説明

レンズ駆動機構

【課題】 携帯型電子機器に搭載される光学ズームレンズにおいて、ズーム倍率調整とフォーカス調整とを1個の駆動手段で、かつ駆動力の伝達を切り替える機構を用いずに行なうことができるレンズ駆動機構を提供する。
【解決手段】 複数の可動レンズ51、52を軸方向に移動可能に支承し、端部にセンサ6を配設した鏡筒1と、この鏡筒と同軸に構成され鏡筒の周囲で回転可能に配設されると共に、各可動レンズと係合し、回転角に応じて各可動レンズをそれぞれ鏡筒の軸方向に移動させる複数個のカムパターン28、29が刻設されたカム2と、カムと結合され、カムを回転駆動させる駆動手段7とを備え、複数個のカムパターンは、カムの回転角に対応した複数の領域が設定され、所定の領域内ではカムの回転に対応してフォーカスの調整を行ない、他の領域に移動することによってズーム倍率の調整を行なう構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズ駆動機構、特に携帯電話のような小型可般機器に搭載するオートフォーカス光学ズームカメラにおけるレンズ駆動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ駆動機構は、例えばオートフォーカス光学ズームレンズを駆動するために2つのモータを使用していた。
3群構成のレンズの場合、例えば移動可能に構成された第1群レンズ、第2群レンズと固定の第3群レンズとから構成され、第1群レンズと第2群レンズの間の距離を可変とすることでズーム倍率を調整し、かつ、センサまたはフィルムと第1群レンズ及び第2群レンズの平均距離とを可変してフォーカスを調整するものであった。
【0003】
この場合のレンズの動かし方はレンズの光学設計によりさまざまであるが、一般的にズーム倍率とフォーカスを独立して制御するためには、第1群レンズと第2群レンズをそれぞれ独立して駆動する必要があるため、2個のモータを設置していた。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、2個のモータを使用する代わりに、1個のモータと1個の動力伝達切り替え機構とを使用し、第1群レンズと第2群レンズを切り替えてモータに接続し、各レンズ群を時分割的に独立して動かす場合もあった。(例えば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平05−005820号公報(段落0008−0009、図1)
【特許文献2】特開平05−002123号公報(段落0014−0023、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレンズ駆動機構は以上のように構成されているので、ズーム倍率とフォーカスとを独立して制御可能な2個のモータでそれぞれ駆動するか、または1個のモータと動力伝達切り替え機構を使用して、ズーム倍率とフォーカスとを切り替えることにより、それぞれを独立して調整する必要があった。
従って、2個のモータを必要とし、または1個のモータで切り替え駆動した場合には、ズーム倍率とフォーカスとを同時に調整することができないという問題点があった。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、1個のモータによって動力切り替え機構を用いずにズーム倍率とフォーカスとを同時に、かつそれぞれが独立して調整可能としたレンズ駆動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るレンズ駆動機構は、複数群の可動レンズと、これらの可動レンズを通して結像されるセンサと、上記可動レンズを駆動する駆動手段とを有し、上記可動レンズ間の距離及び上記可動レンズとセンサとの距離を調整してズーム倍率及びフォーカスを調整するレンズ駆動機構において、上記各可動レンズを軸方向に移動可能に支承し、端部に上記センサを配設した鏡筒と、この鏡筒と同軸に構成され上記鏡筒の周囲で回転可能に配設されると共に、上記各可動レンズと係合し、回転角度に応じて上記各可動レンズをそれぞれ上記鏡筒の軸方向に移動させる複数個のカムパターンが刻設されたカムと、上記カムと結合され、上記カムを回転駆動させる駆動手段とを備え、上記複数個のカムパターンは、上記カムの回転角に対応した複数の領域が設定され、所定の領域内では上記カムの回転に対応してフォーカスの調整を行ない、他の領域に移動することによってズーム倍率の調整を行なうようにされたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るレンズ駆動機構は上記のように構成されているため、カム上に形成されたカムパターンによりズーム倍率を操作することができ、かつカムパターンにて定義された領域内でフォーカスを操作することができ、しかもこの操作を1個の駆動手段で連続的に行なうことができる。従って、オートフォーカス光学ズームレンズのレンズ駆動機構を簡略化して小型軽量化することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1によるレンズ駆動機構の構成を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は断面図、(c)はカムパターンを示すものである。
【0011】
これらの図において、基体となる回路基板8上にイメージセンサ6の電極を固定し、後述するレンズ群による映像を結像させると共に、電気信号に変換して取り出すようにされている。
鏡筒1はレンズ機構全体を支える中空の筒状の構造体で、イメージセンサ6に対応して設けられ、可動の第1群レンズ51と第2群レンズ52が後述する構成によって軸方向に移動可能に支承され、固定の第3群レンズ53が可動のレンズ群51、52とイメージセンサ6との間で鏡筒1に固定されている。
【0012】
第1群レンズ51はレンズホルダ41によって固定され、レンズホルダ41に突設されたカムガイド31が鏡筒1に形成された溝(図示せず)と係合して鏡筒1の軸方向に移動可能に支承されている。
【0013】
第2群レンズ52はレンズホルダ42によって固定され、レンズホルダ42に突設されたカムガイド32が鏡筒1に形成された溝(図示せず)と係合して鏡筒1の軸方向に移動可能に支承されている。
【0014】
カム2は鏡筒1と同軸に構成され、鏡筒1の周囲で軸方向には動かず、円周方向に回転する筒状の構造体で、回転力は駆動手段である例えばステッピングモータ7の回転軸71に装着されたギヤ72及びカム2のギヤ部21を介して与えられるようになっている。
また、カム2にはカムガイド31、32を誘導するための2本のカムパターン28、29が刻設されており、28はカムガイド31と係合してカムガイド31をカムパターン28に従って誘導し、29はカムガイド32と係合してカムガイド32をカムパターン29に従って誘導するようにされている。
【0015】
これらのカムパターンは平面に展開した図を図1(c)に示すように、カム2の回転角0度〜30度の間に設定され、3倍ズーム状態でフォーカス調整を行なう3倍ズーム領域23と、回転角30度〜35度の間に設定され、3倍ズーム領域から後述する2倍ズーム領域へカムガイドをスムーズに誘導するための遷移領域26と、回転角35度〜65度の間に設定され、2倍ズーム状態でフォーカス調整を行なう2倍ズーム領域24と、回転角65度〜70度の間に設定され、2倍ズーム領域から後述する1倍ズーム領域へカムガイドをスムーズに誘導するための遷移領域27と、回転角70度〜110度の間に設定され、1倍ズーム状態でフォーカス調整を行なう1倍ズーム領域25とから構成されている。
【0016】
このようなカムパターンを形成し、カムガイド31、32と係合させておくことにより、モータ7によってカム2が回転した時、カムパターン28、29と鏡筒1に形成された溝との交差点が変化し、この交差点の変化により第1群レンズ51と第2群レンズ52の位置が定まり、可動レンズ群51、52の相互の間隔と、これらのレンズ群とイメージセンサ6との平均距離を同時に調整することができる。
【0017】
この実施の形態に係るレンズ駆動装置によれば、1個のモータ7によってカム2を回転させることにより、ズーム倍率調整とフォーカス調整とを同時に行なうことができる。
レンズの駆動は、ユーザの操作により、あるいは被写体の状態をセンシングしてモータ7を制御する電気信号を生成して行なう。
【0018】
ズーム倍率を1倍にする場合、レンズの駆動は、カム2の角度が図1(c)に示す70度〜110度の範囲となるよう、モータ7の回転角を制御する。ズーム倍率が1倍のままでフォーカス調整を行なう場合は、モータ7の回転角を制御して70度〜110度の範囲内でカム2の角度を調整し、第1群レンズ51と第2群レンズ52の位置を決める。
カムパターン28、29は、カム2の角度が70度〜110度の範囲では、ズーム倍率が1倍のままでフォーカス位置のみ変化するように、第1群レンズ51と第2群レンズ52を位置決めするパターンが刻まれている。
【0019】
ズーム倍率を1倍から2倍に変化させる場合は、カム2の角度がマイナス側に35度回転して回転角が35度〜65度となるよう、モータ7を制御する。
この結果、カムパターン28、29の2倍ズーム領域24が使用される。2倍ズーム領域24のカムパターンは、ズーム倍率が2倍の状態でフォーカス位置のみ変化するように第1群レンズ51と第2群レンズ52を位置決めするパターンが刻まれている。
3倍ズームとする場合は、同様に、カム2の角度が0度〜30度となるように制御する。
【0020】
なお、上記の実施の形態では、カムパターンの所定の領域内でフォーカスの調整を行ない、他の領域に移動することによってズーム倍率の調整を行なうようにしているが、この関係を逆にして、カムパターンの所定の領域内でズーム倍率の調整を行ない、他の領域に移動することによってフォーカスの調整を行なうようにしてもよい。
【0021】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
上述した実施の形態1では、1倍、2倍、3倍の3段階ズームレンズを想定したが、ズーム倍率はいくつでもよく、ズーム倍率の段階数も何段階であっても同様に実施することができる。また、レンズ群の構成については、3群3枚で2群可動のレンズを想定したが、ズーム倍率調整とフォーカス倍率調整のために、複数のレンズを独立して駆動する必要のある構成であれば、他のレンズ構成でも同様に実施可能である。
【0022】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。
上述した実施の形態1では、カム2を回転駆動させるために、一般的なステッピングモータの使用を想定しているが、この発明はステッピングモータに限定されるものではなく、回転角を制御しつつ回転駆動力を生成できるアクチュエータであれば、超音波モータや圧電モータのような駆動手段でも使用可能である。また、回転角を制御できない直流モータのようなアクチュエータでも、モータとは別に回転角をセンシングする機能を付加して回転角制御を行なうようにすれば使用可能である。
【0023】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4について説明する。
上述した実施の形態1では、ズーム倍率毎にカムパターン領域を形成しているが、マクロ撮影用に専用の領域を形成してもよい。
一般的に、マクロ撮影状態では近接した被写体を写すため、ズーム倍率の可変は重要ではない。使用者がカメラと被写体との距離を変化させることで簡単にズームの効果が得られるためである。従って、各ズーム倍率に対応する領域毎にマクロ撮影用のフォーカス設定を可能にする必要はなく、そのレンズが実現可能な最大倍率のみでマクロ撮影可能なフォーカス位置を用意すればよい。これによってカムパターンの無駄な領域を省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、活用例として、デシタルカメラ、カメラ付き携帯電話、監視用カメラなどに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係るレンズ駆動機構の構成を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は断面図、(c)はカムパターンを示すものである。
【符号の説明】
【0026】
1 鏡筒、 2 カム、 21 ギヤ部、 31、32 カムガイド、
41、42 レンズホルダ、 51 第1群レンズ、 52 第2群レンズ、
53 第3群レンズ、 6 イメージセンサ、 7 モータ、 71 回転軸、
72 ギヤ、 8 回路基板、
23 3倍ズーム領域、 24 2倍ズーム領域、 25 1倍ズーム領域、
26、27 遷移領域、 28、29 カムパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数群の可動レンズと、これらの可動レンズを通して結像されるセンサと、上記可動レンズを駆動する駆動手段とを有し、上記可動レンズ間の距離及び上記可動レンズとセンサとの距離を調整してズーム倍率及びフォーカスを調整するレンズ駆動機構において、上記各可動レンズを軸方向に移動可能に支承し、端部に上記センサを配設した鏡筒と、この鏡筒と同軸に構成され上記鏡筒の周囲で回転可能に配設されると共に、上記各可動レンズと係合し、回転角に応じて上記各可動レンズをそれぞれ上記鏡筒の軸方向に移動させる複数個のカムパターンが刻設されたカムと、上記カムと結合され、上記カムを回転駆動させる駆動手段とを備え、上記複数個のカムパターンは、上記カムの回転角に対応した複数の領域が設定され、所定の領域内では上記カムの回転に対応してフォーカスの調整を行ない、他の領域に移動することによってズーム倍率の調整を行なうようにされたことを特徴とするレンズ駆動機構。
【請求項2】
複数群の可動レンズと、これらの可動レンズを通して結像されるセンサと、上記可動レンズを駆動する駆動手段とを有し、上記可動レンズ間の距離及び上記可動レンズとセンサとの距離を調整してズーム倍率及びフォーカスを調整するレンズ駆動機構において、上記各可動レンズを軸方向に移動可能に支承し、端部に上記センサを配設した鏡筒と、この鏡筒と同軸に構成され上記鏡筒の周囲で回転可能に配設されると共に、上記各可動レンズと係合し、回転角に応じて上記各可動レンズをそれぞれ上記鏡筒の軸方向に移動させる複数個のカムパターンが刻設されたカムと、上記カムと結合され、上記カムを回転駆動させる駆動手段とを備え、上記複数個のカムパターンは、上記カムの回転角に対応した複数の領域が設定され、所定の領域内では上記カムの回転に対応してズーム倍率の調整を行ない、他の領域に移動することによってフォーカスの調整を行なうようにされたことを特徴とするレンズ駆動機構。
【請求項3】
上記カムパターンにマクロ撮影用の領域を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレンズ駆動機構。

【図1】
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【公開番号】特開2006−53317(P2006−53317A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234478(P2004−234478)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】