説明

レンチウイルスベクターおよびその使用

本発明は、ウイルス粒子および/または真核細胞の表面上にて融合ポリペプチドをコードする核酸を発現し得るポリヌクレオチドベクターを含む構築物に関する。本発明の方法は、融合タンパク質をコードする核酸配列を含有するウイルス提示ベクターを使用する。この融合タンパク質は、リーダーペプチド、候補ポリペプチド、免疫グロブリン分子の一部、および膜貫通部分を含有する。必要に応じて、この融合タンパク質はさらに、候補ポリペプチドの発現をウイルス粒子表面(あるいはエンベロープ、env)上へ向ける、エンベロープ組み込みシグナルを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ウイルス粒子および/または哺乳動物細胞の表面上における候補ポリペプチドの発現を提供する組成物、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
抗体ライブラリは、目的の抗体の同定、および新規の抗体−抗原複合体のスクリーニングに有用である。例えば、Mehta I、およびMehta II単鎖抗体ライブラリは、270億もの非免疫性ヒト抗体を包含する。これまでこのようなライブラリは、ファージディスプレイを用いてスクリーニングされていた。抗体表示法をファージ提示から哺乳動物提示へ適応させるには、新規のベクター送達系が必要となる。
【0003】
外来核酸を送達するのに用いられてきたベクターとしては、DNAウイルスベクターおよびRNAウイルスベクターの双方が挙げられる。例えば、DNAベクターとしては、オルトポックスベクターまたはアビポックスベクターのような水痘ベクター(例えば米国特許第5,656,465号を参照のこと)、単純疱疹ウイルスI(HSV)ベクター等のヘルペスウイルスベクター(Geller,A.I.ら、J.Neurochem.64:487(1995);Lim,F.ら、DNA Cloning:Mammalian Systems,D.Glover編、Oxford Univ.Press,Oxford,England(1995);Geller,A.I.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.90:7603(1993);アデノウイルスベクター(Legal Lasalleら、Sci.259−988(1993);Davidsonら、Nat.Genet.3:219(1993);Yangら、J.Virol.,69:2004(1995));およびアデノ関連ウイルスベクター(Kaplitt,M.G., ら、Nat.Genet.8:148(1994)を参照のこと)が挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)から得られるベクターが含まれる(米国特許第5,665,577号を参照のこと)。
【0004】
様々なベクターが、自身が特定の利用法に所望されるものとなる特性を有している。例えば、レトロウイルスベクターは、宿主に感染させるために使用することができ、且つ高い効率で宿主細胞内に組み込まれる遺伝物質を有している。そのようなベクターの例は、修飾モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)であり、元々は、レトロウイルスゲノムの全体がパッケージングされるのを防ぐために削除されたパッケージング配列を有していた。しかしながら、このレトロウイルスは休止細胞には形質導入しない。加えて、代表的に、特異的なレセプターを介して細胞に入るレトロウイルスが多いことから、その特異的なレセプターが細胞上に存在しないかまたは十分な数では存在しない場合、感染は不可能となるかまたは効率が悪い。また、組換えMMLVを産生する細胞株から野生型ウイルスが発生した後(すなわち、復帰変異)には、安全性の問題もまた生じる。
【0005】
アデノウイルス由来のベクターは、広範な細胞に感染することができる。しかしながら、転移された遺伝物質は組み込まれない。故に、あらゆる発現あるいはスクリーニングの操作は、転移された遺伝物質がエピソーム性であるときに限られる。したがって、比較的短い期間にしか研究を行うことができない。
【0006】
最近、霊長類レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV))を基礎とするもののような、レンチウイルスベクターに焦点が当てられている。偽型ベクター(すなわち、別種由来のエンベロープタンパク質が使用されるベクター)を使用することにより、感染させる細胞の種類に基づいて特定のエンベロープタンパク質を選択することによって、広範囲な細胞種に感染させる際に生じる問題を克服することができる。加えて、HIVのようなレンチウイルスにおいて見られる複雑な遺伝子スプライシング様式の観点から、HIVコアのようなレンチウイルスコアを有する多価ベクター(例えば、多数の遺伝子を発現するもベクター)が、目的の核酸をより効率的に発現することが期待される。
【0007】
大規模な哺乳動物への形質移入を実行するための、霊長類レンチウイルス(例えば、HIVおよびSIV)を基礎とするもののようなレンチウイルスベクターの使用により、レトロウイルスベクターに勝るいくつかの利点が得られる。抗体をコードする遺伝子を含むレンチウイルスベクターは、インビボおよびインビトロにて、静止期細胞および増殖期細胞の双方に感染することができる(非特許文献1;非特許文献2を参照のこと)。加えて、レンチウイルスベクターによって異種由来のペプチドの構成的発現または誘導発現が可能であり、それによって、培養物中および動物体内での抗体の産生が提供される。
【0008】
近年、代表的にモノクローナル抗体またはペプチドから構成される、大規模ライブラリの開発に注意が向けられている。例えば、抗原結合抗体フラグメントが、線状ファージの表面上にて発現されており(非特許文献3)、ファージディスプレイライブラリと呼ばれる、例えば10個以上の抗体のような大型ライブラリを産生するのに使用されている。ファージディスプレイライブラリでは、FdあるいはFv領域のカルボキシル末端がファージのコートタンパク質のフラグメントに繋ぎとめられ、これによって、例えばFabフラグメントをそのファージの表面上に固定する。抗体提示系は、E.coli(非特許文献4)、酵母(非特許文献5)およびSf9昆虫細胞のバキュロウイルス感染のような、非哺乳動物細胞において記載されている。ファージまたは非哺乳動物細胞の表面上にて抗体を発現させることができるという利点にも関わらず、発現される抗体は、その結合活性を完全には保持していない可能性がしばしばあることが認識されている(非特許文献6;非特許文献7)。
【非特許文献1】Reiserら、PNAS(1996)93:15266−15271
【非特許文献2】Naldiniら、Science(1996)272:263−267
【非特許文献3】G.P.Smith,Science(1985)228:1315
【非特許文献4】Daughertyら、Protein Eng 1999,12:613−621
【非特許文献5】Shustaら、Nat Biotechnol 2000,18:754−759
【非特許文献6】Choeら、Cell 2003,114;161−170
【非特許文献7】Huangら、PNAS 2004,101:2706−2711
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(本発明の要旨)
本発明は、抗体またはそのフラグメントのような候補ポリペプチドの、哺乳動物細胞またはウイルス粒子の表面上での提示を提供する組成物および方法の発見に、一部基づいている。
【0010】
本発明の方法は、融合タンパク質をコードする核酸配列を含有するウイルス提示ベクターを使用する。この融合タンパク質は、リーダーペプチド、候補ポリペプチド、免疫グロブリン分子の一部、および膜貫通部分を含有する。必要に応じて、この融合タンパク質はさらに、候補ポリペプチドの発現をウイルス粒子表面(あるいはエンベロープ、env)上へ向ける、エンベロープ組み込みシグナルを含有する。
【0011】
適切な候補ポリペプチドとしては、モノクローナル抗体可変領域、単鎖抗体、ドメイン抗体、二重特異性抗体、あるいはFab抗体が挙げられるが、これらに限定されない。候補ポリペプチドは、ヒト単鎖抗体ライブラリ(例えばMehtaIあるいはMehtaIIライブラリ等)、天然ペプチドライブラリ、あるいはランダムペプチドライブラリのようなライブラリに由来し得る。
【0012】
免疫グロブリン分子の一部は、Ig分子の定常領域部分またはその機能的フラグメントを含有する。例えば、本発明の免疫グロブリン分子は、IgG分子のヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含有し得る。
【0013】
膜貫通部分としては、ウイルス膜貫通部分または哺乳動物膜貫通部分が挙げられる。例えば、膜貫通部分は、レンチウイルスgp41、CD28、CD8またはIgM膜貫通部分あるいはその機能的フラグメントである。
【0014】
融合タンパク質は、構成性プロモーターあるいは誘導性プロモーターに作動可能に連結されている。構成性プロモーターとしては、CMV、SV40、またはCDK9が挙げられる。誘導性プロモーターとしては、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター、アルコール誘導性プロモーター、ステロイド誘導性プロモーター、金属誘導性プロモーター、光誘導性プロモーター、または温度誘導性プロモーターが挙げられる。
【0015】
種々の局面において、ウイルス提示ベクターは、選択マーカーまたは毒素のような一つ以上のさらなる核酸配列を含有する。選択マーカーとしては、例えば、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、フェレドキシンIVタンパク質、ルシフェラーゼファミリーのメンバー、またはエクオリンファミリーのメンバーが挙げられる。
【0016】
ウイルス提示ベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)から得られるベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
パッケージング細胞が、融合タンパク質をコードする核酸配列を含有する1つ以上のウイルス粒子を産生するような条件下で、パッケージング細胞と、融合タンパク質をコードする核酸配列を含有するウイルス提示ベクターとを接触させることによって、候補ポリペプチドが哺乳動物細胞の表面上に提示される。必要に応じて、この候補ポリペプチドは、ウイルス粒子の表面上で発現される。哺乳動物細胞の表面上で融合タンパク質が提示されるよう、融合タンパク質が哺乳動物細胞内で発現するのに十分な条件下で、ウイルス粒子と哺乳動物提示細胞とを接触させる。
【0018】
パッケージング細胞は、例えばgag、pol、tat、および/またはrevのようなウイルス構成遺伝子を1つ以上含有するヘルパーベクター、ならびにenv遺伝子(例えば、プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結された機能性エンベロープタンパク質をコードする水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質遺伝子)を含有するエンベロープベクターを含み得る。
【0019】
パッケージング細胞としては、例えば、BHK、VERO、HT1080、293、293T、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/clone8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(例えば、SB20細胞)、およびCEMX174細胞が挙げられる。哺乳動物細胞としては、例えば、ラモス−バーキットリンパ腫細胞のようなヒトB細胞株が挙げられる。他の実施形態では、細胞は、BHK、VERO、HT1080、293、293T、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/clone8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(例えばSB20細胞)、およびCEMX174細胞である。
【0020】
標的抗原に結合する候補ペプチドは、哺乳動物提示細胞一つ一つが細胞表面上に提示される単一種の候補ポリペプチドを産生するような条件下で、ウイルス粒子と1つ以上の哺乳動物提示細胞とを接触させることによって同定される。その哺乳動物細胞の表面上に1種類の候補ポリペプチドを提示する哺乳動物細胞を、候補ポリペプチドを発現しない哺乳動物細胞から単離する(すなわち、分別する)。分別された哺乳動物細胞を標的抗原に接触させて、標的抗原に結合する細胞を選別する。この分別工程および抗原結合工程は、1回以上繰り返される。本発明の様々な局面では、この哺乳動物細胞を漸減する濃度の標的抗原に接触させ、それによって標的抗原に結合する候補ポリペプチドを濃縮して親和性成熟させる。
【0021】
哺乳動物提示細胞は、さらに、クラゲAequoria Victoria由来のエクオリンタンパク質のような、カルシウム感受性生物発光タンパク質をコードする核酸配列をさらに含有し得る。本発明の実施形態において、この融合タンパク質は、標的抗原と結合したときに細胞内カルシウムを上昇させ、これによってエクオリンを発光させる(Riderら、2003 Science 301:213−15を参照のこと)。細胞内カルシウムの上昇を促すため、免疫グロブリンレセプター(例えば免疫グロブリンIgMレセプター)の膜貫通領域および細胞内領域が含まれる。
【0022】
可溶性候補ポリペプチドは、膜貫通部分をloxP部位に隣接させて、ウイルス提示ベクター内に誘導性プロモーターに作動可能に連結させたcreリコンビナーゼをコードする第2核酸配列を挿入することによって作製される。例示的なloxP部位としては、ポリペプチドITSYSIHYTKL(配列番号13)として発現される、ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTA(配列番号12)が挙げられる。
【0023】
本発明はさらに、本発明の任意のウイルス提示ベクター;機能性エンベロープタンパク質をコードする、プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結されたenv遺伝子を含むエンベロープベクター;ならびに1つ以上のウイルス構造遺伝子を含むヘルパーベクター、を含むベクター系を提供する。必要に応じて、このベクター系は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されたcreリコンビナーゼポリペプチドをコードする核酸配列を含むcreベクターを含み得る。
【0024】
本発明はまた、リーダーペプチド、候補ポリペプチド、免疫グロブリン分子の一部、およびloxP部位に隣接した膜貫通部分を含有する融合タンパク質をコードする核酸、毒素をコードする核酸、creリコンビナーゼポリペプチドをコードする配列、侵入部分をコードする核酸を含有する、ウイルス標的ベクターを提供する。侵入部分は、融合活性を有するウイルスエンベロープタンパク質である。好ましくは、この侵入部分は結合活性を有さない。例えば、この侵入部分は、結合能欠損型インフルエンザ血球凝集素タンパク質またはそのフラグメント、あるいはVSV−Gタンパク質またはそのフラグメントである。必要に応じて、ウイルス標的ベクターは、選択マーカーをコードする核酸配列を含有し得る。
【0025】
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似または等価な方法または物質が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適した方法および物質が以下に記載される。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、その全体が参考として援用される。対立する場合は、定義も含めて本明細書が優先される。さらに、物質、方法および実施例は単なる例示であり、限定することを意図しない。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明と特許請求の範囲から明白となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ウイルス粒子(即ちビリオン)、または真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)の表面上で候補ポリペプチドを提示させるための方法および組成物を提供する。本発明の方法および組成物は、候補ポリペプチドを含有する融合タンパク質をコードする核酸配列を含有するウイルス提示ベクターを使用する。パッケージング細胞が、融合タンパク質をコードする核酸を含有し、かつウイルス粒子の表面上に候補ポリペプチドを提示するウイルス粒子を1つ以上産生するように、このベクターはパッケージング細胞に導入される。候補ポリペプチドがその細胞の表面上に提示されるように、哺乳動物細胞が融合タンパク質を発現するよう(即ち、一過的または安定に)、哺乳動物提示細胞をこのウイルス粒子に接触させる。
【0028】
哺乳動物細胞表面上での候補ポリペプチドの発現には、E.coli、酵母、およびSf9昆虫細胞のバキュロウイルス感染株のような他の発現様式に比べて、多くの利点が存在する。例えば、哺乳動物細胞内に導入された候補ポリペプチドは、これら他の発現系では起こらない、グルコシル化および硫酸化のような翻訳後修飾を含有する。さらに、シャペロンタンパク質および正確なタンパク質折り畳みを促進する他の成分を欠く細胞と比較して、哺乳動物細胞において折り畳みの正確性が増す。さらに、この候補ポリペプチドには、細菌、酵母、あるいはバキュロウイルスの夾雑物がない。
【0029】
本発明の方法は、例えば、標的抗原に結合する候補ポリペプチドを同定するために、ポリペプチドをコードする核酸を含有するライブラリをスクリーニングするのに有用である。
【0030】
(ウイルス提示ベクター)
本発明のウイルス提示ベクターは、構成的にかまたは誘導によって、融合タンパク質を発現することのできる核酸ベクターである。例えば、ウイルス提示ベクターとしては、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターには、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えばHIV−1およびHIV−2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、またはネコ免疫不全ウイルス(FIV)が挙げられる。
【0031】
好ましいレンチウイルスベクターは、HIV−1から得られる。HIV−1ベクターは、インビトロ(J.Reiserら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:15266−15271(1996)を参照のこと)およびインビボ(L.Naldiniら、Science,272:263−267(1996)を参照のこと)にて、非分裂細胞を定常的に形質転換することが例証されている。従って、これらのベクターは、長期的な発現が可能である。適切なウイルスとこれを感染させる細胞の一覧は、米国特許出願第2003/0044981号(この内容は、本明細書中にその全体が参考として援用される)にて提供されている。
【0032】
融合タンパク質をコードする核酸配列は、一般に、調節エレメントの制御下にある。「調節エレメント」によって、転写を指揮するのに十分な核酸配列が意味される。調節エレメントとしては、例えばプロモーターが挙げられる。調節エレメントは、構成的または誘導的であり、さらなる配列または「エレメント」に結合され得、これはプロモーター依存的遺伝子発現を、細胞種特異的、組織特異的、あるいは外来シグナルまたは薬物誘導性のものに変える。そのようなエレメントは、天然遺伝子の5’領域あるいは3’領域内、もしくはイントロン内に位置し得る。
【0033】
調節エレメントは、融合タンパク質と作動可能に連結される。「作動可能に連結」によって、適当な分子(例えば転写活性化タンパク質)が調節配列に結合したときに、遺伝子の発現が可能となるような様式で、コード配列と調節配列とが連結されていることを意味する。
【0034】
適切な構成性プロモーターとしては、例えば、SV40、CMV、CDK9、PGK、およびユビキチンCが挙げられる。例示的なCMVプロモーターの配列は、GenBankアクセッション番号BD015376およびBD015377である。
【0035】
誘導性プロモーター系としては、テトラサイクリンレセプター(tetR)が挙げられ、ここでは本発明の融合タンパク質をコードする核酸の発現は、誘導性転写活性因子の活性に依存する(Yaoら、Human Gene Therapy 9:1929−1950(1998)を参照のこと)。Bartonら、Tet repressor−based system for regulated gene expression in eukaryotic cells:Principles and advances.Methods Enzymol 327:401−21(2000)を参照のこと。
【0036】
tet発現系としては、Tet−On系およびTet−Off系が挙げられる。Tet−On系では、テトラサイクリン(Tc)誘導体であるドキシサクリン(Dox)存在下で、転写が活性となる。Tet−Off系では、テトラサイクリンまたはDoxが存在すると、転写は不活性となる。Tet−Off発現系では、強力な転写活性化領域である単純ヘルペスウイルス由来のVP16領域に融合されたEscherichia coliトランスポゾンTn10のTc耐性オペロン由来のTetレセプターDNA結合タンパク質(TetR)から構成される、テトラサイクリン調節転写活性化タンパク質(tTA)が、テトラサイクリン反応性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下にある標的遺伝子の発現を制御する。TREは、最小プロモーター(一般的に、ヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーター由来の最小プロモーター配列)と融合したTetオペレーター(tetO)配列コンカテマーから構成されている。TcまたはDoxの非存在下では、tTAはTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。TcあるいはDoxの存在下では、tTAはTREに結合することができず、標的遺伝子の発現は不活性なままである。
【0037】
Tet−On系は、テトラサイクリン調節型逆転写活性物であるrtTAに基づく。tTAのように、rtTAは、TetRリプレッサーおよびVP16転写活性化領域から構成される融合タンパク質である。しかし、tetRのDNA結合部分における4つのアミノ酸の変化によって、Doxエフェクターの存在下で、標的導入遺伝子のTRE内のtetO配列のみが認識できるように、rtTAの結合特性が改変されている。従って、Tet−On系では、TRE調節標的遺伝子の転写は、Doxが存在している場合にのみ、rtTAによって刺激される。
【0038】
あるいは、誘導性プロモーター系はE.coli由来のlacリプレッサー系である(Brownら、Cell 49:603−612(1987)を参照のこと)。lacリプレッサー系は、lacレセプター(lacR)が結合する核酸配列であるlacオペレーター(lacO)を含有する哺乳動物細胞プロモーターを有する核酸の転写を制御することによって機能し、lacOを含有するプロモーターによって制御される標的核酸の転写を妨げる。標的核酸の発現は、イソプロピル‐β‐D−チオガラクトピラノシド(IPTG)処理によって誘導される。例えば、抗体融合タンパク質をコードする核酸とeGFPをコードする核酸(双方ともlacOを有する調節性CMVプロモーターの下にある核酸である)とを含有するレンチウイルス提示ベクターを、293T細胞に、例えばエレクトロポレーションによって形質移入する。IPTG処理(0.5mmol/L)の前後で、ウエスタンブロット分析またはそのような分野で周知の他の測定技術によって、抗体の誘導レベルを試験する。
【0039】
他の誘導系としては、FK506二量体、エストラジオールを使用するVP16もしくはp65、RU486、ジフェノールムリスレロン(diphenol murislerone)、ラパマイシン、およびエクジソン誘導系が挙げられる。
【0040】
器官/組織特異的プロモーターとしては、例えば、プリオンタンパク質プロモーターまたはニューロン特異的エノラーゼプロモーター、CaMKII−αプロモーター、LAPプロモーター、肺特異的発現のための使用され得るクララ細胞10kDタンパク質(CC10)プロモーター、マウス乳腺癌ウイルス長末端反復、ヒトケラチン14(K14)プロモーター、ウシケラチン6(K6)プロモーター/制御領域、TekまたはTieプロモーターおよびホエー酸性タンパク質(WAP)プロモーターあるいはβラクトグロブリンプロモーターが挙げられる。
【0041】
必要に応じて、本発明のウイルス提示ベクターは、選択マーカーを含有する。一般的に、提示ベクターを保有する細胞の選択を可能にする遺伝子産物をコードする任意の遺伝子を、選択マーカーをして使用することができる。そのような選択系は当該分野で周知であり、これには、栄養素または抗生物質のような刺激に対する細胞の感受性を変える遺伝子が含まれる。選択マーカーの例としては、アミノグリコシド系抗生物質(例えばネオマイシン、ヒグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、およびG418が含まれる)等の抗生物質耐性をコードすることが知られている遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Portrykusら、Mol.Gen.Genet.199:183−188を参照のこと)。他の選択マーカーには、メトトレキセートに対する耐性を供与するジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子が含まれる(Thilletら、J.Biol.Chem.263:12500−12508(1988)を参照のこと)。他の選択マーカーは、構成的に、またはある化合物と接触することによって、直接的あるいは間接的に光を生じるタンパク質を発現する遺伝子である。例えば、他の選択マーカーとしては、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、フェレドキシンIV、LacZ、ルシフェラーゼファミリーのメンバー、またはエクオリンファミリーのメンバーが挙げられる。
【0042】
選択マーカーは、配列内リボソーム侵入部位(IRES)を利用することによって、候補ポリペプチドと連結される(Marascoら、PCT/US96/16531を参照のこと)。IRES配列が存在することによって、融合タンパク質と、存在する場合には選択マーカーとが、ほぼ同時に産生されるように指揮される。ほぼ同時に共発現することによって、選択マーカーの検出に基づいた、融合タンパク質を発現する細胞の選択が可能となる。IRES配列は当該分野で周知であり、これには脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のもの(Ghattas,I.R.ら、Mol.Cell Biol.,11:5848−5849(1991))、BiPタンパク質(MacejakおよびSarnow,Nature,353:91(1991))、ショウジョウバエAntennapedia遺伝子(エクソンdおよびエクソンe)(Ohら、Genes & Dev.,6:1643−1653(1992))、ポリオウイルスのもの(PelletierおよびSonenberg,Nature 334:320−325(1988)、MountfordおよびSmith,TIG,11:179−184(1985)を参照のこと)が挙げられる。
【0043】
レンチウイルス提示ベクターはまた、例えば、RNAパッケージングシグナルを含有することが実証されていて、一般に遺伝子運搬に十分な、Cla I部位に結合したgag遺伝子(例えば図1を参照のこと)の5’末端の約41ヌクレオチドのような、gag遺伝子の一部(「gag」は、分裂細胞および非分裂細胞の遺伝子移入を可能にする)を含むさらなる核酸配列も含有し得る(Parolinら、1994 J.Virol.68:3888−95を参照のこと)。レンチウイルス提示ベクターはまた、それぞれ、ベクターの転写を調節し、ポリアデニル化シグナルを保有し、そしてウイルスをゲノムに組み込ませる、翻訳後に導入遺伝子の発現を刺激するシス作用性ウッドチャック肝炎ウイルス調節後調節エレメント(WRRE)、ならびにウイルスLTR配列RおよびU5も含有し得る。WPREは、誘導性プロモーターを利用した時の融合タンパク質の発現を増進するのに特に有用である。代表的に、U3領域(自己不活性化)および全てのHIV−1付随遺伝子は欠失されている。さらに、cPPT/CTS(central polypurine track;中央ポリプリン追跡)領域が付加される。レンチウイルス提示ベクターは、エンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含有する。あるいは、レンチウイルス提示ベクターは、エンベロープタンパク質をコードする核酸を含有せず、タンパク質は別のベクター上にて提供される。必要に応じて、ウイルス粒子を、レンチウイルスのキャプシドとは異なるエンベロープタンパク質を有する偽型である。エンベロープタンパク質を適切に選択することによって、実質的にあらゆる細胞に「感染させる」ことができる。このように、容易にベクターを特定の細胞に標的化させることができる。例えば、インフルエンザウイルス、VSV−G、αウイルスのメンバー(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス)、アレナウイルスのメンバー(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)、フラビウイルスのメンバー(ダニ媒介脳炎ウイルス、デングウイルス)、ラブドウイルス(水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)、あるいはオルソミクソウイルス(インフルエンザウイルス)に由来するエンベロープタンパク質をコードするenv遺伝子を使用することができる。他のエンベロープは、MLV−E、MLV−AおよびGALVのようなモロニー白血病ウイルスに由来するものである。また、組成物を、脳または血管内皮のような、所望する宿主細胞または組織へ標的化させるために、特定のエンベロープが選択される。
【0044】
ベクターに多数の改変を用いることができ、これは、さらに、野生型への復帰が生じる機会を最小にするためのウイルス粒子を産生するのに使用される。これらとしては、LTRのU3領域削除、tat削除、およびマトリックス(MA)の欠失が挙げられる。
【0045】
例示的なレンチウイルス提示ベクターを、図1において模式図で示す。この図において、sFv−IgGと記されている融合タンパク質は、サイトメガロウイルスプロモーター「CMV」の制御下にある。選択マーカー(例えば、eGFP)は、内部リボソーム侵入部位(IRES)の下流に提供される(Marascoら、PCT/US96/16531を参照のこと)。
【0046】
レンチウイルスビリオン(粒子)は、ビリオン(ウイルス粒子)を産生するのに必要なウイルスタンパク質をコードするベクター系によって発現される。例えば、パッケージング細胞には、さらにウイルス粒子を産生するのに必要な全てのウイルスタンパク質をコードする1つ以上のさらなるベクターが移入される。さらに別のベクターとしては、1つ以上のウイルス構造遺伝子を含有するヘルパーベクターが挙げられる。作動可能にプロモーターに連結された、逆転写および組み込みに必要なレンチウイルスpolタンパク質をコードする核酸配列を含有するベクターが、少なくとも1つ存在することが好ましい。このpolタンパク質は、多数のベクターによって発現されることが好ましい。また、作動可能にプロモーターに連結されたウイルスキャプシドを形成するのに必要なレンチウイルスgagタンパク質をコードする核酸配列を含有するベクターも存在する。このgag核酸配列は、少なくとも一部のpol核酸配列とは別のベクター上にあることが好ましく、polタンパク質をコードするpol核酸配列全てと別個のベクター上にあることがさらにより好ましい。
【0047】
gag、pol、およびenvベクターは、レンチウイルスパッケージング配列と呼ばれる、レンチウイルスRNAをパッケージするレンチウイルスゲノム由来の核酸を含有しない。HIVでは、この領域は、5’主要スプライスドナーとgag遺伝子開始コドンとの間の領域に相当する(301〜319番ヌクレオチド)。
【0048】
粒子を形成するベクターは、エンベロープタンパク質を発現するレンチウイルスゲノム由来の核酸配列を含有しないことが好ましい。別のベクター(例えば作動可能にプロモーターに連結された、エンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含有するエンベロープベクター)を使用することが好ましい。このenvベクターもまた、レンチウイルスパッケージング配列を含有しない。このエンベロープタンパク質はレンチウイルス由来であり、これからレンチウイルス提示ベクターが由来する。あるいは、このエンベロープタンパク質は、レンチウイルス提示ベクターが由来するレンチウイルスに由来するものではなく、異なるウイルスに由来する。得られるウイルス粒子は、偽型粒子と呼ばれる。
【0049】
図1にて示したように、ヘルパー構築物であるpCMVdR8.2は、ieCMVプロモーターの制御下にあるgag、pol、tat、およびrev遺伝子を含有する。gag遺伝子は、ウイルスマトリックス、キャプシド、およびヌクレオキャプシドポリペプチドをコードする。pol遺伝子は、ウイルス逆転写酵素およびインテグラーゼ酵素をコードする。tat遺伝子は、ウイルス遺伝子の発現とウイルスタンパク質の合成を誘導する。rev遺伝子は、gag、pol、およびenv遺伝子の発現を制御する。
【0050】
図1に示したように、エンベロープベクターは、水疱性口内炎ウイルス(「VSV−G」)のGタンパク質を含有し、これはieCMVおよびA(ポリアデニル化配列)に作動可能に連結されている。前初期CMV(ieCMVプロモーター、CMVieとしても公知)は、CMVプロモーターのTATAエレメント下流に、テトラサイクリンプロモーターを含有し得る。他の有用なエンベロープタンパク質としては、MLV−E、MLV−A、およびGALVのようなモロニー白血病ウイルス由来のものが挙げられる。他のenvポリペプチドは、宿主細胞に応じて選択される。細胞結合特性を保持するenvポリペプチドのフラグメントもまた、提供される。例えば、HIV gp160前駆体が、gp120およびgp41を形成するように処理される。
【0051】
ウイルス提示ベクター、エンベロープベクター、およびヘルパーベクターのパッケージング細胞への導入は、有用である(すなわち、本発明の融合タンパク質をコードする核酸を含有するウイルス粒子を産生するために)。あるいは、エンベロープベクターおよび/またはヘルパーベクター核酸の一部(または全部)が、ウイルス提示ベクター内に含まれ得る。
【0052】
適切なパッケージングとしては、レンチウイルス粒子を産生することのできる任意の細胞が挙げられる。パッケージング細胞としては、初代細胞、胚性幹細胞、および細胞株が挙げられる。好ましいパッケージング細胞としては、例えば、BHK、VERO、HT1080、293、293T、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/clone8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(例えば、SB20細胞)、およびCEMX174細胞が挙げられる。そのような培養細胞株は、例えば、A.T.C.C.(Manassas VA)から入手可能である。
【0053】
(融合タンパク質)
融合タンパク質は、リーダーペプチド、候補ポリペプチド、免疫グロブリン分子の少なくとも一部、および膜貫通部分を含有する。必要に応じて、融合タンパク質はエンベロープ組み込みシグナルを含有する。リーダーペプチド、候補ポリペプチド、免疫グロブリン分子の少なくとも一部、および膜貫通部分は、作動可能に連結されている。「作動可能に連結される」によって、対象とする核酸配列が、(例えば、ベクターが宿主細胞に導入されたときにその宿主細胞内で)その核酸配列の発現を可能にする様式で存在していることが意味される。リーダーペプチドをコードする核酸は、膜貫通部分の核酸に作動可能に連結された、候補ポリペプチドをコードする核酸に、作動可能に連結されていることが好ましい。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「融合タンパク質」という語は、2つ以上のタンパク質のアミノ酸配列の全部あるいは一部を含有するポリペプチドが含まれる。「タンパク質」および「ポリペプチド」という語は、この明細書中で交換可能に使用される。「部分」という語は、完全長ポリペプチドよりも少ないアミノ酸を含有する、フラグメント(例えば、タンパク質分解もしくはそれ以外の方法で得られたもの)またはドメイン(例えば酵素活性または抗原結合活性もしくはDNA結合活性のような活性を有するポリペプチドの一領域)の任意の領域を包含する。当業者は、用語「部分」または「フラグメント」もまた、交換可能に使用されることを認識する。
【0055】
(リーダーペプチド)
リーダーペプチドには、リボソームにて新たに合成されたタンパク質を、細胞膜あるいは細胞外へ輸送するために、ゴルジ体へ向かわせるペプチドが含まれる(Nielsenら、「Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites」Protein Engineering,第10巻、第1号、p.1−6,1997を参照のこと)。リーダーポリペプチドは、シグナルペプチドあるいはシグナルポリペプチドとしても公知である。リーダーペプチドは、一般に、線状の疎水性アミノ酸を含む。リーダーペプチドとしては、免疫グロブリンリーダー配列、ポリヒスチジンまたはポリバリン配列、および、当業者に周知の他のものが挙げられる。例示的なリーダーペプチドを表1に示す。
【0056】
リーダーペプチドには、シグナルペプチドN末端の正に荷電した領域(配列の「左端」)であるn領域;必要に応じて、シグナルペプチド中央部にある、疎水性中心部を有するh領域;および−1位および−3位に一般的に小さな中性アミノ酸を有する、リーダー配列C末端の一般的には極性領域であるc領域、の3つの領域を有するペプチドが含まれる。
【0057】
本発明のリーダーペプチドには、小胞体シス面上に存在する特異的なプロテアーゼである、シグナルペプチダーゼによって活性化され得るペプチドが含まれる。本発明のリーダーポリペプチドはまた、SIGFINDプログラムを使用して同定されるポリペプチドを含む。SIGFINDプログラムは、タンパク質配列の開始部分でシグナルペプチドを予測し、核酸配列内にコードされているシグナルペプチドの可能性のある部分でオープンリーディングフレームを検索する(「Finding Signal Peptides in Human Protein Sequences using Recurrent Neural Networks」(2002)、Reczkoら、In R.Guio and D.Gusfield(編):Algorithms in Bioinformatics,Proceedings of the 2nd Int.Workshop WABI 2002,Rome,Italy,9月16日〜21日、Lecture Notes in Computer Science,Springer,Volume 2452,pp.60−67を参照のこと)。
【0058】
SIGFINDプログラムは、シグナルペプチドの位置およびサイズを示す、配列にわたるスコア(sig.pepスコア、0(シグナルペプチドなし)から9(シグナルペプチド存在に関する最大スコア)の範囲)を提供する。一般に、sig.pepスコアが高いものから低いものへ減少することで、シグナルペプチド開裂部位のおおよその位置が示される。
【0059】
【表1】

(候補ポリペプチド)
候補ポリペプチドは、ウイルスキャプシドあるいは哺乳動物細胞表面上での発現が所望される任意のポリペプチドあるいはそのフラグメントである。候補ポリペプチドは、天然の細胞表面ポリペプチドである。あるいは、候補ポリペプチドは、天然の細胞表面ポリペプチドではない。候補ポリペプチドは、抗体あるいはそのフラグメント、毒素、ホルモン、成長因子、レセプター、あるいはシグナル分子である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「抗体」または「その機能的フラグメント」という語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)の免疫学的活性部分(すなわち、抗体に特異的に結合する(免疫相互作用する)抗原結合部位を含有する分子)をいう。そのような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2フラグメント、およびFab発現ライブラリが挙げられる。
【0061】
「特異的結合」あるいは「免疫相互作用」によって、抗体が、所望する抗原の1つ以上の抗原決定基と相互作用し、他のポリペプチドとは反応(即ち、結合)しないか、もしくは非常に小さな親和性(Kd>10−6)で結合することが意味される。
【0062】
本明細書中で使用される「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」という語は、免疫グロブリン分子とその免疫グロブリンが特異性を示す抗原との間で発生する型の、非共有結合的相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、その相互間の解離定数(Kd)という語で表すことができ、より小さなKdはより大きな親和性を示す。選択したポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の手法を用いて定量される。そのような手法のうちの1つは、抗原結合部位/抗原複合体の形成速度および解離速度の測定であり、これらの速度は、対になって複合体を形成するものの濃度、相互作用の親和性、両方向の速度に等しく影響を与える幾何学的媒介変数によって異なる。このように、「結合速度定数(Kon)」および「解離速度定数(Koff)」は両方、濃度、ならびに結合および解離の実測速度の算出によって決定され得る(Nature 361:186−87(1993)を参照のこと)。Koff/Kon比によって、親和性に関係しない変数を全て相殺することが可能となり、これは解離定数Kと等しい。(全般的なことは、Daviesら、(1990)Annual Rev Biochem 59:439−473を参照のこと)。
【0063】
候補ポリペプチドは、ライブラリから得ることができる。好ましいライブラリとしては、ヒト単鎖抗体ライブラリ、天然ペプチドライブラリ、およびランダムペプチドライブラリが挙げられる。例示的なライブラリには、Mehta IおよびMehta IIファージライブラリが含まれる(Gennariら、J.Mol.Biol.335(1):193−207(2004)を参照のこと)。Mehta Iライブラリは、150億のsFv挿入フラグメントを含有し、Mehta IIは120億のsFv挿入フラグメントを含有する。天然ペプチドライブラリは、当該分野で周知である(Matthewsら、J.Immunol.169(2):837−46(2002)を参照のこと)。天然ペプチドライブラリは、約25から約200アミノ酸の長さのペプチドを含有することが好ましく、これはこの大きさのペプチドが天然の抗原決定基であることが例証されているためである(Fackら、J.Immunol.Methods 206:43(1997);Matthewsら、J.Immunol.169:837(2002)を参照のこと)。ランダムペプチドライブラリは、当該分野で周知であり、BD Biosciences(San Jose,CA)、New England Biolabs(Beverly,MA)、および他の供給元から入手可能である。ライブラリ挿入フラグメントは、増幅して本発明のウイルス提示ベクターに連結させることもできるし、この挿入フラグメントを宿主ライブラリから切り出して、ウイルス提示ベクター内に連結させることもできる。
【0064】
(免疫グロブリンポリペプチド)
融合タンパク質はさらに、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも一領域を含有する。「少なくとも一領域」によって、免疫グロブリン分子の任意の一部が含まれることが意味され、これは例えば、軽鎖、重鎖、Fc領域、ヒンジ領域、CH1領域、CH2領域、CH3領域、Fab領域、Fv領域、あるいはこれらの任意のフラグメントもしくは組み合わせである。好ましくは、免疫グロブリンポリペプチドは、IgG分子(例えばIgG1)のヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含有する。
【0065】
(膜貫通部分)
膜貫通部分(または膜貫通ドメイン)は、細胞膜あるいは細胞小器官の膜のような、細胞の生体膜を横切って伸びることのできる複数のアミノ酸である。膜貫通部分は、ウイルスキャプシド表面および/または哺乳動物細胞の細胞膜の内部に入っていき、繋ぎ留められたままになることができるポリペプチドである。本発明の融合タンパク質に含まれる場合、膜貫通部分は、その融合タンパク質を、ウイルスキャプシド表面および/または哺乳動物細胞の細胞膜に局在させることができる。膜貫通部分は、レンチウイルス膜貫通部分のようなウイルスの膜貫通部分である。レンチウイルス膜貫通部分としては、例えば、HIV、SIV、CAEV、BLV、およびFIVあるいはこれらの機能的フラグメントに由来するエンベロープポリペプチドが挙げられる。
【0066】
HIV−1 gp60エンベロープポリペプチドは、約856アミノ酸からなるポリペプチドであって(表2の配列番号1およびGenBankアクセッション番号AAO40783、AAA76671、BAA12995、およびP03377を参照のこと)、タンパク質分解酵素によってプロセシングされてgp120とgp41ポリペプチドとなる。HIV−1 gp160エンベロープポリペプチドのアミノ酸配列を、表2の配列番号1にて提供する。gp41ポリペプチドは、配列番号1の512〜856番アミノ酸を含む(GenBankアクセッション番号:NP_057856も参照のこと)。gp41の膜貫通部分は、一般に、gp160ポリペプチドのおよそ675〜715番アミノ酸の間に位置する。加えて、レンチウイルスエンベロープタンパク質は、GenBankアクセッション番号において、SIV由来のAAT41729、CAEV由来のP31627、BIV由来のP19557、BLV由来のP03380、およびFIV由来のエンベロープであるNP_040976によって提供される。
【0067】
【表2】

あるいは、膜貫通部分は、CD28、CD8、もしくはIgM膜貫通部分または機能的フラグメントのような、哺乳動物の膜貫通部分である。
【0068】
本明細書中で使用される場合、膜貫通部分の「機能的フラグメント」には、ウイルス粒子の表面および/または哺乳動物細胞の細胞膜へ融合タンパク質を局在させることのできる膜貫通部分の任意の部分あるいはフラグメントが含まれる。例えば、膜貫通ドメインには、アミノ酸配列NRVRQGYS(配列番号14)あるいはGGTETSQVAPA(配列番号15)が含まれる。
【0069】
一般に、膜貫通部分は、その末端に正に荷電したアミノ酸(リジンおよびアルギニン等)を有し、非荷電アミノ酸を中央に有する。膜貫通部分は、これらのポリペプチドを小胞体へ標的化させるN末端シグナル配列を有することができる。通常、25以上のアミノ酸長からなるαヘリックス膜貫通ドメインは、細胞膜の両端に渡るのに十分なものである。あるいは、膜貫通部分は、1つ以上のβバレル構造を有するポリペプチドを含み得る。例示的な一膜貫通部分としては、グリコホリンA
【0070】
【数1】

由来の膜貫通ドメインが含まれる。一部の実施形態において、膜貫通ドメインには、2つ以上のβシートを有するポリペプチド配列が含まれる。
【0071】
膜貫通部分は、膜貫通タンパク質およびこれらの膜貫通ドメインのTMbaseにおいて提供されるポリペプチドを含む(K.Hofmann & W.Stoffel(1993)、TMbase−A database of membrane spanning proteins segments.Biol.Chem.Hoppe−Seyler 374,166を参照のこと)。TMbaseデータベースは、SwissProtおよび他のデータベース源に由来する情報を含有している。本発明の膜貫通部分には、TMpredプログラムを使用して同定されるポリペプチドが含まれる。TMpredプログラムは、天然膜貫通タンパク質のTMbaseデータベースの統計的分析に基づくアルゴリズムを用いて、膜貫通領域およびそれらの方向性の予測を行う。ポリペプチド中の膜貫通領域を判定することのできる他のプログラムとしては、GREASE、TMHMM、およびTMAPが含まれる。
【0072】
(ウイルスキャプシド上に候補ポリペプチドを提示する方法)
融合タンパク質をコードする核酸を含有するウイルス提示ベクターを、パッケージング細胞に導入する。本明細書中で使用する場合、細胞へのDNAの導入は形質導入と呼ばれ、あるときは形質移入または感染としても公知である。
【0073】
一般に、提示ベクターは、1つ以上の連結させていないベクターと組み合わせて形質移入によって導入するが、当業者は、本発明の手法に、核酸ベクターをレシピエント細胞に導入する他の方法(マイクロインジェクションが挙げられるが、これに限定されない)を採用することができることを認識する。好ましい形質移入手段は、リン酸カルシウム、FUGENE6TM(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)、およびPOLYFECTTM(Qiagen,Valencia,CA)である。パッケージング細胞は、さらに、エンベロープベクターおよびヘルパーベクターで形質移入する。提示ベクター:エンベロープベクター:ヘルパーベクターの比は、約2:1:2である。あるいは、提示ベクター:エンベロープベクター:ヘルパーベクターの比は、約1:2:1である。
【0074】
ベクターをパッケージング細胞に導入した後、パッケージング細胞は、ウイルスキャプシド上の融合タンパク質および候補ポリペプチドをコードする核酸を含有する1つ以上のウイルス粒子を産生する。必要に応じて、パッケージング細胞が産生したウイルス粒子を、当業者に周知の任意の手段によって精製および/または濃縮する。例えば、続いて、選択マーカー(例えばeGFP)をコードする核酸を発現するウイルス粒子を、発現された選択マーカーを検出することによって蛍光補助細胞選別(fluorescent assisted cell sorting)(FACS)によって分別する。あるいは、ウイルス粒子を濾過(例えば0.45μmおよび/または0.22μmのフィルターを通す濾過)することによって回収し、100,000×gの遠心分離によって沈殿させる。
【0075】
その表面上に候補ポリペプチドまたはそのフラグメントを発現させたウイルス粒子を使用して、対象となる抗原(例えば標的抗原)に結合する候補ポリペプチドを同定することができる。本発明の融合タンパク質を含有する1つ以上のウイルス粒子を標識した(例えばFITC等の蛍光標識を抗原に化学的に接着させた)標的抗原に接触させる。ウイルス粒子は溶液中で提供される。あるいは、ウイルス粒子は固体支持体に接着されている。固体支持体としては、例えば、チップ、ビーズ、紙、またはポリスチレンが挙げられる。標識標的抗原は、候補ポリペプチドと接触して結合し、標的抗原が結合した候補ポリペプチドを有するウイルス粒子を、FACSまたは当業者に周知の他の適切な手段によって選別する。候補ポリペプチドをコードする核酸配列は、直接、または増殖後に、配列決定され得る。このようにして、標的抗原に結合する候補ポリペプチドを同定することができる。
【0076】
(哺乳動物細胞の表面上にて候補ポリペプチドを提示させる方法)
本発明はまた、哺乳動物細胞の表面上にて候補ポリペプチドを提示させるための方法を提供する。これは、例えば、ポリペプチド、抗体、あるいは抗体フラグメントを含むライブラリをスクリーニングするのに有用である。ポリペプチド(例えば、抗体)の翻訳後修飾(例えば、N結合およびO結合グリコシル化、ならびに硫酸化)が、重要な構造的役割を果たしていることが、近年認識されている。したがって、本発明の用法によって産生されたポリペプチドは、こうした翻訳後修飾を含有し、一方、細菌内で産生されたポリペプチド(例えばファージディスプレイ法を使用したもの)は、こうした翻訳後修飾を欠くこととなる。
【0077】
上記のように融合タンパク質をコードする核酸を含有するウイルス提示ベクターでパッケージング細胞を形質移入することによって、候補ポリペプチドは哺乳動物細胞の表面上に提示される。必要に応じて、融合タンパク質をコードする核酸は、ウイルスキャプシドの表面上で候補ポリペプチドが提示されるように発現される。しかし、ウイルスキャプシドの表面上での融合タンパク質の発現は、哺乳動物細胞の表面上での融合タンパク質の発現を達成するのに必須ではないことを、当業者は認識する。
【0078】
続いて、哺乳動物提示細胞にウイルス粒子が感染するように、パッケージング細胞によって産生されたウイルス粒子を哺乳動物細胞に接触させる。細胞1個当たり平均してわずか0〜1個の取り込みしか提供しないこととなる感染の多重度(MOI)で、ウイルス粒子を哺乳動物細胞に接触させる。例えば、感染の多重度およそ1で、ウイルス粒子を哺乳動物細胞に接触させる。一般に、ウイルスベクターは構成的に哺乳動物細胞に取り込まれる。あるいは、この取り込みは、一過性のものである。融合ポリペプチドの膜貫通部分が存在することによって、哺乳動物細胞表面に発現する融合タンパク質は、候補ポリペプチドが細胞膜上で提示されるように標的化される。MOIに基づいて、各哺乳動物細胞は、融合タンパク質をコードする独自の核酸を含有し、それによって独自の候補ポリペプチドをその表面上に有する。例えば、抗体ライブラリ(例えばMehtaライブラリの一方あるいは両方)を使用する場合、ウイルスベクターを産生するのに、各々が独自の抗体をその細胞表面に発現させる、270億の哺乳動物細胞を得ることが可能なはずである。
【0079】
例示的な哺乳動物提示細胞としては、BHK、VERO、HT1080、293、293T、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/clone8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(例えば、SB20細胞)、およびCEMX174細胞株が挙げられる。別の例示的な哺乳動物提示細胞としては、M12g3R(IgM+)B細胞株が挙げられる(Reiderら、2003 Science 301:213−15を参照のこと)。
【0080】
哺乳動物提示細胞は、細胞に構成的あるいは一過的にのいずれかで形質移入された核酸を構成的に変異させ得る細胞株である(Cumbersら、Nature Biotech 20:1129,(2002)およびPresta,Nature Biotech.20:1096(2002)の編集者総説を参照のこと)。例えば、哺乳動物提示細胞は、ラモス−バーキットリンパ腫細胞株、BL−2細胞、CL−01細胞(Martinら、Nature 415:802,2002)またはニワトリDT−40B細胞リンパ腫細胞(Saleら、Nature 412:921,2001)である。あるいは、活性化誘導性シトシン脱アミノ酵素(AID)タンパク質(Muramatsu,2000;Di Noia,2002;Pertersen−Mahrt,2002;Yoshikawa,2002およびGearhart,2002の編集者総説)、DNAポリメラーゼι(Faili,2002)、あるいは免疫グロブリンミュータソーム(mutasome)の構成要素であるTLSポリメラーゼファミリーの他のメンバーを過剰発現するように、哺乳動物細胞は修飾されている。AIDタンパク質は、哺乳動物および他の高等脊椎動物における抗体の成熟に必要とされ、体細胞超変異(SHM)、クラススイッチ組換え、および遺伝子変換を促進する。
【0081】
哺乳動物提示細胞による融合タンパク質の変異は、対象とする標的抗原に対する結合親和性および/または特異性が変化、増加、または減少した候補ポリペプチドをもたらす。例えば、候補ポリペプチドが抗体またはそのフラグメントである場合、変異は抗体の超変異を模倣する。
【0082】
必要に応じて、候補ポリペプチドを発現する哺乳動物細胞(例えば、感染した細胞)は、候補ポリペプチドを発現しない哺乳動物細胞から分離(例えば選別)される。感染した哺乳動物細胞を選別することによって、細胞集団から感染していない細胞を除去することが可能となり、次いで、標識抗原との非特異的な結合相互作用の発生頻度を減らす。さらに、哺乳動物提示細胞が上記のように核酸を変異させることができる場合、細胞を選別することにより、例えば、生体内免疫反応の過程でのB細胞の親和性成熟の過程を繰り返す。
【0083】
感染した哺乳動物細胞は、eGFPのような選択マーカーを検出することによって選別される。あるいは、感染した哺乳動物細胞は、抗原に結合する細胞を識別することによって選別される。例えば、細胞を、ある濃度で、標識された標的抗原に接触させる。標識された標的抗原を、溶液中あるいは固体支持体上にて、哺乳動物細胞と混合する。固体支持体としては、例えば、チップ、ビーズ、紙、プラスチック、あるいは他の固体もしくは半固体の手段が挙げられる。標的抗原と哺乳動物細胞とが溶液内に存在する場合、FACSまたは他の適切な選別手段を使用して結合した抗原と候補ポリペプチドとの複合体を識別し、結合していない標識標的抗原および結合していない哺乳動物細胞に結合した複合体を分離する。対照的に、標的抗原が固体支持体上にある場合、カラムクロマトグラフィーを使用して、標識した抗原に結合している候補ポリペプチドまたは抗体を提示している哺乳動物細胞を分離する。その抗原は、クロマトグラフィーカラム内でビーズ(例えばセルロースまたはセファロースビーズ)に結合し、哺乳動物細胞を含有する溶液をカラムに加える。結合していない哺乳動物細胞は1回以上の洗浄によって、カラムから除去される。次いで、結合した哺乳動物細胞は、高pHあるいは低pH溶液、界面活性剤溶液、高塩溶液、あるいはカオトロピック剤(例えば尿素および(あるいは)グアニジン)等で、カラムから溶出される。
【0084】
好ましくは、哺乳動物細胞は、選択マーカーの発現と抗原結合の両方によって選別される。
【0085】
必要に応じて、選別手順の間に感染した哺乳動物細胞を培養液中で増殖させる。この増殖は、本質的に、クローン的であっても非クローン的であってもよい。続く選別手順にて使用する抗体の量は、減らされる。例えば、標的抗原の濃度を、25%、50%、75%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%、あるいは99.999%減らす。即ち、このような様式で、本発明の方法を用いて、親和性選択工程前の候補ポリペプチドの平均親和性と比較して、高い特異性および親和性で標的抗原に結合する候補ポリペプチドを同定する。
【0086】
選択された候補ポリペプチドをコードする核酸配列を決定する。例えば、選択した哺乳動物細胞集団を界面活性剤等で溶解し、候補ポリペプチドをコードする核酸をPCRによって増幅して、適切なベクター内にクローニングする。必要に応じて、増幅した挿入フラグメントをレンチウイルス提示ベクター内にクローニングし、上記のようにこれを使用して新規のウイルス粒子を産生する。これらの粒子を使用してさらなる哺乳動物細胞を感染させることが可能であり、候補ポリペプチド提示法は、1回以上繰り返すことができる。
【0087】
本発明の方法によって、可溶性候補ポリペプチドの産生もまた可能となる。ウイルス粒子または哺乳動物細胞の表面上に融合タンパク質が発現した後に、融合タンパク質の膜貫通領域をコードする核酸を削除することによって、可溶性候補ポリペプチドが生成される。例えば、これらの方法は、膜結合抗体を使用して、抗体産生細胞を標的細胞あるいは標的組織に局在化させ、続いて、インビボで特定の細胞型または組織(例えば、癌細胞)へ可溶性抗体を送達するのに有用である。この可溶性抗体は、細胞毒性、細胞分裂阻害性、またはアポトーシス誘導性であり得る。
【0088】
例えば、上記のウイルス提示ベクターは、さらに、例えばCreリコンビナーゼが認識するloxP等、2つ以上のシグナル部位(あるいはシグナル配列)を含有し得る。Cre−lox反応は、以下のように機能する。P1バクテリオファージ環化組換え(Cre)リコンビナーゼは、対象とする核酸分子の両端に隣接する一対のloxP結合部位を認識する。ここで、loxP部位は、融合タンパク質の膜貫通部分をコードする核酸配列に隣接し得る。必要に応じて、膜貫通部分(「スペーサーアミノ酸」と名付ける)に隣接する1つ以上のアミノ酸をコードする核酸を使用する。スペーサーアミノ酸は、融合タンパク質の正確な折り畳みを促進する。LoxP部位は、34bpの長さで、回文構造(相補的)配列である13bpが隣接する、8bpのコアから構成されており、このコアは方向性を決定する。loxPが隣接する配列は、「floxed(loxPが導入された)」と呼ばれる。Cre酵素は、相補的な配列を有する2つのloxP部位を繋げる。対となっているloxPの向きに応じて、異なる結果が達成される場合がある。Cre−lox系では、2つのシグナル部位間の核酸配列が削除される、あるいは、このシグナル部位が同じ核酸分子上にある場合には反転される。介在するDNAは、削除もしくは環化されるか、または反転もしくは転位置され得る。必要に応じて、ウイルス提示ベクターは、Creリコンビナーゼをコードする核酸を含有する場合もある。テトラサイクリン/ドキシサイクリン等の誘導性プロモーターが、Creの発現を駆動することができる。必要に応じて、loxP部位は、融合タンパク質の膜貫通部の両端に隣接するのに加えて、Creリコンビナーゼをコードする核酸配列の両端に隣接する。Creリコンビナーゼをコードする核酸配列は、loxP部位の上流(5’方向)あるいは下流(3’方向)に位置する。Creリコンビナーゼの発現を誘導することができることによって、可溶性抗体を産生する能力が提供される。Creリコンビナーゼをコードする核酸配列を別のベクターに配置し得るか、または宿主細胞のゲノムに構成的に組み込まれている。
【0089】
部位特異的リコンビナーゼ系の別の例は、酵母由来のflp系である。Flpリコンビナーゼは、酵母Saccharomyces cerevisiaeの2μプラスミドがコードする45kDのタンパク質である。上記のウイルス提示ベクターは、FLPリコンビナーゼが認識する2つ以上の組換え標的(FRT)をさらに含有し得る。例えば、2つのFRTは融合タンパク質の膜貫通部分をコードする核酸の両端に隣接する。
【0090】
組換え活性を上昇させた修飾FLPリコンビナーゼもまた、記載されている(Bucholzら、Nature Biotech.16.657−662(1998)を参照のこと)。適切なFRT配列は、:
【0091】
【数2】

である。FLPリコンビナーゼはFRTに結合し、その結果、膜貫通部分をコードする核酸部分が切除され、可溶性抗体が産生される。
【0092】
例えば、癌細胞の表面上で腫瘍特異的抗原(TSA)に免疫特異的に結合する抗体を発現する哺乳動物提示細胞が、本発明の哺乳動物抗体提示法を用いて同定される。抗体産生哺乳動物細胞は、哺乳動物被験体(例えば、癌に罹患したヒト患者あるいはその抗体を必要とする患者)に提供され、哺乳動物細胞表面上の抗体は腫瘍抗原へ向かい、これと特異的に結合する。抗体産生細胞の検出および局在は、検出可能なタンパク質部分の発現を検出することによって決定される。抗体産生哺乳動物細胞が、腫瘍抗原を提示する細胞に局在化(および結合)すると、Creリコンビナーゼが融合タンパク質の膜貫通部分をコードする核酸を除去するように、(例えば、化学的手段、光、酸素、あるいは他の誘導手段によって)Creリコンビナーゼが誘導される。膜貫通領域の存在しないときは、その融合タンパク質はリーダーペプチドによってERに向けられ、可溶性抗体として細胞外へ分泌される。次いで、この分泌された可溶性抗体は、標的腫瘍細胞上で局所的に作用する。必要に応じて、抗体産生哺乳動物細胞は、毒素をコードする核酸も含有し得、この毒素も哺乳動物提示細胞によって産生される。この毒素は、可溶性抗体と作動可能に連結され得る。
【実施例】
【0093】
(実施例1 ウイルス提示ベクターとベクター系の産生)
ウイルス提示ベクター(図1に概説される)を、以下のように構築する。MehtaI/IIライブラリ由来の、候補ペプチドをコードする1つ以上の挿入フラグメントを増幅することによって、融合タンパク質をコードする核酸を産生する。例示的なsFv挿入フラグメントとしては、ヒトサイクリンT1のTRMモチーフに免疫特異的に結合するsFvである「PS11」;HIV−1 tatタンパク質のアルギニンに富む領域に免疫特異的に結合するsFvである「E46」;CCR5のN末端に免疫特異的に結合するsFvである「A8」;およびCD25(IL−2Rのα鎖)に免疫特異的に結合するsFvである「抗Tac」が挙げられる。これらの挿入フラグメントを、免疫グロブリンリーダータンパク質をコードする核酸の下流、かつヒトIgGのヒンジ、CH2、およびCH3領域をコードする核酸の上流に連結させ、その結果、発現した核酸が翻訳されたときに、候補ポリペプチドはリーダーポリペプチドおよび免疫グロブリン分子と作動可能に連結される。核酸分子の発現は、CMVプロモーターによって制御される。免疫グロブリン分子をコードする核酸の下流は、gp41の膜貫通部分をコードする核酸である。高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードする核酸分子を、CMVプロモーターによって制御されるIRESの下流に置く。
【0094】
ウイルス提示ベクターのタンパク質発現分析を、POLYFECTTMのような当業者に周知の形質移入方法を用いて293T細胞に一過的に形質移入し、続いてgp41に特異的な抗体を使用するウエスタンブロット分析を行うことによって実施する。図4Bにて示されるように、本発明の融合タンパク質は、一過的に形質移入した293T細胞にて発現される。レーン1は、モック処理した細胞(DNAは加えされていない)を示し、レーン2は、PS11 sFvを含有する融合タンパク質の発現を示す。レーン3は、PS11 sFvを含有する融合タンパク質の発現を示し、これはgp41膜貫通部分をloxP配列の一方の端に隣接させてある。レーン4は、E46 sFvを含有する融合タンパク質の発現を示し、レーン5は、E46 sFvを含有する融合タンパク質の発現を示し、これはgp41膜貫通部分をloxP配列の一方の端に隣接させてある。
【0095】
融合タンパク質の細胞膜への局在は、FACS分析を用いて確認する。例えば、ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的)PE結合体が、sFv−IgG−gp41融合タンパク質の細胞表面発現の検出に有用である。典型的なFACS分析の結果を表3にて示す。
【0096】
【表3】

蛍光標識した抗体を使用するFACS分析によって、細胞表面上で発現した融合タンパク質が、標的抗原に免疫特異的に結合し得ることが確認された。例えば、ビオチン化TRMペプチド(2mM、MW4146.7、Extrasvidin PE(Sigma E−4011)と組み合わせる)を、FACS実験において使用した。その結果を、表4に示す。これらの結果は、293T細胞の表面上に発現した含PS11融合タンパク質がその標的抗原に結合し得ることを示した。
【0097】
【表4】

ヘルパーベクターpCMVΔR8.2およびエンベロープベクターもまた、図1に示される。ヘルパーベクターは、ieCMVプロモーターの制御下にあるgag、pol、tat、およびrev遺伝子を含有する。エンベロープベクターは、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質(「VSV−G」)を含有し、これはieCMVとA(ポリアデニル化配列)とに、作動可能に連結されている。
【0098】
(実施例2 ウイルスキャプシド上の抗体提示)
CaClまたはPOLYFECTTM形質移入剤を使用して、MehtaI/IIライブラリ由来のsFv挿入フラグメントを含有するウイルス提示ベクターの集団を、ヘルパーベクターおよびエンベロープベクターと一緒に293T細胞へ同時形質移入する。あるいは、構成的にVSV−gを発現する239T細胞株を使用する。融合タンパク質ウイルス粒子を産生するために、80%〜100%のコンフルエンスにまで増殖した293T細胞を、10cmのプレート上にて、2倍HeBS溶液において約12μgのウイルス提示ベクター(1.0μg/μl)、約12μgのエンベロープベクター(1.0μg/μl)、約6μgのヘルパーベクターpCMVΔR8.2(0.5μg/μl)、62μlの2M CaClを含有する形質移入カクテルを用いて形質移入する。感染後約37時間および61時間において、ウイルス粒子が含まれる上清(マスターウイルスストック)を回収し、濾過して−80℃で保存する。あるいは、感染後48時間、72時間、96時間目に、マスターウイルスストックを回収する。必要であれば、SW28ローターにて17,000rpmで2時間遠心分離することによって、ウイルス粒子上清を濃縮する。沈殿物を、1/10量の培地に再懸濁する。ウイルス粒子は、蛍光補助細胞選別器(FACS)でeGFPを検出することによって分別する。多重感染度(moi)は、293T細胞を感染させ、続いてeGFP陽性細胞をフローサイトメトリー定量することによって決定する。ウイルス粒子への融合タンパク質の取り込みは、ウエスタン分析を用いて測定する。遠心分離によってウイルスストックを濃縮し、SDS−PAGEローディング緩衝液を加え、続いてPAGEによって分離し、メンブランに移して、抗gp41または抗ヒトIgGでブロッティングする。
【0099】
融合タンパク質の標的抗原への特異的結合は、ウイルス粒子捕捉実験によって実証する。標的抗原でマルチウェルプレートをコーティングし、(例えば、1%BSAで)ブロッキングする。これを、上記のように調製したウイルス粒子と一緒にインキュベートする。融合タンパク質の標的抗原への特異的結合の指標である逆転写活性は、Hを使用して測定し、値(RT値)を割り当てる。一連のウイルス粒子捕捉実験の結果を、表5に示す。この結果は、PS11含有融合タンパク質を発現するレンチウイルス粒子が、その標的抗原と特異的に結合することを示している。図4Cにて示したように、捕捉された抗原をSDS−PAGEで分析して染色した。
【0100】
【表5】

(実施例3 哺乳動物細胞抗体提示)
マスターウイルスストックに、哺乳動物提示細胞の懸濁液を、約1のMOIで一晩接触させる。抗Fc抗体結合能またはeGFP含量に基づいて、この哺乳動物細胞をFACSで選別する。選別した細胞を、あらかじめ標識した標的抗原に接触させる。適切な標識としては、FITC、ストレプトアビジン/ビオチン、および常磁性ビーズが挙げられる(図11を参照のこと)。続いて、結合した抗原を有する選別された哺乳動物細胞を選択する。選択後、次回の選択のため、選択した細胞集団を培地中で増殖させる。あるいは、選択した細胞の集団から核酸を採取し、候補ポリペプチドをコードする核酸を増幅して、1回以上のさらなる選択のために提示ベクター内に挿入する。抗原に結合する目的の候補ポリペプチドの配列を得るために、選択した細胞を溶解し、抗原結合哺乳動物細胞内に含有される、候補ポリペプチドをコードする核酸配列をベクターにクローニングし、次いで配列決定する。
【0101】
293T哺乳動物提示細胞の表面上での融合タンパク質の細胞表面発現を実証するために、実験を行った。1×10個の296T細胞を、6ウェルのマルチウェルプレートに播種した。表6に示したように、細胞は、リポフェクタミンを使用して、2つのベクター(本発明の候補ポリペプチド含有する融合タンパク質を発現するベクターおよびCMVプロモーターの制御下にてGFPを発現するベクター)で同時形質移入した。感染後約48時間にて、感染させた細胞を0.5mM EDTAで収集した。
【0102】
【表6】

収集した形質移入細胞を、GFPの発現について分析し、抗ヒトIg−APC結合体で染色して、Fcの細胞表面での発現を実証した。
【0103】
サンプル1は、非感染細胞を含有する。サンプル2は、挿入物を有さないpCDNAベクターを含有する。サンプル3は、C9タグを有さないpCDNA3−CMV−PS11−Fc−gp41を含有する。サンプル4は、GFPコントロール挿入物を含有する。サンプル5は、レンチウイルスgp41膜貫通領域の一部(TM領域の1〜50番アミノ酸に相当する)を含有する。サンプル6は、ヒトCD8膜貫通領域を含有する。サンプル7は、完全長のレンチウイルスgp41膜貫通領域を含有する。サンプル8は、ヒトCD28膜貫通領域を含有する。
【0104】
図12Dに示したように、CD8およびCD28膜貫通領域によって、融合タンパク質は確固として提示細胞表面へ標的化される。
【0105】
293T哺乳動物提示細胞の表面上にて融合タンパク質が細胞表面発現することを実証するために、さらなる実験を行った。1×10個の293T細胞を、6ウェルのマルチウェルプレートに播種した。表7に示したように、リポフェクタミンを使用して、IRESを含有する多機能ベクターで細胞を同時形質移入した。感染後約48時間にて、感染させた細胞を0.5mM EDTAで収集した。
【0106】
【表7】

収集した形質移入細胞をGFPの発現について分析し、抗ヒトIg−APC結合体で染色して、Fcの細胞表面発現を実証した。
【0107】
サンプル1は非感染細胞を含有する。サンプル2は、CMVプロモーター制御下にてGFPを発現するpSINベクターを含有する。サンプル3は、pSIN−mdeltaU3−CMV−PS11−Fc−gp41−IRES−ZnGreenを含有し、ここでIRES配列はpSIN−deltaU3−CMV−PS11−Fc−gp41−IRES−GFPベクターから得た。サンプル4は、pSIN−mdeltaU3−CMV−PS11−Fc−gp41−IRES−GFPを含有し、よってGFPを発現する。サンプル5は、pSIN−mdeltaU3−CMV−PS11−Fc−gp41−IRES−ZnGreenを含有し、ここでIRES配列は、HA−ZsGreensベクターから得たIRES配列から得た。サンプル3〜5の膜貫通領域は、レンチウイルスgp41の完全長膜貫通ドメインである。
【0108】
図13Dに示したように、本発明の多機能ベクターによって、融合タンパク質は確固として提示細胞の表面に標的化される。
【0109】
(実施例4 ヒト抗体の親和性選択)
選択した抗原結合哺乳動物細胞を、非結合哺乳動物細胞から分離し、培地中で増殖させて、標的抗原特異的抗体を産生する哺乳動物細胞の数を増やす。標的抗原濃度を、50%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%、あるいはそれ以上減らして、実施例4の抗体提示法を繰り返す。例えば、第1回目の選択では、約200ng/mlの抗原濃度を使用し、第2回目の選択ではこの濃度を約1ng/mlに減らす。
【0110】
(実施例5 ヒト抗体の親和性成熟)
非常に高い特異性および非常に高い結合親和性(Kdが小さい)で標的抗原に結合する候補ポリペプチド(例えば、抗体)を同定することが望ましい。本発明は、親和性成熟による特異性の高い抗体の産生を提供する。
【0111】
親和性成熟の1つの方法は、高い変異速度を有する提示細胞株の使用を包含する。変異しやすい細胞株の例は、例えばラモス−バーキットリンパ腫細胞株のようなリンパ腫細胞株である。上記実施例4に記載した提示親和性選択法を利用して、標的抗原に対する親和性が増大した変異融合タンパク質由来の抗体を発現する哺乳動物細胞を選択する。
【0112】
親和性成熟の別の方法は、提示細胞内での活性化誘導導シトシン脱アミノ酵素(AID)の発現誘導を包含する。AID活性の上昇は、候補ポリペプチドの高い変異速度をもたらす。図1に示したウイルス提示ベクターを、プロモーターの制御下にてAIDタンパク質をコードする核酸を含むように、改変し得る。あるいは、本発明は、構成的または誘導性プロモーターの制御下に、安定に組み込まれたAID遺伝子を有する提示細胞を提供する。
【0113】
(実施例6 抗体発現の誘導)
実施例1にて作製したウイルス提示ベクターを、tetR誘導性エレメントの挿入によって改変する。2つのtetO配列鎖状体を、CMV最小プロモーターに融合させる。tetR配列は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸の下流に挿入する。こうして、融合タンパク質の産生は、テトラサイクリンを添加することによって調節される。
【0114】
(実施例7 C9タグを使用する抗体細胞表面発現の定量)
本発明は、哺乳動物提示細胞表面上で発現した抗体の密度を測定するための方法を提供する。抗体の細胞表面発現の定量によって、抗体提示の効率、および、例えばウイルス提示ベクター内のプロモーターおよび/またはエンハンサーの変更による、改善の判定が可能となる。
【0115】
抗体細胞表面発現の定量は、発現した融合タンパク質に含まれるタグを使用して実施される。あるいは、定量は、単鎖抗体に結合する標識ペプチド(例えば、ビオチン化ペプチド)を使用して行われる。本発明において、任意の手段(例えば、FACS)によって測定することが可能なもので検出することが可能な任意のタグを使用することができる。例示的なタグの1つは、C9ペプチドタグ(GGTETSQVAPA、配列番号16)である。C9タグは、モノクローナル抗体1D4によって認識される。この抗体を検出できる任意の手段(例えば、FACS)を使用して、発現量を定量することができる。C9タグは、免疫グロブリン分子部分のC末端、かつ膜貫通部分のN末端に位置する。本発明の実施形態において、C9タグは、リンカー(例えばSGGSS(配列番号17)のような可動性リンカー)によって免疫グロブリン分子部分に接続される。C9タグはリンカーのC末端にXbaI部位を挿入することによってリンカーのC末端(1個のアミノ酸、アルギニン(R)をコードする)に連結される。C9リンカーを含有する例示的なウイルス提示ベクターを、以下の表8に示す。gp41の細胞外領域は18残基を有し、膜貫通部分は24残基、細胞内領域は8残基を有する(配列番号14のgp41タグ)。提示ベクター4は、1〜50番のアミノ酸を含有する切断されたgp41ポリペプチドをコードし、提示ベクター6は、完全長のgp41ポリペプチドをコードする。CD8の細胞外領域は12残基を有し、膜貫通領域は21残基、細胞内領域は11残基を有する(LYCNHRNRRRV、配列番号17)。CD28の細胞外領域は39残基を有し、膜貫通領域は27残基、細胞内領域は13残基を有する。コントロールとして、融合タンパク質をコードする核酸を有さないpCDNA3ベクターを使用した。scFv−48は、ヒトCXCR4に対する単鎖抗体である。
【0116】
【表8】

代表的な抗体の細胞表面発現の定量を、以下の通り実施した。293T細胞を、形質移入の約24時間前に、6ウェルプレートに播種した(各ウェルに1×10個の細胞)。リポフェクタミン2000TMを使用して、ウイルス提示ベクターDNA(4μg)を形質移入した。形質移入後約48時間にて、0.5mM EDTAを使用して、FACSのために細胞を収集した。抗体検出のため、α−C9一次抗体(ID4)を、1×10個の細胞当たり2μlで使用し、α−マウスIgG FITC標識二次抗体を1:50希釈で使用した。FACS分析は、上記のように、かつ当該分野で公知の通り実施した。この分析結果を、図14および図15に示す。図14Aは、FACSによって測定した、C9タグの発現に関して陽性であった細胞の割合を示す。C9を含有する融合構築物を発現する細胞の大部分(94%以上)がFACSを用いて同定されるが、C9タグを有さないコントロールベクターで形質移入した細胞集団で見られた陽性細胞は、極めて少数であった。図14Bは、表8に列挙したウイルス提示ベクターで形質移入した細胞についての平均蛍光強度(MFI)値を示す。切断されたか、または完全長のgp41ポリペプチドのいずれかを含有する融合タンパク質、およびCD8またはCD28のいずれかの膜貫通ドメインを含有するタンパク質の発現を、形質移入した細胞のMFI値を測定することによって定量した。図15A〜Gは、表8にて記載したウイルス提示ベクターで形質移入した細胞についてのFACSプロットを示す。
【0117】
(実施例8 エンベロープ組み込みシグナルを含有する構築物における抗体の細胞表面発現の定量)
本発明は、gp41エンベロープ(env)組み込みシグナルを含有する融合ウイルス提示ベクターを提供する。図16は、いくつかの融合タンパク質構築物を示す。構築物1は、gp41 TM領域の1〜50番アミノ酸を含有する。構築物2は、CD8膜貫通ドメインを含有する。構築物3は、CD28膜貫通ドメインを含有する。構築物4は、作動可能にgp41 env組み込みシグナルに連結されたCD8膜貫通ドメインを含有する。構築物3は、gp41 env組み込みシグナルに作動可能に連結されたCD28膜貫通ドメインを含む。表9に列挙した構築物を、以下のように293T細胞に形質移入した。293T細胞を、6ウェルプレート上に播種した(1×10個/ウェル)。リポフェクタミンを使用して細胞に形質移入し、形質移入から48時間後に、5mM EDTAで細胞を収集し、GFPおよびFcの細胞表面発現について、α−ヒトIgG−APCを使用して分析した。結果を図17および18に示す。この結果は、CD8、CD28、およびgp41 TMドメインが、実質的に、形質移入された融合タンパク質の細胞表面発現をもたらすことを実証し;エンベロープ取り込みシグナルが存在するにせよ存在しないにせよ、CD8およびCD28は、gp41 TMよりも高レベルの細胞表面発現をもたらすことを実証している。
【0118】
【表9】

(実施例9 レンチウイルスで形質移入した細胞における抗体の細胞表面発現)
切断した(1〜50番アミノ酸)か、または完全長のgp41 TM、CD8 TM、もしくはCD28 TMのいずれかを含有するウイルス提示構築物(表10に列挙)を、pSINレンチウイルス提示ベクターに導入し、哺乳動物細胞の表面上の融合タンパク質の発現を確認した。このレンチウイルスベクターは、検出を助けるためにGFPの形態のZsGreenを含有し、これを上記のように293T細胞に形質移入した。結果を図19および図20に示す。この結果は、レンチウイルスベクターに含まれるウイルス提示構築物が効率よく293T細胞内で発現され、融合タンパク質の細胞表面発現をもたらすことを実証している。
【0119】
【表10】

(等価物)
当業者は、本明細書中に記載された具体的な手順の多数の等価物を、単に慣習的な実験を使用して、認識するかまたは認識することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内であり、以下の請求項に包含されるとみなされる。本願にわたって引用された全ての引用文献、査定された特許、および公開された特許出願は、本明細書中に参考として援用される。これらの特許、出願および他の文献の適切な成分、プロセスおよび方法は、本発明およびその実施形態に対して、選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明の例示的なウイルス提示ベクター、ヘルパーベクターおよびエンベロープ構築物の模式図である。
【図2】図2は、哺乳動物細胞による候補ポリペプチド提示を使用する、候補ポリペプチドの選択に関するプロセスの模式図である。
【図3】図3は、哺乳動物細胞による候補ポリペプチド提示を使用する、候補ポリペプチドの親和性成熟に関するプロセスの模式図である。
【図4】図4Aは、抗体を含有する本発明の融合タンパク質の模式図である。図4Bは、293T細胞における本発明の融合タンパク質の発現を示す、ウエスタンブロットの写真画像である。図4Cは、ウイルスキャプシド表面上でsFvを発現するウイルス粒子を使用する、ウイルス捕捉実験の捕捉された抗原を示すSDS−PAGEの写真画像である。
【図5】図5A〜Hは、フローサイトメトリーによって測定されたsFvTac−IgG1抗体のC8166−45細胞への免疫特異的結合の検出を示す一連のグラフである。MFIは平均蛍光強度を表す。各実験で使用したDNA量をグラフ下側に示す。
【図6】図6は、未処理細胞(Dox−)と比較した、ドキシサイクリン処理(Dox+)による本発明のヒト単鎖抗体(sFvTac−IgG1)の誘導発現を示す棒グラフである。
【図7】図7は、Dox処理後の本発明のヒト単鎖抗体(sFvTac−IgG1)の誘導発現が、薬物の除去によって可逆性であることを示す棒グラフである。
【図8】図8は、creリコンビナーゼおよびloxP部位を含むレンチウイルス提示ベクターの図解である。
【図9】図9は、本発明の機能的プロテオミクススクリーニングを用いる標的タンパク質の同定を示す、模式図である。
【図10】図10は、機能的プロテオミクスに有用な本発明のデータベースの作製を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明のレンチウイルスおよび/または哺乳動物提示選択法のための、常磁性タンパクリポソームの使用を示す模式図である。
【図12】図12A〜Dは、候補ポリペプチドを発現するベクターおよびGFPを発現するベクターを同時形質移入した293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す一連の棒グラフである。
【図13】図13A〜Dは、IRESを含有する多機能ベクターを形質移入した293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す一連の棒グラフである。
【図14】図14A〜Bは、C9タグで検出した293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す一連の棒グラフである。
【図15】図15A〜Gは、C9タグで検出した293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す、一連のFACS分析である。
【図16】図16は、例示的な融合タンパク質の模式図である。
【図17】図17A〜Dは、形質移入効率、MFI値、および293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す、一連の棒グラフである。
【図18】図18A〜Iは、MFI値、および、抗ヒトIgGで染色された293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す、一連のFACS分析である。
【図19】図19A〜Dは、形質移入効率、MFI値、および293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す、一連の棒グラフである。
【図20】図20A〜Gは、MFI値、および抗ヒトIgGで染色された293T哺乳動物提示細胞の表面上における融合タンパク質の細胞表面発現を示す、一連のFACS分析である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞の表面上で候補ポリペプチドを提示する方法であって、
a) パッケージング細胞と、融合タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルス提示ベクターとを、該パッケージング細胞が該核酸配列を含むウイルス粒子を1つ以上産生するような条件下で接触させる工程であって、該融合タンパク質は、
i)リーダーペプチド;
ii)候補ポリペプチド;
iii)免疫グロブリン分子の少なくとも一部;
iv)膜貫通部分、
を含む、工程;ならびに
b)該ウイルス粒子と哺乳動物細胞とを、該哺乳動物細胞内で該融合タンパク質を発現するのに十分な条件下で接触させる工程であって、該候補ポリペプチドが、該哺乳動物細胞の表面上で提示させる、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記免疫グロブリン分子が、前記哺乳動物細胞の表面上にさらに提示される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫グロブリン分子が、IgG分子のヒンジ領域、CH2領域、またはCH3領域、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス提示ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記候補ポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が単鎖抗体、ドメイン抗体、二重特異性抗体、またはFabフラグメントである、請求項5の方法。
【請求項7】
前記候補ポリペプチドがライブラリに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)から成る群から選択されるレンチウイルスから得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記パッケージング細胞が、
(i) プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結されたenv遺伝子を含み、ここで該env遺伝子は、機能性エンベロープ遺伝子をコードする、エンベロープベクター;および
(ii) 1つ以上のウイルス構造遺伝子を含む、ヘルパーベクター、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記候補ポリペプチドが、前記ウイルス粒子と前記哺乳動物細胞とを接触させる前に、該ウイルス粒子の表面上にて発現させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記膜貫通部分が、ウイルス膜貫通部分または哺乳動物膜貫通部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物細胞が、ラモス−バーキットリンパ腫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ウイルス粒子の表面上に候補ポリペプチドを提示する方法であって、該ウイルス粒子上に該候補ポリペプチドが提示されるように、パッケージング細胞と、融合タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルス提示ベクターとを、該パッケージング細胞が該融合タンパク質を含むウイルス粒子を1つ以上産生するような条件下で接触させる工程を包含し、該融合タンパク質は、
i) リーダーペプチド;
ii) 候補ポリペプチド;
iii) 免疫グロブリン分子の少なくとも一部;
iv) 膜貫通部分;および
v) エンベロープ組み込みシグナル、
を含む、方法。
【請求項14】
前記候補ポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、単鎖抗体、ドメイン抗体、二重特異性抗体、またはFabフラグメントである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記候補ポリペプチドがライブラリに由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルス提示ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)から成る群から選択されるレンチウイルスから得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫グロブリン分子が、IgG分子のヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、またはこれらの組合せを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記膜貫通部分が、ウイルス膜貫通部分あるいは哺乳動物膜貫通部分である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記パッケージング細胞が、さらに、
(i) プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結されたenv遺伝子を含み、ここで該env遺伝子は、機能性エンベロープ遺伝子をコードする、エンベロープベクター;および
(ii) 1つ以上のウイルス構造遺伝子を含む、ヘルパーベクター、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
標的抗原に結合する候補ポリペプチドを同定する方法であって、
a)パッケージング細胞と、融合タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸ベクターとを、該パッケージング細胞が該核酸配列を含む1つ以上のウイルス粒子を生成するような条件下で接触させる工程であって、該融合タンパク質は、
i) リーダーペプチド;
ii) 候補ポリペプチド;
iii) 免疫グロブリン分子の少なくとも一部;および
iv) 膜貫通部分、
を含む、工程;
b)該ウイルス粒子と1つ以上の哺乳動物細胞とを、該1つ以上の哺乳動物細胞がそれぞれ、該哺乳動物細胞の表面上にて提示される単一種の該候補ポリペプチドを産生するような条件下で接触させる、工程;
c)該哺乳動物細胞の表面上で該単一種の候補ポリペプチドを提示している該哺乳動物細胞を、選別する工程;
d)該選別した哺乳動物細胞と、標的抗原とを接触させる工程;ならびに
e)該標的抗原に結合する哺乳動物細胞を同定し、それによって該標的抗原に結合する候補ポリペプチドを同定する、工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
工程d)およびe)を1回以上繰り返す工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記パッケージング細胞がさらに、
(i) プロモーターにプロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結されたenv遺伝子を含み、ここで該env遺伝子は、機能性エンベロープ遺伝子をコードする、エンベロープベクター;および
(ii) 1つ以上のウイルス構造遺伝子を含むヘルパーベクター、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記候補ポリペプチドが抗体またはそのフラグメントである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記候補ポリペプチドがライブラリに由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルス提示ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)から成る群から選択されるレンチウイルスから得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸ベクターが、選択マーカーをコードする核酸をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、フェレドキシンIVタンパク質、ルシフェラーゼタンパク質およびエクオリンタンパク質から成る群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記膜貫通部分は、ウイルス膜貫通部分または哺乳動物膜貫通部分である、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
候補ポリペプチドを親和性成熟させる方法であって、
a)パッケージング細胞と、融合タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸ベクターとを、該パッケージング細胞が該核酸配列を含む1つ以上のウイルス粒子を生成するよな条件下で接触させる工程であって、該融合タンパク質は、
i) リーダーペプチド、
ii) 候補ポリペプチド、
iii) 免疫グロブリン分子の少なくとも一部、および
iv) 膜貫通部分、
を含む、工程;
b)該1つ以上のウイルス粒子と1つ以上の第2の哺乳動物細胞とを、該1つ以上の哺乳動物細胞がそれぞれ、該1つ以上の哺乳動物細胞の表面上にて提示される単一種の該候補ポリペプチドを産生するような条件下で接触させる工程;
c)該哺乳動物細胞の表面上で単一種の該候補ポリペプチドを提示している該1つ以上の哺乳動物細胞を選別する工程;
d)該選別された1つ以上哺乳動物細胞と標的抗原とを接触させる工程;
e)該標的抗原に結合する哺乳動物細胞を同定する工程、
f)該同定した哺乳動物細胞と漸減する濃度の該標的抗原とを接触させる工程;ならびに
g)工程e)およびf)を、1回以上繰り返す工程、
を包含する、方法。
【請求項33】
前記パッケージング細胞がさらに、
(i) プロモーターにプロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結されたenv遺伝子を含み、ここで該env遺伝子は、機能性エンベロープ遺伝子をコードする、エンベロープベクター;および
(ii) 1つ以上のウイルス構造遺伝子を含むヘルパーベクター、
を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物細胞が活性化誘導シトシン脱アミノ酵素(AID)タンパク質を発現する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物細胞がラモス−バーキットリンパ腫細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記候補ポリペプチドがライブラリに由来する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記ウイルス提示ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記候補ポリペプチドが抗体またはそのフラグメントである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)から成る群から選択されるレンチウイルスから得られる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記核酸ベクターが選択マーカーを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、フェレドキシンIVタンパク質、ルシフェラーゼタンパク質、およびエクオリンタンパク質から成る群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
可溶性候補ポリペプチドを産生する方法であって、
a)パッケージング細胞とウイルス提示ベクターとを、該パッケージング細胞が1つ以上のウイルス粒子を生成するような条件下で接触させる工程であって、該ウイルスベクターは、
i)a)リーダーペプチド;
b)候補ポリペプチド;
c)免疫グロブリン分子の少なくとも一部;および
d)loxP部位に隣接する膜貫通部分、
を含む融合タンパク質をコードする第1核酸配列;
ii)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたcreリコンビナーゼポリペプチドをコードする第2核酸配列、
を含む、工程;
b)該ウイルス粒子と哺乳動物細胞とを、該哺乳動物細胞において該融合タンパク質および該creリコンビナーゼを発現するのに十分な条件下で接触させ、それによって可溶性候補ポリペプチドが該哺乳動物細胞によって産生される、工程;
という手順から成る可溶性候補ポリペプチドを産生する方法。
【請求項43】
前記候補ポリペプチドが抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体が、単鎖抗体、ドメイン抗体、二重特異性抗体、またはFabフラグメントである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記候補ポリペプチドがライブラリに由来する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルス提示ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)から成る群から選択されるレンチウイルスから得られる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ウイルス提示ベクターであって、
i)リーダーペプチド;
ii)候補ポリペプチド;
iii)免疫グロブリン分子の少なくとも一部;および
iv)膜貫通部分、
を含む融合タンパク質をコードする第1核酸配列を含む、ウイルス提示ベクター。
【請求項49】
前記免疫グロブリン分子が、IgG分子のヒンジ領域、CH2領域、CH3領域、またはこれらの組み合わせを含む、請求項48に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項50】
前記候補ポリペプチドが抗体またはそのフラグメントである、請求項48に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項51】
前記抗体が、単鎖抗体、ドメイン抗体、二重特異性抗体、またはFabフラグメントである、請求項50に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項52】
前記候補ポリペプチドがライブラリに由来する、請求項48に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項53】
前記ウイルス提示ベクターがレンチウイルスベクターである、請求項48に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項54】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)から成る群から選択されるレンチウイルスから得られる、請求項53に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項55】
前記第1核酸が、選択マーカーをさらに含む、請求項48に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項56】
前記選択マーカーが生物発光タンパク質部分である、請求項55に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項57】
前記生物発光タンパク質部分が、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、フェレドキシンIVタンパク質、ルシフェラーゼタンパク質、およびエクオリンタンパク質から成る群から選択される、請求項56に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項58】
さらに2つ以上のloxP部位を含み、該loxP部位が前記膜貫通部分に隣接する、請求項53に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項59】
作動可能に誘導性プロモーターに連結されたcreリコンビナーゼタンパク質をコードする第2核酸配列をさらに含む、請求項53に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項60】
前記第1核酸配列が、作動可能に誘導性プロモーターに連結されている、請求項53に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項61】
前記誘導性プロモーターが、テトラサイクリン誘導性プロモーター、アルコール誘導性プロモーター、ステロイド誘導性プロモーター、金属誘導性プロモーター、光誘導性プロモーター、および温度誘導性プロモーターから成る群から選択される、請求項60に記載のウイルス提示ベクター。
【請求項62】
ベクター系であって、
a)請求項53に記載のウイルス提示ベクター、
b)プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結されたenv遺伝子を含み、ここで該env遺伝子は、機能性エンベロープ遺伝子をコードする、エンベロープベクター;および
c)1つ以上のウイルス構造遺伝子を含むヘルパーベクター、
を含む、ベクター系。
【請求項63】
前記env遺伝子が水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質遺伝子を含む、請求項62に記載のベクター系。
【請求項64】
前記1つ以上のウイルス構造遺伝子が、gag、pol、tat、およびrevから成る群から選択される、請求項62に記載のベクター系。
【請求項65】
核酸ウイルス標的ベクターであって、
a)融合タンパク質をコードする第1核酸であって、該融合タンパク質は、
i)リーダーペプチド;
ii)候補ポリペプチド;
iii)免疫グロブリン分子の少なくとも1部分、および
iv)loxPに隣接した膜貫通部分、
を含む、第1核酸配列;
b)毒素を含む、第2核酸配列;
c)作動可能に誘導性プロモーターに連結されたcreリコンビナーゼをコードする、第3核酸配列;ならびに
d)侵入部分をコードする、第4核酸配列、
を含む、核酸ウイルス標的ベクター。
【請求項66】
前記侵入部分が、ウイルスエンベロープタンパク質、融合活性を有する真核生物タンパク質、結合能欠損型赤血球凝集タンパク質、および結合能欠損型インフルエンザ赤血球凝集タンパク質から成る群から選択される、請求項65に記載のウイルス標的ベクター。
【請求項67】
核酸ウイルス標的ベクターであって、
a)融合タンパク質をコードする第1核酸であって、該融合タンパク質は、
i)リーダーペプチド;
ii)候補ポリペプチド;
iii)免疫グロブリン分子の少なくとも1部分;
iv)毒素、および
v)loxPに隣接する膜貫通部分、
を含む、第1核酸配列;
b)作動可能に誘導性プロモーターに連結されたcreリコンビナーゼをコードする、第2核酸配列;および
c)侵入部分をコードする、第3核酸配列、
を含む、核酸ウイルス標的ベクター。
【請求項68】
前記侵入部分が、ウイルスエンベロープタンパク質、融合活性を有する真核生物タンパク質、結合能欠損型赤血球凝集タンパク質、および結合能欠損型インフルエンザ赤血球凝集タンパク質から成る群から選択される、請求項67に記載のウイルス標的ベクター。
【請求項69】
被験体における核酸配列の標的化送達のための方法であって、該核酸配列は融合タンパク質をコードし、該融合タンパク質は、
i)リーダーペプチド;
ii)候補ポリペプチド;
iii)免疫グロブリン分子の少なくとも1部分;
iv)膜貫通部分;および
v)侵入部分、
を含み、
ここで、該核酸はウイルス粒子の表面上で発現され、該候補ポリペプチドは標的細胞表面の抗原に特異的に結合する方法であって、
該方法は、該候補ポリペプチドが該細胞に選択的に結合し、該核酸が該細胞を形質導入するような条件下で、該ウイルス粒子が該標的細胞の抗原を発現する細胞に接触するように、該ウイルス粒子を該被験体内に導入する工程を包含する、方法。
【請求項70】
前記侵入部分が、ウイルスエンベロープタンパク質、融合活性を有する真核生物タンパク質、結合能欠損型赤血球凝集タンパク質、および結合能欠損型インフルエンザ赤血球凝集タンパク質から成る群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記1つ以上の哺乳動物細胞がカルシウム感受性生物発光タンパク質を発現する、請求項22に記載の方法。
【請求項72】
前記カルシウム感受性生物発光タンパク質がエクオリンである、請求項71に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−507272(P2008−507272A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522497(P2007−522497)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/018330
【国際公開番号】WO2006/022944
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502206795)ダナ−ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】