説明

レーザーマーキング用樹脂組成物およびこれを用いたレーザーマーキング記録材料、情報記録材料積層体

【課題】本発明の目的は、透明性が高く、高温環境下あるいは加熱を伴う作業時にトラブルがなく、良好な発色が得られるレーザーマーキング用樹脂組成物、およびレーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を支持体上に設けたレーザーマーキング記録材料を提供することである。
【解決手段】レーザーマーキング用樹脂組成物として、少なくとも、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋樹脂を含有させる。さらにエポキシ化合物を含有すると好ましい。レーザーマーキング記録材料として、支持体の少なくとも一方の面に、該レーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光でマーキング可能なレーザーマーキング用樹脂組成物、およびレーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を支持体上に設けたレーザーマーキング記録材料に関するものである。さらにはレーザーマーキング記録材料と情報記録層を組み合わせた情報記録材料並びに情報記録材料積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の容器、ラベル、包装材、電子部品、自動車部品、カードなど種々の製造物品には、メーカー名、物品名、製造年月日、製造ロット番号などの表示がなされている。これらの表示は、字やバーコード、マークなどの図などによって示され、大量のものに行なうには高速性が要求されるものであり、マーキングインキを用いた印刷法、或いはインクジェットによるマーキング法が普及している。しかしながら、これらの方法は印刷からインキの乾燥工程にいたる工程に長時間を有すること、微細な物品へのマーキングの困難さ、印刷品質の維持、管理の煩雑さ、コスト高、溶剤を使用していることによる環境汚染等の問題があって、その合理化が望まれている。最近、マーキングを合理化するために、物品等の表面に直接レーザー光を照射し、表面の一部を熱分解、或いは蒸発により触刻してマーキングするレーザーマーキング方法が行われるようになった。しかしながら、このマーキング方法においては、材質によって鮮明なマーキングが得難いものがあるという欠点を有している。
【0003】
上記の問題点を解決する方法として、製造物品等のマーキングを施すものの表面に、予め黒インキ等の有色インキでベタ印字を行い、それをレーザーで吹き飛ばして反転文字・図柄を刻印することが行われている。この方法では、ベタ印刷部が製造物品のデザインを制限し、意匠性に劣る。意匠性の問題を解決する方法として、マーキングを施すものの表面にレーザーマーキング可能なインキ或いは塗層を設け、レーザー光により該インキ或いは塗層を触刻してマーキングする方法、或いはマーキングを施すもの自体にレーザーマーキング可能な材料を用いることが行われている。レーザーにより有色のレーザーマーキングを行う方法としては、無機鉛化合物を使用する方法(例えば、特許文献1および2)、マンガンバイオレット、コバルトバイオレットを使用する方法(例えば、特許文献3)、水銀、コバルト、銅、ビスマス、ニッケル等の金属化合物を使用する方法(例えば、特許文献4)がそれぞれ開示されている。しかしこれらの化合物は重金属が主であるため、安全性、環境への影響等の問題、マークが鮮明でないといった問題がある。環境対応のレーザーマーキング可能な金属化合物として黄色酸化鉄が提案されているが、黄色酸化鉄は黄土色に着色しているため、樹脂等に配合した場合に汚味のある黄土色になり、レーザーマーキングした場合、茶色〜褐色のマーキングと地肌のコントラストが悪く、視認性に劣るといった問題点がある(例えば、特許文献5)。さらに、従来知られているレーザーマーキング可能な材料は、多量の添加剤が含まれており、透明性の点で問題があった。
【0004】
環境汚染を生じる重金属を用いないで黒色に発色するものとして、ロイコ染料と顕色剤の組み合わせに代表される感熱記録材料を用いる方法もある(例えば、特許文献6)。しかし、熱に弱く、感熱記録材料を構成する組成物によっては、製造中に、或いは、該感熱記録材料を用いて物品とする際にすでに発色してしまい、マーキングに使用出来ないという問題点を有している。
【0005】
近年、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、会員証、プリペイドカード等のプラスチックカードにおいて、その表面に、印刷インキ受理層、インク受理層、感熱記録層、熱転写記録層等の情報記録層を設け、各種方式にて情報記録を行うことが一般的に行われている。こうしたプラスチックカードの情報記録層とは反対面にレーザーマーキングにより、前記製造ロット番号等の情報を記録したいという要望がある。こうしたプラスチックカードは、厚み調整等のために、コア基材と、情報記録層を設けた表面基材とを熱プレス等により一体成型して製造される。
【0006】
ポリ塩化ビニル樹脂は、レーザーマーキング可能な樹脂として知られている(例えば、特許文献7)。上記のごときプラスチックカードにおいて、コア基材としてポリ塩化ビニル樹脂を用い、情報記録層を設けた表面基材と貼り合わせて一体化することで、情報記録層の反対面にレーザーマーキング可能なプラスチックカードとすることが可能である。しかしながら、こうして作製したプラスチックカードは、層構成が非対称であるせいか、カードのカールが酷く、実用上問題となっている。
【0007】
カールの問題を解決するために、情報記録層を設けた第1の表面基材、コア基材、マーキング層を設けた第2の表面基材の順に重ね合わせ、一体成型し、マーキング層としてポリ塩化ビニル樹脂を用いるといった手段が考えられる。しかしながら、この構成でプラスチックカードを作製した場合、カード製造の際の熱プレス時に、プレス板にマーキング層が貼り付くというトラブルが生じている。マーキング層をプレス板から剥離できる場合でも、プレス板が汚染されていて、清掃工程が増える等の作業効率の低下を招いている。
【特許文献1】特開昭61−69488号公報
【特許文献2】特開平1−306285号公報
【特許文献3】特開平2−204888号公報
【特許文献4】特開昭63−239059号公報
【特許文献5】特開昭60−155493号公報
【特許文献6】特開平5−57463号公報
【特許文献7】特開平9−188069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、透明性が高く、高温環境下あるいは加熱を伴う作業時にトラブルがなく、良好な発色が得られるレーザーマーキング用樹脂組成物、およびレーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を支持体上に設けたレーザーマーキング記録材料を提供することである。さらには、該マーキング層と情報記録層とを組み合わせた情報記録材料積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはこれらの課題を解決すべくレーザーマーキング用樹脂組成物について検討した結果、下記の発明により上記の課題が解決されることを見いだした。
【0010】
少なくとも、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋樹脂を含有するレーザーマーキング用樹脂組成物の発明である。
【0011】
さらにエポキシ化合物を含有すると好ましい。
【0012】
支持体の少なくとも一方の面に、前記レーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を設けてなるレーザーマーキング記録材料の発明である。
【0013】
支持体上の一方の面にマーキング層を設け、他方の面に情報記録層を設けてなる前記記載のレーザーマーキング記録材料の発明である。
【0014】
(A)前記レーザーマーキング記録材料と、(B)被着体の一方の面に情報記録層を設けた情報記録材料とを、マーキング層と情報記録層とがそれぞれ外面になるように積層してなる情報記録材料積層体の発明である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、透明性が高く、高温環境下あるいは加熱を伴う作業時にトラブルがなく、良好な発色が得られるレーザーマーキング用樹脂組成物、およびレーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を支持体上に設けたレーザーマーキング記録材料を提供することができる。さらには該マーキング層と情報記録層とを組み合わせた情報記録材料並びに情報記録材料積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物、レーザーマーキング記録材料、情報記録材料および情報記録材料積層体について詳細に説明する。本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、少なくとも、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋樹脂を含有することを特徴とする。本発明により、透明性が高く、塗層の強度、耐熱性が向上するため、高温環境下あるいは加熱を伴う作業時にトラブルがなく、発色が良好なレーザーマーキング用樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0017】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物とを必須成分としたものである。該ポリ塩化ビニル樹脂中の水酸基とポリイソシアネート化合物との架橋反応により、該樹脂組成物の凝集力と耐熱性を向上させることで、透明性を維持しつつ、レーザーマーキング可能としたものである。本発明に係わる水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂の具体例としては、塩化ビニルと水酸基を含有するビニルモノマー成分とを共重合して合成される共重合樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合後ケン化して得られる塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。水酸基を含有するビニルモノマー成分とは、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂は、熱の影響により意図せずに赤く変色しやすい。これらの中で、熱による赤変の起こりにくさの点で、アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物が好ましい。特に好ましくは、アクリル酸と炭素数2〜4の2価のアルコールとのエステル化物である。水酸基を含有するモノマー成分は、1種または2種以上混合して使用できる。
【0018】
本発明に係わる水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル、水酸基を含有するビニルモノマー成分以外のモノマー成分を共重合していてもよい。具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート等、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニルモノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有ビニルモノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アルキルアクリレートあるいはメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の重合性不飽和結合含有アミド系化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性不飽和結合含有ニトリル系化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル化合物、ブタジエン、イソプレン等のジエン系化合物等が挙げられる。これらその他のモノマー成分は、1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂における塩化ビニルの含有比率は、レーザー照射による発色の点で、質量比で50質量%以上97質量%以下であることが好ましく、より好ましくは65質量%以上95質量%以下、特に好ましくは75質量%以上95質量%以下である。水酸基を含有するビニルモノマーの含有比率は、ポリイソシアネート化合物との架橋によるレーザーマーキング層の塗層強度、耐熱性の点で、3質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上35質量%以下、特に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂の共重合反応は、既知の方法で行なうことができる。
【0020】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物に用いられるポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート化合物は、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環を構成する炭素原子に直接イソシアネート基が2箇所以上結合した化合物を指す。例えば、2,4−または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)もしくはその混合物、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート(PDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2´−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3´−ジメチル−4,4´−ジフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、各種ジアニシジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、2,4,6−トリイソシアネートジフェニルエーテル、4,4´,4″−トリフェニルメタントリイソシアネート、各種トリ(イソシアネートフェニル)チオフォスファイト等の芳香族トリイソシアネート化合物、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネート等の4官能以上の芳香族イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0021】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物は、芳香族環とイソシアネート基がメチレン基、エチレン基等の2価の炭化水素基を介して結合しており、そうした結合が2箇所以上ある化合物を指す。芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)もしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)もしくはその混合物、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、1,3,5−トリイソシアネートメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン、各種リジンエステルトリイソシアネート等の脂肪族トリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0023】
脂環族ポリイソシアネート化合物とては、例えば、水添TDI、水添XDI、水添MDI、水添XDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−または1,4−シクロへキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、3,3´−ジメチルジシクロへキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート化合物等が挙げられる。また、脂肪族あるいは脂環族のダイマー酸ジイソシアネート(DDI)等も使用することもできる。
【0024】
さらに、上記のポリイソシアネート化合物のうちジイソシアネート化合物3モルと水1モルから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物の三量化により形成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物、グリコール類、トリオール類またはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等に上記のポリイソシアネート化合物を付加して得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート製造の際に副生するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート化合物等の3官能以上のポリイソシアネート化合物の他、イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマー等が挙げられる。こららのポリイソシアネート化合物は、単独であるいは2種以上混合して使用される。これらの中で、アダクト型ポリイソシアネート化合物は、レーザーマーキング用樹脂組成物の透明性が高く、加熱時の樹脂の変色が少ない点で、好ましい。
【0025】
水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との配合比率は、ポリ塩化ビニル樹脂の水酸基の当量と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量との当量比が1:10〜5:1が好ましく、より好ましくは1:5〜3:1、特に好ましくは1:3〜2:1である。当量比が1:10より小さいと、レーザー照射時の発色濃度の低下を招きやすい。当量比が5:1より大きいと、架橋が不十分となり、塗層強度、耐熱性の低下を招きやすく、加熱を伴う作業時にトラブルが発生しやすい。また、該ポリ塩化ビニル樹脂の数平均分子量は5000以上100000以下であることが好ましく、より好ましくは10000以上60000以下、特に好ましくは15000以上40000以下である。数平均分子量が5000より小さいと、塗層強度、耐熱性の低下を招きやすく、加熱を伴う作業時にトラブルが発生しやすい。100000より大きいと、レーザーマーキング用樹脂組成物を含有した塗液の粘度が高くなりやすく、取り扱い性が低下しやすい。
【0026】
水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物の架橋反応は、反応温度50〜160℃、反応時間0.01〜100時間で行えばよい。尚、反応温度が低い場合は長時間を要し、高温では短時間で済むことは言うまでもない。また、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋反応を促進させる触媒として、例えば、トリエチレンジアミン、ナフテン酸コバルト、塩化第一スズ、テトラ−n−ブチルスズ、塩化第二スズ、トリメチルスズヒドロキシド、ジメチル第二塩化スズ、ジ−n−ブチルスズジラウレート等を配合することができる。触媒の添加割合は、架橋前のこれら2成分の合計乾燥固形分に対し0.5〜2質量%が好ましい。
【0027】
水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物の混合物は、それぞれが液状の場合はそのままの混合物で用いてもよいが、更にポリイソシアネート化合物と非反応性の溶剤で希釈して使用することもできる。使用できる溶剤としては、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂およびポリイソシアネート化合物を溶解する溶剤が好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸2−エトキシエチル等のエステル系、ジエチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、グリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素系、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ペンタン、ヘキサン等が挙げられる。
【0028】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、高温環境下あるいは加熱時に赤く変色するのを抑制するために、エポキシ化合物を含有させると好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂は、熱や光、放射線、せん断力などの物理的エネルギーによって分解し、塩化水素が放出・脱離することによって、共役二重結合が増加してポリエン結合ができ、赤変が発生すると考えられている。エポキシ化合物は、ポリ塩化ビニル樹脂から発生する塩化水素を捕捉し、連鎖的に共役二重結合が増加するのを抑制し、赤変を抑制するものと考えられる。
【0029】
本発明に係わるエポキシ化合物のエポキシ当量は少ない、すなわちエポキシ化合物1分子中のエポキシ含有量が多い方が、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂から発生する塩化水素を捕捉する機能に優れており、好ましい。エポキシ当量は、具体的には、600g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは400g/eq以下、特に好ましくは300g/eq以下である。
【0030】
本発明に係わるエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグルシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフロロアセトングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(エポキシステアリルエーテル)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3−メチルペンタントリオールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物、フタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロへキシルオクチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキシルカルボキシレート等のグリシジルエステル型エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン等のグリシジルアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。これらは少なくとも1種或いは2種以上混合して用いることができる。
【0031】
エポキシ化合物の添加量は本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物の全乾燥固形分に対する固形分比率で0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0032】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物中の、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂、ポリイソシアネート化合物およびエポキシ化合物の合計配合比率は、特に限定されないが、該樹脂組成物の透明性、発色濃度の点で、乾燥固形分比率で80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0033】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、レーザー光照射時の発色濃度向上を目的に、レーザーマーキング用樹脂組成物の着色を起こさない程度に金属化合物を配合することができる。水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋樹脂がレーザー光照射によって炭化されるときに、金属化合物は還元される。還元された金属化合物は、金属単体の微粒子になり、黒色を示す。金属化合物としては、塩基性炭酸鉛、塩基性亜燐酸鉛、塩基性硫酸鉛などの鉛化合物、炭酸ニッケル、蓚酸ニッケルなどのニッケル化合物、水酸化銅、蓚酸銅、炭酸銅などの銅化合物などを用いることができる。
【0034】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、レーザー光を熱に変換することができるレーザー増感剤を配合してもよい。レーザー増感剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、酸化珪素、三酸化アンチモン等の金属酸化物、硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属硫化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、硼酸アルミニウム、硼酸ナトリウム、硼酸マンガン、硼酸亜鉛、硼酸バリウム、硼酸マグネシウム、硼酸カルシウム、硼酸リチウム等の金属硼酸塩、珪酸カルシウム、珪酸アルミナ、鉄を含む珪酸アルミナ(マイカ)、含水珪酸アルミナ(カオリン)、珪酸マグネシウム(タルク)、コージェライト、合成雲母(弗素金雲母、弗素四珪素雲母等)、天然雲母(マスコバイト、フロゴバイト、バイオタイト、セリサイト等)等金属珪酸塩、カーボンブラック、フタロシアニン化合物、金属錯体化合物、ポリメチン化合物、ナフトキノン系化合物等の光熱変換色素等が挙げられる。レーザー増感剤の粒子径は、通常50μm以下であり、特に0.1〜10μmのものが好ましい。また、配合量は、レーザーマーキング用樹脂組成物の全乾燥固形分に対して、20質量%以下が好ましく、より好ましく15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0035】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、本発明の目的を妨げない範囲で、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋樹脂以外に、バインダー成分を添加する事も可能である。バインダーの具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン等、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等およびこれらの水酸基、カルボキシル基がアミン類、フェノール類、エポキシ類等の架橋剤と反応し、硬化する熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等が挙げられる。
【0036】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物は、加熱成形時の離型性付与を目的として、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、例えば流動パラフィン等石油系潤滑油、ハロゲン化炭化水素、ジエステル油、シリコーン油、フッ素シリコーン等合成潤滑油、各種変性シリコーンオイル(エポキシ変性、アミノ変性、アルキル変性、ポリエーテル変性等)、ポリオキシアルキレングリコール等の有機化合物とシリコーンの共重合体等のシリコーン系潤滑性物質又はシリコーン共重合体、フルオロアルキル化合物等各種フッ素系界面活性剤、トリフルオロ塩化エチレン低重合物等のフッ素系潤滑性物質、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アミド、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩、シリコーン粒子、シリコーンゴム粒子等が使用できる。これらの離型剤は、単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0037】
さらに、レーザーマーキング用樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じて、前記した金属化合物、レーザー増感剤で例示した以外の顔料、レベリング剤、分散剤、界面活性剤、硬膜剤、防腐剤、染料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、pH調節剤、消泡剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0038】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物を発色させるレーザーとしては、例えば、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、YVO4レーザー、Er:YAGレーザー、Er:YSGGレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、エキシマレーザー等を用いることができる。これらのうち、赤外領域の波長を有するCO2レーザー(波長10.6μm)、Nd:YAGレーザー、YVO4レーザー(それぞれ波長1.064μm)、Er:YAGレーザー(波長2.94μm)、Er:YSGGレーザー(波長2.79μm)が、レーザーマーキング用樹脂組成物の発色感度が高いため好ましく、特に好ましくは遠赤外線領域の波長を有するCO2レーザーである。
【0039】
本発明のレーザーマーキング記録材料は、支持体の少なくとも一方の面に、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を設けた構成である。本発明に用いられる支持体としては、紙、塗工紙、各種不織布、織布、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。これらは、不透明、半透明あるいは透明のいずれであってもよい。地肌を白色その他の特定の色に見せるために、白色顔料や有色染顔料や気泡を支持体中または表面に含有させてもよい。また、フィルム類等へコロナ放電等による表面処理をしたり、バインダーで例示した化合物等を支持体表面に塗布するなどの易接着処理をしてもよい。本発明に係る支持体の厚みは、特に制限されないが、20〜1300μm、好ましくは40〜1000μm程度である。
【0040】
本発明に係わるマーキング層の膜厚は、レーザーマーキング用樹脂組成物の組成と所望の発色濃度により決定されるが、具体的には、0.5〜30μmの範囲が好ましく、3〜20μmがより好ましい。また、マーキング層は、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物の配合比率を層別に変化させたりして2層以上の多層にしてもよい。
【0041】
本発明において、耐候性改良等を目的に、支持体とマーキング層との間あるいはマーキング層の上層に、紫外線吸収剤や酸化防止剤等を含有する層を設けたり、機械的強度向上を目的に、マーキング層上に熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂等からなる保護層を設けてもよい。発色感度向上等を目的に、支持体とマーキング層との間に中空粒子からなるアンダーコート層を設けてもよい。また、支持体上のマーキング層とは反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けてもよい。さらに、粘着加工などを行い、別の基材と貼り合わせたり、別の基材との間に光メモリ、接触式IC、非接触式IC等の情報記録媒体やアンテナ等を内在させてもよい。また、レーザーマーキング記録材料中の任意の層及び/又は支持体にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0042】
本発明のレーザーマーキング記録材料は、支持体上の一方の面にマーキング層を設け、他方の面に情報記録層を設けてもよい。情報記録層は、特に限定されず、例えば、印刷インキ受理層、インクジェット記録用のインク受理層、感熱記録層、可逆性感熱記録層、昇華熱転写用受理層、溶融熱転写用受理層、感圧記録層、ドットプリンター受理層、静電記録受理層、電子写真用受理層、磁気記録層等が挙げられる。情報記録層は単層でも2層以上の複数の層から構成されていてもよい。感熱記録層と印刷インキ受理層といったように、複数の情報記録方式に対応した単層であってもよい。これらの中で、印刷インキ受理層、インクジェット記録用のインク受理層、感熱記録層、可逆性感熱記録層、昇華熱転写用受理層、溶融熱転写用受理層が好ましい。
【0043】
本発明の情報記録材料積層体は、(A)本発明のレーザーマーキング記録材料と、(B)被着体の一方の面に情報記録層を設けた情報記録材料とを、マーキング層と情報記録層とがそれぞれ外面となるように積層した構成である。被着体としては、前記の支持体で例示した材料を使用することができる。情報記録材料積層体のカールを抑制するために、(A)レーザーマーキング記録材料で使用される支持体と(B)情報記録材料で使用される被着体とは、同一の素材であることが好ましい。また、支持体と被着体との厚みの差は、支持体の厚みに対し±5%以内であると好ましい。
【0044】
本発明において、(A)レーザーマーキング記録材料、(B)情報記録材料との間に、厚み調整等のためにコア基材を挿入したり、該積層体内に光メモリ、接触式IC、非接触式IC等の情報記録媒体やアンテナ等を包埋したりすることができる。コア基材の厚みとしては、作製しようとする積層体の厚みを考慮して選定される。例えば、JIS X 6301で規定される厚み760μmのカードを作製する場合、20〜250μm厚のレーザーマーキング記録材料および情報記録材料と、50〜720μm厚のコア基材1枚あるいは複数枚を適宜組み合わせて使用することができる。ICチップやアンテナ等を包埋する場合は、これら材料のサイズを考慮してコア基材の厚みを選定することができる。コア基材としては、前記の支持体で例示した材料を使用することができるが、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸とエチレングリコールに加え、1,4−シクロヘキサンジメタノールを構成成分とするような非結晶性ポリエステル樹脂(以下、PET−G)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート/PET−Gアロイ、ポリカーボネート/ABSアロイなどが好ましく使用される。
【0045】
本発明における情報記録材料積層体を積層する際には、(A)レーザーマーキング記録材料における支持体のマーキング層とは反対面、および/または(B)情報記録材料における被着体の情報記録層とは反対面に、適宜、粘着剤、接着剤等を塗布することができる。貼り合わせの方法としては、ホットメルト型接着剤、ヒートシール型接着剤のように、加熱により粘接着性を発現する接着剤を予め支持体および/または被着体に塗布しておき、レーザーマーキング記録材料、情報記録材料、場合によってはコア基材等を重ね合わせ、仮固定した後、熱プレス機等により加熱・加圧を同時に行い一体化させる方法が、位置ずれや接着界面への空気の混入が起こりにくく、安定した接着性が得られ、作業効率が高いため、好ましい。加熱により粘接着性を発現する接着剤を塗布する代わりに、支持体および/または被着体として熱接着性を有する熱可塑性樹脂を用い、加熱・加圧により一体化させることもできる。こうした熱接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、PET−G、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0046】
本発明の情報記録材料積層体を、加熱・加圧を同時に行うことにより作製する際の温度としては、90℃以上であることが好ましく、より好ましくは90℃以上150℃以下、さらに好ましくは100℃以上140℃以下、特に好ましくは110℃以上130℃以下である。温度が90℃より低いと、均一かつ安定な接着性が得にくくなり、150℃よりも高いと、マーキング層の地肌が赤変しやすくなり、また感熱記録層のような熱感応性の情報記録層の場合、地肌の発色が起こりやすい。加熱・加圧を同時に行う場合の加圧の条件は、0.5MPa以上3MPaであることが好ましく、さらに好ましくは1MPa以上2MPaである。加圧が0.5MPaより小さいと均一かつ安定な接着性が得にくくなり、3MPaより大きいと接着性は飽和に達する一方、機械的負荷が大きくなりやすい。
【0047】
本発明において、耐候性改良等を目的に、支持体と情報記録層との間、被着体と情報記録層との間、あるいは情報記録層の上層に、紫外線吸収剤や酸化防止剤等を含有する層を設けたり、機械的強度向上を目的に、情報記録層上に熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂等からなる保護層を設けてもよい。支持体と情報記録層との間、あるいは被着体と情報記録層との間に、アンダーコート層を設けてもよい。また、被着体上の情報記録層とは反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けてもよい。さらに、情報記録材料中の任意の層及び/又は被着体にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0048】
本発明における各層を支持体上あるいは被着体上に形成する方法は特に制限されるものではなく、従来の方法により形成することが出来る。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアロールおよびトランスファーロールコーター、ロールコーター、コンマコーター、スムージングコーター、マイクログラビアコーター、リバースロールコーター、4本あるいは5本ロールコーター、ディップコーター、ロッドコーター、キスコーター、ゲートロールコーター、スクイズコーター、スライドコーター、ダイコーター等の塗抹装置、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いることが出来る。更に通常の乾燥工程の他、紫外線照射または電子線照射により各層を保持させることが出来る。これらの方法により、1層ずつあるいは多層同時に塗布、印刷することができる。また、一旦担持体上に本発明に係わるマーキング層あるいは情報記録層を設けた後、支持体あるいは被着体に、これらの層を転写形成しても良い。
【実施例】
【0049】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の配合部数、配合比率は質量基準である。
【0050】
(実施例1)
水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリレートの共重合体(商品名「UCAR SOLUTION VINYL RESINS VAGF」、塩化ビニル:酢酸ビニル:ヒドロキシアルキルアクリレート=81:4:15、数平均分子量33,000、白色粉末、ダウ・ケミカル社製)100部を、トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶剤400部に溶解した。この溶液にポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、不揮発分75質量%、日本ポリウレタン工業(株)製)20部を加えてよく混合し、トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶剤で固形分濃度が20質量%になるまで希釈し、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液1を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1を、厚さ50μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シートの一方の面に、乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、120℃で1分乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、マーキング層を形成し、本発明のレーザーマーキング記録材料1を得た。
【0051】
(実施例2)
さらに、エポキシ化合物(商品名「ERL−4221」、不揮発分100質量%、ダウ・ケミカル社製)5部を添加した以外は、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1と同様にして、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液2を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液2を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザーマーキング記録材料2を作製した。
【0052】
(実施例3)
さらに、離型剤として水酸基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(商品名「BYK−370」、ビッグケミー社製)5部を添加した以外は、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液2と同様にして、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液3を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザーマーキング記録材料3を作製した。
【0053】
(実施例4)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3において、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリレートの共重合体(塩化ビニル:酢酸ビニル:2−ヒドロキシエチルアクリレート=81:4:15、数平均分子量35,000、白色粉末)を用いて、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液4を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液4を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザーマーキング記録材料4を作製した。
【0054】
(実施例5)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3において、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリレートの共重合体(塩化ビニル:酢酸ビニル:4−ヒドロキシブチルアクリレート=81:4:15、数平均分子量30,000、白色粉末)を用いて、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液5を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液5を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザーマーキング記録材料5を作製した。
【0055】
(実施例6)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3において、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコールの共重合体(商品名「UCAR SOLUTION VINYL RESINS VAGH」、塩化ビニル:酢酸ビニル:ビニルアルコール=90:4:6、数平均分子量27,000、白色粉末、ダウ・ケミカル社製)を用いて、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液6を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液6を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のレーザーマーキング記録材料6を作製した。
【0056】
(比較例1)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3において、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、水酸基を含有しないポリ塩化ビニル樹脂(商品名「UCAR SOLUTION VINYL RESINS VYHH」、塩化ビニル:酢酸ビニル=86:14、白色粉末、ダウ・ケミカル社製)を用いて、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液7を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液7を用いた以外は、実施例1と同様にして、レーザーマーキング記録材料7を作製した。
【0057】
(比較例2)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3において、ポリイソシアネート化合物を配合せず、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液8を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液8を用いた以外は、実施例1と同様にして、レーザーマーキング記録材料8を作製した。
【0058】
(比較例3)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3において、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、ポリエステルポリオール(商品名「バーノック D−293−70」、不揮発分70質量%、大日本インキ化学工業(株)製)143部を用いて、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液9を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液9を用いた以外は、実施例1と同様にして、レーザーマーキング記録材料9を作製した。
【0059】
(比較例4)
塩基性亜リン酸鉛50部、トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶剤200部の混合物を、ガラスビーズと共にペイントシェーカーで24時間分散し分散液を得た。この分散液にビスフェノールF型エポキシ樹脂18部、アミン系硬化剤15部を添加し、トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶剤で、固形分濃度が20質量%になるまで希釈し、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液10を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液10を用いた以外は、実施例1と同様にして、レーザーマーキング記録材料10を作製した。
【0060】
(比較例5)
3−ジエチルアミノ−7−o−フルオロアニリノフルオラン67部、10質量%ポリビニルアルコール水溶液100部、水33部から成る混合物を、サンドグラインダーを用いて、2時間分散化処理して、平均粒径が約0.8μmの発色剤の分散液Aを得た。ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン40部、10質量%ポリビニルアルコール50部、水10部からなる混合物をサンドグラインダーを用いて2時間分散化処理して、平均粒径が約0.8μmの顕色剤の分散液Bを得た。水酸化アルミニウム60部、13質量%ポリビニルアルコール40部からなる混合物を、サンドグラインダーを用いて、2時間分散化処理して、平均粒径が約1μmの水酸化アルミニウムの分散液Cを得た。分散液A:B:C:40質量%エチレン・アクリル酸エステル・アクリル酸共重合体エマルジョン=2.4:5.5:2.0:1.0の割合で混合して、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液11を調製した。レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液11を用いた以外は、実施例1と同様にして、レーザーマーキング記録材料11を作製した。
【0061】
試験1(透明性)
レーザーマーキング記録材料1〜11の透明性を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
【0062】
◎:透明性が高く、良好である。
○:やや白く濁っているが、実用上問題ないレベル。
×:白濁しており、透明性に劣る。
【0063】
試験2(レーザー発色性)
レーザーマーキング記録材料1〜11にパルス型炭酸ガスレーザー(レーザーテクニクス製、商品名「BLAZAR6000」)を用いて、0.8J/cm2・パルスのエネルギーでレーザー光を1ショットだけ照射して、そのマークの鮮明性を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
【0064】
◎:良好な発色状態である。
○:鮮鋭さにやや欠けるが、十分に識別可能な発色レベルである。
×:全く発色しない。
【0065】
【表1】

【0066】
本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物1〜6を用いたレーザーマーキング記録材料1〜6は、マーキング層の透明性が高く、レーザー照射による発色性が良好である。ポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物との架橋樹脂を用いた比較例のレーザーマーキング記録材料9では、レーザー光照射により発色が全く起こらない。塩基性亜リン酸鉛を用いた比較例のレーザーマーキング記録材料10、ロイコ染料を用いた比較例のレーザーマーキング記録材料11は、マーキング層の透明性に劣る。
【0067】
(実施例7)
(1)インク受理層塗液の調製
非晶質シリカ微粒子(商品名「ファインシールX37B」、(株)トクヤマ製)100部を水450部に投入・撹拌し、分散を行った。こうして得た分散液に、10質量%ポリビニルアルコール水溶液(商品名「R1130」、(株)クラレ製)200部、カチオン性染料定着剤(商品名「スミレーズレジン1001」、住化ケムテックス(株)製)50部を混合し、インクジェット記録用のインク受理層塗液を調製した。
【0068】
(2)接着層塗液の調製
飽和ポリエステル樹脂(商品名「PES−355S30」、東亞合成(株)製)30部、トルエン56部、メチルエチルケトン14部、及び多価アルコール脂肪酸エステル(商品名「SL−02」、理研ビタミン(株)製)0.6部をよく混合し、接着層塗液1を調製した。
【0069】
(3)(B)情報記録材料の作製
(1)で得たインク受理層塗液を、被着体である厚み75μmの白色ポリエチレンテレフタレート(PET)シートの一方の面に、乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥して、インク受理層を形成した。さらに、該PETシートの非塗工面に、(2)で得た接着層塗液1を乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥して、接着層を設け、情報記録層として、インクジェット記録用のインク受理層を有する(B)情報記録材料1を作製した。
【0070】
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1を、支持体である厚さ75μmの白色ポリエチレンテレフタレート(PET)シートの一方の面に、乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、120℃で1分乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、マーキング層を形成した。さらに、支持体の非塗工面に、接着層塗液1を乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥して(A)レーザーマーキング記録材料12を作製した。
【0071】
こうして得た(A)レーザーマーキング記録材料12、100μm厚の透明ポリ塩化ビニル樹脂製シート、200μm厚の白色ポリ塩化ビニル樹脂製シートを2枚、100μm厚の透明ポリ塩化ビニル樹脂製シート、(B)情報記録材料1をこの順番に、マーキング層およびインク受理層とがそれぞれ外面となるように重ね合わせ、2枚のステンレス製鏡面板の間に挟み、120℃、1.5MPaの圧力で20分間熱圧着し、常温まで冷却し、情報記録層としてインク受理層を有する情報記録材料積層体1を得た。
【0072】
(実施例8〜12および比較例6〜10)
レーザーマーキング用樹脂組成物塗液1の代わりに、各々レーザーマーキング用樹脂組成物塗液2〜11を用いる以外は、実施例7と同様にして、(A)レーザーマーキング記録材料13〜22を作製した。続いて、(A)レーザーマーキング記録材料12の代わりに、各々(A)レーザーマーキング記録材料13〜22を用いる以外は、実施例7と同様にして、情報記録材料積層体2〜11を作製した。
【0073】
試験3(鏡面板の汚れ)
実施例7〜12および比較例6〜10において、マーキング層と鏡面板との接着具合、鏡面板の汚れを以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
【0074】
◎:マーキング層と鏡面板とが簡単に剥がれる。また、鏡面板の汚れは全くない。
○:マーキング層と鏡面板とを剥がすときに少し抵抗がある。あるいは鏡面板に少し汚れが見られる。マーキング層の取られはなく実用上問題ないレベル。
×:マーキング層と鏡面板とが接着しており、剥がすとマーキング層がほぼ全面的に鏡面板に取られる。
【0075】
試験4(耐地肌変色性)
実施例7〜12および比較例6〜10で作製した情報記録材料積層体1〜11について、マーキング層の地肌の着色を以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
【0076】
◎:地肌部の着色が全くない。
○:ごくうっすらと着色が見られるが、実用上問題ないレベル。
△:やや着色が見られ、実用の下限レベル。
×:明確な着色が見られ、実用上問題となるレベル。
【0077】
【表2】

【0078】
レーザーマーキング用樹脂組成物1〜6を用いた本発明のレーザーマーキング記録材料12〜17は、加熱・加圧時に鏡面板の汚れ、接着が起こりにくいため、作業性に優れ、地肌の変色も少ない。エポキシ化合物を添加した実施例8〜12は、加熱成形時にマーキング層の赤変が起こりにくく、好ましい。実施例9〜12の比較より、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリレートの共重合体を用いた実施例9〜11は、加熱・加圧時の地肌の赤変がなく、好ましい。また、離型剤を添加した実施例9〜12は鏡面板の汚れ、接着が全くなく、良好である。一方、水酸基を含有しないポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物を配合した比較例6、水酸基を含有したポリ塩化ビニル樹脂のみでポリイソシアネート化合物を配合しない比較例7、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤を配合した比較例9は、加熱・加圧時に鏡面板への貼り付きが起こる。ロイコ染料を用いた比較例10は、加熱・加圧時の熱によりマーキング層が発色し、レーザーマーキング記録材料として使用できなかった。
【0079】
(実施例13)
実施例7で作製したインクジェット記録用のインク受理層を有する(B)情報記録材料1の非塗工面に、本発明のレーザーマーキング用樹脂組成物塗液3を乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、120℃で1分乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、マーキング層を形成し、本発明のレーザーマーキング記録材料23を得た。
【0080】
レーザーマーキング記録材料23のマーキング層に、試験2(レーザー発色性)を実施したところ、良好な発色状態であった。また、インク受理層に市販のインクジェットプリンターで印字を行ったところ、良好な画像を得ることができた。
【0081】
(実施例14)
(1)可逆性感熱記録層塗液の調製
染料前駆体として3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−p−トリルアミノフルオラン20部、可逆性顕色剤としてN−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N´−n−オクタデカノヒドラジドを100部、バインダー樹脂としてカプロラクトンポリオール(商品名「TONE0301」、不揮発分100%、酸価0.2、樹脂OH価560mgKOH/g、ダウ・ケミカル社製)50部、溶媒としてメチルエチルケトン980部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで24時間分散し分散液を得た。こうして得た分散液にポリイソシアネート化合物(商品名「タケネートD−110N」、不揮発分75%、三井化学ポリウレタン工業(株)製)200部を加えてよく混合し、可逆性感熱記録層塗液を調製した。
【0082】
(2)中間層塗液の調製
紫外線吸収剤(商品名「チヌビン328」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50部、ポリエステルポリオール(商品名「バーノック11−408」、不揮発分70%、大日本インキ化学工業(株)製)100部、メチルエチルケトン800部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間分散し分散液を得た。こうして得た分散液にポリイソシアネート化合物(商品名「タケネートD−110N」、不揮発分75%、三井化学ポリウレタン工業(株)製)140部、メチルエチルケトン50部を加えよく混合し、中間層塗液を調製した。
【0083】
(3)保護層塗液の調製
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(商品名「ユニディックV−4205」、大日本インキ化学工業(株)製)100部、平均粒子径1.2μmのシリカ粒子(商品名「ニップシールSS−50F」、東ソー・シリカ(株)製)10部、イソプロピルアルコール90部をよく混合し、保護層塗液を調製した。
【0084】
(4)可逆性感熱記録材料の作製
(1)で得た可逆性感熱記録層塗液を、被着体である厚さ75μmの白色ポリエチレンテレフタレート(PET)シートの一方の面に、乾燥膜厚が8μmとなるように塗布し、120℃で1分乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、可逆性感熱記録層を形成した。可逆性感熱記録層上に、(2)で得た中間層塗液を、乾燥膜厚が1μmとなるように塗布し、120℃で1分間乾燥後、さらに50℃にて48時間加温し、中間層を形成した。中間層上に、(3)で得た保護層塗液を塗布した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化させ、乾燥硬化後の膜厚が3μmの保護層を設けた。さらに、支持体の非塗工面に、接着層塗液1を乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、80℃で3分間乾燥して、情報記録層として、可逆性感熱記録層を有する(B)情報記録材料2を作製した。
【0085】
(5)情報記録材料積層体12の作製
実施例9において、(B)情報記録材料1の代わりに、(B)情報記録材料2を用い、レーザーマーキング用樹脂組成物塗液3を塗工した(A)レーザーマーキング記録材料14を用いて、情報記録層として可逆性感熱記録層を有する情報記録材料積層体12を作製した。
【0086】
(実施例15)
被着体として厚さ100μmの白色ポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いる以外は、実施例14と同様にして情報記録材料積層体13を作製した。
【0087】
(実施例16)
被着体として厚さ75μmの白色ポリ塩化ビニルシートを用いる以外は、実施例14と同様にして情報記録材料積層体14を作製した。
【0088】
(比較例11)
実施例14において、(A)レーザーマーキング記録材料14を用いずに、情報記録材料積層体15を作製した。
【0089】
試験5(カール)
情報記録材料積層体12〜15を、打ち抜き加工機を用いて54mm×86mmのカードサイズに仕上げた。こうして得たカードを平らな机上に置き、カールの状態を以下の基準で判定した。結果を表3に示す。
【0090】
◎:全くカールがなく、良好。
○:机上でカールが凹になるようにカードを置いたときに、カード端面に1mm以内の浮きが見られるが、実用上問題のないレベル。
×:机上でカールが凹になるようにカードを置いたときに、カード端面に1mmより大きな浮きが見られる。あるいは、対角線の方向にカールが発生している。実用上問題となるレベル。
【0091】
試験6(レーザー発色性)
試験5で得たカードのマーキング層に、パルス型炭酸ガスレーザー(レーザーテクニクス製、商品名「BLAZAR6000」)を用いて、0.8J/cm2・パルスのエネルギーでレーザー光線を1ショットだけ照射して、そのマークの鮮明性を以下の基準で判定した。結果を表3に示す。
【0092】
◎:良好な発色状態である。
○:鮮鋭さにやや欠けるが、十分に識別可能な発色レベルである。
×:全く発色しない。
【0093】
【表3】

【0094】
本発明のレーザーマーキング記録材料を用いて作製した可逆性感熱記録材料積層体は、カードにした際のカールが少なく、マーキング層にレーザー光照射により画像記録が可能である。(B)情報記録材料2の被着体と、(A)レーザーマーキング記録材料の支持体が同一の素材、厚みである実施例14の情報記録材料積層体12は、カールがほとんどなく、好ましい。一方、(A)レーザーマーキング記録材料を用いずに作製した比較例11の情報記録材料積層体15は、カールが発生し、実用上問題となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水酸基を含有するポリ塩化ビニル樹脂とポリイソシアネート化合物との架橋樹脂を含有するレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項2】
さらにエポキシ化合物を含有する請求項1記載のレーザーマーキング用樹脂組成物。
【請求項3】
支持体の少なくとも一方の面に、請求項1または2記載のレーザーマーキング用樹脂組成物を含有するマーキング層を設けてなるレーザーマーキング記録材料。
【請求項4】
支持体上の一方の面にマーキング層を設け、他方の面に情報記録層を設けてなる請求項3記載のレーザーマーキング記録材料。
【請求項5】
(A)請求項3記載のレーザーマーキング記録材料と、(B)被着体の一方の面に情報記録層を設けた情報記録材料とを、マーキング層と情報記録層とがそれぞれ外面になるように積層してなる情報記録材料積層体。

【公開番号】特開2008−265074(P2008−265074A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108991(P2007−108991)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】