説明

レンズシートの欠陥検査装置、欠陥検査方法及び製造装置

【課題】レンズシート表面の局所的な歪み等の欠陥を精度良く検出する。
【解決手段】レンチキュラーレンズが複数配列されたレンズシート12に照明光を照射する光源装置21と、エリア31について、レンズシート12を透過した照明光のエッジ32を撮像して第1画像を取得する第1撮像装置22と、第1画像に基づいて、レンズシート12とエッジ32の相対的な角度に対応するデータとしてシャープネスを算出するシャープネス算出部17と、算出されたシャープネスに応じて、レンズシート12とエッジ32の相対的な角度を調節する検査位置制御部18と、レンズシート12上から合焦点がずらされたデフォーカス状態で前記レンズシートの全幅にわたってエッジ32を撮像して第2画像を取得する第2撮像装置23と、第2画像に基づいて、レンズシート12の欠陥を検出する欠陥検出部19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にレンズ等の繰り返しパターンが形成されたレンズシートの欠陥を検査する方法及び装置に関する。また、これを用いるレンズシートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な樹脂製シート等の表面に、レンズやプリズムの繰り返しパターンが形成された光学シートが様々な製品に用いられている。例えば、レンチキュラーレンズによる繰り返しパターンが形成されたレンチキュラーレンズシート(以下、レンズシートという)や、三角柱状のプリズムによる繰り返しパターンが形成されたプリズムシートが知られている。レンズシートは、プロジェクションスクリーンに用いられるとともに、近年では3D写真としても用いられ需要が拡大している。プリズムシートは、液晶ディスプレイのバックライトモジュール等に利用されている。
【0003】
光学シートは、その製造工程においてレンズやプリズムの形成不良、異物の混入や付着、キズ等の欠陥が生じることがある。これらの欠陥は、正常部分とは光学特性が異なるため、光学シートの製造時に欠陥を検出,評価して、製品に混入させないことが望ましい。また、連続的に発生する欠陥については、欠陥を含む不良品が製造され続けることがないように速やかに原因を除去することが望ましい。ただし、光学シートは、表面にレンズやプリズムが形成されているために、光学シートの欠陥を精度良く検出するためには、レンズやプリズム等による影響を考慮した工夫が必要がある。
【0004】
光学シート用の欠陥検査装置としては、線状の光源を透過照明で用い、幅方向の3方向から撮像することにより、異物の混入等によって透過率が低くなった黒欠陥を検出する装置が知られている(特許文献1)。また、光学シートからの垂直入射光のみを用いて撮像することにより、反射率が高い白欠陥を検出する装置が知られている(特許文献2)。さらに、プリズムによる屈折に応じた位置にカメラを配置して撮影することによりプリズムシートの欠陥を検出する装置がも知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−159345号公報
【特許文献2】特開平8−159988号公報
【特許文献3】特開2010−38715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学シートに生じる欠陥には様々な種類があるが、3D写真用のレンズシートに生じる欠陥としては、画像を印刷する面(以下、印刷面という)に生じた局所的な歪みや、シート内部で屈折率分布が形成された欠陥(以下、屈折率欠陥という)が重要である。
【0007】
印刷面の局所的な歪みは、欠陥検査等ではほとんど発見されないような微粒子やシートの成分の偏り等の核を中心として生じると考えられる。歪み部分は、正常な印刷ができなかったり、印刷できても接触等によりインクが剥げ落ちやすくなる。このため、局所的な歪みがあるレンズシートの印刷面に画像を印刷して形成した3D写真を観察すると、歪みの部分が点状に穴が開いたような画像が観察され、3D写真の画質が劣化する。
【0008】
また、屈折率欠陥は、レンズシートの材料の成分の偏り等によって生じると考えられ、屈折率欠陥の部分では、外形が正常に形成されていても光学的な作用が異なる。例えば、レンチキュラーレンズの形状が正常な形状であり、印刷面が平坦に形成されている箇所に屈折率欠陥がある場合、画像の印刷は正常に行えるが、製造された3D写真を観察すると周辺との光学特性と異なるため、歪んで観察されたり、3D写真の画質が劣化したりする。
【0009】
印刷面の局所的な歪みや屈折率欠陥は、混入した異物、表面の顕著なキズよりも発見し難いものの、3D写真にしたときの画質の劣化はこれらの欠陥と同等かそれ以上に著しい。
【0010】
局所的な歪みや屈折率欠陥を特許文献1や特許文献2に記載された方法で検出する場合、他の欠陥を検出する場合よりも光学シートを高解像度で撮影する必要がある。しかし、解像度を上げると、欠陥検査のために撮影した画像には、レンチキュラーレンズのピッチパターンが明瞭に生じるため、かえって表面の局所的な歪みや屈折率欠陥を検出し難くなる。
【0011】
また、特許文献3は、プリズムシートを構成するプリズムの屈折角を利用した方法であるため、屈折角が一定ではないレンチキュラーレンズのパターンを有するレンズシートには応用できない。
【0012】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、印刷面等の表面における局所的な歪みや、屈折率の欠陥をも精度良く検出できる光学シートの欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の欠陥検査装置は、レンチキュラーレンズが複数配列されたレンズシートに、前記レンチキュラーレンズに直交する向きに帯状の照明光を照射する照明手段と、前記レンズシートの送り方向に垂直な方向である前記レンズシートの幅方向の少なくとも一部分のエリアについて、前記レンズシートを透過した前記照明光のエッジを撮像して第1画像を取得する第1撮像手段と、前記第1画像に基づいて、前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度に対応するデータを算出する角度データ算出手段と、前記角度算出手段によって算出された前記データに応じて、前記レンズシートに対する前記エッジの角度、または前記エッジの位置に対する前記レンズシートの角度を調節する角度調節手段と、前記角度調節手段によって前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度が調節されたあとに、または相対的な角度が一定の範囲内に収まるように常時調節しながら、前記レンズシート上から合焦点がずらされたデフォーカス状態で、走行する前記レンズシートの全幅にわたって前記エッジを撮像して第2画像を取得する第2撮像手段と、前記レンズシートの欠陥を検出する欠陥検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
前記照明手段は、前記照明光を発する発光面と、前記レンチキュラーレンズに直交する向きに前記発光面を一部遮光する遮光手段とを有し、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段は、前記発光面と前記遮光手段との境界線を前記エッジとして撮像することが好ましい。
【0015】
前記第2画像に重畳される前記レンチキュラーレンズのピッチパターンの振幅が、前記合焦点が前記レンズシート上にある場合と比較して1/2以下になるように、前記第2撮像手段の合焦点の位置が定められていることが好ましい。
【0016】
前記第2撮像手段の合焦点は前記レンズシートよりも前記照明手段側にデフォーカスされていることが好ましい。
【0017】
前記角度データ算出手段は、前記第1画像に写された前記エッジのシャープネスを前記データとして算出し、前記角度調節手段は、前記シャープネスが大きくなるように前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度を調節することが好ましい。
【0018】
前記角度調節手段は、前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度を調節するために、前記エッジを回転させることが好ましい。
【0019】
前記第1撮像手段は、前記レンズシートよりも前記照明手段側にデフォーカスされていることが好ましい。
【0020】
前記欠陥検出手段は、前記エッジの歪みを前記レンズシートの欠陥として検出することが好ましい。
【0021】
前記第2撮像手段は、ラインセンサであることが好ましい。
【0022】
前記第1撮像手段は、エリアセンサであることが好ましい。
【0023】
前記レンズシートは、3D写真に用いられるレンチキュラーレンズシートであることが好ましい。
【0024】
本発明のレンチキュラーレンズの製造装置は、上述の検査装置を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明のレンズシートの欠陥検査方法は、レンチキュラーレンズが複数配列されたレンズシートに照射される照明光のエッジを撮像して第1画像を取得する第1画像取得ステップと、前記第1画像の第1画像に基づいて、前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度に対応するデータを算出する角度データ算出ステップと、前記データに応じて、前記レンズシートに対する前記エッジの角度、または前記エッジの位置に対する前記レンズシートの角度を調節する角度調節ステップと、前記レンズシート上から合焦点がずらされたデフォーカス状態で前記レンズシートの全幅にわたって前記エッジを撮像して第2画像を取得する第2画像取得ステップと、前記第2画像に基づいて、前記レンズシートの欠陥を検出する欠陥検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、レンズシート表面の局所的な歪みや屈折率の欠陥を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】欠陥検査装置の構成を示す図である。
【図2】撮像ユニットの構成を示す図である。
【図3】第1撮像装置及び第2撮像装置の合焦点を示す図である。
【図4】レンズシートの構成を示す図である。
【図5】レンズシートの断面図である。
【図6】欠陥検査装置の作用を示すフローチャートである。
【図7】レンズシートが規定の搬送方向に向けて正しく搬送されている場合に撮像される第1画像である。
【図8】第1画像内の各方向の画素値の変化を示すグラフである。
【図9】レンズシートが傾斜して搬送される場合に撮像される第1画像である。
【図10】第1画像内の各方向の画素値の変化を示すグラフである。
【図11】レンズシートに合焦点をあわせて撮像した場合の第1画像である。
【図12】レンズシートに合焦点をあわせて撮像された第1画像の各方向の画素値の変化を示すグラフである。
【図13】検査位置に欠陥がない場合に撮像される第2画像である。
【図14】検査位置に欠陥がある場合に撮像される第2画像である。
【図15】モアレ縞によってレンズシートの搬送方向を検出する場合の構成を示す図である。
【図16】基準シートと、第1画像に写るモアレ縞を示す図である。
【図17】基準シートとレンズシートの相対的角度によってモアレ縞の生じる角度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、欠陥検査装置11は、レンズシート12の製造時にレンズシート12の表面や内部に欠陥が生じているか否かを検査する装置であり、撮像ユニット13、制御部14、移動機構16を備える。レンズシート12は、表面側にレンチキュラーレンズからなる繰り返しパターンが形成されたレンチキュラーレンズシートであり、裏面側は印刷用に平坦に形成される。また、レンズシート12は、欠陥検査装置11に対して上流側Aに配置された製造装置(図示しない)でウェブ状に製造され、欠陥検査装置11によって欠陥検査が行われた後、下流側Bに配置される裁断装置(図示しない)や印刷装置(図示しない)等に送り出される。欠陥検査装置11では、レンズシート12の搬送は連続的に行われ、走行するレンズシート12の全面の検査を隙間なく連続的に行う。
【0029】
撮像ユニット13は、上流側Aから搬送されるレンズシート12を照明し、その透過光によってレンズシート12を撮像する。撮像ユニット13は、レンズシート12の搬送方向Xに沿って前後X,Xに移動自在に設けられているとともに、中心軸Cの周りに回転自在に設けられている。撮像ユニット13の移動及び回転は、ギアやモータ等からなる移動機構16によって行われる。また、撮像ユニット13は制御部14に接続されており、撮像ユニット13で撮像した画像は制御部14に入力される。後述するように、撮像ユニット13は2種類の撮像装置を備えており、一方の撮像装置で撮像された画像は検査位置の検出及び撮像ユニット13の位置制御に用いられ、他方の撮像装置で撮像された画像はレンズシート12の欠陥検査に用いられる。以下では、検査位置の検出及び撮像ユニット13の位置制御に用いる画像を第1画像といい、レンズシート12の欠陥検査に用いる画像を第2画像という。
【0030】
制御部14は、コンピュータ本体等の制御装置と、第1画像や第2画像等を表示するモニタ、制御装置にデータの入出力を行うマウスやキーボードからなる入力デバイス等(いずれも図示しない)を有し、欠陥検査装置11の動作を制御する。制御部14を構成する制御装置は、シャープネス算出部17、検査位置制御部18、欠陥検出部19を備え、撮像ユニット13の制御装置として機能する。
【0031】
シャープネス算出部17は、撮像ユニット13から入力される第1画像の鮮鋭度(シャープネス)を算出し、その値を検査位置制御部18に入力する。後述するように、第1画像は概ね明部と暗部で二分される画像である。シャープネス算出部17は、第1画像のこの特徴を利用して、第1画像のシャープネスを算出する。算出されたシャープネスは検査位置制御部18に入力される。
【0032】
検査位置制御部18は、シャープネス算出部17から入力されるシャープネスに基づいて、移動機構16をフィードバック制御することにより、レンズシート12に対する撮像ユニット13の位置および向きを調節する。これにより、レンズシート12に対する第1画像の明部と暗部のエッジの相対的な角度が調節される。このとき、検査位置制御部18は、シャープネスの値に基づいて撮像ユニット13の回転角度を定める。例えば、シャープネスの値が大きく鮮鋭なほど小さく、シャープネスが小さいく不鮮鋭なほど回転角度が大きく撮像ユニット13を回転させ、撮像ユニット13の回転後に第1画像を取得したとすれば、そのシャープネスが一定の値になる角度で撮像ユニット13を回転させる。また、検査位置制御部18は、撮像ユニット13を回転させることによってレンズシート12内に欠陥検査が行われない箇所が生じないように、撮像ユニット13を前後X,Xに移動させ、欠陥検査を行う位置を調節する。なお、検査位置制御部18は、シャープネスの値を所定の閾値と比較し、所定の閾値よりシャープネスが大きい場合には、レンズシート12に対する撮像ユニット13が検査時に求められる精度で規定位置に既に移動されているものと判断し、撮像ユニット13の移動を行わない。
【0033】
欠陥検出部19は、第2画像に基づいて、レンズシート12の発生したキズや歪み、汚れ、透過率の均一性、屈折率分布等の欠陥を検出する。欠陥検出部19によってレンズシート12に欠陥が発見された場合には、欠陥の位置や大きさ、種別等が記録されるとともに、下流側Bに配置される裁断装置等に通知される。例えば、裁断装置は、欠陥検出部19から入力される欠陥の位置等に基づいて、裁断後のレンズシート12に欠陥が含まれないように裁断位置等を調節する。
【0034】
図2に示すように、撮像ユニット13は、光源装置21と、第1撮像装置22及び第2撮像装置23を備える。
【0035】
光源装置21は、レンズシート12の幅方向(Y方向)に沿った帯状の領域に照明光を照射する。光源装置21は、面光源24と遮光部材26を備える。面光源24は、均一な光量の照明光を発光する発光面27を有し、発光面27上には、その一部を覆う遮光部材26が配置される。
【0036】
面光源24は、レンズシートの幅方向に長い直方体状に形成され、レンズシート12に対面する上面のほぼ全面が発光面27となっている。遮光部材26は、Y方向の長さは発光面27と同じかこれ以上の長さを有し、幅(X方向の長さ)は発光面27の約半分の長方形状である。遮光部材26は、例えば、発光面27の約半分の領域を覆うように発光面27上に配置される。
【0037】
第1撮像装置22は、エリアセンサを搭載した撮像装置であり、レンズシート12の一部分であるエリア31を撮像し、撮影画像を第1画像としてシャープネス算出部17に出力する。エリア31は、例えば四角形であり、レンズシート12上で発光面27と遮光部材26の境界線であるエッジ32が含まれる位置に設定される。
【0038】
第2撮像装置23は、ラインセンサを搭載し、エッジ32を撮像する撮像装置であり、撮影画像を第2画像として欠陥検出部19に出力する。第2撮像装置23が撮像する領域であるライン33は、細くほぼ線状の領域であり、その幅はレンズシート12の幅方向(Y方向)の全幅をカバーする。
【0039】
なお、光源装置21,第1撮像装置22,第2撮像装置23は、撮像ユニット13として一体に設けられている。このため、撮像ユニット13の全体が移動機構16によって回転移動,平行移動されるときには、これらは一体になって相対的な位置関係を変化させずに移動され、レンズシート12等に対する位置や向きが調節される。
【0040】
図3に示すように、第1撮像装置22及び第2撮像装置23の合焦点34は、レンズシート12にはなく、デフォーカスされている。これは、第1撮像装置22及び第2撮像装置23で各々撮像する第1画像及び第2画像にレンチキュラーレンズのピッチパターンが写り込むことを防止するためである。
【0041】
レンズシート12に合焦点を設定すると、第1画像にはレンズのピッチパターンが写り込んで、エッジ32の像とピッチパターンが重畳するので、エッジ32の像がぼやける。また、レンズシート12に合焦点を設定すると、第2画像にはレンズのピッチパターンが写り込んで、欠陥の像よりもピッチパターンの像の方が明瞭に写し出され、欠陥の検出精度が悪化する。
【0042】
そこで前述のように、第1撮像装置22や第2撮像装置23をデフォーカスして用いると、第1画像や第2画像に写り込むピッチパターンはぼやけ、その振幅が、合焦点34がレンズシート12にある場合の振幅よりも減少し、シャープネスの精度、欠陥の検出精度が向上する。特にこれらの精度を向上させるためには、ピッチパターンの振幅が、合焦点34がレンズシート12にある場合の振幅の半分以下であることが好ましい。
【0043】
なお、図3では合焦点34をレンズシート12と光源装置21の間(Z方向マイナス側)になるようにデフォーカスする例を説明するが、合焦点34は、レンズシート12と第1撮像装置22及び第2撮像装置23との間(Z方向プラス側)になるようにデフォーカスしても良い。
【0044】
また、欠陥検査装置11は、第1画像に写し出されたエッジ32の像に基づいてシャープネスを算出し、第2画像に写し出されるエッジ32の像に基づいて欠陥を検出するので、前述のように第1撮像装置22や第2撮像装置23をデフォーカスする場合にエッジ32の像が不鮮明になると、欠陥検出精度が悪化する。
【0045】
このため、前述のように第1撮像装置22及び第2撮像装置23をデフォーカスさせて用いる場合であっても、エッジ32の像は鮮明に写し出される必要がある。したがって、エッジ32の像は、合焦点34の位置がエッジ32に近いほど鮮明になるので、合焦点34はレンズシート12から光源装置21側にデフォーカスされることが好ましい。合焦点34がエッジ32に合うように第1撮像装置22及び第2撮像装置23をデフォーカスさせたり、図3に示すようにレンズシート12とエッジ32との中間点に合焦点34が位置するように第1撮像装置22及び第2撮像装置23をデフォーカスさせても良い。
【0046】
さらに、第1撮像装置22や第2撮像装置23をデフォーカスすることによって欠陥の像までもがぼやけてしまうと、欠陥の検出精度が悪化してしまう。このため、合焦点34を光源装置21側にデフォーカスする場合であっても、レンズシート12と光源装置21との距離や、第1撮像装置22や第2撮像装置23の被写界深度等の性能によって適切な位置に決定されることが好ましい。
【0047】
図4に示すように、レンズシート12は、平坦なシート41の一方の表面の中央部分41aにレンチキュラーレンズ42が形成される。レンチキュラーレンズ42は、搬送方向に垂直なY方向の断面が半円状であり、搬送方向であるX方向に沿って形成される。また、レンチキュラーレンズ42の形成された表面は、第1撮像装置22及び第2撮像装置23が配置されるZ方向プラス側に向けられて欠陥検査装置11に搬送される。
【0048】
図5に示すように、レンズシート12の裏面にはレンチキュラーレンズ42は設けられておらず平坦に形成されており、3D写真のもととなる画像が印刷される印刷面43である。印刷面43には、歪み44が欠陥として発生することがある。ここでいう歪み44は、印刷面43に生じた凹凸であり、印刷面43の全体にわたるような大局的なものではなく、レンチキュラーレンズ42のピッチと同程度かそれ以下の局所的な凹凸であり、凹凸が緩やかで透過率は周辺の正常な表面とほぼ変わりない。歪み44があると、印刷の抜けを生じ、3D画像の画質を低下させる。
【0049】
また、レンズシート12の内部には屈折率欠陥45が生じることがある。屈折率欠陥45は、周辺部分と屈折率が異なる欠陥であり、印刷面43は平坦に形成される。このため、屈折率欠陥45近傍の印刷面43には、画像を正常に印刷可能である。しかし、屈折率欠陥45があると、レンチキュラーレンズ42側から印刷面43の画像を観察したときに歪んだ像が観察される。欠陥検査装置11は、こうした歪み44や屈折率欠陥45等、レンチキュラーレンズ42のピッチ程度の微小サイズの欠陥や、目視等では発見され難い欠陥を検出する。
【0050】
以下、欠陥検査装置11の作用を説明する。図6に示すように、欠陥検査装置11は撮像ユニット13に送られたレンズシート12のエリア31を、第1撮像装置22によって撮像し、第1画像を得る(ステップS01)。エリア31の撮像は、光源装置21によって印刷面43側から照明光を照射しながら行われる。
【0051】
シャープネス算出部17は、第1画像に写し出されたエッジ32の像から第1画像のシャープネスを算出する(ステップS02)。検査位置制御部18は、第1画像のシャープネスの値を閾値と比較する(ステップS03)。
【0052】
第1画像のシャープネスが閾値以下の場合、検査位置制御部18は、撮像ユニット13を回転移動及び平行移動させることにより、第2撮像装置23によってレンズシート12を撮像するライン33の位置(検査位置)を調節する(ステップS04)。この検査位置の調節は、第1画像のシャープネスが閾値よりも大きく一定の値になるように、第1画像が鮮鋭な画像になるように行われる。
【0053】
こうしてレンズシート12の検査位置が調節されると同時に、レンズシート12を所定量だけ送りながら、第2撮像装置23は走行するレンズシート12のライン33を撮像し、第2画像を得る(ステップS05)。ライン33の撮像は、光源装置21によって印刷面43側から照明光を照射しながら行われる。
【0054】
欠陥検出部19は、第2画像に写し出されたエッジ32の像からライン33上の欠陥の有無を検出する(ステップS06)。欠陥の有無や欠陥の種類や大きさ等の情報は、下流側Bに配置される各装置に通知される。欠陥検査装置11による欠陥検査は、制御部14の操作により検査の終了が指示されるまで、欠陥の検出はレンズシート12の全面に対してほぼ連続的に行われる(ステップS07)。
【0055】
ここでは、説明の便宜上、各ステップについて順を追って説明したが、ステップS01〜ステップS06の第1画像の取得、シャープネスの算出、検査位置の調節、第2画像の取得、欠陥検査はほぼ同時に並行して行われるとともに、レンズシート12の走行を間断することなく連続的に行われる。これにより、レンズシート12の全面がもれなく検査される。すなわち、欠陥検査装置11は、第1画像のシャープネスが常に一定になるように撮像ユニット13の調節を常時行ないながら、第2撮像装置23は連続して第2画像を取得し、欠陥検査部19も連続して欠陥の有無を判定する。
【0056】
第1画像のシャープネスの算出は以下のように行う。まず、図7に示すように、レンチキュラーレンズ42の方向が搬送方向Xに平行であり、レンズシート12が、ズレがなく規定通り真っ直ぐに搬送されている場合、第1画像51は、発光面27に対応する明部52と遮光部材26に対応する暗部53に鮮明な境界線54によって分断された画像となる。図7では、レンチキュラーレンズ42のピッチパターンを破線で示すが、第1撮像装置22はデフォーカスされているので、実際には破線に対応するラインや濃淡はほとんど観察されない。
【0057】
このように理想的な状態で搬送されたレンズシート12から得られる第1画像51について、矢印X1,X2,Y0〜Y2で示すライン上の画素値の例を図8に示す。図8(A)に示すように、矢印X1で示すライン上の画素は、境界線54近傍の明部52内にあるため、ほぼ一定の画素値となる。一方、図8(B)に示すように、矢印X2で示すライン上の画素は、境界線54近傍の暗部53内にあるため、全てほぼ0である。
【0058】
また、矢印Y0で示すライン上の画素は、レンチキュラーレンズ42同士の境界に対応し、矢印Y1,Y2で示すライン上の画素は各々矢印Y0からX方向にずらした位置である。図8(C)〜図8(E)に示す通り、矢印Y0,Y1,Y2上の画素値はいずれもほぼ同様であり、明部52ではほぼ一定の画素値であるとともに、境界線54を境にしてほぼ0になる。これは、第1撮像装置22がデフォーカスして用いられているために、レンチキュラーレンズ42のピッチパターンが殆ど写り込まないからである。
【0059】
一方、レンチキュラーレンズ42の方向が搬送方向Xに対して傾斜した状態で、レンズシート12が欠陥検査装置11に送り込まれた場合には次のようになる。
【0060】
図9に示すように、搬送方向Xに対して斜めにずれてレンズシート12が送り込まれたときに得られる第1画像57の縦横の方向X’,Y’は、規定の搬送方向X及びこれに垂直な方向Yに対して傾斜している。このため、破線で示すように、第1画像57内ではレンチキュラーレンズ42の方向が傾斜している。
【0061】
さらに、第1画像57は、発光面27に対応する明部52と遮光部材26に対応する暗部53に明確な境界線ではなく、明部52の画素値と暗部53の画素値の中間的な画素値となる中間部56になる。
【0062】
この場合、矢印X1,X2,Y0,Y1,Y2方向の画素値の変化は、図10に示すようになる。各矢印の位置は、レンズシート12がまっすぐに搬送される場合の第1画像51における各矢印X1,X2,Y0,Y1,Y2と同じ位置である。
【0063】
矢印X1で示すラインは中間部56にある場合、図10(A)に示すように、Y’方向に沿って画素値はほぼ一定であるが、その値は、レンズシート12が真っ直ぐに搬送されている場合の第1画像51における同位置の画素値よりも小さくなることがある。また、レンズシート12の搬送方向Xに対する傾斜度合いに応じて、レンチキュラーレンズ42のピッチパターンが重畳される。一方、図10(B)に示すように、矢印X2で示すライン上の画素値はほぼ一定であるが0ではなく、ほぼ一定の値を持つようになるとともに、ピッチパターンが重畳されることがある。
【0064】
一方、矢印Y0,Y1,Y2で示すX’方向ラインは、レンチキュラーレンズ42の方向に対応して一定の傾斜したラインとなるので、どのライン上でもほぼ同様な画素値の変化となる。例えば、図10(C)に示すように、明部52内ではほぼ一定の画素値となり、中間部56において徐々に画素値が減少し、暗部53において0になる。中間部56の長さdは長いほど、規定の搬送方向Xに対してレンズシート12の傾斜が大きく、中間部の長さdが短いほど、規定の搬送方向Xに対するレンズシート12の傾斜が小さい。
【0065】
以上のことから、シャープネス算出部17は、入力される第1画像51,57のデータから、例えば、矢印Y1で示すライン上の画素値の変化等、第1画像51,57内でエッジ32に対応する像を垂直にまたぐライン上の画素値の変化を取得し、中間部56の長さdを第1画像のシャープネスとして算出する。そして、検査位置制御部18は、中間部56の長さdを所定の閾値と比較し、閾値よりも中間部56の長さdが短い場合に、撮像ユニット13の位置がレンズシート12に対して欠陥検査に必要な範囲内に収まったと判定する。
【0066】
上述のようなシャープネスの算出は、第1撮像装置22がデフォーカスして用いられることによって可能になる。比較のために、レンズシート12に合焦点34を合わせた場合の例を以下に説明する。
【0067】
図11に示す第1画像61は、第1撮像装置22の合焦点34をレンズシート12上に合わせて撮像される第1画像の例である。また、第1画像61は、レンズシート12がレンチキュラーレンズ42の方向と規定の搬送方向Xが平行になるように真っ直ぐに搬送される場合の例である。
【0068】
第1画像61には、概ね明部52と暗部53が境界線54で二分された画像となる。しかし、明部52は、第1撮像装置22がデフォーカスされていないので、レンチキュラーレンズ42のピッチパターン62が明瞭に現れる。この第1画像61について、前述の第1画像51,57と同様に、矢印X1,X2,Y0,Y1,Y2で示すライン上の画素値を表すと、例えば図12に示すようになる。
【0069】
図12(A)に示すように、矢印X1は明部52にあるものの矢印X1のライン上の画素値は、ピッチパターン62を反映して振動的になる。図12(B)に示すように、矢印X2で示すライン上の画素値は、矢印X2が暗部53にあるのでほぼ0である。
【0070】
また、図12(C)に示すように、矢印Y0で示すライン上の画素値は、第1画像61にピッチパターン62が明瞭に重畳されてしまっていることによって、明部52から暗部53にかけて境界線54をまたぐにもかかわらずほぼ0になる。一方、図12(D)及び図12(E)に示すように、矢印Y1,Y2で示すライン上の画素値は、明部52ではほぼ一定の値を持ち、暗部53ではほぼ0になるが、そのギャップはピッチパターン62に対する位置に応じて異なる。
【0071】
このため、シャープネス算出部17が参照するX方向に沿ったラインの位置によって、エッジ32に対応する境界線の位置を検出可能な場合とそうでない場合がある。したがって、第1撮像装置22がデフォーカスされていないと、レンズシート12が真っ直ぐに搬送されている場合ですら、第1画像のシャープネスを一意に算出することが難しくなる。
【0072】
ここでは、レンズシート12が規定通りにまっすぐに搬送された場合を例にしたが、さらにレンズシート12が傾斜して搬送された場合には、明部52と暗部53との間に中間部56が生じるとともに、中間部56にもピッチパターン62が重畳されることによって、中間部56の長さdを一意に算出することはできない。したがって、第1撮像装置22がデフォーカスされていない場合には、第1画像からエッジ32の像に基づいてシャープネスを算出することが難しい。
【0073】
欠陥検出部19は、以下のようにして表面の局所的な歪み44や屈折率欠陥45等の欠陥を検出する。まず、図13に示すように、第2画像71は、破線で示すようにレンチキュラーレンズ42と、発光面27と遮光部材26のエッジ32とが直交するように検査位置制御部18によって撮像ユニット13の位置が調節された後に撮像される画像であるので、発光面27に対応する明部72と遮光部材26に対応する暗部73とが境界線74によって二分された画像となっている。なお、第2画像71を撮像した第2撮像装置23はデフォーカスされているので、破線で示すようなレンチキュラーレンズ42のピッチパターンは第2画像71にほとんど重畳されない。また、境界線74は、エッジ32に対応するものであり、第2画像71が撮像された検査位置に欠陥がない場合には、図13に示すとおり直線である。
【0074】
一方、図14に示すように、第2画像71が撮像された検査位置に欠陥75が含まれていると、欠陥75とその周囲において屈折率等の光学特性が変化している。このため、欠陥75の周辺で境界線74が歪み、例えば明部52が暗部53側に一部突出する。なお、ここでは、欠陥75によって境界線74が暗部73側に突出する例を説明したが、欠陥75の態様によっては暗部73が明部72側に突出する場合もある。この境界線74の歪みの大きさは、欠陥75のサイズよりも大きくなる。このように、欠陥検査装置11は、エッジ32の像に基づいて欠陥75の検出を行うようにしたので、透過率や反射率が殆ど周辺の正常部分と差がなく、目視検査等で検出が難しい欠陥75であっても、境界線74の歪みに拡大されて観察され、安定して検出することができる。
【0075】
なお、上述の実施形態では、原理的の説明のために第1画像51のY方向の画素値の変化から中間部56の長さdを算出し、この長さdが減少するように撮像ユニット13の位置を回転移動させる例を説明したが、第1画像51に基づいて撮像ユニット13を回転移動させる態様はこれに限らない。例えば、デジタルカメラに搭載されるAF機構を流用することができる。デジタルカメラでは、スルー画像のコントラストが最も高くなるようにレンズの位置を制御して最適な合焦点位置を決定するコントラスト検出方式が知られている。コントラスト検出方式は、スルー画像のコントラストが最も高くなるようにレンズを駆動するAF方式である。これを本発明の欠陥検査装置に用いるときには、第1画像51のエッジ32近傍の部分のコントラストが最も高くなるように、撮像ユニット13を回転移動させれば良い。
【0076】
なお、上述の実施形態では、レンズシート12が傾斜して搬送されてきた場合に、撮像ユニット13をレンズシート12の向きにあわせて回転させる例を説明したが、これに限らない。例えば、撮像ユニット13を規定の搬送方向Xに対して固定して設けておき、レンズシート12を搬送方向Xに揃えるようにレンズシート12の向きを調節する機構を設け、これを用いてレンズシート12と撮像ユニット13の相対的な位置関係を調節しても良い。
【0077】
なお、上述の実施形態では、検査位置制御部18は移動機構16によって撮像ユニット13の全体を回転移動及び平行移動させる例を説明したがこれに限らない。例えば、遮光部材26と第2撮像装置23だけを移動自在に設け、第1画像51のシャープネスに応じて遮光部材26と第2撮像装置23を異動させるようにしても良い。この場合、第1撮像装置22とレンズシート12の相対的な位置関係は変化しないが、遮光部材26の移動によって、第1画像51で観察されるエッジ32の態様(境界線54や中間部56)は向きが異なるが性質の変化態様は同様である。
【0078】
なお、上述の実施形態では、第1撮像装置22と第2撮像装置23をデフォーカスして用いるときに、第1撮像装置22と第2撮像装置23の合焦点34の位置を共通にしてあるが、これに限らない。第1撮像装置22の合焦点位置と第2撮像装置23の合焦点位置は各々異なる位置に定めても良い。また、第2撮像装置23をデフォーカスして用いることは必須であるが、第1撮像装置22は必ずしもデフォーカスして用いなくても良い。例えば、前述のようにAFのコントラスト検出方式を流用して第1画像のコントラストが最も大きくなるようにフィードバック制御するときには、第1撮像装置22はデフォーカスされていなくても良い。但し、検出精度を向上させるためには第1撮像装置22もデフォーカスして用いることが好ましい。
【0079】
なお、上述の実施形態では、検査位置制御部18は、第1画像からエッジ32のシャープネスとして算出された中間部56の長さdが所定の閾値よりも大きくなるように撮像ユニット13の位置をフィードバック制御する例を説明したが、エッジ32の像が最も鮮鋭になるように制御すれば良い。このため、必ずしも長さdを閾値と比較する態様でなくてもよく、長さdが最小になるように制御しても良い。
【0080】
なお、上述の実施形態では、第2撮像装置23によって細長くほぼ線状の第2画像71を撮像する例を説明したが、第2撮像装置23は文字通り線状の領域を撮像するようにしても良い。この場合、第2撮像装置23が撮像するラインは、エッジ32上でも良く、エッジ32近傍の暗部73側にあっても良く、エッジ32近傍の明部72側に合っても良い。但し、検出精度を向上させるためにはできるだけエッジ32に近いことが好ましい。
【0081】
このように第2画像71のY方向1列の画素値の変化を用いてエッジ32の歪みを検出する場合、欠陥75によって境界線74に歪みが生じると、部分的に画素値が変化する。例えば、エッジ32近傍の暗部73に第2画像71のラインがある場合、欠陥75がないときにはすべての画素の画素値がほぼ0であるが、欠陥75が近傍にあることによって境界線74が歪むと、境界線74が歪んで明部72となった一部の画素の画素値が上昇する。欠陥検出部19は、この上昇した画素値を検出することにより、欠陥75を検出する。明部72に第2画像71のラインがる場合は暗部73に第2画像71のラインがある場合と明暗が逆転しているだけで同様である。
【0082】
[実施例]
以下、3D写真用レンチキュラーレンズシートの製造工程において、欠陥検査装置11を用いる実施例を説明する。レンズシート12は、平坦なPETフィルムを基材として、その一方の表面にピッチが約0.25mmのレンチキュラーレンズを成形して貼り合わせることによって作製した。面光源24は、蛍光灯の全面に発光面27として拡散板を配置したものを用いた。また、遮光部材26は、発光面27の中央にエッジ32が位置するように配置した。こうして作製された光源装置21は、レンズシート12から遮光部材26までの距離約200mmに配置した。また、第1撮像装置22としては、エリアセンサとしてCCDイメージセンサを用いた。
【0083】
なお、上述の実施形態とは異なるが、第1画像51に写し出されるエッジ32のシャープネスの算出は、デジタルカメラ等で用いられるコントラスト検出方式により行い、撮像ユニット13の移動のかわりに、遮光部材26を移動させる機構を採用した。これらの方法を採用しても、検査位置の調節や欠陥75の検出の態様は上述の実施形態と同様である。
【0084】
第2撮像装置23としては、7000画素のライン型CCDカメラを用い、レンズシート12表面部分で分解能0.1mmとなるように撮像レンズ及び受光距離を設定し、受光光軸(検査位置)はエッジ32の部分になるように位置を調節した。第1撮像装置22及び第2撮像装置23の合焦点34は、レンズシート12と遮光部材26の中間位置(レンズシート12から約100mmの位置)に設定した。
【0085】
このように構成される欠陥検査装置11によって、内部異物(サイズ0.05mm)によって印刷面に歪み44を生じたものを欠陥75のサンプルとして検出した。この歪み44は、印刷面43上で約0.5mmであるが、透過率は正常な表面と差がなく、緩やかな凹凸変形をしているだけであり、目視検査では発見され難いものである。また、欠陥75は、遮光部材26や第1撮像装置22のデフォーカスなしで、透過照明を用いて撮像した画像や、透過照明で斜め方向から撮影した画像、反射暗視野照明で撮影した画像では、欠陥75を識別できなかった。
【0086】
この欠陥75を上述のように構成した欠陥検査装置11で検査すると、レンチキュラーレンズ42のピッチパターンを含む正常な部分の振幅をノイズ(N)、欠陥75部分の信号をSとして、S/Nにより欠陥検査装置11の欠陥検出能力を評価したところ、欠陥75のピーク位置でのS/Nは6、S/Nが3以上の画素数は12であった。これは製造工程において安定して欠陥75を検出可能な信号レベル及び画素数である。
【0087】
なお、上述の実施形態では、第1撮像装置22と第2撮像装置23を共通の光源装置21を用いて撮像するように配置し、第1撮像装置22、第2撮像装置23、光源装置21を撮像ユニット13として一体に形成する例を説明したがこれに限らない。第1撮像装置22と第2撮像装置23は、欠陥検出の精度やコスト等の点から、上述の実施形態のように同じ光源装置21を用いるように配置されていることが最も好ましいが、例えば、第1撮像装置22と第1撮像装置22に専用の光源装置設け、これらを第1の撮像ユニットとし、第2撮像装置23と光源装置21を第2の撮像ユニットとして、各々別個に設けても良い。
【0088】
このように、第1撮像装置22と第2撮像装置23を別個に設ける場合には、第1画像51に基づいて検査位置を調節する態様を他のものに変えることができる。例えば、以下のように、モアレ縞を利用して、検査位置を調節することができる。
【0089】
図15に示すように、第1撮像装置22を第2撮像装置23とは別個の位置に配置し、第1撮像装置22に専用の光源装置81を設ける。光源装置81は、レンズシート12を介して第1撮像装置22の直下に配置され、レンズシート12側に向けられる上面に照明光を発する発光面27を有し、レンズシート12の印刷面43側から均一な光量の照明光を照射する。この第1撮像装置22用の光源装置81と前述の光源装置21との相違点は、発光面27上に遮光部材26が配置されていない点である。第1撮像装置22は、上述の実施形態のものと同様であり、デフォーカスして用いられる。
【0090】
また、レンズシート12と光源装置81との間には、基準シート83を設ける。基準シート83は、欠陥75が含まれていないことが予め検査されたレンズシート12を切り出したものである。基準シート83は、検査対象のウェブ状レンズシート12が搬送されるXY面内において、基準シート83のレンチキュラーレンズ42の方向が搬送方向Xに厳密に一致するように配置される。一方、基準シート83は、シリンダ82によってレンズシート12からの距離(Z方向)を調節可能に設けられており、第1画像の撮像時にはレンズシート12のごく近傍の一定の位置に配置される。
【0091】
このように基準シート83を配置して第1画像を撮像すると、第1画像には、基準シート83とレンズシート12の相対的な角度に応じてモアレ縞が発生することがあり、モアレ縞検出部84は、このモアレ縞を検出することによってレンズシート12の実際の搬送方向(規定の搬送方向Xからのズレ)を算出する。モアレ縞検出部84による算出結果は、検査位置制御部18に入力され、検査位置制御部18はこれに基づいて第2撮像装置23及び光源装置21の位置や向きを検査に適切な位置に調節する。
【0092】
図16(A)に示すように、基準シート83には、基準線85が設けられている。基準線85は、第1撮像装置22で撮像した第1画像に写り込むように、基準シート83の背面に引かれた線である。基準線85は、例えば、基準シート83の中央を通り、レンチキュラーレンズ42に垂直になるように設けられる。基準シート83に対してレンズシート12が傾斜している場合、基準シート83にレンズシート12を重ねて撮像された第1画像87には、例えば、図16(B)に示すようなモアレ縞86が現れる。例えば、図17に示すように、レンズシート12が規定の搬送方向Xに対して角度θだけ傾いて搬送されると、第1画像87には基準線85から角度θ/2だけ傾斜したモアレ縞86が発生する。モアレ縞検出部84は、第1画像からモアレ縞86の周期や基準線85に対する角度を検出し、これに基づいてレンズシート12の搬送方向を算出する。なお、光源装置81には遮光部材26は設けられておらず、第1撮像装置22はデフォーカスして用いられているので、レンズシート12が搬送方向Xに沿って正確に搬送されている場合には、第1画像87にはモアレ縞86は発生せず、全面の輝度がほぼ均一であり、例えばただの白い画像になる。
【符号の説明】
【0093】
11 欠陥検査装置
12 レンズシート
13 撮像ユニット
14 制御部
16 移動機構
17 シャープネス算出部
18 検査位置制御部
19 欠陥検出部
21,81 光源装置
22 第1撮像装置
23 第2撮像装置
24 面光源
26 遮光部材
27 発光面
31 エリア
32 エッジ
33 ライン
34 合焦点
41 シート
42 レンチキュラーレンズ
43 印刷面
44 歪み
45 屈折率欠陥
51,57,61,87 第1画像
52,72 明部
53,73 暗部
54,74 境界線
56 中間部
62 ピッチパターン
71 第2画像
75 欠陥
82 シリンダ
83 基準シート
84 モアレ縞検出部
85 基準線
86 モアレ縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチキュラーレンズが複数配列されたレンズシートに、前記レンチキュラーレンズに直交する向きに帯状の照明光を照射する照明手段と、
前記レンズシートの送り方向に垂直な方向である前記レンズシートの幅方向の少なくとも一部分のエリアについて、前記レンズシートを透過した前記照明光のエッジを撮像して第1画像を取得する第1撮像手段と、
前記第1画像に基づいて、前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度に対応するデータを算出する角度データ算出手段と、
前記角度算出手段によって算出された前記データに応じて、前記レンズシートに対する前記エッジの角度、または前記エッジの位置に対する前記レンズシートの角度を調節する角度調節手段と、
前記角度調節手段によって前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度が調節されたあとに、または相対的な角度が一定範囲内に収まるように常時調節しながら、前記レンズシート上から合焦点がずらされたデフォーカス状態で、走行する前記レンズシートの全幅にわたって前記エッジを撮像して第2画像を取得する第2撮像手段と、
前記第2画像に基づいて、前記レンズシートの欠陥を検出する欠陥検出手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記照明光を発する発光面と、前記レンチキュラーレンズに直交する向きに前記発光面を一部遮光する遮光手段とを有し、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段は、前記発光面と前記遮光手段との境界線を前記エッジとして撮像することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記第2画像に重畳される前記レンチキュラーレンズのピッチパターンの振幅が、前記合焦点が前記レンズシート上にある場合と比較して1/2以下になるように、前記第2撮像手段の合焦点の位置が定められていることを特徴とする請求項1または2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記第2撮像手段の合焦点は前記レンズシートよりも前記照明手段側にデフォーカスされていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記角度データ算出手段は、前記第1画像に写された前記エッジのシャープネスを前記データとして算出し、
前記角度調節手段は、前記シャープネスが大きくなるように前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度を調節することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記角度調節手段は、前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度を調節するために、前記エッジを回転させることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記第1撮像手段は、前記レンズシートよりも前記照明手段側にデフォーカスされていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記欠陥検出手段は、前記エッジの歪みを前記レンズシートの欠陥として検出することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の欠陥検査装置
【請求項9】
前記第2撮像手段は、ラインセンサであることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項10】
前記第1撮像手段は、エリアセンサであることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項11】
前記レンズシートは、3D写真に用いられるレンチキュラーレンズシートであることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の検査装置を備えることを特徴とするレンズシート製造装置。
【請求項13】
レンチキュラーレンズが複数配列されたレンズシートに照射される照明光のエッジを撮像して第1画像を取得する第1画像取得ステップと、
前記第1画像の第1画像に基づいて、前記レンズシートと前記エッジの相対的な角度に対応するデータを算出する角度データ算出ステップと、
前記データに応じて、前記レンズシートに対する前記エッジの角度、または前記エッジの位置に対する前記レンズシートの角度を調節する角度調節ステップと、
前記レンズシート上から合焦点がずらされたデフォーカス状態で前記レンズシートの全幅にわたって前記エッジを撮像して第2画像を取得する第2画像取得ステップと、
前記第2画像に基づいて、前記レンズシートの欠陥を検出する欠陥検出ステップと、
を備えることを特徴とするレンズシートの欠陥検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−122753(P2012−122753A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271525(P2010−271525)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】