説明

レーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品ならびに複合成形体

【課題】レーザー透過性、レーザー溶着性、機械特性、低そり性だけでなく、高流動性をも併せ持つ熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品をレーザー溶着した複合成形体を提供する。
【解決手段】(A)ポリエステル樹脂50〜95重量%と(B)非晶性樹脂50〜5重量%を配合してなり、(A)と(B)の合計量100重量部に対し、(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物を0.01〜5重量部、(D)無機充填剤1〜120重量部を配合してなるレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー透過性、レーザー溶着性、機械特性だけでなく、高流動性をも併せ持つレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物、レーザー用着用成形品およびレーザー溶着した複合成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は優れた機械特性、耐熱性、成形性、リサイクル性を有するため、各種容器、フィルム、電気・電子部品などに幅広く使用されている。中でもポリエステル樹脂の1種であるポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートはさらに無機充填剤による補強効果が高く、耐薬品性にも優れることから、自動車や電気・電子機器のコネクター、リレー、スイッチなどの工業用成形品の材料として広く使用されている。
【0003】
しかし、近年、工業用成形品の小型化・軽量化に対する要求がますます高まっており、特に自動車や電気・電子機器用途に用いるポリブチレンテレフタレートはこれらの要求に対し、機械特性を低下させることなく、溶融時の流動性を改良させることが望まれている。
【0004】
特許文献1には、3価以上の多価カルボン酸または多価アルコールを有する溶融張力が0.8〜5.0gのポリエステル樹脂が記載されているが、多官能化合物をポリエステルの重合時添加するため、得られるポリエステル樹脂は増粘してしまい、流動性が低下するという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、特定の熱可塑性樹脂と特定の少なくとも3つの官能基を有する化合物の組み合わせを溶融混合する流動性改良方法が記載されているが、流動性改良効果は不十分であり、かつ機械物性も低下する傾向であった。
【0006】
一方、従来から、製品形状の複雑化に伴う各パーツの接合においては、接着剤による接合、ボルトなどによる機械的接合などが行われてきた。しかし、接着剤ではその接着強度が、また、ボルトなどによる機械的接合では、費用、締結の手間、重量増が問題となっている。熱板溶着では糸引きの問題、振動溶着、超音波溶着は接合付近に発生するバリの処理をする必要があった。一方、樹脂成形体のレーザー溶着は、重ね合わせた樹脂成形品にレーザー光を照射し、照射した一方を透過させ、もう一方で吸収させ溶融、融着させる工法であり、三次元接合が可能、非接触加工、バリ発生が無いなどの利点を利用して、幅広い分野に急速に広がりつつある工法である。
【0007】
ところがポリエステル樹脂とりわけポリブチレンテレフタレート系樹脂においては、ナイロン樹脂などの熱可塑性樹脂に比べてレーザー光線透過率が非常に低く、ポリブチレンテレフタレート系樹脂をレーザー光線透過側の成形品としてレーザー溶着工法を適用する際には、そのレーザー光線透過率が低いために厚み制限が厳しく、レーザー光線透過率の向上のために薄肉化による対応が必要となり、製品設計自由度が大変小さかった。
【0008】
特許文献3には、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリブチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート共重合体からなるポリブチレンテレフタレート系樹脂とポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリフェニレンオキシド、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレートの1種以上の樹脂を配合することによってレーザー光線透過率を向上させ、レーザー溶着させるという例が、特許文献4には、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の1種以上からなる樹脂組成物にてレーザー光線透過率を向上させ、レーザー溶着させるという例が記載されているが、これはポリブチレンテレフタレート樹脂単体に比べれば大幅にレーザー光線透過率を向上できるが、流動性が必ずしも十分でなく、成形品サイズが大きいときに成形できないことがあり、問題となることがあった。
【特許文献1】特開2001−200038号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7−304970号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−292752号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】WO2003/085046号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、レーザー透過性、レーザー溶着性、機械特性、低そり性だけでなく、高流動性をも併せ持つポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形品をレーザー溶着した複合成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題を解決するために、鋭意研究、検討を重ねた結果、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリエステル樹脂50〜95重量%と(B)非晶性樹脂50〜5重量%を配合してなり、(A)と(B)の合計量100重量部に対し、(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物を0.01〜5重量部、(D)無機充填剤1〜120重量部を配合してなるレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物、
(2)(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物がアルキレンオキシド単位を一つ以上含むことを特徴とする(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(3)(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物の官能基が水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択される少なくとも1種の基であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)(A)ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
(5)(B)非晶性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シクロヘキシレンテレフタレート樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
(6)(D)無機充填材がガラス繊維であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
(7)(E)耐衝撃改良剤を配合してなる(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
(8)(E)耐衝撃改良剤がスチレン系エラストマであり、スチレン系エラストマを(A)と(B)の合計量100重量部に対し1〜100重量部配合してなる(7)に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物からなるレーザー溶着用成形品、
(10)(9)に記載の成形品をレーザー溶着した複合成形体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザー透過性、レーザー溶着性、機械特性、低そり性だけでなく、高流動性をも併せ持つポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形品をレーザー溶着した複合成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いる(A)ポリエステル樹脂とは、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ラクトンから選択された一種以上を主構造単位とする重合体または共重合体である。
【0014】
上記ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0015】
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノール−Cおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0016】
(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペートなどの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0017】
また、(ロ)上記ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0018】
また、上記(ハ)ラクトンとしてはε−カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリ−γ−ブチロラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトンなどが挙げられる。
【0019】
これらの中で、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がより好ましく、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がさらに好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0020】
本発明において、上記(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体中の全ジカルボン酸に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明で用いる(A)ポリエステル樹脂の粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.50dl/gの範囲であることがより好ましい。
【0022】
本発明で用いる(A)ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができるが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合が好ましく、コストの点で、直接重合が好ましい。
【0023】
本発明で用いる(A)ポリエステル樹脂が、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましく、重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられるが、これらの内でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、さらに、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。これらの重合反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
【0024】
本発明の(A)ポリエステル樹脂は、それぞれ単独で使用することもできるし、複数併用して使用することも可能である。
【0025】
本発明で用いられる(B)非晶性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シクロヘキシレンテレフタレート樹脂から選ばれた1種以上である。ポリカーボネート樹脂とは、ビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシデニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから選ばれた1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料とするポリカーボネートである。中でもビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。
【0026】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常のエステル交換反応およびホスゲン法により製造することができる。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネートが好ましい。さらに、上記ビスフェノールAは、これと共重合可能なその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどと併用することも可能であり、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。これらポリカーボネート樹脂の重合度は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂1gを90mlのテトラクロロエタンに溶解し25℃で測定したときの比粘度が1.1〜2.5、特に1.2〜2.0の範囲にあるものが好適であり、さらには1.2〜1.9の範囲にあるものが最も好ましい。
【0027】
スチレン系樹脂とは、スチレン構造単位、すなわち芳香族ビニル単位を含有する重合体であれば任意である。例えば、(あ)スチレン樹脂、α−メチルスチレン樹脂、(い)ポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体などの共役ジエン系ゴムに、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルおよびアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル、必要に応じてメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびブチルメタクリレートなどの他の重合性単量体をグラフト重合して得られるABS樹脂、(う)上記に例示した芳香族ビニルとシアン化ビニルとが共重合されたAS樹脂、(え)上記に例示した共役ジエン系ゴムと芳香族ビニルとが共重合されたハイインパクトポリスチレン樹脂、(お)上記の芳香族ビニルとジエンとのブロック共重合体である。
【0028】
上記(お)のブロック共重合体としては、その構成単位のジエンが水添されていても未水添であってもよい。このようなジエンとは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが例示でき、これらは必ずしも1種類で使用する必要は無く、複数種併用して使用することもでき、ブロック共重合体の具体例としてはSBS樹脂(スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体)、SIS樹脂(スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体)などが挙げられる。
【0029】
これらの例示された(B)非晶性樹脂の中で、好適に使用することができるものは、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、シクロヘキシレンテレフタレート樹脂が挙げられ、さらに好ましくはポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、AS樹脂、シクロヘキシレンテレフタレート樹脂が挙げられ、中でも特に好ましくはポリカーボネート樹脂、AS樹脂、シクロヘキシレンテレフタレート樹脂が例示される。
【0030】
本発明のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリエステル樹脂50〜95重量%と(B)非晶性樹脂50〜5重量%を配合することが好ましい。さらに好ましくは、(A)ポリエステル樹脂50〜92重量%(B)非晶性樹脂が50〜8重量%である。特に好ましくは(A)ポリエステル樹脂50〜90重量%(B)非晶性樹脂が50〜10重量%である。
【0031】
(B)非晶性樹脂の配合量が5重量%未満である場合には、本発明の課題である高流動性、機械的特性には問題ないが、低反り性とレーザー透過性が不十分であり好ましくない。一方(B)非晶性樹脂の配合量が50重量%を超える場合には、低反り性は抜群であるが、ポリエステル樹脂固有の高耐熱性や優れた耐薬品性が低下する傾向にあり、適用可能な製品が制限されることがあり、好ましくない。
【0032】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の樹脂分としては、(A)ポリエステル樹脂と(B)非晶性樹脂から成り立っているが、これらの樹脂に限定されるものではなく、本発明の熱可塑性樹脂組成物の特性を損なわない範囲で上記以外の樹脂を混合することが可能である。混合可能な樹脂は、溶融成形可能な樹脂であればいずれでもよく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられ、混合する樹脂は必ずしも1種である必要は無く、2種以上併用して使用してもよい。
【0033】
本発明で用いる(C)3つ以上の官能基を有する化合物は、本発明の熱可塑性樹脂の流動性を向上させるために必要な成分である。(C)成分としては、分子中に3つ以上の官能基を有するものであれば限定はされず、低分子化合物であってもよいし、高分子量の重合体であってもよい。このような(C)成分の官能基とは水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択された少なくとも1種類以上であることが好ましく、(C)成分はこれらの中から同一あるいは異なる3つ以上の官能基を有していることが好ましい。
【0034】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどの炭素数3〜24の多価アルコールやポリビニルアルコールなどのポリマーが挙げられる。なかでも、流動性、機械物性の点から分岐構造を有するグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0035】
中でも、3価または4価の水酸基を有するものが好ましい。さらに好ましくは4価の水酸基を有するものである。これらを有するものを用いると、特に流動性が良好となり、また、湿熱処理時に成形品表面に、(C)成分が出てくることが少ない。
【0036】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がカルボキシル基の場合は、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−2,5,7−トリカルボン酸、ピリジン−2,4,6−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸などの多価カルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸などのポリマーが挙げられ、それらの酸無水物も使用できる。なかでも、流動性の点から分岐構造を有するプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸およびその酸無水物が好ましい。
【0037】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の官能基がアミノ基の場合は、3つ以上の置換基のうち少なくとも1つは1級または2級アミンであることが好ましく、いずれも1級または2級アミンであることがさらに好ましく、いずれも1級アミンであることが特に好ましい。
【0038】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,4−トリアミノナフタレン、2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン、1,2,7,8−テトラミノナフタレン、1,4,5,8−テトラミノナフタレン等が挙げられる。なかでも、流動性の点から分岐構造を有する1,2,3−トリアミノプロパン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
【0039】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がグリシジル基の場合は、トリグリシジルトリアゾリジン−3,5−ジオン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの単量体や、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメチルメタクリレート、グリシジル基含有アクリルポリマー、グリシジル基含有アクリル/スチレンポリマーなどのポリマーが挙げられる。
【0040】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がイソシアネート基の場合は、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN))、デカントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、上記3つ以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルや、上記3つ以上カルボン酸基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0042】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、上記3つ以上カルボン酸基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
また、流動性、機械物性の点から、(C)3つ以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を一つ以上含むことが好ましい。アルキレンオキシド単位の好ましい例として炭素原子数1〜4である脂肪族アルキレンオキシド単位が有効であり、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位若しくはイソブチレンオキシド単位である。本発明においては、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用するのが特に好ましく、流動性、湿熱処理時に成形品表面に、(C)成分が出てくることが少ないという点でプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが特に好ましい。
【0043】
本発明で用いる(C)3つ以上の官能基を有する化合物に含まれるアルキレンオキシド単位数については、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が0.1〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
【0044】
アルキレンオキシド単位を一つ以上含む(C)3つ以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシトリメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシテトラメチレングリセリン、(ポリ)オキシメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシトリメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシテトラメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシテトラメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレングルコース、(ポリ)オキシエチレングルコース、(ポリ)オキシトリメチレングルコース、(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシテトラメチレングルコース等を挙げることができる。
【0045】
官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0046】
官能基がアミノ基の場合は(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン等を挙げることができる。
【0047】
官能基がエステル基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルや、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上カルボン酸基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
官能基がアミド基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上カルボン酸基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0048】
流動性の点からアルキレンオキシド単位を一つ以上含む(C)3つ以上の官能基を有する化合物の特に好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトールが挙げられ、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸が挙げられ、官能基がアミノ基の場合は(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼンが挙げられる。
【0049】
本発明で用いる(C)3つ以上の官能基を有する化合物は(A)成分と反応し、(A)成分の主鎖および側鎖に導入されていても良く、(A)成分と反応せずに、配合時の構造を保っていても良い。(C)3つ以上の官能基を有する化合物の官能基の反応率は、40%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上が特に好ましい。
【0050】
本発明で用いる、(C)3つ以上の官能基を有する化合物の粘度は25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、流動性、機械物性の点から5000m・Pa以下であることがさらに好ましく、2000m・Pa以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、成形時のブリード性の点から100m・Pa以上であることが好ましい。25℃における粘度が15000m・Paよりも大きいと流動性改良効果が不十分であるため好ましくない。
【0051】
本発明で用いる、(C)3つ以上の官能基を有する化合物の分子量または重量平均分子量(Mw)は、流動性の点で、50〜10000の範囲であることが好ましく、150〜8000の範囲であることがより好ましく、200〜3000の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、(C)3つ以上の官能基を有する化合物のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
本発明で用いる、(C)3つ以上の官能基を有する化合物の含水分は1%以下であることが好ましい。より好ましくは含水分0.5%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。(C)成分の含水分の下限は特にない。含水分が1%よりも高いと機械物性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0052】
本発明における、(C)3つ以上の官能基を有する化合物の配合量は、(A)+(B)成分の合計100重量部に対して(C)成分0.01〜5重量部の範囲であることが必須であり、流動性と機械物性の点から、0.01〜3重量部の範囲で配合することが好ましく、0.01〜1重量部の範囲で配合することがより好ましく、0.1〜1重量部の範囲で配合することが特に好ましい。(C)3つ以上の官能基を有する化合物の配合量が0.01重量部未満である場合には、機械的特性は良好であるが、流動性の改善効果が乏しくなる。一方、5重量部を超えて添加する場合には、無添加に比べ大幅に流動性が向上するが、樹脂組成物の機械特性が低下することがあり好ましくない。
本発明で用いる、(A)ポリエステル樹脂と(B)非晶性樹脂、(C)3つ以上の官能基を有する化合物では、(C)成分が少なくとも1つ以上の水酸基、あるいはカルボン酸基を有していることが流動性の点から好ましく、(C)成分が3つ以上水酸基、あるいはカルボン酸基を有していることがより好ましく、(C)成分が3つ以上水酸基を有していることがさらに好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物においては、(D)無機充填剤を配合することが好ましい。(D)無機充填剤の配合量は(A)と(B)成分の合計100重量部に対し、1〜120重量部の範囲で配合することが流動性および機械物性の点で好ましく、5〜100重量部の範囲で配合することがより好ましく、5〜90重量部の範囲で配合することがさらに好ましい。無機充填材の添加量が1重量部未満である場合には、無機充填材を添加することによる機械的特性向上効果が少なく、一方120重量部を超えて添加した場合には、機械的特性の向上には効果があるが、多官能性化合物を添加したとしても樹脂組成物の流動性が低くなるので好ましくない。
【0054】
本発明の樹脂組成物に使用できる(D)無機充填剤の種類としては、ガラス繊維が好ましく使用することができる。使用できる無機充填材としては、これらに限定されず、繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填剤も混合して使用することができる。具体的には、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられ、なかでもガラス繊維が好ましい。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0055】
なお、本発明に使用する上記の(D)無機充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0056】
本発明で用いる(D)無機充填材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
本発明において、樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために、(E)耐衝撃性改良剤を配合することが好ましい。(E)耐衝撃性改良剤の配合量は(A)+(B)成分の合計100重量部に対し、1〜100重量部の範囲で配合することが流動性および機械物性の点から好ましく、1〜70重量部の範囲で配合することがより好ましく、1〜50重量部の範囲で配合することがさらに好ましい。
【0057】
本発明において使用することができる(E)耐衝撃性改良剤としては、熱可塑性樹脂に対して公知のものを使用することができる。使用することができる耐衝撃改良材としては、天然ゴム、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体などのエチレン系エラストマ、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体などのポリエステルエラストマ、MBSまたはアクリル系のコアシェルエラストマ、スチレン系エラストマが例示される。この中で好ましくは、エチレン系エラストマとスチレン系エラストマが例示される。これらは必ずしも1種類で使用する必要は無く、必要に応じて複数種混合して使用することもできる。本発明の樹脂組成物に耐衝撃性改良材を配合することで、高いレーザー透過性を十分に保持しながら、耐衝撃性や耐冷熱性を付与することができる。ここで言う耐冷熱性とは、ポリブチレンテレフタレート樹脂などと大きく線膨張係数の異なる、例えば金属などを内部にインサート成形してなる樹脂成形体において、低温、高温の繰り返し環境下においての割れに対する耐性を指す。
(E)耐衝撃性改良材成分としては、400〜1100nm波長領域においてポリブチレンテレフタレートの同波長領域における光線透過率よりも高い光線透過率を有するスチレン系エラストマを用いることが特に好ましい。かかるスチレン系エラストマとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましく挙げられ、さらに好ましくはスチレン−ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物が挙げられる。このスチレン−ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物としてはダイセル化学工業(株)製の”エポフレンド”AT501を用いることができる。
【0058】
また、本発明の樹脂組成物に脂肪族および芳香族のグリシジルエステルもしくはグリシジルエーテル等を添加することもできる。
【0059】
さらに本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、可塑剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤、離型剤、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、帯電防止剤を一種以上添加することができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、(A)ポリエステル樹脂、(B)非晶性樹脂、(C)3つ以上の官能基を有する化合物、必要に応じてその他の成分を単軸またはニ軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、流動性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL,スクリュー直径をDとすると、L/D>30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法が特に好ましい。ここで言うスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置から、スクリュー先端部までの長さを指す。L/Dが大きい程、(C)3つ以上の官能基を有する化合物による流動性改良効果も大きくなる。二軸押出機のL/Dの上限は150であり、好ましくはL/Dが30を越え、100以下のものが使用できる。
【0061】
また、本発明において二軸押出機で用いる場合のスクリュー構成としては、フルフライトおよびニーディングディスクを組み合わせて用いられるが、本発明の組成物を得るためにはスクリューによる均一的な混練が必要である。そのため、スクリュー全長に対するニーディングディスクの合計長さ(ニーディングゾーン)の割合は、5〜50%の範囲が好ましく、10〜40%の範囲であればさらに好ましい。
【0062】
本発明において溶融混練する場合に、各成分を投入する方法は、例えば、投入口を2カ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から(A)ポリエステル樹脂、(B)非晶性樹脂、(C)3つ以上の官能基を有する化合物および必要に応じてその他成分を供給する方法や、主投入口から(A)ポリエステル樹脂、(B)非晶樹脂およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(C)3つ以上の官能基を有する化合物を供給し溶融混合する方法などが挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などとして利用でき、フィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。特に、本発明においては、流動性に優れる点を活かして、厚み0.01〜1.0mmの薄肉部位を有する射出成形品に加工することが可能である。
【0064】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、特にレーザー溶着が可能であることから、レーザー溶着をする自動車用部品、電気・電子部品として好適である。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、下記の具体的な用途に使用することができる。具体例としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、電気用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジング、および内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。
【0066】
更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。
【0067】
また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。本発明の樹脂組成物は、高いレーザー透過性、レーザー溶着性だけでなく、良好な機械特性と高流動性、低反り性を併せ持つことから、上記の中でも特にレーザー溶着を行う各種自動車用部品、電気・電子部品に特に有用である。
【実施例】
【0068】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではなく、種々の変形することもできる。
【0069】
実施例などで使用する主要原料の略号およびその内容を以下にまとめて示す。
(A)ポリエステル樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S)。
【0070】
(B)非晶性樹脂
B−1:ポリカーボネート(出光興産(株)製“タフロン”A1900)
B−2:アクリロニトリル−スチレン樹脂(東レ(株)製アクリロニトリル/スチレン=25/75)
B−3:ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(イーストマンケミカル社製“イースター DN003”)。
【0071】
(C)3つ以上の官能基を有する化合物
C−1:グリセリン(分子量92、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、東京化成(株)製)
C−2:トリメチロールプロパン(分子量134、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、ARDRICH社製)
C−3:ペンタエリスリトール(分子量136、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、東京化成(株)製)
C−4:ポリオキシエチレンジグリセリン(分子量410、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数1.5、阪本薬品(株)製SC−E450)
C−5:オキシエチレントリメチロールプロパン(分子量266、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数1、日本乳化剤(株)製TMP−30U)
C−6:ポリオキシエチレンペンタエリスリトール(分子量400、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数1.5、日本乳化剤(株)製PNT−60U)
C−7:ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、日本乳化剤(株)製TMP−F32)。
【0072】
(C’)3つ未満の官能基を有する化合物
C’−1:1,6−ヘキサンジオール(ARDRICH社製)
C’−2:4,4’−ジヒドロキシビフェニル(本州化学(株)製)。
【0073】
(D)無機充填剤
D−1:チョップドストランドタイプガラス繊維(繊維径13μm、日東紡(株)製3PE949)。
【0074】
(E)耐衝撃性改良材
E−1:オレフィン系エラストマ(三井化学(株)製“エバフレックス”EEA A709)
E−2:スチレン−ブタジエン樹脂(ダイセル化学(株)製“エポフレンド”AT501)。
【0075】
また、実施例および比較例に用いた評価方法を以下にまとめて示す。
【0076】
(1)流動性
厚み1mm、幅10mmの短冊型成形品を用い、流動長により判断した。射出条件は、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出圧65MPaで行った。
【0077】
(2)衝撃特性
シリンダー温度260℃、金型温度80℃で成形した試験片を使用し、ISO179に従い、ノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
【0078】
(3)曲げ特性
シリンダー温度260℃、金型温度80℃で成形した試験片を使用し、ISO178に従い、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
【0079】
(4)引張特性
シリンダー温度260℃、金型温度80℃で成形した試験片を使用し、ISO527−1,2に従い、引張強度を測定した。
【0080】
(5)低反り性
図1に示した形状の試験片をシリンダ温度260℃、金型温度80℃で成形し、図2の如く反ゲート側の内反り量を計測した。
【0081】
(6)レーザー光線透過性
図3に示したLが80mm正方形で、厚みDが3mmのレーザー光線透過性評価試験片を成形した。成形条件はシリンダ温度260℃、金型温度80℃である。図3(a)は、上記レーザ光線透過性評価試験片の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。図3のような成形片のスプルー3およびランナー4の部分をゲート5で切断し、残った部位6をレーザー光線透過性評価試験片とした。試験機は(株)島津製作所製の紫外近赤外分光高度計(UV−3100)を用い、また検出器には積分球を用いた。透過率は透過光量と入射光量の比を百分率で表す。実施例、比較例を示した表中には、近赤外線800〜1100nm波長領域の光線透過率を「透過性」として記載した。
【0082】
(7)レーザー溶着性
レーザー溶着性評価試験片は、図3のレーザ光線透過性評価試験片6と同形状の成形品を幅Wが24mm、長さLが70mmに切り出し、レーザー溶着用試験片7とした。
図4(a)は上記加工後の試験片の平面図であり、(b)はその側面図である。
レーザー溶着機は、ライスター社のMODULAS Cを用いた。本該溶着機は半導体レーザー使用の機器であり、レーザー光の波長は940nmの近赤外線である。最大出力が35W、焦点距離Lが38mm、焦点径Dが0.6mmである。
【0083】
図5はレーザー溶着の方法を示す概略図である。
レーザー溶着方法は図5に示すように、レーザー光線を透過させる材料を用いたレーザー溶着用試験片7を上部に、下部にはレーザー光線を吸収させる材料を用いたレーザー溶着用試験片8を置き、重ね合わせ、上部よりレーザー光線を照射する。レーザー照射はレーザー溶着軌道9に沿って行い、レーザー溶着条件は、出力15〜35W範囲および、レーザー走査速度1〜50mm/secの範囲で最も良好な溶着強度が得られる条件で行った。尚、焦点距離は38mm、焦点径は0.6mm固定で実施した。
【0084】
レーザー溶着の可否は「溶着可否」として記載し、レーザー溶着を行い溶着可能な条件において、レーザー光線透過試料の光線入射表面に溶融痕が認められる場合は「×」、溶融痕が認められず、溶着が可能な場合は「○」と記載した。
【0085】
図6(a)は上記方法でレーザー溶着したレーザー溶着強度測定用試験片12の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。レーザー溶着強度測定用試験片は図4に示したレーザー溶着試験片であるレーザー光線透過側試料7とレーザー光線吸収側試料8とが、重ね合わせ長さLを30mmとし、溶着距離Yは20mmとして、重ね合わせて溶着部13で溶着したものである。溶着強度測定には一般的な引張試験器(AG−500B)を用い、該試験片の両端を固定し、溶着部位には引張剪断応力が発生するように引張試験を行った。強度測定時の引張速度は1mm/min、スパンは40mmである。溶着強度は溶着部位が破断したときの応力とした。尚、レーザー光線透過試料へは本発明のレーザー溶着用樹脂組成物を用い、レーザー光線吸収側試料8へは、ポリブチレンテレフタレート樹脂70重量%に対し、ガラス繊維を30重量%、更にはカーボンブラックを0.4重量部添加した材料を用いた。
【0086】
(8)耐湿熱試験
シリンダー温度260℃、金型温度80℃で成形したISO527−1,2に従った試験片を使用し、121℃、100%RH、2atmの環境下で、100時間処理して、成形品表面を目視で観察し、成形品表面に液体が付着していれば、△。成形品表面に液体がわずかに付着していれば、△〜○。成形品表面に液体が付着していなければ、○とした。
【0087】
[実施例1〜21、比較例1〜9]
表1および表2に記載した配合比率で(A)ポリエステル樹脂、(B)非晶性樹脂、(C)3つ以上の官能基を有する化合物などを一括配合し、(D)無機充填材をサイドフィーダから供給し、L/D=45の二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度250℃、金型温度80で、各種評価用成形品を射出成形した。各評価用成形品を用いて上記評価を行った。
【0088】
評価結果を表1〜4に示。表1〜3に実施例、表4に比較例を表す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
表1〜4の結果より以下のことが明らかとなった。
【0095】
実施例1〜6と比較例1,7との比較において、(D)無機充填材(例はガラス繊維)が含まれていない場合には、流動性の向上効果はあるが、反りと機械的強度が低下する傾向があることが分かった。一方、無機充填材を多量に含む場合には、成形時の流動性が大幅に低下するだけでなく、レーザー透過性をも低下することがあり、好ましくない。
【0096】
実施例4,7〜9,19〜21と比較例2,3の比較では、(B)非晶樹脂が添加されていない場合には、レーザー溶着するのに十分なレーザー光線が透過しないだけでなく、反りが大きいことが分かった。また非晶樹脂の添加量が多すぎる場合には、レーザー溶着には問題ないが、多官能化合物を添加しても流動性が十分に確保できないときがることがわかった。
【0097】
実施例4,10〜18と比較例4、実施例19と比較例5、実施例20,21と比較例6の比較において、(C)3つ以上の官能基を有する化合物が添加されていると、添加量に応じて樹脂組成物の流動性が大幅に改良されることがわかった。
【0098】
実施例4,実施例14〜18と比較例8,9との比較では、3つ以上の官能基を有する多官能性化合物を含む場合、流動性改良効果が大きいことがわかる。
【0099】
実施例2,実施例19〜21と比較例7,8との比較から、無機充填材の添加量が2重量部未満の場合には、樹脂組成物の補強効果が少なく、120重量部を超える量用いた場合には、流動性が低くなることがわかった。
【0100】
また、表5の結果より以下のことが明らかになった。
【0101】
実施例22〜28では、(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物の種類、量が異なる。C−7の添加により、C−6と比較して、流動性、機械強度、透過率に差異は認められないが、耐湿熱試験後の成形品表面の液体の付着性が改良されていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例で低反り性の評価に使用した試験片の斜視図である。
【図2】実施例で低反り性の評価に使用した試験片の底面図である。
【図3】(a)は実施例で用いたレーザー光線透過性を評価するための試験片の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。
【図4】(a)は実施例で用いたレーザー溶着用試験片の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。
【図5】実施例で用いたレーザー溶着試験でのレーザー溶着方法の概略を示す概略斜視図である。
【図6】(a)は実施例で用いたレーザー溶着後のレーザー溶着強度測定用試験片の平面図であり、(b)は同試験片の側面図である。
【符号の説明】
【0103】
1:ゲート
2:開口部
3:スプルー
4:ランナー
5:ゲート
6:レーザー光線透過性評価試験片
7:レーザー溶着用試験片(透過側)
8:レーザー溶着用試験片(吸収側)
9:レーザー光線軌道
10:レーザー光線照射装置
11:レーザー光線
12:レーザー溶着強度測定用試験片
13:レーザー溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエステル樹脂50〜95重量%と(B)非晶性樹脂50〜5重量%を配合してなり、(A)と(B)の合計量100重量部に対し、(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物を0.01〜5重量部、(D)無機充填剤1〜120重量部を配合してなるレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物がアルキレンオキシド単位を一つ以上含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)3つ以上の官能基を有する多官能性化合物の官能基が水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択される少なくとも1種の基であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)非晶性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シクロヘキシレンテレフタレート樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
(D)無機充填材がガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
(E)耐衝撃改良剤を配合してなる請求項1〜6のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
(E)耐衝撃改良剤がスチレン系エラストマであり、スチレン系エラストマを(A)と(B)の合計量100重量部に対し1〜100重量部配合してなる請求項7に記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物からなるレーザー溶着用成形品。
【請求項10】
請求項9に記載の成形品をレーザー溶着した複合成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−149839(P2009−149839A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147743(P2008−147743)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】