レーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置及び供給方法
【課題】レーザー溶接状態に悪影響を与えることなく、フィラーワイヤの溶融を良好に行うことが可能なフィラーワイヤ供給装置及び供給方法を提供する。
【解決手段】フィラーワイヤ供給装置3は、フィラーワイヤXを加熱するフィラーワイヤ加熱装置6を有する。加熱装置6は、フィラーワイヤXの端部近傍部分に接触するローラ51Aと、金属板W1,W2に接触するクランプ5と、ローラ51Aとクランプ5との間にフィラーワイヤX及び金属板W1,W2を介して通電する通電装置30と、ローラ51AとフィラーワイヤXの端部との間の距離が変化するように、ローラ51AをフィラーワイヤXへの接触を保った状態で移動させる移動機構60とを備える。
【解決手段】フィラーワイヤ供給装置3は、フィラーワイヤXを加熱するフィラーワイヤ加熱装置6を有する。加熱装置6は、フィラーワイヤXの端部近傍部分に接触するローラ51Aと、金属板W1,W2に接触するクランプ5と、ローラ51Aとクランプ5との間にフィラーワイヤX及び金属板W1,W2を介して通電する通電装置30と、ローラ51AとフィラーワイヤXの端部との間の距離が変化するように、ローラ51AをフィラーワイヤXへの接触を保った状態で移動させる移動機構60とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属部材をレーザー溶接する際、レーザー光による被溶接部位にフィラーワイヤを供給するフィラーワイヤ供給装置及び供給方法に関し、レーザー溶接の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の金属部材の溶接方法として、レーザー溶接が利用されつつある。このレーザー溶接は、金属部材表面に向けてレーザー光を照射しつつ該レーザー光を所定の溶接経路に沿ってこれら金属部材に対して移動させることにより、複数の金属部材のレーザー光被照射部位を溶融させて線状の溶接ビードを形成させるものである。
【0003】
ここで、金属部材間には隙間が生じている場合があり、この場合、溶融金属の不足により、金属部材同士が接合されないことがあった。この問題を解決する方法として、レーザー光の被照射部位にその移動に端部が追随するようにフィラーワイヤを供給して該ワイヤを溶融させ、溶融金属を増加させる方法が知られている。
【0004】
溶接時におけるフィラーワイヤの溶融性を向上させるため、フィラーワイヤを加熱することが行われている。具体的には、特許文献1に開示されているように、溶接中、フィラーワイヤの端部近傍部分に通電することによりジュール熱を発生させて加熱する。さらに、詳しく説明すると、溶接時にはフィラーワイヤの端部が金属部材における被溶接部位に接触する。そこで、フィラーワイヤにおける端部近傍部分にプラス電極を接触させ、金属部材にマイナス電極を接触させ、この状態で両電極間に電圧を加える。これにより、金属部材を介してフィラーワイヤにおける端部側部分が通電される。なお、本文献1に係る溶接装置は、レーザー溶接でなく、TIG溶接を行う装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−103040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィラーワイヤを供給しつつ金属部材をレーザー溶接する場合、周囲の温度や金属部材の温度等、種々の条件の変化により溶接状態が変化する。例えばフィラーワイヤの端部に作用する熱量が不足して、フィラーワイヤの溶融が適切に行われず、その結果、被溶接部位においてフィラーワイヤの溶け残りが生じるような場合がある。
【0007】
この問題への対応としては、被溶接部位に加える熱量をコントロールすることが考えられる。具体的には、例えばレーザー出力の変更や、溶接速度(レーザー光の移動速度)の変更である。しかし、レーザー出力の変更は、金属材に形成される溶融穴部の深さ等に大きな影響を与える。また、溶接速度の変更は、生産速度に影響を与える。
【0008】
そこで、本発明は、レーザー溶接状態に悪影響を与えることなく、フィラーワイヤの溶融を良好に行うことが可能なフィラーワイヤ供給装置及び供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が接触状態で追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給装置であって、前記フィラーワイヤを加熱する加熱手段を有し、前記加熱手段は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と、前記金属部材に接触する第2電極と、前記第1電極と第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電する通電手段と、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極を該フィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させる電極移動手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記被溶接部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像された画像を解析して、前記フィラーワイヤの被溶接部位への浸入状態を解析することにより、金属部材間の連結状態を判定する判定手段とを備え、前記電極移動手段は、該判定手段の判定結果に基づいて、前記第1電極を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記判定手段は、前期撮像手段で撮像された画像に基づいて前記フィラーワイヤの所定以上の曲りを検出したときに、金属部材間の連結状態が良好でないと判定し、前記電極移動手段は、前記判定手段によって連結状態が良好でないと判定されたときは、前記第1電極を前記フィラーワイヤの端部から離れる方向に移動させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記第1電極は、前記フィラーワイヤを移動可能に支持するローラにより構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記フィラーワイヤ供給手段は、前記フィラーワイヤを、前記レーザー光による被溶接部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するようにレーザー光被照射部位よりも後方の位置で供給するものであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、 複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給方法であって、前記フィラーワイヤを通電することにより加熱する加熱工程を有し、前記加熱工程は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と前記金属部材のうちの少なくとも一つに接触する第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電しつつ、所定の状態が成立したときに、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極をフィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
次に、本発明の効果について説明する。
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、レーザー溶接の際、複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に追随するように所定速度でフィラーワイヤが供給される。また、その際、前記フィラーワイヤが加熱手段により通電、加熱される。
【0018】
ここで、フィラーワイヤを所定速度で供給している状態におけるフィラーワイヤの発熱について考える。例えば、第1の電極よりも上流側から長手方向に微小な長さを有する部分(例えば長手方向に長さ1mm分の部分。以下、所定部分という)が所定速度で送られてくると、この所定部分には、第1の電極位置に到達したときから被溶接部位に到達するまでの間、電流が流れることとなる。このとき、所定部分は、その抵抗により、第1の電極位置に到達したときから被溶接部位に到達するまでの間発熱し、徐々に温度が上昇し、端部側ほど温度が高くなる。
【0019】
その場合に、本発明では、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離を変更可能なように構成されている。すなわち、電極移動手段により、前記第1電極を、フィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させて、フィラーワイヤにおける電流が流れる部分(通電部分)の長さを変更可能なように構成している。
【0020】
これによれば、フィラーワイヤにおける所定部分が第1の電極位置に到達したときから被溶接部位に到達するまでの時間、つまり所定部分に対する通電時間が変化し、所定部分の温度上昇量も変化することとなる。例えば、第1電極をフィラーワイヤの端部(先端)から離れる方向に移動させると、所定部分に対する通電時間が長くなり、温度上昇量が大きくなる。その結果、フィラーワイヤの先端温度(溶融池に接触する直前の温度)がより上昇することとなる。これに対し、第1電極をフィラーワイヤの端部に近づく方向に移動させると、通電部分の長さが短くなって、所定部分に対する通電時間が短くなり、温度上昇量が小さくなる。その結果、フィラーワイヤの先端温度(溶融池に接触する直前の温度)の上昇が抑制されることとなる。
【0021】
なお、フィラーワイヤにおける通電部分の長さを変化させると、加熱手段全体としての抵抗が変化するので、加熱手段の出力電圧が一定とした場合、所定部分に流れる電流が変化することとなる。しかし、フィラーワイヤ部分の抵抗値は、通常、このフィラーワイヤに通電するための回路の総抵抗(例えば、フィラーワイヤに接続するためのケーブルの抵抗、溶接対象の金属材の抵抗、溶融池の抵抗、電源装置の抵抗、フィラーワイヤと溶融池との接触抵抗等の総和)よりも十分に小さい。したがって、通電部分の長さを変更したとしても、フィラーワイヤにはほぼ一定の電流が流れる。その結果、フィラーワイヤの所定部分における単位時間当たり発熱は、通電部分の長さに関わらずほぼ一定となる。つまり、フィラーワイヤの先端温度を、通電部分の長さに応じて変更することができる。
【0022】
次に、請求項2に記載の発明によれば、撮像手段で撮像された画像を解析して、フィラーワイヤの被溶接部位への浸入状態を解析することにより、金属部材間の連結状態が判定される。そして、判定手段の判定結果に基づいて、前記第1電極が前記電極移動手段により移動される。これにより、レーザー溶接中、浸入状態に応じた溶接が可能となる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記被溶接部位において前記フィラーワイヤの所定以上の曲りを検出したときに、金属部材間の連結状態が良好でないと判定される。フィラーワイヤに所定以上の曲りが生じているときには、その端部が十分に溶融せず、金属材における溶融していない部分に突き当たっているものと考えられる。つまり、被溶接部位へ供給される熱量の不足により金属部材間の連結状態が良好でないと考えられる。そこで、このような場合、金属部材間の連結状態が良好でないと判定する。そして、このような場合、前記電極移動手段により、前記第1電極が前記フィラーワイヤの端部から離れる方向に移動される。これにより、フィラーワイヤにおける通電部分の長さが長くなって、端部側の温度を現状よりも高くすることができる。その結果、熱量の不足による金属部材の連結の不具合が解消される方向に変化することとなる。
【0024】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記第1電極は、前記フィラーワイヤを移動可能に支持するローラにより構成されているから、フィラーワイヤの移動を支持しつつ、フィラーワイヤに電流を流すことができる。すなわち、一つの部材で電極と支持体とを共用することができ、フィラーワイヤ供給装置を構成する部品を削減することができる。
【0025】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記フィラーワイヤを、前記レーザー光の被照射部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するように前記レーザー光被照射部位よりも後方の位置から供給し、前記フィラーワイヤを、溶融池に接触したときに該溶融池の熱とで溶融するように加熱する場合に、前記各請求項の作用、効果が得られる。すなわち、前記フィラーワイヤを、レーザー光でなく、溶融池の熱とで溶融させる場合においては、フィラーワイヤが十分に加熱されていないと、フィラーワイヤが溶融されない虞がある。しかし、前記各請求項に記載の発明を適用することにより、この問題を良好に解消することができる。
【0026】
また、請求項6に記載の方法発明によれば、請求項1に記載の装置発明において説明した作用、効果が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレーザー溶接装置の外観斜視図である。
【図2】二枚の金属板の溶接部の断面写真である。
【図3】レーザー溶接中における金属板のレーザー光被照射部位及びその近傍の状態を示す斜視図である。
【図4】(a):レーザー溶接中における金属板のレーザー光被照射部位及びその近傍の状態を示す平面図である。(b):(a)図のA−A断面図である。
【図5】(a):図4(b)のB−B断面図、(b):図4(b)のC−C断面図、(c):図4(b)のD−D断面図、(d):図4(b)のE−E断面図、(e):図4(b)のF−F断面図、(f):図4(b)のG−G断面図である。
【図6】溶接開始時にフィラーワイヤの溶融に不具合が生じた場合の一例を説説明するための図4(b)と同断面による説明図である。
【図7】ワイヤ加熱ヘッドの前後方向断面図である。
【図8】ワイヤ加熱ヘッドの横方向断面図(図7のH−H断面図)である。
【図9】レーザー溶接装置の制御ブロック図である。
【図10】溶接時における作用の説明図である(その1)。
【図11】溶接時における作用の説明図である(その2)。
【図12】フィラーワイヤにおける通電部分の長さを変更したときにおける温度上昇量及び先端温度の特性図である。
【図13】フィラーワイヤ加熱装置全体の抵抗の説明図である。
【図14】本実施の形態のその他の例を説明するための図10相当の図である(その1)。
【図15】本実施の形態のその他の例を説明するための図10相当の図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザー溶接方法、及びレーザー溶接装置について説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るレーザー溶接装置1の外観斜視図である。このレーザー溶接装置1は、レーザー光LB(レーザービーム)を発生するレーザーヘッド2と、該レーザーヘッド2からのレーザー光被照射位Lの後方にフィラーワイヤXを供給するフィラーワイヤ供給装置3と、レーザーヘッド2及びフィラーワイヤ供給装置3を支持すると共にワークWに対して移動させる移動装置4とを有している。なお、ワークWとしては、互いに逆方向に膨らんでフランジ同士が上下に重ね合わされた断面ハット状の金属板W1,W2を一例として示している。金属板W1,W2のフランジは複数のクランプ5…5により把持されているが、金属板W1,W2の精度上、対向する面の間に隙間Zが生じている。
【0030】
レーザーヘッド2は、例えばYAGレーザー、炭酸ガスレーザー等の高出力レーザーを利用して構成されていると共に、レーザー出力が可変とされている。レーザー光の焦点位置は可変であるが、本実施の形態においては上側金属板W1の上面に設定されている。
【0031】
フィラーワイヤ供給装置3は、フィラーワイヤXが巻回されたワイヤロール12と、モータ(図示せず)により駆動され、該ワイヤロール12からフィラーワイヤXを繰り出す繰り出しローラ13と、レーザー光LBの被照射部位Lの近傍に配置されたワイヤ供給ノズル11と、該ノズル11の後部に設けられ、フィラーワイヤXを加熱するフィラーワイヤ加熱ヘッド40と、前記繰り出しローラ13とフィラーワイヤ加熱ヘッド40との間に設けられ、前記繰り出しローラ13により繰り出されたフィラーワイヤXを前記加熱ヘッド40まで誘導するチューブ14とを有している。モータは、回転速度の制御が可能なサーボモータにより構成され、これにより、被溶接部位(本実施の形態においては後述する溶融池WYが相当する)へのワイヤXの供給量が調整可能になっている。
【0032】
移動装置4は、前記レーザーヘッド2及びフィラーワイヤ供給装置3が取り付けられた支持部材21と、該支持部材21の下端部に取り付けられた台状部材22と、工場床等に配設され、前記台状部材22を摺動可能に支持するレール部材23と、前記台状部材22をレール部材23に沿って移動させる移動機構(図示せず)とを有している。このように移動させる移動機構は公知のものにより種々構成可能であり説明は省略するが、駆動源は回転速度の制御が可能なサーボモータ(図示せず)により構成され、これによりレーザーヘッド11及びフィラーワイヤ供給装置3のワークWに対する移動速度が調整可能になっている。
【0033】
また、レーザー溶接装置1は、フィラーワイヤXを所定温度に加熱するフィラーワイヤ加熱装置6を有している。このフィラーワイヤ加熱装置6は、フィラーワイヤXの端部側に通電することにより、該ワイヤXに生じるジュール熱で該ワイヤXを加熱するものであり、加熱電源装置31と、前述の加熱ヘッド40と、加熱電源装置31と加熱ヘッド40とを接続する加熱ヘッド接続ケーブル32と、該加熱電源装置31と前記複数のクランプ5…5の一つとを接続するクランプ接続ケーブル33とを有し、加熱電源装置31から流れる電流が、ノズル接続ケーブル32、加熱ヘッド40、フィラーワイヤX、金属板W1,W2、クランプ5、クランプ接続ケーブル33を介して加熱電源装置31に戻るようになっている。ここで、前記所定温度は、フィラーワイヤXの端部が後述する溶融池WYに接触したときに該溶融池WY(溶融金属Wy)の熱とで溶融する温度に設定されている。フィラーワイヤXを所定温度に加熱するための電流値については実験等を行って導けばよい。
【0034】
図2は、隙間Zが生じた二枚の金属板W1,W2をフィラーワイヤXを供給しながら溶接した場合に、良好な溶接強度が得られたワークについての幅方向断面写真(一例)である。この写真からわかるように、二枚の金属板W1,W2は溶融金属Wyが固化して形成されたビードWBを介して連結される。また、このビードWBの幅方向左右には、上下の金属板W1,W2のそれぞれに金属組織変化が生じた熱影響部WC1,WC2(ビードWBの左右において白っぽく変色している間の部分)が存在している。なお、図3は、一例であり、上下の金属板W1,W2の板厚がそれぞれ1.6mm、隙間Zが1.3mmのものである。
【0035】
ここで、このような構造は、レーザー光LBにより溶融された上側の金属板W1及びフィラーワイヤXの溶融金属が、下側金属板W2まで垂下して上下の金属板W1,W2を連結し、この溶融金属が冷却、固化してビードWBを形成することにより形成される。また、熱影響部WC1,WC2は、溶融金属の熱が金属板W1,W2の幅方向に伝達されることにより形成される。
【0036】
ところで、本願発明者の知見によれば、フィラーワイヤをレーザー光で溶融させるように構成した場合、フィラーワイヤの溶融にレーザーのエネルギーが消費されて例えば上側の金属板の溶融が不十分になり、その結果、フィラーワイヤの溶融金属も下方へ垂下できず、上下の金属板が溶融金属により良好に連結されないことがある。そこで、本実施の形態においては、フィラーワイヤをレーザー光で溶融させるのでなく、以下のような方法により溶融させるようにしている。
【0037】
まず、図3により溶接方法の概要について説明すると、上下に重ね合わされた状態で対向する面の間に隙間Zが生じた平板状の二枚の金属板W1,W2のうちの上側の金属板W1表面に向けてレーザー光LBを照射しつつ該レーザー光LBを溶接経路Rに沿ってこれら二枚の金属W1,W2板に対して相対的に移動させ、これにより、上側の金属板W1のレーザー光被照射部位Lを溶融させて上下に貫通する溶融穴部WKを形成すると共に、これらの溶融金属が先に形成された溶融穴部に貯留されてなる溶融池WYを溶接経路R後方に形成させる。そして、溶融池WYの熱とで溶融するように加熱されたフィラーワイヤXを、端部が前記溶融池WYにおける溶融穴部WKの後方近傍部位(該部位の具体的な位置については後述する)に接触するように該溶融池WYの後方から供給し、これにより、フィラーワイヤXの端部を溶融させて溶融池WYに溶融金属を追加供給する。
【0038】
図4、図5を参照しつつ詳しく説明すると、まず、図4(a),(b)、図5(a)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光LBの中心LBcの前方近傍では、上側の金属板W1におけるレーザー光中心LBc近傍の金属が溶融され、溶融金属Wyが生成されている。また、溶融金属Wyの周囲には、該溶融金属Wyから伝達される熱により金属組織変化が生じた熱影響部WC1が生じている。WKは、レーザー光LBにより金属がプラズマ状態となり、その圧力により溶融金属Wyを周囲に押しやって形成された溶融穴部(キーホール)であり、この図にはその前部があらわれている。
【0039】
図4(b)、図5(b)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBc位置においては、溶融穴部WKは上側の金属板W1を貫通して下側の金属板W2に達している。そして、下側の金属板W2においても、レーザー光中心LBc近傍の金属が溶融され、溶融金属Wyが生成されている。上側の金属板W1の溶融金属Wyは重力により下側金属板W2側へ垂下し始めている。下側金属板W2の溶融金属Wyの周囲に熱影響部WC2が生じている。
【0040】
図4(b)、図5(c)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBcの後方近傍では、上側金属板W1の溶融金属Wyが重力によりさらに下方へ垂下しているものの、溶融金属Wyには表面張力により塊化作用が生じているので、上側金属板W1と下側金属板W2とが連結されるに至っていない。
【0041】
図4(b)、図5(d)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBcよりも後方位置においては、溶融金属Wyが、先に形成されていた溶融穴部に貯留されることにより溶融池WYが形成されている。
【0042】
また、この図4(b)、図5(d)に示すように、本実施の形態においては、前述のように溶融池WYの熱とで溶融するように加熱されたフィラーワイヤXが、溶融池WYの後方からその端部が該溶融池WYにおける溶融穴部WKの後方近傍部位に接触するように供給され、該ワイヤXの端部が溶融して溶融金属Wy′が生成される。そして、この新たに生成された溶融金属Wy′が溶融池WY内に供給されることにより、もとから存在していた溶融池WY内の溶融金属Wyが下方に押しやられて、該溶融金属Wyの隙間Zを越えた下方への垂下が促進され、上側の金属板W1と下側の金属板W2とが溶融金属Wy,Wy′により連結されることとなる。そして、図4(b)、図5(e)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBcよりもさらに後方位置においては、溶融池WYの溶融金属Wyが下側から固化し始め、図5(f)に示すように、さらに後方においては、溶融池WYの溶融金属が上から下まで全て固化し、図2に示すような断面の被溶接部位が形成されることとなる。
【0043】
ここで、フィラーワイヤXの供給条件等について詳しく説明すると、図3、図4(a),(b)に示すように、該フィラーワイヤXは、矢印β(図4(b)に記載)で示すように、端部側が溶接経路Rに沿いかつ前下がりに傾斜した状態で溶融池WYに接触するように供給される。より詳しくは、フィラーワイヤXにおける上側金属板W1の上面と交差する部位の前端位置が、レーザー光中心LBcから溶接経路R後方の距離Dxの位置となるように供給される。この距離Dxは、(1)フィラーワイヤXの端部側が上側金属板W1の上面位置においてレーザー光LBの照射を受けず、かつ(2)溶融穴部WKの後端位置が溶接中に多少変動した場合でも溶融池WY内にフィラーワイヤXの端部が接触し、さらに(3)レーザー光中心LBcからできるだけ近いという3条件を満たす距離に設定される。なお、この位置が、溶融池WYにおける溶融穴部WKの後方近傍部位を規定する位置である。本実施の形態においては、距離Dxは、例えばレーザー光LBのビーム径の2倍の距離に設定されている。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、フィラーワイヤXは、溶融池WYの熱とで溶融するように加熱された状態でレーザー光被照射部位Lの後方から端部が前記溶融池WYに接触するように供給されることにより、レーザー光LBでなく溶融池WYとの接触により溶融することとなる。したがって、レーザー光LBのエネルギーが、フィラーワイヤXの溶融に消費されずに専ら金属板の溶融に利用されることとなって、上側の金属板W1の溶融穴部WKの形成が安定することとなる。つまり、上側の金属板W1及びフィラーワイヤXの溶融金属Wy(Wy′)を下側金属板W2側へ垂下可能とさせるための構造が安定して形成されることとなる。しかも、溶融池WYとの接触により生成されたフィラーワイヤXの溶融金属Wy′により、もともと溶融池WY内に存在していた溶融金属Wyが下方に押しやられることとなるので、溶融池WYの溶融金属Wyの隙間Zを越えた下方への垂下が促進され、もって上下の金属板W1,W2が安定して良好に連結されることとなる。この溶融金属Wyの下方への垂下の促進の現象は、溶融金属Wyがコーキング材のように隙間Zに注入されてこれを満たすように移動するというように理解することもできる。
【0045】
また、本実施の形態においては、フィラーワイヤXを端部が前記溶融池WYにおける前記溶融穴部WKの後方近傍部位に接触するように供給するから、フィラーワイヤXが溶融池WYの中でも特に高温な溶融金属Wyに接触することとなる。したがって、該ワイヤXの端部が良好に溶融することとなる。
【0046】
ここで、距離Dxを前述のように規定した場合、溶融穴部WKの後端が大きく後退した場合、溶融池WYにフィラーワイヤXの端部が接触しなくなって、溶融池WYとの熱での該ワイヤXの端部の溶融が不可能となるが、本実施の形態においては、フィラーワイヤXは、端部側が溶接経路Rに沿いかつ前下がりに傾斜した状態で溶融池WYに接触するように供給されるから、ワイヤXの端部が溶融池WYにおいて溶融されなかった場合には、端部はレーザー光LBの被照射部位Lに達し、レーザー光LBの照射により溶融されることとなる。すなわち、万一フィラーワイヤXの端部が溶融池WYにおいて溶融しなかった場合でも、フィラーワイヤXが溶融しないのが防止されることとなる。なお、図4(b)に示すように、レーザー光中心LBcとフィラーワイヤXの中心線Xcとの交差位置を、上側の金属板W1よりも下方となるように設定しておけば、レーザー光LBにより、上側の金属板W1の溶融を良好に行いつつフィラーワイヤXの溶融を行うことができる。
【0047】
ところで、本願発明者の知見によれば、解決しようとする課題の欄において説明したように、フィラーワイヤXを供給しつつ金属部材をレーザー溶接する場合、周囲の温度や金属部材の温度等、種々の条件の変化により溶接状態が変化する。例えばフィラーワイヤの端部に作用する熱量が不足して、フィラーワイヤXの溶融が適切に行われず、その結果、被溶接部位においてフィラーワイヤXの溶け残りが生じるような場合がある。
【0048】
そこで、本実施の形態のフィラーワイヤ供給装置3では、複数の金属部材の被溶接部位にフィラーワイヤXを供給しながらレーザー溶接する場合に、フィラーワイヤXの溶融を溶接開始時から良好に行い、もってレーザー溶接状態を安定させることが可能なように構成している。
【0049】
詳しく説明すると、図7、図8に示すように、本実施の形態のフィラーワイヤ供給装置3では、フィラーワイヤ加熱装置6のワイヤ加熱ヘッド40が、箱状の筐体41と、筐体41内に収容され、フィラーワイヤXの端部近傍部分に接触する上下一対のローラ51A,51Bと、このローラ51A,51BをフィラーワイヤXの長手方向に沿って移動させる移動機構60とを有している。
【0050】
ローラ51A,51Bは、その側方で、筐体41内で前記移動機構60によりフィラーワイヤの長手方向に移動可能に支持された一対の支持部材52,52に、支持軸53A,53Bを介して回動可能に支持されている。支持部材52,52の上部間には、第1ローラ51A,51Bの上方において絶縁材54を介して電極55が取り付けられ、電極55は上側のローラ51Aに接触している。電極55には、加熱ヘッド接続ケーブル32が接続されている。第1ケーブル32における筐体41内の部分は、支持部材52,52等の移動に支障を生じないように十分な長さを有し、かつ下方に垂れ下がれないための処置が施されている。電極55は、例えば炭素材等により構成されている。
【0051】
上側のローラ51Aは、金属材により形成され、下側のローラ51Bはセラミックスにより形成されている。上側のローラ51Aは、支持軸53Aに対して絶縁材56を介して固定されている。
【0052】
上側の支持軸53Aは、回転駆動可能に構成されている。詳しく説明すると、上側の支持軸53Aの一端に、ギヤ57が固設されると共に、一方の支持部材52に、このギヤ57に噛み合うギヤ58を駆動軸59aの端部に備えたモータ59が取り付けられている。モータ59の回転は、後述するコントロールユニット100により制御される。
【0053】
下側のローラ51Bの支持軸53Bは、支持部材52に対して所定範囲で上下に移動可能に支持されると共に、図示しない付勢手段を介して上側のローラ51A方向に付勢されている。これにより、上側のローラ51Aと下側のローラ51BとでフィラーワイヤXが上下から挟持される。
【0054】
移動機構60は、筐体41の上壁及び下壁の内面における支持部材52,52の上方及び下方となる位置で、前後に延び、支持部材52,52を前後方向に摺動可能に支持するレール61,61,62,62を有している。筐体41の上壁及び下壁の内面におけるレール61,61,62,62の左右には、前後に延びるラック63,63,64,64が設けられている。一方の支持部材52の下部には両軸型のモータ65が固定され、その駆動軸65aは支持部材52,52を貫通して左右に延び、かつ両端部に下側のラック64,64に噛み合うギヤ66,66が取り付けられている。また、支持部材52,52の上部側には、該部材52,52を貫通して左右に延び、かつ該部材52,52に回動可能に支持される回転軸67が設けられている。この回転軸67の両端部には、上側のラック63,63に噛み合うギヤ68,68が取り付けられている。回転軸67及び前記モータ65の駆動軸65aの一端部にはそれぞれギヤ69,70が取り付けられると共に、これらのギヤ69,70間にはベルト71が巻き掛けられている。上部側のラック61、ギヤ68,69と、下部側のラック64、ギヤ66,70とは、同構造とされている。このような構成によれば、モータ65を作動させると、上下のギヤ68,68,69,69は、ラック63,63,64,64上で同速度で回転する。支持部材62,62は、レール61,61,62,62により支持されて、同姿勢を保ちつつ、フィラーワイヤXの長手方向に移動する。そして、支持部材62,62に支持された上側ローラ51AのフィラーワイヤXに対する接触位置が変化し、その結果、フィラーワイヤXに対する通電長が変化することとなる。
【0055】
図9に示すように、本実施の形態に係るレーザー溶接装置1は、溶接制御を行うコントロールユニット100と、前記移動装置4の支持部材21に固定され、前記ワークWの被溶接部位及びその近傍を上方から撮像する撮像装置110とを備えている。
【0056】
撮像装置110は、例えば所定周期毎に画像を取得可能な(動画を取得可能な)CCDカメラにより構成され、取得された画像はその都度コントロールユニット100に出力される。なお、移動装置4の支持部材21には、上側の金属板W1におけるレーザー光被照射部位L及びその近傍を照明するランプ9が設けられている。このランプ9は、溶接経路Rを挟んで撮像装置110とは反対側に配設され、前記金属板W1におけるレーザー光被照射部位L及びその近傍を斜め上方から照明している。また、このランプ9としては例えばキセノンランプが使用可能である。
【0057】
コントロールユニット100は、レーザーヘッド2(レーザー光)が両金属板W1,W2に対して所定速度で移動するように、移動装置4のモータ24に回転速度制御信号を出力する。
【0058】
また、コントロールユニット100は、フィラーワイヤ供給装置10のモータ15に、フィラーワイヤXを所定供給速度で供給するように、回転速度制御信号を出力する。
【0059】
また、コントロールユニット100は、溶接実行時、ワイヤ加熱ヘッド40の第1ローラ51A,51B用のローラ駆動用モータ59に、フィラーワイヤXを前記ワイヤ供給用のモータ15による供給と同じ速度で供給するように、回転速度制御信号を出力する。
【0060】
また、コントロールユニット100は、溶接開始時、溶接開始信号をフィラーワイヤ加熱電源装置31に出力する。
【0061】
また、コントロールユニット100は、溶接開始後、撮像装置110から画像が入力される都度画像を解析すると共に、その解析結果に基づいて、ローラ移動用モータ65を駆動する。詳しく説明すると、画像を解析した結果、図6に示すように、フィラーワイヤXの曲がりや、ノズル11の変位が検出された場合、ローラ51A,51Bが端部(先端(以下、適宜、説明便宜上、端部という用語に代えて先端という用語を用いる。))から離れる方向に移動するようにローラ移動用モータ65を駆動する。そして、その後の画像を順次解析した結果、フィラーワイヤXの曲がりや、ノズル11の変位が検出されなくなった場合、ローラ51A,51Bを当初位置に戻すようにローラ移動用モータ65を駆動する。
【0062】
次に、本実施の形態のフィラーワイヤ供給装置の作用について説明する。
【0063】
まず、コントロールユニット100に対して例えば溶接開始操作スイッチ等を介して溶接開始指示が入力されると、コントロールユニット100は、レーザーヘッド2、移動装置用モータ24、フィラーワイヤ供給装置用モータ15、ローラ駆動用モータ59、ローラ移動用モータ65、及びフィラーワイヤ加熱電源装置31をそれぞれ所定の条件で同時に作動させる。前記所定の条件は各装置毎に予め設定され、あるいは溶接開始前に設定される。
【0064】
フィラーワイヤXの供給が開始して、図10に示すようにフィラーワイヤXの端部が金属板W1の溶融池WY(被溶接部位)に接触すると、加熱電源装置31のプラス端子から、加熱ヘッド接続ケーブル32,電極55、上側のローラ51A(特許請求の範囲における第1電極に相当する),フィラーワイヤX、金属板W1,W2、クランプ5(特許請求の範囲における第2電極に相当する)、クランプ接続ケーブル33を介してマイナス端子に戻る電流ルートが形成される(つまり通電される)。したがって、フィラーワイヤXにおける上側のローラ51Aと接触した部分よりも端部側の部分にジュール熱が発生し、当該部分が加熱される。したがって、溶融池WYに供給されたときにおけるフィラーワイヤXの溶融が促進されることとなる。
【0065】
一方、このようにフィラーワイヤXを供給しながらレーザー溶接しているときに、コントロールユニット100により、撮像装置110から入力される画像の解析結果に基づいて溶接状態が良好でないことが検出されたときは、以下のように処理が行われる。
【0066】
例えば、画像を解析した結果、図11に示すようにフィラーワイヤXの端部側の曲がりや、ノズル11の変位が検出された場合、フィラーワイヤXの端部側が十分に溶融せずに、前述の図6のように、金属板W1,W2における溶融していない部分に突き当たっているものと考えられる。つまり、被溶接部位へ供給される熱量の不足により上下の金属板W1,W2間の連結状態が良好でないと考えられる。
【0067】
この場合、ローラ51A,51Bが仮想線で示すように端部(先端)から離れる方向に移動するようにローラ移動用モータ65が駆動される。例えば、図11に示すように先端から離れる方向にΔL移動させる。こうすることにより、フィラーワイヤXにおける電流が流れる部分の長さがL1からL2(L1+ΔL)に長くなる。したがって、後述するようにフィラーワイヤXの端部の温度の上昇量が増加することとなる。その結果、熱量の不足による金属板W1,W2の連結の不具合が解消される。
【0068】
ここで、フィラーワイヤXを所定速度で供給している状態におけるフィラーワイヤXの発熱は以下のようになる。例えば、ローラ51A(第1の電極)よりも上流側から長手方向に微小な長さを有する任意の一部分(以下、所定部分xa(図面には符号なし)という)が所定速度で送られてきたものとすると、この所定部分xaには、ローラ51A位置に到達したときから溶融池WYに到達するまでの所定時間、電流が流れることとなる。この所定時間の間、所定部分xaは、その抵抗により発熱して徐々に温度が上昇し、先端側ほど温度が高くなる。ここで、前記所定時間は、フィラーワイヤXにおける通電部分(フィラーワイヤXにおけるローラ51Aに接している位置と、フィラーワイヤXの先端との間の部分(被溶接部位との接触部))の長さを前記所定速度で除した時間となる。
【0069】
そして、図10に示すようにフィラーワイヤXを所定速度で送っている状態において、図11のようにローラ51Aを例えばワイヤXの先端から離れる方向にΔL移動させると、フィラーワイヤXにおける通電部分の長さもL1からL2(L1+ΔL)に長くなる。したがって、所定部分xaに対する通電時間が長くなり、その結果、図12(a)に示すように、所定部分xaの温度上昇量も前記通電部分の長さの変化に対応してΔT1からΔT2に大きくなる。その結果、図12(b)に示すように、フィラーワイヤXの先端温度(溶融池WYに接触する直前の温度)は、例えばワイヤXが加熱される前をT0とした場合、通電部分の長さがL1のときはT1に上昇し、通電部分の長さがL2のときは、T1よりも(ΔT2−ΔT1)分高いT2まで上昇することとなる。すなわち、ローラ51Aを、フィラーワイヤXの先端との間の距離が変化するように該ワイヤXの長手方向に移動させることにより、フィラーワイヤXの先端温度を任意に制御することができる。なお、フィラーワイヤXの材質が例えば鉄である場合は、ワイヤXの先端温度が例えば融点よりも若干低い1400度程度となるように制御することにより、溶融池WYにフィラーワイヤXの端部が接触したときにおける安定かつ良好な溶融性を確保することができる。
【0070】
なお、フィラーワイヤXの通電部分の長さを変化させると、フィラーワイヤ加熱装置全体としての回路抵抗が変化するので、通電電流が変化する。しかし、フィラーワイヤXの通電部分の抵抗値RXは、このフィラーワイヤXに通電するための回路の総抵抗RO(図13に示すように、フィラーワイヤXに接続するためのケーブル32,33の抵抗RL1,RL2、溶接対象の金属板W1,W2部分の抵抗RP、溶融池WYの抵抗RY、溶融池WYとフィラーワイヤXとの接触抵抗Rt1、フィラーワイヤXとローラ51Aとの接触抵抗Rt2、ローラ51Aと電極55との接触抵抗Rt3、加熱電源装置31の抵抗値RD、フィラーワイヤX部分の抵抗値RXの総和)と比較すると、十分に小さい(RX≪RO)。したがって、電源装置31の出力電圧Vが一定とした場合、通電部分の長さを変更したとしても、総抵抗ROの変動はわずかなものであり、その結果、電流値(=V/RO)の変化もわずかである。つまり、フィラーワイヤXには変更前とほぼ同じ値の電流が流れるので、フィラーワイヤXの所定部分xaにおける単位時間当たり発熱は、通電部分の長さの変化に関わらずほぼ一定となる。
【0071】
一方、このようにローラ51A,51Bを移動させた後において、画像を順次解析した結果、フィラーワイヤXの曲がりや、ノズル11の変位が検出されなくなった場合には、ローラ51A,51Bを、実線で示す当初位置に戻すようにローラ移動用モータ65が駆動される。こうすることにより、フィラーワイヤXにおける電流が流れる部分の長さが短くなる。したがって、フィラーワイヤXの端部の温度が低下することとなる。
【0072】
以上、説明したように本実施の形態によれば、フィラーワイヤXに電流を流す部分(通電部分)の長さを変化させて、フィラーワイヤXの端部の温度を制御することにより、金属板W1,W2の連結状態が良好となるように改善することができる。
【0073】
また、撮像装置110で撮像された画像を解析して、フィラーワイヤXの溶融池WYを含む溶融池WY(被溶接部位)への浸入状態を解析することにより、金属板W1,W2間の連結状態が判定される。そして、判定結果に基づいて、ローラ51Aが移動される。これにより、レーザー溶接中、浸入状態に応じた溶接が可能となる。
【0074】
また、フィラーワイヤXを移動可能に支持するローラ51A,51Bが、フィラーワイヤXの端部近傍部位に通電するための電極(特許請求の範囲における第1電極)を構成しているから、フィラーワイヤXの移動を支持しつつ、フィラーワイヤXに電流を長すことができる。すなわち、一つの部材で電極と支持体とを共用することができ、フィラーワイヤ供給装置3を構成する部品を削減することができる。
【0075】
(その他の実施の形態)
以上説明した実施形態は、本発明を実施するための一態様であり、これ以外にも種々の態様で実現可能である。
【0076】
すなわち、前記実施形態では、撮像装置110の撮像画像に基づいてフィラーワイヤXの先端側の曲がりや、ノズル11の変位が検出されたときに、ローラ51A,51Bを移動させるように構成したが、図14に示すように、ワイヤ加熱ヘッドの筐体41内に、ワイヤの供給速度を計測可能な速度計70を配置し、ワイヤの供給速度が所定速度よりも遅くなったことが検出されたときに、前記図11のように、ローラ51A,51Bを移動させてもよい。供給速度が所定速度よりも遅くなったときには、ワイヤXの端部が金属板W1,W2に当接して供給が阻害されている、例えば、フィラーワイヤXの先端側に曲がり等が生じていることが考えられるので、これを検出するものである。なお、速度計70は、例えばノズル11の後端近傍においてフィラーワイヤXに摺動するローラ71を備え、このローラ71の回転速度を検出することにより構成することができる。
【0077】
なお、図15に示すように構成することもできる。すなわち、フィラーワイヤ加熱ヘッド40を、レーザーヘッド2に対して相対回転可能にブラケット2A,40Aを介して連結すると共に、これらのブラケット2A,40A同士のなす角度を検出する角度センサ80を設ける。そして、角度センサ80で所定以上の角度変動が検出されたときに、前記図11のように、ローラ51A,51Bを移動させる。所定以上の角度変動が検出されたときには、ワイヤXの端部が金属板W1,W2に当接して供給が阻害されている、つまり、フィラーワイヤXの先端側に曲がり等が生じていることが考えられるので、これを検出するのである。
【0078】
また、図14、図15の例以外にも、変位した場合にスリーブ11に生じる反力を検出し、この検出された反力が所定以上の大きさのときに、図11のように、ローラを移動させるようにしてもよい。
【0079】
前記実施形態では、ローラ51Aを、フィラーワイヤXに接触して通電する電極として利用したが、ローラはワイヤ支持手段としてのみ利用すると共に、電極を別途設け、この電極をフィラーワイヤの長手方向に沿って移動させるようにしてもよい。この場合、電極を移動させる移動機構は、前述の移動機構60と同様のもので構成することができる。例えば、前記支持部材52に電極を固定し、移動機構60により支持部材52を移動させることにより、電極を移動させることができる。
【0080】
また、前記実施形態における移動機構60は、特許請求の範囲における電極移動手段の一実施態様例であり、ローラ51A,51Bをフィラーワイヤの長手方向に移動させることができる限り、種々の態様のものが利用可能である。
【0081】
なお、前記実施の形態では、所定の条件が成立したときにローラ51A(電極)を図10の当初位置から、図11に示す位置までフィラーワイヤXの先端から遠ざかるように移動させたが、当初位置を図10の当初位置と図11の位置との中間位置として、電極55を先端に近づくことが可能なように構成してもよい。この場合、例えばフィラーワイヤXが加熱され過ぎたような場合に、フィラーワイヤXの加熱を抑制することができる。
【0082】
前記実施形態では、フィラーワイヤXを、レーザー光LBによる被溶接部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するようにレーザー光被照射部位よりも後方の位置に供給し、フィラーワイヤXを、溶融池に接触したときに該溶融池の熱とで溶融させる場合について説明したが、本発明は、レーザー光被照射部位よりも後方に限らず、他の方向からフィラーワイヤを供給し、このフィラーワイヤの端部にレーザー光を照射することにより、該フィラーワイヤを溶融する場合にも適用可能である。すなわち、予めフィラーワイヤを加熱しておくことによりレーザー光による溶融負荷が減少すると共に、フィラーワイヤの溶融性が向上するという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、レーザー溶接状態に悪影響を与えることなく、フィラーワイヤの溶融を良好に行うことが可能なフィラーワイヤ供給装置及び供給方法を提供することができる。したがって、自動車産業の他、金属部材の溶接が必要となる産業において広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
1 レーザー溶接装置
3 フィラーワイヤ供給装置
5 クランプ(第2電極)
6 フィラーワイヤ加熱装置(加熱手段)
11 ノズル
31 フィラーワイヤ加熱電源装置(通電手段)
40 フィラーワイヤ加熱ヘッド
51A 第1ローラ(第1電極)
60 移動機構(電極移動手段)
100 コントロールユニット(判定手段)
110 撮像装置(撮像手段)
L レーザー光被照射部位
LB レーザー光
R 溶接経路
X フィラーワイヤ
W1 上側の金属板
W2 下側の金属板
WK 溶融穴部
WY 溶融池
Wy 溶融金属
Z 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属部材をレーザー溶接する際、レーザー光による被溶接部位にフィラーワイヤを供給するフィラーワイヤ供給装置及び供給方法に関し、レーザー溶接の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の金属部材の溶接方法として、レーザー溶接が利用されつつある。このレーザー溶接は、金属部材表面に向けてレーザー光を照射しつつ該レーザー光を所定の溶接経路に沿ってこれら金属部材に対して移動させることにより、複数の金属部材のレーザー光被照射部位を溶融させて線状の溶接ビードを形成させるものである。
【0003】
ここで、金属部材間には隙間が生じている場合があり、この場合、溶融金属の不足により、金属部材同士が接合されないことがあった。この問題を解決する方法として、レーザー光の被照射部位にその移動に端部が追随するようにフィラーワイヤを供給して該ワイヤを溶融させ、溶融金属を増加させる方法が知られている。
【0004】
溶接時におけるフィラーワイヤの溶融性を向上させるため、フィラーワイヤを加熱することが行われている。具体的には、特許文献1に開示されているように、溶接中、フィラーワイヤの端部近傍部分に通電することによりジュール熱を発生させて加熱する。さらに、詳しく説明すると、溶接時にはフィラーワイヤの端部が金属部材における被溶接部位に接触する。そこで、フィラーワイヤにおける端部近傍部分にプラス電極を接触させ、金属部材にマイナス電極を接触させ、この状態で両電極間に電圧を加える。これにより、金属部材を介してフィラーワイヤにおける端部側部分が通電される。なお、本文献1に係る溶接装置は、レーザー溶接でなく、TIG溶接を行う装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−103040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、フィラーワイヤを供給しつつ金属部材をレーザー溶接する場合、周囲の温度や金属部材の温度等、種々の条件の変化により溶接状態が変化する。例えばフィラーワイヤの端部に作用する熱量が不足して、フィラーワイヤの溶融が適切に行われず、その結果、被溶接部位においてフィラーワイヤの溶け残りが生じるような場合がある。
【0007】
この問題への対応としては、被溶接部位に加える熱量をコントロールすることが考えられる。具体的には、例えばレーザー出力の変更や、溶接速度(レーザー光の移動速度)の変更である。しかし、レーザー出力の変更は、金属材に形成される溶融穴部の深さ等に大きな影響を与える。また、溶接速度の変更は、生産速度に影響を与える。
【0008】
そこで、本発明は、レーザー溶接状態に悪影響を与えることなく、フィラーワイヤの溶融を良好に行うことが可能なフィラーワイヤ供給装置及び供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が接触状態で追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給装置であって、前記フィラーワイヤを加熱する加熱手段を有し、前記加熱手段は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と、前記金属部材に接触する第2電極と、前記第1電極と第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電する通電手段と、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極を該フィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させる電極移動手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記被溶接部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像された画像を解析して、前記フィラーワイヤの被溶接部位への浸入状態を解析することにより、金属部材間の連結状態を判定する判定手段とを備え、前記電極移動手段は、該判定手段の判定結果に基づいて、前記第1電極を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記判定手段は、前期撮像手段で撮像された画像に基づいて前記フィラーワイヤの所定以上の曲りを検出したときに、金属部材間の連結状態が良好でないと判定し、前記電極移動手段は、前記判定手段によって連結状態が良好でないと判定されたときは、前記第1電極を前記フィラーワイヤの端部から離れる方向に移動させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記第1電極は、前記フィラーワイヤを移動可能に支持するローラにより構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、前記フィラーワイヤ供給手段は、前記フィラーワイヤを、前記レーザー光による被溶接部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するようにレーザー光被照射部位よりも後方の位置で供給するものであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、 複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給方法であって、前記フィラーワイヤを通電することにより加熱する加熱工程を有し、前記加熱工程は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と前記金属部材のうちの少なくとも一つに接触する第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電しつつ、所定の状態が成立したときに、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極をフィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
次に、本発明の効果について説明する。
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、レーザー溶接の際、複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に追随するように所定速度でフィラーワイヤが供給される。また、その際、前記フィラーワイヤが加熱手段により通電、加熱される。
【0018】
ここで、フィラーワイヤを所定速度で供給している状態におけるフィラーワイヤの発熱について考える。例えば、第1の電極よりも上流側から長手方向に微小な長さを有する部分(例えば長手方向に長さ1mm分の部分。以下、所定部分という)が所定速度で送られてくると、この所定部分には、第1の電極位置に到達したときから被溶接部位に到達するまでの間、電流が流れることとなる。このとき、所定部分は、その抵抗により、第1の電極位置に到達したときから被溶接部位に到達するまでの間発熱し、徐々に温度が上昇し、端部側ほど温度が高くなる。
【0019】
その場合に、本発明では、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離を変更可能なように構成されている。すなわち、電極移動手段により、前記第1電極を、フィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させて、フィラーワイヤにおける電流が流れる部分(通電部分)の長さを変更可能なように構成している。
【0020】
これによれば、フィラーワイヤにおける所定部分が第1の電極位置に到達したときから被溶接部位に到達するまでの時間、つまり所定部分に対する通電時間が変化し、所定部分の温度上昇量も変化することとなる。例えば、第1電極をフィラーワイヤの端部(先端)から離れる方向に移動させると、所定部分に対する通電時間が長くなり、温度上昇量が大きくなる。その結果、フィラーワイヤの先端温度(溶融池に接触する直前の温度)がより上昇することとなる。これに対し、第1電極をフィラーワイヤの端部に近づく方向に移動させると、通電部分の長さが短くなって、所定部分に対する通電時間が短くなり、温度上昇量が小さくなる。その結果、フィラーワイヤの先端温度(溶融池に接触する直前の温度)の上昇が抑制されることとなる。
【0021】
なお、フィラーワイヤにおける通電部分の長さを変化させると、加熱手段全体としての抵抗が変化するので、加熱手段の出力電圧が一定とした場合、所定部分に流れる電流が変化することとなる。しかし、フィラーワイヤ部分の抵抗値は、通常、このフィラーワイヤに通電するための回路の総抵抗(例えば、フィラーワイヤに接続するためのケーブルの抵抗、溶接対象の金属材の抵抗、溶融池の抵抗、電源装置の抵抗、フィラーワイヤと溶融池との接触抵抗等の総和)よりも十分に小さい。したがって、通電部分の長さを変更したとしても、フィラーワイヤにはほぼ一定の電流が流れる。その結果、フィラーワイヤの所定部分における単位時間当たり発熱は、通電部分の長さに関わらずほぼ一定となる。つまり、フィラーワイヤの先端温度を、通電部分の長さに応じて変更することができる。
【0022】
次に、請求項2に記載の発明によれば、撮像手段で撮像された画像を解析して、フィラーワイヤの被溶接部位への浸入状態を解析することにより、金属部材間の連結状態が判定される。そして、判定手段の判定結果に基づいて、前記第1電極が前記電極移動手段により移動される。これにより、レーザー溶接中、浸入状態に応じた溶接が可能となる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記被溶接部位において前記フィラーワイヤの所定以上の曲りを検出したときに、金属部材間の連結状態が良好でないと判定される。フィラーワイヤに所定以上の曲りが生じているときには、その端部が十分に溶融せず、金属材における溶融していない部分に突き当たっているものと考えられる。つまり、被溶接部位へ供給される熱量の不足により金属部材間の連結状態が良好でないと考えられる。そこで、このような場合、金属部材間の連結状態が良好でないと判定する。そして、このような場合、前記電極移動手段により、前記第1電極が前記フィラーワイヤの端部から離れる方向に移動される。これにより、フィラーワイヤにおける通電部分の長さが長くなって、端部側の温度を現状よりも高くすることができる。その結果、熱量の不足による金属部材の連結の不具合が解消される方向に変化することとなる。
【0024】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記第1電極は、前記フィラーワイヤを移動可能に支持するローラにより構成されているから、フィラーワイヤの移動を支持しつつ、フィラーワイヤに電流を流すことができる。すなわち、一つの部材で電極と支持体とを共用することができ、フィラーワイヤ供給装置を構成する部品を削減することができる。
【0025】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記フィラーワイヤを、前記レーザー光の被照射部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するように前記レーザー光被照射部位よりも後方の位置から供給し、前記フィラーワイヤを、溶融池に接触したときに該溶融池の熱とで溶融するように加熱する場合に、前記各請求項の作用、効果が得られる。すなわち、前記フィラーワイヤを、レーザー光でなく、溶融池の熱とで溶融させる場合においては、フィラーワイヤが十分に加熱されていないと、フィラーワイヤが溶融されない虞がある。しかし、前記各請求項に記載の発明を適用することにより、この問題を良好に解消することができる。
【0026】
また、請求項6に記載の方法発明によれば、請求項1に記載の装置発明において説明した作用、効果が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレーザー溶接装置の外観斜視図である。
【図2】二枚の金属板の溶接部の断面写真である。
【図3】レーザー溶接中における金属板のレーザー光被照射部位及びその近傍の状態を示す斜視図である。
【図4】(a):レーザー溶接中における金属板のレーザー光被照射部位及びその近傍の状態を示す平面図である。(b):(a)図のA−A断面図である。
【図5】(a):図4(b)のB−B断面図、(b):図4(b)のC−C断面図、(c):図4(b)のD−D断面図、(d):図4(b)のE−E断面図、(e):図4(b)のF−F断面図、(f):図4(b)のG−G断面図である。
【図6】溶接開始時にフィラーワイヤの溶融に不具合が生じた場合の一例を説説明するための図4(b)と同断面による説明図である。
【図7】ワイヤ加熱ヘッドの前後方向断面図である。
【図8】ワイヤ加熱ヘッドの横方向断面図(図7のH−H断面図)である。
【図9】レーザー溶接装置の制御ブロック図である。
【図10】溶接時における作用の説明図である(その1)。
【図11】溶接時における作用の説明図である(その2)。
【図12】フィラーワイヤにおける通電部分の長さを変更したときにおける温度上昇量及び先端温度の特性図である。
【図13】フィラーワイヤ加熱装置全体の抵抗の説明図である。
【図14】本実施の形態のその他の例を説明するための図10相当の図である(その1)。
【図15】本実施の形態のその他の例を説明するための図10相当の図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザー溶接方法、及びレーザー溶接装置について説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るレーザー溶接装置1の外観斜視図である。このレーザー溶接装置1は、レーザー光LB(レーザービーム)を発生するレーザーヘッド2と、該レーザーヘッド2からのレーザー光被照射位Lの後方にフィラーワイヤXを供給するフィラーワイヤ供給装置3と、レーザーヘッド2及びフィラーワイヤ供給装置3を支持すると共にワークWに対して移動させる移動装置4とを有している。なお、ワークWとしては、互いに逆方向に膨らんでフランジ同士が上下に重ね合わされた断面ハット状の金属板W1,W2を一例として示している。金属板W1,W2のフランジは複数のクランプ5…5により把持されているが、金属板W1,W2の精度上、対向する面の間に隙間Zが生じている。
【0030】
レーザーヘッド2は、例えばYAGレーザー、炭酸ガスレーザー等の高出力レーザーを利用して構成されていると共に、レーザー出力が可変とされている。レーザー光の焦点位置は可変であるが、本実施の形態においては上側金属板W1の上面に設定されている。
【0031】
フィラーワイヤ供給装置3は、フィラーワイヤXが巻回されたワイヤロール12と、モータ(図示せず)により駆動され、該ワイヤロール12からフィラーワイヤXを繰り出す繰り出しローラ13と、レーザー光LBの被照射部位Lの近傍に配置されたワイヤ供給ノズル11と、該ノズル11の後部に設けられ、フィラーワイヤXを加熱するフィラーワイヤ加熱ヘッド40と、前記繰り出しローラ13とフィラーワイヤ加熱ヘッド40との間に設けられ、前記繰り出しローラ13により繰り出されたフィラーワイヤXを前記加熱ヘッド40まで誘導するチューブ14とを有している。モータは、回転速度の制御が可能なサーボモータにより構成され、これにより、被溶接部位(本実施の形態においては後述する溶融池WYが相当する)へのワイヤXの供給量が調整可能になっている。
【0032】
移動装置4は、前記レーザーヘッド2及びフィラーワイヤ供給装置3が取り付けられた支持部材21と、該支持部材21の下端部に取り付けられた台状部材22と、工場床等に配設され、前記台状部材22を摺動可能に支持するレール部材23と、前記台状部材22をレール部材23に沿って移動させる移動機構(図示せず)とを有している。このように移動させる移動機構は公知のものにより種々構成可能であり説明は省略するが、駆動源は回転速度の制御が可能なサーボモータ(図示せず)により構成され、これによりレーザーヘッド11及びフィラーワイヤ供給装置3のワークWに対する移動速度が調整可能になっている。
【0033】
また、レーザー溶接装置1は、フィラーワイヤXを所定温度に加熱するフィラーワイヤ加熱装置6を有している。このフィラーワイヤ加熱装置6は、フィラーワイヤXの端部側に通電することにより、該ワイヤXに生じるジュール熱で該ワイヤXを加熱するものであり、加熱電源装置31と、前述の加熱ヘッド40と、加熱電源装置31と加熱ヘッド40とを接続する加熱ヘッド接続ケーブル32と、該加熱電源装置31と前記複数のクランプ5…5の一つとを接続するクランプ接続ケーブル33とを有し、加熱電源装置31から流れる電流が、ノズル接続ケーブル32、加熱ヘッド40、フィラーワイヤX、金属板W1,W2、クランプ5、クランプ接続ケーブル33を介して加熱電源装置31に戻るようになっている。ここで、前記所定温度は、フィラーワイヤXの端部が後述する溶融池WYに接触したときに該溶融池WY(溶融金属Wy)の熱とで溶融する温度に設定されている。フィラーワイヤXを所定温度に加熱するための電流値については実験等を行って導けばよい。
【0034】
図2は、隙間Zが生じた二枚の金属板W1,W2をフィラーワイヤXを供給しながら溶接した場合に、良好な溶接強度が得られたワークについての幅方向断面写真(一例)である。この写真からわかるように、二枚の金属板W1,W2は溶融金属Wyが固化して形成されたビードWBを介して連結される。また、このビードWBの幅方向左右には、上下の金属板W1,W2のそれぞれに金属組織変化が生じた熱影響部WC1,WC2(ビードWBの左右において白っぽく変色している間の部分)が存在している。なお、図3は、一例であり、上下の金属板W1,W2の板厚がそれぞれ1.6mm、隙間Zが1.3mmのものである。
【0035】
ここで、このような構造は、レーザー光LBにより溶融された上側の金属板W1及びフィラーワイヤXの溶融金属が、下側金属板W2まで垂下して上下の金属板W1,W2を連結し、この溶融金属が冷却、固化してビードWBを形成することにより形成される。また、熱影響部WC1,WC2は、溶融金属の熱が金属板W1,W2の幅方向に伝達されることにより形成される。
【0036】
ところで、本願発明者の知見によれば、フィラーワイヤをレーザー光で溶融させるように構成した場合、フィラーワイヤの溶融にレーザーのエネルギーが消費されて例えば上側の金属板の溶融が不十分になり、その結果、フィラーワイヤの溶融金属も下方へ垂下できず、上下の金属板が溶融金属により良好に連結されないことがある。そこで、本実施の形態においては、フィラーワイヤをレーザー光で溶融させるのでなく、以下のような方法により溶融させるようにしている。
【0037】
まず、図3により溶接方法の概要について説明すると、上下に重ね合わされた状態で対向する面の間に隙間Zが生じた平板状の二枚の金属板W1,W2のうちの上側の金属板W1表面に向けてレーザー光LBを照射しつつ該レーザー光LBを溶接経路Rに沿ってこれら二枚の金属W1,W2板に対して相対的に移動させ、これにより、上側の金属板W1のレーザー光被照射部位Lを溶融させて上下に貫通する溶融穴部WKを形成すると共に、これらの溶融金属が先に形成された溶融穴部に貯留されてなる溶融池WYを溶接経路R後方に形成させる。そして、溶融池WYの熱とで溶融するように加熱されたフィラーワイヤXを、端部が前記溶融池WYにおける溶融穴部WKの後方近傍部位(該部位の具体的な位置については後述する)に接触するように該溶融池WYの後方から供給し、これにより、フィラーワイヤXの端部を溶融させて溶融池WYに溶融金属を追加供給する。
【0038】
図4、図5を参照しつつ詳しく説明すると、まず、図4(a),(b)、図5(a)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光LBの中心LBcの前方近傍では、上側の金属板W1におけるレーザー光中心LBc近傍の金属が溶融され、溶融金属Wyが生成されている。また、溶融金属Wyの周囲には、該溶融金属Wyから伝達される熱により金属組織変化が生じた熱影響部WC1が生じている。WKは、レーザー光LBにより金属がプラズマ状態となり、その圧力により溶融金属Wyを周囲に押しやって形成された溶融穴部(キーホール)であり、この図にはその前部があらわれている。
【0039】
図4(b)、図5(b)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBc位置においては、溶融穴部WKは上側の金属板W1を貫通して下側の金属板W2に達している。そして、下側の金属板W2においても、レーザー光中心LBc近傍の金属が溶融され、溶融金属Wyが生成されている。上側の金属板W1の溶融金属Wyは重力により下側金属板W2側へ垂下し始めている。下側金属板W2の溶融金属Wyの周囲に熱影響部WC2が生じている。
【0040】
図4(b)、図5(c)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBcの後方近傍では、上側金属板W1の溶融金属Wyが重力によりさらに下方へ垂下しているものの、溶融金属Wyには表面張力により塊化作用が生じているので、上側金属板W1と下側金属板W2とが連結されるに至っていない。
【0041】
図4(b)、図5(d)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBcよりも後方位置においては、溶融金属Wyが、先に形成されていた溶融穴部に貯留されることにより溶融池WYが形成されている。
【0042】
また、この図4(b)、図5(d)に示すように、本実施の形態においては、前述のように溶融池WYの熱とで溶融するように加熱されたフィラーワイヤXが、溶融池WYの後方からその端部が該溶融池WYにおける溶融穴部WKの後方近傍部位に接触するように供給され、該ワイヤXの端部が溶融して溶融金属Wy′が生成される。そして、この新たに生成された溶融金属Wy′が溶融池WY内に供給されることにより、もとから存在していた溶融池WY内の溶融金属Wyが下方に押しやられて、該溶融金属Wyの隙間Zを越えた下方への垂下が促進され、上側の金属板W1と下側の金属板W2とが溶融金属Wy,Wy′により連結されることとなる。そして、図4(b)、図5(e)に示すように、溶接経路Rにおけるレーザー光中心LBcよりもさらに後方位置においては、溶融池WYの溶融金属Wyが下側から固化し始め、図5(f)に示すように、さらに後方においては、溶融池WYの溶融金属が上から下まで全て固化し、図2に示すような断面の被溶接部位が形成されることとなる。
【0043】
ここで、フィラーワイヤXの供給条件等について詳しく説明すると、図3、図4(a),(b)に示すように、該フィラーワイヤXは、矢印β(図4(b)に記載)で示すように、端部側が溶接経路Rに沿いかつ前下がりに傾斜した状態で溶融池WYに接触するように供給される。より詳しくは、フィラーワイヤXにおける上側金属板W1の上面と交差する部位の前端位置が、レーザー光中心LBcから溶接経路R後方の距離Dxの位置となるように供給される。この距離Dxは、(1)フィラーワイヤXの端部側が上側金属板W1の上面位置においてレーザー光LBの照射を受けず、かつ(2)溶融穴部WKの後端位置が溶接中に多少変動した場合でも溶融池WY内にフィラーワイヤXの端部が接触し、さらに(3)レーザー光中心LBcからできるだけ近いという3条件を満たす距離に設定される。なお、この位置が、溶融池WYにおける溶融穴部WKの後方近傍部位を規定する位置である。本実施の形態においては、距離Dxは、例えばレーザー光LBのビーム径の2倍の距離に設定されている。
【0044】
以上のような本実施の形態によれば、フィラーワイヤXは、溶融池WYの熱とで溶融するように加熱された状態でレーザー光被照射部位Lの後方から端部が前記溶融池WYに接触するように供給されることにより、レーザー光LBでなく溶融池WYとの接触により溶融することとなる。したがって、レーザー光LBのエネルギーが、フィラーワイヤXの溶融に消費されずに専ら金属板の溶融に利用されることとなって、上側の金属板W1の溶融穴部WKの形成が安定することとなる。つまり、上側の金属板W1及びフィラーワイヤXの溶融金属Wy(Wy′)を下側金属板W2側へ垂下可能とさせるための構造が安定して形成されることとなる。しかも、溶融池WYとの接触により生成されたフィラーワイヤXの溶融金属Wy′により、もともと溶融池WY内に存在していた溶融金属Wyが下方に押しやられることとなるので、溶融池WYの溶融金属Wyの隙間Zを越えた下方への垂下が促進され、もって上下の金属板W1,W2が安定して良好に連結されることとなる。この溶融金属Wyの下方への垂下の促進の現象は、溶融金属Wyがコーキング材のように隙間Zに注入されてこれを満たすように移動するというように理解することもできる。
【0045】
また、本実施の形態においては、フィラーワイヤXを端部が前記溶融池WYにおける前記溶融穴部WKの後方近傍部位に接触するように供給するから、フィラーワイヤXが溶融池WYの中でも特に高温な溶融金属Wyに接触することとなる。したがって、該ワイヤXの端部が良好に溶融することとなる。
【0046】
ここで、距離Dxを前述のように規定した場合、溶融穴部WKの後端が大きく後退した場合、溶融池WYにフィラーワイヤXの端部が接触しなくなって、溶融池WYとの熱での該ワイヤXの端部の溶融が不可能となるが、本実施の形態においては、フィラーワイヤXは、端部側が溶接経路Rに沿いかつ前下がりに傾斜した状態で溶融池WYに接触するように供給されるから、ワイヤXの端部が溶融池WYにおいて溶融されなかった場合には、端部はレーザー光LBの被照射部位Lに達し、レーザー光LBの照射により溶融されることとなる。すなわち、万一フィラーワイヤXの端部が溶融池WYにおいて溶融しなかった場合でも、フィラーワイヤXが溶融しないのが防止されることとなる。なお、図4(b)に示すように、レーザー光中心LBcとフィラーワイヤXの中心線Xcとの交差位置を、上側の金属板W1よりも下方となるように設定しておけば、レーザー光LBにより、上側の金属板W1の溶融を良好に行いつつフィラーワイヤXの溶融を行うことができる。
【0047】
ところで、本願発明者の知見によれば、解決しようとする課題の欄において説明したように、フィラーワイヤXを供給しつつ金属部材をレーザー溶接する場合、周囲の温度や金属部材の温度等、種々の条件の変化により溶接状態が変化する。例えばフィラーワイヤの端部に作用する熱量が不足して、フィラーワイヤXの溶融が適切に行われず、その結果、被溶接部位においてフィラーワイヤXの溶け残りが生じるような場合がある。
【0048】
そこで、本実施の形態のフィラーワイヤ供給装置3では、複数の金属部材の被溶接部位にフィラーワイヤXを供給しながらレーザー溶接する場合に、フィラーワイヤXの溶融を溶接開始時から良好に行い、もってレーザー溶接状態を安定させることが可能なように構成している。
【0049】
詳しく説明すると、図7、図8に示すように、本実施の形態のフィラーワイヤ供給装置3では、フィラーワイヤ加熱装置6のワイヤ加熱ヘッド40が、箱状の筐体41と、筐体41内に収容され、フィラーワイヤXの端部近傍部分に接触する上下一対のローラ51A,51Bと、このローラ51A,51BをフィラーワイヤXの長手方向に沿って移動させる移動機構60とを有している。
【0050】
ローラ51A,51Bは、その側方で、筐体41内で前記移動機構60によりフィラーワイヤの長手方向に移動可能に支持された一対の支持部材52,52に、支持軸53A,53Bを介して回動可能に支持されている。支持部材52,52の上部間には、第1ローラ51A,51Bの上方において絶縁材54を介して電極55が取り付けられ、電極55は上側のローラ51Aに接触している。電極55には、加熱ヘッド接続ケーブル32が接続されている。第1ケーブル32における筐体41内の部分は、支持部材52,52等の移動に支障を生じないように十分な長さを有し、かつ下方に垂れ下がれないための処置が施されている。電極55は、例えば炭素材等により構成されている。
【0051】
上側のローラ51Aは、金属材により形成され、下側のローラ51Bはセラミックスにより形成されている。上側のローラ51Aは、支持軸53Aに対して絶縁材56を介して固定されている。
【0052】
上側の支持軸53Aは、回転駆動可能に構成されている。詳しく説明すると、上側の支持軸53Aの一端に、ギヤ57が固設されると共に、一方の支持部材52に、このギヤ57に噛み合うギヤ58を駆動軸59aの端部に備えたモータ59が取り付けられている。モータ59の回転は、後述するコントロールユニット100により制御される。
【0053】
下側のローラ51Bの支持軸53Bは、支持部材52に対して所定範囲で上下に移動可能に支持されると共に、図示しない付勢手段を介して上側のローラ51A方向に付勢されている。これにより、上側のローラ51Aと下側のローラ51BとでフィラーワイヤXが上下から挟持される。
【0054】
移動機構60は、筐体41の上壁及び下壁の内面における支持部材52,52の上方及び下方となる位置で、前後に延び、支持部材52,52を前後方向に摺動可能に支持するレール61,61,62,62を有している。筐体41の上壁及び下壁の内面におけるレール61,61,62,62の左右には、前後に延びるラック63,63,64,64が設けられている。一方の支持部材52の下部には両軸型のモータ65が固定され、その駆動軸65aは支持部材52,52を貫通して左右に延び、かつ両端部に下側のラック64,64に噛み合うギヤ66,66が取り付けられている。また、支持部材52,52の上部側には、該部材52,52を貫通して左右に延び、かつ該部材52,52に回動可能に支持される回転軸67が設けられている。この回転軸67の両端部には、上側のラック63,63に噛み合うギヤ68,68が取り付けられている。回転軸67及び前記モータ65の駆動軸65aの一端部にはそれぞれギヤ69,70が取り付けられると共に、これらのギヤ69,70間にはベルト71が巻き掛けられている。上部側のラック61、ギヤ68,69と、下部側のラック64、ギヤ66,70とは、同構造とされている。このような構成によれば、モータ65を作動させると、上下のギヤ68,68,69,69は、ラック63,63,64,64上で同速度で回転する。支持部材62,62は、レール61,61,62,62により支持されて、同姿勢を保ちつつ、フィラーワイヤXの長手方向に移動する。そして、支持部材62,62に支持された上側ローラ51AのフィラーワイヤXに対する接触位置が変化し、その結果、フィラーワイヤXに対する通電長が変化することとなる。
【0055】
図9に示すように、本実施の形態に係るレーザー溶接装置1は、溶接制御を行うコントロールユニット100と、前記移動装置4の支持部材21に固定され、前記ワークWの被溶接部位及びその近傍を上方から撮像する撮像装置110とを備えている。
【0056】
撮像装置110は、例えば所定周期毎に画像を取得可能な(動画を取得可能な)CCDカメラにより構成され、取得された画像はその都度コントロールユニット100に出力される。なお、移動装置4の支持部材21には、上側の金属板W1におけるレーザー光被照射部位L及びその近傍を照明するランプ9が設けられている。このランプ9は、溶接経路Rを挟んで撮像装置110とは反対側に配設され、前記金属板W1におけるレーザー光被照射部位L及びその近傍を斜め上方から照明している。また、このランプ9としては例えばキセノンランプが使用可能である。
【0057】
コントロールユニット100は、レーザーヘッド2(レーザー光)が両金属板W1,W2に対して所定速度で移動するように、移動装置4のモータ24に回転速度制御信号を出力する。
【0058】
また、コントロールユニット100は、フィラーワイヤ供給装置10のモータ15に、フィラーワイヤXを所定供給速度で供給するように、回転速度制御信号を出力する。
【0059】
また、コントロールユニット100は、溶接実行時、ワイヤ加熱ヘッド40の第1ローラ51A,51B用のローラ駆動用モータ59に、フィラーワイヤXを前記ワイヤ供給用のモータ15による供給と同じ速度で供給するように、回転速度制御信号を出力する。
【0060】
また、コントロールユニット100は、溶接開始時、溶接開始信号をフィラーワイヤ加熱電源装置31に出力する。
【0061】
また、コントロールユニット100は、溶接開始後、撮像装置110から画像が入力される都度画像を解析すると共に、その解析結果に基づいて、ローラ移動用モータ65を駆動する。詳しく説明すると、画像を解析した結果、図6に示すように、フィラーワイヤXの曲がりや、ノズル11の変位が検出された場合、ローラ51A,51Bが端部(先端(以下、適宜、説明便宜上、端部という用語に代えて先端という用語を用いる。))から離れる方向に移動するようにローラ移動用モータ65を駆動する。そして、その後の画像を順次解析した結果、フィラーワイヤXの曲がりや、ノズル11の変位が検出されなくなった場合、ローラ51A,51Bを当初位置に戻すようにローラ移動用モータ65を駆動する。
【0062】
次に、本実施の形態のフィラーワイヤ供給装置の作用について説明する。
【0063】
まず、コントロールユニット100に対して例えば溶接開始操作スイッチ等を介して溶接開始指示が入力されると、コントロールユニット100は、レーザーヘッド2、移動装置用モータ24、フィラーワイヤ供給装置用モータ15、ローラ駆動用モータ59、ローラ移動用モータ65、及びフィラーワイヤ加熱電源装置31をそれぞれ所定の条件で同時に作動させる。前記所定の条件は各装置毎に予め設定され、あるいは溶接開始前に設定される。
【0064】
フィラーワイヤXの供給が開始して、図10に示すようにフィラーワイヤXの端部が金属板W1の溶融池WY(被溶接部位)に接触すると、加熱電源装置31のプラス端子から、加熱ヘッド接続ケーブル32,電極55、上側のローラ51A(特許請求の範囲における第1電極に相当する),フィラーワイヤX、金属板W1,W2、クランプ5(特許請求の範囲における第2電極に相当する)、クランプ接続ケーブル33を介してマイナス端子に戻る電流ルートが形成される(つまり通電される)。したがって、フィラーワイヤXにおける上側のローラ51Aと接触した部分よりも端部側の部分にジュール熱が発生し、当該部分が加熱される。したがって、溶融池WYに供給されたときにおけるフィラーワイヤXの溶融が促進されることとなる。
【0065】
一方、このようにフィラーワイヤXを供給しながらレーザー溶接しているときに、コントロールユニット100により、撮像装置110から入力される画像の解析結果に基づいて溶接状態が良好でないことが検出されたときは、以下のように処理が行われる。
【0066】
例えば、画像を解析した結果、図11に示すようにフィラーワイヤXの端部側の曲がりや、ノズル11の変位が検出された場合、フィラーワイヤXの端部側が十分に溶融せずに、前述の図6のように、金属板W1,W2における溶融していない部分に突き当たっているものと考えられる。つまり、被溶接部位へ供給される熱量の不足により上下の金属板W1,W2間の連結状態が良好でないと考えられる。
【0067】
この場合、ローラ51A,51Bが仮想線で示すように端部(先端)から離れる方向に移動するようにローラ移動用モータ65が駆動される。例えば、図11に示すように先端から離れる方向にΔL移動させる。こうすることにより、フィラーワイヤXにおける電流が流れる部分の長さがL1からL2(L1+ΔL)に長くなる。したがって、後述するようにフィラーワイヤXの端部の温度の上昇量が増加することとなる。その結果、熱量の不足による金属板W1,W2の連結の不具合が解消される。
【0068】
ここで、フィラーワイヤXを所定速度で供給している状態におけるフィラーワイヤXの発熱は以下のようになる。例えば、ローラ51A(第1の電極)よりも上流側から長手方向に微小な長さを有する任意の一部分(以下、所定部分xa(図面には符号なし)という)が所定速度で送られてきたものとすると、この所定部分xaには、ローラ51A位置に到達したときから溶融池WYに到達するまでの所定時間、電流が流れることとなる。この所定時間の間、所定部分xaは、その抵抗により発熱して徐々に温度が上昇し、先端側ほど温度が高くなる。ここで、前記所定時間は、フィラーワイヤXにおける通電部分(フィラーワイヤXにおけるローラ51Aに接している位置と、フィラーワイヤXの先端との間の部分(被溶接部位との接触部))の長さを前記所定速度で除した時間となる。
【0069】
そして、図10に示すようにフィラーワイヤXを所定速度で送っている状態において、図11のようにローラ51Aを例えばワイヤXの先端から離れる方向にΔL移動させると、フィラーワイヤXにおける通電部分の長さもL1からL2(L1+ΔL)に長くなる。したがって、所定部分xaに対する通電時間が長くなり、その結果、図12(a)に示すように、所定部分xaの温度上昇量も前記通電部分の長さの変化に対応してΔT1からΔT2に大きくなる。その結果、図12(b)に示すように、フィラーワイヤXの先端温度(溶融池WYに接触する直前の温度)は、例えばワイヤXが加熱される前をT0とした場合、通電部分の長さがL1のときはT1に上昇し、通電部分の長さがL2のときは、T1よりも(ΔT2−ΔT1)分高いT2まで上昇することとなる。すなわち、ローラ51Aを、フィラーワイヤXの先端との間の距離が変化するように該ワイヤXの長手方向に移動させることにより、フィラーワイヤXの先端温度を任意に制御することができる。なお、フィラーワイヤXの材質が例えば鉄である場合は、ワイヤXの先端温度が例えば融点よりも若干低い1400度程度となるように制御することにより、溶融池WYにフィラーワイヤXの端部が接触したときにおける安定かつ良好な溶融性を確保することができる。
【0070】
なお、フィラーワイヤXの通電部分の長さを変化させると、フィラーワイヤ加熱装置全体としての回路抵抗が変化するので、通電電流が変化する。しかし、フィラーワイヤXの通電部分の抵抗値RXは、このフィラーワイヤXに通電するための回路の総抵抗RO(図13に示すように、フィラーワイヤXに接続するためのケーブル32,33の抵抗RL1,RL2、溶接対象の金属板W1,W2部分の抵抗RP、溶融池WYの抵抗RY、溶融池WYとフィラーワイヤXとの接触抵抗Rt1、フィラーワイヤXとローラ51Aとの接触抵抗Rt2、ローラ51Aと電極55との接触抵抗Rt3、加熱電源装置31の抵抗値RD、フィラーワイヤX部分の抵抗値RXの総和)と比較すると、十分に小さい(RX≪RO)。したがって、電源装置31の出力電圧Vが一定とした場合、通電部分の長さを変更したとしても、総抵抗ROの変動はわずかなものであり、その結果、電流値(=V/RO)の変化もわずかである。つまり、フィラーワイヤXには変更前とほぼ同じ値の電流が流れるので、フィラーワイヤXの所定部分xaにおける単位時間当たり発熱は、通電部分の長さの変化に関わらずほぼ一定となる。
【0071】
一方、このようにローラ51A,51Bを移動させた後において、画像を順次解析した結果、フィラーワイヤXの曲がりや、ノズル11の変位が検出されなくなった場合には、ローラ51A,51Bを、実線で示す当初位置に戻すようにローラ移動用モータ65が駆動される。こうすることにより、フィラーワイヤXにおける電流が流れる部分の長さが短くなる。したがって、フィラーワイヤXの端部の温度が低下することとなる。
【0072】
以上、説明したように本実施の形態によれば、フィラーワイヤXに電流を流す部分(通電部分)の長さを変化させて、フィラーワイヤXの端部の温度を制御することにより、金属板W1,W2の連結状態が良好となるように改善することができる。
【0073】
また、撮像装置110で撮像された画像を解析して、フィラーワイヤXの溶融池WYを含む溶融池WY(被溶接部位)への浸入状態を解析することにより、金属板W1,W2間の連結状態が判定される。そして、判定結果に基づいて、ローラ51Aが移動される。これにより、レーザー溶接中、浸入状態に応じた溶接が可能となる。
【0074】
また、フィラーワイヤXを移動可能に支持するローラ51A,51Bが、フィラーワイヤXの端部近傍部位に通電するための電極(特許請求の範囲における第1電極)を構成しているから、フィラーワイヤXの移動を支持しつつ、フィラーワイヤXに電流を長すことができる。すなわち、一つの部材で電極と支持体とを共用することができ、フィラーワイヤ供給装置3を構成する部品を削減することができる。
【0075】
(その他の実施の形態)
以上説明した実施形態は、本発明を実施するための一態様であり、これ以外にも種々の態様で実現可能である。
【0076】
すなわち、前記実施形態では、撮像装置110の撮像画像に基づいてフィラーワイヤXの先端側の曲がりや、ノズル11の変位が検出されたときに、ローラ51A,51Bを移動させるように構成したが、図14に示すように、ワイヤ加熱ヘッドの筐体41内に、ワイヤの供給速度を計測可能な速度計70を配置し、ワイヤの供給速度が所定速度よりも遅くなったことが検出されたときに、前記図11のように、ローラ51A,51Bを移動させてもよい。供給速度が所定速度よりも遅くなったときには、ワイヤXの端部が金属板W1,W2に当接して供給が阻害されている、例えば、フィラーワイヤXの先端側に曲がり等が生じていることが考えられるので、これを検出するものである。なお、速度計70は、例えばノズル11の後端近傍においてフィラーワイヤXに摺動するローラ71を備え、このローラ71の回転速度を検出することにより構成することができる。
【0077】
なお、図15に示すように構成することもできる。すなわち、フィラーワイヤ加熱ヘッド40を、レーザーヘッド2に対して相対回転可能にブラケット2A,40Aを介して連結すると共に、これらのブラケット2A,40A同士のなす角度を検出する角度センサ80を設ける。そして、角度センサ80で所定以上の角度変動が検出されたときに、前記図11のように、ローラ51A,51Bを移動させる。所定以上の角度変動が検出されたときには、ワイヤXの端部が金属板W1,W2に当接して供給が阻害されている、つまり、フィラーワイヤXの先端側に曲がり等が生じていることが考えられるので、これを検出するのである。
【0078】
また、図14、図15の例以外にも、変位した場合にスリーブ11に生じる反力を検出し、この検出された反力が所定以上の大きさのときに、図11のように、ローラを移動させるようにしてもよい。
【0079】
前記実施形態では、ローラ51Aを、フィラーワイヤXに接触して通電する電極として利用したが、ローラはワイヤ支持手段としてのみ利用すると共に、電極を別途設け、この電極をフィラーワイヤの長手方向に沿って移動させるようにしてもよい。この場合、電極を移動させる移動機構は、前述の移動機構60と同様のもので構成することができる。例えば、前記支持部材52に電極を固定し、移動機構60により支持部材52を移動させることにより、電極を移動させることができる。
【0080】
また、前記実施形態における移動機構60は、特許請求の範囲における電極移動手段の一実施態様例であり、ローラ51A,51Bをフィラーワイヤの長手方向に移動させることができる限り、種々の態様のものが利用可能である。
【0081】
なお、前記実施の形態では、所定の条件が成立したときにローラ51A(電極)を図10の当初位置から、図11に示す位置までフィラーワイヤXの先端から遠ざかるように移動させたが、当初位置を図10の当初位置と図11の位置との中間位置として、電極55を先端に近づくことが可能なように構成してもよい。この場合、例えばフィラーワイヤXが加熱され過ぎたような場合に、フィラーワイヤXの加熱を抑制することができる。
【0082】
前記実施形態では、フィラーワイヤXを、レーザー光LBによる被溶接部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するようにレーザー光被照射部位よりも後方の位置に供給し、フィラーワイヤXを、溶融池に接触したときに該溶融池の熱とで溶融させる場合について説明したが、本発明は、レーザー光被照射部位よりも後方に限らず、他の方向からフィラーワイヤを供給し、このフィラーワイヤの端部にレーザー光を照射することにより、該フィラーワイヤを溶融する場合にも適用可能である。すなわち、予めフィラーワイヤを加熱しておくことによりレーザー光による溶融負荷が減少すると共に、フィラーワイヤの溶融性が向上するという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、レーザー溶接状態に悪影響を与えることなく、フィラーワイヤの溶融を良好に行うことが可能なフィラーワイヤ供給装置及び供給方法を提供することができる。したがって、自動車産業の他、金属部材の溶接が必要となる産業において広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
1 レーザー溶接装置
3 フィラーワイヤ供給装置
5 クランプ(第2電極)
6 フィラーワイヤ加熱装置(加熱手段)
11 ノズル
31 フィラーワイヤ加熱電源装置(通電手段)
40 フィラーワイヤ加熱ヘッド
51A 第1ローラ(第1電極)
60 移動機構(電極移動手段)
100 コントロールユニット(判定手段)
110 撮像装置(撮像手段)
L レーザー光被照射部位
LB レーザー光
R 溶接経路
X フィラーワイヤ
W1 上側の金属板
W2 下側の金属板
WK 溶融穴部
WY 溶融池
Wy 溶融金属
Z 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が接触状態で追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給装置であって、
前記フィラーワイヤを加熱する加熱手段を有し、
前記加熱手段は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と、前記金属部材に接触する第2電極と、前記第1電極と第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電する通電手段と、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極を該フィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させる電極移動手段とを備えることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記被溶接部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段で撮像された画像を解析して、前記フィラーワイヤの被溶接部位への浸入状態を解析することにより、金属部材間の連結状態を判定する判定手段とを備え、
前記電極移動手段は、該判定手段の判定結果に基づいて、前記第1電極を移動させることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記判定手段は、前期撮像手段で撮像された画像に基づいて前記フィラーワイヤの所定以上の曲りを検出したときに、金属部材間の連結状態が良好でないと判定し、
前記電極移動手段は、前記判定手段によって連結状態が良好でないと判定されたときは、前記第1電極を前記フィラーワイヤの端部から離れる方向に移動させることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記第1電極は、前記フィラーワイヤを移動可能に支持するローラにより構成されていることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記フィラーワイヤ供給手段は、前記フィラーワイヤを、前記レーザー光による被溶接部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するようにレーザー光被照射部位よりも後方の位置で供給するものであることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項6】
複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給方法であって、
前記フィラーワイヤを通電することにより加熱する加熱工程を有し、
前記加熱工程は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と前記金属部材のうちの少なくとも一つに接触する第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電しつつ、所定の状態が成立したときに、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極をフィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項1】
複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が接触状態で追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給装置であって、
前記フィラーワイヤを加熱する加熱手段を有し、
前記加熱手段は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と、前記金属部材に接触する第2電極と、前記第1電極と第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電する通電手段と、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極を該フィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させる電極移動手段とを備えることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記被溶接部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段で撮像された画像を解析して、前記フィラーワイヤの被溶接部位への浸入状態を解析することにより、金属部材間の連結状態を判定する判定手段とを備え、
前記電極移動手段は、該判定手段の判定結果に基づいて、前記第1電極を移動させることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記判定手段は、前期撮像手段で撮像された画像に基づいて前記フィラーワイヤの所定以上の曲りを検出したときに、金属部材間の連結状態が良好でないと判定し、
前記電極移動手段は、前記判定手段によって連結状態が良好でないと判定されたときは、前記第1電極を前記フィラーワイヤの端部から離れる方向に移動させることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記第1電極は、前記フィラーワイヤを移動可能に支持するローラにより構成されていることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置において、
前記フィラーワイヤ供給手段は、前記フィラーワイヤを、前記レーザー光による被溶接部位に形成されて溶融金属が貯留されてなる溶融池に、その端部が接触するようにレーザー光被照射部位よりも後方の位置で供給するものであることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【請求項6】
複数の金属部材に対して所定の溶接経路に沿って相対的に移動するレーザー光による被溶接部位に端部が追随するようにフィラーワイヤを所定速度で供給するフィラーワイヤ供給方法であって、
前記フィラーワイヤを通電することにより加熱する加熱工程を有し、
前記加熱工程は、前記フィラーワイヤの端部近傍部分に接触する第1電極と前記金属部材のうちの少なくとも一つに接触する第2電極との間にフィラーワイヤ及び金属部材を介して通電しつつ、所定の状態が成立したときに、前記第1電極とフィラーワイヤの端部との間の距離が変化するように、前記第1電極をフィラーワイヤへの接触を保った状態で移動させることを特徴とするレーザー溶接におけるフィラーワイヤ供給装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【公開番号】特開2011−31257(P2011−31257A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177761(P2009−177761)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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