説明

レーザ処理を用いて摩擦的に強化した表面を形成する方法

この発明は、摩擦的に強化された表面を被加工物上に形成する方法を与える。方法は、スラリまたは溶液を形成するために、摩擦特性を強化するよう作用可能な予め定められた材料と液体とを組合せるステップを含む。方法は、被加工物の表面にスラリ/溶液を塗布するステップを含む。方法はさらに、塗布するステップ後に、予め定められた材料の相をレーザで変換するステップを含む。予め定められた材料の相を変換するステップは、摩擦助剤を被加工物の表面に結合する化学反応を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は金属のレーザ処理に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術の説明
被加工物の表面の特性の調整のため、表面をレーザで急速に加熱することができる。レーザから被加工物へのエネルギ伝達を強化するために、加熱される表面に吸収性のコーティングを塗布することができる。素早く表面を加熱するためにレーザを用いることによって、浅い表面層だけが加熱されるので、気体または液体による従来の焼入れは不要である。その部分は、レーザによって加熱された表面層と被加工物の残余部との間の非常に大きな熱差によって、実際には自己焼き入れする。その部分を1つの操作で加熱しなければならず、次に素早く気体または液体によって冷やすことが要求される浸炭または誘導加熱に対して大きな対照をなす。CO2、エキシマまたはNd−YAGレーザ(ダイオードレーザ)がレーザ放射を生成することができる。これらのレーザのうちのいくつかは、106ワット/cm2以上の強度を達成することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要
この発明は、摩擦的に強化された表面を被加工物上に形成する方法を与える。この方法は、スラリまたは溶液を形成するために、摩擦特性を強化するよう作用可能な予め定められた材料と液体とを組合せるステップを含む。この方法はさらに、スラリ/溶液を被加工物の表面に塗布するステップを含む。この方法はさらに、塗布するステップ後に、予め定められた材料の位相をレーザで変換するステップを含む。予め定められた材料の相を変換するステップは、摩擦助剤を被加工物の表面に結合する化学反応を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
この発明の利点は、以下の詳細な説明および添付された図面に関して考慮されると、より容易に認識されるようになる。
【0005】
好ましい実施例の詳細な説明
この発明の例示的な実施例によるプロセスが図1および図2に示される。そのプロセスはステップ20で開始する。ステップ22で、スラリまたは溶液16を形成するために、摩擦特性を強化するよう作用可能な予め定められた材料14が液体と組合わされる。一般に、スラリは液体中の不溶性材料の混合物であり、溶液は液体中の可溶性材料の混合物である。明瞭にするためにスラリだけが下記に記載されるが、この発明はスラリに限定されない。予め定められた材料14は、硫黄形状、塩素形状、または燐形状として選択することができる。たとえば、予め定められた材料14は、リン酸鉄、リン酸マンガン、硫黄粉、塩化鉄、ジクロジセチル二塩化セレンまたはオクタデシル塩化物であり得る。液体は、より極めて詳しく下記に記載される溶融ステップ中に、被加工物12の表面10および予め定められた材料14との反応性が低いように選択される。予め定められた材料が液体に対して不溶性である場合、液体は結合剤と組合わされた有機溶剤または水性のキャリアであり得る。この発明の例示的な実施例では、結合剤はポリビニルアルコールである。この発明の代替実施例では、結合剤はセラックまたは低融点ワックスでありえる。
【0006】
ステップ24で、スラリ16が被加工物12の表面10に塗布される。十分な量の予め定められた材料14が表面を覆うことを確実にするために、ある量のスラリ16を用いることができる。たとえば、表面10の1平方センチメートル当たりに0.9ミリグラムの予め定められた材料14が配置されるようにスラリ16を用いるのが望ましいであろう。スラリ16は、ブラシ塗装、スクリーンプリント、浸漬、霧吹き、またはインクジェットプリントによってなど、いかなる適切な方法によっても塗布することができる。
【0007】
被加工物12は鋼から形成することができる。ステップ24に先立って、プロセスはさらに、被加工物がたとえば研削、研磨、またはラップ仕上げによって規定される表面テクスチャを有することを確実にするステップを含むことができる。
【0008】
ステップ26で、水性またはキャリア媒体の少なくとも一部がスラリ16から取除かれる。この発明の例示的な実施例では、被加工物12を熱対流炉に配置することができ、スラリ16を少なくとも部分的に乾かすことができる。この発明は、予め定められた材料14と、表面10の摩擦特性を強化するよう作用可能な結合剤が存在する場合は結合剤とのみを残して、すべてのキャリア媒体がスラリ16から取除かれる場合でも実行することができる。
【0009】
ステップ28で、予め定められた材料14の相がレーザ18によって変換される。相変化は、融解、蒸発、またはプラズマ生成により規定することができる。ダイオードレーザ18は予め定められた材料14にビーム30を導く。予め定められた材料14は表面10を湿らせ、表面10と化学反応する。化学反応の結果、摩擦層が表面10上に形成される。摩擦学は、相対運動において相互作用する表面の摩擦、潤滑および摩耗の機構に関する科学である。摩擦学は、摩擦と摩耗とを制御するための部品の設計を扱う工学の一派である。この発明のプロセスが実行された後、強化された摩擦表面は、処理していない部分と比較して、表面10が作用においてより制御された摩擦およびより少ない摩耗を受けることを示す。レーザ18は、ダイオードレーザなどの線状集光源であり得る。レーザ18は、広域にわたって与えることができるのが好ましい。
【0010】
この発明のプロセスは、高価になり得る、かつ/または動作するのに環境上不利益になり得る化学バスの必要性を減じたりなくしたりすることができる。この発明のプロセスはさらに、被加工物12の動作環境において潤滑剤に含まれる極圧添加剤の必要を減じたりなくしたりすることができる。極圧添加剤は極めて有毒であり得る。この発明のプロセスは、ポスト処理または仕上げの必要なしに安定した摩擦層を生成することができる。プロセスはステップ32で終了する。
【0011】
上記の教示に照らしてこの発明の多くの修正および変形が可能である。したがって、この発明は、添付の請求項の範囲内で、具体的に記載された以外にも実行され得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の例示的な実施例の単純化されたフローチャートである。
【図2】この発明の例示的な実施例のレーザ処理の概略的な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦的に強化された表面を被加工物に形成する方法であって、
スラリおよび溶液のうち1つを形成するために摩擦特性を強化するよう作用可能な予め定められた材料と液体とを組合せるステップと、
スラリおよび溶液のうち1つを被加工物の表面に塗布するステップと、
前記塗布するステップ後に、予め定められた材料に被加工物の表面を結合する化学反応を生じさせるために、予め定められた材料の相をレーザで変換するステップとを含む、方法。
【請求項2】
予め定められた材料として硫黄形状を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予め定められた材料として塩素形状を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
予め定められた材料として燐形状を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記変換するステップに先立って、表面上のスラリおよび溶液のうち1つの体積を減じるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変換するステップ中に被加工物の表面に対する反応性が低いように液体を選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択するステップは、
液体を形成するためにポリビニルアルコールおよび水性の媒体を選択するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記変換するステップに先立って、水性の媒体の量を減じることにより表面上のスラリおよび溶液のうち1つの体積を減じるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変換するステップは、
予め定められた材料をレーザで溶解させるステップとしてさらに規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記変換するステップは、
予め定められた材料をレーザで蒸発させるステップとしてさらに規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記変換するステップは、
予め定められた材料をレーザでプラズマに変化させるステップとしてさらに規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
摩擦的に強化された表面を被加工物に形成する方法であって、
スラリおよび溶液のうち1つを形成するために、摩擦特性を強化するよう作用可能であって、リン酸塩鉄、マンガンリン酸塩、硫黄粉、塩化鉄、ジクロジセチルセレン二塩化物またはオクタデシル塩化物からなる群から選ばれた予め定められた材料と、ポリビニルアルコール溶液、セラックおよび低融点ワックスからなる群から選ばれた液体とを組合せるステップと、
スラリおよび溶液のうち1つをブラシ塗装、スクリーンプリント、浸漬、霧吹き、またはインクジェットプリントのうちの1つによって被加工物の表面に塗布するステップと、
前記塗布するステップ後に、予め定められた材料に被加工物の表面を結合する化学反応を生じさせるために、レーザによる融解、蒸発、プラズマ生成のうちの1つによって予め定められた材料の相を変換するステップとを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−535219(P2009−535219A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507942(P2009−507942)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/067416
【国際公開番号】WO2007/127798
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】