドロゲルコンタクトレンズの場合には、そのレンズは、代表的には、あらゆる不純物を除去し、そしてそのレンズを水和するために、水または水溶液で抽出される。そのような抽出プロセスおよび水和プロセスは、組み合わされた一度だけの操作として、または複数の別個の操作として形成され得る。次いで、そのレンズは、代表的には、手作業によるかまたはオートメーションによるかのいずれかで検査され、封止されたパッケージの中に販売のために包装される。シリコーンヒドロゲルのコンタクトレンズの場合には、そのレンズは、一般に、より厳密な抽出プロセスを必要とし、このプロセスでは、有機溶剤を用いて未反応のモノマーまたは上記重合プロセスの副生成物として形成されたオリゴマーなどの不純物を除去する。次いで、そのレンズは一つ以上の水和工程に供され、そこでそのレンズは、そのレンズを水和し、そして上記先立つ抽出工程で使用された有機溶剤を置換するように、水または水溶液に接触させられる。その後、そのレンズは検査され、包装される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自動化製造プロセス、または半自動化製造プロセスに対してでさえも、様々なごみが、製造の間に上記コンタクトレンズに堆積し得るという問題を認識している。一つの先立つアプローチは、そのレンズの手作業による洗浄を伴い、そこでは、検査を実施するのに先立って、作業者がそのレンズを優しくこすり洗いしてゴミを除去する。しかしながら、このプロセスは労働集約的であり、従って、より高い製造コストを伴い;さらには、その作業者がそのレンズを損傷し得る。別の先立つアプローチは、検査に先立つそのレンズのあらゆる洗浄を回避する工程を伴う。しかしながら、このアプローチは、しばしば、たとえごみで汚染されていることを除いてはそのレンズが満足できるものであったとしても、不良品として廃棄されようとする汚染されたレンズを生じる。従って、歩止まりは低下し、従って、より高い製造コストの一因となる。なぜなら、他の点では欠陥を有しない汚染されたレンズは廃棄されるからである。
【0006】
眼内レンズもまた、型の中でレンズ形成混合物を重合することにより成型され得る。コンタクトレンズ製造に類似して、眼内レンズは、代表的には、検査され包装される。
【0007】
コンタクトレンズを着用することの通常の過程においては、着用者は、代表的には、自分のレンズを定期的に洗浄し、涙液膜またはそのレンズを汚染し得る環境からごみを取り除くことを指導される。例えば、米国特許第4,820,352号(Reidhammerら)は、コンタクトレンズ着用者による使用のために設計され、様々な界面活性剤含有組成物を開示する。コンタクトレンズ着用者による使用のために設計された組成物のさらなる例は、米国特許第5,858,937号(Richardsら)に見出される。これらの特許は、製造段階の間でコンタクトレンズを洗浄するための組成物の使用には取り組んでいない。
【0008】
本発明は、製造の間に眼科用レンズからゴミを除去し、その結果、下流の製造段階を改善し、製造コストを低減し、そして製造の歩止まりを改善することは有利であるということを認識している。ゴミの除去は、そのレンズの手作業によるこすり洗いなしで達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、眼科用レンズを製造する方法に関し、この方法は:型中でレンズ形成モノマー混合物を重合することにより眼科用レンズを成型し、この成型されたレンズを上記型から除去する工程;この成型されたレンズを界面活性剤含有水溶液に接触させ、このレンズからごみを除去する工程;およびこのレンズを検査し、包装する工程、を順次包含する。上記水溶液は、緩衝剤および/または塩化ナトリウムをさらに含有し得る。好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポロキサマー(poloxamer)またはポロキサミン(poloxamine)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。本発明の方法はまた、眼科用移植片などのさらなる生物医学的デバイスのために用いられ得、そこではそのデバイスは、そのデバイスを検査し、包装する工程に先立って上記水溶液に接触させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(様々な好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、眼科用レンズに対して適用可能であり、その眼科用レンズとしては、コンタクトレンズおよび眼内レンズが挙げられる。上記レンズは、ヒドロゲルコポリマーから製造され得る。ソフトヒドロゲルコンタクトレンズは、ヒドロゲルポリマー材料から製造され、ヒドロゲルは、平衡状態において水を含有する架橋ポリマー系として定義される。代表的な従来のヒドロゲルコンタクトレンズ材料は、少なくとも一つの親水性モノマーを含むモノマー混合物を重合することにより製造され、親水性モノマーとしては以下のものが挙げられる:メタクリル酸およびアクリル酸などの(メタ)アクリル酸;2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリセロールメタクリレートなどの(メタ)アクリル化アルキルエーテル;N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)およびN,N−ジメチルメタクリルアミドなどのアルキル(メタ)アクリルアミド;ならびにN−ビニルピロリドン(NVP)などのN−ビニルラクタム。シリコーンヒドロゲルの場合には、上記コポリマーがそれから調製されるモノマー混合物としては、上記親水性モノマーに加えて、シリコーン含有モノマーがさらに挙げられる。一般に、上記モノマー混合物は、架橋モノマー、すなわち、少なくとも二つの重合可能な基を有するモノマーを含み、そのような架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、および2−エチルメタクリレート−ビニルカーボネートが挙げられる。あるいは、上記シリコーン含有モノマーまたは上記親水性モノマーのいずれかが、架橋剤としての機能を果たし得る。
【0011】
眼内レンズは、同様に、ヒドロゲルコポリマーから製造され得る。眼内レンズについての他の公知の(know)範疇の材料としては、ヒドロゲルでないシリコーン材料および疎水性アクリルが挙げられる。
【0012】
上記のように、様々なプロセスが、コンタクトレンズおよび眼内レンズなどの眼科用レンズを製造するために公知である。そのような方法としては、静的型成型およびスピンキャスト法が挙げられる。静的型成型に対しては、レンズ形成モノマーの混合物は、二部型へ導入される。一方の型部品は、その前面のレンズ表面を形成するための成型表面を備え、そしてその第2の型部品は、その裏面のレンズ表面を形成するための成型表面を備える。上記モノマー混合物は、金型中の上記モノマー混合物を光エネルギー(例えば、紫外線照射)、熱エネルギー、または光エネルギーおよび熱エネルギーの組み合わせに曝露することなどにより、重合させられ、または硬化される。スピンキャスト法に対しては、レンズ形成モノマー混合物は、ワンピース前面型に導入され、この金型は、上記裏面のレンズ表面を形成する様式で回転され、上記モノマー混合物は、この金型が回転されている間に光エネルギーおよび/または熱エネルギーに曝露され、上記レンズ形成モノマー混合物を硬化させる。
【0013】
上記レンズが成型されたあとで、そのレンズはその後の工程のために上記型から取り出され、その後の工程としては、抽出および/または水和、検査および包装が挙げられる。
【0014】
抽出は上記成型されたレンズから不純物を取り除く役割を果たす。ヒドロゲルレンズの場合には、水和はレンズを水で水和する役割を果たす。非シリコーンのヒドロゲルコンタクトレンズの場合には、非反応性の希釈剤がしばしば上記レンズ形成モノマー混合物に添加され、この希釈剤は、上記成型されたレンズから水溶液を用いて抽出され得る。この水溶液はまた、上記水和工程としても使用され得るか、または別の水和工程が抽出に続いて実施され得る。シリコーンヒドロゲルレンズに対しては、そのレンズは、一般に、より厳密な抽出を必要とし、この抽出では、未反応のモノマー、上記重合プロセスの副生成物として形成されたオリゴマーなどの不純物を除去するための有機溶剤および上記レンズ形成シリコーンモノマー混合物中で使用される任意の希釈剤を用いる。抽出に続いて、そのシリコーンヒドロゲルレンズは、一つ以上の水和工程に供され、そこで上記レンズは水または水溶液に接触させられ、その結果、上記レンズが水和され、その前の抽出工程で使用された有機溶媒が置換される。
【0015】
検査は、代表的には、上記レンズが、裂け目または他の不具合などの欠陥を一つも有しないことを確認するために実施される。検査は、作業者により手作業で、またはオートメーションで実施され得る。続いて、検査に合格したレンズは、代表的には密封されたブリスター包装中に包装される。ヒドロゲルの場合には、上記レンズは水溶液と一緒に包装され、それゆえ、その包装内に保存される間、上記レンズは水和された状態を保つ。代表的には、上記レンズおよび上記包装溶液は、上記包装およびその中身を加圧滅菌することにより滅菌される。
【0016】
上記のように、自動化された製造プロセスまたは半自動化された製造プロセスに対してでさえも、様々なごみが、製造の間にレンズ上に堆積し得る。例えば、レンズのエッジングなどのいずれの機械加工操作が上記レンズ製造に関与するとしても、上記エッジング操作からのばいじんまたは研磨剤が上記レンズに付着し得る。さらには、塵のような自然環境のごみも存在する。作業者は、作業者の指の間で上記レンズをこすり洗いすることにより、手作業で上記レンズを洗浄し得るが、これは労働集約的であり、より高い製造コストを伴い、そしてその作業者が上記レンズを損傷するという危険を導入する。自動化された検査プロセスに対しては、上記レンズ上のごみは、そのごみが検査システムにより欠陥として間違われる場合には、その検査システムが「偽陽性の」不具合を記録することを引き起こし得、従って、低下した歩止まりおよびより高い製造コストを生じる。
【0017】
本発明は、検査に先立って上記レンズからごみを取り除くことにより、この問題を解決する。
【0018】
本発明で用いられる溶液は、水溶液である。上記組成物は、必須成分として、上記レンズからごみを取り除くための界面活性剤を含有する。製造の間にレンズ上に堆積するごみは、上記レンズ表面と弱い化学的相互作用または物理的相互作用を有し、それが上記レンズに付着するごみを発生させると考えられており、例えば、上記製造操作からの汚染物質はVan der Waals力および/または静電荷により付着すると考えられている。このことは、着用されたコンタクトレンズに結合するタンパク質または脂質とは区別される。上記界面活性剤は、好ましくは作業者による上記レンズの手作業のこすり洗いなしに、そのような製造工程のごみを取り除くことができなければならない。
【0019】
好ましい界面活性剤は、非イオン性の、水溶性の界面活性剤である。一般に、上記界面活性剤は、10〜35の範囲の親水−親油平衡(HLB)および400〜20,000の範囲の分子量を有する。
【0020】
一つの範疇の好ましい界面活性剤は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーであり、ここではポリオキシエチレン繰返し単位およびポリオキシプロピレン繰返し単位の比が、上記界面活性剤の親水−親油平衡(HLB)を決定する。第1の例として、ポロキサマー(poloxamer)は、商品名Pluronic(BASF Wyandotte Corp.,Wyandotte,Michigan)の下で入手可能なポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーである。特定のポロキサマーとしては、ポロキサマー407(Pluronic F−127として入手可能)およびポロキサマー108(Pluronic F−38として入手可能)が挙げられる。さらなる例は、メロキサポール105(meroxapol 105)(Pluronic 10 R5として入手可能)である。第2の例として、ポロキサミン(poloxamine)は、商品名テトロニック(Tetronic)(BASF Wyandotte Corp.)の下で入手可能な、そのようなポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーのエチレンジアミン付加物である。特定のポロキサミンとしては、約7,500〜約27,000の分子量を有するポロキサミン1107(テトロニック 1107として入手可能)(ここで、上記付加物の少なくとも40重量パーセントが、ポリ(オキシエチレン)である)、およびポロキサミン1304(テトロニック 1304として入手可能)が挙げられる。
【0021】
別の範疇の界面活性剤は、様々な、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルである。特定の例は、ステアレト100(steareth−100)であり、これは商品名Brij 700(ICI Americas)の下で入手可能である。
【0022】
他の非イオン性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる:脂肪酸(例えば、ココナツ)のポリエチレングリコールエステル、ポリソルベート、高級アルカン(C12〜C18)のポリオキシエチレンエーテルまたは高級アルカンのポリオキシプロピレンエーテル;ポリソルベート20(商品名Tween(登録商標)20の下で入手可能);ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(商品名Brij(登録商標)35の下で入手可能);ポリオキシエチレングリコール(40)ステアレート(商品名Myrj(登録商標)52の下で入手可能);ポリオキシエチレングリコール(20)ステアレート(商品名Myrj(登録商標)49の下で入手可能);およびポリオキシエチレン(25)プロピレングリコールステアレート(商品名Atlas(登録商標)G2612の下で入手可能)。
【0023】
本発明のために適切な様々な他の界面活性剤は、上記記載を考慮して、McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers,North American Edition,McCutcheon Division,MC Publishing Co.,Glen Rock,NJ 07452およびCTFA International Cosmetic Ingredient Handbook(The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association,Washington,D.C.により出版)から容易に把握され得る。
【0024】
好ましくは、上記界面活性剤は、約0.01〜約15重量パーセント、好ましくは0.1〜5.0重量パーセント、そして最も好ましくは0.1〜1.5重量パーセントの総量で用いられる。
【0025】
必要に応じて、上記溶液は、緩衝剤を含み得、この緩衝剤は上記溶液の所望のpH値を維持するために有用である。一般に、約6〜約8の間の、そしてより好ましくは6.8〜7.5の間のpH値が好まれる。適切な緩衝剤としては、以下のものが挙げられる:ホウ酸および/またはホウ酸ナトリウムに基づく、ホウ酸塩緩衝剤;NaHPO、NaHPOおよび/またはKHPOに基づく、リン酸塩緩衝剤;クエン酸カリウムおよび/またはクエン酸に基づく、クエン酸塩緩衝剤;重炭酸ナトリウム;トロメタミン(tromethamine);ならびにこれらの組み合わせ。一般に、緩衝剤は、それが存在する場合には、約0.05〜2.5重量パーセント、そして好ましくは、0.1〜1.5重量パーセントの範囲にわたる量で使用される。
【0026】
必要に応じて、上記溶液は抗菌剤を含み得る。抗菌剤は、コンタクトレンズ着用者により使用される様々なコンタクトレンズケア溶液中で用いられ、着用されない間、そのレンズを消毒する。本発明で用いられる溶液においては、レンズの消毒は必要とされない。しかしながら、望まれる場合には、製造プロセスにおいて保存される間、溶液中の微生物増殖を予防するための抗菌剤が用いられ得る。適切な抗菌剤としては以下のものが挙げられる:ポリ[(ジメチルイミノ)−2−ブテン−1,4−ジイル クロリド]および[4−トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニオ)]−2−ブテニル−w−[トリス(2−ヒドロキシエチル)アンモニオ)]ジクロリド(化学物質登録番号75345−27−6)(一般に、ポリクオタニウム1(Polyquaternium 1)(ONYX Corporation)として入手可能);アレキシジンおよびポリヘキサメチレンビグアニドなどのビグアニドおよびそれらの塩(Cosmocil CQの商品名の下でICI Americas,Inc.,Wilmington DEから入手可能なPHMBなど);塩化ベンザルコニウム(BAK);ならびにソルビン酸。存在する場合には、上記抗菌剤は、上記溶液を保存し、微生物増殖を予防するための有効量で用いられる。
【0027】
上記組成物は、様々な他の成分を含み得、これらの他の成分としては、キレート剤および/または金属イオン封鎖剤ならびに浸透圧重量モル濃度調整剤などが挙げられる。キレート剤は、また金属イオン封鎖剤とも呼ばれ、抗菌剤と組み合わせて頻繁に用いられる。キレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩、特にEDTA二ナトリウムが挙げられる。そのような薬剤は、存在する場合には、約0.01〜約2.0重量パーセントの量で用いられ得る。他の適切な金属イオン封鎖剤としては、グルコン酸、クエン酸、酒石酸およびこれらの塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。浸透圧重量モル濃度調整剤の例としては、以下のものが挙げられる:塩化ナトリウムおよび塩化カリウム;デキストロースなどの単糖;塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム;ならびにグリセリンおよびプロピレングリコールなどの低分子量ポリオール。これらの薬剤は、個々に、約0.01〜5重量パーセント、そして好ましくは、約0.1〜約2重量パーセントの範囲にわたる量で用いられる。塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0028】
上記レンズは、軽く浸漬されることにより、上記溶液と接触させられ得る。例として、複数のレンズがトレイまたはかご中に保持され得、好ましくは個々のレンズを保持するための個々の区画を備えるトレイまたはかご中に保持され得、ここでは、トレイ全体またはかご全体が次いで上記溶液の浴中に軽く浸漬され、その結果、各レンズは、上記溶液ですすがれる。適切なトレイの例は、WO01/32408号(2000年10月10日出願の、米国出願番号第09/684,644号に対応する)および2002年3月28日出願の、米国仮出願番号第60/368,623号に記載されている(これらの出願の開示が本明細書中で参考として援用される)。必要な場合には、上記溶液の浴は攪拌されて、レンズからのごみのより効率的な除去がもたらされ得る。例えば、上記浴は、攪拌機を備え得、または超音波攪拌を備え得る。
【0029】
上記ごみが上記レンズから取り除かれると、上記レンズは、次いで検査されそして包装され得る。
【0030】
本発明の例示として、いくつかの実施例が以下に提供される。これらの実施例は本発明の局面をさらに例示するためだけの役割を果たし、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1〜6)
以下のものは、本発明中で用いられ得る代表的な溶液である。
【0032】
【表1】

以下の実験を実施し、表1中の実施例1〜6の溶液を試験した。70個のシリコーンヒドロゲルレンズを同一の製造ロットから入手した。これらのレンズを、静的型成型プロセスで成型し、本実験に先立って、抽出および水和に供した。上記レンズは、コポリマー バラフィルコンA(balafilcon A)から製造された市販のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、米国特許第5,260,000号(Nanduら)に、より十分に記載されている(米国特許第5,260,000号の開示は、本明細書中で参考として援用される)。
【0033】
上記70個のレンズを7個のサブロットに分け、各サブロットが10個のレンズを含むようにした。各サブロットに対して、100mlの実施例1〜6の各溶液を400mlビーカーに入れ、10個のレンズをこの同じビーカーに置き、10分の継続時間の間、浸漬させた。対照として、100mlの、実施例1〜6の溶液に類似の、しかし界面活性剤を全く含まない溶液を400mlビーカーに入れ、10個のレンズをこの同じビーカーに置いた。各サブロットのレンズを、特定の溶液(実施例1〜6および対照)に軽く浸漬したあとで、上記レンズを直ちに精製水を含む個々のセルに移し、次いで検査場所に移した。このレンズを洗浄効率に関して等級付けした。
【0034】
実施例1〜6の溶液中に軽く浸漬された上記サブロットの各々については、すべての10個のレンズは、十分に洗浄され、指によるこすり洗いは不必要であった。実施例1の溶液中に軽く浸漬された上記レンズは、目立ってよりきれいであることが観察された。対照溶液中に軽く浸漬された上記レンズは、そのレンズに付着した薄黒い粒子を有し、指による洗浄を必要とした。
【0035】
【表2】

表2の溶液を用いて、以下の実験を実施した。表2中の実施例7Aおよび7Bの溶液は表1中の実施例1に対応することが留意される。250個のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ(バラフィルコンA)を同一の製造ロットから入手した。これらのレンズを、静的型成型プロセスで成型し、本実験に先立って抽出および水和に供した。上記レンズを、各50個からなる5個のサブロットに分け、1つのサブロットを対照として使用した。槽を、約7ガロンの、表2中の各溶液で満たした。各サブロットのコンタクトレンズを、トレイを含めて、表2中に示される時間の間、この槽中に軽く浸漬した。上記槽は、超音波攪拌を備えていたが、攪拌は使用しなかった。各サブロットのレンズを指定の時間の間(10分または20分)、特定の溶液中に軽く浸漬したあとで、上記レンズを直ちに精製水の槽に10分間移し、次いで検査場所に移した。このレンズを洗浄効率に関して等級付けした。
【0036】
実施例7A、7B、8Aおよび8Bの溶液中に軽く浸漬された上記サブロットの各々に対して、すべてのレンズは、十分に洗浄され、指によるこすり洗いは不必要であった。それゆえに、10分の軽い浸漬時間は十分であり、そして0.5wt%界面活性剤溶液は十分であった。すべての50個の上記対照レンズは、指による洗浄を必要とした。
【0037】
本発明の局面が、眼科用移植片などの、眼科用レンズ以外の生物医学的デバイスの製造に対して適用可能であることが理解される。従って、本発明はまた、生物医学的デバイスが界面活性剤含有水溶液に接触させられ、上記物品を検査し包装する工程に先立って、上記デバイスからごみを取り除く方法を提供する。
【0038】
様々な好ましい実施形態が例示されてきたが、本発明の多くの他の改変およびバリエーションは、当業者にとって可能である。それゆえに、本願特許請求の範囲内で、本明細書中で特に記載されるもの以外のものによって本発明が実施され得るということは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズを製造する方法であって、該方法が、以下:
レンズ形成モノマー混合物を型中で重合することにより眼科用レンズを成型し、該成型されたレンズを該型から取り出す工程;
該成型されたレンズを、界面活性剤含有水溶液に接触させ、該レンズからごみを除去する工程;および
該レンズを検査し、そして包装する工程
を順次包含する、方法。
【請求項2】
前記水溶液が、緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記緩衝剤が、ホウ酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤およびクエン酸塩緩衝剤からなる群から選択される少なくとも一つのメンバーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液が、塩化ナトリウムをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が、ホウ酸塩緩衝剤および塩化ナトリウムをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、10〜35の範囲の親水−親油平衡を有する非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が、ポロキサマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ポロキサミンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記レンズが、手作業で検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レンズが、オートメーションで検査される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記レンズが、該レンズを前記水溶液中に軽く浸漬することにより、該水溶液に接触させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ごみが、前記コンタクトレンズの手作業のこすり洗いなしに、該レンズから除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記レンズが、コンタクトレンズである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記レンズが、ヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記レンズが、眼内レンズである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
生物医学的デバイスを製造する方法であって、該方法が、該デバイスを界面活性剤含有水溶液に接触させて該デバイスからごみを除去する工程;続いて、該物品を検査しそして包装する工程、を包含する、方法。
【請求項19】
前記デバイスが、ヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記デバイスが、眼科用移植片である、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2006−511835(P2006−511835A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563725(P2004−563725)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040300
【国際公開番号】WO2004/058489
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(391008847)ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド (137)
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
【Fターム(参考)】