説明

レンズ鏡筒、カメラボディおよびカメラシステム

【課題】好適な焦点調節を行うことが可能なレンズ鏡筒、カメラボディおよびカメラシステムを提供する。
【解決手段】カメラボディ100が取り付け可能なレンズマウント201と、結像光学系210を透過する光量を調節する絞り211と、絞り211を駆動し絞り211の絞り径を変化させる絞り駆動部212と、カメラボディ100との信号の送受信が可能なレンズ側送受信部217と、絞り211の絞り径が第1絞り径から第2絞り径まで変化するときに、第1絞り径および第2絞り径より大きい第3絞り径に対応する絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御するレンズ制御部203とを備えるレンズ鏡筒200。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒、カメラボディおよびカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる瞳分割光学系を用いた位相差検出方式の焦点検出装置が知られている。被写体からの光束が絞りによりケラレる場合、デフォーカス量を算出する際に、絞りの開口径(絞り径)が必要となる。例えば特許文献1には、絞り径を用いた相関演算を行う焦点検出装置が記載されている。特許文献1によれば、特定の射出瞳開口(例えば絞り)で制限された焦点検出用光束の重心位置の値を演算する際には、当該射出瞳開口のサイズ(例えば絞り径)が必要となる。特許文献1に記載の焦点検出装置は、この重心位置を用いて、像ズレ量からデフォーカス量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−268403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絞りが駆動している最中は絞り径が連続的に変化するので、焦点検出演算を精度よく行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施例を示す図面に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に係る発明は、カメラボディ(100)が取り付け可能な取付部(201)と、結像光学系(210)を透過する光量を調節する絞り(211)と、絞り(211)を駆動し絞り(211)の絞り径を変化させる絞り駆動部(212)と、カメラボディ(100)との信号の送受信が可能な送受信部(217)と、絞り(211)の絞り径が第1絞り径および第2絞り径より大きい第3絞り径に対応する絞り信号を送信するように送受信部(217)を制御する制御部(203)とを備えることを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項5に係る発明は、カメラボディ(100)が取り付け可能な取付部(201)と、結像光学系(210)を透過する光量を調節する絞り(211)と、絞り(211)を駆動し絞り(211)の絞り径を変化させる絞り駆動部(212)と、カメラボディ(100)との信号の送受信が可能な送受信部(217)と、所定期間毎に、送受信部(217)が当該所定期間における絞り(211)の絞り径に対応する絞り信号をカメラボディ(100)に送信するように送受信部(217)を制御する制御部(203)とを備え、制御部(203)は、所定期間の内の一部期間において絞り(211)の絞り径が第1絞り径から第2絞り径まで変化した場合には、送受信部(217)が第1絞り径および第2絞り径より大きい第3絞り径に対応する絞り信号を送信するように送受信部(217)を制御することを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒に取り付けられるカメラボディであって、焦点検出用画素と撮像用画素とを有する撮像素子(104)と、レンズ鏡筒(200)との信号の送受信が可能なボディ側送受信部(117)と、焦点検出用画素の出力と、レンズ鏡筒(200)から送信されボディ側送受信部(117)が受信した絞り信号と、に基づいて焦点検出演算を行う焦点検出部(131)とを備えることを特徴とするカメラボディである。
請求項7に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒と、請求項6に記載のカメラボディとを有することを特徴とするカメラシステムである。
なお、符号を付して説明した構成は適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、好適な焦点調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
【図2】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【図3】焦点検出処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】絞り径の演算方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラシステム1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能なレンズ鏡筒200とから構成される。
【0009】
カメラボディ100にはレンズ鏡筒200が着脱可能に取り付け可能なレンズマウント101が設けられている。またレンズ鏡筒200には、ボディ側のレンズマウント101に対応し、カメラボディ100が着脱可能に取り付け可能なレンズマウント201が設けられている。レンズ鏡筒200が装着されると、レンズマウント101上に設けられた複数の接点から成る接点群102が、レンズ鏡筒200のレンズマウント201上に設けられた複数の接点から成る接点群202に接続される。接点群102および接点群202は、カメラボディ100からレンズ鏡筒200への電力供給、および、カメラボディ100とレンズ鏡筒200との信号の送受信に利用される。
【0010】
カメラボディ100内のレンズマウント101後方には、焦点検出用画素と撮像用画素とを有し、撮像信号を出力する撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン17a,17bが設けられている。ユーザはこれらのボタン17a,17bを用いてカメラボディ100に撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。
【0011】
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。レンズ鏡筒200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210には、結像光学系210を透過する光量を調節する絞り211を有する。また、結像光学系210は複数のレンズ210a〜210eにより構成されている。これら複数のレンズ210a〜210eには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210dが含まれている。
【0012】
レンズ鏡筒200内部には、レンズ鏡筒200の各部の制御を司るレンズ制御部203が設けられている。レンズ制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ制御部203には、レンズ側送受信部217、絞り駆動部212、ROM215、およびRAM216が接続されている。
【0013】
レンズ側送受信部217は、接点群102、202を介してカメラボディ100との信号の送受信が可能である。なお、以下の説明において、レンズ側送受信部217が接点群102、202を介してカメラボディ100へ信号を送信するように、レンズ制御部203がレンズ側送受信部217を制御することを、「レンズ制御部203がカメラボディ100に信号を送信する」と表記することがある。信号の受信についても同様である。
【0014】
絞り駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、絞り211を駆動し絞り211の絞り径を変化させる。ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203が実行する所定の制御プログラムが予め記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
【0015】
レンズ制御部203は、絞り径演算部231を備える。絞り径演算部231は、レンズ制御部203がROM215に記憶されている所定の制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される機能部である。なお絞り径演算部231の具体的な動作内容については後に詳述する。
【0016】
撮像素子104の前面には、シャッター115およびフィルター116が設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。シャッター115は、撮像素子104の露光状態を制御する。フィルター116は、光学的ローパスフィルターと赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルターである。
【0017】
カメラボディ100内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ制御部103が設けられている。ボディ制御部103は不図示のマイクロコンピュータ、RAMおよびその周辺回路等から構成される。ボディ制御部103にはボディ側送受信部117が接続されている。ボディ側送受信部117は接点群102に接続されており、レンズ鏡筒200との信号の送受信が可能である。なお、以下の説明において、ボディ側送受信部117が接点群102、202を介してレンズ鏡筒200へ信号を送信するように、ボディ制御部103がボディ側送受信部117を制御することを、「ボディ制御部103がレンズ鏡筒200に信号を送信する」と表記することがある。信号の受信についても同様である。
【0018】
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。本実施形態において、いわゆるスルー画を表示するための撮像素子104の画像出力周期は毎秒60フレーム(約16ミリ秒につき1フレーム)である。すなわち、ボディ制御部103には1秒間に60回、撮像素子104から出力される撮像信号が入力される。そしてボディ制御部103は1秒間に60回、撮像信号に基づく被写体の画像を表示装置111に表示させる。なお表示装置111にはスルー画の他に、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面も表示される。
【0019】
ボディ制御部103は、焦点検出部131を備える。焦点検出部131は、ボディ制御部103が所定の制御プログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現される機能部である。焦点検出部131は、周知の焦点検出演算(例えば特許文献1に記載されている演算)を行う。
【0020】
(自動焦点調節の説明)
ボディ制御部103は、周知の自動焦点調節処理を実行可能に構成されている。自動焦点調節処理は、現在の焦点調節状態を検出する焦点検出処理と、この検出結果に応じてフォーカシングレンズ210dを駆動し焦点調節を行う焦点調節処理とを含む。自動焦点調節処理において、ボディ制御部103は2種類の焦点検出処理を使い分けることが可能に構成されている。具体的には、ボディ制御部103はいわゆる撮像面位相差検出方式の焦点検出処理と、いわゆるコントラスト検出方式の焦点検出処理とを使い分けることが可能である。ボディ制御部103は、撮影状況や被写体の特性等に応じてこれら2種類の焦点検出処理を使い分ける。
【0021】
ボディ制御部103による撮像面位相差検出方式の焦点検出処理について説明する。本実施形態の撮像素子104は、フォーカス検出用の画素(焦点検出用画素と呼ぶ)を有する。フォーカス検出用画素は、特許文献1に記載されているものと同様のものである。焦点検出部131は、焦点検出用画素の出力と、レンズ鏡筒200から送信されボディ側送受信部117が受信した絞り信号(後に詳述する)と、に基づいて、例えば特許文献1に記載された焦点検出演算を行う。ボディ制御部103はこの焦点検出演算の結果を用いて焦点検出処理を行う。なお、この焦点検出演算については、例えば特許文献1に記載されているものと同様のものであるため、説明を省略する。ボディ制御部103は、この焦点検出処理により得られたデフォーカス量に基づいてフォーカシングレンズ210dを駆動させることにより、自動焦点調節を行う。
【0022】
ボディ制御部103によるコントラスト検出方式の焦点検出処理について説明する。ボディ制御部103は、撮像素子104が有する撮像用画素からの画素出力データを用いて、いわゆる山登り法に基づく周知のコントラスト検出演算を行い、焦点評価値(コントラスト値)を算出する。ボディ制御部103はこのコントラスト検出演算を、フォーカシングレンズ210dを後述する範囲で駆動させながら行い、焦点評価値がピークとなるフォーカシングレンズ210dの位置を検出することにより、自動焦点調節を行う。
【0023】
(焦点検出処理の説明)
撮像素子104は、所定の撮像周期(例えば30分の1秒)毎に各画素(受光素子)への電荷の蓄積を行う。ボディ制御部103は、撮像周期毎に、撮像素子104が出力する撮像信号を受信する。この撮像信号は、焦点検出用画素の出力と、撮像用画素の出力とを含む。ボディ制御部103はこの撮像周期に同期して、ボディ側送受信部117から絞り信号を要求する要求信号が送信されるようにボディ側送受信部117を制御する。すなわち、レンズ側送受信部217は、カメラボディ100の撮像周期に同期して要求信号を受信する。
【0024】
レンズ側送受信部217は、撮像周期毎にカメラボディ100から送信される絞り信号の要求信号を受信する。レンズ側送受信部217により要求信号が受信されると、レンズ制御部203は当該要求信号に応じて絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。この絞り信号は、絞り径演算部231により演算される絞り径に対応している。つまり、レンズ側送受信部217が要求信号を受信すると、まず絞り径演算部231により絞り径が演算され、その後にレンズ側送受信部217から当該絞り径に対応する絞り信号が送信される。
【0025】
ボディ制御部103は、撮像信号に含まれる撮像用画素の出力を用いて表示装置111にいわゆるスルー画を表示する。焦点検出部131は、撮像信号に含まれる焦点検出用画素の出力と、レンズ鏡筒200から送信されボディ側送受信部117が受信した絞り信号と、に基づいて焦点検出演算を行う。なお、以下の説明では、絞り211の絞り径を、結像光学系210の制御F値により表す。例えば、絞り211の絞り径が、結像光学系210のF値がF5.6になるようなサイズであることを指して、「絞り211の絞り径がF5.6である」と述べる。
【0026】
図3は、焦点検出処理を説明するためのタイミングチャートである。図3の上部にはカメラシステム1の各部の動作を、図3の下部には絞り211の開口径の遷移を、時間の経過を横軸としてそれぞれ示している。なお、図3の上部において四角形は各種の処理を表している。
【0027】
まず第一周期P1において、撮像素子104に電荷が蓄積される(AP1)。なおここでは、電荷が蓄積される第一周期P1において、絞り211の絞り径はF5.6であるとしている。第一周期P1に引き続く第二周期P2、第三周期P3においても、同様に撮像素子104に電荷が蓄積される。
【0028】
他方、第二周期P2において、ボディ制御部103は撮像素子104が出力する撮像信号を受信する(BP1)。ボディ制御部103は更に、ボディ側送受信部117から絞り信号を要求する要求信号が送信されるようにボディ側送受信部117を制御する(CP1)。レンズ側送受信部217が第二周期P2において当該要求信号を受信すると、絞り径演算部231が第一周期P1における絞り211の絞り径を演算する。図3に示すように、第一周期P1の全域において、絞り211の絞り径はF5.6に相当するサイズであるので、絞り径演算部231は第一周期P1における絞り211の絞り径をF5.6と演算する。このように、本実施形態の絞り径演算部231は、撮像周期Pの全域において絞り211の絞り径が変化しない場合には、撮像周期Pの開始時の絞り径を当該周期の絞り径として演算する。
【0029】
その後、レンズ制御部203は、絞り径演算部231により演算された絞り径に対応する絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。この制御により、レンズ側送受信部217からカメラボディ100に、F5.6に対応する絞り信号が送信され、当該絞り信号をボディ側送受信部117が受信する(DP1)。
【0030】
こうしてボディ制御部103は、第三周期P3において、第一周期P1における焦点検出用画素の出力と、第一周期P1における絞り211の絞り径と、を扱えるようになる。焦点検出部131は、第三周期P3において、第一周期P1における焦点検出用画素の出力と、第二周期P2においてレンズ鏡筒200から送信されボディ側送受信部117が受信した絞り信号と、に基づいて焦点検出演算を行う(EP1)。その後、ボディ制御部103が、演算結果に基づき、フォーカシングレンズ210dの駆動指示を表す駆動信号をレンズ鏡筒200に送信する(FP1)。レンズ制御部203は、レンズ側送受信部217が受信した当該駆動信号を、絞り駆動部212に送信する。駆動信号を受信した絞り駆動部212は、当該駆動信号が表す量だけ絞り211を駆動する。すなわち、絞り駆動部212は、絞り信号を要求する要求信号に同期しない駆動信号を受信し、当該駆動信号に応じて絞り211を駆動する。
【0031】
以上のように、撮像素子104による電荷の蓄積と、撮像素子104からの撮像信号の出力と、絞り径演算部231による絞り径の演算と、レンズ側送受信部217およびボディ側送受信部117による絞り信号の送受信と、焦点検出部131による焦点検出演算と、ボディ制御部103によるレンズ駆動指示の送信と、が撮像周期P毎に繰り返し行われることにより、結像光学系210の自動焦点調節が実現される。
【0032】
次に、絞り駆動部212により絞り211が駆動された場合の絞り径の演算について説明する。図3に示すように、第三周期P3において絞り211がF5.6からF2.8まで駆動された場合を考える。なお本実施形態において、絞り211の駆動に要する時間は、撮像周期Pよりも小さいものとする。
【0033】
第三周期P3のように、絞り211が駆動されている周期においては、絞り211の絞り径が連続的に変化する。これにより、カメラボディ100は第三周期P3における絞り211の絞り径を把握することができない。
【0034】
絞り211の駆動指示を出すのはボディ制御部103なので、ボディ制御部103は駆動前の絞り径と駆動後の絞り径とを把握している。しかしながら、焦点検出演算に駆動前の絞り径(F5.6)と駆動後の絞り径(F2.8)のいずれを用いたとしても、演算結果の誤差が大きくなってしまう。
【0035】
そこで本実施形態では、絞り径演算部231が、絞り211が駆動されていた第三周期P3を代表する絞り径(F4.0)を演算する。すなわち絞り径演算部231は、絞り211の絞り径が第1絞り径(例えばF5.6)から第2絞り径(例えばF2.8)まで変化するときに、第1絞り径と第2絞り径との間の絞り径に対応する第3絞り径(例えばF4.0)を演算する。レンズ制御部203は、絞り径演算部231により演算された第3絞り径(例えばF4.0)に対応する絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御するので、結果としてカメラボディ100は当該周期における焦点検出演算を行うための適切な絞り径を得ることができる。
【0036】
本実施形態の絞り径演算部231は、所定周期(撮像周期P)において絞り211が駆動された場合、当該周期の絞り径を、駆動前の絞り径と駆動後の絞り径とを平均することにより演算する。例えば駆動前の絞り径がF5.6、駆動後の絞り径がF2.8であれば、絞り径演算部231はこれらの絞り径を平均したF4.0を演算する。
【0037】
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)絞り211の絞り径が第1絞り径から第2絞り径まで変化するときに、絞り径演算部231が第1絞り径から第2絞り径までの範囲に含まれるいずれかの絞り径である第3絞り径を演算する。レンズ制御部203は、絞り径演算部231により演算された第3絞り径に対応する絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。このようにしたので、絞りの駆動中であっても精度よく焦点検出演算を行うことができる。
【0038】
(2)レンズ制御部203は、レンズ側送受信部217が所定周期毎にカメラボディ100から送信される要求信号を受信し、当該要求信号に応じて絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。このようにしたので、例えば自動焦点調節機能を用いない場合など、カメラボディ100が絞り径を知る必要がない場合の通信量を削減することができる。
【0039】
(3)レンズ制御部203は、レンズ側送受信部217がカメラボディ100の撮像周期に同期して要求信号を受信するようにレンズ側送受信部217を制御する。このようにしたので、スルー画の出力などの処理と協調して、一定のペースで各種処理が実行され、ボディ制御部103およびレンズ制御部203の処理量が見積もりやすくなる。
【0040】
(4)絞り駆動部212は、要求信号に同期しない駆動信号を受信し、当該駆動信号に応じて絞り211を駆動する。このようにしたので、絞り211の駆動を撮像周期Pと無関係に随時実行することが可能となり、絞り駆動のレスポンスが向上する。
【0041】
(第2の実施の形態)
本発明を適用した第2の実施の形態のカメラシステムは、第1の実施の形態のカメラシステムと同様の構成を有するが、レンズ側送受信部217により送信される絞り信号が、第1の実施の形態とは異なる。以下、この第2の実施の形態においてレンズ側送受信部217により送信される絞り信号を説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同様の各部については、第1の実施の形態と同一の符号を付し説明を省略する。
【0042】
レンズ側送受信部217により要求信号が受信されると、レンズ制御部203は当該要求信号に応じて絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。この絞り信号は、第1の実施の形態と同様に、絞り径演算部231により演算される絞り径に対応している。本実施形態の絞り径演算部231は、撮像周期Pの全域において絞り211の絞り径が変化しない場合には、第1の実施の形態と同様に、撮像周期Pの開始時の絞り径を当該周期の絞り径として演算する。他方、絞り駆動部212により絞り211が駆動された場合、絞り径演算部231は駆動前の絞り径および駆動後の絞り径より大きい絞り径を当該周期の絞り径として演算する。例えば、絞り211の絞り径がF5.6に相当する絞り径からF2.8に相当する絞り径まで変化したとき、絞り径演算部231はこれら2つの絞り径より大きい絞り径(例えばF2.4)を演算し、レンズ側送受信部217はこの絞り径に対応する絞り信号を送信する。
【0043】
絞り径演算部231を上述のように構成することで、ボディ制御部103の焦点検出処理により得られるデフォーカス量は、第1の実施の形態に比べて小さくなる。しかしながら、算出されるデフォーカス量の正負は変化しない。従って、第1の実施の形態と比べて合焦に要する時間が長くなる可能性があるが、合焦自体は正しく行うことが可能である。
【0044】
上述した第2の実施の形態によるカメラシステムによれば、第1の実施の形態によるカメラシステムと同様の作用効果が得られる。
【0045】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0046】
(変形例1)
第1の実施の形態では、絞り211が駆動されていた場合、絞り径演算部231は駆動前の絞り径と駆動後の絞り径とを平均することにより絞り径を演算していた。本発明における絞り径の演算方法はこれに限定されない。
【0047】
図4は、絞り径の演算方法を示す図である。図4(a)に示しているのは、第1の実施の形態における絞り径演算部231の演算方法である。すなわち、図4(a)において絞り径演算部231は、撮像周期Pの開始時刻T1における絞り径(F5.6)と、撮像周期Pの終了時刻T2における絞り径(F2.8)との平均することにより、撮像周期Pの絞り径(F4)を演算している。
【0048】
本発明は図4(a)に示した絞り径の演算方法に限定されず、図4(b)に示す演算方法や図4(c)に示す演算方法を用いることも可能である。図4(b)に示す演算方法は、要求信号により絞り信号を要求された撮像周期Pの、ちょうど中間の時刻T3における絞り211の絞り径(F2.8)を、撮像周期Pの絞り径として演算する、というものである。すなわち図4(b)では、絞り径演算部231が、要求信号に基づく所定時刻(中間の時刻)における絞り211の絞り径を第3絞り径として演算している。
【0049】
図4(c)に示す演算方法では、まず撮像周期Pの開始時刻T1から絞り211の駆動が開始される時刻T4までの期間Paと、時刻T4から絞り211の駆動が完了する時刻T5までの期間Pbと、時刻T5から撮像周期Pの終了時刻T2までの期間Pcとを演算する。その後、駆動前の絞り径(F5.6)、駆動後の絞り径(F2.8)、平均の絞り径(F4)、のそれぞれに、期間Pa、期間Pc、期間Pbの長さに応じた重みを乗じた加重平均を演算することにより、撮像周期Pの絞り径を演算する。このようにすることで、より精度の高い焦点検出演算を行うことが可能になる。
【0050】
また、絞り径演算部231による絞り径の演算方法は、図4(a)〜(c)に示した演算方法ではなく、他の演算方法であってもよいことは勿論である。図4(b)に示すように、演算された絞り径は、駆動前の絞り径や駆動後の絞り径と等しくなってもよい。
【0051】
(変形例2)
第1の実施の形態において、レンズ制御部203が、絞り径演算部231により演算された第3絞り径そのものではなく、第1絞り径から第2絞り径までの範囲に含まれ且つ第3絞り径以上の大きさの絞り径に対応する絞り信号を送信するようにレンズ側送受信部217を制御してもよい。換言すれば、演算された第3絞り径よりも大きく、第1絞り径や第2絞り径を上回らない大きさの絞り径に対応する絞り信号を送信するようにしてもよい。このようにすると、ボディ制御部103の焦点検出処理により得られるデフォーカス量は、第3絞り径に対応する絞り信号を送信した場合に比べて小さめになるものの、デフォーカス量の正負は変化しない。従って、第3絞り径に対応する絞り信号を送信した場合に比べて合焦に要する時間が長くなる可能性があるが、合焦自体は正しく行うことが可能である。
【0052】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…カメラシステム、100…カメラボディ、101、201…レンズマウント、103…ボディ制御部、104…撮像素子、117…ボディ側送受信部、131…焦点検出部、200…レンズ鏡筒、203…レンズ制御部、210…結像光学系、210d…フォーカシングレンズ、211…絞り、212…絞り駆動部、215…ROM、216…RAM、217…レンズ側送受信部、231…絞り径演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディが取り付け可能な取付部と、
結像光学系を透過する光量を調節する絞りと、
前記絞りを駆動し前記絞りの絞り径を変化させる絞り駆動部と、
前記カメラボディとの信号の送受信が可能な送受信部と、
前記絞りの絞り径が第1絞り径から第2絞り径まで変化するときに、前記第1絞り径および前記第2絞り径より大きい第3絞り径に対応する絞り信号を送信するように前記送受信部を制御する制御部とを備えることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒において、
前記制御部は、前記送受信部が所定周期毎に前記カメラボディから送信される要求信号を受信し、当該要求信号に応じて前記絞り信号を送信するように前記送受信部を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項2に記載のレンズ鏡筒において、
前記制御部は、前記送受信部が前記カメラボディの撮像周期に同期して前記要求信号を受信するように前記送受信部を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレンズ鏡筒において、
前記絞り駆動部は、前記要求信号に同期しない駆動信号を受信し、当該駆動信号に応じて前記絞りを駆動することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
カメラボディが取り付け可能な取付部と、
結像光学系を透過する光量を調節する絞りと、
前記絞りを駆動し前記絞りの絞り径を変化させる絞り駆動部と、
前記カメラボディとの信号の送受信が可能な送受信部と、
所定期間毎に、前記送受信部が当該所定期間における前記絞りの絞り径に対応する絞り信号を前記カメラボディに送信するように前記送受信部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記所定期間の内の一部期間において前記絞りの絞り径が第1絞り径から第2絞り径まで変化した場合には、前記送受信部が前記第1絞り径および前記第2絞り径より大きい第3絞り径に対応する前記絞り信号を送信するように前記送受信部を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒に取り付けられるカメラボディであって、
焦点検出用画素と撮像用画素とを有する撮像素子と、
前記レンズ鏡筒との信号の送受信が可能なボディ側送受信部と、
前記焦点検出用画素の出力と、前記レンズ鏡筒から送信され前記ボディ側送受信部が受信した前記絞り信号と、に基づいて焦点検出演算を行う焦点検出部とを備えることを特徴とするカメラボディ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒と、請求項6に記載のカメラボディとを有することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−41001(P2013−41001A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176275(P2011−176275)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】