説明

レンズ鏡筒

【課題】レンズ鏡筒において、絞り操作リングの回転を確実に菊座の揺動に反映させる。
【解決手段】絞り制御部材36は、光軸L方向に長い3本の細板状のブラケットと、これらの両端にビス固定された一対のガイドリング43,44とからなる。ブラケット40の長手方向の中間部には長孔40bが形成されている。長孔40bにビス37が挿通され、その先端部が突起部35の端部のビス孔に螺合されている。絞り制御部材36は、ガイドリング43,44の各外周面が、固定筒13,カム筒22の各内周面にそれぞれ摺動するため、振れることなく光軸Lを中心に回転する。可変絞り操作リング16を回転させると、この回転力は、ブラケット40の端部40aを介して確実に絞り制御部材36に伝達されるから、長孔40b及びビス37を介して菊座32dが回転し、絞り羽根が揺動して可変絞り操作リング16の回動量に応じた大きさの絞り口径34に変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にプロジェクタに用いるレンズ鏡筒であって、固定筒と回転筒(カム筒)とを備えたレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタに備えられ画像光をスクリーンに拡大投映する投映用のレンズ鏡筒が知られている。レンズ鏡筒は、直進溝が形成された固定筒と、カム溝が形成され、回転することにより内部のズーム系のレンズ群が固定筒の直進溝に沿って光軸方向に移動してズーミングを行なう回転筒と、レンズ同士の間や固定筒の最後部に設けられ、スクリーンに投影される画像の明るさを調整する可変絞り装置とを備えている。
【0003】
可変絞り装置は、周知のように、穴座と菊座との間に複数枚の絞り羽根が重ね合わされて保持され、各絞り羽根は穴座に揺動自在に位置決めされると共に菊座にガイド孔を介してガイドされ、菊座を揺動させることにより絞り羽根を前記ガイド孔に従って揺動させて絞り口径を拡縮する(特許文献1)。
【0004】
可変絞り装置の絞り口径を変更するには、レンズ鏡筒の外周に設けられた絞り操作リングを手動またはモータ駆動にて回転させることにより操作伝達レバーを介して菊座を揺動させる操作リング型と、レンズ鏡筒内に小型のモータを組み込み、このモータを駆動することにより菊座を揺動させるモータ内蔵型(特許文献2)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−265972号公報
【特許文献2】特開2001−290190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記モータ内蔵型の場合、上記操作リング型に比較して、レンズ鏡筒の小型化が困難で、かつコスト高になるという問題点があるので、上記操作リング型が好ましい。しかしながら、操作リング型の場合、絞り操作リングと菊座との間を仲介する操作伝達レバーは、回転筒を回避して配置する必要があるため、光軸方向に長い形状となる。操作伝達レバーは、固定筒の周方向にガタ無く回動されるようにガイド部材によってガイドされてはいるものの、ガイド部材との間に部品公差や組立誤差の累積誤差があると、操作伝達レバーが光軸方向に長いため、絞り操作リングの回転によって操作伝達レバーが菊座側を中心に振れやすく、絞り操作リングの回転がそのまま菊座の揺動に反映されない場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、絞り操作リングの回転が確実に菊座の揺動に反映されるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレンズ鏡筒は、円筒状の固定筒に対して周方向に回転することにより内部のレンズをその光軸方向に移動させる円筒状の回転筒と、この回転筒の内側に設けられ、可動部を回転筒の周方向に回動させることにより絞り口径を変更する可変絞り装置とを備えたレンズ鏡筒において、前記回転筒の内側に設けられ、前記光軸方向に長い複数個の棒状部材と、この棒状部材の両端にそれぞれ固定され、前記光軸を中心に回動自在に設けられた一対のリング状部材と、前記棒状部材の1個に形成され、前記可変絞り装置の可動部が係合する前記光軸方向に延びた長孔とからなる絞り制御部材と、この絞り制御部材に一体的に設けられ、前記固定筒の周方向に移動操作することにより前記絞り制御部材を介して前記可変絞り装置の可動部を前記回転筒の周方向に回動させる操作部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のレンズ鏡筒は、円筒状の固定筒の内側に設けられ、前記固定筒に対して周方向に回転することにより内部のレンズを光軸方向に移動させる円筒状の回転筒と、この回転筒の内側に設けられ、可動部を回転筒の周方向に回動させることにより絞り口径を変更する可変絞り装置とを備えたレンズ鏡筒において、前記回転筒の内側に設けられ、前記光軸方向に長い複数個の棒状部材と、この棒状部材の両端にそれぞれ固定され、前記光軸を中心に回動自在に設けられた一対のリング状部材と、前記棒状部材の1個に形成され、前記可変絞り装置の可動部が係合する前記光軸方向に延びた長孔とからなる絞り制御部材と、前記固定筒の周方向に長く形成された固定筒孔を介して、前記絞り制御部材に一体的に設けられ、前記固定筒の外側で固定筒の周方向に移動自在に設けられた操作部材とを備え、前記操作部材の移動により前記絞り制御部材を介して前記可変絞り装置の可動部が前記回転筒の周方向に回動されることを特徴とする。
【0010】
本発明のレンズ鏡筒は、プロジェクタ用の投映レンズに用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレンズ鏡筒によれば、レンズの光軸を中心に回動されるリング状部材をレンズの光軸方向に長い複数個の棒状部材の両端に固定して絞り制御部材を構成したので、絞り制御部材が振れることなく、操作部材の回動操作を確実に可変絞り装置の可動部の回動に反映できる。また、プロジェクタ用の投映レンズに用いると、投映画像がブレることなくスムーズに投映画像のサイズを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プロジェクタの外観斜視図である。
【図2】広角端での投映レンズの端面図である。
【図3】可変絞り装置の構成を示す分解平面図である。
【図4】絞り制御部材の概略を示す外観斜視図である。
【図5】望遠端での投映レンズの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る投映レンズ(レンズ鏡筒)を採用したプロジェクタ10を示す図1において、プロジェクタ本体11の前部には、投映レンズ12が突出して設けられている。投映レンズ12の円筒状をした固定筒13の外周には、前端側から、ピント合わせを行なう際に回動操作されるフォーカス操作リング14、ズーミングを行なう際に回動操作されるズーム操作リング15、後述する可変絞り装置の絞り口径を変更する際に回動操作される可変絞り操作リング16(操作部材)が順に設けられている。フォーカス操作リング14、ズーム操作リング15、可変絞り操作リング16の外周面には、指で回転操作を行ないやすくするためのローレット目が形成されている。
【0014】
プロジェクタ本体11には、白色光を発する光源、3原色(赤、緑、青)に対応した透過型液晶素子、及びクロスダイクロイックプリズムなどが内蔵されている。光源からの白色光は3原色光に分離されてから各色に対応した透過型液晶素子にそれぞれ入射されて各色の画像光となり、これらの各色の画像光はクロスダイクロイックプリズムで合成されてから投映レンズ12に入射される。投映レンズ12は入射した合成画像光をスクリーンに拡大投映する。
【0015】
図2に示すように、投映レンズ12は前玉フォーカス調整式であり、固定筒13の前端部には、フォーカスレンズ18が組み込まれたフォーカス筒19が組み込まれ、固定筒13の後端部には、固定枠20を介して後端レンズ21が取り付けられている。フォーカスレンズ18と後端レンズ21との間の固定筒13の内側には、固定筒13の内周面に沿って回動される円筒状のカム筒(回転筒)22が設けられ、この内部にズーミング用のレンズ24〜27がレンズ枠28〜31にそれぞれ保持されて組み込まれている。
【0016】
フォーカス操作リング14が回転操作されると、固定筒13にヘリコイド結合しているフォーカス筒19が回転してフォーカスレンズ18が光軸Lの方向に移動し、フォーカシングが行われる。また、ズーム操作リング15が回転操作されると、これに連動してカム筒22が回転され、カム筒22に形成されたカム孔を介してレンズ24〜27がそれぞれ光軸L方向に移動してズーミングが行われる。
【0017】
レンズ26を保持しているレンズ枠30には、投光量を加減してスクリーンに投影される画像の明るさを調整する可変絞り装置32が一体に取り付けられている。この可変絞り装置32は、図3に示すように、鏡枠32aと穴座32bとの間に複数枚の絞り羽根32cと菊座32d(可動部)が重ね合わされて保持され、各絞り羽根32cは穴座32bに揺動自在に位置決めされると共に菊座32dにガイド孔33を介してガイドされ、菊座32dを揺動(光軸周りに回動)させることにより絞り羽根32cをガイド孔33に従って揺動させて絞り口径34を拡縮する。
【0018】
菊座32dの外周の一部には、突起部35が一体に形成されている。この突起部35の直角に屈曲された端部35aには、カム筒22の内側に設けられた絞り制御部材36の一部がビス37(遊挿部材)によって移動自在に連結されている。
【0019】
絞り制御部材36は、図4に示すように、ほぼ等間隔に設けられた光軸L方向に長い3本の細板状のブラケット40〜42(棒状部材)と、これらの両端にビス固定された一対のガイドリング43,44(リング状部材)とから構成される。ブラケット40〜42は、カム筒22のカム孔(図示せず)を避ける位置に設けられている。なお、ブラケット41を図2,図5に破線で図示しているが、この図示した位置は実際の位置ではなく、便宜的に示したものである。
【0020】
ブラケット40は、他のブラケット41,42と形状が一部異なり、一方の端部40aが延長されてほぼ直角に屈曲され、ガイドリング43の外郭からガイドリング43の径方向に突出している。端部40aは、カム筒22の端部の脇を通り、固定筒13の長孔13a(固定筒孔)を挿通して、その先端部が可変絞り操作リング16にビス固定される(図2参照)。
【0021】
ガイドリング43は、フォーカス筒19側から保持リング45によって固定筒13に回転自在に保持される。ガイドリング44は、その外周面がカム筒22の内周面に摺接される。これにより、可変絞り操作リング16を固定筒13の周方向に回転させると、絞り制御部材36が光軸Lを中心に回転する。
【0022】
ブラケット40の長手方向の中間部には、ブラケット40の長手方向に延びた長孔40bが形成されている。この長孔40bにビス37が遊挿され、ビス37の先端部が突起部35の端部35aのビス孔に螺合されている。これにより、絞り制御部材36がビス37及び長孔40bを介して菊座32dの突起部35に連結される。
【0023】
ズーム操作リング15の回転操作により、カム筒22が回転し、図2に示す広角端と、図5に示す望遠端との間で、レンズ24〜27が光軸方向に移動される。レンズ26の移動に伴って、レンズ26のレンズ枠30に一体に取り付けられた可変絞り装置32も光軸方向に移動するが、長孔40bの光軸方向の長さは、レンズ26の移動範囲に対応した長さになっているから、全てのズーム範囲で絞り口径34が変更可能である。
【0024】
このように構成された投映レンズ12の絞り制御部材36は、ガイドリング43,44の各外周面が、固定筒13,カム筒22の各内周面にそれぞれ摺動するため、振れることなく光軸Lを中心に回転する。これにより、可変絞り操作リング16を回転させると、この回転力は、ブラケット40の端部40aを介して確実に絞り制御部材36に伝達されるから、長孔40b及びビス37を介して菊座32dが回転し、絞り羽根32cが揺動して可変絞り操作リング16の回動量に応じた大きさの絞り口径34に変更される。
【0025】
以上説明した実施形態では、絞り制御部材のブラケットを3本としたが、本発明はこれに限定されることなく、カム筒のカム孔を避ける位置であれば、例えば2本でも4本や5本としてもよい。
【0026】
上記実施形態では、ビス37によって突起部35の端部35aをブラケット40の長孔40bに移動自在に連結させるようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、ビス37を使用せずに、端部35aをブラケット40側に延長させたり変形させ、端部35aが長孔40bに遊挿されるようにしてもよい。
【0027】
上記実施形態では、可変絞り操作リングを手動で回転操作する構成であったが、可変絞り操作リングの外周にギアを形成し、これに噛合するギアを介してモータにて可変絞り操作リングを回転駆動するようにしてもよい。
【0028】
上記実施形態では、固定筒をカム筒(回転筒)の外側に設けたが、本発明はこれに限定されることなく、固定筒をカム筒の内側に設けるようにしてもよい。
【0029】
上記実施形態では、レンズ鏡筒としてプロジェクタ用の投映レンズを用いて説明したが、カメラなど他の装置に用いられるレンズ鏡筒に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 プロジェクタ
12 投映レンズ
13 固定筒
16 可変絞り操作リング
22 カム筒
32 可変絞り装置
32c 絞り羽根
32d 菊座
36 絞り制御部材
37 ビス
40〜42 ブラケット
40a 長孔
43,44 ガイドリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の固定筒に対して周方向に回転することにより内部のレンズをその光軸方向に移動させる円筒状の回転筒と、この回転筒の内側に設けられ、可動部を回転筒の周方向に回動させることにより絞り口径を変更する可変絞り装置とを備えたレンズ鏡筒において、
前記回転筒の内側に設けられ、前記光軸方向に長い複数個の棒状部材と、この棒状部材の両端にそれぞれ固定され、前記光軸を中心に回動自在に設けられた一対のリング状部材と、前記棒状部材の1個に形成され、前記可変絞り装置の可動部が係合する前記光軸方向に延びた長孔とからなる絞り制御部材と、
この絞り制御部材に一体的に設けられ、前記固定筒の周方向に移動操作することにより前記絞り制御部材を介して前記可変絞り装置の可動部を前記回転筒の周方向に回動させる操作部材と
を備えたことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
円筒状の固定筒の内側に設けられ、前記固定筒に対して周方向に回転することにより内部のレンズを光軸方向に移動させる円筒状の回転筒と、この回転筒の内側に設けられ、可動部を回転筒の周方向に回動させることにより絞り口径を変更する可変絞り装置とを備えたレンズ鏡筒において、
前記回転筒の内側に設けられ、前記光軸方向に長い複数個の棒状部材と、この棒状部材の両端にそれぞれ固定され、前記光軸を中心に回動自在に設けられた一対のリング状部材と、前記棒状部材の1個に形成され、前記可変絞り装置の可動部が係合する前記光軸方向に延びた長孔とからなる絞り制御部材と、
前記固定筒の周方向に長く形成された固定筒孔を介して、前記絞り制御部材に一体的に設けられ、前記固定筒の外側で固定筒の周方向に移動自在に設けられた操作部材と
を備え、前記操作部材の移動により前記絞り制御部材を介して前記可変絞り装置の可動部が前記回転筒の周方向に回動されることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
プロジェクタ用の投映レンズに用いられることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53271(P2012−53271A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195754(P2010−195754)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】