レンズアンテナ、及びレーダ装置
【課題】一次放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して一次放射器に戻るのを抑制する技術を提供する。
【解決手段】方の面が平面で他方の面が湾曲面であるレンズアンテナであって、一次放射器の放射面と前記レンズアンテナの平面とが対向し、前記一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いている。
【解決手段】方の面が平面で他方の面が湾曲面であるレンズアンテナであって、一次放射器の放射面と前記レンズアンテナの平面とが対向し、前記一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアンテナ、及びレーダ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズ付き光ファイバに関する技術として、受光面を傾けて光源に戻る反射戻り光を低減する技術が開示されている。また、特許文献2には、車載レーダ装置において、光路変換部を退避位置と挿入位置に切り替えることで、走行レーザービームの方向を切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−314831号公報
【特許文献2】特開平11−52045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダ装置のアンテナとしてレンズアンテナを用いる技術がある。図1は、レンズアンテナの原理図を示す。一次放射器から放射された信号は、レンズ表面で屈折し、基準面に対して位相が揃う。その結果、レンズアンテナからは、位相が揃った平面波が放射される。このように、レンズアンテナによれば、一次放射器から放射された信号を平面波に変換することで、ビームを形成することができる。
【0005】
しかしながら、レンズアンテナでは、以下のような課題がある。すなわち、一次放射器から放射された信号は、レンズ表面で一部が反射し一次放射器側に戻る。その結果、レーダ装置で取得するターゲットで反射されたビームに対応する信号に、レンズ表面で反射した信号が多く含まれることになる。この場合、レーダ装置で受信する信号の振幅、位相歪みが生じ、方位誤差が大きくなることが懸念される。なお、レンズ表面で反射して一次放射器側に戻る信号の戻り量は、レンズの形状によって異なる。一方の面が平面で他方の面が外側に湾曲したレンズを用いた場合、図2に示すように、湾曲面を一次放射器側にすると、平面で反射した信号は全て一次放射器側に戻ることになる。また、図3に示すように、平面を一次放射器側にすると、平面の中心付近で反射された信号が一次放射器に戻ることになる。
【0006】
本発明では、一次放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して一次放射器に戻るのを抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上述した課題を解決するため、レンズアンテナの光軸を放射器から放射される信号の放射方向からシフトし、かつ、レンズアンテナの光軸を傾けることとした。
【0008】
より詳細には、本発明は、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であるレンズアンテナであって、前記レンズアンテナの光軸が放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレンズアンテナである。
【0009】
放射方向とは、レンズアンテナから放射されるビームの進行方向であり、光軸とは、レンズアンテナの中心を通り、かつレンズアンテナの平面と直交する軸である。ビームは、
放射器から放射された信号の位相がレンズアンテナによって平面波に変換されることで形成される。放射器は、信号を放射するものであればよく、一次放射器としてのアンテナが例示される。本発明に係るレンズアンテナでは、レンズアンテナの光軸を傾けることで、レンズアンテナの平面で反射して放射器へ戻る量を低減することができる。但し、レンズアンテナを上記のように傾けると、レンズアンテナから放射されるビームの放射方向が傾く。そこで、本発明に係るレンズアンテナでは、レンズアンテナの光軸が放射器の放射方向と直交する方向へ所定量シフトすることで、ビームの放射方向が変更されるのを抑制する。つまり、本発明に係るレンズアンテナでは、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射して放射器へ戻る信号の戻り量を低減できる。その結果、例えば、レンズアンテナをレーダ装置のアンテナに用いた場合には、レーダ装置で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、その結果、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナが傾くことでレンズに付着する水滴や雪を低減することができる。このように、本発明に係るレンズアンテナは、レーダ装置のアンテナとして好適に用いることができる。
【0010】
本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記レンズアンテナから放射されるビームの放射方向が前記放射器から放射される信号の放射方向と同じとなるように前記レンズアンテナの光軸が傾いているようにしてもよい。ビームの放射方向がシフト前と同じとなるようにレンズアンテナの光軸を傾けることで、ビームの放射方向が変更されるのを抑制することができる。
【0011】
本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記放射器の放射面と前記レンズアンテナの平面とが対向するようにしてもよい。放射器の放射面とレンズアンテナの平面とを対向させた場合には、レンズアンテナの中心付近で反射された信号が放射器へ戻る。そこで、本発明のように、レンズアンテナの光軸をシフトし、傾けることで、レンズアンテナで反射して放射器へ戻る信号の戻り量を低減することができる。なお、放射器の放射面とレンズアンテナの湾曲面とを対向させる場合には、平面で反射した信号が全て放射器へ戻ることになる。そのため、放射器の放射面とレンズアンテナの湾曲面とを対向させる場合、信号の受信を正常に行えない虞がある。従って、放射器の放射面とレンズアンテナの湾曲面とを対向させる場合には、本発明のレンズアンテナは、送信用アンテナとして用いることが好ましい。
【0012】
本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記レンズアンテナの光軸をシフトさせる際の所定量は、前記放射器の放射面の面積、前記レンズアンテナの平面の面積、前記放射器の放射面から前記レンズアンテナの平面までの距離、のうち何れか一つに基づいて決定することができる。
【0013】
例えば、放射器の放射面の基準面積を設定し、この放射面の基準面積よりも小さくする場合には、反射する量(放射器へ戻る信号の戻り量)も減少することから、所定量は相対的に小さくすることが好ましい。逆に、放射器の放射面を放射面の基準面積よりも大きくする場合には、所定量は相対的に大きくすることができる。また、レンズアンテナの平面の基準面積を設定し、この基準面積よりも小さくする場合には、レンズアンテナから放射されるレーダも低減することから放射されるレーダの特性を考慮して所定量を決定することが好ましい。逆に、レンズアンテナの平面の基準面積を設定し、この基準面積よりも大きくする場合には、レンズアンテナから放射されるレーダは増加することから、平面の基準面積よりも小さくする場合と比較して所定量は大きくすることができる。また、放射器の放射面からレンズアンテナの平面までの基準距離を設定し、この基準距離よりも短くする場合には、反射する量が増加することから、所定量は相対的に大きくすることができる。逆に、この基準距離よりも長くする場合には、反射する量が低減することから、所定量は相対的に小さくすることが好ましい。なお、所定量は、放射器の放射面の面積、レンズ
アンテナの平面の面積、放射器の放射面から前記レンズアンテナの平面までの距離の相互の影響を受けることから、総合的に考慮して設計することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記レンズアンテナの光軸を傾ける際のチルト量は、前記所定量、前記レンズアンテナの湾曲面の形状のうち何れか一つに基づいて決定することができる。例えば、前記所定量が大きくなるとビームの放射方向の傾きも大きくなることから、チルト量は、所定量を考慮する必要がある。また、湾曲面の曲率が大きくなるとビームの放射方向の傾きへの影響も大きくなることから、チルト量は、湾曲面の形状を考慮する必要がある。
【0015】
また、本発明に係るレンズアンテナは、前記レンズアンテナの平面で反射した信号を検出する検出部を更に備える構成とすることができる。検出部を備えることで、放射器から信号が放射されているか否かを判断することができる。
【0016】
また、本発明は、上述したレンズアンテナを含むレーダ装置として特定することができる。すなわち、本発明は、信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、前記回路基板と接続される導波管と、前記導波管から送られる信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、前記レンズアンテナの光軸が前記信号送受部から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置である。
【0017】
また、本発明は、信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、前記回路基板と接続される放射器と、前記放射器から放射される信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、前記レンズアンテナの光軸が前記放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置としてもよい。
【0018】
本発明によれば、導波管又は放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して平面アンテナに戻るのを抑制することができる。その結果、レーダ装置で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナが傾くことでレンズに付着する水滴や雪を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して放射器に戻るのを抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】レンズアンテナの原理図を示す。
【図2】湾曲面を一次放射器側に設置した場合における反射の様子を示す。
【図3】平面を一次放射器側に設置した場合における反射の様子を示す。
【図4】第一実施形態に係るレンズアンテナをy軸方向に対して傾けた様子を示す。
【図5】一次放射器を一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトさせた様子を示す。
【図6】レンズアンテナから放射されるビームが正面を向くように、レンズアンテナの光軸をy軸方向に対して傾けた様子を示す。
【図7】第二実施形態に係るレンズアンテナを示す。
【図8】第三実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。
【図9】第三実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。
【図10】第四実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。
【図11】第四実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明のレンズアンテナ及びレーダ装置の実施形態について説明する。なお、本発明のレンズアンテナ及びレーダ装置は以下に説明する実施形態に限定されない。
【0022】
[第一実施形態]
図4は、第一実施形態に係るレンズアンテナをy軸方向に対して所定量傾けた(チルトさせた)様子を示す。図4に示す第一実施形態に係るレンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、レンズアンテナの光軸が傾いている。その結果、図4に示すように、一次放射器から放射された信号は、その一部がレンズアンテナの平面で反射して一次放射器へ戻るが、第一実施形態では、この反射して戻る信号(図4において「反射」を付した矢印で示す)の戻り量を低減できる。このように、レンズアンテナの光軸を傾けることで、少なくともレンズアンテナの平面で反射して一次放射器へ戻る信号の戻り量を低減することができる。
【0023】
図5は、一次放射器を一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向(y軸方向)へ所定量シフトさせた様子を示す。一次放射器をy軸方向にシフトさせると、一次放射器から放射されレンズアンテナへ到達する信号の位相が変化することから、レンズアンテナで形成されるビームの放射方向が傾く。放射方向とは、レンズアンテナから放射される平面波のビームの進行方向であり、光軸とは、レンズアンテナの中心を通り、かつレンズアンテナの平面と直交する軸である。
【0024】
図6は、レンズアンテナから放射されるビームが正面を向くように、レンズアンテナをy軸方向に対して傾けた様子を示す。一次放射器をy軸方向にシフトし、かつ、レンズアンテナを傾けることでビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射して一次放射器に戻る信号の戻り量を低減できる。
【0025】
ここで、レンズアンテナで反射して一次放射器に戻る信号の戻り量を低減できる理由について、簡単に説明する。レンズアンテナを傾けてもその平面で反射して一次放射器に戻る箇所は存在する。図6の例では平面の中心から離れたP点が反射点となる。しかしなが
ら、一次放射器から放射される信号の強度は放射方向中心が最も強く、放射方向中心から外れるにつれて信号強度が弱くなる。従って、放射方向中心から離れたP点に到達する信
号強度は中心に比べ弱く、P点で反射して一次放射器に戻る信号の強度も弱くなるため、
一次放射器に戻る信号の戻り量が低減することになる。
【0026】
第一実施形態に係るレンズアンテナでは、レンズアンテナの光軸が一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、レンズアンテナから放射されるビームが正面を向くように、レンズアンテナの光軸をy軸方向に対して傾けることで、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射して一次放射器へ戻る信号の戻り量を低減できる。なお、シフトさせる対象は、一次放射器に代えてレンズアンテナでもよい。また、傾ける対象は、レンズアンテナに代えて一次放射器でもよい。
【0027】
以上により、第一実施形態に係るレンズアンテナでは、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射した信号が一次放射器へ戻る信号の戻り量(リターンロス)を低減できる。また、レンズアンテナでは、中心で反射された信号の強度が最も強い。従って、レンズアンテナの中心で反射された信号が一次放射器(給電点)に反射されると、一次放射器から放射される信号と反射した信号が干渉するなど、一次放射器の機能を低下させることが懸念される。第一実施形態に係るレンズアンテナでは、中心で反射された信
号の一次放射器への反射が抑制されることから、一次放射器の機能低下を防ぐことができる。
【0028】
[第二実施形態]
第二実施形態に係るレンズアンテナは、レンズアンテナの平面で反射した信号を検出する検出部を更に備える。図7は、第二実施形態に係るレンズアンテナの構成例を示す。第二実施形態に係るレンズアンテナは、検出部を備えることで、一次放射器から信号が放射されているか否かを判断することができる。これにより、一次放射器から信号が放射されるべきにもかかわらず、信号が放射されないようなレーダ装置の異常を検出することができる。検出結果は、表示部に表示するようにしてもよく、また、音を出力するようにしてもよい。なお、中心で反射された信号の強度が高いことから、検出部は中心で反射された信号が入力される位置に設けることが好ましい。
【0029】
[第三実施形態]
第三実施形態では、レンズアンテナをミリ波レーダのレドーム及びアンテナとして用いる場合を例に説明する。
【0030】
<構成>
図8は、第三実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。図9は、第三実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。第三実施形態に係るミリ波レーダ100は、前面視四角形であり(以下、レンズアンテナ側を前面とする)、全体として箱型形状である。ミリ波とは、一般的に30GHz〜300GHz(波長10mm〜1mm)の周波数帯である。第三実施形態のミリ波レーダ100は、76GHzのミリ波帯を採用する。変調方式は、FM−CW(Frequency−Modulated Continuous Waves)レーダ方式である。そして、図8に示すように、第三実施形態に係るミリ波レーダ100は、レンズアンテナ1、Oリング15、アンテナ2、アンテナシャーシ3、RFシャーシ4、導波管10、RF基板5、ベースバンド基板6、ケース7、呼吸部8、外部コネクタ9を備える。
【0031】
レンズアンテナ1は、ミリ波レーダ100の前面を保護するレドームとして機能するとともに、アンテナ2のパッチ21から放射される信号を平面波に変換してターゲットに向けて放射する(図9のレンズアンテナ1から伸びる矢印は、放射されるビームを示す。)。第三実施形態に係るレンズアンテナ1は、樹脂によって構成され、全体として四角形状である。そして、アンテナ2のパッチ21を覆うように、換言すると、アンテナ2のパッチ21に対応する中央付近に対応する位置にレンズアンテナとして機能するレンズ部Aが形成されている。レンズ部Aは、前面側にC字状に突出した湾曲面と、背面側の平面とを有する。レンズ部Aは、換言すると、横方向に延出するかまぼこ形状を有している。背面側の平面は、アンテナ2のパッチ21と対向している。また、レンズ部Aは、アンテナ2のパッチ21から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、レンズアンテナ1のレンズ部Aから放射されるビームの放射方向がシフト前と同じによるようにレンズ部Aの光軸が傾いている。なお、レンズアンテナ1の四隅には、ケース7と接続する際に用いるねじ孔11が設けられている。
【0032】
Oリング15は、シール部材であり、レンズアンテナ1とケース7との間に設けられ、レンズアンテナ1とケース7との接続部分からの水の浸入を防止する。
【0033】
アンテナ2は、ミリ波帯の信号を放射し、また、ターゲットで反射されたビームをレンズアンテナ1を介して信号として受信する(図9のアンテナ1から伸びる矢印は、放射される信号を示す。)。実施形態に係るアンテナ2は、マイクロストリップパッチ(パッチ21)を有するプリント基板からなる平面アンテナによって構成されている。パッチ21
は、本発明の放射器に相当する。なお、アンテナ2は、送信ポートと受信ポートを少なくとも各1つ以上有していればよく、ポート数は特に限定されない。また、送信ポートと受信ポートは切替自在な共有ポートでもよい。アンテナシャーシ3は、アンテナ2と面接続され、アンテナ2を支持する。
【0034】
RFシャーシ4は、RF基板5と面接続され、RF基板5を支持する。RFシャーシ4は、RF基板5とレンズアンテナ1との間のノイズの伝播を遮断する機能も有する。第三実施形態では、RFシャーシ4は金属シャーシからなる。RFシャーシ4は、凡そ四角形であり、両側に突起部が設けられている。そして、この突起部には、RF基板5と接続する際に用いるねじ孔31が形成されている。
【0035】
導波管10は、RF基板5のアンテナ変換部のパッチ50から放射される信号(本実施形態では、76GHz)を流す。導波管10は、アンテナシャーシ3及びRFシャーシ4に形成された貫通孔によって形成されている。本実施形態では、導波管10は、RFシャーシ4の横方向に6つ形成されている。
【0036】
RF基板5は、ミリ波送受信部501、送信制御回路504、受信回路503を含むアナログ回路部502が設けられている。ミリ波送受信部501は、アンテナ2との間でミリ波帯域の信号の送信及び受信を行う。具体的には、アンテナ変換部のパッチ50により、信号の送信及び受信を行う。送信制御回路504は、デジタル信号処理部(DSP:Digital Signal Processor)505の制御の下、周波数変調を行いアンテナ2から放射する信号を生成する。受信回路503は、ミリ波送受信部501で受信した信号からビート信号を検出する。第三実施形態に係るRF基板5は、プリント基板によって構成されている。RF基板5の両側であってアンテナシャーシのねじ孔31とRFシャーシのねじ孔41に対応する位置に、RF基板のねじ孔51が形成されている。また、RF基板5には、RF基板5からのノイズを遮蔽するグラウンド層が内層されている(図示せず)。
【0037】
ベースバンド基板6には、デジタル信号処理部505やマイコン506等が設けられている。デジタル信号処理部505は、送信制御回路504による周波数変調を制御してアンテナ2から放射する信号を生成する。また、デジタル信号処理部505は、受信回路503から受信したビート信号のFFT周波数解析等を行う。マイコン506は、外部コネクタ9を介して与えられる命令に基づいてミリ波レーダ全体の制御を行う。また、ベースバンド基板6には、更に、RF基板との接続コネクタ61と、外部との接続コネクタ62が設けられている。
【0038】
ケース7は、アンテナ2、アンテナシャーシ3、RFシャーシ4、RF基板5、ベースバンド基板6を収容する。ケース7は、四角形の前面が開放された箱型形状であり、四隅にはレンズアンテナのねじ孔11に対応するねじ孔71が形成されている。ケース7とレンズアンテナ1がOリング15を介してねじによって接続されることで、ケース7内の気密性が確保される。ケース7の背面には、呼吸部8が設けられており、空気の出し入れが可能となっている。これにより、温度変化に伴うケース7内の空気の収縮・膨張に起因したレンズアンテナ1の破損を防止することができる。
【0039】
外部コネクタ9は、外部との接続コネクタ62と接続され、外部装置(例えば、車両のECU)とミリ波レーダ100とを電気的に接続する。
【0040】
電源508は、ミリ波レーダ100内部の各デバイスが使用する電源を供給する。
【0041】
<レンズアンテナの設計>
レンズアンテナ1のシフト量やチルト量は、ミリ波レーダの製造時において予め設計される。レンズアンテナ1のシフト量やチルト量は、例えば、以下のように設計することができる。
【0042】
レンズアンテナのシフト量は、アンテナ2のパッチ21の面積、レンズアンテナ1の平面の面積、アンテナ2のパッチ21からレンズアンテナ1の平面までの距離、のうち何れか一つに基づいて決定することができる。
【0043】
例えば、アンテナ2のパッチ21の基準面積を設定し、アンテナ2のパッチ21の面積をこの基準面積よりも小さくする場合には、反射する量も減少することから、シフト量は相対的に小さくすることが好ましい。パッチの基準面積は、基準値として実験等に基づいて任意に設定することができる。逆に、アンテナ2のパッチ21の面積を基準面積よりも大きくする場合には、シフト量は相対的に大きくすることができる。また、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の基準面積を設定し、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の面積をこの基準面積よりも小さくする場合には、レンズアンテナのレンズ部Aから放射されるレーダも低減することから放射されるレーダの特性を考慮してシフト量を決定することが好ましい。レンズ部Aの平面の基準面積は、基準値として実験等に基づいて任意に設定することができる。逆に、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の基準面積を設定し、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の面積をこの基準面積よりも大きくする場合には、レンズアンテナのレンズ部Aから放射されるレーダは増加することから、平面の基準面積よりも小さくする場合と比較してシフト量は大きくすることができる。また、アンテナ2のパッチ21からレンズアンテナ1の平面までの基準距離を設定し、この基準距離よりも短くする場合には、反射する量が増加することから、シフト量は相対的に大きくすることができる。基準距離は、基準値として実験等に基づいて任意に設定することができる。逆に、この基準距離よりも長くする場合には、反射する量が低減することから、シフト量は相対的に小さくすることが好ましい。なお、シフト量は、アンテナ2のパッチ21の面積、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の面積、アンテナ2のパッチ21の放射面からレンズアンテナのレンズ部Aの平面までの距離の相互の影響を受けることから、総合的に考慮して設計することが好ましい。
【0044】
レンズアンテナのレンズ部Aの光軸を傾ける際のチルト量は、シフト量、レンズアンテナのレンズ部Aの湾曲面の形状のうち何れか一つに基づいて決定することができる。例えば、シフト量が大きくなるとビームの放射方向の傾きも大きくなることから、チルト量は、シフト量を考慮する必要がある。また、湾曲面の曲率が大きくなるとビームの放射方向の傾きへの影響も大きくなることから、チルト量は、湾曲面の形状を考慮する必要がある。
【0045】
<動作>
上述したミリ波レーダの動作の概略は以下の通りである。デジタル信号処理部505により、送信制御回路504による周波数変調を制御してアンテナ2から放射する信号が生成される。生成された信号は、ミリ波送受信部501に送信され、ミリ波送受信部501のアンテナ変換部のパッチ50からミリ波帯の信号が導波管10を通ってアンテナ2へ送信される。そして、アンテナ2のパッチ21からミリ波帯の信号が放射され、レンズアンテナ1は、この放射された信号を平面波のビームに変換し、ターゲットに向けて変換したビームを放射する。ターゲットで反射されたビームがレンズアンテナ1を介して信号としてアンテナ2で受信される。受信された信号は、導波管10を介して受信回路503に入力され、受信回路503では、受信した信号からビート信号が検出される。デジタル信号処理部505では、ビート信号のFFT周波数解析等を行い、距離、相対速度、角度情報を演算することでターゲットの位置が検出される。
【0046】
<効果>
以上説明した第三実施形態に係るミリ波レーダ100によれば、レンズアンテナのレンズ部Aの光軸を傾けることで、レンズアンテナのレンズ部Aの平面で反射してアンテナ2のパッチ21へ戻る信号の戻り量を低減することができる。また、レンズアンテナ1の光軸がアンテナ2のパッチ21の放射方向と直交する方向へ所定量シフトすることで、ビームの放射方向が傾け前と同じとなるようにビームの放射方向が変更されるのを抑制できる。つまり、第三実施形態に係るレンズアンテナ1では、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナ1で反射してアンテナ2のパッチ21へ戻る信号の戻り量を低減できる。その結果、ミリ波レーダ100で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナ1が傾くことでレンズアンテナに付着する水滴や雪を低減することができる。
【0047】
[第四実施形態]
図10は、第四実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。図11は、第四実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。第四実施形態に係るミリ波レーダ101は、レンズアンテナ1a、Oリング15、RFシャーシ4、導波管10、RF基板5、ベースバンド基板6、ケース7、呼吸部8、外部コネクタ9を備える。換言すると、第四実施形態に係るミリ波レーダ101は、第三実施形態に係るミリ波レーダ100におけるアンテナ2、アンテナシャーシ3を備えない構成である。なお、同一の構成については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。以下、第三実施形態に係るミリ波レーダ101との相違点を中心に説明する。
【0048】
レンズアンテナ1aは、ミリ波レーダ101の前面を保護するレドームとして機能するとともに、RF基板5のミリ波送受信部501(アンテナ変換部のパッチ50)から放射される信号を平面波のビームに変換してターゲットに向けて放射する(図11のレンズアンテナ1aから伸びる矢印は、放射されるビームを示す。)。パッチ50は、本発明の放射器に相当する。第四実施形態に係るレンズアンテナ1aは、アンテナ変換部のパッチ50に対応する中央付近、換言すると導波管10の開口部に対応する位置にレンズアンテナとして機能するレンズ部Bが形成されている。レンズ部Bは、前面側にC字状に突出した湾曲面と、背面側の平面とを有する。レンズ部Bは、換言すると、第三実施形態のレンズ部Aと同じく、横方向に延出するかまぼこ形状を有している。但し、第四実施形態のレンズ部Bは、導波管10の開口部に対応する位置に設けられており、第三実施形態のレンズ部Aよりも、高さ方向における幅が狭く、また曲率が大きく形成されている。なお、背面側の平面は、アンテナ変換部のパッチ50と対向している。また、レンズ部Bは、アンテナ変換部のパッチ50から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、レンズアンテナ1aのレンズ部Bから放射されるビームの放射方向がシフト前と同じによるようにレンズ部Bの光軸が傾いている。なお、レンズアンテナ1aの四隅には、ケース7と接続する際に用いるねじ孔11が設けられている。
【0049】
第四実施形態に係るミリ波レーダ101の動作は、基本的には第三実施形態に係るミリ波レーダ100と同じである。すなわち、デジタル信号処理部505により、送信制御回路504による周波数変調を制御してアンテナ2から放射する信号が生成される。生成された信号は、ミリ波送受信部501に送信される。第四実施形態に係るミリ波レーダは、アンテナ2を備えないことから、ミリ波送受信部501のアンテナ変換部のパッチ50からミリ波帯の信号が導波管10を通ってレンズアンテナ1aへ送信される(図11のミリ波送受信部501から伸びる矢印は、放射される信号を示す。)。レンズアンテナ1aは、導波管10から送られた信号を平面波に変換してターゲットに向けて放射する。ターゲットで反射されたレーダがレンズアンテナ1aで受信される。受信されたレーダは、導波管10を介して受信回路503に信号として入力され、受信回路503では、受信した信号からビート信号が検出される。デジタル信号処理部505では、ビート信号のFFT周
波数解析等を行い、距離、相対速度、角度情報を演算することでターゲットの位置が検出される。
【0050】
以上説明した第四実施形態に係るミリ波レーダ101によれば、レンズアンテナのレンズ部Bの光軸を傾けることで、レンズアンテナのレンズ部Bの平面で反射してアンテナ変換部のパッチ50へ戻る信号の戻り量を低減することができる。また、レンズアンテナ1の光軸がアンテナ変換部のパッチ50の放射方向と直交する方向へ所定量シフトすることで、ビームの放射方向が傾け前と同じとなるようにし、ビームの放射方向が変更されるのを抑制できる。つまり、第四実施形態に係るレンズアンテナ1aでは、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナ1aで反射してアンテナ変換部のパッチ50へ戻る信号の戻り量を低減できる。その結果、ミリ波レーダ101で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナ1aが傾くことでレンズアンテナに付着する水滴や雪を低減することができる。更に、レンズアンテナ1aは、他のミリ波レーダを構成するレドーム、平面アンテナ、アンテナシャーシが不要となる。従って、部品点数を大幅に削減し、その結果コストの削減も可能となる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るレンズアンテナ、及びレーダ装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・レンズアンテナ
4・・・RFシャーシ
5・・・RF基板
6・・・ベースバンド基板
7・・・ケース
8・・・呼吸部
9・・・外部コネクタ
10・・・導波管
15・・・Oリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアンテナ、及びレーダ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズ付き光ファイバに関する技術として、受光面を傾けて光源に戻る反射戻り光を低減する技術が開示されている。また、特許文献2には、車載レーダ装置において、光路変換部を退避位置と挿入位置に切り替えることで、走行レーザービームの方向を切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−314831号公報
【特許文献2】特開平11−52045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダ装置のアンテナとしてレンズアンテナを用いる技術がある。図1は、レンズアンテナの原理図を示す。一次放射器から放射された信号は、レンズ表面で屈折し、基準面に対して位相が揃う。その結果、レンズアンテナからは、位相が揃った平面波が放射される。このように、レンズアンテナによれば、一次放射器から放射された信号を平面波に変換することで、ビームを形成することができる。
【0005】
しかしながら、レンズアンテナでは、以下のような課題がある。すなわち、一次放射器から放射された信号は、レンズ表面で一部が反射し一次放射器側に戻る。その結果、レーダ装置で取得するターゲットで反射されたビームに対応する信号に、レンズ表面で反射した信号が多く含まれることになる。この場合、レーダ装置で受信する信号の振幅、位相歪みが生じ、方位誤差が大きくなることが懸念される。なお、レンズ表面で反射して一次放射器側に戻る信号の戻り量は、レンズの形状によって異なる。一方の面が平面で他方の面が外側に湾曲したレンズを用いた場合、図2に示すように、湾曲面を一次放射器側にすると、平面で反射した信号は全て一次放射器側に戻ることになる。また、図3に示すように、平面を一次放射器側にすると、平面の中心付近で反射された信号が一次放射器に戻ることになる。
【0006】
本発明では、一次放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して一次放射器に戻るのを抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上述した課題を解決するため、レンズアンテナの光軸を放射器から放射される信号の放射方向からシフトし、かつ、レンズアンテナの光軸を傾けることとした。
【0008】
より詳細には、本発明は、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であるレンズアンテナであって、前記レンズアンテナの光軸が放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレンズアンテナである。
【0009】
放射方向とは、レンズアンテナから放射されるビームの進行方向であり、光軸とは、レンズアンテナの中心を通り、かつレンズアンテナの平面と直交する軸である。ビームは、
放射器から放射された信号の位相がレンズアンテナによって平面波に変換されることで形成される。放射器は、信号を放射するものであればよく、一次放射器としてのアンテナが例示される。本発明に係るレンズアンテナでは、レンズアンテナの光軸を傾けることで、レンズアンテナの平面で反射して放射器へ戻る量を低減することができる。但し、レンズアンテナを上記のように傾けると、レンズアンテナから放射されるビームの放射方向が傾く。そこで、本発明に係るレンズアンテナでは、レンズアンテナの光軸が放射器の放射方向と直交する方向へ所定量シフトすることで、ビームの放射方向が変更されるのを抑制する。つまり、本発明に係るレンズアンテナでは、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射して放射器へ戻る信号の戻り量を低減できる。その結果、例えば、レンズアンテナをレーダ装置のアンテナに用いた場合には、レーダ装置で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、その結果、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナが傾くことでレンズに付着する水滴や雪を低減することができる。このように、本発明に係るレンズアンテナは、レーダ装置のアンテナとして好適に用いることができる。
【0010】
本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記レンズアンテナから放射されるビームの放射方向が前記放射器から放射される信号の放射方向と同じとなるように前記レンズアンテナの光軸が傾いているようにしてもよい。ビームの放射方向がシフト前と同じとなるようにレンズアンテナの光軸を傾けることで、ビームの放射方向が変更されるのを抑制することができる。
【0011】
本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記放射器の放射面と前記レンズアンテナの平面とが対向するようにしてもよい。放射器の放射面とレンズアンテナの平面とを対向させた場合には、レンズアンテナの中心付近で反射された信号が放射器へ戻る。そこで、本発明のように、レンズアンテナの光軸をシフトし、傾けることで、レンズアンテナで反射して放射器へ戻る信号の戻り量を低減することができる。なお、放射器の放射面とレンズアンテナの湾曲面とを対向させる場合には、平面で反射した信号が全て放射器へ戻ることになる。そのため、放射器の放射面とレンズアンテナの湾曲面とを対向させる場合、信号の受信を正常に行えない虞がある。従って、放射器の放射面とレンズアンテナの湾曲面とを対向させる場合には、本発明のレンズアンテナは、送信用アンテナとして用いることが好ましい。
【0012】
本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記レンズアンテナの光軸をシフトさせる際の所定量は、前記放射器の放射面の面積、前記レンズアンテナの平面の面積、前記放射器の放射面から前記レンズアンテナの平面までの距離、のうち何れか一つに基づいて決定することができる。
【0013】
例えば、放射器の放射面の基準面積を設定し、この放射面の基準面積よりも小さくする場合には、反射する量(放射器へ戻る信号の戻り量)も減少することから、所定量は相対的に小さくすることが好ましい。逆に、放射器の放射面を放射面の基準面積よりも大きくする場合には、所定量は相対的に大きくすることができる。また、レンズアンテナの平面の基準面積を設定し、この基準面積よりも小さくする場合には、レンズアンテナから放射されるレーダも低減することから放射されるレーダの特性を考慮して所定量を決定することが好ましい。逆に、レンズアンテナの平面の基準面積を設定し、この基準面積よりも大きくする場合には、レンズアンテナから放射されるレーダは増加することから、平面の基準面積よりも小さくする場合と比較して所定量は大きくすることができる。また、放射器の放射面からレンズアンテナの平面までの基準距離を設定し、この基準距離よりも短くする場合には、反射する量が増加することから、所定量は相対的に大きくすることができる。逆に、この基準距離よりも長くする場合には、反射する量が低減することから、所定量は相対的に小さくすることが好ましい。なお、所定量は、放射器の放射面の面積、レンズ
アンテナの平面の面積、放射器の放射面から前記レンズアンテナの平面までの距離の相互の影響を受けることから、総合的に考慮して設計することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るレンズアンテナにおいて、前記レンズアンテナの光軸を傾ける際のチルト量は、前記所定量、前記レンズアンテナの湾曲面の形状のうち何れか一つに基づいて決定することができる。例えば、前記所定量が大きくなるとビームの放射方向の傾きも大きくなることから、チルト量は、所定量を考慮する必要がある。また、湾曲面の曲率が大きくなるとビームの放射方向の傾きへの影響も大きくなることから、チルト量は、湾曲面の形状を考慮する必要がある。
【0015】
また、本発明に係るレンズアンテナは、前記レンズアンテナの平面で反射した信号を検出する検出部を更に備える構成とすることができる。検出部を備えることで、放射器から信号が放射されているか否かを判断することができる。
【0016】
また、本発明は、上述したレンズアンテナを含むレーダ装置として特定することができる。すなわち、本発明は、信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、前記回路基板と接続される導波管と、前記導波管から送られる信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、前記レンズアンテナの光軸が前記信号送受部から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置である。
【0017】
また、本発明は、信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、前記回路基板と接続される放射器と、前記放射器から放射される信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、前記レンズアンテナの光軸が前記放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置としてもよい。
【0018】
本発明によれば、導波管又は放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して平面アンテナに戻るのを抑制することができる。その結果、レーダ装置で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナが傾くことでレンズに付着する水滴や雪を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射器から放射された信号がレンズアンテナの表面で反射して放射器に戻るのを抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】レンズアンテナの原理図を示す。
【図2】湾曲面を一次放射器側に設置した場合における反射の様子を示す。
【図3】平面を一次放射器側に設置した場合における反射の様子を示す。
【図4】第一実施形態に係るレンズアンテナをy軸方向に対して傾けた様子を示す。
【図5】一次放射器を一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトさせた様子を示す。
【図6】レンズアンテナから放射されるビームが正面を向くように、レンズアンテナの光軸をy軸方向に対して傾けた様子を示す。
【図7】第二実施形態に係るレンズアンテナを示す。
【図8】第三実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。
【図9】第三実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。
【図10】第四実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。
【図11】第四実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明のレンズアンテナ及びレーダ装置の実施形態について説明する。なお、本発明のレンズアンテナ及びレーダ装置は以下に説明する実施形態に限定されない。
【0022】
[第一実施形態]
図4は、第一実施形態に係るレンズアンテナをy軸方向に対して所定量傾けた(チルトさせた)様子を示す。図4に示す第一実施形態に係るレンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、レンズアンテナの光軸が傾いている。その結果、図4に示すように、一次放射器から放射された信号は、その一部がレンズアンテナの平面で反射して一次放射器へ戻るが、第一実施形態では、この反射して戻る信号(図4において「反射」を付した矢印で示す)の戻り量を低減できる。このように、レンズアンテナの光軸を傾けることで、少なくともレンズアンテナの平面で反射して一次放射器へ戻る信号の戻り量を低減することができる。
【0023】
図5は、一次放射器を一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向(y軸方向)へ所定量シフトさせた様子を示す。一次放射器をy軸方向にシフトさせると、一次放射器から放射されレンズアンテナへ到達する信号の位相が変化することから、レンズアンテナで形成されるビームの放射方向が傾く。放射方向とは、レンズアンテナから放射される平面波のビームの進行方向であり、光軸とは、レンズアンテナの中心を通り、かつレンズアンテナの平面と直交する軸である。
【0024】
図6は、レンズアンテナから放射されるビームが正面を向くように、レンズアンテナをy軸方向に対して傾けた様子を示す。一次放射器をy軸方向にシフトし、かつ、レンズアンテナを傾けることでビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射して一次放射器に戻る信号の戻り量を低減できる。
【0025】
ここで、レンズアンテナで反射して一次放射器に戻る信号の戻り量を低減できる理由について、簡単に説明する。レンズアンテナを傾けてもその平面で反射して一次放射器に戻る箇所は存在する。図6の例では平面の中心から離れたP点が反射点となる。しかしなが
ら、一次放射器から放射される信号の強度は放射方向中心が最も強く、放射方向中心から外れるにつれて信号強度が弱くなる。従って、放射方向中心から離れたP点に到達する信
号強度は中心に比べ弱く、P点で反射して一次放射器に戻る信号の強度も弱くなるため、
一次放射器に戻る信号の戻り量が低減することになる。
【0026】
第一実施形態に係るレンズアンテナでは、レンズアンテナの光軸が一次放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、レンズアンテナから放射されるビームが正面を向くように、レンズアンテナの光軸をy軸方向に対して傾けることで、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射して一次放射器へ戻る信号の戻り量を低減できる。なお、シフトさせる対象は、一次放射器に代えてレンズアンテナでもよい。また、傾ける対象は、レンズアンテナに代えて一次放射器でもよい。
【0027】
以上により、第一実施形態に係るレンズアンテナでは、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナで反射した信号が一次放射器へ戻る信号の戻り量(リターンロス)を低減できる。また、レンズアンテナでは、中心で反射された信号の強度が最も強い。従って、レンズアンテナの中心で反射された信号が一次放射器(給電点)に反射されると、一次放射器から放射される信号と反射した信号が干渉するなど、一次放射器の機能を低下させることが懸念される。第一実施形態に係るレンズアンテナでは、中心で反射された信
号の一次放射器への反射が抑制されることから、一次放射器の機能低下を防ぐことができる。
【0028】
[第二実施形態]
第二実施形態に係るレンズアンテナは、レンズアンテナの平面で反射した信号を検出する検出部を更に備える。図7は、第二実施形態に係るレンズアンテナの構成例を示す。第二実施形態に係るレンズアンテナは、検出部を備えることで、一次放射器から信号が放射されているか否かを判断することができる。これにより、一次放射器から信号が放射されるべきにもかかわらず、信号が放射されないようなレーダ装置の異常を検出することができる。検出結果は、表示部に表示するようにしてもよく、また、音を出力するようにしてもよい。なお、中心で反射された信号の強度が高いことから、検出部は中心で反射された信号が入力される位置に設けることが好ましい。
【0029】
[第三実施形態]
第三実施形態では、レンズアンテナをミリ波レーダのレドーム及びアンテナとして用いる場合を例に説明する。
【0030】
<構成>
図8は、第三実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。図9は、第三実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。第三実施形態に係るミリ波レーダ100は、前面視四角形であり(以下、レンズアンテナ側を前面とする)、全体として箱型形状である。ミリ波とは、一般的に30GHz〜300GHz(波長10mm〜1mm)の周波数帯である。第三実施形態のミリ波レーダ100は、76GHzのミリ波帯を採用する。変調方式は、FM−CW(Frequency−Modulated Continuous Waves)レーダ方式である。そして、図8に示すように、第三実施形態に係るミリ波レーダ100は、レンズアンテナ1、Oリング15、アンテナ2、アンテナシャーシ3、RFシャーシ4、導波管10、RF基板5、ベースバンド基板6、ケース7、呼吸部8、外部コネクタ9を備える。
【0031】
レンズアンテナ1は、ミリ波レーダ100の前面を保護するレドームとして機能するとともに、アンテナ2のパッチ21から放射される信号を平面波に変換してターゲットに向けて放射する(図9のレンズアンテナ1から伸びる矢印は、放射されるビームを示す。)。第三実施形態に係るレンズアンテナ1は、樹脂によって構成され、全体として四角形状である。そして、アンテナ2のパッチ21を覆うように、換言すると、アンテナ2のパッチ21に対応する中央付近に対応する位置にレンズアンテナとして機能するレンズ部Aが形成されている。レンズ部Aは、前面側にC字状に突出した湾曲面と、背面側の平面とを有する。レンズ部Aは、換言すると、横方向に延出するかまぼこ形状を有している。背面側の平面は、アンテナ2のパッチ21と対向している。また、レンズ部Aは、アンテナ2のパッチ21から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、レンズアンテナ1のレンズ部Aから放射されるビームの放射方向がシフト前と同じによるようにレンズ部Aの光軸が傾いている。なお、レンズアンテナ1の四隅には、ケース7と接続する際に用いるねじ孔11が設けられている。
【0032】
Oリング15は、シール部材であり、レンズアンテナ1とケース7との間に設けられ、レンズアンテナ1とケース7との接続部分からの水の浸入を防止する。
【0033】
アンテナ2は、ミリ波帯の信号を放射し、また、ターゲットで反射されたビームをレンズアンテナ1を介して信号として受信する(図9のアンテナ1から伸びる矢印は、放射される信号を示す。)。実施形態に係るアンテナ2は、マイクロストリップパッチ(パッチ21)を有するプリント基板からなる平面アンテナによって構成されている。パッチ21
は、本発明の放射器に相当する。なお、アンテナ2は、送信ポートと受信ポートを少なくとも各1つ以上有していればよく、ポート数は特に限定されない。また、送信ポートと受信ポートは切替自在な共有ポートでもよい。アンテナシャーシ3は、アンテナ2と面接続され、アンテナ2を支持する。
【0034】
RFシャーシ4は、RF基板5と面接続され、RF基板5を支持する。RFシャーシ4は、RF基板5とレンズアンテナ1との間のノイズの伝播を遮断する機能も有する。第三実施形態では、RFシャーシ4は金属シャーシからなる。RFシャーシ4は、凡そ四角形であり、両側に突起部が設けられている。そして、この突起部には、RF基板5と接続する際に用いるねじ孔31が形成されている。
【0035】
導波管10は、RF基板5のアンテナ変換部のパッチ50から放射される信号(本実施形態では、76GHz)を流す。導波管10は、アンテナシャーシ3及びRFシャーシ4に形成された貫通孔によって形成されている。本実施形態では、導波管10は、RFシャーシ4の横方向に6つ形成されている。
【0036】
RF基板5は、ミリ波送受信部501、送信制御回路504、受信回路503を含むアナログ回路部502が設けられている。ミリ波送受信部501は、アンテナ2との間でミリ波帯域の信号の送信及び受信を行う。具体的には、アンテナ変換部のパッチ50により、信号の送信及び受信を行う。送信制御回路504は、デジタル信号処理部(DSP:Digital Signal Processor)505の制御の下、周波数変調を行いアンテナ2から放射する信号を生成する。受信回路503は、ミリ波送受信部501で受信した信号からビート信号を検出する。第三実施形態に係るRF基板5は、プリント基板によって構成されている。RF基板5の両側であってアンテナシャーシのねじ孔31とRFシャーシのねじ孔41に対応する位置に、RF基板のねじ孔51が形成されている。また、RF基板5には、RF基板5からのノイズを遮蔽するグラウンド層が内層されている(図示せず)。
【0037】
ベースバンド基板6には、デジタル信号処理部505やマイコン506等が設けられている。デジタル信号処理部505は、送信制御回路504による周波数変調を制御してアンテナ2から放射する信号を生成する。また、デジタル信号処理部505は、受信回路503から受信したビート信号のFFT周波数解析等を行う。マイコン506は、外部コネクタ9を介して与えられる命令に基づいてミリ波レーダ全体の制御を行う。また、ベースバンド基板6には、更に、RF基板との接続コネクタ61と、外部との接続コネクタ62が設けられている。
【0038】
ケース7は、アンテナ2、アンテナシャーシ3、RFシャーシ4、RF基板5、ベースバンド基板6を収容する。ケース7は、四角形の前面が開放された箱型形状であり、四隅にはレンズアンテナのねじ孔11に対応するねじ孔71が形成されている。ケース7とレンズアンテナ1がOリング15を介してねじによって接続されることで、ケース7内の気密性が確保される。ケース7の背面には、呼吸部8が設けられており、空気の出し入れが可能となっている。これにより、温度変化に伴うケース7内の空気の収縮・膨張に起因したレンズアンテナ1の破損を防止することができる。
【0039】
外部コネクタ9は、外部との接続コネクタ62と接続され、外部装置(例えば、車両のECU)とミリ波レーダ100とを電気的に接続する。
【0040】
電源508は、ミリ波レーダ100内部の各デバイスが使用する電源を供給する。
【0041】
<レンズアンテナの設計>
レンズアンテナ1のシフト量やチルト量は、ミリ波レーダの製造時において予め設計される。レンズアンテナ1のシフト量やチルト量は、例えば、以下のように設計することができる。
【0042】
レンズアンテナのシフト量は、アンテナ2のパッチ21の面積、レンズアンテナ1の平面の面積、アンテナ2のパッチ21からレンズアンテナ1の平面までの距離、のうち何れか一つに基づいて決定することができる。
【0043】
例えば、アンテナ2のパッチ21の基準面積を設定し、アンテナ2のパッチ21の面積をこの基準面積よりも小さくする場合には、反射する量も減少することから、シフト量は相対的に小さくすることが好ましい。パッチの基準面積は、基準値として実験等に基づいて任意に設定することができる。逆に、アンテナ2のパッチ21の面積を基準面積よりも大きくする場合には、シフト量は相対的に大きくすることができる。また、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の基準面積を設定し、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の面積をこの基準面積よりも小さくする場合には、レンズアンテナのレンズ部Aから放射されるレーダも低減することから放射されるレーダの特性を考慮してシフト量を決定することが好ましい。レンズ部Aの平面の基準面積は、基準値として実験等に基づいて任意に設定することができる。逆に、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の基準面積を設定し、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の面積をこの基準面積よりも大きくする場合には、レンズアンテナのレンズ部Aから放射されるレーダは増加することから、平面の基準面積よりも小さくする場合と比較してシフト量は大きくすることができる。また、アンテナ2のパッチ21からレンズアンテナ1の平面までの基準距離を設定し、この基準距離よりも短くする場合には、反射する量が増加することから、シフト量は相対的に大きくすることができる。基準距離は、基準値として実験等に基づいて任意に設定することができる。逆に、この基準距離よりも長くする場合には、反射する量が低減することから、シフト量は相対的に小さくすることが好ましい。なお、シフト量は、アンテナ2のパッチ21の面積、レンズアンテナのレンズ部Aの平面の面積、アンテナ2のパッチ21の放射面からレンズアンテナのレンズ部Aの平面までの距離の相互の影響を受けることから、総合的に考慮して設計することが好ましい。
【0044】
レンズアンテナのレンズ部Aの光軸を傾ける際のチルト量は、シフト量、レンズアンテナのレンズ部Aの湾曲面の形状のうち何れか一つに基づいて決定することができる。例えば、シフト量が大きくなるとビームの放射方向の傾きも大きくなることから、チルト量は、シフト量を考慮する必要がある。また、湾曲面の曲率が大きくなるとビームの放射方向の傾きへの影響も大きくなることから、チルト量は、湾曲面の形状を考慮する必要がある。
【0045】
<動作>
上述したミリ波レーダの動作の概略は以下の通りである。デジタル信号処理部505により、送信制御回路504による周波数変調を制御してアンテナ2から放射する信号が生成される。生成された信号は、ミリ波送受信部501に送信され、ミリ波送受信部501のアンテナ変換部のパッチ50からミリ波帯の信号が導波管10を通ってアンテナ2へ送信される。そして、アンテナ2のパッチ21からミリ波帯の信号が放射され、レンズアンテナ1は、この放射された信号を平面波のビームに変換し、ターゲットに向けて変換したビームを放射する。ターゲットで反射されたビームがレンズアンテナ1を介して信号としてアンテナ2で受信される。受信された信号は、導波管10を介して受信回路503に入力され、受信回路503では、受信した信号からビート信号が検出される。デジタル信号処理部505では、ビート信号のFFT周波数解析等を行い、距離、相対速度、角度情報を演算することでターゲットの位置が検出される。
【0046】
<効果>
以上説明した第三実施形態に係るミリ波レーダ100によれば、レンズアンテナのレンズ部Aの光軸を傾けることで、レンズアンテナのレンズ部Aの平面で反射してアンテナ2のパッチ21へ戻る信号の戻り量を低減することができる。また、レンズアンテナ1の光軸がアンテナ2のパッチ21の放射方向と直交する方向へ所定量シフトすることで、ビームの放射方向が傾け前と同じとなるようにビームの放射方向が変更されるのを抑制できる。つまり、第三実施形態に係るレンズアンテナ1では、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナ1で反射してアンテナ2のパッチ21へ戻る信号の戻り量を低減できる。その結果、ミリ波レーダ100で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナ1が傾くことでレンズアンテナに付着する水滴や雪を低減することができる。
【0047】
[第四実施形態]
図10は、第四実施形態に係るミリ波レーダの構造を示す。図11は、第四実施形態に係るミリ波レーダの機能ブロック図を示す。第四実施形態に係るミリ波レーダ101は、レンズアンテナ1a、Oリング15、RFシャーシ4、導波管10、RF基板5、ベースバンド基板6、ケース7、呼吸部8、外部コネクタ9を備える。換言すると、第四実施形態に係るミリ波レーダ101は、第三実施形態に係るミリ波レーダ100におけるアンテナ2、アンテナシャーシ3を備えない構成である。なお、同一の構成については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。以下、第三実施形態に係るミリ波レーダ101との相違点を中心に説明する。
【0048】
レンズアンテナ1aは、ミリ波レーダ101の前面を保護するレドームとして機能するとともに、RF基板5のミリ波送受信部501(アンテナ変換部のパッチ50)から放射される信号を平面波のビームに変換してターゲットに向けて放射する(図11のレンズアンテナ1aから伸びる矢印は、放射されるビームを示す。)。パッチ50は、本発明の放射器に相当する。第四実施形態に係るレンズアンテナ1aは、アンテナ変換部のパッチ50に対応する中央付近、換言すると導波管10の開口部に対応する位置にレンズアンテナとして機能するレンズ部Bが形成されている。レンズ部Bは、前面側にC字状に突出した湾曲面と、背面側の平面とを有する。レンズ部Bは、換言すると、第三実施形態のレンズ部Aと同じく、横方向に延出するかまぼこ形状を有している。但し、第四実施形態のレンズ部Bは、導波管10の開口部に対応する位置に設けられており、第三実施形態のレンズ部Aよりも、高さ方向における幅が狭く、また曲率が大きく形成されている。なお、背面側の平面は、アンテナ変換部のパッチ50と対向している。また、レンズ部Bは、アンテナ変換部のパッチ50から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、レンズアンテナ1aのレンズ部Bから放射されるビームの放射方向がシフト前と同じによるようにレンズ部Bの光軸が傾いている。なお、レンズアンテナ1aの四隅には、ケース7と接続する際に用いるねじ孔11が設けられている。
【0049】
第四実施形態に係るミリ波レーダ101の動作は、基本的には第三実施形態に係るミリ波レーダ100と同じである。すなわち、デジタル信号処理部505により、送信制御回路504による周波数変調を制御してアンテナ2から放射する信号が生成される。生成された信号は、ミリ波送受信部501に送信される。第四実施形態に係るミリ波レーダは、アンテナ2を備えないことから、ミリ波送受信部501のアンテナ変換部のパッチ50からミリ波帯の信号が導波管10を通ってレンズアンテナ1aへ送信される(図11のミリ波送受信部501から伸びる矢印は、放射される信号を示す。)。レンズアンテナ1aは、導波管10から送られた信号を平面波に変換してターゲットに向けて放射する。ターゲットで反射されたレーダがレンズアンテナ1aで受信される。受信されたレーダは、導波管10を介して受信回路503に信号として入力され、受信回路503では、受信した信号からビート信号が検出される。デジタル信号処理部505では、ビート信号のFFT周
波数解析等を行い、距離、相対速度、角度情報を演算することでターゲットの位置が検出される。
【0050】
以上説明した第四実施形態に係るミリ波レーダ101によれば、レンズアンテナのレンズ部Bの光軸を傾けることで、レンズアンテナのレンズ部Bの平面で反射してアンテナ変換部のパッチ50へ戻る信号の戻り量を低減することができる。また、レンズアンテナ1の光軸がアンテナ変換部のパッチ50の放射方向と直交する方向へ所定量シフトすることで、ビームの放射方向が傾け前と同じとなるようにし、ビームの放射方向が変更されるのを抑制できる。つまり、第四実施形態に係るレンズアンテナ1aでは、ビームの放射方向を変えることなく、レンズアンテナ1aで反射してアンテナ変換部のパッチ50へ戻る信号の戻り量を低減できる。その結果、ミリ波レーダ101で受信する信号の振幅、位相歪みを防止することができ、方位誤差を小さくすることができる。また、レンズアンテナ1aが傾くことでレンズアンテナに付着する水滴や雪を低減することができる。更に、レンズアンテナ1aは、他のミリ波レーダを構成するレドーム、平面アンテナ、アンテナシャーシが不要となる。従って、部品点数を大幅に削減し、その結果コストの削減も可能となる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るレンズアンテナ、及びレーダ装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・レンズアンテナ
4・・・RFシャーシ
5・・・RF基板
6・・・ベースバンド基板
7・・・ケース
8・・・呼吸部
9・・・外部コネクタ
10・・・導波管
15・・・Oリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が平面で他方の面が湾曲面であるレンズアンテナであって、
前記レンズアンテナの光軸が放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレンズアンテナ。
【請求項2】
前記レンズアンテナから放射されるビームの放射方向が前記放射器から放射される信号の放射方向と同じとなるように前記レンズアンテナの光軸が傾いている請求項1に記載のレンズアンテナ。
【請求項3】
前記放射器の放射面と前記レンズアンテナの平面とが対向する請求項1又は2に記載のレンズアンテナ。
【請求項4】
前記レンズアンテナの光軸をシフトさせる際の所定量は、前記放射器の放射面の面積、前記レンズアンテナの平面の面積、前記放射器の放射面から前記レンズアンテナの平面までの距離、のうち何れか一つに基づいて決定される請求項1から3の何れか1項に記載のレンズアンテナ。
【請求項5】
前記レンズアンテナの光軸を傾ける際のチルト量は、前記所定量、前記レンズアンテナの湾曲面の形状のうち何れか一つに基づいて決定される請求項1から4の何れか1項に記載のレンズアンテナ。
【請求項6】
前記レンズアンテナの平面で反射した信号を検出する検出部を更に備える請求項1から5の何れか1項に記載のレンズアンテナ。
【請求項7】
信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、
前記回路基板と接続される導波管と、
前記導波管から送られる信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、
前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、
前記レンズアンテナの光軸が前記信号送受部から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置。
【請求項8】
信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、
前記回路基板と接続される放射器と、
前記放射器から放射される信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、
前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、
前記レンズアンテナの光軸が前記放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置。
【請求項1】
一方の面が平面で他方の面が湾曲面であるレンズアンテナであって、
前記レンズアンテナの光軸が放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレンズアンテナ。
【請求項2】
前記レンズアンテナから放射されるビームの放射方向が前記放射器から放射される信号の放射方向と同じとなるように前記レンズアンテナの光軸が傾いている請求項1に記載のレンズアンテナ。
【請求項3】
前記放射器の放射面と前記レンズアンテナの平面とが対向する請求項1又は2に記載のレンズアンテナ。
【請求項4】
前記レンズアンテナの光軸をシフトさせる際の所定量は、前記放射器の放射面の面積、前記レンズアンテナの平面の面積、前記放射器の放射面から前記レンズアンテナの平面までの距離、のうち何れか一つに基づいて決定される請求項1から3の何れか1項に記載のレンズアンテナ。
【請求項5】
前記レンズアンテナの光軸を傾ける際のチルト量は、前記所定量、前記レンズアンテナの湾曲面の形状のうち何れか一つに基づいて決定される請求項1から4の何れか1項に記載のレンズアンテナ。
【請求項6】
前記レンズアンテナの平面で反射した信号を検出する検出部を更に備える請求項1から5の何れか1項に記載のレンズアンテナ。
【請求項7】
信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、
前記回路基板と接続される導波管と、
前記導波管から送られる信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、
前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、
前記レンズアンテナの光軸が前記信号送受部から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置。
【請求項8】
信号を送受信する信号送受信部を搭載する回路基板と、
前記回路基板と接続される放射器と、
前記放射器から放射される信号をビームとして放射する、レドームとしてのレンズアンテナとを備え、
前記レンズアンテナは、一方の面が平面で他方の面が湾曲面であり、
前記レンズアンテナの光軸が前記放射器から放射される信号の放射方向と直交する方向へ所定量シフトし、かつ、前記レンズアンテナの光軸が傾いているレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−222545(P2012−222545A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85289(P2011−85289)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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