レーザ光によるワーク加工装置
【課題】円、円弧、S字等の曲線を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、走査速度の低下を抑えて、加工効率を向上させる。
【解決手段】 このワーク加工装置は、ガラス基板等のワークにレーザ光を照射して加工を行う装置であって、加工すべきワークが載置されるワークテーブル2と、テーブル移動機構5と、レーザ光を出力するレーザ光出力部15と、偏向・回転機構18と、走査制御手段と、を備えている。テーブル移動機構5は、ワークテーブル2を、載置面と平行な面内において互いに直交するx,y方向に移動する。偏向・回転機構18は、レーザ光出力部15から出射されたレーザ光を出射軸から偏向させるとともに、偏向されたレーザ光を出射軸の回りに回転させる。走査制御手段は、テーブル移動機構5及び偏向・回転機構18の駆動を協調制御して、レーザ光をワーク上で走査する。
【解決手段】 このワーク加工装置は、ガラス基板等のワークにレーザ光を照射して加工を行う装置であって、加工すべきワークが載置されるワークテーブル2と、テーブル移動機構5と、レーザ光を出力するレーザ光出力部15と、偏向・回転機構18と、走査制御手段と、を備えている。テーブル移動機構5は、ワークテーブル2を、載置面と平行な面内において互いに直交するx,y方向に移動する。偏向・回転機構18は、レーザ光出力部15から出射されたレーザ光を出射軸から偏向させるとともに、偏向されたレーザ光を出射軸の回りに回転させる。走査制御手段は、テーブル移動機構5及び偏向・回転機構18の駆動を協調制御して、レーザ光をワーク上で走査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工装置、特に、ガラス基板等のワークにレーザ光を照射して加工を行うワーク加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光によるワーク加工装置としては、例えば特許文献1に示された装置が知られている。この種の加工装置では、波長が532nm程度のグリーンレーザ光がガラス基板等のワークに照射される。グリーンレーザ光は、一般的にはガラス基板を透過するが、レーザ光を集光し、その強度があるしきい値を越えると、ガラス基板はレーザ光を吸収することになる。このような状態では、レーザ光の集光部にプラズマが発生し、これによりガラス基板は蒸散する。以上のような原理を利用して、ガラス基板に孔を形成する等の加工が可能である。
【0003】
また、特許文献2には、レーザ光集光用光学系の下方に、偏芯用光学系及びアシストガスノズルを設けたレーザ加工ヘッドが示されている。偏芯用光学系は、回転駆動自在であり、レーザ光をレーザ光集光用光学系の光軸から偏芯させる。また、アシストガスノズルは、偏芯用光学系からのレーザ光を通過させると同時に、アシストガスを同軸に噴射する。この特許文献2の偏芯用光学系は、間隔をあけて配置された1組のウェッジプリズムを有している。そして、各ウェッジプリズムはそれぞれモータによって光軸の回りに回転自在である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118054号公報
【特許文献2】特開平11−156579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような従来のレーザ光による加工装置を用いて、円、円弧、S字等の曲線に沿ってガラス基板上にレーザ光を走査する場合、ガラス基板が載置されたテーブルをx方向及びy方向に同期させて駆動する必要がある。例えば、x方向に延びる直線から円弧状の曲線部分を介してy方向に延びる直線の軌跡に沿ってレーザ光を走査する場合、当初はx方向駆動用のモータのみでテーブルを移動し、円弧状の軌跡の開始位置でy方向駆動用モータを駆動させ、円弧状の軌跡の終了位置でx方向駆動用モータを停止させる必要がある。
【0006】
しかし、テーブルは比較的大きな慣性を有しているので、各モータの駆動制御に対して即座にテーブルを移動させたり、停止させたりすることができない。すなわち、円弧状軌跡の開始位置でy方向駆動用モータの駆動を開始しても、テーブルのy方向の動きが遅れ、また逆に円弧状軌跡の終了位置でx方向駆動用モータを停止させてもテーブルの慣性でx方向の動きが即座に停止するわけではない。
【0007】
このため、以上のようなテーブルの慣性による追従性の低下を見込んで制御を行うか、あるいは走査速度(テーブルの移動速度)を低くして加工を行う必要がある。この場合は、制御が複雑になり、また加工速度が低下するので加工効率が低下する。
【0008】
本発明の課題は、円、円弧、S字等の曲線を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、走査速度の低下を抑えて、加工効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、ワークにレーザ光を照射して加工を行う装置であって、加工すべきワークが載置されるワークテーブルと、テーブル駆動手段と、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、偏向・回転手段と、走査制御手段と、を備えている。テーブル駆動手段は、ワークテーブルを、載置面と平行な面内において互いに直交するx,y方向に移動する。偏向・回転手段は、レーザ光出力部から出射されたレーザ光を出射軸から偏向させるとともに、偏向されたレーザ光を出射軸の回りに回転させる。走査制御手段は、テーブル駆動手段及び偏向・回転手段の駆動を協調制御して、レーザ光をワーク上で走査する。
【0010】
この装置では、ワークの載置されたワークテーブルがテーブル駆動手段によってx及びy方向に駆動されるとともに、出射軸から偏向されたレーザ光が偏向・回転手段によって出射軸の回りに回転させられる。このため、加工ラインが曲線を含む場合、その曲線部分において、ワークテーブルをx,y方向に移動させながらレーザ光を偏向、回転させることによって、ワークテーブルを、加工ラインの曲線よりも大きな半径を描くような軌跡で移動させることが可能になる。
【0011】
ここでは、ワークテーブルによる走査軌跡の半径を、より大きくすることができるので、駆動手段に対するワークテーブルの追従性が鈍い場合でも、走査速度を比較的速くすることができる。したがって、加工速度が速くなり、加工効率が向上する。
【0012】
第2発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1発明の装置において、偏向・回転手段は、対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための回転手段と、レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、を有する。
【0013】
ここでは、1対のウェッジプリズムを出射軸回りに回転させることによって、ワーク上に集光されているレーザ光を回転させることができる。
【0014】
第3発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第2発明の装置において、偏向・回転手段の回転手段は、第1ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための第1モータと、第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための第2モータと、をさらに有する。
【0015】
ここでは、各ウェッジプリズムを別々に回転制御できる。このため、レーザ光の偏向量を任意に制御することができる。
【0016】
第4発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1発明の装置において、偏向・回転手段の回転手段は、第1及び第2ウェッジプリズムが内部に配置された中空モータである。
【0017】
第5発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1発明の装置において、走査制御手段は、直線状の加工ラインを走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御する。また、曲線状の加工ラインを走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをX方向及びY方向に移動制御するとともに、偏向・回転手段によってレーザ光を回転させる。
【0018】
ここでは、前記同様に、ワークテーブルによる走査軌跡の半径を、より大きくすることができる。したがって、駆動手段に対するワークテーブルの追従性が鈍い場合でも、走査速度を比較的速くすることができ、加工効率が向上する。
【0019】
第6発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第5発明の装置において、偏向・回転手段は、対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための回転手段と、レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、を有している。そして、走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、加工ラインの直線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御する。また、加工ラインの曲線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに同じ方向に回転させる。
【0020】
ここでは、前記同様に、ワークテーブルによる走査軌跡の半径を、より大きくすることができる。
【0021】
第7発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第5発明の装置において、偏向・回転手段は、対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための回転手段と、レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、を有している。そして、走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、加工ラインの直線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御する。また、加工ラインの曲線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに逆方向に回転させる。
【0022】
ここでは、ワークテーブルの走査半径をより大きくすることができ、加工効率をより向上させることができる。
【0023】
第8発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1から第7発明のいずれかの装置において、レーザ光出力部と偏向・回転手段との間に配置され、1対のウェッジプリズム及び1対のウェッジプリズムが内部に配置された中空モータからなり、レーザ光の集光点を回転させるための集光点回転機構をさらに備えている。
【0024】
ここでは、1対のウェッジプリズムを通過して偏向されたレーザ光は、入射光軸の周りに回転させられる。この偏向され、かつ回転するレーザ光は、ワーク上に集光され、円形を描く。そして、この円形の軌跡全体が加工ラインに沿って走査される。
【発明の効果】
【0025】
以上のような本発明では、レーザ光を用いたワークの加工において、曲線状の軌跡を含む走査線に沿ってレーザ加工する場合に、走査速度の低下を抑えて、加工効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるワーク加工装置の外観斜視図。
【図2】ワークテーブルの拡大斜視図。
【図3】レーザ照射ヘッドの構成を拡大して示す斜視図。
【図4】高速中空モータ及び高速回転用ウェッジプリズムの配置を模式的に示した図。
【図5】プリズムの頂角と偏角との関係を示す図。
【図6】第1及び第2低速モータ、第1及び第2ウェッジプリズム、並びに集光レンズの配置を模式的に示した図。
【図7】本装置の制御ブロック図。
【図8】レーザ光の軌跡を示す図。
【図9】集光点をz軸方向に制御する作用を説明する模式図。
【図10】本装置による第1加工例の加工ライン及び走査軌跡を示す図。
【図11】第1加工例の各モータの速度制御を示すタイムチャート。
【図12】第1加工例の制御フローチャート。
【図13】本装置による第2加工例の加工ライン及び走査軌跡を示す図。
【図14】第2加工例の各モータの速度制御を示すタイムチャート。
【図15】第2加工例の制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[全体構成]
図1に本発明の一実施形態によるワーク加工装置の全体構成を示す。このワーク加工装置は、ガラス基板等のワークに加工ラインに沿ってレーザ光を照射し、孔開け等の加工を行うための装置である。この装置は、ベッド1と、ワークとしてのガラス基板が載置されるワークテーブル2と、ガラス基板にレーザ光を照射するためのレーザ光照射ヘッド3と、を備えている。ここで、図1に示すように、ベッド1の上面に沿った平面において、互いに直交する軸をx軸、y軸とし、これらの軸に直交する鉛直方向の軸をz軸と定義する。また、x軸に沿った両方向(+方向及び−方向)をx軸方向、y軸に沿った両方向をy軸方向、z軸に沿った両方向をz軸方向と定義する。
【0028】
[ワークテーブル及びその移動機構]
<ワークテーブル>
ワークテーブル2は、矩形状に形成されており、ワークテーブル2の下方には、ワークテーブル2をx軸方向及びy軸方向に移動させるためのテーブル移動機構5が設けられている。
【0029】
ワークテーブル2は、図2に拡大して示すように、複数のブロック6を有している。この複数のブロック6は、図中、一点鎖線で示すガラス基板Gをワークテーブル2の表面から持ち上げて支持するための部材であり、ガラス基板Gの加工ラインL(破線で示す)を避けるために、ワークテーブル2の任意の位置に取り付けることが可能である。また、ワークテーブル2には複数の吸気口2aが格子状に形成されるとともに、各ブロック6には上下方向に貫通する吸気孔6aが形成されている。そして、ブロック6の吸気孔6aとワークテーブル2の吸気口2aとを接続することによって、ブロック6上に配置されるガラス基板Gを吸着固定することが可能である。なお、吸気のための機構は、周知の排気ポンプ等によって構成されており、詳細は省略する。
【0030】
<テーブル移動機構>
テーブル移動機構5は、図1に示すように、それぞれ1対の第1及び第2ガイドレール8,9と、第1及び第2移動テーブル10,11と、各移動テーブル10,11を駆動するためのy軸モータ5a及びx軸モータ5b(図7参照)と、を有している。1対の第1ガイドレール8はベッド1の上面にy軸方向に延びて設けられている。第1移動テーブル10は、第1ガイドレール8の上部に設けられ、第1ガイドレール8に移動自在に係合する複数のガイド部10aを下面に有している。第2ガイドレール9は第1移動テーブル10の上面にx軸方向に延びて設けられている。第2移動テーブル11は、第2ガイドレール9の上部に設けられ、第2ガイドレール9に移動自在に係合する複数のガイド部11aを下面に有している。第2移動テーブル11の上部には、固定部材12を介してワークテーブル2が取り付けられている。
【0031】
以上のようなテーブル移動機構5によって、ワークテーブル2は、x軸方向及びy軸方向に移動自在である。
【0032】
[レーザ光照射ヘッド]
レーザ光照射ヘッド3は、図1及び図3に示すように、ベッド1の上面に配置された門型フレーム1aに装着されており、レーザ光出力部15と、光学系16と、内部に1対の高速回転用ウェッジプリズム(後述)が組み込まれた高速中空モータ17と、内部に1対の低速回転用ウェッジプリズム(後述)及び集光レンズが組み込まれた偏向・回転機構18と、を有している。また、レーザ光照射ヘッド3をx軸方向に移動させるためのx軸方向移動機構21と、高速中空モータ17及び偏向・回転機構18をz軸方向に移動させるためのz軸方向移動機構22と、が設けられている。z軸方向移動機構22はz軸モータ22a(図7参照)等を有している。
【0033】
<レーザ光出力部>
レーザ光出力部15は従来と同様のレーザ管により構成されている。このレーザ光出力部15によって、波長532nmのグリーンレーザがy軸に沿ってワークテーブル2とは逆側に出射される。
【0034】
<光学系>
光学系16は、レーザ光出力部15からのレーザ光を高速中空モータ17に組み込まれた1対の高速回転用ウェッジプリズムに導くものである。この光学系16は、図3に拡大して示すように、第1〜第4ミラー25〜28と、レーザ出力を計測するパワーモニタ29と、ビームエキスパンダ30と、を有している。
【0035】
第1ミラー25は、レーザ光出力部15の出力側の近傍に配置されており、y軸方向に出射されたレーザ光をx軸方向に反射する。第2ミラー26は、x軸方向において第1ミラー25と並べて配置されており、x軸方向に進行するレーザ光をy軸方向に反射して、ワークテーブル2側に導く。第3ミラー27及び第4ミラー28は、高速中空モータ17の上方にx軸方向に並べて配置されている。第3ミラー27は第2ミラー26によって反射されてきたレーザ光を第4ミラー28側に導く。第4ミラー28は第3ミラー27によって反射されてきたレーザ光を下方の高速中空モータ17に導く。ビームエキスパンダ30は、第2ミラー26と第3ミラー27との間に配置され、第2ミラー26によって反射されてきたレーザ光を一定の倍率の平行光束に拡げるために設けられている。このビームエキスパンダ30によって、レーザ光をより小さなスポットに集光させることが可能となる。
【0036】
<高速回転用ウェッジプリズム及び高速中空モータ>
内部に高速回転用ウェッジプリズム321,322が配置された高速中空モータ17の模式図を図4に示している。高速中空モータ17は、中心にz軸方向に延びる回転軸Rを有し、この回転軸Rを含む中央部が中空になっている。そして、この中空部に1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322が固定されている。1対のウェッジプリズム321,322は、同形状、同比重であって、屈折率のみが異なっている。各ウェッジプリズム321,322は、それぞれ回転軸Rに対して傾斜する斜面321a,322aと、回転軸Rに垂直な垂直面321b,322bと、を有している。そして、1対のウェッジプリズム321,322は、互いの垂直面321b,322bが近接して対向するように配置され、2つの垂直面321b,322bが平行で、かつ2つの斜面321a,322aが平行になるように配置されている。
【0037】
同形状、同比重の2つの高速回転用ウェッジプリズム321,322を以上のように配置することにより、2つの高速回転用ウェッジプリズム321,322の全体の重心は回転軸R上に位置することになる。このため、これらのウェッジプリズム321,322を高速で回転させても、動的アンバランス量を非常に小さくすることができる。
【0038】
<2つのウェッジプリズムを用いた場合の偏角について>
図5を参照して、プリズムの頂角をδ、屈折率をnとした場合、このプリズムの偏角θは、δが小さい場合、
(n−1)・δ
である。なお、上式は、sinδ=δ(単位はラジアン)で近似できる程度にδが小さい場合の近似式である。本実施形態で用いるプリズムでは、頂角δは大きくても5°程度なので、sinδ=δと近似しても差し支えない。したがって、同形状(同じ頂角)で屈折率がそれぞれn1,n2である2つのウェッジプリズムのそれぞれの偏角θ1,θ2は、
θ1=(n1−1)・δ
θ2=(n2−1)・δ
である。そして2つのウェッジプリズムの斜面が平行になるように組み合わせて配置した場合の偏角θは、
θ=(n1−1)・δ−(n2−1)・δ=(n1−n2)・δ
となる。以上から明らかなように、頂角δが同じで、かつ同じ材質のウェッジプリズムの組合せであれば、n1=n2で、トータルの偏角は「0」になる。
【0039】
しかし、n1≠n2であれば、トータルの偏角は、「0」にならず、2つのウェッジプリズムの屈折率の差に比例することになる。
【0040】
そこで、ここでは、2つの高速回転用ウェッジプリズム321,322の屈折率を異ならせて、両ウェッジプリズム321,322を通過するレーザ光を偏向するようにしている。すなわち、このようなウェッジプリズム321,322を用いることによって、回転バランスの良いレーザ光を偏向するための機構を実現することができる。
【0041】
なお、同比重で屈折率の異なるウェッジプリズムの例としては、例えば以下のような組み合わせが考えられる。
【0042】
<例1> S-BSM22+S-TIH11(比重:3.24、株式会社オハラ製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.169」である。
【0043】
<例2> N-SSK2+N-SF57(比重:3.53、ショット日本株式会社製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.232」である。
【0044】
<例3> BACD11+E-FD10(比重:3.07、HOYA株式会社製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.170」である。
【0045】
なお、両ウェッジプリズム321,322の形状(頂角)については、後述する集光レンズの焦点距離fと偏角θによって決まるレーザ光の回転半径r(=f・tanθ又はf・θ)が、所望の値になるように設定される。
【0046】
<低速回転用ウェッジプリズム、集光レンズ>
内部に1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342が配置された偏向・回転機構18を、図6に模式的に示す。偏向・回転機構18は、中心にz軸方向に延びる回転軸を有している。この回転軸は、高速中空モータ17の回転軸Rと同軸である。この偏向・回転機構18は、回転軸Rを含む中心部に1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342と、これらのウェッジプリズム341,342のそれぞれに対応して設けられた低速回転用の第1低速モータ345及び第2低速モータ346と、を有している。第1低速モータ345及び第2低速モータ346は中空モータであり、中空の回転軸の内部にウェッジプリズム341,342が装着されている。これらのウェッジプリズム341,342のそれぞれは、対応して設けられた低速回転用の第1低速モータ345及び第2低速モータ346によって個別に回転し、また所定の回転角度で維持することが可能である。
【0047】
1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342は、同形状、同材質(同比重)であり、したがって屈折率も同じである。また、1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342は、それぞれ回転軸に対して傾斜する斜面341a,342aと、回転軸に対して垂直な垂直面341b,342bを有している。このような2つのウェッジプリズム341,342の組合せによって、1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342は所定の偏角を有することができる。
【0048】
また、偏向・回転機構18の1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342の出力側には、集光レンズ35が固定されている。なお、集光レンズ35は偏向・回転機構18とは別に単独で配置するようにしても良い。
【0049】
<レーザ照射ヘッドの支持及び搬送系>
以上のようなレーザ照射ヘッド3は、前述のように、ベッド1の門型フレーム1aに支持されている。より詳細には、図3に示すように、門型フレーム1aの上面にはx軸方向に延びる1対の第3ガイドレール36が設けられており、この1対の第3ガイドレール36及び図示しない駆動機構がx軸方向移動機構21を構成している。そして、1対の第3ガイドレール36には、支持部材37が移動自在に支持されている。支持部材37は、第3ガイドレール36に支持された横支持部材38と、横支持部材38のワークテーブル2側の一端側から下方に延びる縦支持部材39と、を有している。縦支持部材39の側面には、z軸方向に延びる1対の第4ガイドレール40が設けられており、この1対の第4ガイドレール40及び図示しない駆動機構がz軸方向移動機構22を構成している。第4ガイドレール40には、z軸方向に移動自在に第3移動テーブル41が支持されている。
【0050】
そして、レーザ光出力部15、第1〜第4ミラー25〜28、パワーモニタ29、及びビームエキスパンダ30が、横支持部材38に支持されている。また、第3移動テーブル41にはモータ支持部材42が固定されており、このモータ支持部材42に、高速中空モータ17及び偏向・回転機構18が支持されている。
【0051】
[制御ブロック図]
このガラス基板加工装置は、図7に示すように、コントローラ50を有している。コントローラ50には、レーザ出力部15や、各移動テーブル10,11を駆動するためのy軸モータ5a、x軸モータ5b、z軸モータ22a、高速中空モータ17、第1及び第2低速モータ345,346が接続されている。そして、コントローラ50は、レーザ出力部15からのレーザ出力等を制御するとともに、各モータの回転を制御することによってレーザ光の走査軌跡等を制御する。
【0052】
[動作]
<基本的な加工動作>
次に、レーザ光によるガラス基板の加工動作について説明する。
【0053】
まず、ワークテーブル2の表面に複数のブロック6を設置する。このとき、複数のブロック6は、図2に示すように、ガラス基板Gの加工ラインLを避けるように配置する。以上のようにして設置された複数のブロック6上に、加工すべきガラス基板Gを載置する。
【0054】
次に、x軸方向移動機構21によってレーザ照射ヘッド3をx軸方向に移動し、またテーブル移動機構5によってワークテーブル2をy軸方向に移動し、レーザ照射ヘッド3によるレーザ光の集光点が加工ラインLのスタート位置にくるように位置させる。
【0055】
以上のようにしてレーザ照射ヘッド3及びガラス基板Gを加工位置に移動させた後、レーザ光をガラス基板に照射して加工を行う。ここでは、レーザ光出力部15から出射されたレーザ光は、第1ミラー25によって反射されて第2ミラー26に導かれる。なお、第1ミラー25に入射したレーザ光はパワーモニタ29によってレーザ出力が計測される。第2ミラー26に入射したレーザ光はy軸方向に反射され、ビームエキスパンダ30によって光束が拡げられて第3ミラー27に導かれる。そして、第3ミラー27で反射され、さらに第4ミラー28で反射されたレーザ光は、高速中空モータ17の中心部に設けられた1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322に入力される。
【0056】
1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322に入力されたレーザ光は、2つのウェッジプリズム321,322の屈折率が異なることにより、偏向されて出力される。また、高速回転用ウェッジプリズム321,322は,例えば15000rpm以上で高速回転させられるので、これらのウェッジプリズム321,322を透過したレーザ光は、小さい回転半径(例えば直径0.4mm〜0.8mm)で高速回転している。
【0057】
高速回転用ウェッジプリズム321,322から出射されたレーザ光は、低速回転用ウェッジプリズム341,342に入力される。この低速回転用ウェッジプリズム341,342は、一方が他方に対して回転させられており、高速回転用ウェッジプリズム321,322に比較して大きな偏角を有している。このため、低速回転用ウェッジプリズム341,342を回転させることにより、高速回転するレーザ光が、比較的大きな回転半径(例えば外側直径5.0mm)で回転走査される。なお、低速回転用ウェッジプリズム341,342の回転数は低く、例えば400〜800rpm程度である。
【0058】
以上のようなレーザ光のガラス基板上での軌跡を図8に示している。ここで、1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322における加工誤差や取付誤差等によって、高速回転用ウェッジプリズム321,322によって偏向、回転されたレーザ光により描かれる円の径に誤差が生じる。この誤差によって、最終的に加工される孔の径に誤差が生じる。この場合は、低速回転用ウェッジプリズム341,342の一方を他方に対して回転させて、偏角を調整し、低速回転用ウェッジプリズム341,342を通過したレーザ光による走査軌跡を調整すればよい。これにより、高い精度で所望の径の孔を加工することができる。
【0059】
ここで、レーザ光による1回の加工でガラスが除去される高さは数十μmである。したがって、ガラス基板Gに孔開け加工を行う場合、集光点を加工ラインに沿って一度だけ走査しても孔を形成すること、すなわち加工ラインの内側の部分を抜き落とすことは、一般的に困難である。
【0060】
そこで通常は、まず、集光点(加工部位)がガラス基板の下面に形成されるように、集光レンズ35を含む偏向・回転機構18のz軸方向の位置をz軸移動装置22によって制御する(図9(a)参照)。この状態で集光点を加工ラインに沿って1周させた後、偏向・回転機構18のz軸方向の位置を制御することにより、図9(b)に示すように、集光点を上昇させる。そして、同様に集光点を加工ラインに沿って1周させた後、さらに集光点を上昇させる。以上の動作を繰り返し実行することにより、加工ラインの内側部分を抜き落として孔を形成することができる。
【0061】
あるいは、集光点を加工ラインに沿って1周させる毎に上昇させる代わりに、適切な速さで連続的にz軸方向に上昇させ、螺旋状に加工することでも同様に孔開け加工を行うことができる。
【0062】
<コーナー部の第1加工例>
次に、図10に示すような、x軸方向及びy軸方向に延びる2つの直線部と、2つの直線部の間に円弧状の曲線部と、を有する加工ラインに沿ってレーザ光を照射し、加工する場合の協調制御について説明する。図10に示す例では、加工ラインの曲線部の前後において低速回転用ウェッジプリズム341,342のそれぞれを逆方向に回転させながら移動テーブル10,11が移動制御される。図10において、実線が加工ラインであり、一点鎖線がワークテーブル2(レーザ光照射ヘッド3の光学系の中心:レーザ出力部15の出射軸)の移動軌跡である。また、図10における「90°」、「0°」は、それぞれヘッド3の光学系の中心である出射軸に対するレーザ光の位置の角度を示している。
【0063】
なお、図11は図10に示す加工を行う場合の、各モータの速度制御のタイムチャートである。
【0064】
以上の加工を行う場合の、移動テーブル10,11の移動と低速モータの駆動の協調制御について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
ステップS1では、直線部分の加工を行う。ここでは、x軸モータ5bによってワークテーブル2は−x軸方向に定速で移動している。ステップS2では、ワークテーブル2の位置情報を取得する。そして、ステップS3では、ステップS2で得た位置情報から、円弧開始位置か否かを判断する。ここで、円弧開始位置とは、図10の一点鎖線で示すワークテーブル2の走査軌跡において、直線部分が終了し、円弧部分が始まる位置である。
【0066】
円弧の開始位置に到達するまでは、ステップS2及びステップS3を繰り返し実行する。円弧の開始位置に達した場合は、ステップS3からステップS4及びステップS5に移行する。
【0067】
ステップS4では、円弧補間動作を実行する。すなわち、図11に示すように、x軸モータ5bの回転を徐々に低くして、x軸方向の速度を低下させるとともに、y軸モータ5aの回転を「0」から徐々に高くして、y軸方向の速度を上げる。
【0068】
また、ステップS5では、図11に示すように、第2低速モータ346を速度VHで時計周りに回転させるとともに、第1低速モータ345を速度VLで反時計周りに回転させる。なお、速度VHは速度VLの3倍程度に設定されている。
【0069】
ステップS6では、円弧終了位置であるか否かを判断する。円弧の終了位置に到達するまでは、ステップS4及びステップS5を繰り返し実行する。
【0070】
円弧の終了位置に到達した場合は、ステップS6からステップS7に移行する。ステップS7では、y軸方向の直線部分の加工を実行する。すなわち、図11に示すように、x軸モータ5b、第1及び第2低速モータ345,346の回転を停止し、y軸モータ5aのみを回転させて、ワークテーブル2をy軸方向に定速で移動させる。
【0071】
以上のような協調制御によって、実線の加工ラインに対して、偏向・回転機構18の回転中心が一点鎖線上を移動するように移動テーブル10,11を移動制御すればよい。すなわち、ワークテーブル2の走査半径を、加工ラインの曲線部の半径よりも大きくすることができ、ワークテーブル2の走査制御が容易になる。
【0072】
<コーナー部の加工例2>
次に、第1加工例と同様の形状の加工ラインを別の制御処理によって加工する場合の第2加工例を図13及び図14に示す。この図13及び図14に示す例では、加工ラインの曲線部において低速回転用ウェッジプリズム341,342を同方向に回転させながら移動テーブル10,11が移動制御される。図10において、実線が加工ラインであり、一点鎖線がワークテーブル2の移動軌跡である。図14は図13に示す加工を行う場合の、各モータの速度制御のタイムチャートである。
【0073】
以上の加工を行う場合の、移動テーブルの移動と低速モータの駆動の協調制御について、図15のフローチャートを用いて説明する。
【0074】
ステップP1では、直線部分の加工を行う。ここでは、x軸モータ5bによってワークテーブル2は−x軸方向に定速で移動している。ステップP2では、ワークテーブル2の位置情報を取得する。そして、ステップP3では、ステップP2で得た位置情報から、円弧開始位置か否かを判断する。この加工例2の場合の円弧開始位置とは、加工ラインにおいて、直線部分が終了し、円弧部分が始まる位置である。
【0075】
円弧の開始位置に到達するまでは、ステップP2及びステップP3を繰り返し実行する。円弧の開始位置に達した場合は、ステップP3からステップP4及びステップP5に移行する。
【0076】
ステップP4では、円弧補間動作を実行する。すなわち、図14に示すように、x軸モータ5bの回転を徐々に低くして、x軸方向の速度を低下させるとともに、y軸モータ5aの回転を「0」から徐々に高くして、y軸方向の速度を上げる。
【0077】
また、ステップP5では、図14に示すように、第1低速モータ345及び第2低速モータ346を所定の速度で時計周りに回転させる。
【0078】
ステップP6では、円弧終了位置であるか否かを判断する。円弧の終了位置に到達するまでは、ステップP4及びステップP5を繰り返し実行する。
【0079】
円弧の終了位置に到達した場合は、ステップP6からステップP7に移行する。ステップS7では、y軸方向の直線部分の加工を実行する。すなわち、図14に示すように、x軸モータ5b、第1及び第2低速モータ345,346の回転を停止し、y軸モータ5aのみを回転させて、ワークテーブル2をy軸方向に定速で移動させる。
【0080】
以上のような協調制御によって、実線の加工ラインに対して、偏向・回転機構18の回転中心が一点鎖線上を移動するように移動テーブル10,11を移動制御すればよい。すなわち、ワークテーブル2の走査半径を、加工ラインの曲線部の半径よりも大きくすることができ、ワークテーブル2の走査制御が容易になる。
【0081】
なお、加工例2のように低速回転用ウェッジプリズム341,342を同じ速度で同じ方向に回転させる場合には、1つのモータで低速回転用ウェッジプリズム341,342を一体的に回転させてもよい。
【0082】
[特徴]
以上のような本実施形態では、ワークテーブル2をx,y方向に移動させながらレーザ光を偏向、回転させることによって、加工ラインの曲線部分を加工する際に、加工ラインよりも大きな半径を描くような軌跡でワークテーブル2を移動させることが可能になる。したがって、各モータに対するワークテーブルの追従性が鈍い場合でも、走査速度を比較的速くすることができ、加工効率が向上する。
【0083】
また、1対の第2ウェッジプリズムを別々に回転制御できるために、レーザ光の光軸からの偏向量を任意に制御することができる。
【0084】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0085】
前記実施形態では、1対の高速回転用ウェッジプリズムを設け、レーザ光を高速で回転させながら走査するようにしたが、高速回転用ウェッジプリズムを省略してもよい。
【0086】
また、前記実施形態では、集光点をz軸方向に移動させる機構として、集光レンズ35を含む偏向・回転機構18をz軸移動装置22によって移動させるようにしたが、集光レンズ35を含む偏向・回転機構18を固定しておき、ワークテーブル2をz軸方向に移動させるようにしても良い。
【0087】
前記実施形態では、ワークとしてガラス基板を例にとって説明したが、樹脂フィルムを切断加工する場合にも本発明を同様に適用することができる。なお、樹脂フィルムに本発明を適用する場合は、高速回転用の光学系及びz軸移動機構は不要である。
【0088】
図10及び図13に示した加工例は一例であって、他のさまざまの曲線部分を含む加工ラインについて本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
2 ワークテーブル
5a y軸モータ
5b x軸モータ
15 レーザ出力部
16 光学系
17 高速中空モータ
18 偏向・回転機構
321,322 高速回転用ウェッジプリズム
341,342 低速回転用ウェッジプリズム
345,346 低速モータ
35 集光レンズ
50 コントローラ
G ガラス基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工装置、特に、ガラス基板等のワークにレーザ光を照射して加工を行うワーク加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光によるワーク加工装置としては、例えば特許文献1に示された装置が知られている。この種の加工装置では、波長が532nm程度のグリーンレーザ光がガラス基板等のワークに照射される。グリーンレーザ光は、一般的にはガラス基板を透過するが、レーザ光を集光し、その強度があるしきい値を越えると、ガラス基板はレーザ光を吸収することになる。このような状態では、レーザ光の集光部にプラズマが発生し、これによりガラス基板は蒸散する。以上のような原理を利用して、ガラス基板に孔を形成する等の加工が可能である。
【0003】
また、特許文献2には、レーザ光集光用光学系の下方に、偏芯用光学系及びアシストガスノズルを設けたレーザ加工ヘッドが示されている。偏芯用光学系は、回転駆動自在であり、レーザ光をレーザ光集光用光学系の光軸から偏芯させる。また、アシストガスノズルは、偏芯用光学系からのレーザ光を通過させると同時に、アシストガスを同軸に噴射する。この特許文献2の偏芯用光学系は、間隔をあけて配置された1組のウェッジプリズムを有している。そして、各ウェッジプリズムはそれぞれモータによって光軸の回りに回転自在である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118054号公報
【特許文献2】特開平11−156579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような従来のレーザ光による加工装置を用いて、円、円弧、S字等の曲線に沿ってガラス基板上にレーザ光を走査する場合、ガラス基板が載置されたテーブルをx方向及びy方向に同期させて駆動する必要がある。例えば、x方向に延びる直線から円弧状の曲線部分を介してy方向に延びる直線の軌跡に沿ってレーザ光を走査する場合、当初はx方向駆動用のモータのみでテーブルを移動し、円弧状の軌跡の開始位置でy方向駆動用モータを駆動させ、円弧状の軌跡の終了位置でx方向駆動用モータを停止させる必要がある。
【0006】
しかし、テーブルは比較的大きな慣性を有しているので、各モータの駆動制御に対して即座にテーブルを移動させたり、停止させたりすることができない。すなわち、円弧状軌跡の開始位置でy方向駆動用モータの駆動を開始しても、テーブルのy方向の動きが遅れ、また逆に円弧状軌跡の終了位置でx方向駆動用モータを停止させてもテーブルの慣性でx方向の動きが即座に停止するわけではない。
【0007】
このため、以上のようなテーブルの慣性による追従性の低下を見込んで制御を行うか、あるいは走査速度(テーブルの移動速度)を低くして加工を行う必要がある。この場合は、制御が複雑になり、また加工速度が低下するので加工効率が低下する。
【0008】
本発明の課題は、円、円弧、S字等の曲線を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、走査速度の低下を抑えて、加工効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、ワークにレーザ光を照射して加工を行う装置であって、加工すべきワークが載置されるワークテーブルと、テーブル駆動手段と、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、偏向・回転手段と、走査制御手段と、を備えている。テーブル駆動手段は、ワークテーブルを、載置面と平行な面内において互いに直交するx,y方向に移動する。偏向・回転手段は、レーザ光出力部から出射されたレーザ光を出射軸から偏向させるとともに、偏向されたレーザ光を出射軸の回りに回転させる。走査制御手段は、テーブル駆動手段及び偏向・回転手段の駆動を協調制御して、レーザ光をワーク上で走査する。
【0010】
この装置では、ワークの載置されたワークテーブルがテーブル駆動手段によってx及びy方向に駆動されるとともに、出射軸から偏向されたレーザ光が偏向・回転手段によって出射軸の回りに回転させられる。このため、加工ラインが曲線を含む場合、その曲線部分において、ワークテーブルをx,y方向に移動させながらレーザ光を偏向、回転させることによって、ワークテーブルを、加工ラインの曲線よりも大きな半径を描くような軌跡で移動させることが可能になる。
【0011】
ここでは、ワークテーブルによる走査軌跡の半径を、より大きくすることができるので、駆動手段に対するワークテーブルの追従性が鈍い場合でも、走査速度を比較的速くすることができる。したがって、加工速度が速くなり、加工効率が向上する。
【0012】
第2発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1発明の装置において、偏向・回転手段は、対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための回転手段と、レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、を有する。
【0013】
ここでは、1対のウェッジプリズムを出射軸回りに回転させることによって、ワーク上に集光されているレーザ光を回転させることができる。
【0014】
第3発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第2発明の装置において、偏向・回転手段の回転手段は、第1ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための第1モータと、第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための第2モータと、をさらに有する。
【0015】
ここでは、各ウェッジプリズムを別々に回転制御できる。このため、レーザ光の偏向量を任意に制御することができる。
【0016】
第4発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1発明の装置において、偏向・回転手段の回転手段は、第1及び第2ウェッジプリズムが内部に配置された中空モータである。
【0017】
第5発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1発明の装置において、走査制御手段は、直線状の加工ラインを走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御する。また、曲線状の加工ラインを走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをX方向及びY方向に移動制御するとともに、偏向・回転手段によってレーザ光を回転させる。
【0018】
ここでは、前記同様に、ワークテーブルによる走査軌跡の半径を、より大きくすることができる。したがって、駆動手段に対するワークテーブルの追従性が鈍い場合でも、走査速度を比較的速くすることができ、加工効率が向上する。
【0019】
第6発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第5発明の装置において、偏向・回転手段は、対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための回転手段と、レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、を有している。そして、走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、加工ラインの直線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御する。また、加工ラインの曲線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに同じ方向に回転させる。
【0020】
ここでは、前記同様に、ワークテーブルによる走査軌跡の半径を、より大きくすることができる。
【0021】
第7発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第5発明の装置において、偏向・回転手段は、対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに回転させるための回転手段と、レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、を有している。そして、走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、加工ラインの直線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御する。また、加工ラインの曲線部を走査する場合は、テーブル駆動手段によってワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、第1及び第2ウェッジプリズムを出射軸の回りに逆方向に回転させる。
【0022】
ここでは、ワークテーブルの走査半径をより大きくすることができ、加工効率をより向上させることができる。
【0023】
第8発明に係るレーザ光によるワーク加工装置は、第1から第7発明のいずれかの装置において、レーザ光出力部と偏向・回転手段との間に配置され、1対のウェッジプリズム及び1対のウェッジプリズムが内部に配置された中空モータからなり、レーザ光の集光点を回転させるための集光点回転機構をさらに備えている。
【0024】
ここでは、1対のウェッジプリズムを通過して偏向されたレーザ光は、入射光軸の周りに回転させられる。この偏向され、かつ回転するレーザ光は、ワーク上に集光され、円形を描く。そして、この円形の軌跡全体が加工ラインに沿って走査される。
【発明の効果】
【0025】
以上のような本発明では、レーザ光を用いたワークの加工において、曲線状の軌跡を含む走査線に沿ってレーザ加工する場合に、走査速度の低下を抑えて、加工効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態によるワーク加工装置の外観斜視図。
【図2】ワークテーブルの拡大斜視図。
【図3】レーザ照射ヘッドの構成を拡大して示す斜視図。
【図4】高速中空モータ及び高速回転用ウェッジプリズムの配置を模式的に示した図。
【図5】プリズムの頂角と偏角との関係を示す図。
【図6】第1及び第2低速モータ、第1及び第2ウェッジプリズム、並びに集光レンズの配置を模式的に示した図。
【図7】本装置の制御ブロック図。
【図8】レーザ光の軌跡を示す図。
【図9】集光点をz軸方向に制御する作用を説明する模式図。
【図10】本装置による第1加工例の加工ライン及び走査軌跡を示す図。
【図11】第1加工例の各モータの速度制御を示すタイムチャート。
【図12】第1加工例の制御フローチャート。
【図13】本装置による第2加工例の加工ライン及び走査軌跡を示す図。
【図14】第2加工例の各モータの速度制御を示すタイムチャート。
【図15】第2加工例の制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[全体構成]
図1に本発明の一実施形態によるワーク加工装置の全体構成を示す。このワーク加工装置は、ガラス基板等のワークに加工ラインに沿ってレーザ光を照射し、孔開け等の加工を行うための装置である。この装置は、ベッド1と、ワークとしてのガラス基板が載置されるワークテーブル2と、ガラス基板にレーザ光を照射するためのレーザ光照射ヘッド3と、を備えている。ここで、図1に示すように、ベッド1の上面に沿った平面において、互いに直交する軸をx軸、y軸とし、これらの軸に直交する鉛直方向の軸をz軸と定義する。また、x軸に沿った両方向(+方向及び−方向)をx軸方向、y軸に沿った両方向をy軸方向、z軸に沿った両方向をz軸方向と定義する。
【0028】
[ワークテーブル及びその移動機構]
<ワークテーブル>
ワークテーブル2は、矩形状に形成されており、ワークテーブル2の下方には、ワークテーブル2をx軸方向及びy軸方向に移動させるためのテーブル移動機構5が設けられている。
【0029】
ワークテーブル2は、図2に拡大して示すように、複数のブロック6を有している。この複数のブロック6は、図中、一点鎖線で示すガラス基板Gをワークテーブル2の表面から持ち上げて支持するための部材であり、ガラス基板Gの加工ラインL(破線で示す)を避けるために、ワークテーブル2の任意の位置に取り付けることが可能である。また、ワークテーブル2には複数の吸気口2aが格子状に形成されるとともに、各ブロック6には上下方向に貫通する吸気孔6aが形成されている。そして、ブロック6の吸気孔6aとワークテーブル2の吸気口2aとを接続することによって、ブロック6上に配置されるガラス基板Gを吸着固定することが可能である。なお、吸気のための機構は、周知の排気ポンプ等によって構成されており、詳細は省略する。
【0030】
<テーブル移動機構>
テーブル移動機構5は、図1に示すように、それぞれ1対の第1及び第2ガイドレール8,9と、第1及び第2移動テーブル10,11と、各移動テーブル10,11を駆動するためのy軸モータ5a及びx軸モータ5b(図7参照)と、を有している。1対の第1ガイドレール8はベッド1の上面にy軸方向に延びて設けられている。第1移動テーブル10は、第1ガイドレール8の上部に設けられ、第1ガイドレール8に移動自在に係合する複数のガイド部10aを下面に有している。第2ガイドレール9は第1移動テーブル10の上面にx軸方向に延びて設けられている。第2移動テーブル11は、第2ガイドレール9の上部に設けられ、第2ガイドレール9に移動自在に係合する複数のガイド部11aを下面に有している。第2移動テーブル11の上部には、固定部材12を介してワークテーブル2が取り付けられている。
【0031】
以上のようなテーブル移動機構5によって、ワークテーブル2は、x軸方向及びy軸方向に移動自在である。
【0032】
[レーザ光照射ヘッド]
レーザ光照射ヘッド3は、図1及び図3に示すように、ベッド1の上面に配置された門型フレーム1aに装着されており、レーザ光出力部15と、光学系16と、内部に1対の高速回転用ウェッジプリズム(後述)が組み込まれた高速中空モータ17と、内部に1対の低速回転用ウェッジプリズム(後述)及び集光レンズが組み込まれた偏向・回転機構18と、を有している。また、レーザ光照射ヘッド3をx軸方向に移動させるためのx軸方向移動機構21と、高速中空モータ17及び偏向・回転機構18をz軸方向に移動させるためのz軸方向移動機構22と、が設けられている。z軸方向移動機構22はz軸モータ22a(図7参照)等を有している。
【0033】
<レーザ光出力部>
レーザ光出力部15は従来と同様のレーザ管により構成されている。このレーザ光出力部15によって、波長532nmのグリーンレーザがy軸に沿ってワークテーブル2とは逆側に出射される。
【0034】
<光学系>
光学系16は、レーザ光出力部15からのレーザ光を高速中空モータ17に組み込まれた1対の高速回転用ウェッジプリズムに導くものである。この光学系16は、図3に拡大して示すように、第1〜第4ミラー25〜28と、レーザ出力を計測するパワーモニタ29と、ビームエキスパンダ30と、を有している。
【0035】
第1ミラー25は、レーザ光出力部15の出力側の近傍に配置されており、y軸方向に出射されたレーザ光をx軸方向に反射する。第2ミラー26は、x軸方向において第1ミラー25と並べて配置されており、x軸方向に進行するレーザ光をy軸方向に反射して、ワークテーブル2側に導く。第3ミラー27及び第4ミラー28は、高速中空モータ17の上方にx軸方向に並べて配置されている。第3ミラー27は第2ミラー26によって反射されてきたレーザ光を第4ミラー28側に導く。第4ミラー28は第3ミラー27によって反射されてきたレーザ光を下方の高速中空モータ17に導く。ビームエキスパンダ30は、第2ミラー26と第3ミラー27との間に配置され、第2ミラー26によって反射されてきたレーザ光を一定の倍率の平行光束に拡げるために設けられている。このビームエキスパンダ30によって、レーザ光をより小さなスポットに集光させることが可能となる。
【0036】
<高速回転用ウェッジプリズム及び高速中空モータ>
内部に高速回転用ウェッジプリズム321,322が配置された高速中空モータ17の模式図を図4に示している。高速中空モータ17は、中心にz軸方向に延びる回転軸Rを有し、この回転軸Rを含む中央部が中空になっている。そして、この中空部に1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322が固定されている。1対のウェッジプリズム321,322は、同形状、同比重であって、屈折率のみが異なっている。各ウェッジプリズム321,322は、それぞれ回転軸Rに対して傾斜する斜面321a,322aと、回転軸Rに垂直な垂直面321b,322bと、を有している。そして、1対のウェッジプリズム321,322は、互いの垂直面321b,322bが近接して対向するように配置され、2つの垂直面321b,322bが平行で、かつ2つの斜面321a,322aが平行になるように配置されている。
【0037】
同形状、同比重の2つの高速回転用ウェッジプリズム321,322を以上のように配置することにより、2つの高速回転用ウェッジプリズム321,322の全体の重心は回転軸R上に位置することになる。このため、これらのウェッジプリズム321,322を高速で回転させても、動的アンバランス量を非常に小さくすることができる。
【0038】
<2つのウェッジプリズムを用いた場合の偏角について>
図5を参照して、プリズムの頂角をδ、屈折率をnとした場合、このプリズムの偏角θは、δが小さい場合、
(n−1)・δ
である。なお、上式は、sinδ=δ(単位はラジアン)で近似できる程度にδが小さい場合の近似式である。本実施形態で用いるプリズムでは、頂角δは大きくても5°程度なので、sinδ=δと近似しても差し支えない。したがって、同形状(同じ頂角)で屈折率がそれぞれn1,n2である2つのウェッジプリズムのそれぞれの偏角θ1,θ2は、
θ1=(n1−1)・δ
θ2=(n2−1)・δ
である。そして2つのウェッジプリズムの斜面が平行になるように組み合わせて配置した場合の偏角θは、
θ=(n1−1)・δ−(n2−1)・δ=(n1−n2)・δ
となる。以上から明らかなように、頂角δが同じで、かつ同じ材質のウェッジプリズムの組合せであれば、n1=n2で、トータルの偏角は「0」になる。
【0039】
しかし、n1≠n2であれば、トータルの偏角は、「0」にならず、2つのウェッジプリズムの屈折率の差に比例することになる。
【0040】
そこで、ここでは、2つの高速回転用ウェッジプリズム321,322の屈折率を異ならせて、両ウェッジプリズム321,322を通過するレーザ光を偏向するようにしている。すなわち、このようなウェッジプリズム321,322を用いることによって、回転バランスの良いレーザ光を偏向するための機構を実現することができる。
【0041】
なお、同比重で屈折率の異なるウェッジプリズムの例としては、例えば以下のような組み合わせが考えられる。
【0042】
<例1> S-BSM22+S-TIH11(比重:3.24、株式会社オハラ製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.169」である。
【0043】
<例2> N-SSK2+N-SF57(比重:3.53、ショット日本株式会社製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.232」である。
【0044】
<例3> BACD11+E-FD10(比重:3.07、HOYA株式会社製)
この組合せの場合の偏角(°)は、頂角1°に対して、「0.170」である。
【0045】
なお、両ウェッジプリズム321,322の形状(頂角)については、後述する集光レンズの焦点距離fと偏角θによって決まるレーザ光の回転半径r(=f・tanθ又はf・θ)が、所望の値になるように設定される。
【0046】
<低速回転用ウェッジプリズム、集光レンズ>
内部に1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342が配置された偏向・回転機構18を、図6に模式的に示す。偏向・回転機構18は、中心にz軸方向に延びる回転軸を有している。この回転軸は、高速中空モータ17の回転軸Rと同軸である。この偏向・回転機構18は、回転軸Rを含む中心部に1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342と、これらのウェッジプリズム341,342のそれぞれに対応して設けられた低速回転用の第1低速モータ345及び第2低速モータ346と、を有している。第1低速モータ345及び第2低速モータ346は中空モータであり、中空の回転軸の内部にウェッジプリズム341,342が装着されている。これらのウェッジプリズム341,342のそれぞれは、対応して設けられた低速回転用の第1低速モータ345及び第2低速モータ346によって個別に回転し、また所定の回転角度で維持することが可能である。
【0047】
1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342は、同形状、同材質(同比重)であり、したがって屈折率も同じである。また、1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342は、それぞれ回転軸に対して傾斜する斜面341a,342aと、回転軸に対して垂直な垂直面341b,342bを有している。このような2つのウェッジプリズム341,342の組合せによって、1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342は所定の偏角を有することができる。
【0048】
また、偏向・回転機構18の1対の低速回転用ウェッジプリズム341,342の出力側には、集光レンズ35が固定されている。なお、集光レンズ35は偏向・回転機構18とは別に単独で配置するようにしても良い。
【0049】
<レーザ照射ヘッドの支持及び搬送系>
以上のようなレーザ照射ヘッド3は、前述のように、ベッド1の門型フレーム1aに支持されている。より詳細には、図3に示すように、門型フレーム1aの上面にはx軸方向に延びる1対の第3ガイドレール36が設けられており、この1対の第3ガイドレール36及び図示しない駆動機構がx軸方向移動機構21を構成している。そして、1対の第3ガイドレール36には、支持部材37が移動自在に支持されている。支持部材37は、第3ガイドレール36に支持された横支持部材38と、横支持部材38のワークテーブル2側の一端側から下方に延びる縦支持部材39と、を有している。縦支持部材39の側面には、z軸方向に延びる1対の第4ガイドレール40が設けられており、この1対の第4ガイドレール40及び図示しない駆動機構がz軸方向移動機構22を構成している。第4ガイドレール40には、z軸方向に移動自在に第3移動テーブル41が支持されている。
【0050】
そして、レーザ光出力部15、第1〜第4ミラー25〜28、パワーモニタ29、及びビームエキスパンダ30が、横支持部材38に支持されている。また、第3移動テーブル41にはモータ支持部材42が固定されており、このモータ支持部材42に、高速中空モータ17及び偏向・回転機構18が支持されている。
【0051】
[制御ブロック図]
このガラス基板加工装置は、図7に示すように、コントローラ50を有している。コントローラ50には、レーザ出力部15や、各移動テーブル10,11を駆動するためのy軸モータ5a、x軸モータ5b、z軸モータ22a、高速中空モータ17、第1及び第2低速モータ345,346が接続されている。そして、コントローラ50は、レーザ出力部15からのレーザ出力等を制御するとともに、各モータの回転を制御することによってレーザ光の走査軌跡等を制御する。
【0052】
[動作]
<基本的な加工動作>
次に、レーザ光によるガラス基板の加工動作について説明する。
【0053】
まず、ワークテーブル2の表面に複数のブロック6を設置する。このとき、複数のブロック6は、図2に示すように、ガラス基板Gの加工ラインLを避けるように配置する。以上のようにして設置された複数のブロック6上に、加工すべきガラス基板Gを載置する。
【0054】
次に、x軸方向移動機構21によってレーザ照射ヘッド3をx軸方向に移動し、またテーブル移動機構5によってワークテーブル2をy軸方向に移動し、レーザ照射ヘッド3によるレーザ光の集光点が加工ラインLのスタート位置にくるように位置させる。
【0055】
以上のようにしてレーザ照射ヘッド3及びガラス基板Gを加工位置に移動させた後、レーザ光をガラス基板に照射して加工を行う。ここでは、レーザ光出力部15から出射されたレーザ光は、第1ミラー25によって反射されて第2ミラー26に導かれる。なお、第1ミラー25に入射したレーザ光はパワーモニタ29によってレーザ出力が計測される。第2ミラー26に入射したレーザ光はy軸方向に反射され、ビームエキスパンダ30によって光束が拡げられて第3ミラー27に導かれる。そして、第3ミラー27で反射され、さらに第4ミラー28で反射されたレーザ光は、高速中空モータ17の中心部に設けられた1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322に入力される。
【0056】
1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322に入力されたレーザ光は、2つのウェッジプリズム321,322の屈折率が異なることにより、偏向されて出力される。また、高速回転用ウェッジプリズム321,322は,例えば15000rpm以上で高速回転させられるので、これらのウェッジプリズム321,322を透過したレーザ光は、小さい回転半径(例えば直径0.4mm〜0.8mm)で高速回転している。
【0057】
高速回転用ウェッジプリズム321,322から出射されたレーザ光は、低速回転用ウェッジプリズム341,342に入力される。この低速回転用ウェッジプリズム341,342は、一方が他方に対して回転させられており、高速回転用ウェッジプリズム321,322に比較して大きな偏角を有している。このため、低速回転用ウェッジプリズム341,342を回転させることにより、高速回転するレーザ光が、比較的大きな回転半径(例えば外側直径5.0mm)で回転走査される。なお、低速回転用ウェッジプリズム341,342の回転数は低く、例えば400〜800rpm程度である。
【0058】
以上のようなレーザ光のガラス基板上での軌跡を図8に示している。ここで、1対の高速回転用ウェッジプリズム321,322における加工誤差や取付誤差等によって、高速回転用ウェッジプリズム321,322によって偏向、回転されたレーザ光により描かれる円の径に誤差が生じる。この誤差によって、最終的に加工される孔の径に誤差が生じる。この場合は、低速回転用ウェッジプリズム341,342の一方を他方に対して回転させて、偏角を調整し、低速回転用ウェッジプリズム341,342を通過したレーザ光による走査軌跡を調整すればよい。これにより、高い精度で所望の径の孔を加工することができる。
【0059】
ここで、レーザ光による1回の加工でガラスが除去される高さは数十μmである。したがって、ガラス基板Gに孔開け加工を行う場合、集光点を加工ラインに沿って一度だけ走査しても孔を形成すること、すなわち加工ラインの内側の部分を抜き落とすことは、一般的に困難である。
【0060】
そこで通常は、まず、集光点(加工部位)がガラス基板の下面に形成されるように、集光レンズ35を含む偏向・回転機構18のz軸方向の位置をz軸移動装置22によって制御する(図9(a)参照)。この状態で集光点を加工ラインに沿って1周させた後、偏向・回転機構18のz軸方向の位置を制御することにより、図9(b)に示すように、集光点を上昇させる。そして、同様に集光点を加工ラインに沿って1周させた後、さらに集光点を上昇させる。以上の動作を繰り返し実行することにより、加工ラインの内側部分を抜き落として孔を形成することができる。
【0061】
あるいは、集光点を加工ラインに沿って1周させる毎に上昇させる代わりに、適切な速さで連続的にz軸方向に上昇させ、螺旋状に加工することでも同様に孔開け加工を行うことができる。
【0062】
<コーナー部の第1加工例>
次に、図10に示すような、x軸方向及びy軸方向に延びる2つの直線部と、2つの直線部の間に円弧状の曲線部と、を有する加工ラインに沿ってレーザ光を照射し、加工する場合の協調制御について説明する。図10に示す例では、加工ラインの曲線部の前後において低速回転用ウェッジプリズム341,342のそれぞれを逆方向に回転させながら移動テーブル10,11が移動制御される。図10において、実線が加工ラインであり、一点鎖線がワークテーブル2(レーザ光照射ヘッド3の光学系の中心:レーザ出力部15の出射軸)の移動軌跡である。また、図10における「90°」、「0°」は、それぞれヘッド3の光学系の中心である出射軸に対するレーザ光の位置の角度を示している。
【0063】
なお、図11は図10に示す加工を行う場合の、各モータの速度制御のタイムチャートである。
【0064】
以上の加工を行う場合の、移動テーブル10,11の移動と低速モータの駆動の協調制御について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
ステップS1では、直線部分の加工を行う。ここでは、x軸モータ5bによってワークテーブル2は−x軸方向に定速で移動している。ステップS2では、ワークテーブル2の位置情報を取得する。そして、ステップS3では、ステップS2で得た位置情報から、円弧開始位置か否かを判断する。ここで、円弧開始位置とは、図10の一点鎖線で示すワークテーブル2の走査軌跡において、直線部分が終了し、円弧部分が始まる位置である。
【0066】
円弧の開始位置に到達するまでは、ステップS2及びステップS3を繰り返し実行する。円弧の開始位置に達した場合は、ステップS3からステップS4及びステップS5に移行する。
【0067】
ステップS4では、円弧補間動作を実行する。すなわち、図11に示すように、x軸モータ5bの回転を徐々に低くして、x軸方向の速度を低下させるとともに、y軸モータ5aの回転を「0」から徐々に高くして、y軸方向の速度を上げる。
【0068】
また、ステップS5では、図11に示すように、第2低速モータ346を速度VHで時計周りに回転させるとともに、第1低速モータ345を速度VLで反時計周りに回転させる。なお、速度VHは速度VLの3倍程度に設定されている。
【0069】
ステップS6では、円弧終了位置であるか否かを判断する。円弧の終了位置に到達するまでは、ステップS4及びステップS5を繰り返し実行する。
【0070】
円弧の終了位置に到達した場合は、ステップS6からステップS7に移行する。ステップS7では、y軸方向の直線部分の加工を実行する。すなわち、図11に示すように、x軸モータ5b、第1及び第2低速モータ345,346の回転を停止し、y軸モータ5aのみを回転させて、ワークテーブル2をy軸方向に定速で移動させる。
【0071】
以上のような協調制御によって、実線の加工ラインに対して、偏向・回転機構18の回転中心が一点鎖線上を移動するように移動テーブル10,11を移動制御すればよい。すなわち、ワークテーブル2の走査半径を、加工ラインの曲線部の半径よりも大きくすることができ、ワークテーブル2の走査制御が容易になる。
【0072】
<コーナー部の加工例2>
次に、第1加工例と同様の形状の加工ラインを別の制御処理によって加工する場合の第2加工例を図13及び図14に示す。この図13及び図14に示す例では、加工ラインの曲線部において低速回転用ウェッジプリズム341,342を同方向に回転させながら移動テーブル10,11が移動制御される。図10において、実線が加工ラインであり、一点鎖線がワークテーブル2の移動軌跡である。図14は図13に示す加工を行う場合の、各モータの速度制御のタイムチャートである。
【0073】
以上の加工を行う場合の、移動テーブルの移動と低速モータの駆動の協調制御について、図15のフローチャートを用いて説明する。
【0074】
ステップP1では、直線部分の加工を行う。ここでは、x軸モータ5bによってワークテーブル2は−x軸方向に定速で移動している。ステップP2では、ワークテーブル2の位置情報を取得する。そして、ステップP3では、ステップP2で得た位置情報から、円弧開始位置か否かを判断する。この加工例2の場合の円弧開始位置とは、加工ラインにおいて、直線部分が終了し、円弧部分が始まる位置である。
【0075】
円弧の開始位置に到達するまでは、ステップP2及びステップP3を繰り返し実行する。円弧の開始位置に達した場合は、ステップP3からステップP4及びステップP5に移行する。
【0076】
ステップP4では、円弧補間動作を実行する。すなわち、図14に示すように、x軸モータ5bの回転を徐々に低くして、x軸方向の速度を低下させるとともに、y軸モータ5aの回転を「0」から徐々に高くして、y軸方向の速度を上げる。
【0077】
また、ステップP5では、図14に示すように、第1低速モータ345及び第2低速モータ346を所定の速度で時計周りに回転させる。
【0078】
ステップP6では、円弧終了位置であるか否かを判断する。円弧の終了位置に到達するまでは、ステップP4及びステップP5を繰り返し実行する。
【0079】
円弧の終了位置に到達した場合は、ステップP6からステップP7に移行する。ステップS7では、y軸方向の直線部分の加工を実行する。すなわち、図14に示すように、x軸モータ5b、第1及び第2低速モータ345,346の回転を停止し、y軸モータ5aのみを回転させて、ワークテーブル2をy軸方向に定速で移動させる。
【0080】
以上のような協調制御によって、実線の加工ラインに対して、偏向・回転機構18の回転中心が一点鎖線上を移動するように移動テーブル10,11を移動制御すればよい。すなわち、ワークテーブル2の走査半径を、加工ラインの曲線部の半径よりも大きくすることができ、ワークテーブル2の走査制御が容易になる。
【0081】
なお、加工例2のように低速回転用ウェッジプリズム341,342を同じ速度で同じ方向に回転させる場合には、1つのモータで低速回転用ウェッジプリズム341,342を一体的に回転させてもよい。
【0082】
[特徴]
以上のような本実施形態では、ワークテーブル2をx,y方向に移動させながらレーザ光を偏向、回転させることによって、加工ラインの曲線部分を加工する際に、加工ラインよりも大きな半径を描くような軌跡でワークテーブル2を移動させることが可能になる。したがって、各モータに対するワークテーブルの追従性が鈍い場合でも、走査速度を比較的速くすることができ、加工効率が向上する。
【0083】
また、1対の第2ウェッジプリズムを別々に回転制御できるために、レーザ光の光軸からの偏向量を任意に制御することができる。
【0084】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0085】
前記実施形態では、1対の高速回転用ウェッジプリズムを設け、レーザ光を高速で回転させながら走査するようにしたが、高速回転用ウェッジプリズムを省略してもよい。
【0086】
また、前記実施形態では、集光点をz軸方向に移動させる機構として、集光レンズ35を含む偏向・回転機構18をz軸移動装置22によって移動させるようにしたが、集光レンズ35を含む偏向・回転機構18を固定しておき、ワークテーブル2をz軸方向に移動させるようにしても良い。
【0087】
前記実施形態では、ワークとしてガラス基板を例にとって説明したが、樹脂フィルムを切断加工する場合にも本発明を同様に適用することができる。なお、樹脂フィルムに本発明を適用する場合は、高速回転用の光学系及びz軸移動機構は不要である。
【0088】
図10及び図13に示した加工例は一例であって、他のさまざまの曲線部分を含む加工ラインについて本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
2 ワークテーブル
5a y軸モータ
5b x軸モータ
15 レーザ出力部
16 光学系
17 高速中空モータ
18 偏向・回転機構
321,322 高速回転用ウェッジプリズム
341,342 低速回転用ウェッジプリズム
345,346 低速モータ
35 集光レンズ
50 コントローラ
G ガラス基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにレーザ光を照射して加工を行う加工装置であって、
加工すべきワークが載置されるワークテーブルと、
前記ワークテーブルを、載置面と平行な面内において互いに直交するx,y方向に移動するためのテーブル駆動手段と、
レーザ光を出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部から出射されたレーザ光を出射軸から偏向させるとともに、偏向されたレーザ光を出射軸の回りに回転させる偏向・回転手段と、
前記テーブル駆動手段及び前記偏向・回転手段の駆動を協調制御して、レーザ光をワーク上で走査する走査制御手段と、
を備えたレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項2】
前記偏向・回転手段は、
対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、
前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための回転手段と、
レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、
を有する、請求項1に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項3】
前記偏向・回転手段の回転手段は、
前記第1ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための第1モータと、
前記第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための第2モータと、
をさらに有する、請求項2に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項4】
前記偏向・回転手段の回転手段は、前記第1及び第2ウェッジプリズムが内部に配置された中空モータである、請求項1に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項5】
前記走査制御手段は、
直線状の加工ラインを走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御し、
曲線状の加工ラインを走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、前記偏向・回転手段によってレーザ光を回転させる、
請求項1に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項6】
前記偏向・回転手段は、
対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、
前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための回転手段と、
レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、
を有し、
前記走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、
加工ラインの直線部を走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御し、
加工ラインの曲線部を走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに同じ方向に回転させる、
請求項5に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項7】
前記偏向・回転手段は、
対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、
前記第1及び第2ウェッジプリズムを光軸の回りに回転させるための回転手段と、
レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、
を有し、
前記走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、
加工ラインの直線部を走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御し、
加工ラインの曲線部を走査する場合は、前記曲線部を含み前記曲線部の前後の領域において、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに逆方向に回転させる、
請求項5に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項8】
前記レーザ光出力部と前記偏向・回転手段との間に配置され、1対のウェッジプリズム及び前記1対のウェッジプリズムが内部に配置された中空モータからなり、レーザ光の集光点を回転させるための集光点回転機構をさらに備えた、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項1】
ワークにレーザ光を照射して加工を行う加工装置であって、
加工すべきワークが載置されるワークテーブルと、
前記ワークテーブルを、載置面と平行な面内において互いに直交するx,y方向に移動するためのテーブル駆動手段と、
レーザ光を出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部から出射されたレーザ光を出射軸から偏向させるとともに、偏向されたレーザ光を出射軸の回りに回転させる偏向・回転手段と、
前記テーブル駆動手段及び前記偏向・回転手段の駆動を協調制御して、レーザ光をワーク上で走査する走査制御手段と、
を備えたレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項2】
前記偏向・回転手段は、
対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、
前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための回転手段と、
レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、
を有する、請求項1に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項3】
前記偏向・回転手段の回転手段は、
前記第1ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための第1モータと、
前記第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための第2モータと、
をさらに有する、請求項2に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項4】
前記偏向・回転手段の回転手段は、前記第1及び第2ウェッジプリズムが内部に配置された中空モータである、請求項1に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項5】
前記走査制御手段は、
直線状の加工ラインを走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御し、
曲線状の加工ラインを走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、前記偏向・回転手段によってレーザ光を回転させる、
請求項1に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項6】
前記偏向・回転手段は、
対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、
前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに回転させるための回転手段と、
レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、
を有し、
前記走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、
加工ラインの直線部を走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御し、
加工ラインの曲線部を走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに同じ方向に回転させる、
請求項5に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項7】
前記偏向・回転手段は、
対向して配置された第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムと、
前記第1及び第2ウェッジプリズムを光軸の回りに回転させるための回転手段と、
レーザ光をワーク上に集光させる集光レンズと、
を有し、
前記走査制御手段は、直線部及び曲線部を含む加工ラインに沿ってレーザ光を走査する際に、
加工ラインの直線部を走査する場合は、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向又はy方向に移動制御し、
加工ラインの曲線部を走査する場合は、前記曲線部を含み前記曲線部の前後の領域において、前記テーブル駆動手段によって前記ワークテーブルをx方向及びy方向に移動制御するとともに、前記第1及び第2ウェッジプリズムを前記出射軸の回りに逆方向に回転させる、
請求項5に記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【請求項8】
前記レーザ光出力部と前記偏向・回転手段との間に配置され、1対のウェッジプリズム及び前記1対のウェッジプリズムが内部に配置された中空モータからなり、レーザ光の集光点を回転させるための集光点回転機構をさらに備えた、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ光によるワーク加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−10113(P2013−10113A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143754(P2011−143754)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
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