説明

レンズ鏡胴及び撮像装置

【課題】小型のレンズ鏡胴を得、該レンズ鏡胴を備えることで小型の撮像装置を得ること。
【解決手段】被写体光を導く複数のレンズ群とで構成された撮像光学系と、レンズ群の各々を保持する複数の鏡枠と、駆動部及び該駆動部に対し相対的に直進及び回転を行う軸部とを有するアクチュエータと、を有し、軸部のスラスト方向を固定し、軸部に対する駆動部の直進移動により、駆動部に係合する鏡枠を撮像光学系の光軸方向に移動させるレンズ鏡胴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡胴及び該レンズ鏡胴を備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、市販されているカメラ等の撮像装置においては、撮像光学系としてズームレンズを搭載したものが主流である。
【0003】
ズームレンズは、光学系を構成する複数のレンズ群を光軸に沿って所望の位置に移動させて、その間隔を変化させることにより、焦点距離の変更(ズーミング)を行い、所定のレンズ群を移動させて更にフォーカシングを行うようになっているものが一般的である。
【0004】
レンズ群を光軸に沿って移動させる方式としては、光軸に略平行に軸を配置し、この軸を直進案内のガイドとし、レンズ枠にガイド軸が貫通するスリーブを形成し、モータとリードスクリューを用いて直接的にレンズ枠をガイド軸に沿って摺動させ直進移動させるものがある。この場合、レンズ群を移動させるための駆動源としては、ステッピングモータが一般的に用いられている。
【0005】
一方、ロータの接線方向の駆動力を発生する第1圧電素子と、回転軸方向の駆動力を発生する第2圧電素子と、第1圧電素子の駆動力をロータに伝える第1伝達手段と第2圧電素子の駆動力をロータに伝える第2伝達手段とを備え、第1伝達手段および第2伝達手段が摩擦結合部材あるいは電磁結合部材のいずれかである、回転、直動の2方向併進駆動アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、複数の圧電素子を互いに所定角度で交差するよう配置され高周波信号に基づいて振動する振動体と、振動体の振動により駆動される円筒状の被駆動部材と、被駆動部材に一体的に形成された雄ネジ部材と、雄ネジ部材に螺合した雌ネジ部材と、を有し、振動体は、被駆動部材を円周方向の回転と円筒高さ方向へ移動させる駆動装置を用いたレンズ鏡胴が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−37351号公報
【特許文献2】特開2007−110805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1には何に用いるかの記載がなく、周方向の回転と軸方向へ移動させることが可能なアクチュエータをレンズ鏡胴に適用した場合、特許文献2に記載された構成以外にも、種々の応用発展の余地を有している。
【0008】
本発明は、駆動部及び該駆動部に対し相対的に直進及び回転を行う軸部とを有するアクチュエータを適切に用いることにより小型のレンズ鏡胴を得、該レンズ鏡胴を備えることで小型の撮像装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0010】
(1)被写体光を導く複数のレンズ群とで構成された撮像光学系と、前記レンズ群の各々を保持する複数の鏡枠と、駆動部及び該駆動部に対し相対的に直進及び回転を行う軸部とを有するアクチュエータと、を有し、前記軸部のスラスト方向を固定し、前記軸部に対する前記駆動部の直進移動により、前記駆動部に係合する鏡枠を前記撮像光学系の光軸方向に移動させることを特徴とするレンズ鏡胴。
【0011】
(2)前記軸部の一部に雄ネジ部を形成し、前記雄ネジ部に雌ネジ部材を螺合させ、前記軸部の回転による雌ネジ部材の光軸方向の移動に伴って、前記鏡枠を前記撮像光学系の光軸方向に移動させることを特徴とする(1)に記載のレンズ鏡胴。
【0012】
(3)前記アクチュエータの軸部を前記撮像光学系の光軸に平行に2つ配置したことを特徴とする(1)又は(2)に記載のレンズ鏡胴。
【0013】
(4)前記軸部の一部に光学部材を一体的に固着し、前記軸部の回転により、前記光学部材を回動させて前記撮像光学系の光軸に対し挿脱することを特徴とする(1)又は(2)に記載のレンズ鏡胴。
【0014】
(5)前記光学部材は、オプチカルローパスフィルタ、赤外光カットフィルタ、NDフィルタ、クローズアップレンズのうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする(4)に記載のレンズ鏡胴。
【0015】
(6)前記軸部の回転により、絞り、シャッタ、レンズバリアのうちの少なくともいずれか1つを駆動することを特徴とする(1)又は(3)に記載のレンズ鏡胴。
【0016】
(7)前記軸部の一つを回転させることで、レンズバリアと絞りを駆動することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のレンズ鏡胴。
【0017】
(8)前記軸部の一つを回転させることで、レンズバリアとシャッタを駆動することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のレンズ鏡胴。
【0018】
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のレンズ鏡胴と撮像素子を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型のレンズ鏡胴及び撮像装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施の形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラ1の模式図である。図1(a)はデジタルカメラ1の背面の外観模式図、図1(b)は図1(a)のA−A’部縦断面模式図である。
【0022】
図1(a)に示すように、デジタルカメラ1の上面には、レリーズボタン110が設けられている。また、レリーズボタン110の下部でデジタルカメラ1の内部には、AFスイッチSW1とレリーズスイッチSW2の2段スイッチが設けられており、各々レリーズボタン110の押し下げの第1段目と第2段目で動作するように成されている。同じくデジタルカメラ1の上面には、カメラの動作モードを設定するモード設定ダイアル112が設けられている。カメラの動作モードには、静止画を撮像する「静止画モード」、動画を撮像する「動画モード」、音声を記録する「音声記録モード」、画像や音声を再生する「再生モード」等がある。
【0023】
デジタルカメラ1の背面には、液晶等から成る背面モニタ131、電子ビューファインダ(EVF)121の接眼部121a、接眼部121aの近傍に配置され、撮影者が接眼部121aを覗き込んだことを検知する接眼検知部121cが設けられている。接眼検知部121cは、例えば投光部から赤外線等の不可視光を投光し、基線長離れた受光部に設置された受光素子で、投光された赤外線光の撮影者の顔から反射してくる反射光を受光することで、撮影者が接眼部121aを覗き込んだことを検知するように成されたものである。
【0024】
また、デジタルカメラ1の背面には、カメラの電源スイッチであるメインスイッチ111、上下左右の4方向にスイッチを持つジョグダイアル113と、ジョグダイアル113の中央に置かれ、ジョグダイアル113での設定を決定する決定スイッチ114、撮像光学系のズームを行うズームスイッチ116、背面モニタ131のオン/オフを設定する背面モニタ設定スイッチ117等の各撮像装置操作手段が配置されている。
【0025】
デジタルカメラ1の底面には、カメラを三脚に取り付けるための雌ネジが切られた三脚穴191が設けられている。
【0026】
また、図1(b)に示す撮像光学系211の光軸を含む縦断面において、撮像光学系211と絞り・シャッタユニットSを通った被写体からの光は、撮像素子153上に結像され、撮像素子153により電気信号に変換され、メイン基板160上の画処理部151により画像データに変換される。画像データは、電子ビューファインダ(EVF)121のEVF表示素子121bに表示されるか、あるいは、背面モニタ設定スイッチ117の設定によっては、背面モニタ131に表示される。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラ1のブロック図である。
【0028】
デジタルカメラ1の制御部であるカメラ制御部100は、図示しないCPU(中央処理装置)、ワークメモリ等から構成され、記憶部101に記憶されているプログラムをワークメモリに読み出し、当該プログラムに従ってデジタルカメラ1の各部を集中制御する。
【0029】
また、カメラ制御部100は、メインスイッチ111、モード設定ダイアル112、ジョグダイアル113、決定スイッチ114、ズームスイッチ116、背面モニタ設定スイッチ117、AFスイッチSW1、レリーズスイッチSW2、接眼検知部121c等からの入力を受信してデジタルカメラ1全体を制御し、電源部120を制御することでカメラ各部に電源を供給し、USB(Universal Serial Bus)等の外部インターフェース(I/F)125を介してパーソナルコンピュータやプリンタと画像データの転送等の交信を行う。
【0030】
カメラ制御部100は、撮像素子制御部152を介して撮像素子153の撮像動作を制御するとともに、画処理部151を介して撮像素子153で撮像された画像を処理して、記録部154を介して画像メモリ155に一旦記録し、最終的にはメモリカード156に記録する。画処理部151、撮像素子制御部152、撮像素子153を合わせて撮像部150と称す。また、撮像部150の画像出力から得られるピント情報に基いて、撮像光学系211のAF動作を制御する。また、撮像部150の画像出力から得られる露出情報に基づいて、絞り・シャッタユニットSの絞りを制御すると共に、撮影時には絞り・シャッタユニットSのシャッタを制御し、露光時間を調定する。
【0031】
また、カメラ制御部100は、撮像素子153によって撮像された画像のライブビューを、背面モニタ設定スイッチ117の設定に従って、画像表示部132を介して電子ビューファインダ(EVF)121または背面モニタ131あるいはその両方に表示し、画像メモリ155に記録された画像をアフタービューとして背面モニタ131に表示し、メモリカード156に記録された画像を再生画像として背面モニタ131に表示する。
【0032】
撮像光学系211、絞り・シャッタユニットSは、筒状の主胴に収められており、これらを駆動するアクチュエータを含め、レンズ鏡胴と称す。
【0033】
図3は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴に使用されるアクチュエータを示す模式図である。
【0034】
同図に示すアクチュエータは、駆動部Kと、駆動部Kを貫通する軸部Jで構成され、不図示であるが駆動部Kへの電源供給により、駆動部Kに対し相対的に軸部Jが図示矢印で示すように直進移動及び回転を行うことができるようになっているものである。
【0035】
以下、上記デジタルカメラに搭載されるレンズ鏡胴について説明する。
【0036】
図4は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴200の一例を示す断面図である。図4(a)は広角端時の状態を示し、図4(b)は望遠端時の状態を示している。
【0037】
同図に示すレンズ鏡胴200において、11は第1レンズ群であり、第1レンズ群鏡枠11kに保持され、主胴10に固定されている。12は第2レンズ群であり、第2レンズ群鏡枠12kに保持され、主胴10内で移動可能となされている。13は第3レンズ群であり、第3レンズ群鏡枠13kに保持され、主胴10に固定されている。第3レンズ群鏡枠13kには、絞り・シャッタユニットSが配置されている。14は第4レンズ群であり、第4レンズ群鏡枠14kに保持され、主胴10内で移動可能となされている。15は赤外光カットフィルタ及びオプチカルローパスフィルタが積層された光学フィルタであり、16は撮像素子である。撮像素子16は撮像素子基板17に実装されており、この撮像素子基板17と光学フィルタ15は、撮像素子固定版18に固定され、主胴10に固定されている。31は、第2レンズ群鏡枠12k及び第4レンズ群鏡枠14kの回転止めの機能を有し、光軸O方向に案内するガイド軸である。
【0038】
主胴10の内部には、第2レンズ群鏡枠12k及び第4レンズ群鏡枠14kを光軸O方向に移動させるための、図3に示すアクチュエータが配置されている。アクチュエータの軸部21のスラスト方向は、第1レンズ群鏡枠11kに配置されたスラスト軸受け22aと、撮像素子固定板18に配置されたスラスト軸受け22bにより保持されている。即ち、このレンズ鏡胴200においては、アクチュエータの駆動部20による軸部21の回転駆動により軸部21が回転し、駆動部20で軸部21を直進移動させようとすると、相対的に駆動部20が軸に沿って移動することになる。
【0039】
図示の如く、駆動部20は第2レンズ群鏡枠12kのU字状部に挟まれると共に、回転できないように係合されている。なお12sは駆動部20と第2レンズ群鏡枠12kのU字状部の隙間を片寄せするバネである。また、軸部21は、図示の如く、一部に雄ネジ部21sが形成されており、第4レンズ群鏡枠14kに形成された雌ネジ部14nが螺合されている。
【0040】
なお、U字状部は第2レンズ群鏡枠12kと一体であっても別体で形成したものであってもよく、第2レンズ群鏡枠12kと一体的に構成されていればよい。また、雌ネジ部14nは第4レンズ群鏡枠14kと一体であっても別体で形成したものであってもよく、第4レンズ群鏡枠14kと一体的に構成されていればよい。
【0041】
以上のように構成されたレンズ鏡胴200において、駆動部20により軸部21を直進移動する方向に駆動すると、軸部21は軸方向に移動できないため、相対的に駆動部20が、軸部21に沿って移動することになる。この駆動部20の移動により、係合する第2レンズ群鏡枠12kは光軸O方向に移動する。また、駆動部20により軸部21を回転する方向に駆動すると、軸部21が回転し、螺合する第4レンズ群鏡枠14kは、光軸O方向に移動する。
【0042】
即ち、図3に示すようなアクチュエータを1個備えることで、駆動部20による軸部21の直進移動方向への駆動により、第2レンズ群12を移動させ、駆動部20による軸部21の回転方向への駆動により、第4レンズ群14を移動させることができる。これにより、撮像光学系の変倍及び焦点移動の補正を行うと共に、更に駆動部20による軸部21の回転方向への駆動により、第4レンズ群14を移動させて被写体に対するピント調整を行うことができるようになる。
【0043】
このように構成することで、アクチュエータがレンズ鏡胴外に突出せず、レンズ鏡胴内にアクチュエータの駆動部及び軸部を収めることができ、更に、アクチュエータの軸部21をガイド軸に兼用することで、極めて細身の変倍可能な小型のレンズ鏡胴を得ることが可能となる。
【0044】
図5は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴200の他の例を示す断面図である。同図は広角端時の状態を示している。同図に示すレンズ鏡胴200は、図3に示すアクチュエータを2個用いた例である。より詳しくは、アクチュエータの軸部を撮像光学系の光軸に略平行に2個配置したものである。
【0045】
なお、以下の図においては、説明の重複を避けるため、同機能部材には同符号を付与し、異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
同図に示すレンズ鏡胴200において、一方のアクチュエータの駆動部20は第2レンズ群鏡枠12kのU字状部に挟まれると共に、回転できないように係合されている。更に、一方のアクチュエータの軸部21には、腕部材51が固着されている。この腕部材51には、NDフィルタ52が組み付けられている。これにより、駆動部20による軸部21の直進移動方向への駆動により第2レンズ群12を移動させ、駆動部20による軸部21の回転方向への駆動により、腕部材51を回動させNDフィルタ52を光軸Oに対し挿脱可能に構成されている。
【0047】
他方のアクチュエータの駆動部40は第4レンズ群鏡枠14kのU字状部に挟まれると共に、回転できないように係合されている。これにより、駆動部40による軸部41の直進移動方向への駆動により第4レンズ群14を移動させるように構成されている。
【0048】
これにより、駆動部20による軸部21の直進移動方向への駆動により、第2レンズ群12を移動させ、駆動部40による軸部41の直進移動方向への駆動により第4レンズ群14を移動させ、撮像光学系の変倍及び焦点移動の補正を行うと共に、更に第4レンズ群14のみを移動させて被写体に対するピント調整を行うことができるようになる。更に、駆動部20による軸部21の回転方向への駆動により、被写体が高輝度である場合にNDフィルタ52を光軸Oに対し挿入可能となる。
【0049】
このように構成することで、2個のアクチュエータがレンズ鏡胴外に突出せず、レンズ鏡胴内にアクチュエータの駆動部及び軸部を収めることができ、更に、2個のアクチュエータの軸部21及び41を各々ガイド軸として、更に各々相手軸を図4に示す回転止めの機能を有するガイド軸31の代用として兼用することで、極めて細身の変倍可能な小型のレンズ鏡胴を得ることが可能となる。
【0050】
なお、NDフィルタの光軸への挿脱を例にして説明したが、これに限るものでなく、クローズアップレンズや光学フィルタを挿脱するよう構成してもよいし、光学フィルタを赤外光カットフィルタとオプチカルローパスフィルタに分割し、いずれかを挿脱するようにしてもよい。また、他方のアクチュエータの軸部41にもスラスト軸受け42a、42b及び腕部材を設け、NDフィルタ、赤外光カットフィルタ、オプチカルローパスフィルタ、クローズアップレンズのうち2つを選択的に挿脱するよう構成してもよい。また、異なる濃度の2つのNDフィルタを選択的に挿脱するようにすると、3種の濃度を使い分けることができるようになる。
【0051】
図6は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴200の他の例を示す断面図である。同図も広角端時の状態を示している。また同図に示すレンズ鏡胴200は、図3に示すアクチュエータを2個用いた例である。
【0052】
同図に示すレンズ鏡胴200において、一方のアクチュエータの駆動部20と他方のアクチュエータの駆動部40は、図5に示すレンズ鏡胴と同様に、それぞれ第2レンズ群鏡枠12kのU字状部及び第4レンズ群鏡枠14kのU字状部と係合している。
【0053】
また、一方のアクチュエータの軸部21と同様に、他方のアクチュエータの軸部41のスラスト方向は、第1レンズ群鏡枠11kに配置されたスラスト軸受け42aと、撮像素子固定板18に配置されたスラスト軸受け42bにより保持されている。即ち、このレンズ鏡胴200においては、他方のアクチュエータの駆動部40による軸部41の回転駆動により軸部41が回転可能となっている。
【0054】
一方のアクチュエータの軸部21には、絞り・シャッタユニットSの絞り羽根を動作させる絞り駆動ギア52が組み付けられ、他方のアクチュエータの軸部41には、シャッタの開閉を行うシャッタ駆動レバー53が組み付けられている。即ち、軸部21の回転により絞り駆動ギア52は回転し、軸部41の回転によりシャッタ駆動レバー53は回動するようになっている。
【0055】
図7は、図6に示すレンズ鏡胴200の絞り・シャッタユニットSと絞り駆動ギア52、シャッタ駆動レバー53の連動機構を示す分解斜視図である。
【0056】
同図において、54は絞りカム板、55は絞り羽根、56は絞り地板、57はシャッタ羽根押さえ、58はシャッタ羽根、59はシャッタ地板である。
【0057】
絞り羽根55の絞り地板56側の面にはピンが植設されており、絞り地板56上でピンを軸にして回動可能に軸支されている。また、絞り羽根55の他方の面にもピン55pが植設されており、このピン55pが絞りカム板54に形成されたカム溝と係合している。絞りカム板54の外周には絞り駆動ギア52と歯合する歯車部54gが形成されている。
【0058】
シャッタ地板59に形成されたピン59pに、シャッタ羽根58に形成された穴58hが組み込まれ、ピン59pを軸にシャッタ羽根58は回動可能に軸支されている。また、シャッタ羽根58に形成された長穴58nに、シャッタ駆動レバー53の形成されたピン部53pが係合している。
【0059】
これにより、アクチュエータの軸部21及び絞り駆動ギア52が回転すると、歯合する絞りカム板54が回転させられ、絞りカム板54に形成されたカム溝で係合する絞り羽根55が回動し、絞り値が変化するようになっている。また、アクチュエータの軸部41及びシャッタ駆動レバー53の往復回動により、係合するシャッタ羽根58が往復回動し、シャッタの開閉を行うようになっている。
【0060】
このように、構成することで、2個のアクチュエータがレンズ鏡胴外に突出せず、レンズ鏡胴内にアクチュエータの駆動部及び軸部を収めることができ、更に、2個のアクチュエータの軸部の回転駆動により、絞り及びシャッタを駆動することもでき、極めて細身の変倍可能な小型のレンズ鏡胴を得ることが可能となる。
【0061】
図8は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴200の他の例を示す断面図である。同図も広角端時の状態を示している。同図に示すレンズ鏡胴200は、アクチュエータの軸部の回転でバリアを開閉するよう構成したものである。
【0062】
同図に示すように、駆動部20により回転させられる軸部21の第1レンズ群11側は、スラスト軸受け22a、22bにより保持され、スラスト軸受け22a及び第1レンズ群鏡枠11kを貫通する軸部21の先端にはバリア駆動ギア61が固着されている。バリア駆動ギア61の回転により、歯合するバリア駆動リング62を回転させてバリア羽根63を開閉させるようになっている。64はバリアカバーである。
【0063】
図9は、図8に示すバリア駆動ギア61、バリア駆動リング62、バリア羽根63、バリアカバー64の分解斜視図である。
【0064】
第1レンズ群鏡枠11kを貫通した軸部21が細軸に形成され、その先端部にバリア駆動ギア61が固着されている。バリア駆動リング62の内周部には内歯のギア部62g(図示せず)が形成されバリア駆動ギア61と歯合している。また、バリア羽根63に形成されたピン63pは、バリアカバー64に形成された不図示の穴部で軸支され、ピン63pを軸に回動可能となっている。また、バリア羽根63には、不図示のバネにより開き方向に付勢力が付与されており、バリア駆動リング62に形成されたピン62pがバリア羽根の当接部63cと離間している場合には、開いた状態となるよう構成されている。
【0065】
以上のような構成で、駆動部20により軸部21を回転させ、これによりバリア駆動ギア61が回転させられ、歯合するバリア駆動リング62が回転する。バリア駆動リング62の回転により、ピン62pがバリア羽根63の当接部63cに当接し、ピン63pを軸にしてバリア羽根63を回動させる。これにより、バリアは閉状態になる。逆方向に軸部21を回転させるとピン62pがバリア羽根63の当接部63cから離間し、不図示のバネの付勢力により開状態となる。
【0066】
なお、第4レンズ群鏡枠14kに係合する駆動部40とシャッタ駆動レバー53が組み付けられた軸部41で構成されたアクチュエータは、図6と同様である。
【0067】
即ち、本例は、2個のアクチュエータの駆動部20、40の移動により第2レンズ群12と第4レンズ群14を移動させて変倍及び焦点移動の補正を行う。また、駆動部40の移動により第4レンズ群14を移動させて被写体距離に対応してピント調整をおこなう。更に、軸部21を回転させてレンズバリアの開閉を行い、軸部41を往復回動させてシャッタの開閉動作による露光量の調定を行うものである。
【0068】
図10は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴200の他の例を示す断面図である。同図も広角端時の状態を示している。同図に示すレンズ鏡胴200は、2つのアクチュエータの軸部21、41のうち、一方の軸部21の回転により、バリア駆動ギア61を回転させてバリア羽根の開閉を行い、更に、絞り駆動ギア52を回転させて絞り羽根を駆動するものである。また、他方の軸部41は図6と同様に、回転によりシャッタ駆動レバー53を回転させシャッタSを駆動するよう構成したものである。本例は、軸部21にバリア駆動ギア61及び絞り駆動ギア52が同軸で組み付けられており、それぞれの機構部は既に図7、図9で説明したものと略同様である。
【0069】
このレンズバリアと絞りの駆動は、駆動部20による軸部21の回転領域のうち、バリア羽根を開閉する回転領域と、絞り羽根が駆動される回転領域を分離して構成することにより行われる。
【0070】
図11は、軸部21の回転によるバリア羽根と絞り羽根の駆動状態を示す平面図である。同図(a)はバリア羽根が閉じた状態を示し、同図(b)はバリア羽根が開状態で、絞りが開放の状態を示し、同図(c)はバリア羽根が開状態で、絞りが絞られた状態を示している。
【0071】
メインスイッチがONされると、軸部21を回転させ、同図(a)に示すバリア羽根の閉じ状態から、バリア駆動ギア61が回転させられ、歯車部62g(図示せず)で歯合するバリア駆動リング62が回転する。バリア駆動リング62の回転により、ピン62pがバリア羽根63の当接部63cから破線で示す位置まで離間し、不図示のバネの付勢力により同図(b)に示すように、バリア羽根63は開状態となる。一方、軸部21の回転により絞り駆動ギア52も回転し、絞りカム板54を回転させるが、この範囲の回転では同図(b)に示すように、絞り羽根は動かず開放状態を維持するように、絞りカム板54のカム溝が形成されている。
【0072】
同図(b)に示す状態から、軸部21を更に回転させると同図(c)に示すように、ピン62pはバリア羽根63から離間した位置で移動する。一方、絞り駆動ギア52に歯車部54gで歯合する絞りカム板54は、更に回転させられ、カム溝で係合する絞り羽根55を動かして絞った状態に変化させるようになっている。この後、軸部41を回転させることでシャッタを駆動して、静止画の撮影を行う事ができる。
【0073】
なお、メインスイッチがOFFされた際には、軸部21を逆方向に回転させ、上記と逆の動作を行い、絞りを開放とし、バリア羽根63を閉じ状態とする。
【0074】
このように、軸部21の回転により、レンズバリアを開状態とし、この開状態を維持する領域で、絞りを変化させるよう構成することで、1軸で2つの機能を果たすことが可能となる。即ち、図10に示すレンズ鏡胴200は、駆動部及び該駆動部に対し相対的に直進及び回転を行う軸部と、を有するアクチュエータを2つ備えることで、レンズバリアの開閉、絞りの駆動、変倍、焦点調節、シャッタの駆動の全てを行うことができる。
【0075】
なお、図10及び図11では、バリア駆動ギア61と絞り駆動ギア52を同軸で回転させる構成で説明したが、バリア駆動ギア61とシャッタ駆動レバー53を同軸で回転させるよう構成しても良い。この場合、レンズバリアとシャッタの駆動も、軸部の回転領域のうち、バリア羽根を開閉する回転領域と、シャッタ羽根が駆動される往復回動領域を分離して構成することで可能となる。
【0076】
なお、上記の実施の形態においては、4群のズーム光学系で説明したが、これに限るものでなく、2群以上の変倍光学系に適用可能であり、また、ズーム光学系のみならず、単焦点でもインナーフォーカスやフローティング機構を有するレンズ鏡胴の場合、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラの模式図である。
【図2】本実施の形態に係る撮像装置の一例であるデジタルカメラのブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るレンズ鏡胴に使用されるアクチュエータを示す模式図である。
【図4】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の一例を示す断面図である。
【図5】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の他の例を示す断面図である。
【図6】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の他の例を示す断面図である。
【図7】図6に示すレンズ鏡胴の絞り・シャッタユニットと絞り駆動ギア、シャッタ駆動レバーの連動機構を示す分解斜視図である。
【図8】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の他の例を示す断面図である。
【図9】図8に示すバリア駆動ギア、バリア駆動リング、バリア羽根、バリアカバーの分解斜視図である。
【図10】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の他の例を示す断面図である。
【図11】軸部の回転によるバリア羽根と絞り羽根の駆動状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 デジタルカメラ
11 第1レンズ群
11k 第1レンズ群鏡枠
12 第2レンズ群
12k 第2レンズ群鏡枠
13 第3レンズ群
13k 第3レンズ群鏡枠
14 第4レンズ群
14k 第4レンズ群鏡枠
15 光学フィルタ
16 撮像素子
17 撮像素子基板
18 撮像素子固定版
20、40 駆動部(アクチュエータ)
21、41 軸部
22a、22b、42a、42b スラスト軸受け
45 NDフィルタ
52 絞り駆動ギア
53 シャッタ駆動レバー
61 バリア駆動ギア
200 レンズ鏡胴
O 光軸
S 絞り・シャッタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を導く複数のレンズ群とで構成された撮像光学系と、前記レンズ群の各々を保持する複数の鏡枠と、駆動部及び該駆動部に対し相対的に直進及び回転を行う軸部とを有するアクチュエータと、を有し、
前記軸部のスラスト方向を固定し、前記軸部に対する前記駆動部の直進移動により、前記駆動部に係合する鏡枠を前記撮像光学系の光軸方向に移動させることを特徴とするレンズ鏡胴。
【請求項2】
前記軸部の一部に雄ネジ部を形成し、前記雄ネジ部に雌ネジ部材を螺合させ、前記軸部の回転による雌ネジ部材の光軸方向の移動に伴って、前記鏡枠を前記撮像光学系の光軸方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡胴。
【請求項3】
前記アクチュエータの軸部を前記撮像光学系の光軸に平行に2つ配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ鏡胴。
【請求項4】
前記軸部の一部に光学部材を一体的に固着し、前記軸部の回転により、前記光学部材を回動させて前記撮像光学系の光軸に対し挿脱することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ鏡胴。
【請求項5】
前記光学部材は、オプチカルローパスフィルタ、赤外光カットフィルタ、NDフィルタ、クローズアップレンズのうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡胴。
【請求項6】
前記軸部の回転により、絞り、シャッタ、レンズバリアのうちの少なくともいずれか1つを駆動することを特徴とする請求項1又は3に記載のレンズ鏡胴。
【請求項7】
前記軸部の一つを回転させることで、レンズバリアと絞りを駆動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴。
【請求項8】
前記軸部の一つを回転させることで、レンズバリアとシャッタを駆動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴と撮像素子を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−229841(P2009−229841A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75524(P2008−75524)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】