説明

レーザー加工装置

【課題】レーザー加工時にワークから発生する塵埃及び煙をエア吸引装置によって確実に吸引することにより、ワークへの塵埃及び煙の付着を防止することができるレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザー加工装置20は、支持手段30、レーザー照射装置40、エア噴出装置50及びエア吸引装置60を備える。支持手段30は、ワーク2の下方に位置してワーク2を支持するとともに、吸引口35を有する。レーザー照射装置40は、ワーク2に対してレーザーL1を照射する。エア噴出装置50は、支持手段30の上方に設置され、ワーク2に対してエアA1を噴出させる。エア吸引装置60は、レーザー加工時にワーク2から発生する塵埃及び煙をエアA1とともに吸引口35を介してワーク2の下方から吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外表面にレーザーを照射してレーザー加工を行うレーザー加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために樹脂成形体(ワーク)の外表面に装飾を加えるようにした加飾部品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。このような加飾部品に装飾を加える方法としては、例えば、樹脂成形体となる樹脂材料と装飾用のフィルムとを成形型内に配置した状態で射出成形(インモールド成形)を行うことにより、外表面にフィルムが付着した樹脂成形体を形成する方法が提案されている。
【0003】
ところが、上記の方法では、樹脂成形体からのフィルムのはみ出し部分が余剰領域(バリ)となってしまうため、フィルムの付着後にバリを切除する切除工程(トリミング)を行う必要がある。そこで、外表面にレーザーを照射してレーザー加工を行うレーザー加工装置(例えば特許文献1〜3参照)を用いて、フィルムのバリをトリミングすることが考えられる。なお、特許文献1〜3に記載の従来技術は、プリント基板や半導体ウェハ等の比較的単純な形状のワークに対してレーザー加工を行うものである。このため、レーザー加工時にワークから発生する塵埃及び煙をワークの側方にあるエア吸引装置で吸引すれば、ワークに付着する塵埃及び煙を確実に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−185685号公報(図1等)
【特許文献2】特開2008−213022号公報(図2等)
【特許文献3】特開2002−316292号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トリミングが行われる樹脂成形体は、比較的複雑な立体形状であるため、レーザー加工時に樹脂成形体から発生する塵埃及び煙を上記のエア吸引装置を用いて吸引したとしても、塵埃及び煙の一部がエア吸引装置に吸引されずに樹脂成形体に残ってしまう。その結果、樹脂成形体に残った塵埃が樹脂成形体を汚す可能性がある。また、樹脂成形体に残った煙が立ち上ってワークを隠してしまうため、ワークの特定箇所を狙ってレーザーを照射することが困難になったり、レーザーの照射強度がばらついたりするおそれがある。しかも、樹脂成形体に残った塵埃及び煙は、レーザー照射装置の本体やレンズに付着してレーザーの照射強度を低下させる可能性もある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザー加工時にワークから発生する塵埃及び煙をエア吸引装置によって確実に吸引することにより、ワークへの塵埃及び煙の付着を防止することができるレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、立体形状のワークの外表面にレーザーを照射してレーザー加工を行うレーザー加工装置であって、前記ワークの下方に位置して前記ワークを支持するとともに、吸引口を有する支持手段と、前記支持手段によって支持された前記ワークに対して前記レーザーを照射するレーザー照射装置と、前記支持手段の上方に設置され、前記支持手段によって支持された前記ワークに対してエアを噴出させるエア噴出装置と、レーザー加工時に前記ワークから発生する塵埃及び煙を前記エアとともに前記吸引口を介して前記ワークの下方から吸引するエア吸引装置とを備えることを特徴とするレーザー加工装置をその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、支持手段の上方に設置されたエア噴出装置によって支持手段に支持されたワークに対してエアが噴出され、ワークから発生する塵埃及び煙がエアとともに吸引口を介してワークの下方からエア吸引装置によって吸引される。これにより、ワークの上方から下方へのエアの流れが形成されるため、塵埃及び煙は、側方に振り撒かれたりせずに、エア吸引装置によってエアとともに確実に吸引される。その結果、ワークが比較的複雑な立体形状であったとしても、ワークへの塵埃の付着が防止されるため、塵埃の付着に起因したワークの汚れを防止することができる。また、ワークへの煙の付着が防止されるため、ワークに付着した煙が立ち上ることに起因して、ワークの特定箇所を狙ってレーザーを照射することが困難になったり、レーザーの照射強度がばらついたりすることを防止できる。しかも、ワークに残った塵埃及び煙がレーザー照射装置に付着することも防止されるため、塵埃及び煙の付着に起因したレーザーの照射強度の低下を防止することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記外表面においてレーザー加工が行われている位置に応じて、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を調整する流量調整手段を備え、前記流量調整手段は、前記ワークが有する凹部の内部に対するレーザー加工を行う際に、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を相対的に大きくするとともに、前記凹部の外部に対するレーザー加工を行う際に、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を相対的に小さくすることをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、塵埃や煙が滞留しやすい凹部の内部に対してレーザー加工を行う際には、エア噴出装置から噴出するエアの流量を相対的に大きくしているため、凹部に導かれるエアの流量が多くなり、凹部から塵埃や煙を確実に除去することができる。一方、塵埃や煙が滞留しにくい凹部の外部に対してレーザー加工を行う際には、エア噴出装置から噴出するエアの流量を相対的に小さくしているため、凹部の外部から塵埃や煙を除去するときにエアを無駄にしなくても済む。従って、エア吸引装置による塵埃及び煙の吸引を効率良く行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記エア吸引装置による前記エアの吸引量を調整する吸引量調整手段を備え、前記吸引量調整手段は、前記エアの吸引量を前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量よりも大きくすることをその要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、エア吸引装置によるエアの吸引量がエア噴出装置から噴出するエアの流量よりも大きくなるため、塵埃及び煙を、エア吸引装置によってエアとともに確実に吸引することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記支持手段は、前記ワークを支持する支持治具と、前記支持治具を位置決めする位置決めテーブルとを備え、前記位置決めテーブルは、厚さ方向に貫通し、前記ワーク側から前記エア吸引装置側に前記エアが通過する前記吸引口を複数有することをその要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、位置決めテーブルが吸引口を複数有するため、ワーク側から導かれてきたエアは、吸引口を通過してエア吸引装置側に流れるようになる。即ち、ワークの上方から下方へのエアの流れが位置決めテーブルによって妨げられなくて済むため、塵埃及び煙を、エア吸引装置によってエアとともにより確実に吸引することができる。
【0015】
ここで、吸引口としては、円形状の貫通孔や、矩形状の貫通孔(スリット等)などが挙げられる。また、吸引口としては、フィルタなどを挙げることができる。なお、フィルタは、繊維をまとめて積層することでマット状に構成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、レーザー加工時にワークから発生する塵埃及び煙をエア吸引装置によって確実に吸引することにより、ワークへの塵埃及び煙の付着を防止することができるレーザー加工装置を提供することができる。特に、請求項2に記載の発明によると、エア吸引装置による塵埃及び煙の吸引を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の自動車用加飾部品を示す斜視図。
【図2】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は図1のB−B線断面図。
【図3】トリミング装置を示す概略構成図。
【図4】自動車用加飾部品及び位置決めテーブルを示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のレーザー加工装置をトリミング装置に具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1,図2に示されるように、自動車用加飾部品1は、立体形状の樹脂成形体2(ワーク)を備えている。本実施形態の自動車用加飾部品1は、自動車のドアに設けられたアームレストの上面を覆う装飾パネルである。また、樹脂成形体2は、凸状湾曲面であるワーク表面3a(外表面)と、ワーク表面3aの反対側に位置する凹状湾曲面であるワーク裏面3bとを有している。さらに、樹脂成形体2には、パワーウィンドウスイッチ(図示略)を取り付けるための第1スイッチ取付孔6(第1孔)と、ドアロックスイッチ(図示略)を取り付けるための第2スイッチ取付孔7(第2孔)とが設けられている。第1スイッチ取付孔6は、ワーク表面3aにて開口する凹部5の底面5aと、ワーク裏面3bとを貫通している(図2(a)参照)。また、第2スイッチ取付孔7は、ワーク表面3aとワーク裏面3bとを貫通している(図2(b)参照)。
【0020】
そして、樹脂成形体2においてスイッチ取付孔6,7を除く表面(ワーク表面3a)上には被加飾領域4が設定され、被加飾領域4にはフィルム10が付着している。本実施形態のフィルム10は、アクリル樹脂などの透明樹脂に塗料を塗工することによって形成されたものであり、表面には木目模様の装飾が施されている。さらに、フィルム10の表面には、フィルム10を保護するためのクリアコート層(図示略)が形成されている。
【0021】
次に、トリミング装置20について説明する。
【0022】
図3に示されるように、トリミング装置20は、樹脂成形体2のワーク表面3aにレーザーL1を照射してレーザー加工を行う装置である。具体的に言うと、トリミング装置20は、樹脂成形体2の被加飾領域4にフィルム10を付着した際に、フィルム10において被加飾領域4からはみ出した余剰領域(バリ)を切除する装置である。
【0023】
また、トリミング装置20を構成する装置本体21は、ベースフレーム22と、ベースフレーム22上に設けられた箱状のキャビネット23とからなる。さらに、トリミング装置20は、支持装置30(支持手段)、レーザー照射装置40、エア噴出装置50及びエア吸引装置60を備えている。支持装置30は、樹脂成形体2の下方に位置して樹脂成形体2を支持するようになっている。また、支持装置30は、支持台31、搬送台32、位置決めテーブル33及び支持治具34を備えている。支持台31は、矩形板状をなし、キャビネット23内において装置本体21の設置面に対して平行に配置されており、サーボモーター(図示略)を駆動させることにより、レーザー照射装置40に対して接近または離間するようになっている。搬送台32は、支持台31上に配置されており、サーボモーター(図示略)を駆動させることにより、支持台31の長さ方向に移動するようになっている。
【0024】
図3,図4に示されるように、位置決めテーブル33は、搬送台32上に載置されており、支持治具34を位置決めするようになっている。位置決めテーブル33は、サーボモーター(図示略)を駆動させることにより、支持台31の幅方向(図3に示す矢印F1方向)に移動するようになっている。また、位置決めテーブル33には、複数のスリット35(吸引口)が設けられている。各スリット35は、等間隔に配置されるとともに位置決めテーブル33を厚さ方向に貫通しており、樹脂成形体2側からエア吸引装置60側にエアA1が通過するようになっている。
【0025】
また図3に示されるように、支持治具34は、位置決めテーブル33上に載置されており、ワーク表面3aを上方に向けるとともにワーク裏面3bを下方に向けた状態で、樹脂成形体2を水平に支持するようになっている。支持治具34は、位置決めテーブル33上に載置される支持板36を備えている。また、支持板36の上面には、複数の突出片37が互いに離間した状態で突設されている。そして、各突出片37の先端が樹脂成形体2のワーク裏面3bに当接することにより、樹脂成形体2は、支持板36の上面から離間した状態で支持治具34に支持される。即ち、支持治具34は、樹脂成形体2において被加飾領域4とは異なる領域であって、ワーク裏面3bにおいてスイッチ取付孔6,7を除く領域を支持するようになる。
【0026】
図3に示されるように、レーザー照射装置40は、キャビネット23の上面であって、支持治具34によって支持された樹脂成形体2の上方に設置されている。また、レーザー照射装置40は、樹脂成形体2のワーク表面3aを臨むように配置されており、ワーク表面3aに対してレーザーL1を照射するようになっている。具体的に言うと、レーザー照射装置40は、樹脂成形体2の外縁部に沿ってレーザーL1を照射することにより、フィルム10において樹脂成形体2の外縁部からはみ出した余剰領域を切除するようになっている。また、レーザー照射装置40は、第1スイッチ取付孔6の開口端に沿ってレーザーL1を照射することにより、フィルム10において第1スイッチ取付孔6の内面からはみ出した余剰領域を切除するようになっている。さらに、レーザー照射装置40は、第2スイッチ取付孔7の開口端に沿ってレーザーL1を照射することにより、フィルム10において第2スイッチ取付孔7の内面からはみ出した余剰領域を切除するようになっている。
【0027】
なお、図3に示されるレーザー照射装置40は、レーザーL1を発生させるレーザー発生部(図示略)、レーザーL1を偏向させるレーザー偏向部(図示略)、及び、レーザー発生部及びレーザー偏向部を制御するレーザー制御部(図示略)をそれぞれ備えている。レーザー偏向部は、レンズ(図示略)と反射ミラー(図示略)とを複合させてなる光学系であり、これらレンズ及び反射ミラーの位置を変更することにより、レーザーL1の照射位置や焦点位置を調整するようになっている。即ち、本実施形態のレーザー照射装置40は、ガルバノミラー式のレーザー照射装置である。また、レーザー制御部は、レーザーL1の照射時間変調、照射強度変調、照射面積変調などの制御を行うようになっている。
【0028】
図3に示されるエア噴出装置50は、支持装置30に支持された樹脂成形体2に対してエアA1を噴出させることにより、レーザー加工時に樹脂成形体2から発生する塵埃(樹脂成形体2の削りかすなど)及び煙を吹き飛ばす装置である。エア噴出装置50は、支持装置30の上方、具体的にはキャビネット23の上部に設置され、レーザー照射装置40を挟んで一対配置されている。また、エア噴出装置50は、エアA1の噴出口が樹脂成形体2の被加飾領域4に向けて配置されている。本実施形態において、エアA1の噴出方向は、レーザー照射装置40が照射するレーザーL1の照射方向(鉛直方向)に対して20°程度傾斜している。さらに、エアA1のエア圧は、例えば150kPa以上、特には400kPa以上に設定されることが好ましい。このようにすれば、樹脂成形体2の凹部5に塵埃や煙が滞留することを確実に防止できる。
【0029】
図3に示されるエア吸引装置60は、エアA1によって吹き飛ばされた塵埃及び煙を、エアA1とともにスリット35を介して樹脂成形体2の下方から吸引する装置である。エア吸引装置60は、吸引用ダクト61、ホース62及び集塵部63を備えている。吸引用ダクト61は、キャビネット23内に収容され、上端にて開口している。吸引用ダクト61内には、搬送台32及び位置決めテーブル33や、支持台31の一部が収容されている。よって、吸引用ダクト61の上端は、位置決めテーブル33の上面よりも上方に位置している。そして、吸引用ダクト61は、スリット35を通過した塵埃及び煙を含むエアA1を吸引するようになっている。また、ホース62は、両端部が吸引用ダクト61の下端部及び集塵部63の上端部にそれぞれ接続され、吸引用ダクト61及び集塵部63を互いに連通している。集塵部63は、ベースフレーム22の底部に設けられた支持板(図示略)上に設置されている。集塵部63は、塵埃及び煙を含むエアA1をホース62を介して吸引し、吸引したエアA1から塵埃を除去するようになっている。
【0030】
次に、トリミング装置20の電気的構成について説明する。
【0031】
図3に示されるように、トリミング装置20は、装置全体を統括的に制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、CPU71、メモリ41及び入出力ポート42等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU71は、搬送台32、位置決めテーブル33、レーザー照射装置40、エア噴出装置50及びエア吸引装置60に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。具体的に言うと、CPU71は、支持装置30に支持された樹脂成形体2の位置を変位させる制御を行うようになっている。例えば、CPU71は、搬送台32用のサーボモーターのコントローラ(図示略)にワーク移動信号を出力し、支持治具34を平面方向(支持台31の長さ方向)に移動させる制御(位置制御)を行うようになっている。また、CPU71は、位置決めテーブル33用のサーボモーターのコントローラ(図示略)にワーク移動信号を出力し、支持治具34を平面方向(支持台31の幅方向)に移動させる制御(位置制御)を行うようになっている。さらに、CPU71は、支持台31用のサーボモーターのコントローラ(図示略)に支持台移動信号を出力し、支持台31(及び支持台31上にある樹脂成形体2)をレーザー照射装置40に対して接近または離間させる制御を行うようになっている。これにより、レーザーL1の照射距離が、余剰領域の切除が可能な距離(本実施形態では一定)に保持されるようになっている。また、CPU71は、レーザー照射装置40のコントローラにレーザー照射信号を出力し、レーザー照射装置40からレーザーL1を照射させる制御を行うようになっている。なお、メモリ41には、レーザー照射装置40のレーザー照射条件(レーザーL1の照射時間、レーザーL1の照射強度、レーザーL1の照射位置など)を示すデータがあらかじめ記憶されている。
【0032】
次に、自動車用加飾部品1の製造方法を説明する。
【0033】
まず、熱可塑性を有する樹脂材料(例えばABS樹脂)を用いて所定の立体形状に成形した樹脂成形体2を準備する。具体的に言うと、第1型及び第2型からなる成形型(図示略)を準備する。次に、フィルム10を第1型の成形面上に配置した後、フィルム10の周縁部を第1型と第2型とで挟持する。これにより、内部に樹脂成形体2と同一形状かつ同一体積のキャビティが構成される。この状態で、所定量の樹脂材料を加熱した状態でキャビティ内に充填した後、冷却することにより、フィルム10が付着した樹脂成形体2がインモールド成形される。その後、第1型及び第2型を互いに離間させれば、フィルム10が付着した樹脂成形体2が取り出される。
【0034】
しかし、フィルム10において第1型と第2型とで挟持された部位(余剰領域)は不要であるため、インモールド成形後に余剰領域を切除しなければならない。そこで、フィルム10の余剰領域を切除するトリミング方法を説明する。
【0035】
まず、支持工程を行い、作業者によって、樹脂成形体2における被加飾領域4とは異なる領域を支持治具34に支持させる。具体的に言うと、支持治具34に設けられた複数の突出片37を樹脂成形体2のワーク裏面3bに当接させることにより、樹脂成形体2を支持治具34に支持させる(図3参照)。
【0036】
続く切除工程では、レーザー照射装置40からレーザーL1を照射することにより、余剰領域を切除する。詳述すると、CPU71は、樹脂成形体2の外縁部を示す画像データを、レーザー照射を行うためのレーザー照射データ(加工位置情報)に変換する。次に、CPU71は、変換したレーザー照射データをメモリ41に記憶する。さらに、CPU71は、レーザー照射に用いられるレーザー照射パラメータ(レーザーL1の照射位置、焦点位置、照射角度、照射面積、照射時間、照射強度など)を設定する。
【0037】
そして、CPU71は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データに基づいてレーザー照射を行うことにより、余剰領域を切除する。具体的に言うと、CPU71は、メモリ41に記憶されている外縁部用のレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいてレーザー照射信号を生成し、生成したレーザー照射信号をレーザー照射装置40に出力する。レーザー照射装置40は、CPU71から出力されたレーザー照射信号に基づいて、樹脂成形体2の外縁部に沿ってレーザーL1を照射する。その結果、フィルム10において樹脂成形体2の外縁部からはみ出した余剰領域が除去される。
【0038】
次に、CPU71は、メモリ41に記憶されている第1スイッチ取付孔6の開口端用のレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいてレーザー照射信号を生成し、生成したレーザー照射信号をレーザー照射装置40に出力する。レーザー照射装置40は、CPU71から出力されたレーザー照射信号に基づいて、第1スイッチ取付孔6の開口端に沿ってレーザーL1を照射する。その結果、フィルム10において第1スイッチ取付孔6の内面からはみ出した余剰領域が除去される。
【0039】
また、CPU71は、メモリ41に記憶されている第2スイッチ取付孔7の開口端用のレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいてレーザー照射信号を生成し、生成したレーザー照射信号をレーザー照射装置40に出力する。レーザー照射装置40は、CPU71から出力されたレーザー照射信号に基づいて、第2スイッチ取付孔7の開口端に沿ってレーザーL1を照射する。その結果、フィルム10において第2スイッチ取付孔7の内面からはみ出した余剰領域が除去される。
【0040】
なお、レーザー照射装置40のレーザー制御部は、レーザー発生部からレーザーL1を照射させ、レーザー照射データの種類に応じてレーザー偏向部を制御する。この制御により、レーザーL1の照射位置や焦点位置を変更し、フィルム10において樹脂成形体2の外縁部やスイッチ取付孔6,7の開口端と一致する部分を昇華または脆化させることで、余剰領域を切除する。
【0041】
また、切除工程では、フィルム10からは塵埃(切屑など)が発生する。しかも、アクリル樹脂などの樹脂材料からなるフィルム10に対してレーザー加工を行うため、フィルム10からは煙も発生する。このため、CPU71は、レーザー加工に同期してエア噴出装置50からのエアA1の噴出を開始させる制御を行い、エアA1によって樹脂成形体2から塵埃及び煙を除去する。具体的に言うと、CPU71は、レーザー照射装置40からのレーザーL1の照射が開始されると同時に、エア噴出装置50に対してエア噴出信号を出力し、エア噴出装置50からエアA1を噴出させる制御を行う。また、CPU71は、レーザーL1の照射が終了すると同時に、エア噴出装置50に対するエア噴出信号の出力を終了し、エア噴出装置50からのエアA1の噴出を終了させる制御を行う。
【0042】
さらに、CPU71は、ワーク表面3aにおいてレーザー加工が行われている位置に応じて、エア噴出装置50から噴出するエアA1の流量を調節する制御を行う。具体的に言うと、CPU71は、凹部5の内部(本実施形態では第1スイッチ取付孔6)に対するレーザー加工を行う際、即ち、読み出したレーザー照射データが第1スイッチ取付孔6の開口端用のレーザー照射データである場合に、図示しない流量調整用インバータを介してエア噴出装置50から噴出するエアA1の流量を相対的に大きくする制御を行う。また、CPU71は、凹部5の外部(本実施形態では、樹脂成形体2の外縁部及び第2スイッチ取付孔7)に対するレーザー加工を行う際、即ち、読み出したレーザー照射データが外縁部用または第2スイッチ取付孔7の開口端用のレーザー照射データである場合に、流量調整用インバータを介してエア噴出装置50から噴出するエアA1の流量を相対的に小さくする制御を行う。即ち、CPU71及び流量調整用インバータは、流量調整手段としての機能を有している。
【0043】
また、CPU71は、エア噴出装置50からのエアA1の噴出に同期してエア吸引装置60によるエアA1(塵埃及び煙を含む)の吸引を開始させる制御を行う。具体的に言うと、CPU71は、エアA1の噴出が開始されると同時に、エア吸引装置60に対してエア吸引信号を出力し、エア吸引装置60によるエアA1の吸引を開始させる制御を行う。このとき、エアA1は、スリット35→吸引用ダクト61→ホース62→集塵部63の順番に通過する。そして、集塵部63は、吸引したエアA1から塵埃を除去するようになる。さらに、CPU71は、エア吸引装置60によるエアA1の吸引量を調整する制御を行う。具体的に言うと、CPU71は、図示しない吸引量調整用インバータを介して、エア吸引装置60によるエアA1の吸引量をエア噴出装置50から噴出するエアA1の流量よりも大きくする制御を行う。そして、CPU71は、エアA1の流量を大きくする制御が行われるのに伴って、吸引量調整用インバータを介してエアA1の吸引量を大きくする制御を行うとともに、エアA1の流量を小さくする制御が行われるのに伴って、吸引量調整用インバータを介してエアA1の吸引量を小さくする制御を行う。即ち、CPU71及び吸引量調整用インバータは、吸引量調整手段としての機能を有している。その後、CPU71は、エアA1の噴出が終了すると同時に、エア吸引装置60に対するエア吸引信号の出力を終了し、エア吸引装置60によるエアA1の吸引を終了させる制御を行う。
【0044】
また、CPU71は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいてワーク移動信号を生成し、生成したワーク移動信号を搬送台32用のサーボモーターや位置決めテーブル33用のサーボモーターに出力する。搬送台32及び位置決めテーブル33は、CPU71から出力されたワーク移動信号に基づいて駆動することにより、サーボモーターの位置を変位させて支持治具34を平面方向に移動させる。また、CPU71は、メモリ41に記憶されているレーザー照射データを読み出し、読み出したレーザー照射データに基づいて支持台移動信号を生成し、生成した支持台移動信号を支持台31用のサーボモーターのコントローラに出力する。支持台31は、CPU71から出力された支持台移動信号に基づいて駆動することにより、支持台31(及び支持台31上にある樹脂成形体2)をレーザー照射装置40に対して接近または離間させる。その結果、樹脂成形体2に対するレーザーL1の照射位置が変更され、被加飾領域4に対するレーザーL1の照射距離が一定に保持される。そして、レーザー照射装置40は、照射距離が一定に保持された状態で、CPU71から出力されたレーザー照射信号に基づいてレーザーL1を照射する。以上の工程を経て自動車用加飾部品1が製造される。
【0045】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0046】
(1)本実施形態のトリミング装置20では、エア噴出装置50によって樹脂成形体2に対してエアA1が噴出され、樹脂成形体2から発生する塵埃及び煙がエアA1とともに樹脂成形体2の下方からエア吸引装置60によって吸引される。これにより、樹脂成形体2の上方から下方へのエアA1の流れが形成されるため、塵埃及び煙は、側方に振り撒かれたりせずに、エア吸引装置60によってエアA1とともに確実に吸引される。その結果、樹脂成形体2が複雑な立体形状となる本実施形態の場合であっても、樹脂成形体2への塵埃の付着が防止されるため、塵埃の付着に起因した樹脂成形体2の汚れを防止することができる。また、樹脂成形体2への煙の付着が防止されるため、樹脂成形体2に付着した煙が立ち上ることに起因して、樹脂成形体2の特定箇所を狙ってレーザーL1を照射することが困難になったり、レーザーL1の照射強度がばらついたりすることを防止できる。しかも、エアA1が樹脂成形体2の下方に流れることにより、樹脂成形体2に残った塵埃及び煙が樹脂成形体2の上方に設置されたレーザー照射装置40に付着することも防止されるため、塵埃及び煙の付着に起因したレーザーL1の照射強度の低下を防止することができる。
【0047】
(2)本実施形態では、支持治具34を構成する各突出片37の先端が樹脂成形体2のワーク裏面3bに当接することにより、樹脂成形体2が支持板36の上面から離間した状態で支持治具34に支持されるようになる。このため、レーザー加工時に発生する塵埃及び煙は、樹脂成形体2のワーク裏面3b側に滞留することなく、エアA1とともに樹脂成形体2と支持板36との隙間を介して外部に導かれるようになる。即ち、塵埃及び煙を含むエアA1を、エア吸引装置60によって確実に吸引することができる。
【0048】
(3)本実施形態の自動車用加飾部品1では、フィルム10を保護するクリアコート層が形成されるので、自動車用加飾部品1の外観品質を長期間にわたって保つことができる。また、フィルム10の表面に凹凸があったとしても、クリアコート層によってフィルム10の凹凸が平坦化されるので、凹凸に蓄積する埃などの汚れを防止することができる。
【0049】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0050】
・上記実施形態のトリミング装置20は、インモールド成形によって生じたバリの切除時において塵埃及び煙が発生した場合に、発生した塵埃及び煙を除去するために用いられていた。しかし、トリミング装置20を、真空・圧空成形によるフィルム貼付等によって生じた余剰フィルムの切除時において塵埃及び煙が発生した場合に、発生した塵埃及び煙を除去するために用いてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、ワーク表面3aにおいてレーザー加工が行われている位置に応じて、エア噴出装置50から噴出するエアA1の流量を変更していたが、その代わりに、エアA1の流速や風向きなどを変更するようにしてもよい。
【0052】
・上記実施形態のトリミング装置20には、2台のエア噴出装置50が設置されていたが、例えばエア噴出装置50の設置数を1台に変更してもよい。逆に、エア噴出装置50の設置数を増やしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、フィルム10の表面を保護するようにクリアコート層が形成されていたが、クリアコート層は省略されていてもよい。
【0054】
・上記実施形態の自動車用加飾部品1では、フィルム10の表面に木目模様の装飾が施されていたが、装飾は適宜変更することができる。なお、装飾としては、木目模様の装飾以外に、炭素繊維織物を示す模様の装飾や、ヘアライン加工が施されたアルミパネルを示す模様の装飾などを挙げることができる。
【0055】
・上記実施形態では、自動車用加飾部品1をドアのアームレストに具体化するものであったが、これ以外に、コンソールボックス、インストルメントパネルなどの部品に具体化してもよい。
【0056】
・上記実施形態のレーザー加工装置は、フィルム10において被加飾領域4からはみ出した余剰領域を切除するトリミング装置20であった。しかし、レーザー加工装置は、被加飾領域4に塗膜を形成し、レーザー照射を行って塗膜を選択的に処理して複数のレーザー被処理部を形成することにより、被加飾領域4に基絵柄を模した絵柄を描くレーザー加飾装置であってもよい。
【0057】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0058】
(1)請求項2において、前記ワークは、前記凹部が形成されたワーク表面と、前記ワーク表面の反対側に位置するワーク裏面とを有するとともに、前記凹部の底面及び前記ワーク裏面を貫通する第1孔と、前記ワーク表面及び前記ワーク裏面を貫通する第2孔とを有し、前記流量調整手段は、前記第1孔に対するレーザー加工を行う際に、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を相対的に大きくするとともに、前記ワークの外縁部及び前記第2孔に対するレーザー加工を行う際に、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を相対的に小さくすることを特徴とするレーザー加工装置。
【0059】
(2)技術的思想(1)において、前記レーザー加工装置は、前記外表面上に設定された被加飾領域にフィルムを付着した際に、前記フィルムにおいて前記被加飾領域からはみ出した余剰領域を切除するトリミング装置であり、前記レーザー照射装置は、レーザーを照射することにより、前記フィルムにおいて前記ワークの外縁部からはみ出した前記余剰領域と、前記フィルムにおいて前記第1孔の内面からはみ出した前記余剰領域と、前記フィルムにおいて前記第2孔の内面からはみ出した前記余剰領域とを切除することを特徴とするレーザー加工装置。
【0060】
(3)請求項4において、前記エア吸引装置は、前記ワークから発生する塵埃及び煙を前記エアとともに吸引する吸引用ダクトを備え、前記吸引用ダクトは、上端にて開口するとともに内部に前記位置決めテーブルを収容しており、前記吸引用ダクトの上端が、前記位置決めテーブルの上面よりも上方に位置することを特徴とするレーザー加工装置。
【符号の説明】
【0061】
2…ワークとしての樹脂成形体
3a…表面としてのワーク表面
5…凹部
20…レーザー加工装置としてのトリミング装置
30…支持手段としての支持装置
33…位置決めテーブル
34…支持治具
35…吸引口としてのスリット
40…レーザー照射装置
50…エア噴出装置
60…エア吸引装置
71…流量調整手段及び吸引量調整手段としてのCPU
A1…エア
L1…レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状のワークの外表面にレーザーを照射してレーザー加工を行うレーザー加工装置であって、
前記ワークの下方に位置して前記ワークを支持するとともに、吸引口を有する支持手段と、
前記支持手段によって支持された前記ワークに対して前記レーザーを照射するレーザー照射装置と、
前記支持手段の上方に設置され、前記支持手段によって支持された前記ワークに対してエアを噴出させるエア噴出装置と、
レーザー加工時に前記ワークから発生する塵埃及び煙を前記エアとともに前記吸引口を介して前記ワークの下方から吸引するエア吸引装置と
を備えることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記外表面においてレーザー加工が行われている位置に応じて、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を調整する流量調整手段を備え、
前記流量調整手段は、前記ワークが有する凹部の内部に対するレーザー加工を行う際に、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を相対的に大きくするとともに、前記凹部の外部に対するレーザー加工を行う際に、前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量を相対的に小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記エア吸引装置による前記エアの吸引量を調整する吸引量調整手段を備え、
前記吸引量調整手段は、前記エアの吸引量を前記エア噴出装置から噴出する前記エアの流量よりも大きくする
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記支持手段は、前記ワークを支持する支持治具と、前記支持治具を位置決めする位置決めテーブルとを備え、
前記位置決めテーブルは、厚さ方向に貫通し、前記ワーク側から前記エア吸引装置側に前記エアが通過する前記吸引口を複数有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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