説明

レンズ駆動装置

【課題】アクチュエータからレンズホルダへ駆動力を効率よく伝達することが可能なレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置は、レンズホルダ30と、シャフト15と、圧電アクチュエータ50と、付勢部材(ばね71、アーム部材72、基板73、及びボール部材74)と、を備えている。シャフト15は、レンズホルダ30をレンズの光軸方向OAに移動可能で且つ軸周りに揺動可能に支持する。圧電アクチュエータ50は、レンズホルダ30を光軸方向OAに移動させるようにレンズホルダ30に駆動力を与える。付勢部材は、レンズホルダ30を圧電アクチュエータ50側に回動させるようにレンズホルダ30に付勢力を与える。レンズホルダ30における付勢部材により付勢力Fが与えられる箇所が圧電アクチュエータ50と対向しており、付勢部材による付勢力Fが圧電アクチュエータ50に向かっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば携帯電話などに搭載されるカメラ用レンズを駆動するレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ駆動装置として、レンズを保持するためのレンズホルダと、レンズホルダを案内するシャフトと、レンズホルダをシャフトに沿って移動させるためのアクチュエータと、アクチュエータと圧接するための圧接面と、を備えているものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されているレンズ駆動装置では、アクチュエータを圧接面に圧接するために、レンズホルダとアクチュエータとの間、又は、アクチュエータとレンズ駆動装置の固定部との間に、付勢部材(ばね)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−90584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているレンズ駆動装置は、以下のような問題点を有している。
【0005】
付勢部材がレンズホルダとアクチュエータとの間に配置されている場合、当該付勢手段は、アクチュエータからレンズホルダへの駆動力伝達経路上に位置することとなる。このため、アクチュエータからレンズホルダへの駆動力の伝達にロスが生じ、レンズホルダを適切に移動させることが難しくなる懼れがある。付勢部材がアクチュエータと上記固定部との間に配置されている場合も、当該付勢手段は、アクチュエータからレンズホルダへの駆動力伝達経路上に実質的に位置することとなる。この場合、アクチュエータ自体が付勢手段により振動して、アクチュエータの駆動力をレンズホルダに適切に伝えることが難しく、アクチュエータからレンズホルダへの駆動力の伝達にロスが生じる懼れがある。
【0006】
本発明は、アクチュエータからレンズホルダへ駆動力を効率よく伝達することが可能なレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレンズ駆動装置は、レンズを保持するためのレンズホルダと、レンズホルダをレンズの光軸方向に移動可能で且つ軸周りに揺動可能に支持するシャフトと、レンズホルダを光軸方向に移動させるようにレンズホルダに駆動力を与えるアクチュエータと、レンズホルダをアクチュエータ側に回動させるようにレンズホルダに付勢力を与える付勢部材と、を備え、レンズホルダにおける付勢部材により付勢力が与えられる位置とアクチュエータにより駆動力が与えられる位置とが対向しており、付勢部材による付勢力がアクチュエータに向かっていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るレンズ駆動装置では、付勢部材が、レンズホルダをアクチュエータ側に回動させるようにレンズホルダに付勢力を与えている。このため、レンズホルダとアクチュエータとの当接状態が良好に保たれることとなる。そして、付勢部材により付勢力が与えられる位置とアクチュエータにより駆動力が与えられる位置とがレンズホルダにおいて対向し、付勢部材による付勢力がアクチュエータに向かっているため、付勢部材がアクチュエータからレンズホルダへの駆動力伝達経路上に位置することはない。これらの結果、アクチュエータからの駆動力がレンズホルダへ効率よく伝達される。
【0009】
レンズホルダ、シャフト、アクチュエータ、及び付勢部材を収容するハウジングを、更に備えており、シャフトは、ハウジングの第一角部に配置され、アクチュエータは、ハウジングの第一角部と隣り合う第二角部に配置され、付勢部材は、ハウジングの第一角部と対角に位置する第三角部と第二角部とにわたって配置されていてもよい。この場合、デッドスペースとなるハウジングの角部に、シャフトとアクチュエータとが配置されるため、レンズ駆動装置の小型化を容易に図ることができる。
【0010】
付勢部材は、ばねと、一端がばねと当接しているアーム部材と、アーム部材の他端と当接している基板と、基板とレンズホルダとに当接し、レンズホルダ及び基板に対して回転可能に支持されたボール部材と、を有し、ばねによる押圧力がアーム部材、基板、及びボール部材を介してレンズホルダに付勢力として与えられていてもよい。この場合、レンズホルダに付勢力を与える付勢部材の構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。また、基板とレンズホルダとに当接するボール部材が回転可能であるため、ボール部材と基板及びレンズホルダとの間に生じる摩擦が極めて小さい。したがって、ボール部材がレンズの光軸方向への移動に対して抵抗となるのを防ぐことができる。
【0011】
レンズホルダ、シャフト、アクチュエータ、及び付勢部材を収容するハウジングを、更に備えており、シャフトは、ハウジングの第一角部に配置され、アクチュエータ、基板、及びボール部材は、ハウジングの第一角部と隣り合う第二角部に配置され、ばねは、ハウジングの第一角部と対角に位置する第三角部に配置され、アーム部材は、第三角部と第二角部との間を延びるように配置されていてもよい。この場合、この場合、デッドスペースとなるハウジングの角部に、シャフト、アクチュエータ、ばね、及び基板が配置されるため、レンズ駆動装置の小型化を容易に図ることができる。
【0012】
レンズホルダ、シャフト、アクチュエータ、及び付勢部材を収容するハウジングを、更に備えており、シャフトは、ハウジングの第一角部に配置され、アクチュエータは、ハウジングの第一角部と隣り合う第二角部に配置され、付勢部材は、ハウジングの第一角部と対角に位置する第三角部に配置され、レンズホルダは、筒状の胴部と、胴部から外方に向けて突出すると共に第二角部に位置する第1の面と、胴部から外方に向けて突出し、第1の面と対向すると共に、第三角部に位置する第2の面とを有し、アクチュエータにより第1の面に向けて駆動力が与えられ、付勢部材により第2の面に向けて付勢力が与えられてもよい。この場合、デッドスペースとなるハウジングの角部に、シャフトと、アクチュエータと、付勢部材とが配置される。しかも、アクチュエータによる駆動力の付与が第二角部内で行われると共に、付勢部材による付勢力の付与が第三角部内で行われる。そのため、レンズホルダが大型化しても、駆動力及び付勢力を付与するための部材の領域がデッドスペースにおいて確保されるので、レンズホルダに対する駆動力及び付勢力の付与が阻害されない。従って、レンズホルダの大型化と、レンズ駆動装置の小型化とを両立させることができる。その結果、レンズホルダの大きさを従来と同程度に設定する場合には、小型のレンズ駆動装置を得ることが可能となる。一方、レンズ駆動装置の大きさを従来と同程度に設定する場合には、レンズホルダを大型化でき、より大きな径を有するレンズをレンズホルダに搭載することが可能となる。
【0013】
付勢部材は、ばねと、ばねと当接する第1主面と、第1主面に対向する第2主面とを含み、第2主面に窪み部が形成された基体と、基体の窪み部内に回転可能に配置されたボール部材と、を有し、ばねによる押圧力が基体及びボール部材を介してレンズホルダに付勢力として与えられてもよい。この場合、レンズホルダに付勢力を与える付勢部材の構成が簡易となり、部品点数が少なくなるので、レンズ駆動装置を低コストで製造することができる。また、基板の窪み部内に配置されたボール部材が回転可能であるため、ボール部材とレンズホルダとが当接した際に、ボール部材とレンズホルダとの間に生じる摩擦が極めて小さい。従って、レンズホルダがレンズの光軸方向に移動する際にボール部材が抵抗となるのを防ぐことができる。
【0014】
レンズホルダに向けてアクチュエータを押しつける弾性力を発生する弾性部材を更に備えてもよい。この場合、アクチュエータとハウジングとの間に弾性部材が介在するので、部品に誤差が生じたとしても、その誤差を弾性部材で吸収することができる。また、弾性部材から付与された弾性力によってアクチュエータがレンズホルダに向けて押しつけられるので、アクチュエータのレンズホルダへの当接状態が適切に保たれる。そのため、アクチュエータとレンズホルダとの位置関係にずれが生じた場合であっても、良好なチルト(レンズの光軸に対するレンズホルダの傾き)マージンが得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アクチュエータからレンズホルダへ駆動力を効率よく伝達することが可能なレンズ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す平面図である。
【図4】第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
【図5】レンズホルダ、シャフト、圧電アクチュエータ、及び付勢部材の関係を示す図である。
【図6】圧電アクチュエータと基板との当接状態を示す斜視図である。
【図7】圧電アクチュエータの駆動時の様子を示す模式図である。
【図8】第2実施形態に係るレンズ駆動装置を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係るレンズ駆動装置において、付勢部材の近傍を拡大して示す図である。
【図10】第2実施形態に係るレンズ駆動装置を第1の方向Xから見た図である。
【図11】第2実施形態に係るレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1及び図2は、第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す斜視図である。図3は、第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す平面図である。図4は、第1実施形態に係るレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。図2及び図3では、後述するカバー20が外された状態でレンズ駆動装置1が示されている。
【0019】
レンズ駆動装置1は、図1〜図4に示されるように、ベース10、カバー20、及びレンズホルダ30、並びに、後述する圧電アクチュエータユニット及び付勢部材を備えている。レンズ駆動装置1は、たとえば携帯電話などに搭載されるカメラ用レンズを駆動する装置である。レンズ駆動装置1は、平面形状が、たとえば8.5mm×8.5mmに設定されている。第1実施形態では、ベース10とカバー20とがハウジングとして機能する。
【0020】
ベース10は、真円形状の開口11aが形成された底部11と、底部11から立設された側壁部13と、を有している。ベース10(底部11)は、平面視で略矩形形状を呈している。側壁部13は、底部11の四辺にわたって設けられており、底部11と一体に形成されている。側壁部13は、開口11aの形状に沿って湾曲している内周面を有している。底部11と側壁部13とは、レンズホルダ30を収容する空間を画定している。ベース10は、たとえばガラスファイバや無機質などのフィラーを含んだ液晶ポリマーにより形成される。略矩形形状とは、角が直角とされた形状のみならず、角が面取りされた形状のものも含む。
【0021】
側壁部13には、カバー20を取り付けるための複数の係合突起13aが設けられている。ベース10の角部10aには、シャフト15が配置されている。ベース10の角部10aでは、側壁部13の一部が切り欠かれるように空間が形成されており、当該空間にシャフト15が配置されている。シャフト15は、一端が底部11に支持され、他端が側壁部13における底部11に対向する部分に支持されている。シャフト15は、底部11と側壁部13との間にかけ渡されている。シャフト15は、断面真円形状を呈しており、たとえばステンレス鋼などからなる。シャフト15の軸方向は、レンズの光軸方向OAと平行に設定されている。
【0022】
カバー20は、一面側が開口した中空の略直方体形状を呈している。カバー20は、底部11に対向する表面部21と、表面部の四辺からそれぞれ延びる側面部23と、を有している。表面部21には、開口11aに対向する位置に、真円形状の開口21aが形成されている。側面部23には、係合突起13aと対応する位置に開口23aが形成されている。カバー20は、係合突起13aが開口23aに嵌まり込むことにより、ベース10に取り付けられる。カバー20は、たとえばSPCC(冷間圧延鋼)により形成される。
【0023】
レンズホルダ30は、筒状の胴部31を有しており、底部11と側壁部13とで画定された収容空間に配置されている。胴部31は、断面真円形状を呈している。胴部31の内側には、レンズを収納したレンズバレルLBが取り付けられる。レンズホルダ30は、レンズバレルLBが取り付けられることにより、レンズを保持することとなる。レンズバレルLBに保持されたレンズは、開口11a及び開口21aを通して露出することとなる。レンズホルダ30は、たとえばカーボンファイバを含んだ液晶ポリマー又はナイロンによって形成される。
【0024】
胴部31の外側面には、胴部31から外側に張り出すように、シャフト15を支持するシャフト支持部33が設けられている。胴部31とシャフト支持部33とは、一体に形成されている。シャフト支持部33には、シャフト15が挿通される貫通孔33aが形成されている。貫通孔33aの断面形状は、シャフト15の断面形状に対応した真円形である。レンズホルダ30は、貫通孔33aにシャフト15が挿通された状態で、シャフト15の軸方向(レンズの光軸方向OA)に移動可能であり且つシャフト15周りに揺動可能に支持されている。
【0025】
レンズホルダ30は、後述する圧電アクチュエータ50の摩擦部51が当接する基板37を有している。基板37は、胴部31の外側面に、ベース10の角部10aと隣り合う角部10bに近接するように設けられた基板支持部39に固定されている。これにより、基板37は、レンズホルダ30の側面として実質的に機能する。基板37は、たとえば、SiC又はジルコニアなどからなる。基板37は、レンズホルダ30と一体に形成されていてもよい。
【0026】
圧電アクチュエータユニットは、図4にも示されるように、圧電アクチュエータ50及びフレキシブル基板60を有している。
【0027】
圧電アクチュエータ50は、いわゆる積層型圧電アクチュエータであって、基板37(基板支持部39)に近接配置されており、ベース10(底部11)の角部10bに位置している。圧電アクチュエータ50は、印加された電圧値に応じて伸縮する複数(第1実施形態では、4つ)の活性部A1〜A4を有している。圧電アクチュエータ50の一面側には、活性部A1〜A4の配列方向に沿って複数(第1実施形態では、二つ)の摩擦部51が配置されている。
【0028】
圧電アクチュエータ50の他面側には、伸縮が生じない位置(ノードポイント)に対応して、複数(第1実施形態では、4つ)の外部電極52が設けられている。各外部電極52は、ノードポイントから圧電アクチュエータ50の端部に向かって延びている。すなわち、各外部電極52は、一端部がノードポイントに位置し、他端部がノードポイントから離れて位置している。各外部電極52の他端部が、フレキシブル基板60に接続されることとなる。
【0029】
各摩擦部51は、図6にも示されているように、略半円柱形状を呈しており、レンズの光軸方向OAに隔てて配置され且つ当該光軸方向OAに直交する方向に延びている。摩擦部51は、基板37に当接することにより、レンズホルダ30の側面に間接的に当接することとなる。
【0030】
圧電アクチュエータ50は、駆動時においては2つの共振モードを有している。具体的には、圧電アクチュエータ50は、圧電アクチュエータ50の長手方向に振動する縦振動モード(第1の振動モード)と、圧電アクチュエータ50の厚み方向への曲げ振動モード(第2の振動モード)と、の重ね合わせによって振動する。
【0031】
第一内部電極とグランド内部電極と圧電体層とから構成される活性部A1、及び、第四内部電極とグランド内部電極と圧電体層とから構成される活性部A4を駆動させると、図7の(a)に示されるように、一方の摩擦部51が基板37と接触して、一方の摩擦部51と基板37との間に摩擦力が生じる。一方の摩擦部51と基板37との間に生じた摩擦力により、基板37が図7の(a)中の矢印方向に移動することとなる。
【0032】
第二内部電極とグランド内部電極と圧電体層とから構成される活性部A2、及び、第三内部電極とグランド内部電極と圧電体層とから構成される活性部A3を駆動させると、図7の(b)に示されるように、他方の摩擦部51が基板37と接触して、他方の摩擦部51と基板37との間に摩擦力が生じる。他方の摩擦部51と基板37との間に生じた摩擦力により、基板37が図7の(b)中の矢印方向に移動することとなる。
【0033】
第一内部電極に接続される外部電極52と第二内部電極に接続される外部電極52とに位相を90度ずらした電圧をそれぞれ印加して圧電アクチュエータ50を駆動させると、摩擦部51にそれぞれ位相が180度ずれた楕円運動が生じ、交互に基板37との間に摩擦力が作用して、基板37(レンズホルダ30)が移動することとなる。すなわち、圧電アクチュエータ50の摩擦部51がレンズホルダ30をレンズの光軸方向OAに沿って駆動させる。
【0034】
図7に示された例では、圧電素子の境界部分と、圧電アクチュエータ50の配列方向(レンズの光軸方向OA)の長さをLとした場合に圧電アクチュエータ50の端部から1/6L程度内側となる位置とに、3箇所のノードポイントN1,N2,N3が存在している。ノードポイントN1は、圧電素子の配列方向にも厚さ方向にも変位せず、ノードポイントN2,N3は、圧電素子の配列方向には変位するが厚さ方向には変位しない。
【0035】
各外部電極52は、中央のノードポイントN1に対応する位置、すなわち一端部で対応する内部電極と接続されている。各外部電極52の一端部は、中央のノードポイントN1において互いに離間して配置されている。
【0036】
フレキシブル基板60は、いわゆるフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible printed circuits)であり、フィルム状の絶縁体と、絶縁体上に配置された配線部と、を有している。配線部は、各外部電極52にはんだ付け等により接続される配線を含んでいる。フレキシブル基板60(絶縁体)は、ベース10(側壁部13)の一辺に沿って配置されている。第1実施形態では、フレキシブル基板60は、角部10aと角部10bとの間をわたるように配置されている。
【0037】
フレキシブル基板60は、図4にも示されているように、上記一辺に平行な方向に沿って延びる第一部分65と、当該第一部分65からレンズの光軸方向OAに沿って延びる第二部分67と、を含んでいる。フレキシブル基板60は、第二部分67が接着等により側壁部13に固定されることにより、ベース10やレンズホルダ30等に対して位置決めされる。第二部分67は、ベース10とカバー20との間に形成される間隙を通してレンズ駆動装置1の外側に引き出されている。フレキシブル基板60の第一部分65の先端領域に、圧電アクチュエータ50が実装されている。
【0038】
第一部分65の先端領域は、レンズの光軸方向OAに互いに離間するように、二股状に形成されている。第一部分65の先端領域は、その間の領域が圧電アクチュエータ50の中央のノードポイントN1に対応するように位置している。これにより、フレキシブル基板60側から見て、圧電アクチュエータ50の中央のノードポイントN1が露出することとなる。第一部分65の先端領域が二股状に形成されていることから、圧電アクチュエータ50は、中央のノードポイントN1から離れた位置で、第一部分65の先端領域に機械的に接続されることとなる。これにより、フレキシブル基板60が圧電アクチュエータ50の上述した振動を阻害するのを防ぐことができる。
【0039】
第一部分65の上記先端領域における圧電アクチュエータ50が実装される面の裏面には、当該裏面と対向するように板部材70が配置されている。すなわち、板部材70は、圧電アクチュエータ50とで、フレキシブル基板60(第一部分65の先端領域)を挟むように配置されている。板部材70は、ベース10(側壁部13)に接着などにより固定されている。板部材70は、たとえば、セラミック又はステンレス鋼などからなる。
【0040】
板部材70の、第一部分65の先端領域に対向する面、すなわちフレキシブル基板60を挟んで圧電アクチュエータ50に対向する面には、突出部70aが形成されている。突出部70aは、第一部分65の先端領域の間の領域に対応するように位置しており、フレキシブル基板60側から見て露出することとなる。突出部70aは、断面形状が略三角形を呈しており、板部材70の幅方向に沿って延びている。板部材70がベース10に固定された状態では、突出部70aは、レンズの光軸方向OAに直交する方向に沿って延びることとなる。
【0041】
板部材70の突出部70aは、圧電アクチュエータ50の中央のノードポイントN1に接着などにより固定されている。これにより、圧電アクチュエータ50は、ベース10に対する位置が規定されると共に、各摩擦部51とレンズホルダ30(基板37)との当接状態が規定されることとなる。圧電アクチュエータ50と板部材70とは、ノードポイントN1にて固定されているので、圧電アクチュエータ50と板部材70との固定が圧電アクチュエータ50の上述した振動を阻害するのを防ぐことができる。
【0042】
圧電アクチュエータ50における板部材70が接着される位置は、上述したように、圧電素子として伸縮が生じないノードポイントであることが好ましい。しかしながら、圧電アクチュエータ50と板部材70とを確実に接着するために、板部材70が接着される位置は、ノードポイントからずれた位置にわたっていてもよい。
【0043】
付勢部材は、図5にも示されているように、ばね71、アーム部材72、基板73、及びボール部材74を有している。付勢部材は、レンズホルダ30を圧電アクチュエータ50側に回動させるように(図中、矢印R方向)、すなわち摩擦部51と基板37とが当接するように、レンズホルダ30に当接して付勢力Fを与える。付勢部材(ばね71、アーム部材72、基板73、及びボール部材74)は、ベース10の角部10aと対角に位置する角部10cと角部10bとにわたって配置されており、側壁部13の外側面に形成された凹部13b内に位置している。
【0044】
ばね71は、ベース10の角部10cに配置されており、有底状の筒部材75内に収容されている。筒部材75には、その開口端側に鍔部が形成されている。筒部材75は、鍔部が側壁部13の外側面に形成された溝と係合することにより、位置決めされることとなる。筒部材75は、接着などにより側壁部13(ベース10)に固定されている。第1実施形態では、ばね71として、圧縮コイルばねを用いている。
【0045】
アーム部材72は、角部10cと角部10bとの間を延びるように上記凹部13b内に配置されている。アーム部材72は、ばね71に当接する当接部72aと、基板73に当接する当接部72bと、当接部72a,72b間を連結する連結部72cと、を含んでいる。当接部72a,72bは、連結部72cの端から連結部72cと交差する方向に延びている。アーム部材72は、たとえばステンレス鋼などからなり、ステンレス鋼をプレス成形することによって形成することができる。
【0046】
基板73は、ベース10の角部10cに配置されており、アーム部材72の当接部72bに対向する主面を含んでいる。基板73は、上記主面が当接部72bに当接した状態で当接部72bに接着などにより固定されている。当接部72bには凸部が形成されており、当該凸部と主面とが点接触した状態で、基板73とアーム部材72(当接部72b)とが固定されている。基板73は、たとえば、SiC又はジルコニアなどからなる。
【0047】
ボール部材74は、ベース10の角部10cに配置されており、基板73の上記主面の裏面に当接している。ボール部材74は、複数(第1実施形態では、2つ)であり、レンズの光軸方向OA(シャフト15の軸方向)に沿って併置されている。ボール部材74は、基板37の摩擦部51に当接する面の裏面に形成された凹部37aに収容されている。ボール部材74は、基板37に形成された上記凹部37aに収容された状態で、基板37にも当接する。したがって、ボール部材74は、基板73と基板37とで挟まれており、基板73と基板37とで支持される。ボール部材74は、基板73及び基板37(レンズホルダ30)に対して回転可能に支持されることとなる。
【0048】
基板37に形成された凹部37aは、ボール部材74毎に独立している。各凹部37aのレンズの光軸方向OAでの長さは、ボール部材74が当該凹部37a内をレンズの光軸方向OAに所定距離だけ移動可能となるように設定されている。ボール部材74は、たとえばステンレス鋼などからなる。
【0049】
ばね71は、筒部材75の底部とアーム部材72の当接部72aとに当接し、所望の圧縮状態とされており、アーム部材72を押圧している。ばね71の押圧力は、アーム部材72、基板73、及びボール部材74を介して基板37、すなわちレンズホルダ30に付勢力Fとして与えられる。
【0050】
レンズ駆動装置1では、基板37の一方の面側に圧電アクチュエータ50の摩擦部51が当接して、基板37に圧電アクチュエータ50の駆動力が与えられている。基板37の他方の面側には、ボール部材74が当接して、付勢部材の付勢力Fが与えられている。したがって、基板37(レンズホルダ30)における付勢部材により付勢力Fが与えられる位置と圧電アクチュエータ50により駆動力が与えられる位置とが対向することとなる。そして、付勢部材による付勢力Fは、圧電アクチュエータ50に向かっている。
【0051】
レンズ駆動装置1は、レンズホルダ30のレンズの光軸方向OAでの位置を検出するための位置検出素子80を更に備えている。位置検出素子80は、発光素子(たとえば、発光ダイオード等)及び受光素子(たとえば、フォトダイオード等)を有している。位置検出素子80は、ベース10の角部10bと対角に位置する角部10dに配置されている。側壁部13には、位置検出素子80に対応する位置に開口17が形成されている。位置検出素子80は、ベース10に接着などにより固定されている。位置検出素子80では、発光素子から出射された光が開口17を通ってレンズホルダ30の外側面に固定された反射板81に入射し、この反射板81で反射された光が再び開口17を通って受光素子に入射して、検出される。
【0052】
位置検出素子80は、フレキシブル基板83に実装されている。フレキシブル基板83は、フレキシブル基板60と同じく、FPCであり、フィルム状の絶縁体と、絶縁体上に配置された配線部と、を有している。配線部は、位置検出素子80の端子電極にはんだ付け等により接続される配線を含んでいる。位置検出素子80(受光素子)の出力信号は、フレキシブル基板83の配線部を通して不図示の制御ユニットへ送られる。制御ユニットは、既知の手法に基づいて、位置検出素子80の出力信号からレンズの光軸方向OAでの位置を求める。制御ユニットは、発光素子の駆動信号を出力し、この駆動信号はフレキシブル基板83の配線部を通して発光素子に入力される。
【0053】
以上のように、第1実施形態では、付勢部材(ばね71、アーム部材72、基板73、及びボール部材74)が、レンズホルダ30を圧電アクチュエータ50側に回動させる方向(図5中、矢印R方向)に常に付勢力Fを与えている。このため、レンズホルダ30(基板37)と圧電アクチュエータ50(摩擦部51)との当接状態が良好に保たれることとなる。そして、上記付勢部材により付勢力Fが与えられる位置とアクチュエータにより駆動力が与えられる位置とがレンズホルダ30(基板37)において対向し、付勢部材による付勢力Fが圧電アクチュエータ50に向かっている。このため、付勢部材が圧電アクチュエータ50からレンズホルダ30への駆動力伝達経路上に位置することはない。これらの結果、圧電アクチュエータ50からの駆動力がレンズホルダ30へ効率よく伝達される。
【0054】
第1実施形態では、上述したように、付勢部材により付勢力Fが与えられる位置とアクチュエータにより駆動力が与えられる位置とがレンズホルダ30(基板37)において対向し、付勢部材による付勢力Fが圧電アクチュエータ50に向かっているため、レンズホルダ30と圧電アクチュエータ50との当接状態を所望の状態にするために求められる付勢力Fが小さくてすむ。したがって、シャフト15に作用する負荷が軽減され、シャフト15とレンズホルダ30との間の摩擦が小さくなる。この結果、レンズホルダ30を移動させるための駆動力が少なくてすみ、レンズホルダ30を駆動するための消費電力を低減できると共に、レンズ駆動装置1の長寿命化を図ることができる。
【0055】
第1実施形態では、ベース10の角部10bに配置されたボール部材74が基板37に当接することにより、レンズホルダ30が圧電アクチュエータ50から離れる方向に揺動するのを規制している。すなわち、シャフト15が配置された角部10aから離れた角部10bに、レンズホルダ30の揺動が規制される位置が設定されることとなる。このように、レンズホルダ30の揺動が規制される位置とシャフト15とが離れることにより、レンズホルダ30のレンズの光軸方向OAでの移動位置の精度を高めることができる。
【0056】
第1実施形態では、付勢部材は、ばね71と、アーム部材72と、基板73と、ボール部材74と、を有し、ばね71による押圧力がアーム部材72、基板73、及びボール部材74を介してレンズホルダ30(基板37)に付勢力Fとして与えられている。これにより、レンズホルダ30に付勢力Fを与える付勢部材の構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。また、基板73と基板37(レンズホルダ30)とに当接するボール部材74が回転可能であるため、ボール部材74と基板37,73との間に生じる摩擦が極めて小さい。したがって、ボール部材74がレンズの光軸方向OAへの移動に対して抵抗となるのを防ぐことができる。
【0057】
第1実施形態では、レンズホルダ30、シャフト15、圧電アクチュエータ50、及び付勢部材(ばね71、アーム部材72、基板73、及びボール部材74)が、ベース10とカバー20とで構成されるハウジングに収容されている。そして、シャフト15は、ベース10の角部10aに配置され、圧電アクチュエータ50、基板73、及びボール部材74は、ベース10の角部10bに配置され、ばね71は、ベース10の角部10cに配置され、アーム部材72は、角部10cと角部10bとの間を延びるように配置されている。これにより、デッドスペースとなるハウジングの角部に、シャフト15、圧電アクチュエータ50、ばね74、及び基板73が配置されるため、レンズ駆動装置1の小型化を容易に図ることができる。
【0058】
[第2実施形態]
続いて、図8〜図11を参照して、第2実施形態に係るレンズ駆動装置2について説明する。以下では、第1実施形態に係るレンズ駆動装置1の構成との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0059】
図8は、第2実施形態に係るレンズ駆動装置を示す斜視図である。図9は、第2実施形態に係るレンズ駆動装置において、付勢部材の近傍を拡大して示す図である。図10は、第2実施形態に係るレンズ駆動装置を、レンズの光軸方向OAと直交する第1の方向X(図8参照)から見た図である。図11は、第2実施形態に係るレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
【0060】
レンズ駆動装置2は、図8及び図11に示されるように、ベース10、カバー20及びレンズホルダ30、並びに、後述する圧電アクチュエータユニット及び付勢部材を備えている。第2実施形態では、主に、レンズホルダ30及び付勢部材の構成の点で、第1実施形態と相違する。
【0061】
レンズホルダ30は、図8及び図11に示されるように、円筒状の胴部31と、胴部31の外方に向けて突出した突出部32と、シャフト支持部33とを有する。突出部32は、胴部31を間においてシャフト支持部33とは反対側に設けられている。突出部32は、レンズの光軸方向OA及び方向Xにそれぞれ直交する第2の方向(レンズの光軸方向OAから見たときの胴部31の接線方向)に沿って延びている。突出部32は、レンズホルダ30がベース10に搭載された状態において、ベース10の角部10bと角部10cとの間に位置する。
【0062】
突出部32は、図10に示されるように、ベース10の角部10cに位置する側壁面32aと、ベース10の角部10bに位置する側壁面32bとを有する。側壁面32a,32bは、第1の方向Xに沿うように胴部31の外方に向けて突出している。側壁面32aと側壁面32bとは、第2の方向において対向している。
【0063】
付勢部材は、図8〜図11に示されるように、板ばね91と、板部材92と、ボール部材93とを有する。付勢部材(板ばね91、板部材92及びボール部材93)は、ベース10の角部10cに位置している。
【0064】
板ばね91は、一枚の板状体が折り曲げられて形成されており、第1の部分91aと、第2の部分91bと、第3の部分91cと、第4の部分91dと、第5の部分91eとを含む。第1の部分91aは、他の部分91b〜91eと交差するように(第2実施形態では略直交するように)延びている。第1の部分91aの一端は自由端となっており、その他端には第2の部分91bの一端が連続的に設けられている。
【0065】
第2〜第5の部分91b〜91eは、第1の部分91aに近い側からこの順に連続して並んでいる。すなわち、第2の部分91bの他端には、第3の部分91cの一端が連続的に設けられている。第3の部分91cの他端には、第4の部分91dの一端が連続的に設けられている。第4の部分の他端には、第5の部分91eの一端が連続的に設けられている。第5の部分91eの他端は自由端となっている。第3及び第4の部分91c,91dは、第2及び第5の部分91b,91eに対して第1の部分91aの側に折り曲げられている。そのため、第3及び第4の部分91c,91dは、第1の方向Xから見てV字形状の凹部をなしている。
【0066】
側壁部13の内側には、ベース10の角部10cに対応する位置に、レンズの光軸方向OAに沿って延びる溝13cが設けられている。板ばね91は、ベース10に取り付けられた状態において、この溝13cの上端に引っ掛けられ、第2〜第5の部分91b〜91eが溝13c内に配置される。このような板ばね91は、第3及び第4の部分91c,91dが撓むことによりばねとして機能し、レンズホルダ30に与える付勢力Fを発生する(図11参照)。
【0067】
板部材92は、直方体形状を呈する。板部材92は、良好な摺動性を有する材料で形成することができる。良好な摺動性を有する材料としては、例えば、ナイロンや、ポリアセタール等の樹脂や、ステンレス鋼等の金属や、ジルコニア又はアルミナ等のセラミクスなどが挙げられる。ベース10と同じ材料で形成することができる。板部材92は、図10に示されるように、互いに対向する一対の主面S1,主面S2を有する。主面S1は、板ばね91の凹部に向かうと共に、第2及び第5の部分91b,91eと接触している。主面S2には、その中央部分に、窪み部92aが1つ形成されている。
【0068】
窪み部92aは、開口が矩形であり且つ内方に向かうにつれて先細りとなる四角錐状に形成されている。そのため、窪み部92aは、第2実施形態において4つの平面で構成されている。第2実施形態において、窪み部92aの開口の対角線のうち一方の対角線の方向は、レンズの光軸方向OAと略平行である。第2実施形態において、窪み部92aの開口の対角線のうち他方の対角線の方向は、レンズの光軸方向OAに対して略直交する。なお、窪み部92aは、四角錐状に代えて、四角錐台状、三角錐状、又は三角錐台状であってもよい。
【0069】
ボール部材93は、窪み部92a内に配置される。ボール部材93は、窪み部92aの各平面と点接触している。すなわち、ボール部材93と窪み部92aとは、4点で接触している。これにより、ボール部材93の回転軸RAは、図10に示されるように、レンズの光軸方向OAと直交する方向に沿って延びることとなる。ボール部材93のうち窪み部92aと接触する側とは反対側の部分は、基板94に接触する。
【0070】
基板94は、図10に示されるように、突出部32(レンズホルダ30)の側壁面のうち、ベース10の角部10c側に位置する側壁面32aに配置されている。基板94は、互いに対向する一対の主面S3,S4を有する。主面S3は、板部材92の第2主面S2と向かい合い、ボール部材93と点接触する。主面S4は、突出部32の側壁部32aに取り付けられている。基板94は、例えば、SiC、ジルコニア、又はステンレス鋼などで構成される。このように、第2実施形態では、第2の方向(側壁面32a,32bの対向方向)において、基板94、ボール部材93、板部材92及び板ばね91が側壁面32aに近い側からこの順に並んで配置されている。
【0071】
図10に示されるように、突出部32の側壁面32aとは反対側に位置する(ベース10の角部10b側に位置する)側壁面32bには、基板37を介して、第1実施形態と同様の構成を有する圧電アクチュエータユニット(圧電アクチュエータ50及びフレキシブル基板60)が設けられている。
【0072】
フレキシブル基板60のうち圧電アクチュエータ50が実装される面の裏面には、板部材70が配置されている。板部材70のうちフレキシブル基板60が実装される面の裏面には、弾性板84が配置されている。弾性板84は、弾性板84のうち板部材70が実装される面の裏面がベース10の側壁部13の内周面に当接するように、ベース10に取り付けられている。
【0073】
弾性板84は、弾性変形することにより、図10に示されるように、板部材70及びフレキシブル基板60を介して圧電アクチュエータ50に与える弾性力Eを発生する。弾性板84は、第2実施形態において、第2の方向(側壁面32a,32bの対向方向)から見て圧電アクチュエータ50よりも若干大きく、圧電アクチュエータ50の全体と重なり合っている。そのため、弾性板84は、圧電アクチュエータ50の裏面全体に対して均一に弾性力Eを付与する。弾性板84は、シリコーンゴムなどの種々の弾性材料を用いて構成することができる。このように、第2実施形態では、第2の方向(側壁面32a,32bの対向方向)において、基板37、圧電アクチュエータ50、フレキシブル基板60の第一部分65、板部材70及び弾性板84が側壁面32bに近い側からこの順に並んで配置されている。
【0074】
以上のように、第2実施形態では、付勢部材(板ばね91、板部材92及びボール部材93)が、レンズホルダ30を圧電アクチュエータ50側に回動させる方向に常に付勢力Fを与えている。このため、レンズホルダ30と圧電アクチュエータ50との当接状態が良好に保たれることとなる。そして、上記付勢部材により付勢力Fが与えられる位置とアクチュエータにより駆動力が与えられる位置とがレンズホルダ30(突出部32)において対向し、付勢部材による付勢力Fが圧電アクチュエータ50に向かっている。このため、付勢部材が圧電アクチュエータ50からレンズホルダ30への駆動力伝達経路上に位置することはない。これらの結果、圧電アクチュエータ50からの駆動力がレンズホルダ30へ効率よく伝達される。
【0075】
第2実施形態では、上述したように、付勢部材により付勢力Fが与えられる位置とアクチュエータにより駆動力が与えられる位置とがレンズホルダ30(突出部32)において対向し、付勢部材による付勢力Fが圧電アクチュエータ50に向かっているため、レンズホルダ30と圧電アクチュエータ50との当接状態を所望の状態にするために求められる付勢力Fが小さくてすむ。したがって、シャフト15に作用する負荷が軽減され、シャフト15とレンズホルダ30との間の摩擦が小さくなる。この結果、レンズホルダ30を移動させるための駆動力が少なくてすみ、レンズホルダ30を駆動するための消費電力を低減できると共に、レンズ駆動装置2の長寿命化を図ることができる。
【0076】
第2実施形態では、ベース10の角部10cに配置されたボール部材93が基板94に当接することにより、レンズホルダ30が圧電アクチュエータ50から離れる方向に揺動するのを規制している。すなわち、シャフト15が配置された角部10aから離れた角部10cに、レンズホルダ30の揺動が規制される位置が設定されることとなる。このように、レンズホルダ30の揺動が規制される位置とシャフト15とが離れることにより、レンズホルダ30のレンズの光軸方向OAでの移動位置の精度を高めることができる。
【0077】
第2実施形態では、付勢部材は、板ばね91、板部材92及びボール部材93を有し、板ばね91による押圧力が板部材92、ボール部材93及び基板94を介してレンズホルダ30(突出部32)に付勢力Fとして与えられている。これにより、レンズホルダ30に付勢力Fを与える付勢部材の構成を簡易且つ低コストにて実現することができる。また、基板94(レンズホルダ30)に当接するボール部材93が回転可能であるため、ボール部材93と基板94との間に生じる摩擦が極めて小さい。したがって、ボール部材93がレンズの光軸方向OAへの移動に対して抵抗となるのを防ぐことができる。
【0078】
第2実施形態では、シャフト15がベース10の角部10aに配置され、圧電アクチュエータ50がベース10の角部10bに配置され、付勢部材(板ばね91、板部材92及びボール部材93)がベース10の角部10cに配置される。レンズホルダ30の突出部32の側壁面32a及び側壁面32bは共にレンズホルダ30の胴部31から外方に向けて突出し、側壁面32aは角部10cに位置し、側壁面32bは角部10bに位置する。圧電アクチュエータ50により基板37を介して側壁面32bに向けて駆動力が与えられると共に、付勢部材により基板94を介して側壁面32aに向けて付勢力が与えられる。このため、デッドスペースとなるベース10の角部10a,10b,10cに、シャフト15、圧電アクチュエータ50及び付勢部材が配置される。しかも、圧電アクチュエータ50による駆動力の付与が角部10b内で行われると共に、付勢部材による付勢力の付与が角部10c内で行われる。そのため、レンズホルダ30が大型化しても、駆動力及び付勢力を付与するための部材の領域がデッドスペースにおいて確保されるので、レンズホルダ30に対する駆動力及び付勢力の付与が阻害されない。従って、レンズホルダ30の大型化と、レンズ駆動装置2の小型化とを両立させることができる。その結果、レンズホルダ30の大きさを従来と同程度に設定する場合には、小型のレンズ駆動装置2を得ることが可能となる。一方、レンズ駆動装置2の大きさを従来と同程度に設定する場合には、レンズホルダ30を大型化でき、より大きな径を有するレンズをレンズホルダ30に搭載することが可能となる。
【0079】
第2実施形態では、付勢部材を板ばね91、板部材92及びボール部材93で構成し、板ばね91による押圧力が、板部材92、ボール部材93及び基板94を介して、レンズホルダ30に付勢力Fとして与えられる。そのため、レンズホルダ30に付勢力Fを与える付勢部材の構成が簡易となり、部品点数が少なくなるので、レンズ駆動装置2を低コストで製造することができる。また、板部材92の窪み部92a内に配置されたボール部材93が回転可能であるため、ボール部材93とレンズホルダ30とが当接した際に、ボール部材93とレンズホルダ30との間に生じる摩擦が極めて小さい。従って、レンズホルダ30がレンズの光軸方向OAに移動する際にボール部材93が抵抗となるのを防ぐことができる。
【0080】
第2実施形態では、圧電アクチュエータ50と側壁部13(ベース10)との間に弾性板84が介在している。そのため、部品に誤差が生じたとしても、その誤差を弾性板84で吸収することができる。また、第2実施形態では、弾性板84が発生する弾性力Eにより、板部材70及びフレキシブル基板60を介して圧電アクチュエータ50をレンズホルダ30に向けて押しつけているので、アクチュエータ50のレンズホルダ30に対する当接状態が適切に保たれる。そのため、圧電アクチュエータ50とレンズホルダ30との位置関係にずれが生じた場合であっても、良好なチルト(レンズの光軸に対するレンズホルダ30の傾き)マージンが得られる。
【0081】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0082】
第1実施形態において、レンズホルダ30に当接して付勢力Fを与える付勢部材の構成は、圧縮コイルばねであるばね71を用いた構成に限られることなく、板ばねのほか、弾性変形可能な部材を用いた構成であってもよい。同様に、第2実施形態において、レンズホルダ30に当接して付勢力Fを与える付勢部材の構成は、板ばね91に限られることなく、弾性変形可能な他の部材を用いた構成であってもよい。
【0083】
第1実施形態において、圧電アクチュエータ50、基板73、及びボール部材74は角部10cに配置され、ばね71は角部10b又は角部10dに配置されていてもよい。ただし、この場合には、圧電アクチュエータ50により駆動力が与えられる位置がシャフト15から遠ざかることとなり、シャフト15とレンズホルダ30との間に抉りなどが生じ、レンズホルダ30の移動に対して負荷が生じる懼れがある。
【0084】
第2実施形態において、弾性板84をベース10に取り付けたが、接着剤等で弾性板84をベース10に貼り付けてもよいし、弾性板84をベース10に嵌め込んでもよいし、板部材70とベース10の側壁部13の内周面とで弾性板84を挟持してもよい。弾性板84とベース10との間に他の部材が介在してもよく、弾性板84と板部材70との間に他の部材が介在してもよい。
【0085】
第2実施形態において、弾性板84は、第2の方向から見て圧電アクチュエータ50よりも若干大きかったが、弾性板84により圧電アクチュエータ50の裏面にバランスよく弾性力を与えることができれば、弾性板84の大きさ、形状及び数は問わない。具体的には、弾性板84の大きさは、第2の方向から見て圧電アクチュエータ50と同程度かそれ以下でもよい。弾性板84の形状は、矩形状以外に、円形状や十字形状などの種々の形状であってもよい。弾性板84の数は、1つではなく、2つ以上であってもよい。弾性板84が2つ以上の場合には、各弾性板84が第2の方向から見て圧電アクチュエータ50の各角部に対応するように配置されると好ましいが、他の種々の配置を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、携帯電話などに搭載されるカメラ用レンズを駆動するレンズ駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0087】
1…レンズ駆動装置、10…ベース、10a〜10d…角部、15…シャフト、20…カバー、30…レンズホルダ、32a,32b…側壁面、50…圧電アクチュエータ、71…ばね、72…アーム部材、73…基板、74…ボール部材、84…弾性板、91…板ばね、92…板部材、92a…窪み部、93…ボール部材、E…弾性力、F…付勢力、OA…レンズの光軸方向、S1,S2…主面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するためのレンズホルダと、
前記レンズホルダをレンズの光軸方向に移動可能で且つ軸周りに揺動可能に支持するシャフトと、
前記レンズホルダを前記光軸方向に移動させるように前記レンズホルダに駆動力を与えるアクチュエータと、
前記レンズホルダを前記アクチュエータ側に回動させるように前記レンズホルダに付勢力を与える付勢部材と、を備え、
前記レンズホルダにおける前記付勢部材により付勢力が与えられる位置と前記アクチュエータにより駆動力が与えられる位置とが対向しており、前記付勢部材による付勢力が前記アクチュエータに向かっていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記レンズホルダ、前記シャフト、前記アクチュエータ、及び前記付勢部材を収容するハウジングを、更に備えており、
前記シャフトは、前記ハウジングの第一角部に配置され、
前記アクチュエータは、前記ハウジングの前記第一角部と隣り合う第二角部に配置され、
前記付勢部材は、前記ハウジングの前記第一角部と対角に位置する第三角部と前記第二角部とにわたって配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、
ばねと、
一端が前記ばねと当接しているアーム部材と、
前記アーム部材の他端と当接している基板と、
前記基板と前記レンズホルダとに当接し、前記レンズホルダ及び前記基板に対して回転可能に支持されたボール部材と、を有し、
前記ばねによる押圧力が前記アーム部材、前記基板、及び前記ボール部材を介して前記レンズホルダに前記付勢力として与えられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記レンズホルダ、前記シャフト、前記アクチュエータ、及び前記付勢部材を収容するハウジングを、更に備えており、
前記シャフトは、前記ハウジングの第一角部に配置され、
前記アクチュエータ、前記基板、及び前記ボール部材は、前記ハウジングの前記第一角部と隣り合う第二角部に配置され、
前記ばねは、前記ハウジングの前記第一角部と対角に位置する第三角部に配置され、
前記アーム部材は、前記第三角部と前記第二角部との間を延びるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記レンズホルダ、前記シャフト、前記アクチュエータ、及び前記付勢部材を収容するハウジングを、更に備えており、
前記シャフトは、前記ハウジングの第一角部に配置され、
前記アクチュエータは、前記ハウジングの前記第一角部と隣り合う第二角部に配置され、
前記付勢部材は、前記ハウジングの前記第一角部と対角に位置する第三角部に配置され、
前記レンズホルダは、
筒状の胴部と、
前記胴部から外方に向けて突出すると共に前記第二角部に位置する第1の面と、
前記胴部から外方に向けて突出し、前記第1の面と対向すると共に、前記第三角部に位置する第2の面とを有し、
前記アクチュエータにより前記第1の面に向けて前記駆動力が与えられ、
前記付勢部材により前記第2の面に向けて前記付勢力が与えられることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、
ばねと、
前記ばねと当接する第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面とを含み、前記第2主面に窪み部が形成された基体と、
前記基体の前記窪み部内に回転可能に配置されたボール部材と、を有し、
前記ばねによる押圧力が前記基体及び前記ボール部材を介して前記レンズホルダに前記付勢力として与えられていることを特徴とする請求項5に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記レンズホルダに向けて前記アクチュエータを押しつける弾性力を発生する弾性部材を更に備えることを特徴とする請求項1、5又は6に記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−212102(P2012−212102A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280333(P2011−280333)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】