説明

レーザー脱離基材

様々な組成物の高エネルギー脱離/イオン化のための物品および方法が開示される。本発明の方法が、任意に1つ以上の表面コーティングと充填剤と共に多孔性基材を利用し、分析物の向上された脱離を提供する。かかる向上された脱離が、質量分析などの分析の分野において特に有用である。この向上された脱離が、様々な有用性を有する。例えば、前記多孔性基材の使用が、化学マトリックスを使用せずに脱離を行なうことを可能にする場合がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子の保持および後続の脱離に使用するための基材に関する。より具体的には、本発明は、質量分析など、分析プロセスにおいて用いられる試料を受容および剥離するための基材に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス支援レーザー脱離およびイオン化(MALDI)質量分析は、多数の組成物、特に複雑な生物学的材料の分析のための重要な手段に発展した。MALDIは、化学マトリックスおよび分析物にレーザー脱離およびイオン化を行なう前に1つ以上の分析物を懸濁および保持するために化学マトリックスを使用する。MALDIにおいて用いられる現在の有機マトリックスの開発以前は、分子フラグメンテーションをせずにそのままの分析物の分子をイオン化することは難しかった。
【0003】
分析物のフラグメンテーションをせずによりよいレーザー吸収および分析物のイオン化の十分に理解されていない必要条件を満たすためにこの数年の間、多数のマトリックスが開発されている。これらのマトリックスの使用は、レーザー脱離およびイオン化方法を用いてほかの場合なら容易に観察可能でない高分子の分析を可能にしているので、重要になっている。
【0004】
MALDIは、ペプチド、タンパク質、合成ポリマー、オリゴヌクレオチド、炭水化物、および他の大きな分子を同定するために有利に使用されている。残念なことに、従来のMALDIは、化学マトリックスからの信号が分析物の分子からの信号を妨げるので、多くの小分子の分析のために欠点がある。化学マトリックスは、信号妨害の他にも多くの他の望ましくない結果を有する。例えば、マトリックスが試料の調製を複雑にすることがあり、付加的な処理工程および材料が、汚染物質を試料中に混入させる恐れがある。マトリックスと分析物との両方が典型的には、同じ溶剤に溶解可能でなければならず、試料の調製をさらに複雑にする。また、マトリックスが、分離技術を連係させるのを難しくすることがあり、不均質な試料スポットは、スイートスポット(sweet−spot)現象につながることがあり、より多量の分析物およびマトリックス結晶が試料滴の外周に沿って凝結し、スペクトルの再現性の低減につながる。
【0005】
試料およびマトリックスの共結晶化はしばしば激しく、タンパク質の変性または凝結の恐れがある。さらに、マトリックスが所定の試料について適切であることは必ずしもはっきりしているわけではない。例えば、ペプチドおよびタンパク質に有効であるマトリックスはしばしば、オリゴヌクレオチドまたはポリマーについては機能しない。さらに、異なったマトリックスが、陽イオン検出モードおよび陰イオン検出モードにおいて必要とされる場合がある。このように、最適なマトリックスを見つけるために十分な調査の試行錯誤が必要とされることがある。
【0006】
MALDIについての別の支障は、現在使用されている脱離基材が典型的に金属板であるということである。これらの金属板は高価であり、それらは典型的に、再利用できるように使用後に清浄にされなければならない。金属板を清浄にするのは時間がかかり、汚染物のキャリオーバーの可能性をもたらし、また、さらに別の分析のために分析物試料を保存するための貯蔵装置として基材を使用することを可能にしない。
【0007】
従って、マトリックスの必要を低減するかまたは除くための方法および機器が必要とされている。1999年に、マトリックスを用いない方法がウェイ(Wei)らの米国特許第6,288,390号明細書に記載されている。ウェイは、照明および定電流下でHF/エタノール溶液で電気化学エッチングされたシリコンウエハの使用を開示している。溶剤に溶かした試料が、一切のマトリックスを付加せずにシリコンに直接に適用される。シリコン上の脱離/イオン化(DIOS)に分類されるこの方法は、マトリックスによって起こされる妨害を伴わずに100〜6000Daの質量範囲内の分子のイオン化を可能にした。しかしながら、DIOSを用いて得られた特定のスペクトルはこれまで再現するのが難しく、DIOSチップの貯蔵寿命はしばしば短い。また、DIOSチップは、材料およびそれらの製造に用いられる方法のコストが高いために、比較的高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、従来から用いられている技術に比べて向上されたレーザー脱離を提供する機器および方法が必要とされている。また、使用した後に廃棄または保存することができるように十分に安価な分析物脱離基材が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、様々な組成物の高エネルギー脱離/イオン化のための物品および方法に関する。本発明の第1の実施としては、第1の表面を有するポリマー基材と、前記ポリマー基材の前記第1の表面の上の複数の細孔と、前記複数の細孔の少なくとも一部の上のコーティングと、を含有する多孔性ポリマー物品が挙げられ、前記多孔性ポリマー物品が分析物を受容し、後に前記分析物を脱離させるように構成される。
【0010】
本発明の方法は、任意に1つ以上の表面コーティングおよび充填剤と共に、多孔性基材を利用し、分析物の向上された脱離を提供する。このような向上された脱離は、質量分析などの分析の分野に特に有用である。この向上された脱離は、様々な有用性がある。例えば、多孔性基材を使用することにより、化学マトリックスを使用せずに脱離を行なうことを可能にすることができる。マトリックスを用いないいくつかの実施において、特に、小分子(1000より小さい分子量を有する分子など)が分析される時に、本発明の方法は、従来のマトリックスをベースとした方法の性能よりもすぐれた性能(例えば、より高い信号対雑音比および/またはより良い解像度)を達成することができる。
【0011】
あるいは、多孔性基材は、マトリックスの存在下で脱離を行なうことを可能にする場合があり、従来の脱離基材を用いる標準マトリックスベースの方法に比べてすぐれた性能を有する。例えば、多孔性基材を用いて、多孔性基材を用いない場合よりも均一に、適用された分析物/マトリックス液滴が乾燥する場合がある。また、いくつかの実施において、より低量のマトリックスを使用してもよく、それによってマトリックスからの信号雑音を低減する。このような性質は、自動化された試料の堆積、位置設定、および分析の使用を可能にするのに有利である。また、多孔性基材を使用することにより、形成されるイオン性付加物(カリウムおよびナトリウムなど)を少なくし、スペクトルの解釈を簡単にし、容易にすることがある。
【0012】
本発明の特定の実施は、多孔性表面を有する物品に関する。この物品は、複数の細孔を有するポリマー基材と、特定の実施においては、前記複数の細孔の少なくとも一部の上の不揮発性コーティングとを備える。本発明はまた、比較的安価な原材料から製造される脱離基材を提供し、使用および廃棄するために経済的に製造可能であり、あるいは代わりに、分析物試料を保存するための保存装置として使用可能である。
【0013】
本発明の方法および物品は、タンパク質の位置、相互作用、構造および機能の研究であるプロテオミクスにおける使用をはじめとする多くの用途があり、健康および罹病した生物学的試料の両方に存在するタンパク質を同定および特性決定することを目指す。他の用途には、DNA分析、小分子の分析、自動化された高処理量の質量分析の他、電気泳動、固定化アフィニティークロマトグラフィー、または液体クロマトグラフィーなどの分離技術との組合せなどがある。
【0014】
本発明のさらに別の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。開示内容の原理の上記の概要は、本開示内容の各々の説明された実施態様または全ての実施について記載することを意図するものではない。以下の詳細な説明はより詳しく、本明細書に開示された原理を利用する特定の実施態様を例示する。
【0015】
本発明は、以下の図面を参照してより完全に説明される。
【0016】
本発明の原理は様々な変更および別の形態をとることができ、それらの詳細は図面に例示され、詳しく説明される。しかしながら、記載された特定の実施態様に本発明を限定することを意図するものではないことは理解されたい。反対に、本発明は、開示内容および特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる全ての変更、等価物、および代替物を包含することを意図する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
A.一般的な構成
本発明は、様々な組成物の分析のための方法および物品に関し、特に、試料の高エネルギー脱離/イオン化を利用する方法および物品に関する。例えば、質量分析のための試料のレーザー脱離およびイオン化が本発明の適用に適している。この機器は、フラグメンテーションせずに有用な脱離およびイオン化を達成、促進、または向上させるのに役立つ。マトリックスによる信号の複雑化を伴わない分析を提供することに加えて、小分子が分析される時などのいくつかの実施において、本発明の方法は、従来の方法および装置に比べて(例えば、より高い信号対雑音比の値によって示されるような)すぐれた性能を達成することができる。
【0018】
表面構造およびトポロジー、コーティング組成物、支持材料などの本発明の様々な態様および本発明の他の態様が、本明細書に、より詳細に記載される。
【0019】
B.多孔性物品
本発明によって製造された基材は典型的に、多孔性表面を有し、1つ以上の表面コーティングおよび/または粒状充填剤を含有する。本発明の特定の実施態様において、基材は、黒鉛またはカーボンブラックなど、炭素ベースの充填剤を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。熱可塑性ポリマー構造物は、全体にわたってほとんど均質である場合があり、構造物に多孔度の勾配がある場合があるが、典型的に微細多孔性または多孔性である。粒状充填剤は、黒鉛、カーボンブラック、金属、または別の材料であるかにかかわらず、この物品全体にわたってほとんど均一に分散される場合があり、または粒状充填剤がこの物品全体にわたって勾配密度を有する場合がある。
【0020】
多孔性粒状充填剤入り基材が、例えば、フィルム、シート、またはウェブとして提供されてもよい。基材がフィルムの形状である場合、フィルムが、一軸または二軸延伸されてもよい。本発明の基材はしばしば、連通細孔を提供する相互接続通路のネットワークを有し、有効細孔径の大きな範囲、低い流体流動抵抗、広い細孔径制御および50体積パーセントまでかまたはそれ以上の体積パーセントの充填剤配合量を有する。
【0021】
基材は典型的に、「微孔性シート材料、製造方法およびそれによって製造された物品(“Microporous sheet material, method of making and articles made therewith”)」と題された米国特許第4,539,256号明細書に教示されているような、TIPSとしても周知の熱誘起相分離によって形成される。この熱力学的非平衡相分離は、液体−液体相分離または液体−固体相分離のどちらであってもよい。
【0022】
本明細書中で用いた用語「熱可塑性ポリマー」は、普通の溶融加工条件下で溶融加工可能である、結晶性および非結晶性の両方の従来のポリマーを指す。
【0023】
本明細書中で用いた用語「結晶性」には、熱可塑性ポリマーに対して用いられるとき、少なくとも部分的に結晶性であるポリマーが含まれる。
【0024】
本明細書中で用いた用語「非晶質」には、熱可塑性ポリマーに対して用いられるとき、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、およびアタクチックポリスチレンなどの実質的な結晶秩序のないポリマーが含まれる。
【0025】
本明細書中で用いた用語「溶融温度」は、熱可塑性ポリマーと相溶性希釈剤とのブレンド中の熱可塑性ポリマーが溶融する温度を指す。
【0026】
本明細書中で用いた用語「結晶化温度」は、熱可塑性ポリマーと相溶性希釈剤との溶融ブレンド中の熱可塑性ポリマーが結晶化する温度を指す。
【0027】
本明細書中で用いた用語「平衡融点」は、熱可塑性ポリマーに対して用いられるとき、公開文献に見出されるような熱可塑性ポリマーの一般に公認の融点の温度を指す。
【0028】
本明細書中で用いるとき、「粒子」は、本明細書中で「粒状充填剤」とも呼ばれる、サブミクロンまたは低ミクロンサイズの粒子、5ミクロン以下の主軸を有するこのような粒子を指す。
【0029】
本明細書中で用いるとき、「不連続に分散された」または「コロイド懸濁液」は、粒子が、液体または固相全体にわたってほとんど個別粒子として配列されることを意味する。
【0030】
本発明において有用な熱可塑性ポリマーには、オレフィン系の縮合ポリマーおよび酸化ポリマーがある。特に適したポリマーの1つは、高密度ポリエチレン(HDPE)である。代表的なオレフィンポリマーには、高密度および低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル含有ポリマー、ブタジエン含有ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート含有ポリマー、およびポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有ポリマーがある。縮合ポリマーには、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートおよびポリスルホンがある。ポリフェニレンオキシドは、使用できる酸化ポリマーの代表である。熱可塑性ポリマーのブレンドもまた、用いられてもよい。
【0031】
相溶性希釈剤は、可塑性ポリマーの溶融温度よりも高い温度に加熱された時に前記ポリマーと溶液を形成することができ、冷却した時に前記ポリマーから相分離する材料である。液体とポリマーとの相溶性は、ポリマーおよび液体を加熱して透明な均質な溶液を形成することによって確認できる。ポリマーと液体との溶液をどんな液体濃度においても形成できない場合、液体は概して、そのポリマーと共に使用するために不適当である。実施において、使用される液体は、室温において固体であるがポリマーの溶融温度において液体である化合物を含有してもよい。概して、無極性ポリマーについては、室温においての同様な溶解度パラメータを有する無極性有機液体が、この溶液温度において概して有用である。同様に、極性有機液体は概して、極性ポリマーに対して有用である。ポリマーのブレンドが用いられるとき、有用な液体は、用いられたポリマーの各々について相溶性希釈剤である液体である。ポリマーがスチレン−ブタジエンなどのブロックコポリマーであるとき、選択された液体は、ポリマーブロックの各々のタイプと相溶性でなければならない。2つ以上の液体のブレンドは、選択されたポリマーがポリマーの溶融温度において液体ブレンドに可溶性であり、形成された溶液が冷却時に相分離する限り相溶性希釈剤として使用可能である。
【0032】
脂肪族および芳香族酸、脂肪族、芳香族および環状アルコール、アルデヒド、第一級および第二級アミン、芳香族およびエトキシ化アミン、ジアミン、アミド、エステルおよびジエステル、エーテル、ケトンおよび様々な炭化水素および複素環化合物など、様々なタイプの有機化合物が相溶性希釈剤として有用であることが見出されている。選択されたポリマーがポリプロピレンであるとき、鉱油などの脂肪族炭化水素、ジブチルフタレートなどのエステルおよびジベンジルエーテルなどのエーテルが、相溶性希釈剤として有用である。
【0033】
高密度ポリエチレンがポリマーであるとき、鉱油などの脂肪族炭化水素またはおよびメチルノニルケトンなどの脂肪族ケトンまたはジオクチルフタレートなどのエステルが相溶性希釈剤として有用である。低密度ポリエチレンと共に使用するための相溶性希釈剤には、デカン酸およびオレイン酸などの脂肪族酸またはデシルアルコールなどの第一級アルコールがある。ポリマーがポリフッ化ビニリデンであるとき、ジブチルフタレートなどのエステルが相溶性希釈剤として有用である。選択されたポリマーがナイロン11であるとき、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、またはテトラメチレンスルホンなどのエステルが相溶性希釈剤として有用である。選択されたポリマーがポリメチルメタクリレートであるとき、有用な相溶性希釈剤には、1,4−ブタンジオールおよびラウリン酸がある。ポリマーポリフェニレンオキシドと共に使用するための相溶性希釈剤は、例えば、タロウアミンである。
【0034】
特定の実施態様において、粒状充填剤は構造物中に配列される。例えば、構造物が球状であるとき、粒子は、球晶およびそれらの間のフィブリルの両方において存在する。粒子はポリマー構造物中に強固に保持されるが、それらは、相溶性希釈剤の除去後にほとんど露出される。構造物中で、ポリマー相が生じるところはどこでも粒子の分布は均一である。粒子はほとんど、多孔性構造物の全体にわたって個別の、凝集していない粒子として存在する。3〜4の粒子の凝集塊が生じる場合があるが、それらの頻度は典型的に、ポリマーと溶融ブレンディングする前の相溶性希釈剤分散系における頻度以下である。平均粒子間隔は、ポリマー中の粒子の体積配合量に依存する。
【0035】
相溶性希釈剤を材料から除去して粒子充填剤入りの、ほとんど液体を含まない多孔性熱可塑性ポリマー材料をもたらす。相溶性希釈剤は、例えば、溶剤抽出、揮発、またはいずれかの他の便利な方法によって除去されてもよく、粒子相は、多孔性ポリマー構造物中に少なくとも約90パーセント、より好ましくは95パーセント、最も好ましくは99パーセントのレベルまで閉じ込められた状態である。
【0036】
本発明の粒子充填剤入り多孔性構造物をそれらの弾性限度を超えて延伸、すなわち、伸長して永久歪または伸びを生じさせ、微小細孔が永久的に発生または形成されることを確実にする。延伸は、相溶性希釈剤を除去する前または後のどちらに行なわれてもよい。構造物のこの延伸は、細孔径の制御を助け、ポリマー相中の粒子の均一性および凝集度を変化させずに材料の多孔度および機械的性質を向上させる。延伸が多孔性構造物を膨張させ、多孔度が増加する。
【0037】
本発明の粒子充填剤入り多孔性フィルムは、米国特許第4,539,256号明細書のシップマン(Shipman)の教示に従って一軸または二軸延伸されてもよい。本発明の粒子充填剤入り多孔性材料はまた、公知のコーティングまたは堆積技術を用いて様々な材料をその表面に堆積することによって、相溶性希釈剤を除去する前または後のどちらかにさらに改良されてもよい。例えば、粒子充填剤入り多孔性材料は、蒸着またはスパッタリング技術によって金属でコーティングされるか、または接着剤、水性または溶剤系組成物、および染料などの材料によってコーティングされてもよい。コーティングは、例えば、ローラーコーティング、吹付けコーティング、浸漬コーティング等の従来のコーティング技術によって行なわれてもよい。
【0038】
C.充填材
本発明の多孔性基材は通常、少なくとも若干の充填剤粒子、しばしば炭質材料、例えば、カーボンブラックまたは黒鉛、および金属、例えば金、銀、およびタングステンを含有する。本発明において有用な粒子は概して、相溶性希釈剤によってコロイド分散系を形成することができる。粒度はしばしば、5ミクロンより小さく、より一般的には3ミクロンより小さいサイズであり、しばしば約1ミクロンより小さいサイズである。炭質材料のほかの有用な粒子には、例えば、鉛、白金、タングステン、金、ビスマス、銅、および銀などの金属、例えば、酸化鉛、酸化鉄、酸化クロム、チタニア、シリカおよびアルミナなどの金属酸化物、およびそれらのブレンドがある。概して、良好なエネルギー分散剤である材料、分析物をレーザー脱着させるために用いられるエネルギーと同じ波長において光を吸収する特定の材料が有益である。例えば、レーザーが337nmの波長を有する場合、粒子がこの波長において光を少なくとも部分的に吸収させることが典型的に望ましい。
【0039】
熱可塑性ポリマー中の充填剤粒子の量は、溶融ブレンディングする前の相溶性希釈剤中の充填剤の量に依存し、ブレンド中の熱可塑性ポリマーと相溶性希釈剤との相対量に依存する。相溶性希釈剤中にコロイド分散された粒子の量は、粒子が希釈剤によってどれほど湿潤されるか、粒子の表面積、および分散助剤または界面活性剤の適切な選択に依存する。概して、非多孔性粒子については、40〜50体積パーセントの粒子を含有する分散系を達成することができる。ポリマー中の充填剤の量は、溶融ブレンドがポリマーの場合よりも高濃度の液体を有するとき、相溶性希釈剤中の充填剤の量よりもはるかに多いことがある。
【0040】
使用されている希釈剤−ポリマー系の予め決められた濃度範囲内から選択された実際のポリマーの濃度は、機能性の問題によって限定される。ポリマーの濃度および分子量は、追加的な処理工程においての取扱いのために十分な強度を有する、冷却時に形成される多孔性構造物を提供するのに十分であるのがよい。ポリマーの濃度は、希釈剤−ポリマー溶融溶液の粘度がこの物品を造形するために用いられる設備に適しているような濃度であるのがよい。
【0041】
概して、相溶性希釈剤中のポリマーの濃度は約10〜80重量パーセントであり、それは、20〜90重量パーセントの相溶性希釈剤の濃度に相応する。相溶性希釈剤の高濃度、すなわち、80〜90パーセントが、相溶性希釈剤中の充填剤の高体積パーセントと共に用いられるとき、希釈剤に対して熱可塑性ポリマー中の粒状充填剤の非常に高い、例えば、約95重量パーセントの濃度を達成することができる。例えば、90:10の体積比の希釈剤/ポリマーであり、液体が40体積パーセントの粒状充填剤である場合、得られた充填剤入り多孔性物品は、驚くべきことに、希釈剤が除去された後、粒状充填剤が80パーセントである。本発明の粒子充填剤入り多孔性熱可塑性ポリマー物品がこのような多量の粒状充填剤を含有することができることは、標準押出方法によって製造された粒子充填剤入り熱可塑性物品は、たった約20体積パーセントの充填剤しか達成しないと考えられるので、意外である。
【0042】
D.表面処理
本発明の多孔性フィルムは有利には、向上された脱離を提供するために多孔性フィルムの上に適用された1つ以上のコーティングと組み合わせて用いられてもよい。また、コーティングが他の目的のために役立つ場合があり、例えば、コーティングが、保護または耐磨耗バリアを提供する場合がある。
【0043】
有用なコーティングには、黒鉛、カーボンブラック、米国特許第6,265,068号明細書に記載されているようなダイヤモンドライクカーボン(DLC)と称される材料の群、およびダイヤモンドライクガラス薄膜(Diamond−Like Glass Thin Film)と題されたPCT国際公開第0166820号パンフレットに記載されているようなダイヤモンドライクガラス(DLG)、シランおよびシラン誘導体、およびパリレンなどの有機材料がある。本発明による他の有用なコーティングには、金属;例えばアルミニウム、金、銀、ニッケル、チタン、パラジウム、および白金;金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムの他、インコネルまたはインジウムスズ酸化物などの金属または金属酸化物の合金などの無機材料がある。
【0044】
このような表面コーティングは概して、レーザー脱離のために用いられる条件下で不揮発性である。すなわち、コーティングがわずかな揮発性を示すか、または揮発される実体が非常に低分子量であるので(例えば、黒鉛から放出されることがある炭素クラスター、またはアルミニウムから放出されることがあるアルミニウムイオン)測定される分析物に干渉しないかのどちらかである。この点に関して、前記コーティングは従来のマトリックスから区別される。MALDI用途のために本技術分野において公知のマトリックス材料は一般的に、周囲条件下で緩慢な蒸発または昇華速度を有するという点において「不揮発性」であると考えられるが、それらは実際のレーザー脱離プロセスにおいてかなりの程度まで揮発され、揮発された種は、分析物の信号を妨害するかまたは不明瞭にすることがあるような分子量を有する。
【0045】
蒸気コーティング、スパッタコーティング、プラズマコーティング、真空昇華、化学蒸着、陰極アーク蒸着などの様々な方法によってコーティングを多孔性フィルムに適用してもよい。これらの方法は、金属および金属酸化物のコーティングのために特に適している。黒鉛などのコーティングは、黒鉛を分散系として入手し、それを基材に液体コーティングのための公知の方法(ナイフコーティング、吹付けコーティング、浸漬コーティング、スピンコーティング等)のいずれかによって適用することにより、非常に容易に適用される。
【0046】
全多孔性表面の上の連続したコーティングとは対照的に、不連続にコーティングを提供することが有利である場合がある。例えば、コーティングが、スポットなど、不連続な位置に設けられてもよい。多層コーティングの場合、特定の場合の必要性に従って、1つのコーティングが不連続であってもよく、他のコーティングが連続していてもよい。不連続なコーティングが、様々な機能として役立つ場合がある。例えば、それらは、分析物試料が堆積される特定の領域を仕切るのに役立つことがあり、次いで、試料を有するフィルムが質量分析計内に置かれる時に前記領域を配置することを可能にする。また、多孔性フィルムの表面エネルギーに不連続性を与えるコーティングを使用して、有利には、堆積された分析物試料を所望の領域内に含有し、望ましくないほど広い領域にわたる試料の吸上げまたは広がりを防ぐことができる。
【0047】
このようなコーティングは、任意の数の方法によって不連続に適用されてもよい。コーティングが蒸気コーティングによって適用される場合、有孔スクリーンまたはフィルムなどのマスクを用いて、マスクによって画定された領域にコーティングを限定してもよい。多層の、位置合わせされた不連続なコーティング(例えば重ねられた多層コーティングを含有するスポット)を有することが望ましい場合、異なった層をコーティングする間にマスクを(例えば接着剤によって)フィルムに付着させることができ、これにより、層を位置合わせして重ねる。次に、マスクを最終コーティングプロセスの後に除去する。別の実施態様において、有孔マスク自体がフィルム上に残っていることが可能であり、この場合、それは、ウェル内に置かれる分析物液滴を収容するのに役立つウェルを提供するのに役立つ。また、コーティングを画定する一切の役割とは関係なく、この目的のために有孔層を提供することが可能である。黒鉛などのコーティングの場合、グラビアコーティングなどの公知の液体コーティング方法を用いて、黒鉛を不連続に堆積することができる。
【0048】
E.装置の集成と特徴
本発明は、多孔性基材と、特に質量分析において、向上された脱離のために有用な任意選択のコーティングとを含む。代表的な使用において、フィルムを標準金属板に付着し、質量分析の計測器に挿入する。それ故に、本発明の多数の有用な実施態様が存在する。金属板の付着を容易にするために裏(非多孔性)面に適用された接着剤の層を有する多孔性基材を提供することが有利である。接着剤は、貼合せ用接着剤または両面テープであってもよい。貼合せ用接着剤を多孔性フィルムの裏側に付着させることができ、剥離ライナーが、接着剤の下部の所定の位置に残っている。次いで、ユーザは、剥離ライナーを簡単に除去することができ、接着剤によってフィルムを金属板に直接に付着させることができる。あるいは、貼合せ用接着剤の分離片をユーザに供給することができ、次いでユーザは接着剤を金属板に適用し、ライナーを除去し、多孔性フィルムを接着剤の上に付着させる。
【0049】
接着剤は、多孔性基材を汚染することがあるどんな不純物も有さずまたは生じないように注意深く選択されなければならない。さらに、いくつかの場合、接着剤が導電性であるのが望ましいことがある。このような導電性接着剤は容易に入手可能であり、例えばミネソタ州、メープルウッド(Maplewood,Minnesota)の3Mから入手可能な導電性接着剤9713がある。接着剤は、多孔性フィルムの裏側に永久的に付着されるように、あるいは、除去可能であるように選択されてもよい。
【0050】
一般に、任意に付着された接着剤が下にある多孔性フィルムは、顧客に供給するためにパッケージングされる。このパッケージングは、フィルムを保護するが汚染不純物をフィルムに与えるように作用しないどんな手段からなってもよい。例えば、フィルムをプラスチック袋またはプラスチックケースにパッケージングすることができる。付加的な保護処置として、保護ライナーが、フィルムの(多孔性)上面の上に置かれてもよい。
【0051】
F.試料の調製および基材の使用方法
本発明は、特に質量分析によく適している。基材上に堆積された分析物スポットに短いレーザーパルスを当てて試料を脱着およびイオン化する。イオンは、検出器に達する前に1つ以上の電界によって形成され、次いで加速される。それが検出器に達するのにかかる時間、または粒子が当たる検出器上の位置を用いて粒子の質量を確認することができる。飛行時間分析(TOF)が、使用できる1つの質量分析の方法である。10,000Da未満の分子については、リフレクトロンモードを用いて検出器に達するイオンの運動エネルギー分布を凝縮する。この方法は、質量分析の解像度を増加させるために開発され、主に10,000Da未満の分子について用いられる。この比較的高い解像度はしばしば、感度の低下および限られた質量範囲をもたらす。
【実施例】
【0052】
G.実施例
実施例1〜4
微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム(MPF)を米国特許第4,539,256号明細書において記載された熱誘起相分離技術を用いて製造した。鉱油の初期含有量74%を有するフィナテン(Finathene)(登録商標)1285高密度ポリエチレン(テキサス州、ヒューストンのアトフィナ・ペトロケミカルズ・カンパニー(AtoFina Petrochemicals Co.Houston,TX))を用いて前記フィルムを製造した。適した溶剤を用いて鉱油を抽出した。得られたフィルムの多孔度は約80%であり、平均細孔径が約0.26ミクロンであった。
【0053】
フィルムの親水性を増加させるために、以下の手順を用いた。フィルムの5cm×5cm片を、従来のMALDI金属板と同様に離隔された、一番上の板が直径1mmの64のスルーホールを有する2つのアルミニウム板の間にクランプした。次に、クランプされた試料を、PCT国際公開第0166820号パンフレットに記載された方法によってプラズマ・サーム(Plasma−Therm)蒸気コータを用いて親水性ダイヤモンドライクガラス(DLG)コーティングでコーティングするために、以下の条件下で試料の片側にDLGプラズマを暴露した:酸素プラズマ10秒、酸素およびテトラメチレンシラン混合物30秒、その後に酸素プラズマ20秒。得られたフィルムは、64の円形のDLGスポットを有した。
【0054】
次に、鋭い先端のかみそりの刃を用いて膜の上に円をそっと描き、分析物溶液が堆積される場所を示した。薬剤分子プラゾシン(419.9Mw)の溶液(1:1H2O:MeOH中に10ηg/μL)をフィルム上の円形のDLG領域上に置き(0.5μL)、空気乾燥した。ペプチドニューロテンシン(1672.9Mw)の溶液(1:1H2O:MeOH中に0.1μg/μL)をフィルム上の円形のDLG領域上に置き(0.5μL)、空気乾燥した。プラゾシンは、抗高血圧薬と呼ばれる薬剤のクラスに属する。それは高血圧(高血圧症)を治療するために使用される。他方、ニューロテンシンは、哺乳類の異なった中枢および末梢生理学機能に影響を与える内因性トリデカ−ペプチド神経伝達物質である。リフレクトロンモードを全ての試験について用いた。従来のマトリックスと併用しておよび併用せずに本発明の多孔性基材を使用できることを示すために、0.5μLのマトリックス溶液(α−シアノ4−ヒドロキシ桂皮酸−CHCA、1:1アセトニトリル:水、0.1%TFA)を添加して上記の薬剤およびペプチド分析物を用いて実施例1〜4を試験した。比較例として、同じ薬剤およびペプチド分子を、CHCAマトリックスを有する従来のMALDI鋼板を用いて分析した。
【0055】
各分析のために、2スポット/反復試験を行い、解像度(R)の類似性および信号対雑音(S/N)比について互いに視覚的に比較した。解像度は、質量分析計が異なった質量/電荷比のイオン間を区別する能力である。より大きな解像度は、同様な分子量のイオンを識別する能力の増大に直接に相応する。解像度は通常、R=m/Dmとして定義され、Dmが、ちょうど解像される2つの隣接したピーク間の質量の差であり、mが第1のピークの質量である。MALDI−TOF(飛行時間)測定において、Dmが、mに相当するピークの半値幅(FWHM)である。S/Nは、所定の時点においての所望の信号の振幅の、雑音信号の振幅に対する比である。S/Nに影響を与える1つの因子は、分析物の濃度である。S/Nは通常、分析物の濃度の増加と共に増加する。2スポットが互いによく対照をなさなかった場合、新たに作製されたフィルムを用いて分析を再び行なった。以下の表1は、従来のLDI鋼板と比べられるLDI基材としての、マトリックスを用いた場合と用いない場合の、DLGのコーティングされた多孔性フィルムの使用を示す。従来のMALDIターゲット上の、マトリックスを用いるプラゾシン(C1)と、DLGコーティングを有する黒鉛配合MPF上の、マトリックスを用いないプラゾシン(E7)とのLDI質量スペクトルを図1aおよび1bに示す。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例5〜8
実施例5〜8は、LDI基材としての粒子配合多孔性フィルムの使用について説明する。前記フィルムを上記の実施例1〜4の場合と同様に作製したが、ただし、GM9255高密度ポリエチレンを使用した(ヘキスト・セラニーズ(Hoescht Celanese))。鉱油に溶かした黒鉛の30%分散系を用いて、黒鉛を約22重量%(オハイオ州、ウェストレークのティムカル・アメリカ社(TimCal America Inc.,Westlake,OH))で前記フィルム中に配合した。膜を2つの金属フレーム間にクランプし、メチルエチルケトン浴中に15分間置き、鉱油を除去した。DLGスポットを上記の実施例1〜4の場合と同じ方法を用いて適用した。分析物を実施例1〜4の場合と同様に基材上に置いた。試験はDLGコーティングを用いておよび用いずに行なわれた。マトリックスを使用しなかった。黒鉛配合フィルムを用いる試験結果を以下の表2に示す。DLGを用いない場合(E5)と、DLGを用いる場合(E7)のプラゾシンのLDI質量スペクトルを図2aおよび2bに示す。DLGを用いない場合(E6)と、DLGを用いる場合(E8)のニューロテンシンのLDI質量スペクトルを図3aおよび3bに示す。
【0058】
実施例9〜12
実施例9〜12は、LDI基材としての粒子配合多孔性フィルムの使用について説明する。前記フィルムを上記の実施例5〜8の場合と同様に作製したが、ただし、FINA1285高密度ポリエチレンおよび非導電性炭素(ジョージア州、マリエッタのコロンビア・ケミカル(Columbian Chemicals,Marietta,GA))を前記フィルム中に配合した。膜を2つの金属フレーム間にクランプし、メチルエチルケトン浴中に15分間置き、鉱油を除去した。DLGスポットを上記の実施例1〜4の場合と同じ方法を用いて適用した。分析物を実施例1〜4の場合と同様に基材上に置いた。試験はDLGコーティングを用いておよび用いずに行なわれた。マトリックスを使用しなかった。炭素配合フィルムを用いる試験結果を以下の表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例13〜16
実施例13〜16は、LDI基材としての金属粒子配合多孔性フィルムの使用について説明する。前記フィルムを上記の実施例5〜8の場合と同様に作製したが、ただし、5〜8%の金属粉末を前記フィルム中に配合した。PbO(酸化鉛、インディアナ州、ハモンドのハモンド・レッド・プロダクツ(Hammond Lead Products,Hammond,IN))およびW(タングステン、コネチカット州、ダンベリーのユニオン・カーバイド・コーポレーション(Union Carbide Corp,Danbury,CT))を金属粉末として使用した。膜を2つの金属フレーム間にクランプし、メチルエチルケトン浴中に15分間置いて鉱油を除去した。DLGスポットを上記の実施例1〜4の場合と同じ方法を用いて適用した。プラゾシンおよびニューロテンシンを試験分析物として用い、実施例1〜4の場合と同様に基材上に置いた。試験は、DLGコーティングを用いておよび用いずに行なわれた。試験のいずれについてもマトリックスを使用しなかった。マトリックスを用いずに金属粒子配合フィルムを用いる試験結果を以下の表3に示し、DLGを用いない場合(E13)と、DLGを用いる場合(E14)のプラゾシンおよびニューロテンシンのLDI質量スペクトルを図4a、4b、4cおよび4dに示す。参考のために、プラゾシンのRおよびS/N比は、マトリックスを有する金属板上で4070および9330であり、ニューロテンシンについてはそれらはそれぞれ、10870および1800である。
【0061】
【表3】

【0062】
実施例17〜24
上記の実施例5〜8に記載された黒鉛配合MPFをDLGスポットと共に用いて互いに非常に近い分子量を有する一連の8種の合成薬剤分子を分析した。前記一連の8種の分子を0.1〜0.3μg/μLの濃度範囲のメタノール中に別々に溶解した。試料をA〜Hと分類した。各溶液1.0μLをMPF上に置き、空気乾燥した。ボイジャー(Voyager)−DE(登録商標)STRバイオスペクトロメトリー・ワークステーション(BioSpectrometry Workstation)をリフレクトロンモードにおいて、陽イオン化および陰イオン化を用いて試験に使用した。陽イオン化および陰イオン化モードの両方において化合物FのLDI質量スペクトルをそれぞれ図5aおよび5bに示し、この技術を用いて、マトリックスを用いずに陽イオン化および陰イオン化モードにおいて低分子量の分子の分子量を確認できることを示す。この技術の感度と再現性をさらに裏づけるために、異なった濃度の化合物4つの混合物を分析した。図6は、3つの反復試験のスペクトルの1つを示し、A(1.0μL)、D(1.0μL)、F(0.5μL)、およびH(1.5μL)のイオン信号(陽イオン化モード)が検出され、濃度の変化にもかかわらず3つの反復試験の実施においてばらつきがないことを示す。8つの化合物の試験の解像度および信号対雑音比を以下の表4に示す。
【0063】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1a】従来のMALDIターゲット上の、マトリックスを用いるプラゾシンの質量スペクトルである。
【図1b】黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、マトリックスを用いないプラゾシンの質量スペクトルである。
【図2a】ダイヤモンドライクガラスコーティングのない、黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム上の、マトリックスを用いないプラゾシンの質量スペクトルである。
【図2b】黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、マトリックスを用いないプラゾシンの質量スペクトルである。
【図3a】ダイヤモンドライクガラスコーティングのない、黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム上の、マトリックスを用いないニューロテンシンの質量スペクトルである。
【図3b】黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、マトリックスを用いないニューロテンシンの質量スペクトルである。
【図4a】ダイヤモンドライクガラスコーティングのない、タングステン粒子を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム上の、マトリックスを用いないプラゾシンの質量スペクトルである。
【図4b】タングステン粒子を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、マトリックスを用いないプラゾシンの質量スペクトルである。
【図4c】ダイヤモンドライクガラスコーティングのない、タングステン粒子を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム上の、マトリックスを用いないニューロテンシンの質量スペクトルである。
【図4d】タングステン粒子を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、マトリックスを用いないニューロテンシンの質量スペクトルである。
【図5a】黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、化学試料の組合せの質量スペクトル(陽イオン化モード)である。
【図5b】黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、化学試料の組合せの質量スペクトル(陰イオン化モード)である。
【図6】黒鉛を含有する微小多孔性高密度ポリエチレンフィルム+ダイヤモンドライクガラスコーティング上の、化合物の混合物の質量スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面を有するポリマー基材と、
前記ポリマー基材の前記第1の表面の上の複数の細孔と、
前記複数の細孔の少なくとも一部の上のコーティングと、を含み、
分析物を受容し、後に前記分析物を脱離させるように構成される、多孔性ポリマー物品。
【請求項2】
前記コーティングが実質上不揮発性である、請求項1に記載の多孔性ポリマー物品。
【請求項3】
前記コーティングがダイヤモンドライクガラスを含む、請求項1に記載の多孔性ポリマー物品。
【請求項4】
黒鉛粒子をさらに含む、請求項1に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項5】
炭素粒子をさらに含む、請求項1に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項6】
熱誘起相分離によって形成される、請求項1に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項7】
高密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項8】
質量分析の間、試料を保持するように構成および配置される、請求項1に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項9】
第1の表面を有し、充填剤を含有するポリマー基材と、
前記ポリマー基材の前記第1の表面の上の複数の細孔と、を含み、
分析物を受容し、後に前記分析物を脱離させるように構成される、多孔性ポリマー物品。
【請求項10】
前記充填剤が、金属粒子、金属酸化物、炭素粒子、またはそれらの組合せを含む、請求項9に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項11】
炭素粒子をさらに含む、請求項9に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項12】
熱誘起相分離によって形成される、請求項9に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項13】
高密度ポリエチレンを含む、請求項9に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項14】
質量分析の間、試料を保持するように構成および配置される、請求項9に記載の多孔性ポリマー基材。
【請求項15】
粒状充填剤を含有する熱誘起相分離されたフィルムを含むポリマー基材と、
前記ポリマー基材中の複数の細孔と、を含み、
分析物を受容し、後に前記分析物を脱離させるように構成される、多孔性ポリマー物品。
【請求項16】
前記ポリマー基材がポリエチレンを含む、請求項15に記載の多孔性ポリマー物品。
【請求項17】
前記ポリマー基材が高密度ポリエチレンを含む、請求項15に記載の多孔性ポリマー物品。
【請求項18】
前記粒状充填剤が、金属粒子、金属酸化物、炭素粒子、またはそれらの組合せを含む、請求項15に記載の多孔性ポリマー物品。
【請求項19】
ダイヤモンドライクガラスのコーティングをさらに含む、請求項15に記載の多孔性ポリマー物品。
【請求項20】
試料材料を受容するように構成された多孔性ポリマー基材を提供する工程と、
高エネルギービームを用いて前記基材から分析物を脱離させる工程と、
脱離された分析物を質量分析計を用いて分析する工程とを含む、試料材料の分析方法。
【請求項21】
前記多孔性ポリマー基材が粒子充填剤を含有する、請求項20に記載の試料材料の分析方法。
【請求項22】
前記粒子充填剤が、金属粒子、金属酸化物粒子、炭素粒子、またはそれらの組合せを含む、請求項21に記載の試料材料の分析方法。
【請求項23】
前記多孔性ポリマー基材がコーティングを有する、請求項20に記載の試料材料の分析方法。
【請求項24】
前記コーティングがダイヤモンドライクガラスを含む、請求項23に記載の試料材料の分析方法。
【請求項25】
前記多孔性ポリマー基材が熱誘起相分離によって形成される、請求項20に記載の試料材料の分析方法。
【請求項26】
前記高エネルギービームがレーザービームを含む、請求項20に記載の試料材料の分析方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−503592(P2007−503592A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532407(P2006−532407)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/011468
【国際公開番号】WO2005/004191
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】