説明

レンズモジュール及び撮影装置

【課題】高い光学性能を有し且つ製造コストの低いレンズモジュール、及び該レンズモジュールを具えた撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るレンズモジュールは、2つのレンズ1,2が互いに固着して構成されている。ここで、2つのレンズ1,2の対向面10,20の内、何れか一方の対向面に、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第1被膜が形成され、該第1被膜は、前記一方の対向面での光反射を防止する光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収層とを積層して構成されている。又、2つのレンズ1,2の対向面10,20には、有効径外の領域に、該2つのレンズ1,2どうしが固着した固着部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の2つのレンズが互いに固着して構成されたレンズモジュール、及び該レンズモジュールを具えた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレンズモジュールは、図6に示す様に、有底円筒形状を有するレンズバレル(104)を具え、該レンズバレル(104)内に、樹脂製の2つのレンズ(101)(102)が収容されている。該2つのレンズ(101)(102)は、それらの光軸(192)がレンズバレル(104)の中心軸(191)に合致する様に配置される一方、レンズバレル(104)の底部(105)には、レンズの光軸(192)に沿って光を通過させるための窓(106)が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、図6に示されるC領域の拡大図である。図7に示す様に、2つのレンズ(101)(102)の対向面間には、不要な光を遮蔽するためのリング状の絞りフィルム(107)と、2つのレンズ(101)(102)を互いに固着させるリング状の赤外線吸収フィルム(108)とが介在している。ここで、絞りフィルム(107)は、2つのレンズ(101)(102)の光軸(192)側に配置され、赤外線吸収フィルム(108)は、絞りフィルム(107)の外周側に配置されている。
【0004】
レンズモジュールの製造工程においては、2つのレンズ(101)(102)の対向面間に赤外線吸収フィルム(108)を介在させ、この状態で、2つのレンズ(101)(102)の有効径r3,r4外にて該赤外線吸収フィルム(108)に赤外線レーザを照射する。これにより、赤外線吸収フィルム(108)は、赤外線レーザに含まれる赤外線を吸収して発熱し、その結果、2つのレンズ(101)(102)が赤外線吸収フィルム(108)に溶着して、両レンズ(101)(102)が赤外線吸収フィルム(108)を介して互いに固着することになる。
【0005】
又、図6に示すレンズモジュールにおいては、レンズバレル(104)内に、レンズ(102)との間にリング状のスペーサ(109)を介して第3のレンズ(103)が更に収容されており、該第3のレンズ(103)を含む3つのレンズ(101)(102)(103)は、レンズバレル(104)の内周面に嵌合されたクランプリング(110)によってレンズバレル(104)の底部(105)へ向けて押圧され、これにより、該3つのレンズ(101)(102)(103)は、レンズバレル(104)内の所定位置に固定されている。
【0006】
図8に示す様に、上記レンズモジュールは、携帯電話機等に搭載されるカメラモジュールに使用される。該カメラモジュールにおいては、配線基板(201)上にイメージセンサ(202)とDSP(Digital Signal Processor)(203)が搭載されており、上記レンズモジュールは、イメージセンサ(202)の受光面側にて、該受光面に対してレンズの光軸(192)が垂直となる様に配備される。又、レンズモジュールとイメージセンサ(202)との間には、イメージセンサ(202)に入射する光から赤外線を除去する赤外線カットフィルタ(204)が配備される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−17795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のレンズモジュールにおいては、2つのレンズ(101)(102)の固着に、高価な赤外線吸収フィルム(108)が用いられていた。このため、従来のレンズモジュールは、製造コストが高くなっていた。
【0009】
又、従来のレンズモジュールにおいては、図9に示す様に、赤外線吸収フィルム(108)を設けずに絞りフィルム(107)のみを設けた構成のものが存在している。この構成においては、絞りフィルム(107)に赤外線レーザを照射することにより、2つのレンズ(101)(102)を互いに固着させている。従って、赤外線吸収フィルムを設けない分、製造コストの削減が可能であるものの、赤外線レーザの熱により絞りフィルム(107)が変形してレンズモジュールの光学性能が劣化する問題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、高い光学性能を有し且つ製造コストの低いレンズモジュール、及び該レンズモジュールを具えた撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレンズモジュールは、2つのレンズが互いに固着して構成されている。ここで、前記2つのレンズの対向面の内、何れか一方の対向面に、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第1被膜が形成され、該第1被膜は、前記一方の対向面での光反射を防止する光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収層とを積層して構成されており、前記2つのレンズの対向面には、有効径外の領域に、該2つのレンズどうしが固着した固着部が設けられている。
【0012】
上記レンズモジュールの製造工程では、一方の対向面の有効径内の全領域に第1被膜を形成する際、該第1被膜の一部を一方の対向面の有効径外の領域にも形成する。その後、有効径外の領域の内、固着部を形成すべき領域上にて、第1被膜に対して可視光領域外の所定の波長の光を高い強度で(例えばレーザによって)照射する。これにより、光吸収層は、照射された光を吸収して発熱し、該光吸収層から生じた熱によって2つのレンズが固着して固着部が形成されることになる。
【0013】
従って、上記レンズモジュールによれば、従来のレンズモジュールにて2つのレンズの固着に用いられていた赤外線吸収フィルムが不要となり、その結果、レンズモジュールの製造コストが低減されることになる。
【0014】
又、上記レンズモジュールにおいては、上述のごとく光吸収層に強度の高い光(レーザ等)を照射して固着部が形成される。該レンズモジュールに絞りフィルムが設けられている場合であっても、該絞りフィルムにはレーザ等の光は照射されず、従って絞りフィルムは変形することがない。よって、レンズモジュールが有する高い光学性能が維持されることになる。
【0015】
更に又、上記レンズモジュールにおいては、有効径内の全領域に第1被膜が形成され、該第1被膜には光吸収層が含まれている。このため、レンズモジュールは、該レンズモジュールに入射された光から可視光領域外の所定の波長の光を除去することが出来、従って所定の波長の光を除去するフィルタとして機能することになる。よって、レンズモジュールを用いてカメラモジュールを構成した場合に、該所定の波長の光を除去するフィルタを別途に設ける必要がない。
【0016】
上記レンズモジュールの具体的構成において、前記2つのレンズの対向面の内、他方の対向面には、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第2被膜が形成され、該第2被膜は、前記他方の対向面での光反射を防止する第2の光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記第2の光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する第2の光吸収層とを積層して構成されている。
【0017】
本発明に係る他のレンズモジュールは、2つのレンズが互いに固着して構成されている。ここで、前記2つのレンズの対向面の内、何れか一方の対向面に、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第1被膜が形成され、該第1被膜は、前記一方の対向面での光反射を防止する光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収材料とから構成され、該光吸収材料は、前記光反射防止層内に混ぜ込まれており、前記2つのレンズの対向面には、有効径外の領域に、該2つのレンズどうしが固着した固着部が設けられている。
【0018】
上記他のレンズモジュールの製造工程では、一方の対向面の有効径内の全領域に第1被膜を形成する際、該第1被膜の一部を一方の対向面の有効径外の領域にも形成する。その後、有効径外の領域の内、固着部を形成すべき領域上にて、第1被膜に対して可視光領域外の所定の波長の光を高い強度で(例えばレーザによって)照射する。これにより、光吸収材料は、照射された光を吸収して発熱し、該光吸収材料から生じた熱によって2つのレンズが固着して固着部が形成されることになる。
【0019】
従って、上記レンズモジュールによれば、従来のレンズモジュールにて2つのレンズの固着に用いられていた赤外線吸収フィルムが不要となり、その結果、レンズモジュールの製造コストが低減されることになる。
【0020】
又、上記レンズモジュールにおいては、上述のごとく光吸収層に強度の高い光(レーザ等)を照射して固着部が形成される。該レンズモジュールに絞りフィルムが設けられている場合であっても、該絞りフィルムにはレーザ等の光は照射されず、従って絞りフィルムは変形することがない。よって、レンズモジュールが有する高い光学性能が維持されることになる。
【0021】
更に又、上記レンズモジュールにおいては、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とに第1被膜が形成され、該第1被膜には光吸収材料が混ぜ込まれている。このため、レンズモジュールは、該レンズモジュールに入射された光から可視光領域外の所定の波長の光を除去することが出来、従って該所定の波長の光を除去するフィルタとして機能することになる。よって、レンズモジュールを用いてカメラモジュールを構成した場合に、該所定の波長の光を除去するフィルタを別途に設ける必要がない。
【0022】
上記他のレンズモジュールの具体的構成において、前記2つのレンズの対向面の内、他方の対向面には、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第2被膜が形成され、該第2被膜は、前記他方の対向面での光反射を防止する第2の光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記第2の光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する第2の光吸収材料とから構成され、該第2の光吸収材料は、前記第2の光反射防止層内に混ぜ込まれている。
【0023】
上記レンズモジュールの他の具体的構成において、前記対向面には、有効径外の領域に、有効径内の領域を包囲する溝部が形成され、該溝部にて前記被膜が溝部より内側の部分と外側の部分とに分断され、又は該溝部にて前記被膜の厚さ寸法が小さくなっており、前記溝部の形成領域の外側に前記固着部が設けられている。
【0024】
上記レンズモジュールの製造工程において、2つのレンズを固着させて固着部を形成する際、レンズの一部が溶解して変形するのに伴って被膜も変形し、これにより、被膜の内、固着部の形成領域よりも内側に存在する部分が外側へ向けて引っ張れられることになる。ここで、上記具体的構成においては、溝部にて被膜が分断され、又は溝部にて被膜の厚さ寸法が小さくなっている。従って、被膜が外側へ引っ張られたとしても、その影響は溝部より内側の領域には及び難く、従って、有効径内の領域では被膜に割れ等の破損が生じ難い。
【0025】
本発明に係る撮影装置は、上記レンズモジュールを具えている。ここで、レンズモジュールは、上述の如く高い光学性能を有し、且つ製造コストが低い。従って、撮影装置も高い光学性能を有し、且つ製造コストが低減されることになる。尚、本発明に係る撮影装置には、レンズモジュールに入射された光を静止画及び動画として記録媒体に記録する装置、ディスプレイ等の表示装置に画像を表示させる装置、所謂カメラやビデオカメラが含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るレンズモジュール及び撮影装置は、高い光学性能を有し、且つ製造コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るレンズモジュールを示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示されるA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図2に示されるB領域の拡大図である。
【図4】図4は、レンズ表面に形成された被膜の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、上記レンズモジュールを、携帯電話機等に搭載されるカメラモジュールに使用した形態を示す断面図である。
【図6】図6は、従来のレンズモジュールを示す断面図である。
【図7】図7は、図6に示されるC領域の拡大図である。
【図8】図8は、該従来のレンズモジュールを、携帯電話機等に搭載されるカメラモジュールに使用した形態を示す断面図である。
【図9】図9は、従来のレンズモジュールの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズモジュールを示す上面図であり、図2は、図1に示されるA−A線に沿う断面図である。図2に示す様に、本実施形態のレンズモジュールは、有底円筒形状を有するレンズバレル(40)と、該レンズバレル(40)内に収容された樹脂製の3つのレンズ(1)(2)(3)とを具えている。該3つのレンズ(1)(2)(3)は、それらの光軸(92)がレンズバレル(40)の中心軸(91)に合致する様に配置される一方、レンズバレル(40)の底部(41)には、レンズ(1)(2)(3)の光軸(92)に沿って光を通過させるための窓(42)が形成されている。
【0029】
又、3つのレンズ(1)(2)(3)の内、レンズバレル(40)の底部(41)近傍の位置に配置されている第1レンズ(1)と第2レンズ(2)は互いに固着されており、残りの第3レンズ(3)は、第2レンズ(2)との間にリング状のスペーサ(43)を介して配置されている。又、第1レンズ(1)と第2レンズ(2)との対向面(10)(20)の内、第1レンズ(1)側の対向面(10)には有底凹部(11)が形成されており、該有底凹部(11)には、不要な光を遮蔽するためのリング状の絞りフィルム(44)が嵌合されている。そして、3つのレンズ(1)(2)(3)は、レンズバレル(40)の内周面に嵌合されたクランプリング(45)によってレンズバレル(40)の底部(41)へ向けて押圧され、これにより、該3つのレンズ(1)(2)(3)は、レンズバレル(40)内の所定位置に固定されている。
【0030】
図3は、図2に示されるB領域の拡大図である。図3に示す様に、第1レンズ(1)側の対向面(10)には、有効径r1内の全領域と有効径r1外の一部の領域とを覆う第1被膜(5)が形成される一方、第2レンズ(2)側の対向面(20)には、有効径r2内の全領域と有効径r2外の一部の領域とを覆う第2被膜(6)が形成されている。
【0031】
図4は、上記第1被膜(5)の構成を示す断面図である。図4に示す様に、第1被膜(5)は、第1レンズ(1)側の対向面(10)での光反射を防止する光反射防止層(51)と、赤外線を、光反射防止層(51)が有する該赤外線の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収層(52)とを積層して構成されている。具体的には、光反射防止層(51)が、2つのシリカ層(513)(514)の間にアルミナ層(515)を挟んで形成された2つの積層膜(516)(517)から構成され、第1被膜(5)が、2つの積層膜(516)(517)の間に光吸収層(52)を挟んで構成されている。積層膜(516)(517)の層構成や層厚を適宜変更することにより、第1被膜(5)の屈折率を調整することが可能となる。
【0032】
尚、光吸収層(52)が有する光吸収率は70%以上であることが好ましい。又、光吸収層(52)には、錫(Sn)、インジウム(In)、これらの酸化物(Sn、In)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化インジウム錫(ITO)等の材料から形成された層、更にはフタロシアニン系材料又はシアニンアゾ系材料等から形成された層を用いることが出来る。
【0033】
図示していないが、本実施形態においては、第2被膜(6)は、第1被膜(5)と同様の構成を有している。尚、第2被膜(6)の構成は、第1被膜(5)の構成と相違していてもよい。又、第1被膜(5)及び第2被膜(6)の構成は、図4に示す構成に限定されるものではない。
【0034】
図3に示す様に、第1レンズ(1)と第2レンズ(2)と対向面(10)(20)には、有効径r1,r2外の領域、具体的には第1レンズ(1)側の対向面(10)に形成されている有底凹部(11)の形成領域より外側の領域に、両レンズ(1)(2)どうしが溶着して形成された溶着部(7)が設けられている。具体的には、溶着部(7)は、上記レンズモジュールの製造工程において次の如く形成される。先ず、第1レンズ(1)側の対向面(10)の有効径r1内の全領域に第1被膜(5)を形成する際、該第1被膜(5)の一部を第1レンズ(1)側の対向面(10)の有効径r1外の領域にも形成する。同様に、第2レンズ(2)側の対向面(20)の有効径r2内の全領域に第2被膜(6)を形成する際、該第2被膜(6)の一部を第2レンズ(2)側の対向面(20)の有効径r2外の領域にも形成する。その後、両レンズ(1)(2)の有効径r1,r2外の領域の内、溶着部(7)を形成すべき領域上にて、第1被膜(5)及び第2皮膜(6)に対して赤外線レーザを照射する。これにより、第1被膜(5)及び第2被膜(6)の各光吸収層(52)は、照射された赤外線レーザに含まれる赤外線を吸収して発熱し、該光吸収層(52)から生じた熱によって第1レンズ(1)と第2レンズ(2)とが溶着して溶着部(7)が形成される。尚、該溶着部(7)は、2つのレンズ(1)(2)が固着した部分であり、従って溶着部(7)を固着部ということも出来る。
【0035】
図3に示す様に、第1レンズ(1)側の対向面(10)には更に、有効径r1外の領域に、有効径r1内の領域を包囲する第1溝部(12)が形成され、該第1溝部(12)にて第1被膜(5)が第1溝部(12)より内側の部分と外側の部分とに分断され、又は該第1溝部(12)にて第1被膜(5)の厚さ寸法が小さくなっている。又、第2レンズ(2)側の対向面(20)には更に、有効径r2外の領域に、有効径r2内の領域を包囲する第2溝部(22)が形成され、該第2溝部(22)にて第2被膜(6)が第2溝部(12)より内側の部分と外側の部分とに分断され、又は該第2溝部(22)にて第2被膜(6)の厚さ寸法が小さくなっている。そして、第1溝部(12)と第2溝部(22)の形成領域の外側に溶着部(7)が設けられている。
【0036】
上記レンズモジュールの製造工程において、第1レンズ(1)と第2レンズ(2)とを溶着させて溶着部(7)を形成する際、第1レンズ(1)の一部が溶解して変形するのに伴って第1被膜(5)の一部が変形し、これにより、第1被膜(5)の内、溶着部(7)の形成領域よりも内側に存在する部分が外側へ向けて引っ張れられる。又、第2レンズ(2)の一部が溶解して変形するのに伴って第2被膜(6)の一部が変形し、これにより、第2被膜(6)の内、溶着部(7)の形成領域よりも内側に存在する部分が外側へ向けて引っ張れられる。
【0037】
ここで、上記レンズモジュールにおいては、第1溝部(12)にて第1被膜(5)が分断され、又は第1溝部(12)にて第1被膜(5)の厚さ寸法が小さくなっている。従って、第1被膜(5)が外側へ向けて引っ張られたとしても、その影響は第1溝部(12)より内側の領域には及び難く、従って、有効径r1内の領域では第1被膜(5)に割れ等の破損が生じ難い。又、上記レンズモジュールにおいては、第2溝部(22)にて第2被膜(6)が分断され、又は第2溝部(22)にて第2被膜(6)の厚さ寸法が小さくなっている。従って、第2被膜(6)が外側へ向けて引っ張られたとしても、その影響は第2溝部(22)より内側の領域には及び難く、従って、有効径r2内の領域では第2被膜(6)に割れ等の破損が生じ難い。
【0038】
図5は、上記レンズモジュールを、携帯電話機等の撮影装置に搭載されるカメラモジュールに使用した形態を示す断面図である。図5に示す様に、該カメラモジュール(8)においては、配線基板(80)上にイメージセンサ(81)とDSP(82)が搭載されており、上記レンズモジュールは、イメージセンサ(81)の受光面側にて、該受光面に対してレンズの光軸(92)が垂直となる様に配備される。
【0039】
カメラモジュール(8)は、レンズモジュールに入射した光を該レンズモジュールによりイメージセンサ(81)上に結像させ、これをイメージセンサ(81)により電気信号に変換する。該電気信号は、DSP(82)により処理される。カメラモジュール(8)は、携帯電話機等の機器本体に、それに内蔵されたマイコン(83)と通信可能に接続されており、該マイコン(83)は、機器本体に設けられた操作部(84)に接続されて、操作部(84)からの入力信号を受信することが可能である。ユーザが操作部(84)を操作することにより、操作部(84)から、撮影を実行するための入力信号が入力された場合、マイコン(83)は操作部(84)からの入力信号を受信し、これによりマイコン(83)は、イメージセンサ(81)上に結像された画像の情報を入手し、その後、該情報に基づいて撮影に必要なシャッタ速度等を算出する。そして、マイコン(83)は、算出したシャッタ速度等で画像の撮影を実行し、これにより被写体の画像が取得されることになる。
【0040】
上記レンズモジュールによれば、従来のレンズモジュールにて2つのレンズの固着に用いられていた赤外線吸収フィルム(108)(図6参照)が不要となり、その結果、レンズモジュールの製造コストが低減されることになる。
【0041】
又、上記レンズモジュールにおいては、上述のごとく第1被膜(5)及び第2被膜(6)に赤外線レーザを照射して溶着部(7)が形成されている。このため、絞りフィルム(44)には赤外線レーザは照射されず、従って絞りフィルム(44)は変形することがない。よって、上記レンズモジュールによれば、高い光学性能が維持されることになる。
【0042】
更に又、上記レンズモジュールにおいては、第1レンズ(1)側の対向面(10)の有効径r1内の全領域が第1被膜(5)によって覆われ、第2レンズ(2)側の対向面(20)の有効径r2内の全領域が第2被膜(6)によって覆われており、第1被膜(5)と第2被膜(6)には光吸収層(52)が含まれている。このため、レンズモジュールは、レンズバレル(40)の窓(42)から入射される光から赤外線を除去することが出来、従って赤外線カットフィルタとして機能することになる。よって、図5に示す様に、レンズモジュールを用いてカメラモジュール(8)を構成した場合、赤外線を除去する赤外線カットフィルタ(図8参照)を別途に設ける必要がない。その結果、カメラモジュール(8)について、光軸(92)に沿う長さ寸法を小さくすることが可能になると共に、製造コストの削減が可能となる。
【0043】
尚、被写体の撮影時において被写体からレンズモジュールに入射する光に含まれている赤外線の強度は、赤外線レーザの強度よりも十分に小さい。よって、被写体からの光に含まれている赤外線を光吸収層(52)が吸収して該光吸収層(52)が発熱したとしても、その熱によってレンズ(1)(2)が変形することはなく、従って光学性能が低下することもない。
【0044】
上記レンズモジュールの変形例において、第1皮膜(5)は、第1レンズ(1)側の対向面(10)での光反射を防止する光反射防止層(51)と、赤外線を、光反射防止層(51)が有する該赤外線の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収材料とから構成され、該光吸収材料が光反射防止層(51)内に混ぜ込まれていてもよい。第2被膜(6)についても同様である。尚、光吸収材料には、錫(Sn)、インジウム(In)、これらの酸化物(Sn、In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム錫(ITO)等の材料、更にはフタロシアニン系材料、シアニンアゾ系材料等を用いることが出来る。
【0045】
上記変形例に係るレンズモジュールにおいては、光吸収材料が、図4に示す光吸収層(52)と同等の機能を発揮することになる。よって、該レンズモジュールは、上述したレンズモジュールと同様、高い光学性能を有し且つ製造コストが低い。更に、上記変形例に係るレンズモジュールも又、レンズバレル(40)の窓(42)から入射される光から赤外線を除去することが出来、従って赤外線カットフィルタとして機能する。よって、上記変形例に係るレンズモジュールを用いてカメラモジュール(8)を構成した場合においても、赤外線を除去する赤外線カットフィルタ(図8参照)を別途に設ける必要がない。
【0046】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、第1レンズ(1)と第2レンズ(2)との対向面(10)(20)の内、何れか一方の対向面にのみ第1皮膜(5)又は第2被膜(6)が形成されていてもよい。又、第1レンズ(1)と第2レンズ(2)の表面には、それらの対向面(10)(20)以外の領域にも第1被膜(5)及び第2被膜(6)が形成されていてもよい。
【0047】
更に、光吸収層(52)及び光吸収材料は、赤外線を吸収するものに限らず、紫外線等、可視光領域外の所定の波長の光を吸収するものであってもよい。例えば、紫外線を吸収する光吸収層(52)には、酸化セリウム(CeO)、酸化亜鉛(ZnO)、又はこれらを組み合わせた材料から構成された層、更にはベンゾフェノン系材料、シアノアクリレート系材料、サリチレート系材料、又はベンゾトリアゾール系材料等から形成された層を用いることが出来る。又、紫外線を吸収する光吸収材料には、酸化セリウム(CeO)、酸化亜鉛(ZnO)、及びこれらを組み合わせた材料、更にはベンゾフェノン系材料、シアノアクリレート系材料、サリチレート系材料、ベンゾトリアゾール系材料等を用いることが出来る。
【0048】
更に又、上記実施形態においては、樹脂製の2つのレンズ(1)(2)を溶着させることにより互いに固着させたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、2つのレンズ(1)(2)の内、一方のレンズが樹脂製であるのに対し、他方のレンズがガラス製であってもよい。この構成においても、2つのレンズ(1)(2)どうしを固着させることが可能である。具体的には、樹脂製のレンズが溶けた後、溶けた部分が冷却されて固まることにより、樹脂製のレンズとガラス製のレンズとが固着されることになる。
又、2つのレンズ(1)(2)が何れもガラス製の場合であっても、2つのレンズ(1)(2)どうしを固着させることが可能である。この場合、少なくとも何れか一方のレンズには、融点が低い材料から形成されたガラス製のレンズを採用することが好ましい。
【0049】
上記実施形態において、第1溝部(12)及び第2溝部(22)には、光軸(92)を中心として円環状に連続した形状を採用することが出来る。但し、第1溝部(12)及び第2溝部(22)の形状はこれに限定されるものではない。ここで、第1被膜(5)及び第2皮膜(6)に対して赤外線レーザを照射する際、赤外線レーザをスポット状に照射することが可能であり、従って、固着部(7)を光軸(92)周りに不連続に設けることが可能である。よって、第1溝部(12)及び第2溝部(22)も光軸(92)周りに不連続に設けることが可能である。具体的には、第1溝部(12)及び第2溝部(22)を固着部(7)近傍の位置にのみ設けることにより、第1溝部(12)及び第2溝部(22)はそれぞれ、部分的に途切れた不連続な状態で有効径r1,r2内の領域を包囲していてもよい。
【符号の説明】
【0050】
(1) 第1レンズ
(10) 対向面
(12) 第1溝部
(2) 第2レンズ
(20) 対向面
(22) 第2溝部
(5) 第1被膜
(51) 光反射防止層
(52) 光吸収層
(6) 第2被膜
(7) 溶着部(固着部)
(8) カメラモジュール
r1,r2 有効径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのレンズが互いに固着して構成されたレンズモジュールにおいて、前記2つのレンズの対向面の内、何れか一方の対向面に、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第1被膜が形成され、該第1被膜は、前記一方の対向面での光反射を防止する光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収層とを積層して構成されており、前記2つのレンズの対向面には、有効径外の領域に、該2つのレンズどうしが固着した固着部が設けられていることを特徴とするレンズモジュール。
【請求項2】
前記2つのレンズの対向面の内、他方の対向面には、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第2被膜が形成され、該第2被膜は、前記他方の対向面での光反射を防止する第2の光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記第2の光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する第2の光吸収層とを積層して構成されている請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
2つのレンズが互いに固着して構成されたレンズモジュールにおいて、前記2つのレンズの対向面の内、何れか一方の対向面に、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第1被膜が形成され、該第1被膜は、前記一方の対向面での光反射を防止する光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する光吸収材料とから構成され、該光吸収材料は、前記光反射防止層内に混ぜ込まれており、前記2つのレンズの対向面には、有効径外の領域に、該2つのレンズどうしが固着した固着部が設けられていることを特徴とするレンズモジュール。
【請求項4】
前記2つのレンズの対向面の内、他方の対向面には、有効径内の全領域と有効径外の一部の領域とを覆う第2被膜が形成され、該第2被膜は、前記他方の対向面での光反射を防止する第2の光反射防止層と、可視光領域外の所定の波長の光を、前記第2の光反射防止層が有する該光の吸収率より高い吸収率で吸収する第2の光吸収材料とから構成され、該第2の光吸収材料は、前記第2の光反射防止層内に混ぜ込まれている請求項3に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記対向面には、有効径外の領域に、有効径内の領域を包囲する溝部が形成され、該溝部にて前記被膜が溝部より内側の部分と外側の部分とに分断され、又は該溝部にて前記被膜の厚さ寸法が小さくなっており、前記溝部の形成領域の外側に前記固着部が設けられている請求項1乃至請求項4の何れかに記載のレンズモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のレンズモジュールを具える撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158506(P2011−158506A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17719(P2010−17719)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】