説明

レーザー出射ユニット

【課題】フィードバック制御において、被加工物からの反射レーザー光を完全に遮断して正確なフィードバック制御が行なえるレーザー出射ユニットを開発することをその主たる課題とする。
【解決手段】レーザー発生装置6から光軸CLに沿って入光したレーザー光4を、光学系5を介して被加工物Wの溶接点P2に集光するレーザー出射ユニットAにおいて、入光面50a又は出光面50bの少なくともいずれか一方が光軸CLに対して傾斜するように形成され、入光面50a側からのレーザー光4の透過を許容するが、被加工物Wからの反射レーザー光4aを反射するレーザー反射層51が出光面50bに形成された誘電体多層膜ミラー50が光学系5に組み込まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー加工装置の出射ユニットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザーの工業的利用分野として溶接や金属表面の文字や図柄などを彫る刻印加工などに盛んに使用され、その精度も飛躍的な進歩を遂げている。特に、溶接分野では、微細部分の精密点溶接或いは精密シーム溶接などに多用されており、精度の向上に連れて溶け込み深さの安定性、溶接箇所におけるポロシティやクラックの発生などが問題となって来ている。
【0003】
その原因としては、溶接開始直後のYAGロッド(ヤグロッド)の熱レンズ効果(レーザー光の入光によるYAGロッドの温度上昇に基づくYAGロッドの屈折率の変化で時間の経過とともに安定する。)に基づく出力の変化、励起源であるランプの経時的劣化によるレーザー出力の低下などが挙げられる。
【0004】
そこで、このような出力変化或いは経時的劣化に基づくレーザー出力の低下に対し、制御装置から出されるレーザー波形基準信号と、YAGロッドから出射されるレーザー光をパワーモニターで光電転換した転換値とを比較器にて比較し、変換値が基準信号に合致するようにフィードバック制御をすることとし、これによりかなりの不安定性は解消できた。
【0005】
処がこのようなフィードバック制御を導入したとしてもなお精密溶接においては以下のような問題点が解消されていなかった。即ち、被加工物にレーザー光を垂直に集光させて溶接を行うと、溶接の極く初期の時点(この時点では、集光点では融点に達しておらず被加工物は鏡面を保っている。特に、AlやCuは反射率が高く、レーザー光を反射しやすい。)に集光点からその一部であるが未吸収レーザー光(溶接に寄与していない分)が瞬間的に反射され、同じ入射経路を通ってパワーモニターに入力し、これが前記変換値に加算されることになり、その結果、比較器からの出力は実際に必要な値より少ない値が出力されていた。そして、その少ない出力値に基づく次のレーザー出射では出力不足となり溶接不足を生じた。これを検知したパワーモニターは反射光を加算したとしてもなお出力不足であるため次のレーザー出射の時に不足分を加算して出力を高めるように働き、その結果、今度は出力過剰となって溶接過剰を引き起こすことになり(所謂、ポンピング現象。図1の(ロ)を参照のこと)、フィードバック制御に起因する出力の不安定化がなお解消されず、精密溶接における溶接精度の低下を招くという問題が残っていた。
【0006】
また、溶接の途中においても、レーザー光は集光点において被加工物に吸収されて溶接点を極めて短時間でスポット的に溶融状態にするが、溶接点の表面の状態(例えば、鏡面による反射)或いは溶融時の何らかの原因(例えば、母材内の合金成分や不純物の溶融時の反応)により反射光や自発光が溶接点で発生し、その一部が入射経路を遡ってパワーモニターに入力し、逆行した遡及光が大きい場合には、前述同様フィードバック制御の精度を損なうこともあった。なお、これら反射光は発生原因により高波長のものから低波長のものまで含まれている。
【0007】
その他、レーザー溶接の進行中、レーザー光と同軸の可視光を照射して溶接箇所をモニタリングしているが、溶接箇所の前記反射光や自発光の可視光領域の発生光量が非常に大きく、ハレーションが発生して従来の撮像素子では鮮明な画像を得ることが困難であり、リアルタイムモニタリングが困難であるという問題もあった。リアルタイムモニタリングは溶接欠陥が生じたときに後の画像分析を行って原因解明をする分析ツールとして非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−192285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる従来例の問題点に鑑みてなされたもので、フィードバック制御において、被加工物からの反射レーザー光を完全に遮断して正確なフィードバック制御が行えるレーザー出射ユニットを開発することをその主たる課題とし、同時に被加工物の溶接箇所でのハレーションを克服してリアルタイムモニタリングを可能とすることを従たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のレーザー出射ユニットAは図2(イ)に示すように、
レーザー発生装置6から光軸CLに沿って入光したレーザー光4を、光学系5を介して被加工物Wの溶接点P2に集光するレーザー出射ユニットAにおいて、
入光面50a又は出光面50bの少なくともいずれか一方が光軸CLに対して傾斜するように形成され、
入光面50a側からのレーザー光4の透過を許容するが、被加工物Wからの反射レーザー光4aを反射するレーザー反射層51が出光面50bに形成された誘電体多層膜ミラー50が光学系5に組み込まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項2はレーザー出射ユニットAの別の実施例[図2(ロ)]で、
レーザー発生装置6から光軸CLに沿って入光したレーザー光4及び可視光3を、光学系5を介して被加工物Wの溶接点P2に集光するレーザー出射ユニットAにおいて、
入光面50a又は出光面50bの少なくともいずれか一方が光軸CLに対して傾斜するように形成され、
入光面50a側からのレーザー光4及び可視光3の透過を許容するが、被加工物Wからの反射レーザー光4aを反射するレーザー反射層51と、被加工物Wからの可視光3aを透過量或いは透過波長範囲を制限するハーフミラー層52とが出光面50bに形成された誘電体多層膜ミラー50が光学系5に組み込まれていることを特徴とする。ここで、透過可視光を3b、反射された可視光を3cで表す。
【0012】
請求項3のレーザー出射ユニットA(図3)は請求項1の更に別の実施例で、レーザー反射層51とハーフミラー層52とが別体の誘電体多層膜ミラー500、501に設けられているもので、
レーザー発生装置6から光軸CLに沿って入光したレーザー光4及び可視光3を、光学系5を介して被加工物Wの溶接点P2に集光するレーザー出射ユニットAにおいて、
入光面500a又は出光面500bの少なくともいずれか一方が光軸CLに対して傾斜するように形成され、入光面500a側からのレーザー光4及び可視光3の透過を許容するが、被加工物Wからの反射レーザー光4aを反射するレーザー反射層51が出光面500bに形成されたレーザー反射用誘電体多層膜ミラー500と、
レーザー光4の透過を許容し、且つ入光面501a側からの可視光3の透過を許容するが、被加工物W側からの可視光3aの透過量或いは透過波長範囲を制限するハーフミラー層52が出光面501bに形成された可視光用誘電体多層膜ミラー50とが光学系5に組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
これによれば被加工物Wからの反射レーザー光4aは誘電体多層膜ミラー50によって僅かな角度を以って全反射され、レーザー発生装置6のパワーモニター18への帰還は元より、溶接点P2への帰還も阻止されて周囲に散乱する。その結果、パワーモニター18へはレーザー発生源であるYAGロッド(ヤグロッド)11からの出射エネルギーがそのままパワーモニター18に入力され正確なフィードバック制御がなされる[図1(ハ)]。なお、反射レーザー光4aは溶接点P2へ帰還せず周囲に散乱する(それ自体で被加工物Wを溶融するほどのエネルギーはないので、被加工物Wの溶接箇所以外にダメージを与えない。)ので、溶接点P2の入射エネルギーを高めることもなければ、溶接点P2以外の場所にダメージを与えることもない。
【0014】
また、請求項2、3によれば、モニター用光源61から光軸CLに沿ってレーザー出射ユニットAに入光した可視光は光学系5を通過して溶接点P2を照射し、その反射可視光を含む被加工物W側からの可視光3aがハーフミラー層52によってその透過量や透過波長を制限され、これによって溶接点P2からの光量を制限されることになり、モニタリング時に起こるハレーションを抑制してモニタリングに必要な明瞭な画面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】レーザー加工装置における本発明と従来例のフィードバック制御時の比較ブロック図である。
【図2】本発明に係る出射ユニットの断面図である。
【図3】本発明に係る他の出射ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は本発明に係るレーザー加工装置のブロック回路図で、レーザー発生装置6はYAGロッド(ヤグロッド)11と、その両側に設置されたシャッタ12及び13、YAGロッド11に光を投入する励起ランプ14、励起ランプ14に印加する電源(ランプコントロール)7、励起ランプ14とYAGロッド11とを収納するハウジング15、前記ハウジング15を冷却するクーラ16、図1中、左側のシャッタ12の背方に設置され、モニタリングのレーザー光は通過させる反射ミラー10、右側のシャッタ13の前方に配置された出力ミラー20、反射ミラー10の背方に設けられてYAGロッド11からのモニタリング出力(レーザー光)の進路を変える全反射ミラー17、全反射ミラー17のモニタリング出力を受けて光電変換を行うパワーモニター18、制御器(図示せず)からのレーザー波形基準信号、パワーモニター18からの出力とレーザー波形基準信号とを比較してその差を出力する比較器19とで構成されている。
【0017】
レーザー光4は、レーザー発生装置6から例えば、連続発振、パルス発振、Qスイッチパルス発振、シングルモードなどの手法により出力される。
【0018】
出力ミラー20から出射されたレーザー光4はトランスファ部材8を介してレーザー出射ユニットAに入力するようになっている。トランスファ部材8の導光材にはグラスファイバーが使用される。
【0019】
レーザー出射ユニットAは、図2に示すように、ケーシング30とケーシング30内にセットされた光学系5とで構成されており、ケーシング30は、円筒状の本体31とその上に設けられた取付部材32とで構成されている。本体31の天井部分35の中央に通孔36が穿設されており、本体31の外周面全周にわたって複数段のフィン33が突設されており、フィン33の間に水冷パイプ34が巻設されている。水冷パイプ34の代わりに本体31を、内部に通水孔が形成された水冷ジャケットとしてもよい。
【0020】
取付部材32は本体31の天井部分35に取り付けられたフランジ部37と該フランジ部37から突設された装着筒部38とで構成されており、装着筒部38にトランスファ部材8の口金8aを挿入固定するための取付孔39が穿設されている。そしてこの取付孔39の孔底からフランジ部37方向に向けて円錐台状の出射孔40が小孔41を介して連通するように穿設されていて、該円錐台状の出射孔40から本体31の天井部分35の通孔36に対して同心円状或いは同径にて透孔42が穿設されている。前記円錐台状出射孔40の小孔41はトランスファ部材8からのレーザー光4が通過するのに足りるだけの小さな孔で、例えば直径が約0.6〜1mm程度のものである。そして本体31及び取付部材32の内面全体は黒色塗装或いは黒染のような黒色処理がなされている。
【0021】
光学系5の実施例1は、レーザー出射ユニットAのケーシング30内にセットされた、例えば、シングルレンズ、ダブルレットレンズ、トリプルレットレンズ、平凸レンズ、シリンドリカルレンズその他各種レンズ系を組み合わせた組み合わせレンズ(ここでは2枚の凸レンズが使用されており、入射端側を第1レンズ5a、出射口側を第2レンズ5bとする。)、ケーシング30の出射口にセットされた保護ガラス9及び前記第1レンズ5aと天井部分35との間にセットされた誘電体多層膜ミラー50とで構成されている。勿論、誘電体多層膜ミラー50の位置は上記例に限られず、光学系5のどの位置(第1,2レンズ5a、5bとの間或いは第2レンズ5bと保護ガラス9との間)に設けてもよい。
【0022】
誘電体多層膜ミラー50の実施例1は図2の通りで、入光面50aが光軸CLに対して垂直(換言すれば、レーザー光4が入光面50aに対して垂直に入射する。)に設けられており、出光面50bが光軸CLに対して傾斜するように、換言すれば出光面50bが入光面50aに対してわずかに傾斜している。傾斜角(θ)は1〜3°程度のものである。誘電体多層膜ミラー50は入光面50a側からの光は透過させるものの、出光面50b側にはレーザー反射層51が設けられていて出光面50b側からのレーザー光4は全反射する。誘電体多層膜ミラー50の働きは、出光するレーザー光4を光軸CLから僅かに角度をつけるためのものであるから、図示していないが誘電体多層膜ミラー50の傾斜面は上記のように出光面50bだけに限られず、入光面50a側に設けても良いし両面に設けても良い。この点は図3の場合でも同じである。
【0023】
第1実施例に示す誘電体多層膜ミラー50には2種類のものがあり、1つは単に出光面50bにはレーザー反射層51が形成されただけのもの[図2(イ)]と、他はレーザー反射層51とハーフミラー層52の両方を備えたもの[図2(ロ)]である。
【0024】
いずれの場合も、レーザー反射層51としては波長を選択することで、出光面50b側からの反射レーザー光4bの入射を全て或はかなりの量で反射し、反射した可視光や溶接箇所で発生した何らかの原因(例えば、母材中の合金成分や不純物などが溶接時の熱で反応した場合)による自発光(可視光)は透過させる。本明細書では前記反射した可視光や自発光を纏めて反射可視光3aとし、その内、通過したものを透過可視光3b、反射されたものを可視光3cで表す。
【0025】
レーザー反射層51とハーフミラー層52の両方を備えたものは、反射レーザー光4bの反射は同じであるが、可視光については図2(ロ)に示すように、或る波長の可視光だけを選択的に透過させか、又は透過可視光量を制限する。光量制限によりCCDカメラに入力する光量が適正に絞られる。
【0026】
誘電体多層膜ミラーの第2実施例(図3)は、レーザー反射層51とハーフミラー層52が別々のガラス部材に設けられた場合で、第1の誘電体多層膜ミラー500は、上記第1実施例に示す傾斜面を有する誘電体多層膜ミラー50と同じものでレーザー反射層51だけが設けられたものである。
【0027】
ハーフミラー層52が設けられる第2の可視光用誘電体多層膜ミラー501は単なる透明ガラスで、その出光面501b側に或る波長の可視光だけを選択的に透過させる膜或いは透過可視光量を制限する膜が形成される。可視光の波長選択的透過や透過量規制は誘電体多層膜の種類を選定することにより可能である。
【0028】
なお、誘電体多層膜とは、金属酸化物の誘電体の内で透明性の高い2種以上の屈折率の異なる薄膜を積層したものである。製法としては真空蒸着により製膜する。即ち、非常に高真空に保たれたチャンバ内に膜材料を高温加熱して蒸発させ、その蒸気をチャンバ上方に設けられたガラス基板に堆積させる。必要に応じてイオンアシスト蒸着(製膜中にイオンを注入することにより膜の密度を向上させる蒸着方法)によることも可能である。膜の種類として、外光の映り込みを防止する「反射防止コート」、入射光の一部を透過し、残りを反射する「ハーフミラーコート(透過量は自由に変更可能)」、入射光をほぼ全反射する「高反射ミラーコート」、紫外線の透過を阻止する「紫外線カットフィルターコート」、特定の色(波長)を反射し、それ以外の色(波長)を透過させる「ダイクロイックミラーコート」、通常の光を斜めに入射させて一方の偏光成分(P偏光)を透過させ、他方の偏光成分(S偏光)を反射させる「偏光分離コート」など各種のものがあり、ここでは適宜のものが選択されている。
【0029】
モニター用カメラ60(図1)はレーザー出射ユニットAの光軸CLと同軸で設置された例えばCCDカメラのようなものであり、且つモニター用光源61も光軸CLと同軸でレーザー出射ユニットAに入光する。モニター用カメラ60は画像表示用モニターMに接続されている。
【0030】
次に本発明の作用について説明する。レーザー発生装置6の励起ランプ14を点灯し、これに光源とするレーザー光4をYAGロッド11にて発生させる。レーザー光4の発生原理は公知であるのでその説明は省略する。YAGロッド11によって発生したレーザー光4は出力ミラー20及びトランスファ部材8を通ってレーザー出射ユニットAに入光し、誘電体多層膜ミラー50を透過する時に極く僅かだけ屈折して光軸CLとの交点である垂直集光点P1から極く僅かずれた点である被加工物Wの溶接点P2に集光し、集光部分を瞬時に又は極く短時間で加熱溶解してスポット溶接を行う。スポット溶接の大きさは集光領域によるが、本実施例の場合は直径1mm又はそれ以下(1〜0.1mm)であり、一般的には直径0.8mm程度である。スポット溶接を連続して行えばシーム溶接となる。
【0031】
ここで、図2に示すように、レーザー光4の誘電体多層膜ミラー50への入射角度は直角であるから誘電体多層膜ミラー50内を進行するレーザー光4は屈折することなく直進する。誘電体多層膜ミラー50の出光面50b に至ると、レーザー光4 に対して出光面50bはわずかに傾斜しているのでごく僅かの角度だけ屈折して誘電体多層膜ミラー50から出射される。従って、誘電体多層膜ミラー50より下流側のレンズ5a、5b及び保護ガラス9に対しても僅かに傾斜して入光することになるので、これらを透過する度毎に僅かづつ屈折する。それ故、被加工物Wに垂直にレーザー光4が入光した場合の垂直集光点P1に対して、この場合の集光点P2は前記屈折分だけ垂直集光点P1からわずかにずれ且つレーザー光4は僅かな角度をもって被加工物Wに入光することになる。
【0032】
前述のようにスポット溶接のごく初期の段階では、集光点P2ではレーザー光4の一部しか吸収されず、従って融点に達しておらずしかも被加工物は鏡面を保っていて、レーザー光4のかなりの部分を極く瞬間的であるが反射する。この反射レーザー光4aは集光点P2に立てた法線を中心に同じ角度を以て反射し、レーザー出射ユニットAの本体31方向に戻り、保護ガラス9、レンズ5a、5bを通って誘電体多層膜ミラー50の出光面50bに至る。出光面50bにはレーザー反射層51が全面にわたって形成されているので、ここで反射レーザー光4aは全反射され、その或る部分は、再びレーザー出射ユニットAの出射口から外方に出射され、残りは本体31内の黒色内面に吸収されて熱に変わる。そしてこの熱はフィン33及び水冷パイプ34で取り去られ、レーザー出射ユニットAの昇温が抑制される。溶接の途中において何らかの原因により発生する反射レーザー光4aのパワーモニター18への入光も同様に抑制できる。その結果、パワーモニター18へはレーザー発生源であるYAGロッド11からの出射エネルギーだけがそのままパワーモニター18に入力され正確なフィードバック制御がなされることになる[図1(ハ)参照]。
【0033】
一方、モニター用光源61からの可視光はレーザー反射層51を透過してモニター用カメラ60に至り、画像信号に変換されてモニターMに溶接画像がリアルタイムで映し出される。レーザー反射層51として、溶接点P2からの可視光3aの透過量や透過波長範囲を制限して透過光量を制限しておけば、集光点P2における光量過多によるハレーションを抑制することが出来てモニター画像をより鮮明に映しだすことができる。なおこの場合、溶接点P2からの可視光3aがレーザー光4の入射経路を遡及してパワーモニター18に入力することも考えられるが、レーザー光4に比べて溶接点P2からの可視光3aのエネルギーは無視できるので、前記フィードバック制御をこれが損なうというようなことはない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はレーザー加工装置において、フィードバック制御をより正確に行うことが出来るようになり更なる精密レーザー加工を発展させることができ、併せてその時のリアルタイムモニタリング画像をより鮮明にする事が出来、これの観察をより容易にすることで精密レーザー加工の作業改善に貢献することが出来る。
【符号の説明】
【0035】
A …レーザー出射ユニット
CL …光軸
W …被加工物
P1 …垂直集光点
P2 …集光点又は溶接点
4 …レーザー光
4a …反射レーザー光
4b …溶接点からの可視光
5 …光学系
5a …第1レンズ
5b …第2レンズ
6 …レーザー発生装置
50 …誘電体多層膜ミラー
50a…入光面
50b…出光面
51 …レーザー反射層
52 …ハーフミラー層
500…第1誘電体多層膜ミラー
500a…入光面
500b…出光面
501…第2誘電体多層膜ミラー
501a…入光面
501b…出光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー発生装置から光軸に沿って入光したレーザー光を、光学系を介して被加工物Wの溶接点に集光するレーザー出射ユニットにおいて、
入光面又は出光面の少なくともいずれか一方が光軸に対して傾斜するように形成され、入光面側からのレーザー光の透過を許容するが、被加工物からの反射レーザー光を反射するレーザー反射層が出光面に形成された誘電体多層膜ミラーが光学系に組み込まれていることを特徴とするレーザー出射ユニット。
【請求項2】
レーザー発生装置から光軸に沿って入光したレーザー光及び可視光を、光学系を介して被加工物の溶接点に集光するレーザー出射ユニットにおいて、
入光面又は出光面の少なくともいずれか一方が光軸に対して傾斜するように形成され、入光面側からのレーザー光及び可視光の透過を許容するが、被加工物からの反射レーザー光を反射するレーザー反射層と、被加工物からの可視光を透過量或いは透過波長範囲を制限するハーフミラー層とが出光面に形成された誘電体多層膜ミラーが光学系に組み込まれていることを特徴とするレーザー出射ユニット。
【請求項3】
レーザー発生装置から光軸に沿って入光したレーザー光及び可視光を、光学系を介して被加工物の溶接点に集光するレーザー出射ユニットにおいて、
入光面又は出光面の少なくともいずれか一方が光軸に対して傾斜するように形成され、入光面側からのレーザー光及び可視光の透過を許容するが、被加工物からの反射レーザー光を反射するレーザー反射層が出光面に形成されたレーザー反射用誘電体多層膜ミラーと、
レーザー光の透過を許容し、且つ入光面側からの可視光の透過を許容するが、被加工物側からの可視光の透過量或いは透過波長範囲を制限するハーフミラー層が出光面に形成された可視光用誘電体多層膜ミラーとが光学系に組み込まれていることを特徴とするレーザー出射ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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