説明

レーザアブレーション装置、レーザアブレーション試料分析システム及び試料導入方法

【課題】 複数の試料を順次効率良くレーザアブレートすることができるレーザアブレーション装置、レーザアブレーション試料分析システム及び試料導入方法を提供する。
【解決手段】 レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、キャリアガスが充填されたレーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、開閉扉43を介して試料待機部5からレーザ光照射部4に搬送手段44により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザアブレーション装置、レーザアブレーション試料分析システム及び試料導入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザアブレーション装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。このレーザアブレーション装置では、試料セル内に配置された試料にレーザ光が照射されて試料の一部が微粒子化され、その試料の一部がキャリアガスによってICP質量分析装置等に送られる。そして、試料セル内の試料を新たな試料に交換する際には、試料セル内に空気が入り込まないようにパージガスによって試料セル内のガスの置換が行われる。これは、試料セル内に空気が入り込むと、試料の分析において、空気を構成する成分が試料中に存在したものか否かが分からなくなるなどといった理由によるものである。
【特許文献1】特開平11−201945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したようなレーザアブレーション装置は、試料セル内の試料を新たな試料に交換する度にパージガスによって試料セル内のガスの置換を行うことが必要となるため、複数の試料を順次効率良くレーザアブレートするのには不向きである。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の試料を順次効率良くレーザアブレートすることができるレーザアブレーション装置、レーザアブレーション試料分析システム及び試料導入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るレーザアブレーション装置は、試料にレーザ光を照射することにより試料の一部を微粒子化するレーザアブレーション装置であって、レーザ光が照射される試料が配置されると共に、微粒子化された試料の一部を運ぶためのキャリアガスが流通するレーザ光照射部と、レーザ光照射部に搬送される次位の試料が待機させられる試料待機部とを備え、レーザ光照射部への大気の流入を防止しつつ、試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料を搬送することを特徴とする。
【0006】
このレーザアブレーション装置においては、レーザ光照射部に搬送される次位の試料は、試料待機部で待機させられた後、レーザ光照射部への大気の流入が防止されつつ、試料待機部からレーザ光照射部に搬送され、レーザ光照射部でレーザアブレートされる。このように、試料待機部からレーザ光照射部への次位の試料の搬送に際してはレーザ光照射部への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部に次位の試料を導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部のガスの置換を行うことが不要となる。従って、このレーザアブレーション装置によれば、複数の試料を順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0007】
なお、「試料をレーザアブレートする」とは、試料にレーザ光を照射することにより試料の一部を微粒子化することを意味する。
【0008】
また、試料待機部は、キャリアガスと同一のガスが充填される第1の室内に設けられ、レーザ光照射部は、第1の室に隣接する第2の室内に設けられ、第1の室と第2の室との間に設けられた開閉扉を介して試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料が搬送されることが好ましい。試料待機部が設けられる第1の室内にはキャリアガスと同一のガスが充填されるため、第1の室と第2の室との間に設けられた開閉扉を介して試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料を搬送するに際し、レーザ光照射部への大気の流入を確実に防止することができる。
【0009】
また、試料待機部は、試料が流通する第1の流通路内に設けられ、レーザ光照射部は、キャリアガスが流通する第2の流通路内に設けられ、第1の流通路と第2の流通路とを連通する搬送路を介して試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料が搬送されることが好ましい。レーザ光照射部が設けられる第2の流通路内をキャリアガスが流通するため、例えば、試料待機部が設けられる第1の流通路内に大気が流入しても、大気圧よりキャリアガスのガス圧を高くしておけば、第1の流通路と第2の流通路とを連通する搬送路を介して試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料を搬送するに際し、レーザ光照射部への大気の流入を確実に防止することができる。
【0010】
また、試料待機部は、所定の液体を貯留する第1の容器内に設けられ、レーザ光照射部は、液体の液面下に開口部が位置するキャップ状の第2の容器内に設けられ、開口部を介して試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料が搬送されることが好ましい。試料待機部が設けられる第1の容器内には液体が貯留されるため、液体の液面下に位置する第2の容器の開口部を介して試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料を搬送するに際し、レーザ光照射部への大気の流入を確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明に係るレーザアブレーション試料分析システムは、試料にレーザ光を照射することにより試料の一部を微粒子化するレーザアブレーション装置と、微粒子化された試料の一部に対して所定の分析を行う試料分析装置とを具備するレーザアブレーション試料分析システムであって、レーザアブレーション装置は、レーザ光が照射される試料が配置されると共に、微粒子化された試料の一部を運ぶためのキャリアガスが流通するレーザ光照射部と、レーザ光照射部に搬送される次位の試料が待機させられる試料待機部とを備え、レーザ光照射部への大気の流入を防止しつつ、試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料を搬送する、ことを特徴とする。
【0012】
このレーザアブレーション試料分析システムは、上述したレーザアブレーション装置を具備するため、複数の試料を順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0013】
また、本発明に係る試料導入方法は、試料にレーザ光を照射することにより試料の一部を微粒子化するレーザアブレーション装置において、レーザ光が照射される試料が配置されると共に、微粒子化された試料の一部を運ぶためのキャリアガスが流通するレーザ光照射部に次位の試料を導入する試料導入方法であって、次位の試料を試料待機部で待機させる工程と、キャリアガスが充填されたレーザ光照射部への大気の流入を防止しつつ、試料待機部からレーザ光照射部に次位の試料を搬送する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
この試料導入方法においては、レーザ光照射部に搬送される次位の試料は、試料待機部で待機させられた後、キャリアガスが充填されたレーザ光照射部への大気の流入が防止されつつ、試料待機部からレーザ光照射部に搬送される。このように、試料待機部からレーザ光照射部への次位の試料の搬送に際してはレーザ光照射部への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部に次位の試料を導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部のガスの置換を行うことが不要となる。従って、この試料導入方法によれば、複数の試料を順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の試料を順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0017】
図1に示されるように、レーザアブレーションICP質量分析システム(レーザアブレーション試料分析システム)1は、試料Sにレーザ光Lを照射することにより試料Sの一部を微粒子化するレーザアブレーション装置2と、その微粒子化された試料Sの一部をプラズマPでイオン化して質量分析を行うICP質量分析装置(試料分析装置)3とを具備している。
【0018】
レーザアブレーション装置2は、レーザ光Lが照射される試料Sが配置されるレーザ光照射部4と、このレーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sが待機させられる試料待機部5とを備えている。レーザ光照射部4はレーザ光照射室(第2の室)6内に設けられており、試料待機部5は、レーザ光照射室6に隣接する試料待機室(第1の室)7内に設けられている。
【0019】
レーザ光照射室6には、レーザアブレートされて微粒子化された試料Sの一部を運ぶためのキャリアガスをレーザ光照射室6内に導入する導入管8、及びレーザ光照射室6外に導出する導出管9が接続されている。これにより、微粒子化された試料Sの一部を運ぶためのキャリアガスがレーザ光照射部4を流通することになる。
【0020】
試料待機室7には、ガスの置換を行うためのパージガスを試料待機室7内に導入する導入管11、及び試料待機室7外に導出する導出管12が接続されている。これにより、試料待機室7内にはパージガスが充填されることになる。なお、キャリアガス及びパージガスには、例えばアルゴンガス等の同一のガスが用いられる。
【0021】
また、レーザアブレーション装置2は、所定の波長でレーザ光Lを出射するレーザユニット13を備えている。このレーザユニット13から出射されたレーザ光Lは、ミラー14,15により反射されて波長変換素子16に入射する。この波長変換素子16により波長が半減されたレーザ光Lは、波長変換素子17により更に波長が半減される。その後、レーザ光Lは、ミラー18,19,21により反射されてレンズ22を通り、ビームスプリッタ23により反射されて、レーザ光照射室6内のレーザ光照射部4に配置された試料Sに向かって進行する。
【0022】
一例として、波長1064nmのレーザ光Lを出射するNd−YAGレーザをレーザユニット13が搭載しているものとする。このとき、波長1064nmのレーザ光Lは、波長変換素子16により波長532nmのレーザ光L(2次高調波)に変換され、この波長532nmのレーザ光Lは、波長変換素子17により波長266nmのレーザ光L(3次高調波)に変換される。このように、レーザ光Lを短波長にすることで、種々の試料Sをレーザアブレートすることが可能になる。
【0023】
更に、レーザアブレーション装置2は、レーザ光照射室6内のレーザ光照射部4に配置された試料Sを観察するためのCCDカメラ24を備えている。このCCDカメラは、ビームスプリッタ23を介して、例えば、試料Sの表面においてレーザ光Lが照射されている部分を撮像する。
【0024】
ICP質量分析装置3は、レーザアブレーション装置2の導出管9に接続される導入管25と、この導入管25を介してキャリアガスにより運ばれてきた試料Sの一部をイオン化するためのプラズマPを発生させるプラズマトーチ26と、このプラズマトーチ26の先端部近傍に位置するイオン導入部27を有する質量分析部28とを備えている。
【0025】
プラズマトーチ26は3重管構造となっており、このプラズマトーチ26には、導入管25からキャリアガスが導入され、管29からプラズマP形成用のプラズマガスが導入され、管31からプラズマトーチ26の壁面を冷却するためのクーラントガスが導入される。なお、キャリアガス、プラズマガス及びクーラントガスには、例えばアルゴンガス等が用いられる。
【0026】
プラズマトーチ26の先端側には、高周波電源に接続された高周波コイル32が設けられている。そして、この高周波コイル32に電圧が印加されると、プラズマトーチ26の先端側の内部にプラズマPが形成される。
【0027】
質量分析部28のイオン導入部27は、プラズマトーチ26の先端に対向する導入孔33を有しており、この導入孔33を介して、プラズマPからの光やイオンが筐体34内に導入される。なお、導入孔33の直径は、例えば1mm程度である。
【0028】
筐体34内は、真空ポンプ35,36によって真空引きされ、イオン導入部27側が低真空室、その反対側が高真空室というように、真空度が異なる二室に仕切られている。この筐体34内においては、プラズマPからの光とイオンとがイオンレンズ37により分離されてイオンのみが通過させられ、質量多重極部38で特定のイオンのみが取り出されて検出器39で検出される。そして、検出器39の検出結果に基づいて、試料Sの質量分析が行われることになる。
【0029】
次に、上述したレーザ光照射部4及び試料待機部5について、より詳細に説明する。
【0030】
図2に示されるように、レーザ光照射室6の上壁には、レーザ光Lを透過させるためのレーザ光透過部材41が設けられている。このレーザ光透過部材41は、レーザ光Lに対して透過性を有する材料(例えば、石英等)からなる。また、試料待機室7の側壁には、外部と試料待機室7内とを隔てることが可能な開閉扉42が設けられている。
【0031】
更に、互いに隣接するレーザ光照射室6と試料待機室7との間の側壁には、レーザ光照射室6内と試料待機室7内とを隔てることが可能な開閉扉43が設けられている。そして、この開閉扉43を介して、搬送手段(例えば、ベルトコンベア、ターンテーブル、両側に試料把持機構を備えた回転アーム等)44がレーザ光照射室6内と試料待機室7内とに渡って設けられている。
【0032】
以上のように構成されたレーザ光照射部4及び試料待機部5においては、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0033】
まず、図3(a)に示されるように、開閉扉42が開けられて、試料待機室7内に試料Sが導入され、試料待機部5で試料Sが待機させられる。続いて、図3(b)に示されるように、開閉扉42が閉じられて、導入管11を介して試料待機室7内にパージガスが導入される。これにより、試料Sが導入される際に試料待機室7内に流入した大気(すなわち、レーザアブレーション装置2の外部雰囲気(空気))は導出管12を介して試料待機室7外に排出され、試料待機室7内はパージガスで満たされることになる。
【0034】
その後、図4(a)に示されるように、開閉扉43が開けられて、キャリアガスで満たされたレーザ光照射室6内に試料待機室7内から試料Sが搬送手段44により搬送され、レーザ光照射室6内のレーザ光照射部4に試料Sが配置される。このとき、開閉扉42は閉じられているため、キャリアガスが充填されたレーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に試料Sが搬送されることになる。
【0035】
続いて、図4(b)に示されるように、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射室6内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化(気化等を含む)された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0036】
一方、試料Sがレーザアブレートされている最中には、開閉扉42が開けられて、試料待機室7内に新たな次位の試料Sが導入され、試料待機部5で次位の試料Sが待機させられる。そして、開閉扉42が閉じられて、導入管11を介して試料待機室7内にパージガスが導入され、試料待機室7内がパージガスで満たされる。
【0037】
そして、試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、図5(a)に示されるように、開閉扉43が開けられて、キャリアガスで満たされたレーザ光照射室6内に試料待機室7内から次位の試料Sが搬送手段44により搬送され、レーザ光照射室6内のレーザ光照射部4に次位の試料Sが配置される。このとき、開閉扉42は閉じられているため、キャリアガスが充填されたレーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sが搬送されることになる。
【0038】
それと同時に、レーザアブレートされた試料Sがレーザ光照射室6内から試料待機室7内に搬送手段44により搬送され、レーザアブレートされた試料Sが試料待機室7内の試料待機部5に配置される。
【0039】
続いて、図5(b)に示されるように、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射室6内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0040】
一方、試料Sがレーザアブレートされている最中には、開閉扉42が開けられて、レーザアブレートされた試料Sが試料待機室7外に導出されると共に、試料待機室7内に新たな次位の試料Sが導入され、試料待機部5で次位の試料Sが待機させられる。そして、開閉扉42が閉じられて、導入管11を介して試料待機室7内にパージガスが導入され、試料待機室7内がパージガスで満たされる。
【0041】
以降、上述した工程が繰り返され、複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0042】
以上説明したように、第1の実施形態においては、レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、キャリアガスが充填されたレーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、開閉扉43を介して試料待機部5からレーザ光照射部4に搬送手段44により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、第1の実施形態によれば、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。なお、レーザ光照射部4への大気の流入の防止は、最低でも、プラズマトーチ26のプラズマPが消えない程度は必要である。
【0043】
また、試料待機部5が設けられた試料待機室7内にはキャリアガスと同一のパージガスが充填される。そのため、開閉扉43を介して試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sを搬送するに際し、レーザ光照射部4への大気の流入を確実に防止することができる。
[第2の実施形態]
【0044】
第2の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1は、レーザアブレーション装置2のレーザ光照射部4及び試料待機部5の構成において、第1の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1と異なっている。以下、相異点であるレーザ光照射部4及び試料待機部5について説明する。
【0045】
図6に示されるように、レーザ光照射部4は、開口部を下方に向けたキャップ状のレーザ光照射室6内に設けられている。また、試料待機部5は、レーザ光照射室6を収容する試料待機室7内に設けられている。
【0046】
レーザ光照射室6には、キャリアガスをレーザ光照射室6内に導入する導入管8、及びレーザ光照射室6外に導出する導出管9が接続されている。また、試料待機室7には、パージガスを試料待機室7内に導入する導入管11、及び試料待機室7外に導出する導出管12が接続されている。なお、キャリアガス及びパージガスには、例えばアルゴンガス等の同一のガスが用いられる。
【0047】
レーザ光照射室6の上壁には、レーザ光Lを透過させるためのレーザ光透過部材41が設けられている。また、試料待機室7の側壁には、外部と試料待機室7内とを隔てることが可能な開閉扉42が設けられている。更に、試料待機室7内には、リンク機構45によって上下方向及び左右方向に移動可能な載置台46が設けられている。
【0048】
以上のように構成されたレーザ光照射部4及び試料待機部5においては、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0049】
まず、図7(a)に示されるように、開閉扉42が開けられて、複数の試料Sが並べられたトレイ47が載置台46上に載せられ、試料待機部5で複数の試料Sが待機させられる。続いて、図7(b)に示されるように、開閉扉42が閉じられて、導入管11を介して試料待機室7内にパージガスが導入される。これにより、トレイ47が載置台46上に載せられる際に試料待機室7内に流入した大気は導出管12を介して試料待機室7外に排出され、試料待機室7内はパージガスで満たされることになる。
【0050】
その後、図8(a)に示されるように、所定の試料Sがレーザ光照射部4に配置されるように、リンク機構45によって載置台46が移動させられ、レーザ光照射室6の開口部がトレイ47によって塞がれる。このとき、開閉扉42は閉じられているため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に試料Sが搬送されることになる。
【0051】
そして、レーザ光照射室6の開口部がトレイ47によって塞がれた状態で、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射室6内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0052】
この試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、図8(b)に示されるように、新たな次位の試料Sがレーザ光照射部4に配置されるように、リンク機構45によって載置台46が移動させられ、レーザ光照射室6の開口部がトレイ47によって塞がれる。このとき、開閉扉42は閉じられているため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sが搬送されることになる。
【0053】
そして、レーザ光照射室6の開口部がトレイ47によって塞がれた状態で、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射室6内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0054】
以降、上述した工程が繰り返され、トレイ47上に並べられた複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。そして、トレイ47上に並べられた全ての試料Sのレーザアブレーションが終了すると、図9に示されるように、開閉扉42が開けられて、レーザアブレートされた複数の試料Sが並べられたトレイ47が試料待機室7外に導出される。
【0055】
以上説明したように、第2の実施形態においては、レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4にリンク機構45及び載置台46により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、第2の実施形態によれば、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0056】
ところで、上述したリンク機構45及び載置台46に替えて、図10(a)及び図10(b)に示されるように、上下方向に移動可能な一対のローラ48、及びそれらに巻き掛けられたキャリアフィルム49を用いてもよい。この場合、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0057】
まず、図10(a)に示されるように、キャリアフィルム49上に複数の試料Sが取り付けられる。そして、所定の試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、一対のローラ48が回転すると共に、図10(b)に示されるように、新たな次位の試料Sがレーザ光照射部4に配置されるように、一対のローラ48が上方に移動させられ、レーザ光照射室6の開口部がキャリアフィルム49によって塞がれる。
【0058】
そして、レーザ光照射室6の開口部がキャリアフィルム49によって塞がれた状態で、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射室6内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0059】
以降、上述した工程が繰り返され、キャリアフィルム49上に取り付けられた複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0060】
また、上述したリンク機構45及び載置台46に替えて、図11(a)及び図11(b)に示されるように、上下方向に進退可能なシャッタ50、及びローラ51を用いてもよい。この場合、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0061】
まず、図11(a)に示されるように、ローラ51の周面に複数の試料Sが取り付けられる。そして、所定の試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、ローラ51が回転した後、図11(b)に示されるように、新たな次位の試料Sがレーザ光照射部4に配置されるように、シャッタ50が降下して、レーザ光照射室6の開口部がローラ51の周面によって塞がれる。
【0062】
そして、レーザ光照射室6の開口部がローラ51の周面によって塞がれた状態で、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射室6内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0063】
この試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、シャッタ50が上昇して、次位の試料Sをレーザアブレートするためにローラ51が回転する。
【0064】
以降、上述した工程が繰り返され、ローラ51の周面に取り付けられた複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
[第3の実施形態]
【0065】
第3の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1は、レーザアブレーション装置2のレーザ光照射部4及び試料待機部5の構成において、第1の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1と異なっている。以下、相異点であるレーザ光照射部4及び試料待機部5について説明する。
【0066】
図12に示されるように、レーザ光照射部4は、キャリアガスが流通するキャリアガス流通路(第2の流通路)52内に設けられている。また、試料待機部5は、試料Sが流通する試料流通路(第1の流通路)53内に設けられている。そして、レーザ光照射部4と試料待機部5とを結ぶライン上には、キャリアガス流通路52と試料流通路53とを連通する搬送路54が設けられている。
【0067】
キャリアガス流通路52の上壁において、レーザ光照射部4と試料待機部5とを結ぶライン上には、レーザ光Lを透過させるためのレーザ光透過部材41が設けられている。また、試料流通路53の下壁において、レーザ光照射部4と試料待機部5とを結ぶライン上には、搬送路54内を上下方向に移動可能な載置台55が待機させられている。
【0068】
搬送路54の上端部には、載置台55が上方に移動した際に当接する内向きフランジ56が形成されている。これにより、載置台55が上方に移動して内向きフランジ56に当接すると、キャリアガス流通路52と搬送路54とは気密に隔てられることになる。
【0069】
なお、レーザアブレーション装置2の動作中、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通している。そのため、試料流通路53内に大気が流入しても、搬送路54を介してキャリアガス流通路52内に大気が流入することはない。
【0070】
以上のように構成されたレーザ光照射部4及び試料待機部5においては、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0071】
まず、図13(a)に示されるように、試料把持機構を備えたアーム(図示せず)等によって試料Sが試料搬送路53内を一方側から移動させられてきて載置台55上に載せられ、試料待機部5で待機させられる。続いて、図13(b)に示されるように、載置台55が上方に移動して内向きフランジ56に当接し、試料Sがキャリアガス流通路52内のレーザ光照射部4に配置される。このとき、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通しているため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に試料Sが搬送されることになる。
【0072】
そして、試料Sがレーザ光照射部4に配置された状態で、試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされる。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、キャリアガス流通路52を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0073】
この試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、図14(a)に示されるように、載置台55が下方に移動して、レーザアブレートされた試料Sが試料流通路53内の試料待機部5に配置された後、試料把持機構を備えたアーム(図示せず)等によって試料搬送路53内を他方側に移動させられていく。続いて、図14(b)に示されるように、新たな次位の試料Sが試料搬送路53内を一方側から移動させられてきて載置台55上に載せられ、試料待機部5で待機させられる。
【0074】
以降、上述した工程が繰り返され、複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0075】
以上説明したように、第3の実施形態においては、レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、搬送路54を介して試料待機部5からレーザ光照射部4に載置台55により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、第3の実施形態によれば、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0076】
また、レーザアブレーション装置2の動作中、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通している。そのため、試料流通路53内に大気が流入しても、搬送路54を介して試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sを搬送するに際し、レーザ光照射部4への大気の流入を確実に防止することができる。なお、キャリアガスと同一のガスを試料流通路53内にも流通させておけば、レーザ光照射部4への大気の流入をより一層確実に防止することが可能になる。
[第4の実施形態]
【0077】
第4の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1は、レーザアブレーション装置2のレーザ光照射部4及び試料待機部5の構成において、第1の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1と異なっている。以下、相異点であるレーザ光照射部4及び試料待機部5について説明する。
【0078】
図15に示されるように、レーザ光照射部4は、キャリアガスが流通するキャリアガス流通路52内に設けられている。また、試料待機部5は、試料Sが流通する試料流通路53内に設けられている。そして、レーザ光照射部4と試料待機部5とを結ぶライン上には、キャリアガス流通路52と試料流通路53とを連通する搬送空間57が設けられている。
【0079】
キャリアガス流通路52の上壁において、レーザ光照射部4と試料待機部5とを結ぶライン上には、レーザ光Lを透過させるためのレーザ光透過部材41が設けられている。また、搬送空間57には、複数のフィン58が形成されたローラ59が配置されている。フィン58は、弾性を有する材料(例えば、ゴム等)からなり、キャリアガス流通路52と搬送空間57との接続部において、キャリアガス流通路52と搬送空間57とが気密に隔てられるように、ローラ59の周面に等間隔置きに形成されている。
【0080】
なお、レーザアブレーション装置2の動作中、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通しているため、試料流通路53内に大気が流入しても、搬送空間57を介してキャリアガス流通路52内に大気が流入することはない。
【0081】
以上のように構成されたレーザ光照射部4及び試料待機部5においては、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0082】
まず、図16(a)に示されるように、試料Sがベルトコンベア等によって試料搬送路53内を一方側から移動させられてきてローラ59の周面に真空吸着等により固定され、試料待機部5で待機させられる。続いて、図16(b)に示されるように、ローラ59が回転して試料Sがキャリアガス流通路52内のレーザ光照射部4に配置され、試料Sを挟んで隣り合う一対のフィン58によってキャリアガス流通路52と搬送空間57とが気密に隔てられる。このとき、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通しているため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に試料Sが搬送されることになる。
【0083】
そして、試料Sがレーザ光照射部4に配置された状態で、試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされる。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、キャリアガス流通路52を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0084】
一方、試料Sがレーザアブレートされている最中には、新たな次位の試料Sがベルトコンベア等によって試料搬送路53内を一方側から移動させられてきてローラ59の周面に真空吸着等により固定され、試料待機部5で待機させられる。
【0085】
試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、図17(a)に示されるように、ローラ59が回転して次位の試料Sがキャリアガス流通路52内のレーザ光照射部4に配置されると共に、レーザアブレートされた試料Sが試料搬送路53内の試料待機部5に配置される。このとき、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通しているため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sが搬送されることになる。そして、レーザアブレートされた試料Sがベルトコンベア等によって試料搬送路53内を他方側に移動させられていく。
【0086】
続いて、図17(b)に示されるように、試料Sがレーザ光照射部4に配置された状態で、試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされる。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、キャリアガス流通路52を介してICP質量分析装置3に送られる。
【0087】
一方、試料Sがレーザアブレートされている最中には、新たな次位の試料Sがベルトコンベア等によって試料搬送路53内を一方側から移動させられてきてローラ59の周面に真空吸着等により固定され、試料待機部5で待機させられる。
【0088】
以降、上述した工程が繰り返され、複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0089】
以上説明したように、第4の実施形態においては、レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、搬送空間57を介して試料待機部5からレーザ光照射部4にローラ59により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、第4の実施形態によれば、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0090】
また、レーザアブレーション装置2の動作中、キャリアガスは大気圧より高いガス圧で常にキャリアガス流通路52内を流通している。そのため、試料流通路53内に大気が流入しても、搬送空間57を介して試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sを搬送するに際し、レーザ光照射部4への大気の流入を確実に防止することができる。なお、キャリアガスと同一のガスを試料流通路53内にも流通させておけば、レーザ光照射部4への大気の流入をより一層確実に防止することが可能になる。
[第5の実施形態]
【0091】
第5の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1は、レーザアブレーション装置2のレーザ光照射部4及び試料待機部5の構成において、第1の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1と異なっている。以下、相異点であるレーザ光照射部4及び試料待機部5について説明する。
【0092】
図18に示されるように、試料待機部5は、試料Sを洗浄するための洗浄液(例えば、アルコール等)が貯留された洗浄液容器(第1の容器)61内に設けられている。また、レーザ光照射部4は、キャップ状のレーザ光照射容器(第2の容器)62内に設けられており、その開口部62aは洗浄液の液面下に位置している。ここで、開口部62aとは、レーザ光照射容器62により形成される内部空間の入口部分を意味する。そして、洗浄液容器61の一方側から他方側にはベルトコンベア63が掛け渡されている。このベルトコンベア63は、洗浄液容器61の一方側において洗浄液中に入り、レーザ光照射容器62内において洗浄液の液面上に一旦現われ、洗浄液容器61の他方側において洗浄液中から出ている。
【0093】
レーザ光照射容器62には、キャリアガスをレーザ光照射容器62内に導入する導入管8、及びレーザ光照射容器62外に導出する導出管9が接続されている。また、レーザ光照射容器62の上壁には、レーザ光Lを透過させるためのレーザ光透過部材41が設けられている。
【0094】
以上のように構成されたレーザ光照射部4及び試料待機部5においては、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0095】
まず、図19に示されるように、複数の試料Sがベルトコンベア63上に取り付けられた状態で、所定の試料Sが、洗浄液容器61の一方側において洗浄液中に入り、レーザ光照射容器62内において洗浄液の液面上に一旦現われて、レーザ光照射容器62内のレーザ光照射部4に配置される。
【0096】
そして、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介してレーザ光照射容器62内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。このとき、新たな次位の試料Sは、洗浄液容器61内の洗浄液中、すなわち試料待機部5で待機させられる。
【0097】
試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、ベルトコンベア63が動作して次位の試料Sがレーザ光照射容器62内のレーザ光照射部4に配置されると共に、レーザアブレートされた試料Sがベルトコンベア63によって洗浄液容器61の他方側に移動させられる。このとき、次位の試料Sは、洗浄液の液面下に位置するレーザ光照射容器62の開口部62aを介して試料待機部5からレーザ光照射部4に搬送されるため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されることになる。
【0098】
以降、上述した工程が繰り返され、複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0099】
以上説明したように、第5の実施形態においては、レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、レーザ光照射容器62の開口部62aを介して試料待機部5からレーザ光照射部4にベルトコンベア63により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、第5の実施形態によれば、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0100】
また、試料待機部5が設けられる洗浄液容器61内には洗浄液が貯留されているため、洗浄液の液面下に位置するレーザ光照射容器62の開口部62aを介して試料待機部5からレーザ光照射部4に次位の試料Sを搬送するに際し、レーザ光照射部4への大気の流入を確実に防止することができる。更に、試料待機部5が設けられる洗浄液容器61内には洗浄液が貯留されているため、試料Sをレーザアブレートするだけでなく、試料Sを洗浄することができる。
[第6の実施形態]
【0101】
第6の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1は、レーザアブレーション装置2のレーザ光照射部4及び試料待機部5の構成において、第1の実施形態に係るレーザアブレーションICP質量分析システム1と異なっている。以下、相異点であるレーザ光照射部4及び試料待機部5について説明する。
【0102】
図20に示されるように、試料待機部5は、試料Sを洗浄するための洗浄液(例えば、アルコール等)が貯留された洗浄液タンク64内において、洗浄液の液面下、すなわち洗浄液中に設けられている。また、レーザ光照射部4は、洗浄液タンク64内において、洗浄液の液面上に形成された上部空間内に設けられている。そして、洗浄液タンク64内には、洗浄液の液面上に周面の一部が位置した状態でローラ65が設置されている。
【0103】
洗浄液タンク64には、キャリアガスを洗浄液タンク64の上部空間内に導入する導入管8、及び洗浄液タンク64の上部空間外に導出する導出管9が接続されている。また、洗浄液タンク64の上壁には、レーザ光Lを透過させるためのレーザ光透過部材41が設けられている。
【0104】
以上のように構成されたレーザ光照射部4及び試料待機部5においては、次のように複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0105】
まず、図21(a)に示されるように、複数の試料Sがローラ65の周面に取り付けられた状態で、洗浄液タンク64内の上部空間内に設けられたレーザ光照射部4に所定の試料Sが配置される。
【0106】
そして、レーザ光照射部4に配置された試料Sにレーザ光Lが照射されて試料Sがレーザアブレートされると共に、導入管8を介して洗浄液タンク64内の上部空間内にキャリアガスが導入される。これにより、微粒子化された試料Sの一部は、キャリアガスにより運ばれて、導出管9を介してICP質量分析装置3に送られる。このとき、新たな次位の試料Sは、洗浄液タンク64内の洗浄液中、すなわち試料待機部5で待機させられる。
【0107】
試料Sに対するレーザアブレーションが終了すると、ローラ65が回転して、図21(b)に示されるように、洗浄液タンク64内の上部空間内に設けられたレーザ光照射部4に次位の試料Sが配置される。このとき、次位の試料Sは、洗浄液タンク64内において、洗浄液中の試料待機部5から上部空間内のレーザ光照射部4に搬送されるため、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されることになる。
【0108】
以降、上述した工程が繰り返され、複数の試料Sが順次レーザアブレートされる。
【0109】
以上説明したように、第6の実施形態においては、レーザ光照射部4に搬送される次位の試料Sは、試料待機部5で待機させられた後、レーザ光照射部4への大気の流入が防止されつつ、試料待機部5からレーザ光照射部4にローラ65により搬送され、レーザ光照射部4でレーザアブレートされる。このように、試料待機部5からレーザ光照射部4への次位の試料Sの搬送に際してはレーザ光照射部4への大気の流入が防止されるため、レーザ光照射部4に次位の試料Sを導入する度にキャリアガスによってレーザ光照射部4のガスの置換を行うことが不要となる。従って、第6の実施形態によれば、複数の試料Sを順次効率良くレーザアブレートすることができる。
【0110】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、試料分析装置は、ICP質量分析装置に限定されず、ICP発光分析装置や原子吸光分析装置等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】第1の実施形態のレーザアブレーションICP質量分析システムの構成図である。
【図2】第1の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の構成図である。
【図3】第1の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部におけるレーザアブレーションの工程を説明するための図である。
【図4】図3に示されたレーザアブレーションの工程の次工程を説明するための図である。
【図5】図4に示されたレーザアブレーションの工程の次工程を説明するための図である。
【図6】第2の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の構成図である。
【図7】第2の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部におけるレーザアブレーションの工程を説明するための図である。
【図8】図7に示されたレーザアブレーションの工程の次工程を説明するための図である。
【図9】図8に示されたレーザアブレーションの工程の次工程を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の一変形例の構成図である。
【図11】第2の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の一変形例の構成図である。
【図12】第3の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の構成図である。
【図13】第3の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部におけるレーザアブレーションの工程を説明するための図である。
【図14】図13に示されたレーザアブレーションの工程の次工程を説明するための図である。
【図15】第4の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の構成図である。
【図16】第4の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部におけるレーザアブレーションの工程を説明するための図である。
【図17】図16に示されたレーザアブレーションの工程の次工程を説明するための図である。
【図18】第5の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の構成図である。
【図19】第5の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部におけるレーザアブレーションの工程を説明するための図である。
【図20】第6の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部の構成図である。
【図21】第6の実施形態のレーザ光照射部及び試料待機部におけるレーザアブレーションの工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0112】
1…レーザアブレーションICP質量分析システム(レーザアブレーション試料分析システム)、2…レーザアブレーション装置、3…ICP質量分析装置(試料分析装置)、4…レーザ光照射部、5…試料待機部、6…レーザ光照射室(第2の室)、7…試料待機室(第1の室)、43…開閉扉、52…キャリアガス流通路(第2の流通路)、53…試料流通路(第1の流通路)、54…搬送路、61…洗浄液容器(第1の容器)、62…レーザ光照射容器(第2の容器)、62a…開口部、L…レーザ光、S…試料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にレーザ光を照射することにより前記試料の一部を微粒子化するレーザアブレーション装置であって、
前記レーザ光が照射される前記試料が配置されると共に、微粒子化された前記試料の一部を運ぶためのキャリアガスが流通するレーザ光照射部と、
前記レーザ光照射部に搬送される次位の試料が待機させられる試料待機部とを備え、
前記レーザ光照射部への大気の流入を防止しつつ、前記試料待機部から前記レーザ光照射部に前記次位の試料を搬送することを特徴とするレーザアブレーション装置。
【請求項2】
前記試料待機部は、前記キャリアガスと同一のガスが充填される第1の室内に設けられ、
前記レーザ光照射部は、前記第1の室に隣接する第2の室内に設けられ、
前記第1の室と前記第2の室との間に設けられた開閉扉を介して前記試料待機部から前記レーザ光照射部に前記次位の試料が搬送されることを特徴とする請求項1記載のレーザアブレーション装置。
【請求項3】
前記試料待機部は、前記試料が流通する第1の流通路内に設けられ、
前記レーザ光照射部は、前記キャリアガスが流通する第2の流通路内に設けられ、
前記第1の流通路と前記第2の流通路とを連通する搬送路を介して前記試料待機部から前記レーザ光照射部に前記次位の試料が搬送されることを特徴とする請求項1記載のレーザアブレーション装置。
【請求項4】
前記試料待機部は、所定の液体を貯留する第1の容器内に設けられ、
前記レーザ光照射部は、前記液体の液面下に開口部が位置するキャップ状の第2の容器内に設けられ、
前記開口部を介して前記試料待機部から前記レーザ光照射部に前記次位の試料が搬送されることを特徴とする請求項1記載のレーザアブレーション装置。
【請求項5】
試料にレーザ光を照射することにより前記試料の一部を微粒子化するレーザアブレーション装置と、微粒子化された前記試料の一部に対して所定の分析を行う試料分析装置とを具備するレーザアブレーション試料分析システムであって、
前記レーザアブレーション装置は、
前記レーザ光が照射される前記試料が配置されると共に、微粒子化された前記試料の一部を運ぶためのキャリアガスが流通するレーザ光照射部と、
前記レーザ光照射部に搬送される次位の試料が待機させられる試料待機部とを備え、
前記レーザ光照射部への大気の流入を防止しつつ、前記試料待機部から前記レーザ光照射部に前記次位の試料を搬送する、
ことを特徴とするレーザアブレーション試料分析システム。
【請求項6】
試料にレーザ光を照射することにより前記試料の一部を微粒子化するレーザアブレーション装置において、前記レーザ光が照射される前記試料が配置されると共に、微粒子化された前記試料の一部を運ぶためのキャリアガスが流通するレーザ光照射部に次位の試料を導入する試料導入方法であって、
前記次位の試料を試料待機部で待機させる工程と、
前記キャリアガスが充填されたレーザ光照射部への大気の流入を防止しつつ、前記試料待機部から前記レーザ光照射部に前記次位の試料を搬送する工程とを含むことを特徴とする試料導入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−153748(P2006−153748A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347060(P2004−347060)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】