説明

レーザアニール処理体の製造方法およびレーザアニール装置

【課題】レーザ光を用いた被処理体のアニール処理においてレーザエネルギーの利用効率を改善する。
【解決手段】被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール装置において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射する第1の光学系と、前記被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に導いて再照射する第2の光学系とを有するレーザアニール装置を用いて、レーザ光を前記被処理体に導いて照射するとともに、該被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に再照射してレーザアニールすることで、被処理体表面から反射されるレーザ光を利用してレーザエネルギー利用率を上げることができ、また、前記再照射を前提にしてラインビームの長軸の長さを長くしたり、最大エネルギー密度を上げたりすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの画素スイッチや駆動回路に用いられる薄膜トランジスタの多結晶あるいは単結晶半導体膜を製造する際などに好適に利用することができるレーザアニール処理体の製造方法およびレーザアニール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの基板などに用いられる半導体薄膜では、アモルファス膜を用いるものの他、結晶薄膜を用いるものが知られている。この結晶薄膜に関し、アモルファス膜をアニールして結晶化させることにより製造する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
上記アニール処理では、アモルファス膜などの被処理体上にレーザ光を照射することでレーザ光が被処理体内に侵入して熱エネルギーを与えることで被処理体を結晶化させる方法が知られている。レーザ光は、レーザ発振器から出力され、レンズ、ミラー等で構成される光学系を通して被処理体に照射される。
また、アニール処理として、結晶質膜にレーザ光を照射して欠陥の除去や結晶性の改善などの改質を目的として行うものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−147487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記被処理体にレーザ光を照射すると、被処理体表面でレーザ光が反射することは避けられない。例えば、アモルファスシリコン膜はエキシマレーザ光(波長:308nm)を膜表面で50%反射する性質を持っている。そのため、アモルファスシリコン薄膜をエキシマレーザ光でアニールする際に、シリコン薄膜の表面反射により、エネルギー利用率が50%程度にしかならないという問題がある。
また、被処理体表面で反射したレーザ光が、上記光学系を通して逆進すると、レーザ発振器に照射されてレーザ発振器の損傷を招くおそれがある。このため、被処理体表面に対し、真直方向(入射角0度)からではなく、所定の入射角(>0)を設定して被処理体表面に斜め方向からレーザ光を照射する方法も提案されている。
【0005】
上記装置を図6に示す。図示しないレーザ発振器から出力されたレーザ光は、光学系30で適宜整形されて該光学系30で導かれる。該光学系30を出射されたレーザ光40は、被処理体50に入射角φで照射される。するとレーザ光40は、被処理体50で屈折しつつ被処理体50内に侵入して該被処理体50にレーザ光エネルギーを付与する。この際に、被処理体50の表面では、レーザ光40の一部は入射角φに従って反射角φによって反射する。これにより、被処理体表面で反射したレーザ光41がそのまま光学系30を逆進してレーザ発振器に至るのを防止することができる。しかし、この場合でも、反射したレーザ光41のエネルギーが被処理体50を照射するために有効に利用されず無駄になっているという点では上記と同様である。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、レーザ光を利用して被処理体のアニール処理を行う際に、レーザ光のエネルギー効率を高めて効率よくアニール処理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明のレーザアニール装置は、被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール装置において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射する第1の光学系と、前記被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に導いて再照射する第2の光学系とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のレーザアニール処理体の製造方法は、被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール処理体の製造方法において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射するとともに、該被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に再照射してレーザアニールを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、被処理体表面で反射したレーザ光を再度、被処理体表面に照射してアニール処理に供することができ、エネルギー利用効率が格段に向上する。また、これにより被処理体の照射部分での最大エネルギー密度を上げることも可能である。さらには、レーザ光をライン状などに整形して利用する場合、照射面積を大きくするとエネルギー密度が小さくなるため整形する形状にも制約(例えばラインビームの長軸長さ)があるが、エネルギー利用効率を向上させることによって、例えばラインビームの長軸長さを長くしてアニール処理を行うことができ、生産性が向上する効果も得られる。
【0010】
なお、第2の光学系を通して被処理体に再照射されるレーザ光は、通常は第1の光学系による照射位置と同一の位置に照射するが、本発明としてはこれに限定されるものではなく、前記照射位置と異なる位置に照射することも可能である。例えば、第1の光学系による照射位置に対し、第2の光学系による照射位置を僅かにずらして重複照射したり、走査方向前方側に照射して予備加熱に利用したり、走査方向後方側に照射して後加熱に利用したりすることも可能である。ただし、照射位置での照射エネルギーを大きくしたい場合には、第1の光学系を通したレーザ光と第2の光学系を通したレーザ光とは、被処理体の同一位置に照射する。
【0011】
上記したレーザ光は、被処理体に照射する際に、被処理体表面付近で収束するように集光される。したがって、このレーザ光が被処理体表面で反射されると拡散しつつ光路を進む。このため、第2の光学系ではレーザ光を被処理体表面に再照射する際に、集光しつつ照射するのが望ましい。該集光は凸レンズや凹面鏡を用いることができ、凹面鏡では、反射と集光とを同時に行って被処理体表面にレーザ光を再照射することができる。
なお、第2の光学系を通したレーザ光の再照射においては、第1の光学系を通して照射されるレーザ光とビーム形状が同じになるようにして再照射することができる。これにより被処理体表面を同一の形状および面積でアニール処理することができる。ただし、本発明としては、第1の光学系を通したレーザ光のビーム形状と第2の光学系を通したレーザ光のビーム形状とが異なるものであってもよく、所定の目的をもって第2の光学系を通したレーザ光のビーム形状を整形するものであってもよい。
【0012】
上記再照射は、第1の光学系を通して照射されて反射したレーザ光について行う他、再照射されて被処理体表面で反射したレーザ光をさらに再照射するものであってもよく、その繰り返し回数は特に限定されない。被処理体表面でレーザ光が50%反射される場合、一度の再照射によって75%のエネルギー利用率を得ることができ、2度の再照射によって90%弱のエネルギー利用率を得ることができ、3度の再照射によって94%弱のエネルギー利用率を得ることができる。
【0013】
なお、被処理体表面に真直に照射されたレーザ光は、正反射すると同じ光路を通って逆進するため、第2の光学系の構成、配置が制限される。これを回避するため、第1の光学系を通して被処理体にレーザ光を照射する際に、入射角を定めて(>0度)斜め方向から照射することができる。これにより第2の光学系の配置が容易になる。
【0014】
また、被処理体表面で反射したレーザ光を同じ角度で被処理体に再照射すると、レーザ光は入射角と同じ角度で反射されてレーザ発振器側に逆進しやすくなる。このため再照射の際の入射角をそれ以前に被処理体で反射した際の反射角と異なる角度にすることで、再反射したレーザ光が反射してレーザ発振器にそのまま逆進するのを回避できる。再照射の入射角をそれ以前の反射角と異なるようにするために、適宜の偏向部材、例えばミラー、プリズムなどを用いることができる。
なお、繰り返し再照射する際には、反射光のエネルギーも次第に小さくなるので、二度目以降の再照射では、それ以前の反射角と同じ角度で再照射しても逆進による問題は小さくなる。
【0015】
本発明では、上記被処理体としてはアニール処理がなされるものであればよく、特に種別等が限定されるものではないが、例えば、基板上に形成された半導体薄膜を被処理体とすることができる。該半導体薄膜は、アモルファス薄膜として上記アニール処理によって結晶化させるものであってもよく、また、結晶薄膜を対象にしてアニール処理によって欠陥除去などの改質を行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のレーザアニール処理体の製造方法によれば、被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール処理体の製造方法において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射するとともに、該被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に再照射してレーザアニールを行うので、被処理体表面から反射されるレーザ光を被処理体に再照射してレーザ光のエネルギー利用率を上げることができる。また、前記再照射を前提にしてラインビームの長軸の長さを長くしたり、最大エネルギー密度を上げたりすることが可能になる。
【0017】
また、本発明のレーザアニール装置によれば、被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール装置において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射する第1の光学系と、前記被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に導いて再照射する第2の光学系とを有するので、前記製造方法を効率よく、また確実に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態のレーザアニール装置を示す概略図である。
【図2】同じく、レーザ光の照射位置付近を示す拡大斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態のレーザアニール装置を示す概略図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態のレーザアニール装置を示す概略図である。
【図5】同じく、レーザ光の照射位置付近を示す拡大斜視図である。
【図6】従来のレーザアニール装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図1、2に基づいて説明する。
図1にレーザアニール装置の概略構成、図2にレーザ光の照射位置周辺を示す。
レーザアニール装置1は、エキシマレーザを出力するレーザ発振器2を備えている。レーザ発振器2の出力先には、レーザ発振器2から出力されたレーザ光2aの出力を調整するアッテネータ3が配置されている。アッテネータ3は、例えばレーザ光の透過率を調整することでレーザ光の出力調整を行うことができる。アッテネータ3で出力調整されたレーザ光2aの進行先には、該レーザ光2aをラインビーム状のレーザ光100に整形し、処理室5内の被処理体に導く光学系4が設けられている。図では、光学系4のうち、凸形状のレンズ4a、ミラー4bのみ示されている。該光学系4は、本発明の第1の光学系に相当する。該光学系4の出射先に、ステージ6が位置する。
ステージ6は、図示しない駆動装置によって少なくとも水平方向一軸で往復移動が可能になっている。該ステージ6上には、アモルファスシリコン薄膜21が形成された基板20が設置される。前記アモルファスシリコン薄膜21は、本発明の被処理体に相当する。
【0020】
前記光学系4は、前記アモルファスシリコン薄膜21に対しレーザ光100が長軸方向を基準にして入射角φ(φ>0)で入射するように設定されており、レーザ光100は、光学系4の例えば図示しない対物レンズによって集光されつつ前記アモルファスシリコン薄膜21に照射される。その際にレーザ光100は前記アモルファスシリコン薄膜21の表面付近に収束する。
該入射角φに対する反射角φ方向には、第2の光学系として、断面が凹面となる長尺な凹面鏡7が配置されており、凹面がアモルファスシリコン薄膜21における反射部位に向けられている。また、該凹面鏡7は、反射してアモルファスシリコン薄膜21に再照射されるレーザ光101がアモルファスシリコン薄膜21表面付近で収束するように焦点が設定されている。
【0021】
次に、上記レーザアニール装置1の動作について説明する。
先ず、処理室5内のステージ6上にアモルファスシリコン薄膜21が形成された基板20を設置する。
レーザ発振器2からは波長308nmのエキシマレーザ光であるレーザ光2aが出力される。該レーザ光2aは、アッテネータ3を透過して所望の出力に調整され、光学系4においてレンズ4aによる集光、ミラー4bによる反射などを経てラインビーム状のレーザ光100に整形される。該レーザ光100は、ステージ6に設置した基板20上のアモルファスシリコン薄膜21に入射角φで照射される。
この際に、ステージ6は、図示しない制御装置によって移動が制御され、レーザ照射時に、ラインビームの短軸方向に所定の送り速度で等速で移動される。
【0022】
アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光100は、約50%がアモルファスシリコン薄膜21に侵入し、エネルギーが吸収されてアモルファスシリコン薄膜21を加熱する。加熱されたアモルファスシリコン薄膜21は、加熱、冷却に従って結晶化などのアニール処理がなされる。
一方、アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光100の約50%は表面で反射される。この際には、図1、2に示すように、レーザ光は入射角に従って反射角φで反射され、反射したレーザ光101は、その進行方向にある凹面鏡7に入射する。
【0023】
反射光であるレーザ光101は、レーザ光100とは逆に、反射によって拡散しつつ凹面鏡7に当たってさらに反射、集光される。該反射によってレーザ光101はレーザ光100が入射したアモルファスシリコン薄膜21の照射部位に照射される。この際にレーザ光101は凹面鏡7の湾曲面に従って集光され、レーザ光100と同じ位置、同じ形状でアモルファスシリコン薄膜21表面付近に収束する。アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光101は、前記比率と同様に、約50%がアモルファスシリコン薄膜21に侵入してアニール処理に寄与し、一方、約50%はアモルファスシリコン薄膜21表面で反射される。
【0024】
上記により、レーザ光100のうち約75(≒100/50+50/2)%のエネルギー分はアモルファスシリコン薄膜21に侵入してアニール処理に寄与することができ、従来、50%程度のエネルギー利用率であったのに対し、大幅なエネルギー利用率改善効果が得られる。
【0025】
次に、他の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上記実施形態と同様の構成については同様の符号を付してその説明を簡略化する。
この実施形態のレーザニール装置10では、上記実施形態と同様に、エキシマレーザを出力するレーザ発振器2、レーザ光2aの出力を調整するアッテネータ3、アッテネータ3で出力調整されたレーザ光2aをラインビーム状のレーザ光100に整形し、処理室5内の被処理体に導く光学系14を備えている。この図では、光学系14として、レンズ14a、ミラー14bのみが示されている。
該光学系14の出射先に、処理室5内のステージ6が位置する。ステージ6は、前記実施形態と同様に少なくとも水平方向一軸で往復移動が可能になっている。ステージ6には、上記実施形態と同様にアモルファスシリコン薄膜21が形成された基板20が設置される。
【0026】
前記光学系14は、前記アモルファスシリコン薄膜21に対しレーザ光100が長軸方向を基準にして入射角φ1(φ1>0)で入射するように設定されており、レーザ光100は、光学系14の例えば対物レンズによって集光されつつ前記アモルファスシリコン薄膜21に照射される。その際にレーザ光100は前記アモルファスシリコン薄膜21の表面付近に収束する。
【0027】
上記入射角φ1に対する反射角φ1方向には、アモルファスシリコン薄膜21表面で反射したレーザ光101を反射して偏向させるミラー11が配置されており、該ミラー11の反射方向に、凹面が対峙するように凹面鏡12が配置されており、凹面鏡12の凹面は、さらにアモルファスシリコン薄膜21表面にも対峙している。
凹面鏡12の反射方向は、レーザ光100が照射されたアモルファスシリコン薄膜21の照射部位に向いており、凹面鏡12で反射されたレーザ光101の入射角はφ2(φ2>φ1>0)となるように設定されている。また該凹面鏡12は、アモルファスシリコン薄膜21に再照射されるレーザ光101がアモルファスシリコン薄膜21表面付近で収束するように焦点が設定されている。
上記ミラー11および凹面鏡12は、本発明における第2の光学系に相当する。
【0028】
次に、上記レーザアニール装置1の動作について説明する。
レーザ発振器2から照射され、アッテネータ3で所望の出力に調整されたレーザ光2aは、光学系14においてレンズ14aによる集光、ミラー14bによる反射などを経てラインビーム状のレーザ光100に整形される。該レーザ光100は、ステージ6に設置した基板20上のアモルファスシリコン薄膜21に入射角φ1で照射される。
この際に、ステージ6は、図示しない制御装置によって移動が制御され、レーザ照射時に、ラインビームの短軸方向に所定の送り速度で等速で移動される。
【0029】
アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光100は、約50%がアモルファスシリコン薄膜21に侵入し、約50%は表面で反射される。反射するレーザ光101は入射角に従って反射角φ1で反射され、反射したレーザ光101は、その進行方向にあるミラー11に入射し、その入射角に従って反射し、凹面鏡12に入射する。
レーザ光101は、レーザ光100とは逆に、反射によって拡散しつつミラー11、凹面鏡12に入射し反射される。凹面鏡12における反射によって、レーザ光101はレーザ光100が入射したアモルファスシリコン薄膜21の入射部位に入射角φ2で照射され、凹面鏡12の湾曲面に従って集光され、レーザ光100と同じ位置、同じ形状でアモルファスシリコン薄膜21表面付近に収束する。
【0030】
アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光101は、前記比率と同様に、約50%がアモルファスシリコン薄膜21に侵入してアニール処理に寄与し、一方、約50%はアモルファスシリコン薄膜21表面で反射される。上記により、レーザ光100のうち約75%のエネルギー分はアモルファスシリコン薄膜21に侵入してアニール処理に寄与する。再照射されたレーザ光101の約50%は、反射角φ2で再度アモルファスシリコン薄膜21表面で反射される。なお、この形態では、レーザ光100が入射した入射角φ1とレーザ光102が入射した入射角φ2とが異なる角度になっており、レーザ光101の一部がアモルファスシリコン薄膜21表面で再度反射される際に、その反射したレーザ光102が、逆進してレーザ発振器2に至るのを回避することができる。
【0031】
次に、さらに他の実施形態を図4、5に基づいて説明する。なお、上記実施形態と同様の構成については同様の符号を付してその説明を簡略化する。
この実施形態のレーザニール装置10では、上記実施形態と同様に、エキシマレーザを出力するレーザ発振器2、レーザ光2aの出力を調整するアッテネータ3、アッテネータ3で出力調整されたレーザ光2aをラインビーム状のレーザ光100に整形し、処理室5内の被処理体に導く光学系14を備えている。また、上記実施形態と同様に、前記光学系14は、前記アモルファスシリコン薄膜21に対しレーザ光100が長軸方向を基準にして入射角φ1(φ1>0)で入射するように設定されており、レーザ光100は、光学系4の例えば対物レンズによって集光されつつ前記アモルファスシリコン薄膜21に照射されアモルファスシリコン薄膜21の表面付近に収束する。
【0032】
該入射角φ1に対する反射角φ1方向には、アモルファスシリコン薄膜21表面で反射したレーザ光101を反射して偏向するミラー11が配置され、該ミラー11の反射方向に、凹面が対峙するように凹面鏡12が配置されている。凹面鏡12の反射方向は、レーザ光100が照射されたアモルファスシリコン薄膜21の照射部位に向いており、その入射角はφ2(φ2>φ1>0)となっている。該凹面鏡12は、アモルファスシリコン薄膜21に再照射されるレーザ光101がアモルファスシリコン薄膜21表面付近で収束するように焦点が設定されている。この入射角φ2に対する反射角φ2方向には、前記照射部位に対峙するように凹面鏡13が配置されている。レーザ光101が照射されることでアモルファスシリコン薄膜21表面で反射したレーザ光102は、該凹面鏡13に入射されて反射し、アモルファスシリコン薄膜21に再照射される。該凹面鏡13は、アモルファスシリコン薄膜21に再照射されるレーザ光102がアモルファスシリコン薄膜21表面付近で収束するように焦点が設定されている。
上記ミラー11、凹面鏡12、凹面鏡13は、本発明の第2の光学系に相当する。
【0033】
次に、上記レーザアニール装置1の動作について説明する。
レーザ発振器2から照射され、アッテネータ3で所望の出力に調整されたレーザ光2aは、光学系14においてラインビーム状のレーザ光100に整形される。該レーザ光100は、ステージ6に設置した基板20上のアモルファスシリコン薄膜21に入射角φ1で照射される。
【0034】
アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光100は、約50%がアモルファスシリコン薄膜21に侵入し、約50%は表面で反射され、反射したレーザ光101は反射角φ1で反射され、その進行方向にあるミラー11で反射され、凹面鏡12に入射する。レーザ光101は、レーザ光100とは逆に、反射によって拡散しつつミラー11、凹面鏡12に当たり、反射される。該反射においてレーザ光101はレーザ光100が入射したアモルファスシリコン薄膜21の入射部位に入射角φ2で照射され、レーザ光100と同じ位置、同じ形状でアモルファスシリコン薄膜21表面付近に収束する。アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光101は、一部がアモルファスシリコン薄膜21表面で反射角φ2で反射され、その進行方向にある反射鏡13に拡散しつつ入射され、反射される。
該反射においてレーザ光102はレーザ光100が入射したアモルファスシリコン薄膜21の照射部位に照射され、該凹面鏡13の湾曲面に従って集光され、レーザ光100と同じ位置、同じ形状でアモルファスシリコン薄膜21表面付近に収束する。
【0035】
アモルファスシリコン薄膜21に照射されたレーザ光102は、前記比率と同様に、約50%がアモルファスシリコン薄膜21に侵入してアニール処理に寄与し、一方、約50%はアモルファスシリコン薄膜21表面で反射される。上記により、レーザ光100のうち約90%(≒100/2+50/2+25/2)のエネルギー分はアモルファスシリコン薄膜21に侵入してアニール処理に寄与する。
なお、この形態では、レーザ光100が入射した入射角φ1とレーザ光102が入射した入射角φ2とが異なる角度になっているが、その後の反射によってレーザ光101の一部が光学系14を逆進可能であるが、逆進するレーザ光のエネルギーは繰り返しの再照射によって相当程度低くなっており、レーザ発振器2に対する影響は殆どない。
【0036】
なお、上記各実施形態では、ライン状に整形されたレーザ光について説明をしたが、本発明としてはレーザ光のビーム形状が上記に限定されるものではなく、例えば、スポット状のレーザ光においても同様に適用が可能である。
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記各実施形態の内容に限定をされるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 レーザアニール装置
2 レーザ発振器
2a レーザ光
4 光学系
5 処理室
7 凹面鏡
10 レーザニール装置
11 ミラー
12 凹面鏡
13 凹面鏡
100 レーザ光
101 レーザ光
102 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール装置において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射する第1の光学系と、前記被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に導いて再照射する第2の光学系とを有することを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項2】
前記第2の光学系は、前記第1の光学系による前記被処理体表面の照射位置と同一の位置にレーザ光を再照射するものであることを特徴とする請求項1記載のレーザアニール装置。
【請求項3】
前記第2の光学系は、前記被処理体で反射したレーザ光を前記前記第1の光学系によるレーザ光の入射角と異なる入射角で前記被処理体にレーザ光を再照射することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザアニール装置。
【請求項4】
前記第2の光学系は、前記被処理体に照射されて反射したレーザ光を繰り返し前記被処理体に導いて再照射するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザアニール装置。
【請求項5】
前記第2の光学系は、前記第1の光学系を通して前記被処理体に照射されるレーザ光のビーム形状と同一のビーム形状で前記被処理体にレーザ光を再照射するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
前記第2の光学系はレーザ光を集光する集光部材を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザアニール装置。
【請求項7】
前記第2の光学系はレーザ光を反射しつつ集光する凹面鏡を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のレーザアニール装置。
【請求項8】
前記第1の光学系は、前記被処理体表面と直交する方向に対し、角度差を有して該被処理体にレーザ光が照射されるように設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のレーザアニール装置。
【請求項9】
被処理体表面にレーザ光を照射して該被処理体のアニール処理を行うレーザアニール処理体の製造方法において、レーザ光を前記被処理体に導いて照射するとともに、該被処理体に照射されて反射したレーザ光を前記被処理体に再照射してレーザアニールを行うことを特徴とするレーザアニール処理体の製造方法。
【請求項10】
前記再照射を2回以上、繰り返し行うことを特徴とする請求項9記載のレーザアニール処理体の製造方法。
【請求項11】
前記再照射は、前記被処理体に対する最初の照射位置と同一の位置に行うことを特徴とする請求項9または10に記載のレーザアニール処理体の製造方法。
【請求項12】
前記再照射は、前記被処理体に照射されるレーザ光と同一のビーム形状で行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のレーザアニール処理体の製造方法。
【請求項13】
前記被処理体は、基板上に形成された半導体薄膜であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のレーザアニール処理体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204912(P2011−204912A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70869(P2010−70869)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】