レーザー光を利用した物質検出装置及びその方法
【課題】液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出する。
【解決手段】物質検出装置10は、検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光線を発振するレーザー発振部20と、物質が溶解している液体5Lを気化して気体5Gにする気化部30と、気体5Gにレーザー光線を照射し、該レーザー光線を吸収させるための吸収部40と、照射されたレーザー光線の透過光強度を検出する検出部50とを備える。
【解決手段】物質検出装置10は、検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光線を発振するレーザー発振部20と、物質が溶解している液体5Lを気化して気体5Gにする気化部30と、気体5Gにレーザー光線を照射し、該レーザー光線を吸収させるための吸収部40と、照射されたレーザー光線の透過光強度を検出する検出部50とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を利用した物質検出装置及びその方法に係り、特に液体中の物質を検出する物質検出装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有害な微量物質を検出することが、環境衛生上の重要な問題となっている。例えば、都市・農村・工場等においては、どの程度の量の有害微量物質が放出されているかを監視することが重要である。また、生理学・地球温暖化等の研究分野からも微量物質の検出方法に関心が集められている。
【0003】
かかる状況において、特に上水についての有害微量物質の検出が重要視されている。
【0004】
すなわち、上水については、直接人間の飲用に供されるものである。そのため、発ガン性のあるトリハロメタン等を除去するために、人体に悪影響を与える物質を検出することが必要とされる。また、雑菌の繁殖を抑えるため、塩素濃度を制御する必要もある。
【0005】
そこで、液体中に溶解した微量物質の検出が検討されているが、液体中に溶解した微量物質は、ppb(10−9)レベルでの検出が求められている。
【0006】
この点、従来からppbレベルの微量物質を検出する方法として、ガスクロマトグラフ法、液クロマトグラフ法、質量分析法、あるいは、これらを併用した微量物質を分析する方法及び電気化学的な分析方法が知られている。
【0007】
また、中赤外域のレーザー光線を用いてガス中の分子成分を検出する方法等もある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−289785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の微量物質の検出方法においては、ある程度(30分程度)の時間が必要とされる。また、信頼性を高めるために、試料を濃縮するための前処理のリードタイム(場合により、10〜20日程度)が必要とされる。
【0009】
また、レーザー光線を用いて、液体中に溶解した微量物質を検出しようとした場合、液体の吸収スペクトル幅が広いため、微量物質の吸収スペクトルが重なり、検出が困難である。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出する物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はかかる課題を解決するものであり、液体に含まれる検出対象物質を検出するための物質検出装置において、液体を気化して気体にする気化手段と、検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光を発振する発振手段と、気体に前記レーザー光を照射し、該レーザー光を吸収させるための吸収手段と、照射されたレーザー光の透過光に基づいて、検出対象物質を検出するための検出手段とを備えた物質検出装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0015】
物質検出装置10は、液体5Lに含まれている物質を検出するものであり、レーザー発振部20、気化部30、吸収部40、検出部50及び制御部60(図示せず)を備えている。
【0016】
ここで、液体5Lは、液体管1内を流れている上水等である。
【0017】
レーザー発振部20は、液体5L中に溶解した検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光線を発振するものであり、発振したレーザー光線を吸収部40へと入射する。
【0018】
検出対象物質としては、例えば上水における有害微量物質等が挙げられるが、これらは主に2μm〜9μmの吸収波長を有している。そのため、上水における有害微量物質を検出する場合、レーザー発振部20は、図2に示す構成により狭帯域レーザー光線を発振するように構成される。
【0019】
すなわち、レーザー発振部20は、波長λ1のレーザー光線を出力する第1レーザーダイオード21と、波長λ2を中心に出力波長を変化できる第2レーザーダイオード22とを備えている。そして、これら2つのレーザーダイオード21,22より出力される2つのレーザー光線は、光ファイバー23および偏波コントローラ24A,24Bを介して、光合成器25に導かれる。光合波器25によって合波された後、レーザー光線は第1レンズ26Aにより集束される。集束されたレーザー光線は、差周波発生用非線形光学結晶27に入射される。差周波発生用非線形光学結晶27に2つのレーザー光線が入射されると、その波長差の波長を有する光線が出力される。出力された光線は第2レンズ26Bにより平行光線にされ、ゲルマニウムフィルタ28により長波長成分(2〜9μm)が通過される。このようにして、狭帯域レーザー光線が発振される。
【0020】
なお、偏波コントローラ24A,24Bは、レーザーダイオード21,22からのレーザー光線の偏波を、それぞれ差周波発生に最適な偏波状態に設定するものである。
【0021】
また、差周波発生用非線形光学結晶27は、非線形光学結晶であり、2つの高いエネルギーのフォトンから1つの低いエネルギーのフォトンを生成する変換過程が生じる条件に設定し、第1レーザー光線と第2レーザー光線との波長を適当に選ぶことにより、中赤外線領域で狭帯域のレーザー光線を発振する。具体的には、波長が1000nm及び1500nmのフォトンから3000nmのフォトンを生成する変換過程が生じる条件に設定しておくことで、2〜9μmの中赤外線領域の狭帯域レーザー光線を発振する。
【0022】
気化部30は、溶液5L中に溶解した検出対象物質が溶解した溶液5Lを気化させるものであり、気化した気体5Gを吸収部40へと送るものである。
【0023】
ここでは、気化部30は、図3に示すように、真空排気装置31及び減圧容器32を備えている。
【0024】
真空排気装置31は、減圧容器32を10torr程度に減圧するものである。
【0025】
減圧容器32は、液体管1と連結された微小な孔33から、液体管1を流れる液体5Lを間欠的に導入するものである。導入された液体5Lは、減圧容器32内で減圧されることにより、気体5Gに気化される。また、気体5Gは、気化されるとともに微小な孔33から噴出され、吸収部40へ送られる。なお、気体5Gは、気体と液体と固体とが混合した蒸気である場合もある。
【0026】
なお、減圧容器32には光学窓34が取り付けられており、減圧容器32内に測定用レーザー光線を導入できるようになっている。
【0027】
吸収部40は、気化部30により気化された気体5Gに、レーザー発振部20により発振されたレーザー光線を照射し、当該レーザー光線を吸収させるものである。また、気体5Gに照射されたレーザー光線の透過光を、検出部50へ出射する。
【0028】
ここでは、吸収部40は、図3に示すように、噴出された気体5Gにレーザー光線を多重照射させる折り返しミラー41A,41Bを備えている。
【0029】
折り返しミラー41A,41Bは、減圧容器32内に設置される凹面鏡であり、測定用レーザー光線の光路に沿って設置される。
【0030】
なお、第1ミラー41Aは、中央部に透孔を有し、測定用レーザー光線を導入できるようになっている。
【0031】
また、第2ミラー42Bは、気体5Gが噴出される被検出空間を挟んで、第1ミラー41Aと対向する位置に設置される。
【0032】
すなわち、吸収部40は、第1ミラー41Aと第2ミラー41Bとにより、マルチパスセルを構成している。これにより、吸収部40は、第1ミラー41Aの透孔を経て斜め方向に入射した中赤外線領域のレーザー光線を、第1ミラー41Aと第2ミラー41Bとの間で多重反射させている。
【0033】
また、多重反射後のレーザー光線は、第1ミラー41Aの透孔より斜め方向に出力され、検出部50へ出射される。
【0034】
検出部50は、吸収部40により気体5Gに照射されたレーザー光線の透過光強度を検出するものである。
【0035】
ここでは、検出部50は、図4に示すように、光検知器51及び参照セル52を備えている。
【0036】
光検出器51は、気体5Gに照射するレーザー光線の入射光強度と透過光強度とを測定する光電変換素子等である。
【0037】
参照セル52は、例えば100mm長の密閉されたガスセルであり、純度100%のメタンガスが10torrの圧力で封入されているものである。
【0038】
この参照セル52を透過したレーザー光線は、例えば波長3.92μm付近において急峻な吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルは、検出部50に充填されたガスの種類や濃度に関係なく一定である。そのため、この吸収スペクトルを基準に吸収測定を行うことにより、検出系の雑音があった場合でも高感度測定が可能となる。
【0039】
制御部60は、物質検出装置10全体を制御するものであり、各処理部間の入出力信号の授受等を実行する。
【0040】
上述した構造の物質検出装置の一例としては、図5に示すようなものが挙げられる。
【0041】
この物質検出装置10Aでは、レーザーダイオード21,22を駆動及び温度制御するために、レーザー駆動装置21A,22Aと、TE冷却器21B,22Bと、温度コントローラ21C,22Cとを備え、光検知器51に透過光を入射するための反射鏡53と、透過光の信号強度を増加させるためのAMP51Aと、DAC51Bとを更に備えている。
【0042】
(物質検出装置の動作)
次に、以上のように構成された物質検出装置の動作を図6を用いて説明する。
【0043】
ステップS1において、レーザー発振部20は、狭帯域レーザー光線を発振する。
【0044】
狭帯域レーザー光線を発振するに際して、レーザーダイオード21,22の温度及び通電電流が制御される。レーザーダイオード21,22が発振するレーザー光線は、これらの2つの値に依存して変化するからである。
【0045】
そのため、レーザーダイオード21,22は、利用者の操作により制御部60を介して駆動され、所定の温度に制御される。
【0046】
そして、所定の温度になると、レーザーダイオード21,22に所定の電流が通電される。なお、通電電流は、第2レーザーダイオード22がモードホッピングを起こさない範囲に設定される。
【0047】
レーザーダイオード21,22からレーザー光線が発振されると、これら2つのレーザー光線は差周波発生用非線形光学結晶27に入射され、波長の差に応じたレーザー光線が出力されることとなる。
【0048】
そして、出力されたレーザー光線は、参照セル52を透過してから、測定用レーザー光線として吸収部40へ入射される。
【0049】
なお、第2レーザーダイオード22には、図7に示すような三角波が加えられ、吸収スペクトル測定を行うために、発振波長を変化させている。
【0050】
そのため、非線形光学結晶27から出力されるレーザー光線の波長は、図8の透過スペクトル曲線図に示すように、検出対象物質に吸収される狭帯域の吸収域Aと一致させたり、この吸収域Aより外れた透過域Bに変化させたりすることができる。
【0051】
ステップ2において、気化部20は、検出対象物質が溶解している液体5Lを、間欠的に気化して気体5Gにする。
【0052】
ここでは、減圧容器32と液体管1とを微小な孔33により連結して、液体5Lを流入する。流入された液体5Lは減圧された空間内で気化されて、気化された気体5Gが微小な孔33から吸収部40に噴出される。
【0053】
ステップS3において、吸収部40は、気化部30により気化された気体5Gに、レーザー発振部20により発振されたレーザー光線を照射し、当該レーザー光線を吸収させる。
【0054】
具体的には、レーザー発振部20により発振されたレーザー光線は、光学窓34から減圧容器32内に入射される。
【0055】
入射されたレーザー光線は、第1ミラー41Aの透孔を経て、第1ミラー41Aと第2ミラー41Bとの間の被検出空間を多重反射し、第1ミラー41Aの斜め方向に出射される。
【0056】
出射されたレーザー光線は、反射鏡53で反射されて、光検知器51に入射される。
【0057】
ステップS4において、検出部50は、吸収部40により気体5Gに照射されたレーザー光線の透過光強度を検出する。
【0058】
この際、レーザー光線を気体5Lに照射した状態で、入射される測定用レーザー光線の発振波長が走査(スキャン)される。このとき、気体5Lに検出対象物質が含まれていれば、光検知器51により検出された透過光強度は、その物質の吸収波長において急峻な吸収スペクトルを示すこととなる。
【0059】
また、透過光強度の検出に際しては、参照セル52を用いることにより、吸収スペクトルにおける周波数の算出を容易にしている。
【0060】
ステップS5において、吸収スペクトルにピークがある場合、液体5Lには検出対象物質が含まれていると判定される。そして、吸収されている部分Aと吸収されていない部分Bとの比から、気体5Gの物質及び濃度が算出される。
【0061】
ステップS6において、吸収スペクトルにピークがない場合、液体5Lには検出対象物質が含まれていないと判定される。
【0062】
上述したように本実施形態によれば、検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光線を発振するレーザー発振部20と、物質が溶解している液体5Lを気化して気体5Gにする気化部30と、気体5Gにレーザー光線を照射し、当該レーザー光線を吸収させるための吸収部40と、照射されたレーザー光線の透過光強度を検出する検出部50とを備えているので、液体5L中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出する物質検出装置10を提供できる。
【0063】
すなわち、本実施形態に係る物質検出装置10において、気化部30は液体5Lを間欠的に気化し、検出部40は液体5Lが気化された時と、気化されていない時とのレーザー光線の透過光強度を検出しているので、レーザー光線の透過光強度の差から検出対象物質の有無を判定できる。
【0064】
また、本実施形態に係る物質検出装置10において、レーザー発振部20は、狭帯域レーザー光線を発振するので、発ガン性のあるトリハロメタン等の上水中の有害微量物質の検出を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る物質検出装置10において、気化部30は液体5Lを減圧することにより気化しているので、液体5Lを容易に気体5Gに気化できるとともに、気体5Gを減圧された空間に噴出できる。
【0066】
さらに、気化部30を構成する減圧容器32内に、吸収部40を設けているので、急峻な吸収スペクトルを得ることができる。分子の吸収スペクトル幅は、圧力を低下させることによって狭めることができるからである。
【0067】
また、本実施形態に係る物質検出装置10において、吸収部40は噴出された気体5Gにレーザー光線を多重照射させる折り返しミラー41A,41Bを備えているので、高感度の吸収スペクトル測定をリアルタイムに行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、レーザー発振部20は、狭帯域レーザーを発振するものとしたが、半導体レーザーを用いても良い。すなわち、光源としてレーザーの差周波を使用した装置に限定されるものではなく、単一レーザーにおける吸収計測に於いても、同様の効果が発揮される。この場合は、検出対象物質として、アンモニア及び一酸化炭素等を検出することができる。
【0069】
ただし、一般に半導体レーザーで直接発振できる可視から近赤外領域でのガスの吸収係数は小さく、測定可能なガス種が限られる。また、参照セル52も十分な吸収を得るために大型化することが想定される。
【0070】
また、ここでは差周波光源による方法、半導体レーザー光源による方法について説明を行ったが、OPO等の波長変換を用いたレーザーを用いた吸収計測においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0071】
なお、本実施形態においては、気化部30は液体5Lを減圧することにより気化したが、超音波気化装置を用いてもよい。また、気化する方法は、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0072】
<第2の実施形態>
図9は本発明の第2の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。なお、第1の実施形態において既に説明した部分と同一部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する。また、以下の各実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
【0073】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、気化部30が、折り返しミラー41A,41Bが形成するレーザー光路を横切るように気体5Gを噴出する。また、除去部70が更に備えられるものである。
【0074】
ここで、気化部30により噴出される気体5G中には、様々な物質が含まれており、気化されずに固体5Sとなって噴出される固形成分が存在する。この固形成分は、液体5Lとともに噴出され、減圧容器32内に飛散し、減圧容器32内の部材を汚損する。そのため、折り返しミラー41Aと41Bとの間でレーザー光線を多数回反射させる際、僅かな反射率の低下が大幅な光量低下を招いてしまう。
【0075】
多重反射した際の光量の考察は、以下のとおりである。
【0076】
反射鏡を多数回反射して出射した光の光量P0は、
P0=Pi・rn
となる。ここで、Piは入射光量であり、rは反射鏡の反射率であり、nは反射鏡の反射回数である。光路長を長くするために、nは100回を越えるような値も取られる。
【0077】
一例として、nを200として計算すると、反射率が僅か1%減少しただけでも光量は1/7になり、5%減少すると1/29000になる。
【0078】
以上の検討より、折り返しミラー41,41Bが汚損されてないように、除去部70が必要とされる。
【0079】
除去部70は、図10に示すように、アパーチャー71A,71Bを用いることができる。
【0080】
アパーチャー71A,71Bは、噴出される気体5Gの噴出角を制限するものである。
【0081】
これにより、噴出される気体5Gは、被検出空間を透過するが、折り返しミラー41A,41Bには接触することが無くなる。このため、ミラーの汚損を低減できる。
【0082】
また、除去部70は、図11に示すように、気体充填容器72を備えてもよい。
【0083】
気体充填容器72は、気化部30が気体5Gを噴出する前に、気体5Gを充填する減圧容器である。また、気体充填容器72と液体管1とは微小な孔により連結されている。
【0084】
これにより、噴出される気体5Gに含まれる固形成分を気体充填容器72の壁面に付着させてから、気体5Gを減圧容器32に噴出することができる。
【0085】
具体的には、まず気体5Gが、液体管1から微少な孔を通して気体充填容器72に噴出される。なお、この時の気体充填容器72の真空度は、検出対象物質が気化できるための圧力条件を満たした上で、できるだけ高く設定することが望ましい。固形成分が、気化しにくくなるためである。これにより、気体充填容器72は、検出対象物質を含む蒸気で満たされる。この際、液体5L中に含まれていた固形成分は、気体充填容器72内に広がるので、気体充填容器72の壁に付着する。
【0086】
また、減圧容器32と気体充填容器72との間には、微小な孔33が設けられている。そのため、気体充填容器72内に充填された蒸気は、この孔33を通して減圧容器32内に噴出されることとなる。
【0087】
さらに、図12に示すように、気化部30に超音波発生装置35を組み合わせても良い。
【0088】
超音波気化装置35を用いると、液体5Lは霧状態の気体5Gとなって気体充填容器72を満たす。この場合、気体充填容器72は、常温及び常圧の容器でもよい。
【0089】
そして、液体5L中に含まれていた固形成分は、超音波気化装置35で気化されずに、そのまま液体5L中に留まる。また、霧状態の気体5Gとともに気体充填容器72内に満たされたとしても、固形粒子となって気体充填容器72内に溜まる。
【0090】
このようにして、固形成分が取り除かれた気体5Gを、微小な孔33から減圧容器32に噴出するので、減圧容器32内の汚損を生じずに、長期間安定して測定を行うことが可能となる。
【0091】
上述したように本実施形態に係る物質検出装置10において、気化部30は折り返しミラー41A,41Bが形成するレーザー光線路を横切るように気体を噴出し、吸収部40は折り返しミラー41A,41Bの反射面に、物質が付着しないように当該物質を除去する除去部70を更に備えたので、液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出できる。
【0092】
<第3の実施形態>
図13は本発明の第3の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0093】
本発明の第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、除去部70は、噴出された気体5Gを噴出方向に対して鈍角になるように反射させる円錐形状の反射物73を備えている。
【0094】
反射物73は、微少な孔33の対向側の減圧容器32壁面に設置され、微少な孔33から噴出された蒸気の流れを、減圧容器32の壁面方向に反射させる。
【0095】
このため、反射物73を反射した蒸気は、折り返しミラー41A,41Bの方向へ達することがなくなる。これにより、折り返しミラー41A,41Bの汚損を抑えることができる。
【0096】
また、レーザー光路である被検出空間に蒸気が戻ることがない。これにより、高精度に測定できる。
【0097】
なお、微小な孔33は、蒸気のすべてが反射物73にあたる角度になるように、噴出する蒸気の発散角を制限するものである。
【0098】
<第4の実施形態>
図14は本発明の第4の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0099】
本発明の第4の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、除去部70は、気体5Gが噴出される位置と対向する位置に備えたターボポンプ74を備えている。
【0100】
ターボポンプ74は、気体5Gが噴出される微小な孔33の対向位置に取り付けられた真空ポンプである。
【0101】
このターボポンプ74により、微小な孔33を噴出した気体5Gが排気され、減圧容器32の壁面で、固形成分を含んだ蒸気が反射することがなくなる。
【0102】
これにより、気体5Gが減圧容器32の壁面を反射して、折り返しミラー41A,41Bを汚損させる効果を抑制でき、高感度の吸収スペクトル測定を行うことができる。
【0103】
さらに、除去部70は、図15に示すように、折り返しミラー41A,41Bを加熱する加熱装置75A,75Bを備えても良い。
【0104】
これにより、ミラー41A,41Bが加熱されることによって、固形成分を含んだ蒸気の吸着を減少させることができる。
【0105】
また、除去部70は、図16に示すように、折り返しミラー41A,41Bの反射面の前にエアーカーテンを発生させるエアーカーテン発生装置76A,76Bを備えても良い。
【0106】
エアーカーテン発生装置76A,76Bは、フィルターを備えており、このフィルターで埃及び塵の除去された清浄な空気を発生させるものである。この清浄な空気の流れによって、微小な孔33を出射した気体5Gは、折り返しミラー41A,41Bの反射面に到達することができなくなる。
【0107】
これにより、折り返しミラー41A,41Bの反射面への汚れの付着は大幅に抑えられ、高精度の測定が長時間可能となる。
【0108】
<第5の実施形態>
図17は本発明の第5の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0109】
本実施形態は、第1~4の実施形態の変形例であり、折り返しミラー41A,41Bがマルチパスセルではなく、ファブリーペロー共振器を構成したものである。
【0110】
このようにファブリーペロー共振器を構成した場合、O´KeefとDeacon によって提唱されたキャビティーリングダウン(CRD)分光法を用いることができる。この方法では、2枚の高反射率ミラーで、光学キャビティーを構成し、キャビティー内に閉じ込められた光の強度減衰を観測することで、キャビティー内にある物質の光吸収を高感度に測定することができる。
【0111】
ここで、光学キャビティーは、例えば、反射率Rが99.9%より大きな数値を示す2枚のミラーを用いて構成される。この光学キャビティーの片側のミラーから注入されたパルスレーザー光線は、数千回反射を繰り返すが、1反射毎に少しずつ強度が減衰する。そして、ミラーにより反射される際、光の一部がミラーの外に漏れ出す。その漏れ光の強度は、次式に示すように、時間とともに単純な指数関数減衰を示す。
【0112】
I(t)=I0exp{-(1/τ)t}
ここで、I(t)とI0とは、それぞれ時間tとt=0とにおける漏れ光の強度である。τは、光学キャビティー内に閉じ込められた光の減衰寿命である。この減衰寿命τは、CRD分光法においては、一般的にはリングダウンタイムと呼ばれている。
【0113】
キャビティー内に光を吸収する物質がないとき、ミラーの反射率Rと真空中でのリングダウンタイムτ0の間には次式が成り立つ。なお、両端のミラーからの透過による光強度の減衰は1−Rであることを用いる。
【0114】
τ0=L/c(1-R)
ここで、Lは光学キャビティーにおけるミラー間距離、cは光の速度である。
【0115】
また、光学キャビティー内における光の反射回数Nは、ミラーの反射率Rから次式を用いることにより求めることができる。
【0116】
R2N=1/e
例えば、R=99.9%のミラーを用いた際のキャビティー内における片側のミラーによる光の反射回数はN=500となる。ここで光学キャビティーにおけるミラー間の距離Lを1mとすると、光の光路長では1kmに対応する。CRD分光法が高感度であるのは、この長い有効光路長による。
【0117】
ところで、光学キャビティー内に僅かでも光を吸収する物質があれば、パルス光は往復する毎に、僅かずつ吸収される。そのため、光強度減衰率がその分増加する。これにより次式のように表される。
【0118】
I(t)=I0exp{-(1/τ)t}=I0exp{-(1/τ0+σnc)t}
ここで、σは吸収物質の吸収断面積、nは吸収物質の数密度である。
【0119】
よって、真空中でのリングダウンタイムの逆数1/τ0と吸収物質が存在する際のリングダウンタイム1/τ との差 Δ(1/τ) は、
Δ(1/τ)≡1/τ-1/τ0=σnc
となり、キャビティー内で光吸収した物質の濃度に比例する。
【0120】
波長を横軸に、リングダウンタイムの差Δ(1/τ) を縦軸にプロットすれば、通常の吸収スペクトルに対応するものとなる。このキャビティーリングダウン分光を行うためには、共振器ミラーの反射率を高い状態に保っておくことが重要となる。共振器ミラーの反射率は、ミラーの付着物によって容易に低下する。
【0121】
このため、ミラーに付着する付着物の抑制が重要となるが、減圧容器32内に共振器を構成したので、ミラーへの液滴の付着を抑制することができる。
【0122】
すなわち、本発明によれば、ミラーへの液滴の付着を抑制することができるので、キャビティーリングダウン(CRD)分光法によるを有効に利用することができる。
【0123】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】レーザー発振部20の構成の一例を示す図である。
【図3】気化部30及び吸収部40の構成の一例を示す図である。
【図4】検出部50の構成の一例を示す図である。
【図5】物質検出装置10Aの全体構成の一例を示す図である。
【図6】物質検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】レーザーダイオードに加えられる三角波の一例を示す図である。
【図8】透過スペクトル曲線の一例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図10】アパーチャー71の構成の一例を示す図である。
【図12】超音波発生装置35の構成の一例を示す図である。
【図11】気体充填容器72の構成の一例を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図15】加熱装置75の構成の一例を示す図である。
【図16】エアーカーテン発生装置76の構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0125】
1・・・液体管、5L・・・液体5L、5G・・・気体、5S・・・固体、10・・・物質検出装置、20・・・レーザー発振部、21,22・・・レーザーダイオード、21A,22A・・・レーザー駆動装置、21B,22B・・・TE冷却器、21C,22C・・・温度コントローラ、23・・・光ファイバー、24A,24B・・・偏波コントローラ、25・・・光合成器、26A,26B・・・レンズ、27・・・差周波発生用非線形光学結晶、28・・・ゲルマニウムフィルタ、30・・・気化部、31・・・真空排気装置、32・・・減圧容器、33・・・孔、34・・・光学窓、35・・・超音波発生装置、40・・・吸収部、41A,41B・・・折り返しミラー、50・・・検出部、51・・・光検知器、51A・・・AMP、51B・・・DAC、52・・・参照セル、53・・・反射鏡、60・・・制御部、70・・・除去部、71A,71B,71C・・・アパーチャー、72・・・気体充填容器、73・・・反射物、74・・・ターボポンプ、75A,75B・・・加熱装置、76A,76B・・・エアーカーテン発生装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を利用した物質検出装置及びその方法に係り、特に液体中の物質を検出する物質検出装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有害な微量物質を検出することが、環境衛生上の重要な問題となっている。例えば、都市・農村・工場等においては、どの程度の量の有害微量物質が放出されているかを監視することが重要である。また、生理学・地球温暖化等の研究分野からも微量物質の検出方法に関心が集められている。
【0003】
かかる状況において、特に上水についての有害微量物質の検出が重要視されている。
【0004】
すなわち、上水については、直接人間の飲用に供されるものである。そのため、発ガン性のあるトリハロメタン等を除去するために、人体に悪影響を与える物質を検出することが必要とされる。また、雑菌の繁殖を抑えるため、塩素濃度を制御する必要もある。
【0005】
そこで、液体中に溶解した微量物質の検出が検討されているが、液体中に溶解した微量物質は、ppb(10−9)レベルでの検出が求められている。
【0006】
この点、従来からppbレベルの微量物質を検出する方法として、ガスクロマトグラフ法、液クロマトグラフ法、質量分析法、あるいは、これらを併用した微量物質を分析する方法及び電気化学的な分析方法が知られている。
【0007】
また、中赤外域のレーザー光線を用いてガス中の分子成分を検出する方法等もある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−289785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の微量物質の検出方法においては、ある程度(30分程度)の時間が必要とされる。また、信頼性を高めるために、試料を濃縮するための前処理のリードタイム(場合により、10〜20日程度)が必要とされる。
【0009】
また、レーザー光線を用いて、液体中に溶解した微量物質を検出しようとした場合、液体の吸収スペクトル幅が広いため、微量物質の吸収スペクトルが重なり、検出が困難である。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出する物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はかかる課題を解決するものであり、液体に含まれる検出対象物質を検出するための物質検出装置において、液体を気化して気体にする気化手段と、検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光を発振する発振手段と、気体に前記レーザー光を照射し、該レーザー光を吸収させるための吸収手段と、照射されたレーザー光の透過光に基づいて、検出対象物質を検出するための検出手段とを備えた物質検出装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0015】
物質検出装置10は、液体5Lに含まれている物質を検出するものであり、レーザー発振部20、気化部30、吸収部40、検出部50及び制御部60(図示せず)を備えている。
【0016】
ここで、液体5Lは、液体管1内を流れている上水等である。
【0017】
レーザー発振部20は、液体5L中に溶解した検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光線を発振するものであり、発振したレーザー光線を吸収部40へと入射する。
【0018】
検出対象物質としては、例えば上水における有害微量物質等が挙げられるが、これらは主に2μm〜9μmの吸収波長を有している。そのため、上水における有害微量物質を検出する場合、レーザー発振部20は、図2に示す構成により狭帯域レーザー光線を発振するように構成される。
【0019】
すなわち、レーザー発振部20は、波長λ1のレーザー光線を出力する第1レーザーダイオード21と、波長λ2を中心に出力波長を変化できる第2レーザーダイオード22とを備えている。そして、これら2つのレーザーダイオード21,22より出力される2つのレーザー光線は、光ファイバー23および偏波コントローラ24A,24Bを介して、光合成器25に導かれる。光合波器25によって合波された後、レーザー光線は第1レンズ26Aにより集束される。集束されたレーザー光線は、差周波発生用非線形光学結晶27に入射される。差周波発生用非線形光学結晶27に2つのレーザー光線が入射されると、その波長差の波長を有する光線が出力される。出力された光線は第2レンズ26Bにより平行光線にされ、ゲルマニウムフィルタ28により長波長成分(2〜9μm)が通過される。このようにして、狭帯域レーザー光線が発振される。
【0020】
なお、偏波コントローラ24A,24Bは、レーザーダイオード21,22からのレーザー光線の偏波を、それぞれ差周波発生に最適な偏波状態に設定するものである。
【0021】
また、差周波発生用非線形光学結晶27は、非線形光学結晶であり、2つの高いエネルギーのフォトンから1つの低いエネルギーのフォトンを生成する変換過程が生じる条件に設定し、第1レーザー光線と第2レーザー光線との波長を適当に選ぶことにより、中赤外線領域で狭帯域のレーザー光線を発振する。具体的には、波長が1000nm及び1500nmのフォトンから3000nmのフォトンを生成する変換過程が生じる条件に設定しておくことで、2〜9μmの中赤外線領域の狭帯域レーザー光線を発振する。
【0022】
気化部30は、溶液5L中に溶解した検出対象物質が溶解した溶液5Lを気化させるものであり、気化した気体5Gを吸収部40へと送るものである。
【0023】
ここでは、気化部30は、図3に示すように、真空排気装置31及び減圧容器32を備えている。
【0024】
真空排気装置31は、減圧容器32を10torr程度に減圧するものである。
【0025】
減圧容器32は、液体管1と連結された微小な孔33から、液体管1を流れる液体5Lを間欠的に導入するものである。導入された液体5Lは、減圧容器32内で減圧されることにより、気体5Gに気化される。また、気体5Gは、気化されるとともに微小な孔33から噴出され、吸収部40へ送られる。なお、気体5Gは、気体と液体と固体とが混合した蒸気である場合もある。
【0026】
なお、減圧容器32には光学窓34が取り付けられており、減圧容器32内に測定用レーザー光線を導入できるようになっている。
【0027】
吸収部40は、気化部30により気化された気体5Gに、レーザー発振部20により発振されたレーザー光線を照射し、当該レーザー光線を吸収させるものである。また、気体5Gに照射されたレーザー光線の透過光を、検出部50へ出射する。
【0028】
ここでは、吸収部40は、図3に示すように、噴出された気体5Gにレーザー光線を多重照射させる折り返しミラー41A,41Bを備えている。
【0029】
折り返しミラー41A,41Bは、減圧容器32内に設置される凹面鏡であり、測定用レーザー光線の光路に沿って設置される。
【0030】
なお、第1ミラー41Aは、中央部に透孔を有し、測定用レーザー光線を導入できるようになっている。
【0031】
また、第2ミラー42Bは、気体5Gが噴出される被検出空間を挟んで、第1ミラー41Aと対向する位置に設置される。
【0032】
すなわち、吸収部40は、第1ミラー41Aと第2ミラー41Bとにより、マルチパスセルを構成している。これにより、吸収部40は、第1ミラー41Aの透孔を経て斜め方向に入射した中赤外線領域のレーザー光線を、第1ミラー41Aと第2ミラー41Bとの間で多重反射させている。
【0033】
また、多重反射後のレーザー光線は、第1ミラー41Aの透孔より斜め方向に出力され、検出部50へ出射される。
【0034】
検出部50は、吸収部40により気体5Gに照射されたレーザー光線の透過光強度を検出するものである。
【0035】
ここでは、検出部50は、図4に示すように、光検知器51及び参照セル52を備えている。
【0036】
光検出器51は、気体5Gに照射するレーザー光線の入射光強度と透過光強度とを測定する光電変換素子等である。
【0037】
参照セル52は、例えば100mm長の密閉されたガスセルであり、純度100%のメタンガスが10torrの圧力で封入されているものである。
【0038】
この参照セル52を透過したレーザー光線は、例えば波長3.92μm付近において急峻な吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルは、検出部50に充填されたガスの種類や濃度に関係なく一定である。そのため、この吸収スペクトルを基準に吸収測定を行うことにより、検出系の雑音があった場合でも高感度測定が可能となる。
【0039】
制御部60は、物質検出装置10全体を制御するものであり、各処理部間の入出力信号の授受等を実行する。
【0040】
上述した構造の物質検出装置の一例としては、図5に示すようなものが挙げられる。
【0041】
この物質検出装置10Aでは、レーザーダイオード21,22を駆動及び温度制御するために、レーザー駆動装置21A,22Aと、TE冷却器21B,22Bと、温度コントローラ21C,22Cとを備え、光検知器51に透過光を入射するための反射鏡53と、透過光の信号強度を増加させるためのAMP51Aと、DAC51Bとを更に備えている。
【0042】
(物質検出装置の動作)
次に、以上のように構成された物質検出装置の動作を図6を用いて説明する。
【0043】
ステップS1において、レーザー発振部20は、狭帯域レーザー光線を発振する。
【0044】
狭帯域レーザー光線を発振するに際して、レーザーダイオード21,22の温度及び通電電流が制御される。レーザーダイオード21,22が発振するレーザー光線は、これらの2つの値に依存して変化するからである。
【0045】
そのため、レーザーダイオード21,22は、利用者の操作により制御部60を介して駆動され、所定の温度に制御される。
【0046】
そして、所定の温度になると、レーザーダイオード21,22に所定の電流が通電される。なお、通電電流は、第2レーザーダイオード22がモードホッピングを起こさない範囲に設定される。
【0047】
レーザーダイオード21,22からレーザー光線が発振されると、これら2つのレーザー光線は差周波発生用非線形光学結晶27に入射され、波長の差に応じたレーザー光線が出力されることとなる。
【0048】
そして、出力されたレーザー光線は、参照セル52を透過してから、測定用レーザー光線として吸収部40へ入射される。
【0049】
なお、第2レーザーダイオード22には、図7に示すような三角波が加えられ、吸収スペクトル測定を行うために、発振波長を変化させている。
【0050】
そのため、非線形光学結晶27から出力されるレーザー光線の波長は、図8の透過スペクトル曲線図に示すように、検出対象物質に吸収される狭帯域の吸収域Aと一致させたり、この吸収域Aより外れた透過域Bに変化させたりすることができる。
【0051】
ステップ2において、気化部20は、検出対象物質が溶解している液体5Lを、間欠的に気化して気体5Gにする。
【0052】
ここでは、減圧容器32と液体管1とを微小な孔33により連結して、液体5Lを流入する。流入された液体5Lは減圧された空間内で気化されて、気化された気体5Gが微小な孔33から吸収部40に噴出される。
【0053】
ステップS3において、吸収部40は、気化部30により気化された気体5Gに、レーザー発振部20により発振されたレーザー光線を照射し、当該レーザー光線を吸収させる。
【0054】
具体的には、レーザー発振部20により発振されたレーザー光線は、光学窓34から減圧容器32内に入射される。
【0055】
入射されたレーザー光線は、第1ミラー41Aの透孔を経て、第1ミラー41Aと第2ミラー41Bとの間の被検出空間を多重反射し、第1ミラー41Aの斜め方向に出射される。
【0056】
出射されたレーザー光線は、反射鏡53で反射されて、光検知器51に入射される。
【0057】
ステップS4において、検出部50は、吸収部40により気体5Gに照射されたレーザー光線の透過光強度を検出する。
【0058】
この際、レーザー光線を気体5Lに照射した状態で、入射される測定用レーザー光線の発振波長が走査(スキャン)される。このとき、気体5Lに検出対象物質が含まれていれば、光検知器51により検出された透過光強度は、その物質の吸収波長において急峻な吸収スペクトルを示すこととなる。
【0059】
また、透過光強度の検出に際しては、参照セル52を用いることにより、吸収スペクトルにおける周波数の算出を容易にしている。
【0060】
ステップS5において、吸収スペクトルにピークがある場合、液体5Lには検出対象物質が含まれていると判定される。そして、吸収されている部分Aと吸収されていない部分Bとの比から、気体5Gの物質及び濃度が算出される。
【0061】
ステップS6において、吸収スペクトルにピークがない場合、液体5Lには検出対象物質が含まれていないと判定される。
【0062】
上述したように本実施形態によれば、検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光線を発振するレーザー発振部20と、物質が溶解している液体5Lを気化して気体5Gにする気化部30と、気体5Gにレーザー光線を照射し、当該レーザー光線を吸収させるための吸収部40と、照射されたレーザー光線の透過光強度を検出する検出部50とを備えているので、液体5L中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出する物質検出装置10を提供できる。
【0063】
すなわち、本実施形態に係る物質検出装置10において、気化部30は液体5Lを間欠的に気化し、検出部40は液体5Lが気化された時と、気化されていない時とのレーザー光線の透過光強度を検出しているので、レーザー光線の透過光強度の差から検出対象物質の有無を判定できる。
【0064】
また、本実施形態に係る物質検出装置10において、レーザー発振部20は、狭帯域レーザー光線を発振するので、発ガン性のあるトリハロメタン等の上水中の有害微量物質の検出を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る物質検出装置10において、気化部30は液体5Lを減圧することにより気化しているので、液体5Lを容易に気体5Gに気化できるとともに、気体5Gを減圧された空間に噴出できる。
【0066】
さらに、気化部30を構成する減圧容器32内に、吸収部40を設けているので、急峻な吸収スペクトルを得ることができる。分子の吸収スペクトル幅は、圧力を低下させることによって狭めることができるからである。
【0067】
また、本実施形態に係る物質検出装置10において、吸収部40は噴出された気体5Gにレーザー光線を多重照射させる折り返しミラー41A,41Bを備えているので、高感度の吸収スペクトル測定をリアルタイムに行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態においては、レーザー発振部20は、狭帯域レーザーを発振するものとしたが、半導体レーザーを用いても良い。すなわち、光源としてレーザーの差周波を使用した装置に限定されるものではなく、単一レーザーにおける吸収計測に於いても、同様の効果が発揮される。この場合は、検出対象物質として、アンモニア及び一酸化炭素等を検出することができる。
【0069】
ただし、一般に半導体レーザーで直接発振できる可視から近赤外領域でのガスの吸収係数は小さく、測定可能なガス種が限られる。また、参照セル52も十分な吸収を得るために大型化することが想定される。
【0070】
また、ここでは差周波光源による方法、半導体レーザー光源による方法について説明を行ったが、OPO等の波長変換を用いたレーザーを用いた吸収計測においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0071】
なお、本実施形態においては、気化部30は液体5Lを減圧することにより気化したが、超音波気化装置を用いてもよい。また、気化する方法は、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0072】
<第2の実施形態>
図9は本発明の第2の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。なお、第1の実施形態において既に説明した部分と同一部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する。また、以下の各実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
【0073】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、気化部30が、折り返しミラー41A,41Bが形成するレーザー光路を横切るように気体5Gを噴出する。また、除去部70が更に備えられるものである。
【0074】
ここで、気化部30により噴出される気体5G中には、様々な物質が含まれており、気化されずに固体5Sとなって噴出される固形成分が存在する。この固形成分は、液体5Lとともに噴出され、減圧容器32内に飛散し、減圧容器32内の部材を汚損する。そのため、折り返しミラー41Aと41Bとの間でレーザー光線を多数回反射させる際、僅かな反射率の低下が大幅な光量低下を招いてしまう。
【0075】
多重反射した際の光量の考察は、以下のとおりである。
【0076】
反射鏡を多数回反射して出射した光の光量P0は、
P0=Pi・rn
となる。ここで、Piは入射光量であり、rは反射鏡の反射率であり、nは反射鏡の反射回数である。光路長を長くするために、nは100回を越えるような値も取られる。
【0077】
一例として、nを200として計算すると、反射率が僅か1%減少しただけでも光量は1/7になり、5%減少すると1/29000になる。
【0078】
以上の検討より、折り返しミラー41,41Bが汚損されてないように、除去部70が必要とされる。
【0079】
除去部70は、図10に示すように、アパーチャー71A,71Bを用いることができる。
【0080】
アパーチャー71A,71Bは、噴出される気体5Gの噴出角を制限するものである。
【0081】
これにより、噴出される気体5Gは、被検出空間を透過するが、折り返しミラー41A,41Bには接触することが無くなる。このため、ミラーの汚損を低減できる。
【0082】
また、除去部70は、図11に示すように、気体充填容器72を備えてもよい。
【0083】
気体充填容器72は、気化部30が気体5Gを噴出する前に、気体5Gを充填する減圧容器である。また、気体充填容器72と液体管1とは微小な孔により連結されている。
【0084】
これにより、噴出される気体5Gに含まれる固形成分を気体充填容器72の壁面に付着させてから、気体5Gを減圧容器32に噴出することができる。
【0085】
具体的には、まず気体5Gが、液体管1から微少な孔を通して気体充填容器72に噴出される。なお、この時の気体充填容器72の真空度は、検出対象物質が気化できるための圧力条件を満たした上で、できるだけ高く設定することが望ましい。固形成分が、気化しにくくなるためである。これにより、気体充填容器72は、検出対象物質を含む蒸気で満たされる。この際、液体5L中に含まれていた固形成分は、気体充填容器72内に広がるので、気体充填容器72の壁に付着する。
【0086】
また、減圧容器32と気体充填容器72との間には、微小な孔33が設けられている。そのため、気体充填容器72内に充填された蒸気は、この孔33を通して減圧容器32内に噴出されることとなる。
【0087】
さらに、図12に示すように、気化部30に超音波発生装置35を組み合わせても良い。
【0088】
超音波気化装置35を用いると、液体5Lは霧状態の気体5Gとなって気体充填容器72を満たす。この場合、気体充填容器72は、常温及び常圧の容器でもよい。
【0089】
そして、液体5L中に含まれていた固形成分は、超音波気化装置35で気化されずに、そのまま液体5L中に留まる。また、霧状態の気体5Gとともに気体充填容器72内に満たされたとしても、固形粒子となって気体充填容器72内に溜まる。
【0090】
このようにして、固形成分が取り除かれた気体5Gを、微小な孔33から減圧容器32に噴出するので、減圧容器32内の汚損を生じずに、長期間安定して測定を行うことが可能となる。
【0091】
上述したように本実施形態に係る物質検出装置10において、気化部30は折り返しミラー41A,41Bが形成するレーザー光線路を横切るように気体を噴出し、吸収部40は折り返しミラー41A,41Bの反射面に、物質が付着しないように当該物質を除去する除去部70を更に備えたので、液体中の微量物質をリアルタイムに高感度で検出できる。
【0092】
<第3の実施形態>
図13は本発明の第3の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0093】
本発明の第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、除去部70は、噴出された気体5Gを噴出方向に対して鈍角になるように反射させる円錐形状の反射物73を備えている。
【0094】
反射物73は、微少な孔33の対向側の減圧容器32壁面に設置され、微少な孔33から噴出された蒸気の流れを、減圧容器32の壁面方向に反射させる。
【0095】
このため、反射物73を反射した蒸気は、折り返しミラー41A,41Bの方向へ達することがなくなる。これにより、折り返しミラー41A,41Bの汚損を抑えることができる。
【0096】
また、レーザー光路である被検出空間に蒸気が戻ることがない。これにより、高精度に測定できる。
【0097】
なお、微小な孔33は、蒸気のすべてが反射物73にあたる角度になるように、噴出する蒸気の発散角を制限するものである。
【0098】
<第4の実施形態>
図14は本発明の第4の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0099】
本発明の第4の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、除去部70は、気体5Gが噴出される位置と対向する位置に備えたターボポンプ74を備えている。
【0100】
ターボポンプ74は、気体5Gが噴出される微小な孔33の対向位置に取り付けられた真空ポンプである。
【0101】
このターボポンプ74により、微小な孔33を噴出した気体5Gが排気され、減圧容器32の壁面で、固形成分を含んだ蒸気が反射することがなくなる。
【0102】
これにより、気体5Gが減圧容器32の壁面を反射して、折り返しミラー41A,41Bを汚損させる効果を抑制でき、高感度の吸収スペクトル測定を行うことができる。
【0103】
さらに、除去部70は、図15に示すように、折り返しミラー41A,41Bを加熱する加熱装置75A,75Bを備えても良い。
【0104】
これにより、ミラー41A,41Bが加熱されることによって、固形成分を含んだ蒸気の吸着を減少させることができる。
【0105】
また、除去部70は、図16に示すように、折り返しミラー41A,41Bの反射面の前にエアーカーテンを発生させるエアーカーテン発生装置76A,76Bを備えても良い。
【0106】
エアーカーテン発生装置76A,76Bは、フィルターを備えており、このフィルターで埃及び塵の除去された清浄な空気を発生させるものである。この清浄な空気の流れによって、微小な孔33を出射した気体5Gは、折り返しミラー41A,41Bの反射面に到達することができなくなる。
【0107】
これにより、折り返しミラー41A,41Bの反射面への汚れの付着は大幅に抑えられ、高精度の測定が長時間可能となる。
【0108】
<第5の実施形態>
図17は本発明の第5の実施形態に係る物質検出装置の構成を示す模式図である。
【0109】
本実施形態は、第1~4の実施形態の変形例であり、折り返しミラー41A,41Bがマルチパスセルではなく、ファブリーペロー共振器を構成したものである。
【0110】
このようにファブリーペロー共振器を構成した場合、O´KeefとDeacon によって提唱されたキャビティーリングダウン(CRD)分光法を用いることができる。この方法では、2枚の高反射率ミラーで、光学キャビティーを構成し、キャビティー内に閉じ込められた光の強度減衰を観測することで、キャビティー内にある物質の光吸収を高感度に測定することができる。
【0111】
ここで、光学キャビティーは、例えば、反射率Rが99.9%より大きな数値を示す2枚のミラーを用いて構成される。この光学キャビティーの片側のミラーから注入されたパルスレーザー光線は、数千回反射を繰り返すが、1反射毎に少しずつ強度が減衰する。そして、ミラーにより反射される際、光の一部がミラーの外に漏れ出す。その漏れ光の強度は、次式に示すように、時間とともに単純な指数関数減衰を示す。
【0112】
I(t)=I0exp{-(1/τ)t}
ここで、I(t)とI0とは、それぞれ時間tとt=0とにおける漏れ光の強度である。τは、光学キャビティー内に閉じ込められた光の減衰寿命である。この減衰寿命τは、CRD分光法においては、一般的にはリングダウンタイムと呼ばれている。
【0113】
キャビティー内に光を吸収する物質がないとき、ミラーの反射率Rと真空中でのリングダウンタイムτ0の間には次式が成り立つ。なお、両端のミラーからの透過による光強度の減衰は1−Rであることを用いる。
【0114】
τ0=L/c(1-R)
ここで、Lは光学キャビティーにおけるミラー間距離、cは光の速度である。
【0115】
また、光学キャビティー内における光の反射回数Nは、ミラーの反射率Rから次式を用いることにより求めることができる。
【0116】
R2N=1/e
例えば、R=99.9%のミラーを用いた際のキャビティー内における片側のミラーによる光の反射回数はN=500となる。ここで光学キャビティーにおけるミラー間の距離Lを1mとすると、光の光路長では1kmに対応する。CRD分光法が高感度であるのは、この長い有効光路長による。
【0117】
ところで、光学キャビティー内に僅かでも光を吸収する物質があれば、パルス光は往復する毎に、僅かずつ吸収される。そのため、光強度減衰率がその分増加する。これにより次式のように表される。
【0118】
I(t)=I0exp{-(1/τ)t}=I0exp{-(1/τ0+σnc)t}
ここで、σは吸収物質の吸収断面積、nは吸収物質の数密度である。
【0119】
よって、真空中でのリングダウンタイムの逆数1/τ0と吸収物質が存在する際のリングダウンタイム1/τ との差 Δ(1/τ) は、
Δ(1/τ)≡1/τ-1/τ0=σnc
となり、キャビティー内で光吸収した物質の濃度に比例する。
【0120】
波長を横軸に、リングダウンタイムの差Δ(1/τ) を縦軸にプロットすれば、通常の吸収スペクトルに対応するものとなる。このキャビティーリングダウン分光を行うためには、共振器ミラーの反射率を高い状態に保っておくことが重要となる。共振器ミラーの反射率は、ミラーの付着物によって容易に低下する。
【0121】
このため、ミラーに付着する付着物の抑制が重要となるが、減圧容器32内に共振器を構成したので、ミラーへの液滴の付着を抑制することができる。
【0122】
すなわち、本発明によれば、ミラーへの液滴の付着を抑制することができるので、キャビティーリングダウン(CRD)分光法によるを有効に利用することができる。
【0123】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】レーザー発振部20の構成の一例を示す図である。
【図3】気化部30及び吸収部40の構成の一例を示す図である。
【図4】検出部50の構成の一例を示す図である。
【図5】物質検出装置10Aの全体構成の一例を示す図である。
【図6】物質検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】レーザーダイオードに加えられる三角波の一例を示す図である。
【図8】透過スペクトル曲線の一例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図10】アパーチャー71の構成の一例を示す図である。
【図12】超音波発生装置35の構成の一例を示す図である。
【図11】気体充填容器72の構成の一例を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【図15】加熱装置75の構成の一例を示す図である。
【図16】エアーカーテン発生装置76の構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の第5の実施形態に係る物質検出装置の構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0125】
1・・・液体管、5L・・・液体5L、5G・・・気体、5S・・・固体、10・・・物質検出装置、20・・・レーザー発振部、21,22・・・レーザーダイオード、21A,22A・・・レーザー駆動装置、21B,22B・・・TE冷却器、21C,22C・・・温度コントローラ、23・・・光ファイバー、24A,24B・・・偏波コントローラ、25・・・光合成器、26A,26B・・・レンズ、27・・・差周波発生用非線形光学結晶、28・・・ゲルマニウムフィルタ、30・・・気化部、31・・・真空排気装置、32・・・減圧容器、33・・・孔、34・・・光学窓、35・・・超音波発生装置、40・・・吸収部、41A,41B・・・折り返しミラー、50・・・検出部、51・・・光検知器、51A・・・AMP、51B・・・DAC、52・・・参照セル、53・・・反射鏡、60・・・制御部、70・・・除去部、71A,71B,71C・・・アパーチャー、72・・・気体充填容器、73・・・反射物、74・・・ターボポンプ、75A,75B・・・加熱装置、76A,76B・・・エアーカーテン発生装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に含まれる検出対象物質を検出するための物質検出装置において、
前記液体を気化して気体にする気化手段と、
前記検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光を発振する発振手段と、
前記気体に前記レーザー光を照射し、該レーザー光を吸収させるための吸収手段と、
前記照射されたレーザー光の透過光に基づいて、前記検出対象物質を検出するための検出手段と
を備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記液体を減圧することにより気化することを特徴とする物質検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、
前記液体が導入される容器と、
前記液体を気化するために前記容器を減圧する減圧手段と、
を備え、
前記吸収手段は、前記容器内に設置されていることを特徴とする物質検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、超音波気化装置を備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記発振手段は、狭帯域レーザー光を発振することを特徴とする物質検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記吸収手段は、前記気体にレーザー光を多重照射させる折り返しミラーを備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の物質検出装置において、
前記折り返しミラーは、ファブリーペロー共振器を構成することを特徴とする物質検出装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の物質検出装置において、
前記折り返しミラーの反射面に、物質が付着しないようにするための除去手段を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記噴出される気体の噴出角を制限することを特徴とする物質検出装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記気化手段が前記気体を噴出する前に、前記気体を充填する減圧容器を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記気体が噴出される位置と対向する位置に真空ポンプを更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項12】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記気体が噴出される位置と対向する位置に、前記噴出された気体が前記折り返しミラーに付着しないようにするための部材を備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の物質検出装置において、
前記部材は、円錐形状であることを特徴とする物質検出装置。
【請求項14】
請求項8乃至請求項13のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記除去手段は、前記折り返しミラーを加熱する加熱手段を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項15】
請求項8乃至請求項14のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記除去手段は、前記ミラーの反射面の前にエアーカーテンを発生させる発生手段を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項16】
液体に含まれる検出対象物質を検出するための物質検出方法において、
前記液体を気化して気体にする気化ステップと、
前記検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光を発振する発振ステップと、
前記気体に前記レーザー光を照射し、該レーザー光を吸収させるための吸収ステップと、
前記照射されたレーザー光の透過光に基づいて、前記検出対象物質を検出するための検出ステップと
を備えたことを特徴とする物質検出方法。
【請求項17】
請求項16に記載の物質検出方法において、
前記気化ステップは、前記液体を間欠的に気化し、
前記検出ステップは、前記液体が気化された時と、気化されていない時とのレーザー光の透過光強度を検出することを特徴とする物質検出方法。
【請求項1】
液体に含まれる検出対象物質を検出するための物質検出装置において、
前記液体を気化して気体にする気化手段と、
前記検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光を発振する発振手段と、
前記気体に前記レーザー光を照射し、該レーザー光を吸収させるための吸収手段と、
前記照射されたレーザー光の透過光に基づいて、前記検出対象物質を検出するための検出手段と
を備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記液体を減圧することにより気化することを特徴とする物質検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、
前記液体が導入される容器と、
前記液体を気化するために前記容器を減圧する減圧手段と、
を備え、
前記吸収手段は、前記容器内に設置されていることを特徴とする物質検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、超音波気化装置を備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記発振手段は、狭帯域レーザー光を発振することを特徴とする物質検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記吸収手段は、前記気体にレーザー光を多重照射させる折り返しミラーを備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の物質検出装置において、
前記折り返しミラーは、ファブリーペロー共振器を構成することを特徴とする物質検出装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の物質検出装置において、
前記折り返しミラーの反射面に、物質が付着しないようにするための除去手段を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記噴出される気体の噴出角を制限することを特徴とする物質検出装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記気化手段が前記気体を噴出する前に、前記気体を充填する減圧容器を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記気体が噴出される位置と対向する位置に真空ポンプを更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項12】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記気化手段は、前記折り返しミラーが形成するレーザー光路を横切るように気体を噴出し、
前記除去手段は、前記気体が噴出される位置と対向する位置に、前記噴出された気体が前記折り返しミラーに付着しないようにするための部材を備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の物質検出装置において、
前記部材は、円錐形状であることを特徴とする物質検出装置。
【請求項14】
請求項8乃至請求項13のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記除去手段は、前記折り返しミラーを加熱する加熱手段を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項15】
請求項8乃至請求項14のいずれか1項に記載の物質検出装置において、
前記除去手段は、前記ミラーの反射面の前にエアーカーテンを発生させる発生手段を更に備えたことを特徴とする物質検出装置。
【請求項16】
液体に含まれる検出対象物質を検出するための物質検出方法において、
前記液体を気化して気体にする気化ステップと、
前記検出対象物質の吸収波長に同調したレーザー光を発振する発振ステップと、
前記気体に前記レーザー光を照射し、該レーザー光を吸収させるための吸収ステップと、
前記照射されたレーザー光の透過光に基づいて、前記検出対象物質を検出するための検出ステップと
を備えたことを特徴とする物質検出方法。
【請求項17】
請求項16に記載の物質検出方法において、
前記気化ステップは、前記液体を間欠的に気化し、
前記検出ステップは、前記液体が気化された時と、気化されていない時とのレーザー光の透過光強度を検出することを特徴とする物質検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−267047(P2006−267047A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89367(P2005−89367)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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