説明

レンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法

【目的】本発明の目的は、毛玉の基である綿ぼこりを酵素添加水により予洗しつつ除去し、繰り返し洗浄再生されるレンタル用繊維製清掃用品の繊維への毛玉の発生を大幅に少なくする洗浄方法を開発することである。
【構成】レンタル用繊維製清掃用品を洗浄再生する洗濯工程の最初の段階で当該清掃用品に捕集された綿ぼこりを分離除去するので、洗濯工程において綿ぼこりが当該清掃用品の繊維に絡み付くことが殆んどなく、その結果、洗浄再生されたレンタル用繊維製清掃用品の繊維に付着する毛玉の発生を大幅に少なくできる。本発明者等は、セルロース分解酵素の分解力に着目して、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生工程のどの時点で、セルロース分解酵素を添加すればよいか実験を繰り返した。その結果、洗濯工程の最初の段階でセルロース分解酵素で予洗すれば、レンタル清掃用繊維製品の毛玉の発生を大幅に少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法に関し、更に詳細には、繰り返し「使用された後洗浄再生」されるレンタル用繊維製清掃用品が使用(清掃)された時に捕集保持した綿ぼこりを効果的に除去することにより、後続の洗濯工程等を経て再生された時点で、綿ぼこりが当該清掃用品に毛玉となって残存するのを防止する洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レンタル製品は様々な分野に拡大し、書籍から住宅に至るまで多数の人々に利用され社会の発展に大きく寄与している。特に、レンタルにより利用されている繊維製清掃用品、具体的にはレンタルのモップ、クロス、マットなどは、一般家庭をはじめとして、飲食店、店舗、オフィス、工場などあらゆる場面で必需品となっていて、環境衛生面で社会に大きく貢献している。
【0003】
これらのレンタル用繊維製清掃用品は、「使用された後洗浄再生され、再度使用される」という繰り返しが行われるために、容易に解決しない問題が発生することがある。例えば、木綿糸で形成されたレンタル用繊維製清掃用品は、「使用・洗浄再生」を繰り返すと木綿糸が細く収束し、外観品位が貧弱になるだけでなく、ほこりを捕集する性能が低下して行く傾向があった。他の例としては、木綿糸、化繊糸いずれの場合も、ほこりとともに捕集した毛髪が洗濯では除去しきれずにレンタル用繊維製清掃用品に残存し商品価値を下げるという問題もあった。また、化繊糸で形成されたレンタル用繊維製清掃用品の場合は、使用(清掃)時に捕集された綿ぼこりを保持されたまま洗浄再生すると、綿ぼこりが当該清掃用品の繊維に強固に絡みつき多数の毛玉が発生するという問題があった。この問題は、再生されたレンタル用繊維製清掃用品の外観品位・商品価値を低下させるだけでなく綿ぼこりの捕集性能も低下させる傾向があるため、ブラッシングによる除去や手作業よる除去などが試みられたが、ブラッシングでは当該清掃用品を傷める割には毛玉除去効率が悪く、また手作業による除去も極端に作業効率が悪いのでいずれの方法も実施できるようなものではなかった。当面の対策として、毛玉を当該清掃用品と同じような色に染めて見た目に毛玉をわからなくするという方法がとられている。しかしながら、毛玉を染めてもすべてが見た目にわからなくなるとは限らず、中には毛玉が目立つものがあり、そのようなものは商品価値が無く廃棄となっている。
【0004】
このような状況下で、最近、レンタル用繊維製清掃用品の繊維糸として化繊糸が使用されることが多くなってきている。それは、マンションをはじめとする居住空間の密閉度の上昇、空調設備の設置の増加或いは職業をもつ主婦の増加による昼間留守宅の増加などに伴い、玄関や窓などの開閉回数が減少し、外部から室内へ侵入する土砂ぼこりが少なくなる一方、室内で発生する綿ぼこりも外部へ出て行きにくくなり、その結果として、室内のほこりは綿ぼこりが量、比率ともに高くなってきたことによるものである。それに、従来レンタル用繊維製清掃用品の中心素材であった木綿糸と比較して、化繊糸の方が綿ぼこりの捕集性能に優れているという特性による。さらには強度面でも木綿糸より優れているので、繰り返し使用できる回数の増加が見込めるからである。このような理由で最近、レンタル用繊維製清掃用品の繊維糸として化繊糸が使用されることが多くなってきているのであるが、前述の化繊糸の毛玉の問題に関しては、本来的には毛玉は除去されるべきであるが、技術的に好適な除去方法が開発されていないために、不本意ではあるが現在に至るまで毛玉を染色することにより対処されてきているのである。
【0005】
特許文献1は、モップのパイルに残留した毛髪について繊維素材を傷めることなく除去する技術であり、そのために毛髪処理剤を使用している。
【特許文献1】特許第2628010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生時に当該清掃用品の繊維に毛玉が残存するのを防止するために、素材を傷めず人手のかからない毛玉の除去方法または毛玉形成の防止方法を提供することである。
【0007】
図4は、レンタル用繊維製清掃用品の基本洗浄再生工程図である。使用済みのレンタル用繊維製清掃用品を大型の工業用洗濯機に投入(s31)し、当該清掃用品の繊維に捕集保持された土砂ぼこりや綿ぼこりなどを洗剤等を用いて洗い(s32)、洗った当該清掃用品を濯い(s33)で洗濯を完了する。洗濯を完了した繊維製清掃用品は染色工程(s34)で染色され、次いで吸着剤加工工程(s35)でほこりを捕集保持するための吸着剤(油剤)が含浸され、脱水工程(s36)、乾燥工程(s37)を経てレンタル用繊維製清掃用品(s38)として再生される。
【0008】
レンタル用繊維製清掃用品は、通常、上記基本洗浄再生工程を経て製品として再生される。ただし、ナイロン(化繊)糸から成るレンタル用繊維製清掃用品の場合は、吸着剤加工工程(s35)に続いて防臭処理がなされた後、脱水工程(s36)、乾燥工程(s37)を経てレンタル用繊維製清掃用品(s38)として再生される。
【0009】
化繊糸から成るレンタル清掃用繊維製品の洗浄再生品を観察すると、微細な土砂などのほこりは除去されているが、綿ぼこりなどの繊維屑が当該清掃用品の繊維に多数の毛玉となって絡み付いている。この毛玉の除去には、当該清掃用品自体を傷めるため強力なブラッシングなどの機械的方法によって除去することができず、手作業的な方法でしか取り除く術が無かった。しかしながら、この方法も、多数の人力と時間が必要で作業的にもコスト的にも実施できるようなものではなかった。従って、毛玉を除去する代わりに毛玉を目立たなくするような方法、即ち毛玉を当該清掃用品と類似の色に染色し外観上毛玉が目立たないようにすることが検討され、実施されてきた。しかしながら、この方法も、毛玉自体が残存しているために本来的には問題であるということと、重量的に極微量の毛玉を当該清掃用品自体を染色する規模で染色しなければならないため毛玉に対しては大過剰の染料が必要で、多大なコストを要するものであった。
【0010】
また、前記特許文献1に開示されている洗浄方法でも、レンタル用繊維製清掃用品の繊維に捕集保持された土砂ぼこりや毛髪は除去できるが、化繊糸の場合に繊維に絡み付いた毛玉を除去することは不可能であり、毛玉に関して一切触れられてもいない。本発明者等は毛玉の発生原因について鋭意研究した結果、毛玉の基になるのは使用(清掃)時に捕集した綿ぼこりであり、それは木綿繊維が主であり、洗濯工程で当該清掃用品とともに攪拌される時に当該清掃用品の繊維に絡み付いて毛玉化することを突き止め、使用(清掃)後の当該清掃用品に保持されている綿ぼこりを洗濯工程の最初の段階で効果的に除去してやれば、当該清掃用品の繊維に毛玉が発生するのを大幅に少なくできることを発見して本発明を完成させたものである。
【0011】
従って、本発明の目的は、毛玉の基である綿ぼこりを洗濯工程の最初の段階でセルロース分解酵素添加水で除去することにより、繰り返し洗浄再生されるレンタル用繊維製清掃用品に付着する毛玉を大幅に少なくする洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、化繊糸で形成されるレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法において、セルロース分解酵素を添加した予洗水で前記レンタル清掃用繊維製品を予洗してレンタル清掃用繊維製品に付着した綿ぼこりを分離除去する綿ぼこり除去工程と、この綿ぼこり除去工程を経た前記レンタル用繊維製清掃用品を洗濯する洗濯工程を少なくとも有するレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法である。
【0013】
本発明の第2の形態は、化繊糸がナイロン糸であるレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法である。
【0014】
本発明の第3の形態は、セルロース分解酵素が酸性セルラーゼであるレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法である。
【0015】
本発明の第4の形態は、予洗水の温度が20〜70℃で、pHが3〜7であるレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法である。
【0016】
本発明の第5の形態は、レンタル用繊維製清掃用品がモップ、クロス又はマットであるレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の形態によれば、レンタル用繊維製清掃用具を洗浄再生するための洗濯工程の最初の段階で当該清掃用品に捕集・保持された綿ぼこりが当該清掃用品から効果的に分離除去され、洗浄再生されたレンタル用繊維製清掃用品の繊維に毛玉となって付着するのをほとんど無くすことができる。本発明では、セルロース分解酵素を添加した予洗水で予洗することによりレンタル用繊維製清掃用品に捕集保持された綿ぼこりを分離除去している。一般に、セルロース分解酵素は天然繊維(木綿など)を分解することが知られている。本発明者等は、綿ぼこりの主たる繊維は木綿であることを確認し、従来から実施している洗浄再生工程の中で浴が酸性側となる染色工程または吸着剤加工工程でそれぞれ10分程度の限られた時間内でセルロース分解酵素による分解を試みた。ここでの酵素への期待作用は、時間内で綿ぼこりを分解して毛玉を発生させないというものであった。しかしながら、10分程度の処理では、綿ぼこりをほとんど分解することはできず、毛玉の発生を防ぐことができなかった。そうした中で、予期せぬ現象を確認するに至った。すなわち、洗浄再生の最初の段階でセルロース分解酵素を添加し適宜pH、温度を調整して綿ぼこりが捕集保持された当該清掃用品を予洗した。すると、多量の綿ぼこりや土砂ぼこり或いはほこり捕集用吸着剤などが混在する中で高々10分間というほとんど綿ぼこりが分解しない短い時間にもかかわらず、後続する洗濯再生工程を経ても綿ぼこりが繊維に絡むことがなく、洗浄再生された繊維製品への毛玉の発生を大幅に抑制できることが判明した。ここでの予期せぬ発見とは、洗浄再生の最初の段階で酵素を添加した用水で予洗を行うと毛玉の発生は起こらず、酵素水を添加しない用水で予洗すれば毛玉が発生するという違いが生じたことである。綿ぼこりが毛玉となる前に酵素添加水で予洗を行うと綿ぼこりが十分に分解されないにもかかわらず毛玉の発生が防止されるのであり、逆に、酵素添加水で予洗しなければ綿ぼこりは毛玉となってしまい、一旦毛玉になると、その後の工程で酵素を添加しても短時間の予洗や予洗条件では到底毛玉の除去は不可能なのである。
一般的に繊維製品の毛玉は、着用時などの摩擦などにより繊維製品自身から出てきた繊維が製品の表面で毛玉となったものを指し「ピリング」と呼んでいるが、本発明において毛玉として対象としているものは、摩擦などにより当該清掃用品自身から発生してきて毛玉となったものではなく、使用(清掃)時に当該清掃用品に捕集保持された綿ぼこりが毛玉となったものである。従って、今回対象とする毛玉は、一般に言う繊維製品のピリングとは、発生源、生成過程とは全く異った別のものであり、その発生を防ぐ方法も全く別で新規なものである。また、使用する酵素は綿ぼこりの主成分である木綿のみに対する何らかの作用効果であり、本発明のレンタル用繊維製清掃用品の繊維素材である化繊に対しては作用せず悪影響を与えないという点も非常に特徴的で新規な方法である。
また、本発明のレンタル用繊維製清掃用品の繊維素材である化繊糸は、水切れがよいために洗濯後の乾燥性に優れ、また強度面での耐久性にも優れているので、繰り返し洗浄再生するレンタル用繊維製清掃用品の繊維糸として好適である。また、熱可塑性にも優れているので繊維の太さ、断面形状、捲縮等を変えることが可能で、レンタル清掃用繊維製品のほこり捕集性能を高めることも検討できる。更に、各種の化繊糸が供給されているので多様なレンタル用繊維製清掃用品を検討することもできる。
【0018】
本発明の第2の形態によれば、本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の繊維糸がナイロン糸であるから、軽くて強いだけでなく弾性、熱可塑性やバルキー性にも富み染色性もよい。また、洗濯後の水切れがよく耐久性に優れているので、繰り返し洗濯再生するレンタル用繊維製清掃用品の繊維糸として好適であり、熱可塑性にも優れているので繊維の形状を容易に変形でき、レンタル用繊維製清掃用品のほこり捕集性を高めることができる。化繊糸にはナイロン糸の他にアクリル糸、ポリエステル糸等があるが、ナイロン糸はこれらと比較して親水性が高く洗浄性が優れており、繰り返し洗浄再生するレンタル用繊維製清掃用品の素材として有利である。更に、各種のナイロン糸が供給されているので使用用途に応じた多様なレンタル用繊維製清掃用品を提供することができる利点もある。
【0019】
本発明の第3の形態によれば、綿ぼこりを分離除去するために添加されるセルロース分解酵素が酸性セルラーゼであるので、入手面で比較的容易であり、また、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生には少量でも十分効果が認められるよう設定できる。従って、従来の洗浄再生後の毛玉処理にかかる費用と同等で、しかも労力をかけることなく毛玉を無くすことができるのである。また、酸性セルラーゼは弱酸性で作用させるので取り扱いが容易であり、その排水もレンタル用繊維製清掃用品の洗濯排水(アルカリ性)に混合することにより酸が消費されアルカリの中和に役立つとともに酵素活性も容易に不活化されるという利点がある。
【0020】
本発明の第4の形態によれば、セルロース分解酵素が添加された予洗水は、温度20〜70℃で、pHが3〜7という範囲で酵素活性があり、この範囲で使用するセルロース分解酵素の働きが最大限に発揮される条件を探索すれば、最少限の酵素使用量で綿ぼこりを効率よく分離除去することができる。このようにしてレンタル用繊維製清掃用品から綿ぼこりを分離除去し毛玉を無くすと、当該清掃用品の綿ぼこり捕集保持性能は低下せず、外観品位・商品価値の低下による廃棄が無くなり強度に見合った使用回数が達成されるため、資源の有効利用という点で非常に効果的である。
【0021】
本発明の第5の形態によれば、レンタル用繊維製清掃用品がモップ、クロス又はマットの場合であるので、これらの洗浄再生時には毛玉が発生し、特にモップの場合にパイルに多数の毛玉が絡み合い、多数の毛玉が発生し綿ぼこり捕集性能を低下させるとともに外観品位・商品価値も低下させてきた。この多数の毛玉を人為的に除去するのは多数の人手と時間が必要で、実質上実施は困難であった。そのために毛玉をモップと類似の色に染色して毛玉を目立たなくすることで当面の対応策としてきたが、この方法にしても相応の費用が必要であった。従って、本発明の洗浄方法により多数の毛玉を容易に除去できるので、多数の人手と時間を削減でき、従来、毛玉をモップと類似の色に染色して毛玉を目立たなくする費用も削減できる。また、クロスやマットの場合もモップほどではないが、毛玉が多く発生する場合があり、このような場合は、可能な限りハサミやガムテープを使って毛玉を除去してきた。本発明により使用(清掃)時に繊維に捕集保持された綿ぼこりを除去すれば、洗浄再生後のモップ、クロス又はマットの毛玉をほぼ無くすことができ、余計な染色やハサミ、ガムテープを使った毛玉の除去が不要となる。その結果、洗浄・再生工程での作業効率を高め、モップ、クロス、マットなどのレンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生費用を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法における通常工程図である。大型洗濯機に投入されたレンタル用繊維製清掃用品は、最初に、使用(清掃)時に当該清掃用品に捕集保持された綿ぼこりが酵素含有予洗水により繊維から分離除去(s1)される。綿ぼこりが分離除去された当該清掃用品は洗剤等により洗われ(s2)、土砂ぼこりや毛髪等が除去される。この洗われた当該清掃用品を濯いで(s3)洗濯は完了する。洗濯を完了した当該清掃用品は染色工程(s4)で染色され、吸着剤加工工程(s5)でほこり捕集保持のための吸着剤(油剤)が含浸される。吸着剤加工工程を終えた当該清掃用品は防臭工程(s6)、脱水工程(s7)および乾燥工程(s8)を経て洗浄再生は完了する。洗浄再生を完了した当該清掃用品はレンタル用繊維製清掃用品(s9)として再使用される。ただし、防臭工程は、化繊糸がナイロン66糸の場合にのみ実施されるのが通例である。
【0024】
図2は、本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法における簡易工程図である。レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生は、種類によっては通常工程ではなく簡易工程で行われる。家庭で使用されたマットの場合などが有効であるが、簡易工程で行われる洗浄再生は、最初に、清掃後に当該清掃用品に捕集保持された綿ぼこりを当該清掃用品の繊維から分離除去(s11)し、綿ぼこりが除去された当該清掃用品を洗剤で洗い(s12)、洗った清掃用品を濯い(s13)で洗浄は完了する。洗浄を完了した当該清掃用品は、脱水工程(s14)と乾燥工程(s15)を経てレンタル用繊維製清掃用品(s16)として再生される。
【0025】
図3は、本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品に付着した綿ぼこりを分離し除去する綿ぼこり除去工程の詳細図である。使用後の当該清掃用品を洗浄再生するために洗濯機へ投入、攪拌(s21)を開始し、温水と常温水を注入(s22)して適温適量とした後、予め決定しておいた量のpH調整剤を添加しpHが所定の範囲内であることを確認する(s23)。所定の範囲内でない場合は、範囲内になるまで「調整剤の添加・pHの確認」を繰り返す。pHの確認は正確に測定できれるものであれば市販のpH試験紙でも測定機器でもよい。次いで酸性セルラーゼを添加(s24)した後、pHが所定の範囲であることを確認する。所定の範囲内でない場合は、上記と同じように調整する(s25)。この酸性セルラーゼが添加された予洗水でレンタル用繊維製清掃用品を予洗し、当該清掃用品に捕集保持された綿ぼこりを当該清掃用品より分離除去(s26)し、次いで排水(s27)する。綿ぼこりが除去されたレンタル清掃用繊維製品は洗濯再生工程に移され洗濯される。
【0026】
本発明者等は、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生工程の中で酸性側である染色工程または吸着剤加工工程で綿ぼこりの分離除去を検討したが、綿ぼこりの発生を防止することはできなかった。その後、実験を繰り返した結果、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生工程における最初の段階でセルロース分解酵素添加水で予洗を行えば、当該清掃用品に捕集保持された綿ぼこりを効果的に除去でき、結果的に洗浄再生工程中に綿ぼこりが当該清掃用品の繊維に絡むことなく毛玉の発生を大幅に少なくできることを発見し本発明を完成させたものである。
【0027】
本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の繊維糸には化繊糸が用いられる。化繊糸は強度、耐水性、耐光性、耐薬品性などの点で木綿糸より優れ、熱可塑性を有しているので捲縮等の加工が行い易く、脱水性、乾燥性が良好である点がある。化繊糸はナイロン糸、アクリル糸、ポリエステル糸等が一般的であるが、それぞれ特有の性質を有している。例えば、ナイロン糸は、軽くて強いうえに弾性と熱可塑性に富み染色性もよい。また、親水性もあり洗浄性が比較的良好である。アクリル糸は、耐熱性に劣り乾燥工程での変形の危険性がある。ポリエステル糸は、強くて腰があり熱可塑性に富むが、親水性が極めて低く洗浄性に劣る。従って、本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の繊維糸としてはナイロン糸が最も好ましいといえる。
【0028】
本発明に用いられるセルロース分解酵素としてはセルラーゼがある。セルラーゼは天然繊維を分解することが一般に知られており、本発明者等はレンタル用繊維製清掃用品に残存する毛玉はほとんどが木綿繊維であるということを確認し、この毛玉を除去するためにセルラーゼの特質に注目した。本発明の骨子は、レンタル用繊維製清掃用品の洗浄再生工程の最初の段階で綿ぼこり分離・除去するためにセルラーゼを添加すると、当該清掃用品に絡み付いた毛玉の基である綿ぼこりを当該清掃用品に絡まらず効果的に除去される結果、洗浄再生後の毛玉の発生を抑制することにある。
【0029】
一般に、セルラーゼには酸性セルラーゼと中性セルラーゼがあるが、本発明には酸性セルラーゼを用いるのが好ましい。セルラーゼは複合酵素で、セルロースの非結晶成分をランダムに加水分解するendo-セルラーゼとセルロース鎖の非還元性末端からセルビオースを単位に加水分解するexo-セルラーゼとセルビオースセロオリゴ糖に作用しグルコースを生成するグルコヒドラーゼにより構成されている。本発明には綿、紙などの天然セルロースによく作用するTrichoderma起源のセルラーゼが好ましい。
【0030】
本発明における酸性セルラーゼの使用量としては、必ずしも厳密な制限はないが一応の目安として、レンタル用繊維製清掃用品100kgに対して酵素製剤として0.4〜1.2kgが望ましい。
【0031】
本発明における酸性セルラーゼが添加された予洗水は、温度が高くなれば酵素の活性も高まるが、70℃以上では変性して酵素としての活性が失われる。普通は60℃程度が最適温度である。また、酵素は特定の水素イオン濃度でよく働き、本発明における酸性セルラーゼはpH5.5前後が最も適している。この予洗水で使用(清掃)後のレンタル用繊維製清掃用品を予洗して当該清掃用品に捕集された綿ぼこりを分離し除去する。10分間程度の短時間で効果が発揮される。
【0032】
次に、綿ぼこりが分離除去されたレンタル用繊維製清掃用品は洗濯に移され洗濯される。洗濯には水道水や工業用水或いは地下水などが用水として使用される。
【0033】
洗いは、通常、界面活性剤や助剤或いは漂白剤などを添加して行われ、用水はレンタル用繊維製清掃用品1kgに対し3〜8kg使用される。
【0034】
洗い後濯ぎ工程を経て染色工程及び吸着剤加工工程に移る。染色工程ではレンタル用繊維製清掃用品の繊維糸がナイロン糸の場合、通常酸性染料が使用される。染料は、当該清掃用品1kgに対し0.1g程度使用する。また、ほこり捕集保持のための吸着剤は、人体に対し安全性の高い鉱物系油を主成分とし、それに加工性や洗浄性の向上を目的に活性剤、ほこりとともに捕集されたカビや雑菌等のバクテリアの増殖抑制を目的に防カビ剤や抗菌剤、などが配合されている。吸着剤は、当該清掃用品1kgに対し0.15kg程度使用する。吸着剤加工工程を終えたレンタル清掃用繊維製品は、防臭工程、脱水工程、乾燥工程を経て製品とされる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
以下のように実施例を行った。
一般家庭で4週間使用されたナイロン糸から成る床用タイプのモップ(繊維部重量約150g)60枚を、10kg負荷のドラム式洗濯機により、モップに捕集保持された綿ぼこり除去を実施例1として行った。比較のために綿ぼこり除去工程を行わない場合(従来どおり基本洗浄再生工程(図4)で洗浄再生)を比較例1とし、比較例1の染色工程で酵素を添加して行った場合を比較例2とした。また、実施例1で酵素を含有せずに行った場合を比較例3として、比較例3で洗浄再生されたモップを実施例1の方法で再度洗浄再生した場合を比較例4とした。
使用した酵素はGC220(Genencor International社製)の0.15%水溶液で、pH調整のために実施例1、2では酢酸(pH4)を使用し、実施例3〜5では10mMリン酸水溶液(pH5)を使用した。
実施例及び比較例の各々の場合のおける洗浄再生後のモップを各々任意に5枚づつ採取し、毛玉発生状態を評価し判定した。毛玉発生状態の評価および判定は目視で次の4段階で行った。評価1は毛玉なし、評価2はわずかに毛玉あり、評価3は毛玉やや目立つ、評価4は毛玉かなり目立つである。この中で評価1、2を合格とし、評価3、4を不合格とした。
【0037】
[実施例1 綿ぼこり除去を酵素添加した水で洗浄再生の最初に予洗した場合]
【表1】

【0038】
[比較例1 綿ぼこり除去工程を行わない場合(従来どおり)]
【表2】

【0039】
[比較例2 綿ぼこり除去を染色工程で行った場合]
【表3】

【0040】
[比較例3 実施例1で酵素を添加しない場合
(綿ぼこり除去を酵素添加していない水により予洗で行った場合)]
【表4】

【0041】
[比較例4 比較例3で洗浄再生したものに実施例1を追加実施した場合]
【表5】

【0042】
実施例1は本発明の一例であるが、洗浄再生の最初の段階で酵素添加水により予洗を行ったもので、毛玉の発生はほぼ皆無であった。比較例1と比較例3は酵素を添加しない場合で、比較例1は従来工程なので多くの毛玉が発生した。比較例2は従来工程の染色工程で酵素を添加したが、ほとんど効果なくこの場合も多くの毛玉が発生した。比較例3は酵素を添加しなかったこと以外は実施例1と全く同じ工程であったが、多くの毛玉が発生した。比較例4は比較例3で発生した毛玉を除去すべく実施例1を追加実施したが、毛玉除去にはほとんど効果が認められなかった。
以上より、実施例1における洗浄再生工程での最初の段階で、酵素添加水により予洗を行った場合のみ毛玉防止に効果的であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法は、当該清掃用品へ綿ぼこりが絡み付くのを妨げ毛玉の発生を抑制できるだけでなく、天然繊維からなる繊維屑の絡み合いも減少できるので、清掃用品分野だけでなく他分野にも利用できる。例えば、衣料関係に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法における通常工程図である。
【図2】本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法における簡易工程図である。
【図3】本発明に係るレンタル用繊維製清掃用品に付着した綿ぼこりを分離除去する綿ぼこり除去工程の詳細図である。
【図4】レンタル用繊維製清掃用品の基本洗浄再生工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化繊糸で形成されるレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法において、捕集した綿ぼこり等を保持した状態のレンタル用繊維製清掃用品をセルロース分解酵素を添加した予洗水で予洗することにより綿ぼこりをレンタル用繊維製清掃用品から分離除去する綿ぼこり除去工程と、この綿ぼこり除去工程を経たレンタル用繊維製清掃用品を洗濯する洗濯工程とを少なくとも有することを特徴とするレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法。
【請求項2】
前記化繊糸がナイロン糸である請求項1に記載のレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法。
【請求項3】
前記セルロース分解酵素が酸性セルラーゼである請求項1又は2に記載のレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法。
【請求項4】
前記予洗水の温度が20〜70℃で、pHが3〜7である請求項1〜3のいずれかに記載のレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法。
【請求項5】
前記レンタル用繊維製清掃用品がモップ、クロス又はマットである請求項1〜4のいずれかに記載のレンタル用繊維製清掃用品の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−334148(P2006−334148A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162564(P2005−162564)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】