説明

レーザービームの断面を伸張させる光学デバイスを備えた光熱試験カメラ

【課題】カメラが実行しうる試験の信頼性を維持しつつ、さらにスキャニング時間を抑えること。
【解決手段】本発明に係るカメラは、レーザービームを形成するシステムであって、試験の対象とされる物品の上においてある方向に延びる加熱エリアを形成するために前記レーザービームの断面を伸張させるデバイスを備えるシステムと、前記物品の表面の上の検出エリアにより発せられる赤外線を検出するための赤外線検出器のマトリクスと、前記赤外線検出器により供給される信号を処理するユニットであって、前記加熱エリアにわたって前記表面をスキャニングすることにより、前記物品の前記表面のサーモグラフィックイメージを構築するユニットと、を具備するタイプの光熱試験のためのカメラであって、前記デバイスが光学デバイスである、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームを形成するシステムであって、試験の対象とされる物品の上において或る方向に延びる加熱エリアを形成するために前記レーザービームの断面を伸張させるデバイスを備えるシステムと、前記加熱エリアに関連して前記物品の表面の上の検出エリアにより発せられる赤外線を検出するための赤外線検出器のマトリクスと、前記赤外線検出器により供給される信号を処理するユニットであって、前記加熱エリアにわたって前記表面をスキャニングすることにより、前記物品の前記表面のサーモグラフィックイメージを構築するユニットと、を具備するタイプの光熱試験カメラに関する。
【0002】
本発明は、具体的には、物品を非破壊的に試験して、欠陥、この物品の材料の性質若しくは特性、複数のコーティング層の厚みの差、又は、この物品の表面の上若しくは下における熱拡散率若しくは熱伝導率の局部的なばらつき等を検出することに関する。
【背景技術】
【0003】
試験の対象とされる物品(被試験物品)は、金属であって鉄材料により構成されるもの、例えば、ステンレス鋼といったような合金鋼により構成されるものとすることができ、又は、非鉄材料により構成されるものとすることができる。これらはまた、複合材料、セラミック又はプラスチック材料により作製することができる。
【0004】
光熱試験は、被試験物品を局部的に加熱することにより形成される熱的外乱が拡散する現象に基づいている。
【0005】
実際には、被試験物品の表面にフォーカスされるレーザービームを射出する光熱カメラが、加熱エリアにおいて用いられる。
【0006】
加熱エリアに隣接する又は加熱エリアと組み合わせられた検出エリアにある物品により発せされる赤外線によって、加熱エリアにおける加熱に起因した検出エリアの温度の上昇を、測定又は推定することができる。
【0007】
加熱エリアと検出エリアとの間におけるスペースが、一般的に「オフセット」として知られている。このオフセットは、この場合、検出エリア及び加熱エリアを統合させることにより、ゼロとすることができる。
【0008】
赤外線の放射及びこれによる温度の上昇を、赤外線検出器といったような検出器を用いることにより、非接触により測定することができる。
【0009】
検出エリアにおける赤外線又は温度の上昇は、検査対象とされる材料の局部的な性質により影響を受ける。具体的には、検出エリアにおける温度の上昇の源である、加熱エリアと検出エリアとの間における熱拡散は、加熱エリアの領域、検出エリア又はこれら2つのエリアの近くにおける割れ目といったような、被試験物品の欠陥に依存する。
【0010】
被試験物品の表面を加熱領域にわたってスキャニングするとともに、検出領域(これは、スキャニングの間において加熱領域とともに移動する)により発せられる放射を検出することにより、物品の表面のサーモグラフィックイメージ(これは、物品における熱拡散のばらつき又は物品内に存在する欠陥を表現する)を得ることができる。
【0011】
1つの選択された加熱エリア及び1回の赤外線検出が、検出エリア(これもまた1つの特別に選択されたエリアである)により発せられる放射をキャプチャするために用いられる。したがって、検出エリアと加熱エリアとの間のオフセットは、機械デバイスを用いて非常に正確に調整する必要がある。さらには、物品の表面をスキャニングすることは、非常に長い時間を要するので、このタイプの光熱試験プロセスは、産業レベルでは実際には用いられない。これらの欠点を克服するために、FR−2,760,528(US−6,419,387)が、上述したタイプのカメラを提案している。
【0012】
加熱点ではなく延びた加熱エリアを形成することにより、スキャニング時間を低減させることができる。さらには、検出器のマトリクスを用いることにより、被試験物品のサーモグラフィックイメージを構成することになる検出器の行を選択することができる。マトリクス状の検出器を選択することによるオフセットの調整を用いれば、現在の技術水準において課題となっている正確な機械的調整を不要とすることができる。
【0013】
このカメラでは、レーザービームの断面が、レーザービームを通過させるスリットを用いて伸張される。
【0014】
このようなカメラは、充分なものであり産業レベルにおいても用いることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述したタイプのカメラが実行しうる試験の信頼性を維持しつつ、さらにスキャニング時間を抑えることが望ましい。
【0016】
したがって、本発明は、上述したタイプの光熱試験カメラであって、上記のようにレーザービームの断面を伸張させる伸張デバイスが光学デバイスであることを特徴とする光熱試験カメラに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
特定の実施の形態によれば、カメラは、以下の特徴のうちの1つ又は複数を、独立に又は技術的に可能なすべての組み合わせとして具備する。
―光学デバイスが、レーザービームを通過させるようにデザインされたレンズを含む。
―光学デバイスが、レーザービームを反射させるミラーを含む。
―レーザービームを形成するシステムが、加熱エリアに沿ってレーザービームのパワーを均一化させるデバイスを含む。
―パワーを均一化させるデバイスが、レーザービームの断面を伸張させるデバイスにより形成される。
―レンズの1つの面が、加熱エリアに沿ってレーザービームのパワーを均一化させるのに適したプロファイルを有する。
―ミラーの反射面が、加熱エリアに沿ってレーザービームのパワーを均一化させるのに適したプロファイルを有する。
―パワーを均一化させるデバイスが、レーザービームをその進行方向に垂直な方向に移動させることによりラインを形成するデバイスである。
―デバイスが音響光学セルを含む。
―パワーを均一化させるデバイスが振動ミラーを含む。
―パワーを均一化させるデバイスは、上流端がレーザービームを受け、下流端が、延びた加熱エリアを形成するためにラインに沿って配置された、光ファイバーの束を含む。
―カメラが、加熱エリアと検出エリアとの間におけるスペースを機械的に調節するシステムを含む。
―カメラがボックスを含み、機械的に調節するシステムが、ボックスに関連して赤外線検出器のマトリクスを移動させるデバイスを含む。
―カメラがボックスを含み、機械的に調節するシステムが、ボックスに関連してレーザービームを形成するシステムを移動させるデバイスを含む。
―移動させるデバイスがリニアモータを含む。
―移動させるデバイスがピエゾリニアアクチュエータを含む。
―移動させるデバイスが、回転モータと、回転運動を並進運動に変換するメカニズムとを含む。
―カメラが、レーザービームを反射させ、検出エリアにより放射された赤外線を赤外線検出器のマトリクスに向けて伝達する、フィルタブレードを含む。
―ブレードが、CaF2、MgF2、Al23、BaF2、Ge、ZnSe、ZnS−FLIR、マルチスペクトル硫化亜鉛、MgO、及び、SrF2により構成されるリストから選択された少なくとも1つの材料により構成される。
―カメラが、加熱エリアにわたって物品の表面をスキャニングするシステムを含む。
―処理するユニットが、マトリクスにおける赤外線検出器の各々により供給される信号を別々に処理するのに適している。
―カメラがレーザー源を含む。
―カメラが、該カメラの一部分を構成しないレーザー源に対する接続手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、単なる一例として添付図面を参照してなされる以下の説明を読むことにより、充分に理解できよう。
【0019】
光熱試験の原理として、試験のための物品1が図1に示されている。この物品1を試験するために、その上部表面1aが、この表面1aにわたって加熱エリア2と検出エリア3とを同期させて移動させることにより、スキャンされる。加熱エリア2及び検出エリア3は、互いに間隔をおいて配置され、オフセットとして知られる距離dだけ隔てられる。いくつかの実施の形態では、オフセットdは0であり、エリア2及び3は統合される。
【0020】
エリア2は、矢印4により示される入射レーザービームにより加熱される。検出エリア3により発せられる赤外線が検出される。この放射線には、図1では矢印5が付されている。エリア2及び3の移動は、矢印6により示されている。
【0021】
移動6は、加熱エリア2と検出エリア3との間におけるオフセットdに対して平行であり、又は、平行ではない。スキャニングは、例えば、移動の方向を連続するラインごとに反転(「ノッチ」構成により)させるように又は同一(「櫛」構成により)とするようにして、ラインごとに実行される。
【0022】
図1では、加熱エリア2は、移動6の方向に対して検出エリア3の前方に位置している。しかしながら、引用により本明細書に組み入れられる文献FR−2,760,528(US−6,419,387)に開示されているように、他の任意の相対的な位置を用いることが可能である。
【0023】
図2は、加熱エリア2をD方向に延びたエリアとした光熱試験プロセスを示す。さらに具体的には、エリア2は、ラインの形状とされているが、変形例として、楕円(ellipse)といったような別の形状を有することもできる。
【0024】
検出エリア3は、エリア2と類似した形状を有する。図2に示す例では、検出エリア3が移動方向6に関連して加熱エリア2の前方に配置されている、ということに留意されたい。
【0025】
伸張させた加熱エリア2を用いることによって、文献FR−2,760,528(US−6,419,387)に記載されているように、表面1aをスキャンするのに必要とされる時間を低減させることができる。この特徴は本発明にも存する。
【0026】
発せられた放射線5を検出するために、赤外線検出器10のマトリクス8が用いられる。マトリクス8は、通常、M行とN列とから構成される。数M及びNは、互いに独立に変化することができ、また、1と数百(或いはそれ以上)との間の値をとることができる。
【0027】
文献FR−2,760,528(US−6,419,387)におけると同様に、マトリクス8において検出器10の行12が、試験を実行するために選択される。検出器10のマトリクス8内の検出エリア3により発せられる放射線5のトレース14が、図2において示されている。この図から理解できるように、選択された行12は、実際には、検出エリア3により発せられた赤外線を照射された検出器10により構成される。
【0028】
本発明では、FR−2,760,528(US−6,419,387)におけると同様に、適切な検出器10の行12を選択することにより、加熱エリア2と検出エリア3との間におけるオフセットdを調節することができる。
【0029】
実際には、入射レーザービームの放射4及び放射線検出5は、好ましくは同一のカメラにより実行される。
【0030】
図3は、本発明に係る光熱試験カメラ16を示す。
このカメラ16は、主に以下の構成要素を具備する。
―透明な窓20が設けられたボックス18
―レーザービーム4を形成するシステム22
―放射線5を検出するシステム24
―2つの鏡26及び28、シャッター30、並びに、フィルターブレード32(これらの構成要素は、以下詳細に説明するように、形成されたレーザービーム4を物品1に向けて送り、放射線5を検出システム24に向けて送るために、ボックス18内において窓20と形成システム22及び検出システム24との間に挿入される)
【0031】
形成システム22は、光ファイバー36によってレーザー源34に接続される。形成システム22は、コリメータ38と、レーザー源34により発せられたレーザービーム4の断面を伸張させるデバイス40と、を含む。
【0032】
よって、ビーム4の断面は、進行方向に対して垂直な方向に伸張させられ、伸張した加熱エリア2を形成する。
【0033】
図4Aに示すように、伸張デバイス40は、ビーム4を通過させるレンズ42を含む。このレンズ42は、発散型円筒レンズである。
【0034】
レンズ42は、ビーム4の発散を、伸張を形成させようとする方向に生じさせる。この方向は、図4A(これは、レンズ42を出射するビーム4の進行ラインを示す)における矢印4a乃至4cにより示すように、ビーム4の進行方向に垂直である。
【0035】
図4Aに示す平面は、ビーム4の伸張方向及び進行方向を含む。図4Aに示す平面は、図3に示した平面に垂直である。
【0036】
図4Aに示した平面では、レンズ42の上流面43及び下流面44は、略円弧状の断面を有する。レンズ42は、図3に示した平面においては、ビーム断面を何ら伸張させないので発散しない、ということに留意されたい。
【0037】
検出システム24は、検出器10のマトリクス8と、これら検出器10により発せられた信号を処理するユニット46と、を含む。このユニット46は、検出器10の各々により発せられた信号を別々に処理するのに適したものであり、これにより、具体的には、オフセットを調節するために、検出器10の行12を選択することが可能となる。
【0038】
さらに全体的にみると、ユニット46は、カメラユニット16の動作を制御する。
【0039】
マトリクス8を充分に動作させるために、システム24において、放射線5の進行方向に関連してマトリクス8の上流に、図示しない光学的要素を配置することができる。
【0040】
ユニット46は、選択した行12の検出器10から受信した信号を処理することにより、物品1の表面1aのサーモグラフィックイメージを構築するのに適したものである。ユニット46は、例えば、サーモグラフィックイメージのディスプレイ手段48に接続されるものとすることができ、また、生成された処理データを記憶するために記憶手段50に接続されるものとすることができる。図示した例では、手段48及び手段50は、カメラ16から距離をおいて配置されているが、これらはカメラの一部分を形成するものとすることができる。
【0041】
ブレード32は、放射線5の通過を可能としつつレーザービーム4を反射させることができるようにするために、半反射型となっている。
【0042】
さらに詳しくは、ブレード32は、以下の事項を可能とする。
―局部的に検査される物品1にカメラ16がもたらす温度に対応するスペクトル帯域を有する赤外線フローの最大透過率(transmission)を有する基板を用いることにより、放射線5を通過させる。
―レーザービーム4の波長及びレーザービーム4の入射角に対するブレード32の反射率を最大化させる干渉フィルタ(基板の表面に配置され、様々な光学的屈折率を有する複数の層のスタックにより構成される)によって、レーザービーム4を反射させる。
【0043】
ブレード32の基板を形成するために、以下に示す材料のうちの1つ又は複数を用いることができる。
CaF2(フッ化カルシウム)、MgF2(フッ化マグネシウム)、Al23(酸化サファイア/アルミニウム)、BaF2(フッ化バリウム)、Ge(ゲルマニウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnS−FLIR(硫化亜鉛−赤外線前方監視)、マルチスペクトル硫化亜鉛、MgO(酸化マグネシウム)、及び、SrF2(硫化ストロンチウム)
【0044】
カメラ16は、ボックス18に関連して検出システム24を移動させるデバイス52を含む。この移動システム52は、システム24ひいては検出器10のマトリクス8を、このマトリクス8の上流にある放射線5に対して垂直な方向に移動させることができる。これを行うために、移動デバイス52は、例えば、図3に示した平面においてビーム5に垂直な検出システム24の横方向の正確な移動を可能とするための、ネジ/ナットメカニズムに結合した、ピエゾリニアアクチュエータ、リニアモータ又はロータリモータを、具備する。回転運動を並進運動に変換するための他のメカニズムを用いることもできる。
【0045】
同様に、カメラ16はまた、形成システム22を移動させるシステム54を含む。このデバイス54は、例えば、デバイス52と同様の構造を有しており、形成システム22から出射するビーム4の進行方向に対して垂直に形成システム22を移動させることができる。
【0046】
カメラ16はまた、加熱エリア2及び検出エリア3を介して表面1aをスキャンするために、ミラー28を移動させることを可能にするデバイス55を具備する。この移動デバイス55は、例えば、表面1aを2つの垂直方向にスキャンするために2つの検流計又は2つのモータを備える。
【0047】
カメラ16において、ミラー26は、デバイス40により伸張させられたレーザービーム4をシャッター30の上に反射させる。
【0048】
シャッター30が開いているときには、シャッター30はビームを通過させ、このビームはブレード32により反射させられてミラー28に向かい、ミラー28自体は窓20を介して表面1aに向けてビーム4を反射させる。
【0049】
放射線5は、窓20を通過し、ミラー28により反射させられてブレード32に向かい、ブレード32を通過して、検出システム24に到達して検出器10のマトリクス8を照射する。
【0050】
次に、ユニット46は、スキャニングが進行すると、表面1aのサーモグラフィックイメージを構築し、このイメージがディスプレイ手段48により表示される。
【0051】
光学デバイス40を用いることにより、レーザービームのパワー損失は、ビーム断面を伸張させるべくスリットが用いられた文献FR−2,760,528(US−6,419,387)におけるものよりも低くなる。これにより、表面1のスキャニング時間を低減させるとともに、レーザービーム4のパワーをより効果的に利用することができる。
【0052】
ブレード32を形成すべく上述した材料の1つ又は複数を選択することによって、ブレード32の時間的な性能を向上させることができる。
【0053】
これにより、カメラ16により実行される試験の信頼性を向上させることができる。
【0054】
移動デバイス52及び54が、加熱エリア2と検出エリア3との間のオフセットdを機械的に正確に調整することができる。繰り返すが、オフセットdとして0を用いて試験を行うことが望ましい。
【0055】
かかる正確な調整は、用いるべき行12を選択することにより可能であるが、マニュアル操作により又は処理ユニット46により制御することによっても可能となる。検出エリア3のトレース14が選択された検出器の行12の境界線に近いか又は交差するようなケースでは、2回目の機械的オフセットを調節する機会を設けることにより、選択された行12の中心にトレース14を再配置することができる。
【0056】
本発明の第3の特徴によれば、形成されるサーモグラフィックイメージの質を向上させ、これによって、カメラ16を用いて実行される試験の正確性及び信頼性を増加させることができる。
【0057】
これらの3つの特徴の各々、すなわち、光学デバイス40を用いること、ブレード32の性質、及び、オフセットを機械的に調節すること、の各々は、互いに独立して用いることができるものである、ということが理解できよう。
【0058】
第1の特徴に関しては、ビームの断面を伸張させるデバイス40は、当業技術において知られる物理的デバイスではなく、光学的なものであることを維持しつつも上述したものとは異なる構成を有することができる。
【0059】
ビームの断面を伸張させるデバイス40は、例えば、複数のレンズ、特に複数の円筒レンズにより構成することもできる。
【0060】
横軸断面(transverse section)が他方の軸よりも一方の軸に沿って大きくなるビームを得るためにレーザービーム4の進行方向に垂直な2つの軸において異なる屈折率パワーを有するレンズが、円筒レンズである、と理解できる。
【0061】
円弧状の断面を有する面43及び44に代えて、これらのレンズのうちの一方が、又は、用いるレンズ42自体が、面44、又は、パワーを均質化するのに適したプロファイルの複数の面を有することができる。
【0062】
このことが、レンズ42の下流の面44が円弧状とは異なる部分を有する図5Aに示されており、このレンズ42の断面は、断面の長さ方向にわたってレーザービーム4のパワーの均一性を増加させるのに適したプロファイルを有する。
【0063】
この場合における伸張デバイス40は、2つの機能、すなわち、レーザービーム4の断面を伸張させる機能と、伸張デバイス40の長さ方向にわたってビーム4のパワーを均一化させる機能と、を実現する。
【0064】
加熱エリア2の方向Dに沿ったパワー分布は、伸張デバイス40によって比較的に一様となり、形成されるイメージはシャープとなり、カメラ16を用いて実行される光熱試験は信頼性の高いものとなる。
【0065】
1つ又は複数のレンズ42に代えて、デバイス40は、反射によって断面を伸張させる機能とパワーの均一化させる機能とをもたらす1つ又は複数のミラーを備えることもできる。この場合、デバイス40は、一方の面58がビーム4を反射させるミラー56であって、円弧状の断面、又は、パワーを均一化させるのに適したプロファイルを有する断面を有するミラー56を具備する。
【0066】
このようなミラー56及びこのミラー56の反射面58が、それぞれ図4B及び図5Bに示されている。
【0067】
上述した例において、レーザービームの断面が1つの次元に沿って断面を増加させることにより伸張させられている、ということを理解できよう。変形例として、このような伸張は、ビームの断面の幅を低減させることによってもたらすことができる。
【0068】
同様に、用いるデバイス40に応じて、コリメータ38を削除することができる。
【0069】
変形例として、デバイス40は、レーザービーム4を移動させることによって、断面を伸張させる機能とパワーを均一化させる機能とを実現することができる。このケースでは、光学デバイス40は、例えば、音響光学セル60を備えることができる。図6に示すように、この音響光学セル60は、その断面が伸張されるような方向に沿ってビームを移動させることにより、ビーム4の断面を伸張させる。この移動は、図6における矢印62により示されている。
【0070】
変形例として、図7に示すように、レーザービーム4は、振動ミラー64により移動させられるものとすることができる。
【0071】
図8は、さらに別の変形例を示す。この場合における光学デバイス40は、光ファイバー68の束であって、上流端はレーザービーム4を受け、かつ、下流端72はそれらが出口において伸張させた断面を用いてレーザービーム4を生成するように配置された、光ファイバー68の束を備える。
【0072】
さらなる変形例が考えられる。具体的には、一方において断面を伸張させる機能と、他方においてパワーを均一化させる機能とが、2つの別々のデバイスにより実現するものとすることができる。
【0073】
オフセットの機械的な調節については、カメラ16が検出システム24を移動させるデバイス52と、形成システム22を移動させるデバイス54との両方を、必ずしも有する必要はない。
【0074】
実際、カメラ16は、これらのデバイスのうちの一方のみを備えるものとすることができる。
【0075】
このことが、カメラ16が形成システム24を移動させるためのデバイス52のみを備える場合についての図9に示されている。
【0076】
カメラ16の構造は、レーザー源34がカメラ16に統合され、ミラー26及び28が削除されるように、さらに簡略化される。
【0077】
さらには、図9におけるカメラ16は、表面1aをスキャニングするための統合された移動デバイス55を備えていない。
【0078】
この場合には、スキャニングは、物品1を移動させるデバイスによって、又は、カメラ16の外側に配置され該カメラを移動させるためのデバイスによって、実行される。
【0079】
さらに全体的にみると、行12の選択によるプログラムされた調整に加えて、用いるオフセットdの機械的調整は、形成システム22と検出システム24及び被試験物品1との間に配置された1又は複数の光学要素を移動させるためのデバイスを用いて実行するものとすることができる。したがって、形成システム22又は検出システム24を移動させることは不可欠ではない。
【0080】
さらなる実施の形態が考えられる。
【0081】
具体的には、物品1に対する入射ビーム4と発せられる赤外線ビーム5とは、必ずしも平行でなくてもよく、例示のために概略的な図10に示すように互いに傾斜していてもよい。
【0082】
図10では、ブレード32は、マトリクス8の検出器10のための保護フィルタとして機能する。
【0083】
同様に、フィルタブレードを用いることは不可欠ではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、光熱試験の原理を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係るカメラにより用いられる光熱試験プロセスを示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光熱試験カメラを示す概略図である。
【図4A】図4Aは、図3のカメラについて、レーザービームの断面を伸張させるためのデバイスを示す概略断面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aのデバイスの変形例を示す図4Aに類似した図面である。
【図5A】図5Aは、図4Aのデバイスの変形例を示す図4Aに類似した図面である。
【図5B】図5Bは、図4Aのデバイスの変形例を示す図4Aに類似した図面である。
【図6】図6は、図4Aのデバイスの変形例を示す図4Aに類似した図面である。
【図7】図7は、図4Aのデバイスのさらなる変形例を示す概略図である。
【図8】図8は、図4Aのデバイスのさらなる変形例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明に係るカメラの他の実施の形態を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明に係るカメラの他の実施の形態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービーム(4)を形成するシステム(22)であって、試験の対象とされる物品(1)の上において方向(D)に延びる加熱エリア(2)を形成するために前記レーザービームの断面を伸張させるデバイス(40)を備えるシステム(22)と、
前記物品(1)の表面(1a)の上の検出エリア(3)により発せられる赤外線を検出するための赤外線検出器(10)のマトリクス(8)と、
前記赤外線検出器(10)により供給される信号を処理するユニット(46)であって、前記加熱エリア(2)にわたって前記表面(1a)をスキャニングすることにより、前記物品(1)の前記表面(1a)のサーモグラフィックイメージを構築するユニット(46)と、
を具備するタイプの光熱試験のためのカメラ(16)であって、
前記デバイス(40)が光学デバイスである、ことを特徴とするカメラ。
【請求項2】
光学デバイスである前記デバイス(40)が、前記レーザービーム(4)を通過させるようにデザインされたレンズ(42)を含む、請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
光学デバイスである前記デバイス(40)が、前記レーザービーム(4)を反射させるようにデザインされたミラー(56)を含む、請求項1又は請求項2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記形成するシステム(22)が、前記加熱エリア(2)に沿って前記レーザービーム(4)のパワーを均一化させるデバイス(40)を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載のカメラ。
【請求項5】
前記パワーを均一化させるデバイスが、前記レーザービームの断面を伸張させるデバイス(40)により形成される、請求項4に記載のカメラ。
【請求項6】
前記レンズ(42)の1つの面(44)が、前記加熱エリア(2)に沿って前記レーザービーム(4)のパワーを均一化させるのに適したプロファイルを有する、請求項2と請求項5とを組み合わせた請求項に記載のカメラ。
【請求項7】
前記ミラー(56)の1つの反射面(58)が、前記加熱エリア(2)に沿って前記レーザービーム(4)のパワーを均一化させるのに適したプロファイルを有する、請求項3と請求項5とを組み合わせた請求項に記載のカメラ。
【請求項8】
前記パワーを均一化させるデバイス(40)が、前記レーザービーム(4)をその進行方向に垂直に移動させることによりラインを形成するデバイスである、請求項5に記載のカメラ。
【請求項9】
前記デバイス(40)が音響光学セル(60)を含む、請求項8に記載のカメラ。
【請求項10】
前記パワーを均一化させるデバイス(40)が振動ミラー(64)を含む、請求項8に記載のカメラ。
【請求項11】
前記パワーを均一化させるデバイス(40)は、上流端(70)が前記レーザービーム(4)を受け、下流端が伸張させた加熱エリア(2)を形成するためにラインに沿って配置された、光ファイバー(68)の束(66)を含む、請求項5に記載のカメラ。
【請求項12】
前記延びた加熱エリア(2)と前記検出エリア(3)との間におけるスペースdを機械的に調節するためのシステム(52、54)を含む、請求項1から請求項11のいずれかに記載のカメラ。
【請求項13】
ボックス(18)を具備し、
前記機械的に調節するためのシステムが、前記ボックス(18)に対して前記赤外線検出器(10)のマトリクス(8)を移動させるデバイス(52)を含む、請求項12に記載のカメラ。
【請求項14】
ボックス(18)を具備し、
前記機械的に調節するためのシステムが、前記ボックス(18)に対して前記形成するシステム(22)を移動させるデバイス(54)を含む、請求項12又は請求項13に記載のカメラ。
【請求項15】
前記移動させるデバイス(52、54)がリニアモータを含む、請求項13又は請求項14に記載のカメラ。
【請求項16】
前記移動させるデバイス(52、54)がピエゾリニアアクチュエータを含む、請求項13又は請求項14に記載のカメラ。
【請求項17】
前記移動させるデバイス(52、54)が、回転モータと、回転運動を並進運動に変換するメカニズムと、を含む、請求項13又は請求項14に記載のカメラ。
【請求項18】
前記レーザービーム(4)を反射させ、前記検出エリア(3)により放射された赤外線を前記赤外線検出器(10)に向けて伝達する、フィルタブレード(32)を具備する、請求項1から請求項17のいずれかに記載のカメラ。
【請求項19】
前記ブレードが、CaF2、MgF2、Al23、BaF2、Ge、ZnSe、ZnS−FLIR、マルチスペクトル硫化亜鉛、MgO、及び、SrF2により構成されるリストから選択された少なくとも1つの材料により構成される、請求項18に記載のカメラ。
【請求項20】
前記加熱エリア(2)にわたって前記物品(1)の前記表面(1a)をスキャニングするシステムを具備する、請求項1から請求項19のいずれかに記載のカメラ。
【請求項21】
前記処理するユニット(46)が、検出器マトリクス(8)における赤外線検出器(10)の行(12)を選択することにより、前記加熱エリア(2)と前記検出エリア(3)との間のスペース(d)を調節するのに適している、請求項1から請求項20のいずれかに記載のカメラ。
【請求項22】
前記処理するユニット(46)が、前記マトリクス(8)の前記赤外線検出器(10)の各々により供給される信号を独立に処理するのに適している、請求項1から請求項21のいずれかに記載のカメラ。
【請求項23】
レーザー源(34)を具備する請求項1から請求項22のいずれかに記載のカメラ。
【請求項24】
当該カメラの一部分を構成しないレーザー源(34)に対する接続手段(36)を具備する、請求項1から請求項22のいずれかに記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−539404(P2008−539404A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508249(P2008−508249)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000700
【国際公開番号】WO2006/114490
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(506105711)アレヴァ エヌペ (28)
【Fターム(参考)】