説明

レンズ鏡筒及びそれを有する光学機器

【課題】 フィルタ枠を光軸に対して直交する方向に精度良く、装置全体の簡素化を図りつつ切替えすることができるフィルタ切替え機構を有したレンズ鏡筒を得ること。
【解決手段】 アクチュエータからの駆動力でレンズ群の光軸に対し垂直な方向に移動可能に配置されたフィルタ枠と一体に配置された光学部材と、フィルタ枠とアクチュエータを挟み込む第一の枠と第二の枠を備え、フィルタ枠は第一の枠側に突出した少なくとも二つの突起部と、開口径がフィルタ枠の移動方向と直交方向に長い長穴部を備え、二つの突起部は光学部材の移動領域上にあり、第一の枠は二つの突起部に嵌合する第一のレール部と第二のレール部を備え、第二の枠は第三のレール部を備え、第二のレール部と、第三のレール部はフィルタ枠に当接し、アクチュエータのレバー部が長穴部に嵌合しながら移動しフィルタ枠が移動すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及びそれを有する光学機器に関し、特にフィルタ枠の切替機構を有したビデオカメラ、監視用ビデオカメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、監視用ビデオレンズ等の光学機器においては、夜間撮影時にモータ等の駆動手段を用い赤外線遮断用のフィルタを光路中より退避させるフィルタ切替え機構が搭載されている。また各種の光学機器においては、フィルタ切替え機構を用いて、撮像素子に入射する光量調節のためNDフィルタや光学フィルタ等を光路中に挿脱させている。
【0003】
フィルタ切替え機構として、例えば、レバーのついたアクチュエータによって絞り羽根を上下方向にスライドさせる機構を用い、フィルタ枠をスライドさせるフィルタ切替え機構を有したレンズ鏡筒が知られている(特許文献1)。また形状記憶合金を用い、形状記憶合金に通電することによって、フィルタ保持部材の光路中からの切替えを行ったフィルタ駆動装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−205557号公報
【特許文献2】特開2001−141973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている光量調整装置の機構をフィルタを光路中より挿脱させるフィルタ切替え機構に用いるとフィルタ枠のストローク量が大きくなるにつれてレール部が長くなるので、フィルタ枠が大型化する。それによってフィルタ枠の周辺部品との干渉が起こり、フィルタ切替えに必要な最低な移動量を確保するのが難しくなってくる。特許文献2に開示されているフィルタ駆動装置は、装置全体の小型化が容易になるが、部品点数が増大し、フィルタ切替え機構が複雑になる傾向があった。
【0006】
本発明は、フィルタ枠を光軸に対して直交する方向に精度良く、また装置全体の簡素化を図りつつ、切替えすることができるフィルタ切替え機構を有したレンズ鏡筒及びそれを有する光学機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ鏡筒は、レンズ群と、アクチュエータと、アクチュエータからの駆動力で前記レンズ群の光軸に対し垂直な方向に移動可能に配置されたフィルタ枠と、前記フィルタ枠と一体に配置された光学部材と、前記フィルタ枠と前記アクチュエータを挟み込む第一の枠と第二の枠を備え、前記フィルタ枠は前記第一の枠側に突出した少なくとも二つの突起部と、開口径が前記フィルタ枠の移動方向と直交方向に長い長穴部を備え、前記二つの突起部は前記光学部材の移動領域上にあり、前記第一の枠は前記二つの突起部に嵌合する移動方向と平行な凹状の第一のレール部と、前記第一のレール部を挟み込むように光路外に配置した少なくとも二本の第二のレール部を備え、前記第二の枠は前記フィルタ枠の移動方向と平行な少なくとも二本の第三のレール部を備え、前記第二のレール部と、第三のレール部は前記フィルタ枠に当接し、前記アクチュエータのレバー部が前記長穴部に嵌合しながら移動することにより、前記フィルタ枠が移動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタ枠を光軸に対して直交する方向に精度良く、また装置全体の簡素化を図りつつ、切替えすることができるフィルタ切替え機構を有したレンズ鏡筒が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1におけるフィルタ切替え機構を示す撮像素子側を視点とした説明図(CCDホルダ未装着)である。
【図2】本発明のレンズ鏡筒の実施例1の構成を示す側面断面図である。
【図3】本発明のレンズ鏡筒の実施例1の組立斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係るフィルタ切替え機構を示す組立斜視図である。
【図5】本発明の実施例1に係るフィルタ切替え機構を示す側面断面図である。
【図6】図1においてフィルタ枠を上方向にスライドさせた時の説明図(CCDホルダ未装着)である。
【図7】本発明の実施例1に係るリアスリーブ上のレールの関係を示す、撮像素子側を視点とした説明図である。
【図8】本発明の実施例1に係るホルダ上のレールの関係を示す、被写体側を視点とした説明図である。
【図9】本発明の実施例1に係る図3の固定枠側からみたフィルタ枠の正面図である。
【図10】従来のフィルタ切替え機構を示す撮像素子側を視点とした説明図(CCDホルダ未装着)である。
【図11】本発明のレンズ鏡筒を備えた監視カメラ(光学機器)のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明のレンズ鏡筒は、撮影光学系を構成するレンズ群と、アクチュエータ5と、アクチュエータ5からの駆動力でレンズ群の光軸に対し垂直な方向に移動可能に配置されたフィルタ枠4とを有する。そしてフィルタ枠4と一体に配置された光学部材(赤外カットフィルター2、ダミーガラス3)を有する。そしてフィルタ枠4とアクチュエータ5を挟み込む第一の枠(固定枠6)と第二の枠(CCDホルダー7)を備えている。
【0011】
フィルタ枠4は第一の枠側(固定枠6)に突出した少なくとも二つの突起部41a、41bと、開口径がフィルタ枠4の移動方向と直交方向に長い長穴部44を備えている。長穴部44の一部と二つの突起部41a、41bは、赤外線カットフィルタ2の移動領域上にある。
【0012】
第一の枠(固定枠6)は二つの突起部41a、41bに嵌合する移動方向と平行な凹状の第一のレール部61a、61bと、第一のレール部61a、61bを挟み込むように光路外に配置した少なくとも二本の凸状の第二のレール部62a、62bを備えている。第二の枠(CCDホルダー7)はフィルタ枠4の移動方向と平行な少なくとも二本の凸状の第三のレール部71a、71bを備えている。第二のレール部62a、62bと、第三のレール部71a、71bはフィルタ枠4にフィルタ枠4が移動できる程度に当接している。アクチュエータ5のレバー部51が長穴部44に嵌合しながら移動することにより、フィルタ枠4が移動する。
【0013】
[実施例1]
図1は、本発明のレンズ鏡筒の実施例1におけるフィルタ切替え機構を示す撮像素子側を視点とした説明図(CCDホルダ未装着)である。図2は本発明のレンズ鏡筒の実施例1のレンズ構成を示す側面断面図である。図3は本発明のレンズ鏡筒の実施例1のレンズ鏡筒での組立斜視図である。レンズ鏡筒1は、L1〜L4の第1群レンズ〜第4群レンズからなる4群ズームレンズを有している。
【0014】
L1は固定の第1群レンズである。L2は光軸方向に移動して変倍動作を行う第2群レンズ、L3は固定の第3群レンズである。L4は光軸方向に移動して変倍に伴う像面変動の補正と合焦動作を行う第4群レンズである。11は第1群レンズL1を保持する固定枠で、1群固定ビス11aによって、固定枠12と係合している。15は第3群レンズL3を保持する固定枠で、絞り固定ビス14aによって第2群レンズL2側に絞りユニット14が固定されている。また固定枠15は固定枠12およびフィルタ切替えユニット9に挟み込まれる形で係合している。
【0015】
21、23はガイドバーで、固定枠12、フィルタ切替えユニット(フィルタ切替え機構)9に挟まれる形で固定されている。22はガイドバーで、固定枠12、固定枠15に挟まれる形で固定されている。24はガイドバーで、固定枠15、フィルタ切替えユニット9に挟まれる形で固定されている。13は2群レンズL2を保持する2群可動枠で、ガイドバー21によって、光軸方向に移動可能に支持される。またガイドバー22にて、2群可動枠13上のU溝13aが係合して、ガイドバー22周りの回転が規制される。
【0016】
16は4群レンズL4を保持する4群可動枠で、ガイドバー23によって、光軸方向に移動可能に支持される。ガイドバー24にて、4群可動枠16上のU溝16aが係合して、上記ガイドバー24周りの回転が規制される。17はズーム用のステッピングモーターで、固定ビス17aによって、固定枠12に固定されている。ネジ部17bが2群可動枠13に固定されたラック13aに係合しており、ネジ部17bの回転により、上記2群可動枠13は光軸方向に移動する。18はフォーカス用のステッピングモーターで、固定ビス18aによって、フィルタ切替えユニット9に固定されている。ネジ部18bが4群可動枠16に固定されたラック16bに係合しており、ネジ部18bの回転により、上記4群可動枠16は光軸方向に移動する。
【0017】
19はフォトインタラプタと板金で構成されたフォトインタラプタユニット(PIユニット)で、フィルタ切替えユニット9に固定ビス19aによって固定されている。PIユニット19は2群可動群13上に配置されており、フォトインタラプタからの出力とモータの回転数によって2群可動群13の光軸方向の位置を制御する。20はフォトインタラプタと板金で構成されたフォトインタラプタユニット(PIユニット)で、フィルタ切替えユニット9に固定ビス20aによって固定されている。PIユニット20は4群可動群16上に配置されており、フォトインタラプタからの出力とモータの回転数によって4群可動群16の光軸方向の位置を制御する。
【0018】
図4は図3に示すフィルタ切替え機構9を示す組立斜視図である。図5は図3に示すフィルタ切替え機構9を示す側面断面の拡大図である。図6は図1においてフィルタ枠4を上方向にスライドさせた時の説明図(CCDホルダ未装着)である。図7は図1において固定枠(リアスリーブ)6上のレールの関係を示す、撮像素子側を視点とした説明図である。図8は図1においてCCDホルダ上のレールの関係を示す、被写体側を視点とした説明図である。図9は本発明に係るフィルタ切替え機構9のうちの固定枠側からみたフィルタ枠の正面図である。
【0019】
図4〜図9においてフィルタ切替えユニット9は、赤外線カットフィルタ(光学部材)2、ダミーガラス3、フィルタ枠4、フィルタ切替え用アクチュエータ5、固定枠6、CCDホルダ7、PIユニット8等を有している。赤外線カットフィルタ2、ダミーガラス3、フィルタ枠4、フィルタ切替え用アクチュエータ5は固定枠(第一の枠)6、CCDホルダ(第二の枠)7に挟まれており、固定枠6とCCDホルダ7は固定ビス7aによって、係合している。また、アクチュエータ5と固定枠6はビス5aによって固定されている。
【0020】
フィルタ枠4は赤外線カットフィルタ2、ダミーガラス3等の光学部材を固定するユニットよりなり、アクチュエータ5によって光軸に対して垂直な方向に移動可能に支持されている。また、フィルタ枠4は固定枠6の方向に二つの突起部41a、41bと、開口径が移動方向と直交方向に長い長穴部44を備えている。
【0021】
二つの突起部41a、41bは赤外線カットフィルタ2の移動領域上にある。例えば一直線上にある。ここでは、突起部41aは図1のダミーガラス3に対し上側、突起部41bは図1の赤外線カットフィルタ2に対し下側にある。 固定枠(リアスリーブ)6は二つの突起部41a、41bに当接(嵌合)する移動方向と平行な凹状のレール部(第一のレール部)61a、61bを有する。更にレール部61a、61bを平行で挟み込むように光路外に配置された二つの凸状のレール部(第二のレール部)62a、62bを備えている。
【0022】
CCDホルダ7は図8に示すようにレール部62a、62bに対向する凸状のレール部(第三のレール部)71a、71bを被写体方向に備えている。レール部62a、62bとレール部71a、71bは各々フィルタ枠4に当接している。レール部61a、61bとレール部71a、71bはフィルタ枠4のレール近接部(固定枠6側)42a、42bとレール近接部(CCDホルダ7側)43a、43bに近接している。
【0023】
長穴部44は凹状のレール部61a、61bと、凸状のレール部62a、62bの間に配置され、アクチュエータ5のレバー部51が当接(嵌合)している。レバー部51の移動に伴って、フィルタ枠4が移動する。長穴部44は赤外線カットフィルタ2の移動領域上にある。
【0024】
8はフォトインタラプタと板金で構成されたPIユニットで、CCDホルダ7に固定ビス8aによって固定されている。PIユニット8はフォトインタラプタからの出力によってフィルタ枠4の光軸と直交方向の位置を判別する。63a、63bは固定枠6上の突起であり、固定枠6と同一部材よりなる。突起63a、63bはCCDホルダ7と固定枠6の間にフィルタ枠4を収納する空間を確保しつつ、ガイドバー23、24の差し込み深さを確保するため突起形状となっている。
【0025】
図10は従来構成でのフィルタ切替え機構を示す撮像素子側を視点とした説明図(CCDホルダ未装着)である。図10のフィルタ切替え機構ではフィルタ枠10にレール部10a、10b、10cがあり、固定枠91にレール部10a、10b、10cと当接する突起部91a、91b、91cが有る構成となっている。フィルタ枠10にレール部を作るためフィルタ枠10が大型化する。フィルタ枠10の移動ストロークが長いとその分レール部10a、10b、10cが長くなる。このため、固定枠91にガイドバーなどによる突起部があると干渉してしまう場合がある。
【0026】
突起63a、63bのようなガイドバー23,24による固定枠6の突起部、アクチュエータ5、ステッピングモーター17、18がフィルタ枠4の摺動面と同一面に有る場合、図10の構成ではストロークの長さ分必要であった。
【0027】
これに対して本実施例のレンズ鏡筒では前述した構成をとることにより、フィルタ枠のレール部10a、10b、10cがなくなり、フィルタ枠4を小型化することができる。そのため干渉せずに搭載可能となる。さらにフィルタ枠4に設けた長穴部44を二つの突起部41a、41b(固定枠6のレール部61a、61b)と近接させ、二つの突起部41a、41b(レール部61a、61b)が移動方向に平行な一直線状にあるように配置する。このようにすることによって、フィルタ枠4の摺動性も良くなる。
【0028】
図11は上述した実施例1のレンズ鏡筒1を持つ監視カメラ(光学機器)のブロック図である。図11において撮影時に被写体からの光がレンズ鏡筒1内のレンズ群を通って、撮像素子25に入射する。入射した光は処理信号26に光電変化し、デジタル信号としてAFゲート27を通り、AF信号処理28などを行ったあとCPU30に入力される。ズーム指令29がCPU30に入力されるとCPU30に入力された信号を元にステッピングモーター17、18によって、レンズ群が光軸方向に移動し、ズーミングが行われる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
L1……1群レンズ、L2……2群レンズ、L3……3群レンズ、L4……4群レンズ、
1……レンズ鏡筒、2、赤外線カットフィルタ(光学部材)、3……ダミーガラス、
4……フィルタ枠、5……アクチュエータ、6……固定枠、7……CCDホルダ、
9……IR切替えユニット、41a、41b……突起部、
42a、42b……レール近接部(固定枠6側)、
43a、43b……レール近接部(固定枠7側)、44……長穴部、51……レバー部、
61a、61b……レール部(凹)、62a、62b……レール部(凸)、
71a、71b……レール部(CCD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ群と、アクチュエータと、アクチュエータからの駆動力で前記レンズ群の光軸に対し垂直な方向に移動可能に配置されたフィルタ枠と、前記フィルタ枠と一体に配置された光学部材と、前記フィルタ枠と前記アクチュエータを挟み込む第一の枠と第二の枠を備え、前記フィルタ枠は前記第一の枠側に突出した少なくとも二つの突起部と、開口径が前記フィルタ枠の移動方向と直交方向に長い長穴部を備え、前記二つの突起部は前記光学部材の移動領域上にあり、前記第一の枠は前記二つの突起部に嵌合する移動方向と平行な凹状の第一のレール部と、前記第一のレール部を挟み込むように光路外に配置した少なくとも二本の第二のレール部を備え、前記第二の枠は前記フィルタ枠の移動方向と平行な少なくとも二本の第三のレール部を備え、前記第二のレール部と、第三のレール部は前記フィルタ枠に当接し、前記アクチュエータのレバー部が前記長穴部に嵌合しながら移動することにより、前記フィルタ枠が移動することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記長穴部の一部は、前記光学部材の移動領域上にあることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記フィルタ枠の突起部は移動方向と平行な一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項のレンズ鏡筒を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−173523(P2012−173523A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35744(P2011−35744)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】