説明

レーザパルス長変更方法及び装置

【課題】種々の異なるレーザシステム及び/又は異なる用途に簡単、且つ迅速に適応する、所定長の単一入射レーザパルスから種々の異なる長さ又は持続時間のレーザパルスを発生する方法及び装置を提供する.
【解決手段】入射レーザパルスの長さ又は持続時間を変更する装置(10、20)であって、
入射レーザパルスを第1の部分パルスと第2の部分パルスに分割するビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)と、
第一の部分パルスを遅延走行経路(2、12、22)に沿って案内するように配置され、第1の部分パルスを曲折させる複数の反射鏡とを含み、
上記ビームスプリッタ少なくとも1つが係合位置(G)又は非係合位置(N)にシフト可能であり、該ビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)が非係合位置(N)においてレーザビーム走行経路(4)の外側に位置付けられ、係合位置(G)においてレーザビーム走行経路(4)内に位置付けられるようにして成る装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザパルスのパルス持続時間を変更するための遅延走行経路部、伸長レーザパルスを発生する装置、そして複数の遅延経路部によるレーザパルスの長さ又は持続時間を伸長(延長)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザパルスの延長又は伸長は既に知られている。例えば、パルス化レーザを活用して試験する材料が高強度パルスレーザビームにより損傷することから、レーザパルスの強度低減のために用いられている。また、強力レーザパルスは、リソグラフィーに用いられる光学素子を早期劣化させることがある。レーザパルスはその伸長のため、ビームスプリッタにより異なる部分パルスに分割される。夫々の部分パルスは異なる長さの走行経路部(遅延ループ)に亘って案内され、検査、即ち照射される物体に順次達する。米国特許5337333には、1つ又は複数の遅延ループを用いるレーザパルスフォーマット方法が記載されている。遅延ループには、ビームスプリッタと複数の反射鏡が含まれる。ピーク強度を低減した伸長レーザパルスが、短い強力レーザパルスから生成される。
【0003】
レーザパルスの持続時間を伸長する、即ちレーザパルスを引き延ばすこの従来装置は特定のレーザシステム毎に合わせて、設計されている。所定のレーザパルスを、予定のパルス幅まで引き延ばすようにしている。この周知の装置を他のレーザシステム、例えば異なる製造者のもの、又は異なる特性のものと難なく組み合わせることは、可能ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、上記欠点を伴わない、伸長レーザパルスを発生する、又はレーザパルスを引き延ばす方法及び装置を提供することにある。
【0005】
本発明のもう1つの目的は、種々の異なるレーザシステム及び/又は異なる用途に簡単、且つ迅速に適応するレーザパルス持続時間伸長方法及び装置を提供することにある。
【0006】
本発明のもう1つの目的は、種々の異なるレーザシステム及び/又は異なる用途に簡単、且つ迅速に適応する、所定長の単一入射レーザパルスから種々の異なる長さ又は持続時間のレーザパルスを発生する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これ等目的は、添付の独立請求項による装置及び方法により達成される。有利な更なる実施態様は、添付の従属請求項にて請求されている。
【0008】
本発明によれば、レーザパルスの長さを変更するための装置はビームスプリッタを有し、それにより入射レーザパルスは第1の部分パルス少なくとも1つと第2の部分パルスに分割される。第1の部分パルス少なくとも1つは、要すれば何度も、反射され、次いで再び分割される。第2の部分パルスはビームスプリッタを通り、本発明による遅延走行経路部を離れ、直接経路に進む。次いで、第1の部分パルス少なくとも1つは第2の部分パルスと適宜の遅延後に再び組み合わされる。更に、遅延走行経路部は、遅延走行経路に沿って配置され、第1の部分パルスと、遅延走行経路に亘るその走行から結果として生ずる全ての更なる部分パルスとを案内する複数の反射鏡を有する。第1の部分パルスと第2の部分パルスの組み合わせから生ずるレーザパルスは、元の入射レーザパルスと比べて持続時間又は長さが延びており、一方パルス強度は低減されている。更に、本発明によれば、ビームスプリッタは係合位置から、ビームスプリッタがレーザビーム走行経路の外側となる非係合位置にシフト自在になっている。本発明による用語「レーザビーム経路」は、本発明による遅延走行経路にレーザビームが入る光路を意味する。ビームスプリッタが非係合位置にあるとき、レーザビーム全体が装置を通り、どの部分も遅延走行経路を進むことは無く、レーザパルスはそれ等の持続時間が長くなったり、引き伸ばされたりすることは無い。
【0009】
ビームスプリッタが非係合位置又は係合位置に移動するとき、遅延走行経路部又は装置をこのようにオンオフ切り換えると有利であろう。この調整は例えば、ビームスプリッタの局所的変位により行うことができる。同様に係合位置又は非係合位置の調整を、レーザビームにビームスプリッタを案内するか、それ等の位置に応じてこれをしない光学素子の変位又は切換えにより行うこともできる。従って、本発明による遅延走行経路部は、例えば使用されるレーザ、なされる測定又は照射に対する簡単な方法での適応を容易にする。ビーム断面、波面曲率及び発散等の、用いられるレーザのレーザビーム特性が本発明による方法及び装置により発生される伸長パルスでも同じままであることは特に有利である。正確に整列された、テレセントリック1:1イメージング遅延走行経路部が用いられるとき、ビーム特性は特に同じままになろう。反射鏡としては、少なくとも4つの凹面鏡が、本発明による方法及び装置の好適な実施態様において用いられる。これ等の凹面鏡は、少なくとも2倍の1:1望遠鏡のように配置される。
【0010】
本発明の好適な実施態様によれば、ビームスプリッタは機械的変位手段又は装置により自動的に又は手動で、係合位置と非係合位置、との間でシフトされ、又は、に置かれる。機械的変位装置は例えば、ビームスプリッタをレーザビーム経路に、又は、レーザビーム経路から、移動することにより作用する。或いは、又は、更に、反射鏡等の光学素子を、機械的手段によりシフト又は変位させ、レーザビームがビームスプリッタに案内され、又はされないようにする。特に好ましくは、機械的変位手段は、線形変位装置、特に直線移動可能なテーブルを有して、それにビームスプリッタが取り付けられるようにする。同様に別の実施態様では、レーザビーム経路に影響を及ぼす1つ又は複数の光学素子を直線移動可能テーブルに設けると良い。従って、本発明による遅延走行経路部を、実験装置を変えることなく、レーザビームと結合又は分離するようにすると便利、且つ好適であろう。このようにして、本発明による、オンオフ切換え可能な遅延走行経路部を複数個設け、装置のオペレータにより、実質的にその選択に従って、異なる伸長パルス持続時間が発生されるようにすることができる。パルス長を変更するため困難又は面倒な装置調整は必要でない。更に、異なるパルス長で、且つ全パルス幅に亘っても、一定なビームプロファイルが利用できるようにすると特に有利である。従って、異なるパルス長での測定同士を比較することができる。例えば、異なるパルス長での測定から、材料特性の機能的相互関係を得ることができる。
【0011】
本発明による遅延走行経路部によれば、原則的に任意の連続電磁放射を通すことができることは当業者の理解するところであり、これが一般的表現「レーザビーム」がここで用いられる理由である。だが、パルス長を変更する機能は勿論、パルス化レーザ放射に限られる。
【0012】
ビームスプリッタには、透過放射に対する反射放射の比が存在し、これが第2の部分パルスに対する第1の部分パルスの強度比を定量的に決定する。全放射の中ビームスプリッタ透過部分は通常20%〜80%、特に30%〜70%、好ましくは40%±5%及び/又は±2%となる。本発明による遅延走行経路部は、ビームスプリッタの生ずるビーム変位を修正する修正素子少なくとも一つを有する。この修正素子は、修正位置Kと中立位置Pとの間を移動可能である。ビームスプリッタの生ずるビーム変位は補正が可能であるが、それはビームスプリッタが係合位置Bで活動状態にあるときにのみ必要である。特に、第2の遅延走行経路部のビームスプリッタは、第一の遅延走行経路部におけるビーム変位の修正素子として働くことができる。
【0013】
本発明の更なる好適な実施態様によれば、転換された第1の部分パルスを案内する反射鏡は、集光レンズ等の付加的光学素子を回避するため、高度に反射性のあるミラーとして構成することができる。凹面鏡が特に好ましい。高度反射性ミラーは通常、当業者に知られている方法で、入射する光を全て反射するように被覆される。そのようなミラーは、HRミラーと呼ばれる。硬化及び焼戻し面を有する高品質凹面鏡は、少なくとも略無損失反射を可能にするので有利である。凹面鏡は曲率半径が次の反射鏡までの距離と同程度のものとする。レーザビームの発散調整が第1の遅延走行経路部で行われるので、ビーム中心は凹面鏡間の経路の中心にて位置付けられる。
【0014】
本発明の主題はまた、延長従属時間又は伸長レーザパルスを、複数の遅延走行経路部を用いて発生する装置を含む。好ましくは、遅延走行経路部数個が本発明により構成される。レーザパルスの持続時間を延長又は伸長できる装置は、パルスストレッチャーと呼ばれる。これは、本発明による遅延走行経路部少なくとも1つをオンオフ制御することにより、難なく簡単に行える。本発明の好適な実施態様においては、遅延走行経路部複数の各々を活動状態と非活動状態間で切換え自在にする。このようにして、レーザパルスによる材料試験がより容易、且つ簡単になる。材料を異なる持続時間及びピーク強度の異なるレーザパルスに、例えばビーム断面、波面曲率、発散比に関するビームプロファイルを変えずに、露出することができる。ビーム特性が比較的不良な経済的単段レーザを用い得ることは特に利便性がある。
【0015】
本発明による装置は好ましくは、レーザのビーム特性を調整するレンズ又はレンズ系を有する。レーザビームは遅延走行経路部を通る前に、先ずレンズ又はレンズ系を通る。特に好ましくは、レーザビームの特に波面曲率の発散比が、円柱レンズにより部分的に補償される。比較的大きな波面曲率のため低コスト単段レーザのビームの比較的大きな発散比はビーム中心を異なる(より不良な)位置に導くことがあり、従って光学部品の不等負荷及び破壊を引き起こすことがあるが、有利な仕方で部分的に補償することができ、ビーム中心が遅延走行経路部の反射ミラー間の略中心に配置されるようにすることができる。用いられるレーザビームは例えば、断面を矩形にでき、円柱レンズがレーザ断面の長い距離の方のみの発散を修正できるようになる。有利である。例えばミラー等の光学素子への均一な低ビーム負荷が遅延走行経路部で達成され、従って本発明による装置では、遅延走行経路部以前にレーザビーム特性に適合させるレンズ及び/又はレンズ系の使用のため、異なるレーザ源を用いることができるようになる。
【0016】
本発明の好適な一実施態様によれば、個々の遅延走行経路部の長さは、2の累乗の比だけ、互いに異なる。例えば、3つの遅延走行経路部の場合には、それ等の長さの比は4:2:1である。好ましくは、より弱く変調される時間的強度分布が、遅延走行経路部の数の増大と共に結果として生ずるようにする。できるだけ長いパルス長を得るためには、1つの遅延走行経路部がパルス長の大きさのパルス遅延を発生し、第2の遅延走行経路部がその長さの2倍を有するようにすべきである。長さが第一のものの半分の付加遅延走行経路部を用いて、時間的パルスプロファイルをより均一にすることができる。
【0017】
好ましくは、ビーム変位を修正する働きをする修正素子を遅延走行経路部1つ又は複数に付随させる。各遅延走行経路部を修正素子に付随させることができる。同様に、装置が、遅延走行経路部とは独立した修正素子1つ又は複数を有するようにすると良い。例えば、ビーム変位を、直列に接続された2つの遅延走行経路部で、且つそれ等のビームスプリッタによってでも、補償することができ、その結果、付加的修正素子は要しなくなる。この後者の節約は、光学素子の数を減らしたことが損失低下をもたらすと云う意味で有利である。
【0018】
本発明のもう1つの好適な実施態様によれば、遅延走行経路部は振動減衰又は無振動法で取り付けられる。例えば、装置が特に安定な台を有するようにする。遅延走行経路部が好ましくはアルミニウム形材から成る支持フレームを有し、装置全体が振動に対して比較的安定化するようにする。アルミ形材、特に装置全体がレーザ放射、特にUV放射吸収被膜、例えば特にポリカーボネート、例えばMAKROLON(登録商標)からなるものを有するようにすると特に好ましい。
【0019】
本発明の主題はまた、複数の遅延走行経路部でレーザパルスの持続時間を伸長又は延長する方法を含み、遅延走行経路部の1つ又は複数が、ビームスプリッタが係合位置又は非係合位置に移動されるとき、オンオフ制御されるようにする。非係合位置では、ビームスプリッタはレーザビームの外側に位置するようにする。
【実施態様】
【0020】
本発明の目的、特徴及び利点を以下、添付図面を参照して好適な実施態様の以下の記載の補助により詳細に説明する。
【0021】
本発明による、レーザパルスの持続時間を延長する遅延走行経路部又は装置10の第1の実施態様が、図1a及び図1bに示されている。図1aに示す遅延走行経路部10は、ビームスプリッタ1が係合位置Gに配置されている、即ちレーザビーム経路4に位置付けられているので、活動状態にある。ビームスプリッタ1に入射するレーザビームの一部はビームスプリッタ1により、遅延走行経路2を走るように反射される。ビームスプリッタにより反射されないレーザビームの部分は、ビームスプリッタ1を通る。入射レーザパルスの反射又は曲折部をこの開示では第一の部分パルスと呼び、ビームスプリッタを通る部分を第2の部分パルスと呼ぶことにする。レーザビームの伝搬方向は図1a及び1bに矢印で示されている。レーザビームは反射鏡3(好ましくは凹面鏡)により何度も曲折され、再びビームスプリッタ1に達し、そこでビームのもう1つの部分がビームスプリッタにより再び反射される。レーザビームのこの他の部分は次いで同一レーザビーム経路4上の遅延走行経路部10を離れ、第2の部分パルスとして、レーザビームが遅延走行経路に沿って進むのに要する所定時間間隔の間遅延される。次いで、第1の部分パルスの一部はビームスプリッタ1を通り、遅延走行経路2を走る。遅延走行経路部10に残る元の入射レーザパルスの部分はビームスプリッタ1を通る毎に強度が減少し、約4回の通過後には実際上無視できる程度まで減少する。
【0022】
ビームスプリッタ1及び反射鏡3を含む図示の装置実施態様は一例であり、基本的には任意に、即ち選択により変更が可能である。図示のように行うレーザビームの案内は、比較的長い遅延走行経路2が比較的小空間内に設けられるので、便利である。装置10の長次元を、レーザビームが何度も走る。
【0023】
それとは対照的に、図1bにはビームスプリッタ1が非係合位置にある装置が示されている。レーザビームは部分パルスに分割されることなく、非活動状態にある遅延走行経路2に沿って進む。本発明によれば、ビームスプリッタ1は係合位置Gから非係合位置Nに、即ち図に示されていない光学素子を用いて移動される。レーザビームはレーザビーム経路4に亘って、ビームスプリッタに入射しないように案内される。
【0024】
図2a及び2bに、ビーム変位の2つの可能な修正方法を概略的に示す。例えば、ビーム変位はレーザパルスに、レーザパルスがビームスプリッタ1に当たり、ビームスプリッタを離れた上で分割され、従って元のレーザビーム経路4の方向に対して変位されるようにして、生ずる。本発明によるビームスプリッタ1は、ビーム係合位置G又は非係合位置Nにシフト又は移動可能である。ビーム変位は係合位置にあるビームスプリッタ1と共にのみ生ずるので、好適な実施態様によればこの変位は修正素子6の中立位置Pから修正位置Kへのシフト時に補償される。修正素子6は、これ等複数の遅延走行経路部又は装置20が本装置に含まれるとき、夫々の部又は装置に配置することができる。
【0025】
図2aに修正素子6を、その修正位置Kを実線、その中立位置Pを点線で表示して示す。平面板が修正素子として、図2aに示す実施態様では用いられている。レーザビームは2反射を経験する。一方は、それが平面板を通過する際の入射時であり、他方は出射時である。従って、ビームスプリッタを通過することによるビーム変位は、平面板6を適宜位置に向けることにより補償することができる。ビームスプリッタ1が非係合位置Nにあるとき、修正の必要は無い。これは、レーザビームの破線で表示されている。二重矢印は、ビームスプリッタ1と修正素子6に対するレーザビーム経路4の変位を可能にするビームスプリッタ1と修正素子6の移動方向を示している。
【0026】
図2bに示す実施態様では、変位は修正素子6であるミラーにより補償されるが、これはレーザビームが方向変更の目的で反射されるべきとき有効である。この実施態様ではミラーから成る修正素子6は、ビームスプリッタが非係合位置N又は係合位置Gにあるとき、それぞれ中立位置P又は修正位置Kにシフトされ、レーザビームが各場合に反射後にも同一経路に沿って案内されるようにする。
【0027】
図3に、レーザパルスの持続時間を伸長又は延長する本発明装置が斜視的に示されている。装置は2つの遅延走行経路部10、20を有し、その各々には反射鏡3複数が互いに異にして配置され、異なる遅延時間が得られるようにしている。第1の遅延走行経路部10のレーザビームスプリッタ11は図3にその非係合位置Nで示されている。図4及び図5に後で示すように、図示の装置における両遅延走行経路部10、20は切換えられ、レーザパルスが遅延走行経路部の一方のみ又は両方を通るようにしている。ビームスプリッタ21の位置は同様に、非係合位置Nで示されている。他の実施態様もまた、同様に可能である。ビームスプリッタ11、21は好ましくは切換えられ、それ等を通るレーザビームをできるだけ非偏光状態に案内できるようにする。このようにして、特に均一なパルスができるだけ連続的に均一な偏光状態で生成される。
【0028】
反射鏡3、ビームスプリッタ11,12、調整手段15,25、円柱レンズ7及び付加ミラー30等の遅延走行経路部10,20の諸素子は、例えばアルミ製の支持フレーム8上に枢軸旋回可能に取り付けられる。装置は好ましくは、レーザ9から振動分離される。装置は好ましくは、無振動、又は振動減衰法で図示しない次の測定装置に接続される。台又は下部構造には、約160kgの重りが設けられる。装置全体には好ましくは、剛性を付加するポリカーボネート被膜が設けられる。ポリカーボネートは、例えばレーザ9の出射する波長193nmの光を透過しないことが好ましい。
【0029】
装置は、図面に一部切り取って又は部分的に示されているドア及び側壁を有する。この種の装置は窒素で洗浄され、それにより酸素及びオゾン形成によるレーザ放射の吸収を回避することができ有利であることは、当業者の理解するところである。更に、装置は好ましくは、図示しない酸素センサを有する。ミラー30を、レーザビーム経路4からのレーザビームが曲折しないようにする非係合位置Nにした(移動ミラー15)装置の動作中に、ビーム案内パイプ31を用い、装置残部が排気又は窒素により洗浄されるのを回避することができる。
【0030】
反射鏡3はミラー、特に凹面鏡とすることができる。特に無損失反射は、表面被覆した高品質凹面鏡により得ることができる。反射率は好ましくは、曲率半径3m、ミラー径50mmのもので少なくとも98%となる。これは、レーザパルスはできるだけ小損失で延長されるべきなので、特に有利である。パルス長120nsで約60%の装置効率が、望ましい目標である。
【0031】
典型的なリトグラフック用途は、10〜20ミリジュール/cmの範囲のエネルギー密度を必要とする。試験しようとする材料の急速エージング(aging)処理を達成するため、材料は通常、これ等の値を超えるエネルギー密度で測定される。特に、材料試験に必要な出力パルスエネルギー密度が得られる。
【0032】
上記装置の使用中に、パルスエネルギーが十分高い延長又は伸長レーザパルスを発生するためには、ビーム特性の不十分な単段エキシマレーザでも十分である。エキシマレーザのレーザパルスは、適用可能な放電法のため、レーザ自体では伸長することはできない。本発明による装置により、約80〜200ns、特に100〜700ns、好ましくは約120±10ナノ秒まで伸長されるべきである。
【0033】
図4に示す本発明の装置は図3に示すものに対応するが、動作状態が異なる。第1の遅延走行経路部10はここでは活動状態にあり、ビームスプリッタ11はその係合位置Gにある。ビームスプリッタ11のその係合位置Gへの移動は、機械的移動又は変位手段25を活用して行われる。遅延走行経路91の係合又はここでは活動化は機械的シフト手段15により行われ、下部案内ミラー30が元のレーザビーム経路4に押され、それをそれに応じて変更する。これとは対照的に、第2の遅延走行経路部20は、ビームスプリッタ21が非係合位置Nにあるので、非活動状態にある。レーザ9の可能な発散は、円柱レンズ7により補償される。ここで、円柱レンズ7は例えば、径50mm、焦点距離4mのCaF2製レンズである。
【0034】
図5に示す本発明の装置は図3及び4に示すものに対応するが、動作状態が更に異なる。両遅延走行経路部10、20はここでは活動状態にある。図4による動作状態では、ビームスプリッタ21は機械的移動手段25により係合位置に移動される。レーザビームの夫々の反射部は遅延走行経路12及び22に進む。長い遅延走行経路22の長さは、約40ナノ秒の遅延に対応する約12mである。短い遅延走行経路10は、長い遅延走行経路22の約半分の長さである。
【0035】
図6は、本発明の装置を通り、実に図3〜5に示す構成のレーザパルスの強度の時間依存性のグラフ表示である。時間(ns)は横軸100に表されている。レーザパルス相対強度は縦軸101に表されている。曲線102は、例えば図3に示す装置からの、遅延されていないレーザパルスを示している。曲線103は、例えば図4に示す装置からの、1つの遅延走行経路による遅延を示している。強度は、曲線102と比べて明瞭に低減しており、パルスはより広く、ここでは約65ナノ秒である。図5に示す状態の装置での2つの遅延走行経路部10、20により延長されたパルスは曲線104で示されている。ここでピーク強度は、無拡張パルス102のピーク強度の1/10よりかろうじて大きい。パルス104の幅は約120ナノ秒になる。時間強度分布の変調は遅延走行経路部の数の増大と共に減少し、これは曲線102、103及び104を比較することにより分かる。
【0036】
レーザパルスの長さ又は持続時間を変更する方法及び装置に具現されるものとして発明を例示、記載したが、本発明の精神を如何ようにも逸脱することなく種々の修正や変更をなし得ることから、本発明は示された詳細に限定されるものではない。
【0037】
即ち、以上の記載は、他者が現在の知識を適用することにより、従来技術の観点から本発明の一般的又は特定の側面の本質的特徴と云うべき特徴を省略することなく、本発明の要旨を種々の応用に適用出来る程度まで、それを十分に明示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1(a)】本発明による、レーザパルスの持続時間を伸長するための遅延走行経路部の第1の実施態様の概略的動作図である。
【図1(b)】本発明による、レーザパルスの持続時間を伸長するための遅延走行経路部の第1の実施態様の概略的動作図である。
【図2(a)】本発明によるパルス遅延経路部の好適な異なる実施態様による、ビーム位置合わせ不良を修正するための装置の、異なる動作モードを点線で示した概略的動作図である。
【図2(b)】本発明によるパルス遅延経路部の好適な異なる実施態様による、ビーム位置合わせ不良を修正するための装置の、異なる動作モードを点線で示した概略的動作図である。
【図3】レーザパルスの持続時間を伸長する本発明による装置の一動作モードを示した動作図である。
【図4】レーザパルスの持続時間を伸長する本発明による装置の別の一動作モードを示した動作図である。
【図5】レーザパルスの持続時間を伸長する本発明による装置の更に別の一動作モードを示した動作図である。
【図6】図3〜5に示す装置を通過した後に得られる、異なる長さのレーザパルスを示すグラフ表示である。
【符号の説明】
【0039】
10 遅延走行経路部又は装置
1 ビームスプリッタ
G 係合位置
2 遅延走行経路
3 反射鏡(複数)、ミラー
4 レーザビーム経路
N 非係合位置
P 中立位置
K 修正位置
6 修正素子
7 円柱レンズ
8 支持フレーム
9 レーザ
11 ビームスプリッタ
12 遅延走行経路
15 調整手段、機械的シフト手段
20 遅延走行経路部又は装置
21 ビームスプリッタ
22 伸長遅延経路
25 調整手段、機械的シフト手段
30 付加ミラー、ガイドミラー
31 ビーム案内パイプ
91 遅延走行経路
100 横軸
101 縦軸
102 無遅延レーザパルス曲線
103 遅延レーザパルス曲線
104 遅延レーザパルス曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射レーザパルスの長さ又は持続時間を変更する装置(10、20)であって、
入射レーザパルスを第1の部分パルスと第2の部分パルスに分割するビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)と、
第一の部分パルスを遅延走行経路(2、12、22)に沿って案内するように配置され、第1の部分パルスを曲折させる複数の反射鏡(3)とを含み、
上記ビームスプリッタ少なくとも1つが係合位置(G)又は非係合位置(N)にシフト可能であり、該ビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)が非係合位置(N)においてレーザビーム走行経路(4)の外側に位置付けられ、係合位置(G)においてレーザビーム走行経路(4)内に位置付けられるようにして成る装置。
【請求項2】
前記ビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)を前記係合位置(G)と前記非係合位置(N)との間で自動的に又は手動でシフトする手段を更に含んで成る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記自動的に又は手動でシフトする手段が、前記ビームスプリッタ少なくとも一つ(1、11、21)を直線運動させる機械的手段(15、25)である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記機械的手段(15、25)は、前記ビームスプリッタ(1、11、21)が戴置される変位自在のテーブルである請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記機械的手段(15、25)は、レーザビーム経路(4)に影響を及ぼす光学素子少なくとも1つ(30)が戴置される変位自在のテーブルである請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の部分パルスを案内する反射鏡(3)複数がHR被覆ミラー複数である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の部分パルスを案内する反射鏡(3)複数が凹面鏡複数である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記凹面鏡複数の各々は遅延走行経路において曲率半径が、遅延走行経路に配置された後続ミラーへの距離と同じである請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ビームスプリッタ(1、11、21)は、遅延走行経路における反射線強度に対する透過線強度の比が20〜80%である請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記比が30〜70%である請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記比が40%である請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)により発生するビーム変位を修正する修正素子(6)少なくとも一つを更に含み、該修正素子少なくとも一つを中立位置(P)と修正位置(K)の間でシフト自在にして成る請求項1に記載の装置。
【請求項13】
レーザパルスの長さ又は持続時間を変更する装置であって、該装置が複数の走行経路遅延部(10、20)を含み、該走行経路遅延部(10、20)複数の少なくとも1つが
レーザパルスを第1の部分パルスと第2の部分パルスに分割するビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)と、
第一の部分パルスを遅延走行経路(2、12、22)に沿って案内するように配置され、第1の部分パルスを曲折させる複数の反射鏡とを含み、
上記ビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)が係合位置(G)又は非係合位置(N)にシフト可能であり、該ビームスプリッタ少なくとも1つ(1、11、21)が非係合位置(N)においてレーザビーム走行経路(4)の外側に位置付けられ、係合位置(G)においてレーザビーム走行経路(4)内に位置付けられるようにして成る装置。
【請求項14】
前記遅延走行経路部(10、20)複数の各々を、活動動作状態と、入射レーザパルスが長くならない又は伸長しない非活動動作状態との間を個々にスイッチ可能にして成る、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記遅延走行経路部(10、20)複数は、異なる遅延走行経路部により発生されるレーザパルスの長さ又は持続時間が異なるように構成されて成る請求項13に記載の装置。
【請求項16】
異なる遅延走行経路部(10、20)からのレーザパルスの長さ又は持続時間が、2の累乗の比の各々に関係付けられて成る請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記遅延走行経路部複数の少なくとも1つが、そこを通るレーザビームの変位を修正する修正手段(6)を含んで成る請求項13に記載の装置。
【請求項18】
レーザ(9)のレーザビーム特性を部分的に調整するレンズ又はレンズ系を更に含み、該レンズ(7)又はレンズ系は上記レーザの前記レーザビーム経路が該レンズ又はレンズ系を通るように配置されて成る請求項13に記載の装置。
【請求項19】
レーザビーム発散を補償する円柱レンズ(7)を更に含んで成る請求項13に記載の装置。
【請求項20】
振動を抑制する手段を備えた、前記遅延走行経路部(10、20)を取付ける手段を更に含んで成る請求項13に記載の装置。
【請求項21】
前記遅延走行経路部(10、20)を支持する支持フレーム構造(8)を更に含み、該支持フレーム構造がアルミニウムフレームである請求項13に記載の装置。
【請求項22】
アルミニウムフレームがレーザビーム吸収被膜を有する請求項21に記載の装置。
【請求項23】
レーザビーム吸収被膜がポリカーボネートを含んで成る請求項22に記載の装置。
【請求項24】
レーザパルスの長さ又は持続時間を遅延走行経路部複数(10、20)により伸長する方法であって、該遅延走行経路部複数の少なくとも1つは、遅延走行経路部複数(10、20)の上記少なくとも1つが入射レーザパルスの長さ又は持続時間を伸長する活動状態と、延走行経路部複数(10、20)の上記少なくとも1つが入射レーザパルスの長さ又は持続時間を伸長しない非活動状態との間で切り替え可能であり、上記方法はビームスプリッタ(1、11、21)を係合位置(G)又は非係合位置(N)に設定する工程を含み、
上記ビームスプリッタ(1、11、21)が非係合位置(N)においてレーザビーム走行経路(4)の外側に位置付けられ、係合位置(G)においてレーザビーム走行経路(4)内に位置付けられるようにする方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−76906(P2009−76906A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237413(P2008−237413)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】