レーザー照射装置、レーザー照射方法およびプログラム
【課題】レーザービームの内回り現象が発生しても、描画対象物に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができるようにする。
【解決手段】レーザー照射装置は、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定し、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分を描画する場合、レーザービームのパワーを低減させる。
【解決手段】レーザー照射装置は、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定し、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分を描画する場合、レーザービームのパワーを低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画対象物に形状を描画するレーザー照射装置、レーザー照射方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガルバノミラーによってレーザービームを描画対象物である熱可逆記録媒体上に二次元に走査して、文字や図形などの形状としての画像をその熱可逆記録媒体に描画するレーザー照射装置が知られている。
【0003】
熱可逆記録媒体は、温度に依存して色調が可逆的に変化するものであり、高温での耐性が弱い。このため、熱可逆記録媒体の十分な記録・消去回数を確保するためには、照射するレーザービームのパワーを適切に制御する必要がある。
【0004】
レーザー照射装置は、高品位な描画を実現するために一定パワーのレーザービームを一定速度で走査することを基本としている。しかしながら、ガルバノミラーが大きな慣性を有するため、線分走査の始点と終点とにおけるガルバノミラーの加減速に要する時間が長く、過剰なエネルギー照射により線が太くなったり色が濃くなるなどの画質劣化や熱可逆記録媒体で消え残りが発生するなどの媒体劣化を引き起こすことがある。そこで、レーザービームの点灯開始時に、速度増加に合わせて徐々にレーザーパワーを増加させる技術や、助走期間を設けて走査速度が一定の時だけレーザービームを点灯させる技術が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、レーザービームの出力のタイミング及びレーザーパワーを制御するガルバノスキャナシステムが開示されている。このガルバノスキャナシステムは、レーザー出力のタイミングを、ガルバノスキャナの駆動指令に対して移動量で指定する構成及びレーザーの出力をレーザーパワー指令に増分値指令を演算して求める構成となっている。このガルバノスキャナシステムによれば、レーザービームの照射ムラを抑制することができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなレーザー照射装置においては、制御信号に対するガルバノミラーの追従遅延が生じるため、画像の湾曲部を描画する際にレーザービームの方向転換を行う場合、レーザービームが目標軌跡の内側を通る所謂内回り現象が発生して、線描画速度の低下を招いてしまうという問題がある。このように描画速度が低下した状態で熱可逆記録媒体に描画すると、その描画部分に大量のレーザービームのエネルギーが付与されてしまう。例えば、従来のレーザー照射装置で「G」という文字を描画すると、図14に示すように、「G」の上下部分が少し色が濃く印字される。これは文字認識上の問題は特に無いが、色むらによる美的品質を低下させている。さらに、このような印字を例えば1000回ほど繰り返し最後に消去すると、図15に示すように、「G」の上下部分が消去されずに黒く残ってしまう。これは、レーザービームの内回り現象による媒体劣化である。なお、図15において「G」の輪郭を記載してあるが、これは劣化部分を判別しやすくするために記載したものであって、実際の媒体でこの輪郭が劣化として消え残るわけではない。
【0007】
このように、従来のレーザー照射装置では、レーザービームの内回り現象により、線描画速度の低下を招き、その描画部分に大量のレーザービームのエネルギーが付与されてしまい、熱可逆記録媒体の劣化を招いてしまうという問題がある。
【0008】
また、金属製や樹脂製、紙製等の描画対象物にレーザービームを照射して形状を描画する場合、内回り現象が発生すると、湾曲部に線太りが発生したり、レーザー加工によって湾曲部に深堀が発生するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザービームの内回り現象が発生しても、描画対象物に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができるレーザー照射装置、レーザー照射方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー照射装置は、レーザービームを出射するレーザー装置と、前記レーザービームを偏向する可動ミラーと、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のレーザー照射方法は、レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとを備えるレーザー照射装置で、実行されるレーザー照射方法であって、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定するステップと、前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるステップと、前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のプログラムは、レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとコンピュータとを備えるレーザー照射装置の前記コンピュータを、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、して機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分を描画する場合、レーザービームのパワーを低減させるので、レーザービームの内回り現象が発生しても、描画対象物に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態にかかるレーザー照射装置を示す構成図である。
【図2】図2は、コントローラを示すブロック図である。
【図3】図3は、描画データを示す模式図である。
【図4】図4は、画像を説明するための説明図である。
【図5】図5は、制御データを示す模式図である。
【図6】図6は、熱可逆記録媒体の発色・消色特性を示すグラフである。
【図7】図7は、内回り現象について説明するための説明図である。
【図8】図8は、内回り対応処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、画像を説明するための説明図である。
【図10】図10は、規定以上の湾曲度の湾曲部を説明するための説明図である。
【図11】図11は、レーザーパワーとレーザービームとの関係を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第2の実施形態にかかる内周り対応処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図13は、線分の規定の長さを説明するための説明図である。
【図14】図14は、従来のレーザー照射装置で形成した画像を示す平面図である。
【図15】図15は、熱可逆記録媒体に残留した画像を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1ないし図11を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のレーザー照射装置1は、レーザービームを出射するレーザー装置2と、このレーザー装置2から出されたレーザービームを描画対象物である熱可逆記録媒体100に走査する走査装置3と、当該レーザー照射装置1の各部を駆動制御するコントローラ4と、を備えており、外部装置であるホストコンピュータ200から送信される描画指令に基づいて熱可逆記録媒体100にレーザービームを走査して熱可逆記録媒体100に形状としての画像を描画する。
【0018】
レーザー装置2は、コントローラ4からの指示に応じてレーザービームを出射する。このレーザー装置2は、例えば、半導体レーザー装置やYAGレーザー装置、炭酸ガスレーザー装置等であるが、中でもレーザーパワーの制御が比較的容易な半導体レーザー装置が好適である。
【0019】
走査装置3は、レーザービームを偏向する可動ミラーであるX軸ガルバノミラー11,およびY軸ガルバノミラー12と、fθレンズ13と、を備えている。
【0020】
X軸ガルバノミラー11は、駆動源であるガルバノメータ14によって駆動され、X軸方向に沿ってレーザービームを走査する。一方、Y軸ガルバノミラー12は、駆動源であるガルバノメータ15によって駆動され、Y軸方向に沿ってレーザービームを走査する。ガルバノメータ14には、X軸サーボドライバ16が接続され、ガルバノメータ15には、Y軸サーボドライバ17が接続されている。各サーボドライバ16,17は、コントローラ4からの指示値に従い、対応するガルバノミラー11,12の角度を制御する回路であり、各ガルバノミラー11,12に対して設けられた角度センサ(図示せず)から出力されるポジション信号とコントローラ4からの指示値を比較し、その誤差が最小になるようにガルバノメータ14,15へ駆動信号を与える。
【0021】
fθレンズ13は、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12で偏向されたレーザービームを熱可逆記録媒体100へ集光するとともに、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の変位角と集光スポットの変位距離とが比例するように補正を行う。
【0022】
かかる構造の走査装置3では、レーザー装置2から出射したレーザービームをX軸ガルバノミラー11で偏向し、X軸ガルバノミラー11で偏向したレーザービームをY軸ガルバノミラー12で偏向し、Y軸ガルバノミラー12で偏向したレーザービームをfθレンズ13を介して熱可逆記録媒体100上に照射する。この際、X軸ガルバノミラー11とY軸ガルバノミラー12との角度を適宜変更することにより、レーザービームを2次元に偏向走査することができる。
【0023】
コントローラ4は、ASICやCPU等の処理装置、動作を制御する所定のプログラムが格納されたROMや処理装置のワーク領域となるRAM等の記憶装置(いずれも図示せず)を備えており、処理装置は記憶装置とともにコンピュータを構成している。このコントローラ4には、ホストコンピュータ200、レーザー装置2、X軸サーボドライバ16およびY軸サーボドライバ17が接続されている。
【0024】
コントローラ4は、処理装置と記憶装置に格納されたプログラムとの協働により、図2に示すように、ホストインターフェース部20、描画データ生成部30、描画データ生成部30に設けられた判定手段としての判定部31、描画データ生成部30に設けられたレーザーパワー調整手段としてのレーザーパワー調整部32、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザーパワー制御信号生成部70およびレーザー発光制御信号生成部80の各機能部を実現するものとする。また、コントローラ4は、処理装置と記憶装置に格納されたプログラムとの協働により、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザーパワー制御信号生成部70およびレーザー発光制御信号生成部80を備える照射手段としての照射部90を機能部として実現するものとする。
【0025】
コントローラ4は、ホストコンピュータ200から描画指令を受け取り、描画する画像(形状)を複数の線分L(L1,L2・・・、図4参照)の繋がりで定義する描画データを生成した後、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の位置、レーザー装置2のレーザービームの発光タイミングおよび発光パワーを制御し、熱可逆記録媒体100に画像を形成する。ここで、線分同士を特に区別することなく説明する場合には、線分Lとし、線分同士を区別する場合には、線分L1や線分L2・・・とする。
【0026】
このコントローラ4の動作をデータの流れに沿って詳細に説明する。以下では描画する画像が文字の場合について説明する。
【0027】
ホストインターフェース部20は、ホストコンピュータ200から描画指令を受け取る。描画指令は、描画する画像が例えば「G」という文字であればASCIIコードの「47」という16進数値、描画位置、大きさ等を含むデータである。ホストインターフェース部20は、描画指令の終了の旨を示すコードを受け取ったところで、描画データ生成部30に描画指令を渡す。
【0028】
描画データ生成部30は、描画指令に含まれる種々の文字コードを適切にエンコードし、描画データを生成する。このとき、文字の位置や大きさの情報も座標や線分Lの長さという形で描画データに盛り込まれる。
【0029】
描画データは、複数の単位描画データからなり、単位描画データD1は、図3に示すように、レーザービームの移動点としての座標(X座標、Y座標)を指定する座標データ部D1aと、レーザービームのパワーを設定するパワー係数部D1bと、当該単位描画データD1が指定する座標へ到達する間にレーザービームを点灯するか否かを設定する制御フラグ部D1cと、を備えている。この単位画像データD1は、本実施形態では、8バイトのデータである。座標データ部D1aのうちX座標は、2バイトの符号付きバイナリデータであり、Y座標は、2バイトの符号付きバイナリデータである。パワー係数部D1bは、レーザービームのパワーを基準のパワーに対して1000分率で設定する。制御フラグ部D1cには、座標が描画における最後の座標であるか否かを示す最終座標フラグと、レーザーの点灯/消灯を指示するレーザービームフラグとが設けられている。最終フラグは、例えば15ビット目のデータとして記述され、次の単位描画データD1が無く当該単位描画データD1が最後の単位描画データである場合には1が設定され、次の単位描画データD1が有り当該単位描画データD1が最後でない場合には0が設定される。レーザービームフラグは、例えば14ビット目のデータとして記述され、レーザービームを消灯する場合には0が設定され、レーザービームを点灯する場合には1が設定される。このような制御フラグ部D1cによって、線分Lを描画するための描画動作と描画において線分L同士を繋がないためのジャンプ動作を指示するようになっている。
【0030】
ここで、図4には、描画する画像が「G」の場合の描画データに基づく形状が示されており、この形状は、34個の座標P1〜P34と、隣合う番号(符号)同士の座標同士を繋いだ33本の線分L1〜L33によって定義されている。そして、上記の単位描画データD1は、当該画像に対しては、各線分L1〜L33毎に設定される。
【0031】
描画データ生成部30は、描画指令に基づいて描画データを生成し終わると、制御データ生成部40へ描画データを渡す。
【0032】
制御データ生成部40は、所定の速度でX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を動かし、所定のタイミングでレーザーを点灯または消灯し、所定のタイミングでレーザーパワーを変更するための制御データを描画データを基に生成する。X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を定速で動かすためには、描画データの座標間を所定の速度タイミングで細かく指示する必要があり、また、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れやレーザー装置2の応答特性を考慮し、レーザーの発光タイミングをX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の位置指定に対し遅らせる必要がある。さらに、熱可逆記録媒体100の位置に合わせ描画データの印字位置を全体的にオフセットさせる処理もここで行う。なお、レーザー照射装置1は、描画速度やレーザーの発光タイミングの標準的な値を保持しているが、その値を外部から変更することも可能となっている。
【0033】
制御データは、描画データを後述するDAコンバータに対して設定する値に変換したものであり、かかるデータを用意することで高速なデータ出力を可能にしている。制御データは、複数の単位制御データD2からなり、単位制御データD2は、図5に示すように、X出力部D2a、Y出力部D2b、パワー出力部D2c、データ間隔部D2d、制御フラグ部D2eを備えている。X出力部D2aは、X軸ガルバノミラー11の位置制御値を指定する部分であり、Y出力部D2bは、Y軸ガルバノミラー12の位置制御値を指定する部分であり、パワー出力部D2cは、レーザーパワーの出力制御値を指定する部分であり、データ間隔部D2dは、当該単位制御データD2から次の単位制御データD2までの間隔が記述される部分である。制御フラグ部D1cには、レーザー発光フラグ、XY出力指定フラグ、パワー指定フラグ、エンドフラグが設けられている。レーザー発光フラグは、例えば15ビット目に記述され、レーザービームを点灯させる場合には1が設定される。XY出力指定フラグは、例えば14ビット目に記述され、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の位置制御値を出力する場合には1が設定される。パワー指定フラグは、例えば13ビット目に記述され、レーザーパワーの出力値を出力する場合には、1が設定される。エンドフラグは、例えば12ビット目に記述され、当該単位制御データD2が最終の単位制御データD2である場合には1が設定される。
【0034】
制御データ生成部40は、描画データから制御データを生成し終わると、制御データ出力部50へ制御データを渡す。
【0035】
制御データ出力部50は、制御データのうちの最初の単位制御データを受け取ると描画開始の指示が入力されるまで待機する。単位制御データの受信と同時に描画を開始するモードも備えるが、標準的には熱可逆記録媒体100をコンベアコントローラなどの別装置が移動させることから装置外部からの描画開始信号を受けて印字を開始する。制御データ出力部50は、描画を開始すると、次の単位制御データの出力タイミングを作るために、単位制御データを読み込んだ最初にデータ間隔値をコントローラ4が備えるCPUタイマに設定する。こうすることで、その後の処理に差異があってもタイミングを安定させることができる。次に、単位制御データのレーザー発光フラグの値をレーザー発光制御信号生成部80に出力し、単位制御データにおいてXY出力指定フラグが立っていれば、単位制御データのX出力部D2a、Y出力部D2bの値をガルバノミラー制御信号生成部60に出力し、単位制御データのパワー指定フラグが立っていればパワー出力部D2cの値をレーザーパワー制御信号生成部70に出力することで1サイクルの制御データ出力を完了する。そして、タイマ割り込みを待ち、次の制御データを出力することを繰り返す。エンドフラグが立っていたら印字を終了する。
【0036】
ガルバノミラー制御信号生成部60には、16ビット分解能のDAコンバータが2チャネル設けられ、それぞれX軸サーボドライバ16とY軸サーボドライバ17とに接続される。レーザーパワー制御信号生成部70には、16ビット分解能のDAコンバータが1チャネル設けられ、レーザー装置2と接続される。レーザー発光制御信号生成部80は、2値のデジタル信号ポートでありレーザー装置2と接続される。
【0037】
以上の構成によって、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザーパワー制御信号生成部70およびレーザー発光制御信号生成部80を備える照射部90は、描画データに基づいてX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を駆動するとともに、レーザービームのパワーに応じたレーザービームを熱可逆記録媒体100に照射する。
【0038】
ここで、熱可逆記録媒体100について説明する。熱可逆記録媒体100は、温度に依存して色調が可逆的に変化するものであって、記録及び消去が繰り返し可能なリライタブルメディアである。
【0039】
この熱可逆記録媒体100では、融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
【0040】
具体的には、図6に示すように、まず、初め消色状態(A)にある記録層を昇温していくと、溶融温度T2にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T1にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
【0041】
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
【0042】
なお、前記記録層を溶融温度T2以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる熱可逆記録媒体100の劣化を抑えるためには、熱可逆記録媒体100を加熱する際に溶融温度T2と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しの記録消去による媒体の劣化を抑えられる。
【0043】
次に、レーザー照射装置1の動作について説明する。レーザー照射装置1は、描画データに基づいてX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を駆動して、熱可逆記録媒体100にレーザービームを照射して熱可逆記録媒体100に画像を描画する。
【0044】
例えば、描画する画像が「G」であって、その画像が図4に示す線分L1〜L33の繋がりの形状として定義される場合には、レーザービームを座標P1の位置から座標P34の位置まで順番に移動させることで、「G」という文字を印字することができる。このとき、座標P2のような屈曲部では一旦レーザービームを消灯して横線(線分L1)と縦線(線分L2)を分割して描くことで角のある形を確保し、さらにその終点と始点が重ならないように線を描くことで、座標P2の部分の過剰加熱を防止して熱可逆記録媒体100の劣化を抑制することができる。
【0045】
このように画像を描画する際、湾曲部を描画する場合には、内回り現象が発生する。以下に、内回り現象について説明する。サーボドライバ16,17は、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の角度を検出する角度センサから出力される角度センサ信号とコントローラ4からの指示値とに基づいて演算した誤差信号が最小になるようにガルバノメータ14,15へ駆動信号を与えるが、前記駆動信号は前記誤差信号を基に作られるためレーザービームは目標指示に対して遅れを持って追従する。この遅れを小さくするにはX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の慣性モーメントを小さくする、ガルバノメータ14,15のトルクを上げる、サーボゲインを上げるなどの手段が考えられるが零にすることはできない。本実施形態においては、例えば、印字線速が2m/sのとき時間では約300usの追従遅れが発生し、距離では0.6mmの追従遅れが発生する。このような条件で、湾曲部、特に湾曲度が大きい湾曲部を描くと、図7に示すように、指示した目標軌跡に対して内側をレーザービームがたどる。これがレーザービームの内回り現象である。内回り現象は、湾曲部の湾曲度が大きいほど(曲率半径が小さいほど)、追従遅れが大きいほどその内回りの度合が大きくなる。つまり、特に小さな数字やアルファベットを描画するときに内回り度合いが大きくなる。このような内回りが発生すると、目標線速に対してレーザービームの移動速度が低下し、照射されるレーザービームのエネルギーパワーが相対的に高くなるため、熱可逆記録媒体100の過剰な温度上昇を招き、他の直線部分に比べその部分の濃度が上がったり媒体劣化を起こしたりする。
【0046】
そこで、本実施形態では、コントローラ4が以下の内回り対応処理を行う。図8に示すように、判定部31は、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部H(急カーブ)を形成する線分Lであるか否かを判定する(ステップS1)。ここで、湾曲部同士を特に区別することなく説明する場合には、湾曲部Hとし、湾曲部同士を区別する場合には、湾曲部H1や湾曲部H2・・・とする。描画データ生成部30は、具体的には、湾曲部Hの湾曲度を算出し、算出した湾曲度が規定の湾曲度よりも大きい場合に、当該湾曲部Hを形成する線分Lは規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると判定する。より詳細には、判定部31は、湾曲部Hの曲率半径が線分Lの目標描画速度と目標描画速度に対するX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間とを乗算した値よりも小さい場合に、当該湾曲部Hの湾曲度は規定の湾曲度よりも大きいと判定する。これを式で表すと、線分L描画の目標線速度をV、目標線速度VにおけるX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間をS、湾曲部Hの曲率半径をRとしたとき、R<V×Sの場合に、当該湾曲部Hの湾曲度は規定の湾曲度よりも大きいと判定する。ここで、線分L描画の目標線速度Vは、所定の長さの直線を描いたときの時間と長さから求めることができ、目標線速度VにおけるX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間Sは、コントローラ4が指示するガルバノメータ14,15の指示電圧とX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の角度を検出する角度センサが出力するポジション信号とに基づいて求めることができる。曲率半径を求める手段はいろいろ考えられるが、本実施形態では、湾曲部Hの曲率半径を直接求めるのではなく規定の曲率半径に対し大小関係がどうかを円弧長と円弧端点距離との比から判定している。
【0047】
例えば、図9のように定義される画像の場合、
L1〜L6からなる湾曲部H1において、
L1+L2+L3+L4+L5+L6≒2×V×S
D1÷(L1+L2+L3+L4+L5+L6)≧0.84
が成り立つ場合、判定部31は、当該湾曲部H1は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部ではない(緩カーブ)と判定し、
L2〜L8からなる湾曲部H2において、
L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8≒2×V×S
D2÷(L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8)<0.84
が成り立つ場合、判定部31は、当該湾曲部H2は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部であると判定し、
L4〜L9からなる湾曲部H3において、
L4+L5+L6+L7+L8+L9≒2×V×S
D3÷(L4+L5+L6+L7+L8+L9)≧0.84
が成り立つ場合、判定部31は、当該湾曲部H3は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部であると判定する。
【0048】
ここで、上記式中の値0.84は、図10に示す形状において、円の半径をR、長さが2Rとなる円弧を結ぶ線分の長さをx、円の中心と線分の端部結んで形成される三角形における線分と対応する頂部の角度をθとすると、x÷2R=sin(θ÷2)=sin(((2R÷2πR)×360)÷2)=0.84147となることから得られる値である。このように湾曲部Hの曲率半径を直接求めずに処理を実行することで、演算を簡略化でき、コントローラ4の処理負荷を小さくすることができる。なお、ここでは、円弧長を2Rとしているが、湾曲部Hによってはその長さが2Rに満たない場合もあるので、円弧長をRとした場合など複数の円弧長で判定できるようにすることがさらに好適である。
【0049】
次に、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成しない線分Lである場合には(ステップS1のNO)、レーザーパワー調整部32は、レーザービームのパワーを規定値に設定する(ステップS2)。一方、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lである場合には(ステップS1のYES)、この線分Lを描画する場合のレーザービームのパワーを、規定値よりも低減する(ステップS3)。即ち、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lを描画する場合、レーザービームのパワーを低減する。別の言い方をすると、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lを描画する場合には、複数の線分Lのうち規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分L以外の線分Lを描画する場合のレーザービームのパワーに比べて低減させる。具体的には、レーザーパワー調整部32は、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lに関する単位描画データにおいて、パワー係数部D1bを0.8に設定し、それ以外の場合には、1.0に設定する。これにより、図11に示すように、座標P1〜座標P8までの線分Lにおいて、レーザーパワーが、それ以外の部分に比べて80%に低減される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、コントローラ4が、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであるか否かを判定し、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lを描画する場合、レーザービームのパワーを低減させる。したがって、レーザービームの内回り現象が発生しても、熱可逆記録媒体100に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができる。また、この構成によれば、内回り現象が発生しても、その際に熱可逆記録媒体100に付与されるレーザービームのエネルギーが、レーザーパワーを低減させない場合に比べて小さくなるので、その分熱可逆記録媒体100の温度上昇を抑制することができ、よって、熱可逆記録媒体100の劣化を抑制することができる。また、内回り現象が発生しても、その際に熱可逆記録媒体100に付与されるレーザービームのエネルギーが、レーザーパワーを低減させない場合に比べて小さくなるので、湾曲部に線太りが発生するのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、湾曲部Hの湾曲度を算出し、算出した湾曲度が規定の湾曲度よりも大きい場合に、当該湾曲部Hを形成する線分Lは規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると、コントローラ4が判定する。したがって、湾曲度の判定を精度良く行うことができる。
【0052】
本実施形態のレーザー照射装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0053】
また、本実施形態のレーザー照射装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のレーザー照射装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0054】
なお、本実施形態では、ステップS1の処理を描画データ生成部30の判定部31で行ったが、制御データ生成部40で行っても同様の処理を実現することができる。また、湾曲部Hの湾曲度合いに応じてレーザービームのパワーの低減量を可変にすると、さらに良い効果を得ることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図12および図13を参照して詳しく説明する。なお、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0056】
本実施形態は、基本的には第1の実施形態と同じであるが、コントローラ4が行なう内回り対応処理が第1の実施形態と異なる。
【0057】
本実施形態の内回り対応処理では、図12に示すように、コントローラ4の判定部31は、判定処理として、線分Lの長さが規定の長さよりも短い場合に、当該線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると判定する(ステップS21)。ここで、図13に示すように、大きさが異なる二つの相似形状I1,I2において、大きさが小さいほうの形状I1の各線分Lの長さが、大きさが大きい方の形状I2において対応する各線分Lの長さより短くなるように、湾曲部Hを同じ滑らかさで表現する場合、湾曲度の大きい湾曲部(形状I1の湾曲部)Hを構成する線分Lの長さは、湾曲度の小さい湾曲部(形状I2の湾曲部)Hを構成する線分Lより短い。そして、滑らかな湾曲部Hを表現するためには線分Lの長さを曲率半径に対して小さくする必要がある。つまり、相対的に短い線分Lは湾曲度が大きな部分に集中する傾向があるので、規定の長さより短い線分Lを、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであるとすることができる。この線分Lの規定の長さは、線分L描画の目標線速度Vと、この目標線速度VにおけるX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間Sを乗算した値よりも小さな範囲で実験によって求めるのが良い。
【0058】
そして、ステップS21の処理をした後、ステップS2又はステップS3に進み、第1の実施形態と同じく、レーザービームのパワーの設定を行う。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、判定部31は、線分Lの長さが規定の長さよりも短い場合に、当該線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると判定する。したがって、画像の湾曲部Hの湾曲度を直接判定しなくても、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであるが否かを判定することができるので、コントローラ4の処理負荷を低減することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、上記各実施形態では、描画対象物として、熱可逆記録媒体を例に説明したが、これに限ることはない。描画対象物としては、例えば熱可逆性を有しない記録媒体等の描画対象物であっても良く、記録媒体でなくても良く。また、描画対象物は、金属製や樹脂製、紙製等であって良い。このような描画対象物にレーザービームを照射して形状を描画する場合でも、湾曲部に線太りが発生するのを抑制することができるとともに、描画対象物をレーザービームによって加工することで描画対象物に形状を描画する場合には湾曲部に深堀が発生するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…レーザー照射装置
2…レーザー装置
4…コントローラ
11…X軸ガルバノミラー(可動ミラー)
12…Y軸ガルバノミラー(可動ミラー)
31…判定部(判定手段)
32…レーザーパワー調整部(レーザーパワー調整手段)
90…照射部(照射手段)
100…熱可逆記録媒体(描画対象物)
H…湾曲部
L…線分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2008−170579号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画対象物に形状を描画するレーザー照射装置、レーザー照射方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガルバノミラーによってレーザービームを描画対象物である熱可逆記録媒体上に二次元に走査して、文字や図形などの形状としての画像をその熱可逆記録媒体に描画するレーザー照射装置が知られている。
【0003】
熱可逆記録媒体は、温度に依存して色調が可逆的に変化するものであり、高温での耐性が弱い。このため、熱可逆記録媒体の十分な記録・消去回数を確保するためには、照射するレーザービームのパワーを適切に制御する必要がある。
【0004】
レーザー照射装置は、高品位な描画を実現するために一定パワーのレーザービームを一定速度で走査することを基本としている。しかしながら、ガルバノミラーが大きな慣性を有するため、線分走査の始点と終点とにおけるガルバノミラーの加減速に要する時間が長く、過剰なエネルギー照射により線が太くなったり色が濃くなるなどの画質劣化や熱可逆記録媒体で消え残りが発生するなどの媒体劣化を引き起こすことがある。そこで、レーザービームの点灯開始時に、速度増加に合わせて徐々にレーザーパワーを増加させる技術や、助走期間を設けて走査速度が一定の時だけレーザービームを点灯させる技術が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、レーザービームの出力のタイミング及びレーザーパワーを制御するガルバノスキャナシステムが開示されている。このガルバノスキャナシステムは、レーザー出力のタイミングを、ガルバノスキャナの駆動指令に対して移動量で指定する構成及びレーザーの出力をレーザーパワー指令に増分値指令を演算して求める構成となっている。このガルバノスキャナシステムによれば、レーザービームの照射ムラを抑制することができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなレーザー照射装置においては、制御信号に対するガルバノミラーの追従遅延が生じるため、画像の湾曲部を描画する際にレーザービームの方向転換を行う場合、レーザービームが目標軌跡の内側を通る所謂内回り現象が発生して、線描画速度の低下を招いてしまうという問題がある。このように描画速度が低下した状態で熱可逆記録媒体に描画すると、その描画部分に大量のレーザービームのエネルギーが付与されてしまう。例えば、従来のレーザー照射装置で「G」という文字を描画すると、図14に示すように、「G」の上下部分が少し色が濃く印字される。これは文字認識上の問題は特に無いが、色むらによる美的品質を低下させている。さらに、このような印字を例えば1000回ほど繰り返し最後に消去すると、図15に示すように、「G」の上下部分が消去されずに黒く残ってしまう。これは、レーザービームの内回り現象による媒体劣化である。なお、図15において「G」の輪郭を記載してあるが、これは劣化部分を判別しやすくするために記載したものであって、実際の媒体でこの輪郭が劣化として消え残るわけではない。
【0007】
このように、従来のレーザー照射装置では、レーザービームの内回り現象により、線描画速度の低下を招き、その描画部分に大量のレーザービームのエネルギーが付与されてしまい、熱可逆記録媒体の劣化を招いてしまうという問題がある。
【0008】
また、金属製や樹脂製、紙製等の描画対象物にレーザービームを照射して形状を描画する場合、内回り現象が発生すると、湾曲部に線太りが発生したり、レーザー加工によって湾曲部に深堀が発生するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザービームの内回り現象が発生しても、描画対象物に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができるレーザー照射装置、レーザー照射方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー照射装置は、レーザービームを出射するレーザー装置と、前記レーザービームを偏向する可動ミラーと、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のレーザー照射方法は、レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとを備えるレーザー照射装置で、実行されるレーザー照射方法であって、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定するステップと、前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるステップと、前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のプログラムは、レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとコンピュータとを備えるレーザー照射装置の前記コンピュータを、描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、して機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分を描画する場合、レーザービームのパワーを低減させるので、レーザービームの内回り現象が発生しても、描画対象物に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態にかかるレーザー照射装置を示す構成図である。
【図2】図2は、コントローラを示すブロック図である。
【図3】図3は、描画データを示す模式図である。
【図4】図4は、画像を説明するための説明図である。
【図5】図5は、制御データを示す模式図である。
【図6】図6は、熱可逆記録媒体の発色・消色特性を示すグラフである。
【図7】図7は、内回り現象について説明するための説明図である。
【図8】図8は、内回り対応処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、画像を説明するための説明図である。
【図10】図10は、規定以上の湾曲度の湾曲部を説明するための説明図である。
【図11】図11は、レーザーパワーとレーザービームとの関係を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第2の実施形態にかかる内周り対応処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】図13は、線分の規定の長さを説明するための説明図である。
【図14】図14は、従来のレーザー照射装置で形成した画像を示す平面図である。
【図15】図15は、熱可逆記録媒体に残留した画像を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1ないし図11を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のレーザー照射装置1は、レーザービームを出射するレーザー装置2と、このレーザー装置2から出されたレーザービームを描画対象物である熱可逆記録媒体100に走査する走査装置3と、当該レーザー照射装置1の各部を駆動制御するコントローラ4と、を備えており、外部装置であるホストコンピュータ200から送信される描画指令に基づいて熱可逆記録媒体100にレーザービームを走査して熱可逆記録媒体100に形状としての画像を描画する。
【0018】
レーザー装置2は、コントローラ4からの指示に応じてレーザービームを出射する。このレーザー装置2は、例えば、半導体レーザー装置やYAGレーザー装置、炭酸ガスレーザー装置等であるが、中でもレーザーパワーの制御が比較的容易な半導体レーザー装置が好適である。
【0019】
走査装置3は、レーザービームを偏向する可動ミラーであるX軸ガルバノミラー11,およびY軸ガルバノミラー12と、fθレンズ13と、を備えている。
【0020】
X軸ガルバノミラー11は、駆動源であるガルバノメータ14によって駆動され、X軸方向に沿ってレーザービームを走査する。一方、Y軸ガルバノミラー12は、駆動源であるガルバノメータ15によって駆動され、Y軸方向に沿ってレーザービームを走査する。ガルバノメータ14には、X軸サーボドライバ16が接続され、ガルバノメータ15には、Y軸サーボドライバ17が接続されている。各サーボドライバ16,17は、コントローラ4からの指示値に従い、対応するガルバノミラー11,12の角度を制御する回路であり、各ガルバノミラー11,12に対して設けられた角度センサ(図示せず)から出力されるポジション信号とコントローラ4からの指示値を比較し、その誤差が最小になるようにガルバノメータ14,15へ駆動信号を与える。
【0021】
fθレンズ13は、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12で偏向されたレーザービームを熱可逆記録媒体100へ集光するとともに、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の変位角と集光スポットの変位距離とが比例するように補正を行う。
【0022】
かかる構造の走査装置3では、レーザー装置2から出射したレーザービームをX軸ガルバノミラー11で偏向し、X軸ガルバノミラー11で偏向したレーザービームをY軸ガルバノミラー12で偏向し、Y軸ガルバノミラー12で偏向したレーザービームをfθレンズ13を介して熱可逆記録媒体100上に照射する。この際、X軸ガルバノミラー11とY軸ガルバノミラー12との角度を適宜変更することにより、レーザービームを2次元に偏向走査することができる。
【0023】
コントローラ4は、ASICやCPU等の処理装置、動作を制御する所定のプログラムが格納されたROMや処理装置のワーク領域となるRAM等の記憶装置(いずれも図示せず)を備えており、処理装置は記憶装置とともにコンピュータを構成している。このコントローラ4には、ホストコンピュータ200、レーザー装置2、X軸サーボドライバ16およびY軸サーボドライバ17が接続されている。
【0024】
コントローラ4は、処理装置と記憶装置に格納されたプログラムとの協働により、図2に示すように、ホストインターフェース部20、描画データ生成部30、描画データ生成部30に設けられた判定手段としての判定部31、描画データ生成部30に設けられたレーザーパワー調整手段としてのレーザーパワー調整部32、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザーパワー制御信号生成部70およびレーザー発光制御信号生成部80の各機能部を実現するものとする。また、コントローラ4は、処理装置と記憶装置に格納されたプログラムとの協働により、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザーパワー制御信号生成部70およびレーザー発光制御信号生成部80を備える照射手段としての照射部90を機能部として実現するものとする。
【0025】
コントローラ4は、ホストコンピュータ200から描画指令を受け取り、描画する画像(形状)を複数の線分L(L1,L2・・・、図4参照)の繋がりで定義する描画データを生成した後、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の位置、レーザー装置2のレーザービームの発光タイミングおよび発光パワーを制御し、熱可逆記録媒体100に画像を形成する。ここで、線分同士を特に区別することなく説明する場合には、線分Lとし、線分同士を区別する場合には、線分L1や線分L2・・・とする。
【0026】
このコントローラ4の動作をデータの流れに沿って詳細に説明する。以下では描画する画像が文字の場合について説明する。
【0027】
ホストインターフェース部20は、ホストコンピュータ200から描画指令を受け取る。描画指令は、描画する画像が例えば「G」という文字であればASCIIコードの「47」という16進数値、描画位置、大きさ等を含むデータである。ホストインターフェース部20は、描画指令の終了の旨を示すコードを受け取ったところで、描画データ生成部30に描画指令を渡す。
【0028】
描画データ生成部30は、描画指令に含まれる種々の文字コードを適切にエンコードし、描画データを生成する。このとき、文字の位置や大きさの情報も座標や線分Lの長さという形で描画データに盛り込まれる。
【0029】
描画データは、複数の単位描画データからなり、単位描画データD1は、図3に示すように、レーザービームの移動点としての座標(X座標、Y座標)を指定する座標データ部D1aと、レーザービームのパワーを設定するパワー係数部D1bと、当該単位描画データD1が指定する座標へ到達する間にレーザービームを点灯するか否かを設定する制御フラグ部D1cと、を備えている。この単位画像データD1は、本実施形態では、8バイトのデータである。座標データ部D1aのうちX座標は、2バイトの符号付きバイナリデータであり、Y座標は、2バイトの符号付きバイナリデータである。パワー係数部D1bは、レーザービームのパワーを基準のパワーに対して1000分率で設定する。制御フラグ部D1cには、座標が描画における最後の座標であるか否かを示す最終座標フラグと、レーザーの点灯/消灯を指示するレーザービームフラグとが設けられている。最終フラグは、例えば15ビット目のデータとして記述され、次の単位描画データD1が無く当該単位描画データD1が最後の単位描画データである場合には1が設定され、次の単位描画データD1が有り当該単位描画データD1が最後でない場合には0が設定される。レーザービームフラグは、例えば14ビット目のデータとして記述され、レーザービームを消灯する場合には0が設定され、レーザービームを点灯する場合には1が設定される。このような制御フラグ部D1cによって、線分Lを描画するための描画動作と描画において線分L同士を繋がないためのジャンプ動作を指示するようになっている。
【0030】
ここで、図4には、描画する画像が「G」の場合の描画データに基づく形状が示されており、この形状は、34個の座標P1〜P34と、隣合う番号(符号)同士の座標同士を繋いだ33本の線分L1〜L33によって定義されている。そして、上記の単位描画データD1は、当該画像に対しては、各線分L1〜L33毎に設定される。
【0031】
描画データ生成部30は、描画指令に基づいて描画データを生成し終わると、制御データ生成部40へ描画データを渡す。
【0032】
制御データ生成部40は、所定の速度でX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を動かし、所定のタイミングでレーザーを点灯または消灯し、所定のタイミングでレーザーパワーを変更するための制御データを描画データを基に生成する。X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を定速で動かすためには、描画データの座標間を所定の速度タイミングで細かく指示する必要があり、また、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れやレーザー装置2の応答特性を考慮し、レーザーの発光タイミングをX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の位置指定に対し遅らせる必要がある。さらに、熱可逆記録媒体100の位置に合わせ描画データの印字位置を全体的にオフセットさせる処理もここで行う。なお、レーザー照射装置1は、描画速度やレーザーの発光タイミングの標準的な値を保持しているが、その値を外部から変更することも可能となっている。
【0033】
制御データは、描画データを後述するDAコンバータに対して設定する値に変換したものであり、かかるデータを用意することで高速なデータ出力を可能にしている。制御データは、複数の単位制御データD2からなり、単位制御データD2は、図5に示すように、X出力部D2a、Y出力部D2b、パワー出力部D2c、データ間隔部D2d、制御フラグ部D2eを備えている。X出力部D2aは、X軸ガルバノミラー11の位置制御値を指定する部分であり、Y出力部D2bは、Y軸ガルバノミラー12の位置制御値を指定する部分であり、パワー出力部D2cは、レーザーパワーの出力制御値を指定する部分であり、データ間隔部D2dは、当該単位制御データD2から次の単位制御データD2までの間隔が記述される部分である。制御フラグ部D1cには、レーザー発光フラグ、XY出力指定フラグ、パワー指定フラグ、エンドフラグが設けられている。レーザー発光フラグは、例えば15ビット目に記述され、レーザービームを点灯させる場合には1が設定される。XY出力指定フラグは、例えば14ビット目に記述され、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の位置制御値を出力する場合には1が設定される。パワー指定フラグは、例えば13ビット目に記述され、レーザーパワーの出力値を出力する場合には、1が設定される。エンドフラグは、例えば12ビット目に記述され、当該単位制御データD2が最終の単位制御データD2である場合には1が設定される。
【0034】
制御データ生成部40は、描画データから制御データを生成し終わると、制御データ出力部50へ制御データを渡す。
【0035】
制御データ出力部50は、制御データのうちの最初の単位制御データを受け取ると描画開始の指示が入力されるまで待機する。単位制御データの受信と同時に描画を開始するモードも備えるが、標準的には熱可逆記録媒体100をコンベアコントローラなどの別装置が移動させることから装置外部からの描画開始信号を受けて印字を開始する。制御データ出力部50は、描画を開始すると、次の単位制御データの出力タイミングを作るために、単位制御データを読み込んだ最初にデータ間隔値をコントローラ4が備えるCPUタイマに設定する。こうすることで、その後の処理に差異があってもタイミングを安定させることができる。次に、単位制御データのレーザー発光フラグの値をレーザー発光制御信号生成部80に出力し、単位制御データにおいてXY出力指定フラグが立っていれば、単位制御データのX出力部D2a、Y出力部D2bの値をガルバノミラー制御信号生成部60に出力し、単位制御データのパワー指定フラグが立っていればパワー出力部D2cの値をレーザーパワー制御信号生成部70に出力することで1サイクルの制御データ出力を完了する。そして、タイマ割り込みを待ち、次の制御データを出力することを繰り返す。エンドフラグが立っていたら印字を終了する。
【0036】
ガルバノミラー制御信号生成部60には、16ビット分解能のDAコンバータが2チャネル設けられ、それぞれX軸サーボドライバ16とY軸サーボドライバ17とに接続される。レーザーパワー制御信号生成部70には、16ビット分解能のDAコンバータが1チャネル設けられ、レーザー装置2と接続される。レーザー発光制御信号生成部80は、2値のデジタル信号ポートでありレーザー装置2と接続される。
【0037】
以上の構成によって、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザーパワー制御信号生成部70およびレーザー発光制御信号生成部80を備える照射部90は、描画データに基づいてX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を駆動するとともに、レーザービームのパワーに応じたレーザービームを熱可逆記録媒体100に照射する。
【0038】
ここで、熱可逆記録媒体100について説明する。熱可逆記録媒体100は、温度に依存して色調が可逆的に変化するものであって、記録及び消去が繰り返し可能なリライタブルメディアである。
【0039】
この熱可逆記録媒体100では、融解前の有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
【0040】
具体的には、図6に示すように、まず、初め消色状態(A)にある記録層を昇温していくと、溶融温度T2にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T1にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
【0041】
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
【0042】
なお、前記記録層を溶融温度T2以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる熱可逆記録媒体100の劣化を抑えるためには、熱可逆記録媒体100を加熱する際に溶融温度T2と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しの記録消去による媒体の劣化を抑えられる。
【0043】
次に、レーザー照射装置1の動作について説明する。レーザー照射装置1は、描画データに基づいてX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12を駆動して、熱可逆記録媒体100にレーザービームを照射して熱可逆記録媒体100に画像を描画する。
【0044】
例えば、描画する画像が「G」であって、その画像が図4に示す線分L1〜L33の繋がりの形状として定義される場合には、レーザービームを座標P1の位置から座標P34の位置まで順番に移動させることで、「G」という文字を印字することができる。このとき、座標P2のような屈曲部では一旦レーザービームを消灯して横線(線分L1)と縦線(線分L2)を分割して描くことで角のある形を確保し、さらにその終点と始点が重ならないように線を描くことで、座標P2の部分の過剰加熱を防止して熱可逆記録媒体100の劣化を抑制することができる。
【0045】
このように画像を描画する際、湾曲部を描画する場合には、内回り現象が発生する。以下に、内回り現象について説明する。サーボドライバ16,17は、X軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の角度を検出する角度センサから出力される角度センサ信号とコントローラ4からの指示値とに基づいて演算した誤差信号が最小になるようにガルバノメータ14,15へ駆動信号を与えるが、前記駆動信号は前記誤差信号を基に作られるためレーザービームは目標指示に対して遅れを持って追従する。この遅れを小さくするにはX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の慣性モーメントを小さくする、ガルバノメータ14,15のトルクを上げる、サーボゲインを上げるなどの手段が考えられるが零にすることはできない。本実施形態においては、例えば、印字線速が2m/sのとき時間では約300usの追従遅れが発生し、距離では0.6mmの追従遅れが発生する。このような条件で、湾曲部、特に湾曲度が大きい湾曲部を描くと、図7に示すように、指示した目標軌跡に対して内側をレーザービームがたどる。これがレーザービームの内回り現象である。内回り現象は、湾曲部の湾曲度が大きいほど(曲率半径が小さいほど)、追従遅れが大きいほどその内回りの度合が大きくなる。つまり、特に小さな数字やアルファベットを描画するときに内回り度合いが大きくなる。このような内回りが発生すると、目標線速に対してレーザービームの移動速度が低下し、照射されるレーザービームのエネルギーパワーが相対的に高くなるため、熱可逆記録媒体100の過剰な温度上昇を招き、他の直線部分に比べその部分の濃度が上がったり媒体劣化を起こしたりする。
【0046】
そこで、本実施形態では、コントローラ4が以下の内回り対応処理を行う。図8に示すように、判定部31は、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部H(急カーブ)を形成する線分Lであるか否かを判定する(ステップS1)。ここで、湾曲部同士を特に区別することなく説明する場合には、湾曲部Hとし、湾曲部同士を区別する場合には、湾曲部H1や湾曲部H2・・・とする。描画データ生成部30は、具体的には、湾曲部Hの湾曲度を算出し、算出した湾曲度が規定の湾曲度よりも大きい場合に、当該湾曲部Hを形成する線分Lは規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると判定する。より詳細には、判定部31は、湾曲部Hの曲率半径が線分Lの目標描画速度と目標描画速度に対するX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間とを乗算した値よりも小さい場合に、当該湾曲部Hの湾曲度は規定の湾曲度よりも大きいと判定する。これを式で表すと、線分L描画の目標線速度をV、目標線速度VにおけるX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間をS、湾曲部Hの曲率半径をRとしたとき、R<V×Sの場合に、当該湾曲部Hの湾曲度は規定の湾曲度よりも大きいと判定する。ここで、線分L描画の目標線速度Vは、所定の長さの直線を描いたときの時間と長さから求めることができ、目標線速度VにおけるX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間Sは、コントローラ4が指示するガルバノメータ14,15の指示電圧とX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の角度を検出する角度センサが出力するポジション信号とに基づいて求めることができる。曲率半径を求める手段はいろいろ考えられるが、本実施形態では、湾曲部Hの曲率半径を直接求めるのではなく規定の曲率半径に対し大小関係がどうかを円弧長と円弧端点距離との比から判定している。
【0047】
例えば、図9のように定義される画像の場合、
L1〜L6からなる湾曲部H1において、
L1+L2+L3+L4+L5+L6≒2×V×S
D1÷(L1+L2+L3+L4+L5+L6)≧0.84
が成り立つ場合、判定部31は、当該湾曲部H1は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部ではない(緩カーブ)と判定し、
L2〜L8からなる湾曲部H2において、
L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8≒2×V×S
D2÷(L2+L3+L4+L5+L6+L7+L8)<0.84
が成り立つ場合、判定部31は、当該湾曲部H2は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部であると判定し、
L4〜L9からなる湾曲部H3において、
L4+L5+L6+L7+L8+L9≒2×V×S
D3÷(L4+L5+L6+L7+L8+L9)≧0.84
が成り立つ場合、判定部31は、当該湾曲部H3は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部であると判定する。
【0048】
ここで、上記式中の値0.84は、図10に示す形状において、円の半径をR、長さが2Rとなる円弧を結ぶ線分の長さをx、円の中心と線分の端部結んで形成される三角形における線分と対応する頂部の角度をθとすると、x÷2R=sin(θ÷2)=sin(((2R÷2πR)×360)÷2)=0.84147となることから得られる値である。このように湾曲部Hの曲率半径を直接求めずに処理を実行することで、演算を簡略化でき、コントローラ4の処理負荷を小さくすることができる。なお、ここでは、円弧長を2Rとしているが、湾曲部Hによってはその長さが2Rに満たない場合もあるので、円弧長をRとした場合など複数の円弧長で判定できるようにすることがさらに好適である。
【0049】
次に、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成しない線分Lである場合には(ステップS1のNO)、レーザーパワー調整部32は、レーザービームのパワーを規定値に設定する(ステップS2)。一方、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lである場合には(ステップS1のYES)、この線分Lを描画する場合のレーザービームのパワーを、規定値よりも低減する(ステップS3)。即ち、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lを描画する場合、レーザービームのパワーを低減する。別の言い方をすると、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lを描画する場合には、複数の線分Lのうち規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分L以外の線分Lを描画する場合のレーザービームのパワーに比べて低減させる。具体的には、レーザーパワー調整部32は、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lに関する単位描画データにおいて、パワー係数部D1bを0.8に設定し、それ以外の場合には、1.0に設定する。これにより、図11に示すように、座標P1〜座標P8までの線分Lにおいて、レーザーパワーが、それ以外の部分に比べて80%に低減される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、コントローラ4が、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであるか否かを判定し、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lを描画する場合、レーザービームのパワーを低減させる。したがって、レーザービームの内回り現象が発生しても、熱可逆記録媒体100に付与されるレーザービームのエネルギーが増大するのを抑制することができる。また、この構成によれば、内回り現象が発生しても、その際に熱可逆記録媒体100に付与されるレーザービームのエネルギーが、レーザーパワーを低減させない場合に比べて小さくなるので、その分熱可逆記録媒体100の温度上昇を抑制することができ、よって、熱可逆記録媒体100の劣化を抑制することができる。また、内回り現象が発生しても、その際に熱可逆記録媒体100に付与されるレーザービームのエネルギーが、レーザーパワーを低減させない場合に比べて小さくなるので、湾曲部に線太りが発生するのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、湾曲部Hの湾曲度を算出し、算出した湾曲度が規定の湾曲度よりも大きい場合に、当該湾曲部Hを形成する線分Lは規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると、コントローラ4が判定する。したがって、湾曲度の判定を精度良く行うことができる。
【0052】
本実施形態のレーザー照射装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0053】
また、本実施形態のレーザー照射装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のレーザー照射装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0054】
なお、本実施形態では、ステップS1の処理を描画データ生成部30の判定部31で行ったが、制御データ生成部40で行っても同様の処理を実現することができる。また、湾曲部Hの湾曲度合いに応じてレーザービームのパワーの低減量を可変にすると、さらに良い効果を得ることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図12および図13を参照して詳しく説明する。なお、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0056】
本実施形態は、基本的には第1の実施形態と同じであるが、コントローラ4が行なう内回り対応処理が第1の実施形態と異なる。
【0057】
本実施形態の内回り対応処理では、図12に示すように、コントローラ4の判定部31は、判定処理として、線分Lの長さが規定の長さよりも短い場合に、当該線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると判定する(ステップS21)。ここで、図13に示すように、大きさが異なる二つの相似形状I1,I2において、大きさが小さいほうの形状I1の各線分Lの長さが、大きさが大きい方の形状I2において対応する各線分Lの長さより短くなるように、湾曲部Hを同じ滑らかさで表現する場合、湾曲度の大きい湾曲部(形状I1の湾曲部)Hを構成する線分Lの長さは、湾曲度の小さい湾曲部(形状I2の湾曲部)Hを構成する線分Lより短い。そして、滑らかな湾曲部Hを表現するためには線分Lの長さを曲率半径に対して小さくする必要がある。つまり、相対的に短い線分Lは湾曲度が大きな部分に集中する傾向があるので、規定の長さより短い線分Lを、規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであるとすることができる。この線分Lの規定の長さは、線分L描画の目標線速度Vと、この目標線速度VにおけるX軸ガルバノミラー11およびY軸ガルバノミラー12の追従遅れ時間Sを乗算した値よりも小さな範囲で実験によって求めるのが良い。
【0058】
そして、ステップS21の処理をした後、ステップS2又はステップS3に進み、第1の実施形態と同じく、レーザービームのパワーの設定を行う。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、判定部31は、線分Lの長さが規定の長さよりも短い場合に、当該線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであると判定する。したがって、画像の湾曲部Hの湾曲度を直接判定しなくても、線分Lが規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部Hを形成する線分Lであるが否かを判定することができるので、コントローラ4の処理負荷を低減することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、上記各実施形態では、描画対象物として、熱可逆記録媒体を例に説明したが、これに限ることはない。描画対象物としては、例えば熱可逆性を有しない記録媒体等の描画対象物であっても良く、記録媒体でなくても良く。また、描画対象物は、金属製や樹脂製、紙製等であって良い。このような描画対象物にレーザービームを照射して形状を描画する場合でも、湾曲部に線太りが発生するのを抑制することができるとともに、描画対象物をレーザービームによって加工することで描画対象物に形状を描画する場合には湾曲部に深堀が発生するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…レーザー照射装置
2…レーザー装置
4…コントローラ
11…X軸ガルバノミラー(可動ミラー)
12…Y軸ガルバノミラー(可動ミラー)
31…判定部(判定手段)
32…レーザーパワー調整部(レーザーパワー調整手段)
90…照射部(照射手段)
100…熱可逆記録媒体(描画対象物)
H…湾曲部
L…線分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2008−170579号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを出射するレーザー装置と、
前記レーザービームを偏向する可動ミラーと、
描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、
前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、
前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、
を備えることを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項2】
前記判定手段は、湾曲部の湾曲度を算出し、算出した湾曲度が規定の湾曲度よりも大きい場合に、当該湾曲部を形成する前記線分は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であると判定することを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項3】
前記判定手段は、湾曲部の曲率半径が前記線分の目標描画速度と前記目標描画速度に対する前記可動ミラーの追従遅れ時間とを乗算した値よりも小さい場合に、当該湾曲部の湾曲度は前記規定の湾曲度よりも大きいと判定することを特徴とする請求項2に記載のレーザー照射装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記線分の長さが規定の長さよりも短い場合に、当該線分は前記湾曲部を形成する線分であると判定する請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項5】
レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとを備えるレーザー照射装置で、実行されるレーザー照射方法であって、
描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定するステップと、
前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるステップと、
前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射するステップと、
を含むことを特徴とするレーザー照射方法。
【請求項6】
レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとコンピュータとを備えるレーザー照射装置の前記コンピュータを、
描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、
前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、
前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、
して機能させるプログラム。
【請求項1】
レーザービームを出射するレーザー装置と、
前記レーザービームを偏向する可動ミラーと、
描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、
前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、
前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、
を備えることを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項2】
前記判定手段は、湾曲部の湾曲度を算出し、算出した湾曲度が規定の湾曲度よりも大きい場合に、当該湾曲部を形成する前記線分は規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であると判定することを特徴とする請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項3】
前記判定手段は、湾曲部の曲率半径が前記線分の目標描画速度と前記目標描画速度に対する前記可動ミラーの追従遅れ時間とを乗算した値よりも小さい場合に、当該湾曲部の湾曲度は前記規定の湾曲度よりも大きいと判定することを特徴とする請求項2に記載のレーザー照射装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記線分の長さが規定の長さよりも短い場合に、当該線分は前記湾曲部を形成する線分であると判定する請求項1に記載のレーザー照射装置。
【請求項5】
レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとを備えるレーザー照射装置で、実行されるレーザー照射方法であって、
描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定するステップと、
前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるステップと、
前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射するステップと、
を含むことを特徴とするレーザー照射方法。
【請求項6】
レーザービームを出射するレーザー装置と前記レーザービームを偏向する可動ミラーとコンピュータとを備えるレーザー照射装置の前記コンピュータを、
描画する形状を複数の線分の繋がりで定義する描画データにおける前記線分が規定の湾曲度よりも大きい湾曲度の湾曲部を形成する線分であるか否かを判定する判定手段と、
前記湾曲部を形成する前記線分を描画する場合、前記レーザービームのパワーを低減させるレーザーパワー調整手段と、
前記描画データに基づいて前記可動ミラーを駆動するとともに、前記レーザービームのパワーに応じたレーザービームを描画対象物に照射する照射手段と、
して機能させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図14】
【公開番号】特開2011−612(P2011−612A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145608(P2009−145608)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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