説明

レーザ加工方法とレーザ加工装置

【課題】
基板の大型化による新たな問題を解決できるレーザ加工方法とレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】
レーザ加工方法は、(a)3次元微小形状アレイを形成するための複数の開口を第1の方向に並べた開口列を、第2の方向に複数列並べたマスクを準備する工程と、(b)加工対象物を第1の方向に走査し、開口列を介してレーザ光を照射し、アブレーションにより、第1の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程と、(c)加工対象物を第2の方向に平行移動し、マスクの下方に第2の加工領域を配置する工程と、(d)第1の加工領域に形成された3次元微小形状の位置をモニタし、形成された3次元微小形状とマスクの位置を制御しつつ、加工対象物を第1の方向に走査し、開口列を介してレーザ光を照射し、アブレーションにより、第2の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法とレーザ加工装置に関し、特にメートルオーダの対象物に微小形状をレーザ加工するのに適したレーザ加工方法とレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小寸法のレンズ(マイクロレンズ)を平面上に並べたマイクロレンズアレイが知られている。光ファイバ通信においては、例えば発光装置から出射する光を効率的に光ファイバに結合し、光ファイバから発射する光を効率的に受光装置に結合するためにマイクロレンズが用いられる。複数の光ファイバと受発光装置群との接続部にはマイクロレンズアレイが用いられる。ガラス基板上にレジストなどでレンズ形状を作成し、異方性エッチングでガラス基板をエッチングすると、レジスト材料のレンズ形状がガラス基板に転写され、マイクロレンズアレイが形成される。
【0003】
デジタルカメラにおいては、多数の受光素子の周囲に電荷転送機構や電荷読み出し機構が形成される。入射光が受光領域以外に入射するとノイズの原因となる。そこで、受光領域の周囲は遮光膜で覆われる。入射光を効率的に受光領域に入射させるため半導体撮像装置上に、マイクロレンズアレイが配置される。例えば、平坦化膜上のレジスト膜を露光現像して各画素上に円形のレジストパターンを作成し、軟化させて表面張力によって球面を形成する。球面を固化させることによりマイクロレンズアレイ(オンチップマイクロレンズ)が形成できる。
【0004】
液晶表示装置は、多数の画素を含む。アクティブマトリックス液晶表示装置は、各画素電極と薄膜トランジスタ(TFT)及び配線を有するアクティブマトリックス基板とカラーフィルタと共通電極を有するコモン電極基板との間に液晶層を挟んだ構成を有する。混色を防止する等のため、各画素の透光領域に対応するカラーフィルタ以外の領域にはブラックマトリックスが配置される。ブラックマトリックスに入射する光は、無効光となり、表示には使われない。各画素上にマイクロレンズを配置して、入射光を光透過領域に集光させれば、光利用効率を向上することができる。特に画面の明るさを実現するために高強度の入射光を用いるリアプロジェクション液晶表示装置や、電力効率の向上が望まれる、携帯機器用液晶表示装置において、光利用効率の向上が望まれる。またマイクロレンズを用いて出射光の指向性を調整することもできる。
【0005】
特開平11−216578号は、ガラス基板上に銅製のメッシュパターンを密着し、レーザ光を用いてアブレーションを生じさせて、メッシュパターンに囲まれた領域に凹部を形成し、凹部に高屈折率樹脂を充填することで平板型のマイクロレンズアレイを形成することを提案している。
【0006】
特開2005−131940号は、マイクロレンズアレイを形成するための母型をアブレーションで基板表面に形成するため、所望形状のマイクロレンズアレイ母型を複数の高さで切った形状を反映した複数のマスクを形成し、基板表面に、多重露光のアブレーションを行なうことにより3次元形状を有する凹部を形成することを提案している。階調数の選択とアブレーション時の温度の選択により、滑らかな面が形成できる。マスクの損傷を防ぐため、ビームサイズを拡大してマスクを透過させ、スポットサイズを縮小して基板表面に照射する。
【0007】
【特許文献1】特開平11−216578号公報
【特許文献2】特開2005−131940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、製造コスト削減のため、液晶表示装置の製造プロセスにおける基板は大型化している。μレンズアレイを形成する基板も大型化することが望まれる。大型基板を用いてレーザ加工プロセスを行なうと新たな問題が発生した。
【0009】
本発明の目的は、基板の大型化による新たな問題を解決できるレーザ加工方法とレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1観点によれば、
(a)3次元微小形状アレイを形成するための、形状の変化する複数の開口を第1の方向に第1の縦ピッチで並べた開口列を、前記第1の方向と交差する第2の方向に第1の横ピッチで複数列並べたマスクを準備する工程と、
(b)加工対象物を前記マスクに対して前記第1の方向に走査し、前記開口列を介してレーザ光を加工対象物の同一領域上に複数回づつ照射し、アブレーションにより、前記加工対象物の第1の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程と、
(c)前記マスクと前記加工対象物の相対位置を前記第2の方向に平行移動し、前記マスクの下方に前記加工対象物の第2の加工領域を配置する工程と、
(d)前記第1の加工領域に形成された3次元微小形状の位置をモニタし、前記第1の加工領域に形成された3次元微小形状と前記マスクとの相対位置が所定値になるように、前記マスクの位置を制御しつつ、前記加工対象物を前記マスクに対して前記第1の方向に走査し、前記開口列を介してレーザ光を加工対象物の同一領域上に複数回づつ照射し、アブレーションにより、前記第2の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程と、
を含むレーザ加工方法
が提供される。
【0011】
本発明の他の観点によれば、
加工対象物を載置し、X方向、Y方向に移動できるステージと、
マスクを載置するマスク支持機構と、
レーザ光源と、
マスクを介して、前記レーザ光源からのレーザ光を加工対象物上に照射する光学系と、
前記加工対象物の加工予定領域に隣接する領域をモニタできる撮像装置と、前記撮像装置がモニタした画面から加工された領域の位置を抽出し、前記加工された領域の位置の平均値を算出できる処理回路とを含むモニタ機構と、
前記モニタ機構からの信号に基づき、マスクの位置を制御できる制御機構と、
を有するレーザ加工装置
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
既に形成した3次元微小形状の位置を基準として、新たな3次元微小形状を形成するので、高精度に分布した3次元微小形状アレイが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
液晶表示装置の画素は、例えば約100μmオーダの大きさを有する。人間の視覚上、100μm平方のドットの集まりは、連続的に見える。
【0014】
図5Aは、液晶表示装置の構成を概略的に示す断面図である。液晶セルLCCは、2枚の対向ガラス基板SUB1,SUB2を含む。第1のガラス基板SUB1の上には、各画素に薄膜トランジスタTFTと画素電極PEが形成されている。薄膜トランジスタには配線Lが接続されている。表面上には配向膜OF1が形成される。第2のガラス基板SUB2上には、共通電極CEが形成され、その上に各画素に対応して赤R、緑G、青B等のカラーフィルタCFが形成され、画素の境界領域、薄膜トランジスタTFTはブラックマトリックスBMで覆われれる。表面には配向膜OF2が形成される。2枚のガラス基板を対向させ、その間に液晶層LCが狭持される。光源LSからの光が、第1偏光子P1を透過し、μレンズアレイμLAで集光され、液晶セルの各画素の光透過領域に照射される。液晶セルLCCを透過した光は、第2の偏光子P2を透過して出射される。
【0015】
μレンズアレイμLAは、ブラックマトリックスに入射しようとする光を、光透過領域に向けることにより、光利用効率を向上させることができる。μレンズは出射光の指向性を調整するためにも使うことができる。液晶表示装置の画素は、100μmオーダの大きさを有するので、μレンズ表面の高低差も数十μmが必要となる。このようなμレンズは、レジストで作成することは困難である。
【0016】
本発明者は、レーザアブレーションでポリイミド基板にマイクロレンズ母型アレイを形成することを検討した。凸レンズのμレンズを作るためには、凹面の母型を作り、μレンズ層に転写すればよい。
【0017】
図5Bに示すように、所望の凹面を配列したμレンズアレイ母型Mを作成し、必要に応じて表面を保護膜PFで覆い、表面上で樹脂を溶融、固化させることにより、μレンズアレイμLAを得る。レーザアブレーションし易い基板材料として、例えばポリイミド基板、ポリカーボネート基板等を用いることができる。レーザとしては出力の大きいエキシマレーザが適しているであろう。液晶表示装置のガラス基板は、生産効率向上、コスト削減のため近年大型化している。μレンズアレイ用基板も大型化が求められ、少なくとも1辺1m位の矩形形状であることが望まれる。作成するμレンズは、画素に対応する寸法、100μmオーダ、を有し、例えば5%の位置精度を実現するには、5μm程度の位置精度が要求される。
【0018】
図6Aは、予備試験に用いたレーザ加工装置の構成を示す概略断面図である。エキシマレーザ1から出射するレーザ光は、照射光学系2を介してマスク支持機構3上に支持されたマスク4上に照射される。マスク4は、レンズ形状をアブレーションするための開口列を複数列有する。マスク4を透過したレーザ光は、結像光学系5を介して、ステージ8上に指示されたμレンズ母型アレイ基板9に照射される。ステージ8はXYステージであり、Xステージ7の上にYステージ6が載置された構造を有する。例えば基板をY方向に走査してある幅の加工領域を加工した後、X方向に移動され、隣の加工領域を加工する。
【0019】
小型の基板を加工したときは微小3次元形状を高い位置精度で加工できた。ところが、mオーダの大型の基板を大型のステージを用いて加工すると、微小3次元形状を高い位置精度で配置することができない。列間に不均一なギャップが生じてしまう。この原因を考察した。
【0020】
図6Bはステージの構造を概略的に示す平面図である。ガイドG1,G2にエアーベアリングABを介してステージSTが支持されている。ステージSTは、駆動されて、ガイドG1,G2に沿って移動する。Xステージ、Yステージ共に同様の構成を有する。ガイドG1,G2は、小型であれば精度が高い。大型になると、うねりを避けることはきわめて難しい。ガイドのうねりは、Xステージ、Yステージ両者に生じる。エアーベアリングABは対象物をガイドから浮遊させた状態で支持する。エアーギャップは、働く力に応じて変化してしまう。従って、大型のステージに加工対象物を載置し、長距離を駆動する時、走査方向の位置はレーザ干渉計を用いて高精度に制御できても、横方向の変位を避けることは難しい。1回の1方向走査であれば、横方向の変位は3μm〜4μm程度に抑えられる。この程度の変位は許容できる。しかし、Y方向に加工を行い、加工領域を移すため、X方向にある距離以上移動させた後、再びY方向に加工すると隣接する列間のうねりは異なるものとなり、列間に不均一なギャップが生じてしまう。μレンズ母型基板のポリイミド基板はマーカを有さない。従って、マーカによって横位置を調整しつつ、基板を駆動することはできない。
【0021】
図6Cは、縦方向に複数列を加工し、横方向に位置をずらし、再び縦方向に複数列の加工を行なった時の列トレースの例を概略的に示す。複数列の組間のピッチが緩やかに変化し、広いギャップが不均一に発生している。
【0022】
mオーダのステージの面内横方向精度は20μm〜50μmが限界である。100μmのパターンが、20μm〜50μmずれてしまうと目的の高精度が実現できなくなる。
【0023】
図1Aは、本発明の実施例によるレーザ加工装置の構成を概略的に示す斜視図である。エキシマレーザ光源1から出射するレーザ光は、照射光学系2でビーム形状、強度分布を調整され、マスク支持機構3上に支持されたマスク4に入射する。マスク支持機構3は、2段構成を有し、X方向、Y方向に駆動可能である。さらに、マスク4をX方向、Y方向に駆動できるX方向ピエゾ駆動機構Px,Y方向ピエゾ駆動機構Pyを備える。マスク支持機構3の下方には結像光学系5が配置され、マスク4を透過したエキシマレーザ光を加工対象物(μレンズ母型アレイ基板)9表面上に結像することができる。結像光学系5はピエゾフォーカス機構PFを備え、結像光学系を光路方向に±100μm程度駆動し、焦点位置を調整できる。加工対象物9は、図6Aに示したようなXステージ7、Yステージ6を有するステージ8に載置される。
【0024】
結像光学系の側方に、それぞれある領域を撮像できるCCDカメラを含むモニタ撮像装置M1,M2,M3,M4,M5が走査方向に沿って直線上に配置されている。モニタ撮像装置M3が、走査方向に関して結像位置の側方に配置される。順方向、逆方向いずれの走査を行なっても、加工前に加工領域の側方をモニタすることができる。加工位置に関して走査方向の前後に、加工対象物表面の高さを測定できるハイトセンサHS1,HS2も配置されている。順方向、逆方向いずれの走査を行なっても、加工前に加工領域の高さをモニタすることができる。
【0025】
制御機構10は、コンピュータを含み、モニタ撮像装置M1,M2,M3,M4,M5、ハイトセンサHS1,HS2からの信号を受け、演算処理を行い、ステージ8、ピエゾ駆動機構Px,Py,ピエゾフォーカス機構FA等に対する制御信号を発生する。
【0026】
図1Bは、実施例によるレーザ加工工程を概略的に示すフローチャートである。ステップS1で第1領域を列方向(Y方向)に加工する。
【0027】
図2Aは、マスク4の簡略化した構成例を示す。窓領域Wが縦方向(Y方向)、横方向(X方向)に16行、16列に行列状に配置されている。Wの第1添字は0から16(f)の行番号を示し、Wの第2添字は0から16(f)の列番号を示す。列方向に並んだ16の窓領域は同一領域に多重照射される。行方向に並んだ16の窓領域は同一形状を有し、行方向に並んだ複数の3次元微小形状を同時に作成する。従って、各列は同等の構成を有する。
【0028】
図2Bは、窓領域W内の簡略化した構成を概略的に示す。各窓領域Wは、3×3の小領域に分割され、中央の小領域に開口APが形成されている。小領域の寸法は100μm×100μmである。開口APは、縦、横300μmピッチで配置されている。パルス発振エキシマレーザが発振周波数300Hzである場合、約3.3msecで加工対象物をY方向に300μm(秒速90mm)駆動することになる。発振周波数が200Hzであれば、秒速は60mmとなる。図示の開口は第1行から第16行まで次第に大きくなる円形開口である。これらの円形開口は、所望の3次元形状を深さ方向で16等分する面で切り取った形状である。最大深さ50μmの場合、1回のアブレーションで深さ約3μmの掘り下げを行なう。
【0029】
図2Cに示すように、マスクを透過したエキシマレーザ光をポリイミド基板9の同一領域に照射すると、多重アブレーションにより、中央部で深く、半径方向に従って浅くなる3次元微小球状凹部(μレンズ母型)が形成される。
【0030】
図2Bに示すマスクを用いた場合、形成されるμレンズ母型間には加工パターンの2倍の幅の空領域が残る。
【0031】
図1Cに示すように、サブルーチンのステップR1で一回の列方向加工を行なった後、ステップR2で横方向にパターン幅(100μm)に相当する小移動を行なう。続いて、ステップR3の列方向加工をステップR1同様に行なう。
【0032】
X方向小移動は、例えばXステージを駆動して行なう。Xステージの駆動を行なっても、移動距離が小さいので、次のY方向走査で生じるX方向変位(うねりの変化)は、3μm〜4μm程度の抑えられる。
【0033】
X方向移動は、より好ましくは、マスクの移動で行う、さらに好ましくはX方向ピエゾ駆動機構Pxでマスクを駆動することで行なう。Xステージ7を移動させることなくX方向移動を行なえば、次のY方向走査をほぼ前のY方向走査と同一条件で行うことができる。
【0034】
ステップR3の後、空領域がなくなって領域内の加工が終了したか否かを判断する。終了していない時はステップR2に戻る。終了していれば、エンドとし、次のステップS2に進む。
【0035】
ステップS2では、第1の加工領域から第2の加工領域に横方向(X方向)移動を行なう。図2Aのマスクの場合、加工領域の幅は100μm×3×16=4.8mm(より正確には100μm×(3×15+1)=4.6mm)であり、4mm以上の移動を行なう。mmオーダの移動はステージで行なう。Xステージをmmオーダで移動すると、ヨーイングの条件は変化してしまう。このまま、次の加工を行なうと予備実験の失敗を繰り返すことになる。
【0036】
ステップS3では、第1領域に既に形成した2次元微小形状を撮像モニタで複数列モニタし、X方向位置の平均値を算出し、この平均値に基づいて第2領域内の加工位置を定め、列方向加工を行なう。走査方向の上流側の2つの撮像モニタ、側方の1つの撮像モニタを用いることにより、横方向変位を予測して、予測制御を行なうと共に、実際の横方向変位を測定してフィードバックを掛けることができる。なお、図2Bでは、各窓領域Wが3×3の小領域を有し、中央の1つの小領域が開口APを有するとした。行方向に関しては、小移動を行い、開口間の領域も走査する。列方向に関しては開口を中央列の各小領域に配置することができる。
【0037】
図2Dが、実用的な開口配置を示す。各窓領域が3列の小列領域に分割され、中央の小列領域には3つの同等な開口が配置される。これら3つの開口は、列方向に沿った3つに位置に同等の加工を生じさせる。結果として、全ての100μm×100μmの小領域に同等の微小形状を形成することができる。
【0038】
図3は、走査中の横方向制御を概略的に示す平面図である。加工領域S0は、加工済みの領域であり、3次元微小形状が規則的に分布して形成されている。次の加工領域S1を加工する時、隣接する加工領域S0の加工済みの3次元微小形状の位置をモニタして、横(X)位置の平均値を取る。位置の平均値を取ることにより、加工領域S0の複数の走査における誤差を平均化し、位置精度を向上することができる。加工領域S0の列と加工領域S1の列とが高位置精度で配置されるよう、マスクの横方向位置を制御する。ステージを高精度に駆動するには、時間を要するが、軽量のマスクの駆動は短時間で行なえる。高速のフィードフォワードを行ないつつ、走査を行なえるので、高精度の横(X)方向制御が行なえる。横方向位置を小移動して複数回の走査S11,S12,S13を行なう。
【0039】
第1回の列(Y)方向走査を行った時、好ましくはその制御量を記憶しておく。横方向の小移動を行い、次の列方向加工を行なう。第2回以降の走査を、第1回の走査同様に撮像装置のモニタを利用しつつ行なってもよいが、第1回の走査の制御量を繰り返し用いればより簡単である。小移動の横(X)方向移動距離が小さければ、変位量は許容範囲内である。
【0040】
ステージが大型化すると、加工対照面の高さを一定にすることも困難になる、場所的に加工面の高さが変化するとレーザ光の結像条件が変化して加工精度が影響を受ける。加工対象面の高さをハイトセンサでモニタし、フォーカス条件を予測制御することが好ましい。
【0041】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、加工対象物を保持する機構は、XYステージに限らない。
【0042】
図4Aはドラムステージの構成を概略的に示す。ガイドG1,G2に保持されたX方向移動部に、ドラムステージDSが回転可能に保持される。ドラムステージDSを回転すると、加工領域のY方向移動が行なえる。ガイドG1,G2に沿って横方向移動を行なうとX方向移動を行なえる。Y方向走査を繰り返し行なう場合、ドラムステージDSは一定方向の回転のみを行なえばよい。作成するレンズは球面レンズに限らない。非球面レンズを作成することもできる。
【0043】
図4Bは、楕円レンズを作成する場合を概略的に示す各画素が長方形の場合、画素の形状に併せた楕円レンズを用いることが好ましい。
【0044】
さらに、加工する3次元微小形状は、μレンズアレイに限らない。3次元微小形状を分布配置する加工対象であればよい。窓領域の走査(Y)方向ピッチと開口ピッチとが、1:nの関係の場合、1窓領域にn個の開口を配置する。図2Dの場合は、1:n=1:3であり、図4Bの場合は、1:n=1:1である。
【0045】
その他種々の変更、改良、置換、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1Aは、実施例によるレーザ加工装置の斜視図、図1B、1Cは実施例によるレーザ加工方法のフローチャートである。
【図2】図2Aは、実施例に用いるマスクの形状を示す概略平面図、図2Bは簡略化された開口配置を示す平面図、図2Cは、図2A,2Bのマスクを用いて形成される3次元微小形状の概略断面図、図2Dは、より実用的な開口例を示す平面図である。
【図3】図3は、実施例によるレーザ加工方法を説明するための加工対象物の概略平面図である。
【図4】図4A,4Bは、変形例によるドラムステージ、楕円レンズの概略平面図である。
【図5】図5A,5Bは、液晶表示装置の例の概略断面図、μレンズ母型アレイとμレンズアレイとの概略断面図である。
【図6】図6A,6Bは予備実験に用いたレーザ加工装置の構成を概略低に示す断面図と平面図、図6Cは加工形状の不均一分布を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 エキシマレーザ光源
2 照射光学系
3 マスク
4 マスク支持機構
5 結像光学系
6 Yステージ
7 Xステージ
8 ステージ
9 加工対象物(μレンズ母型アレイ基板)
10 制御機構
M 撮像モニタ
HS ハイトセンサ
FA ピエゾフォーカス機構
P ピエゾ駆動機構
W 窓領域
AP 開口
G ガイド
ST ステージ
AB エアーベアリング
DS ドラムステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3次元微小形状アレイを形成するための、形状の変化する複数の開口を第1の方向に第1の縦ピッチで並べた開口列を、前記第1の方向と交差する第2の方向に第1の横ピッチで複数列並べたマスクを準備する工程と、
(b)加工対象物を前記マスクに対して前記第1の方向に走査し、前記開口列を介してレーザ光を加工対象物の同一領域上に複数回づつ照射し、アブレーションにより、前記加工対象物の第1の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程と、
(c)前記マスクと前記加工対象物の相対位置を前記第2の方向に平行移動し、前記マスクの下方に前記加工対象物の第2の加工領域を配置する工程と、
(d)前記第1の加工領域に形成された3次元微小形状の位置をモニタし、前記第1の加工領域に形成された3次元微小形状と前記マスクとの相対位置が所定値になるように、前記マスクの位置を制御しつつ、前記加工対象物を前記マスクに対して前記第1の方向に走査し、前記開口列を介してレーザ光を加工対象物の同一領域上に複数回づつ照射し、アブレーションにより、前記第2の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程と、
を含むレーザ加工方法。
【請求項2】
前記工程(d)の第1の加工領域に形成された3次元微小形状のモニタは、複数列の3次元微小形状に対して行なわれ、該複数の3次元微小形状の位置の平均値に基づいて前記相対位置が制御される請求項1記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記工程(b)、(d)の走査は、前記第1の方向に沿って前記加工対象物の1端から他端まで行なう請求項1または2記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
(x)前記工程(b)の後、前記マスクと前記加工対象物の前記第2の方向の相対位置を前記第1の横ピッチの複数分の1である第2の横ピッチ分移動し、前記工程(b)を繰り返す工程、
をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記工程(x)の前記第2の横ピッチ分の移動は、マスク駆動機構により前記マスクを駆動することにより行なう請求項4記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記工程(x)の前記マスク駆動機構による駆動は、ピエゾ効果によるものである請求項5記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
(y)前記工程(d)の後、前記マスクと前記加工対象物の前記第2の方向の相対位置を前記第2の横ピッチ分移動し、前記加工対象物を前記マスクに対して前記第1の方向に走査し、前記開口列を介してレーザ光を加工対象物の同一領域上に複数回づつ照射し、アブレーションにより、前記第2の加工領域に複数列の3次元微小形状を形成する工程、
をさらに含む請求項4〜6のいずれか1項記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記工程(y)は、前記第1の加工領域に形成された3次元微小形状の位置をモニタせずに行なう請求項7記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記工程(y)の前記第2の横ピッチ分の移動は、マスク駆動機構により前記マスクを駆動することにより行なう請求項7または8記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記工程(y)の前記マスク駆動機構による駆動は、ピエゾ効果によるものである請求項9記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記3次元微小形状アレイは、マイクロレンズアレイを作成するための母型である請求項1〜10のいずれか1項記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
加工対象物を載置し、X方向、Y方向に移動できるステージと、
マスクを載置するマスク支持機構と、
レーザ光源と、
マスクを介して、前記レーザ光源からのレーザ光を加工対象物上に照射する光学系と、
前記加工対象物の加工予定領域に隣接する領域をモニタできる撮像装置と、前記撮像装置がモニタした画面から加工された領域の位置を抽出し、前記加工された領域の位置の平均値を算出できる処理回路とを含むモニタ機構と、
前記モニタ機構からの信号に基づき、マスクの位置を制御できる制御機構と、
を有するレーザ加工装置。
【請求項13】
前記モニタ機構は、複数の前記撮像装置を含む請求項12記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記マスク支持機構が、前記制御機構によって制御されるマスク駆動機構を有する請求項12または13記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記マスク駆動機構が、ピエゾ駆動機構である請求項14記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記モニタ機構が、前記加工対象物の表面高さを検出できるハイトセンサをさらに含み、前記光学系が焦点位置を制御するフォーカス機構を含み、前記制御機構が前記ハイトセンサの検出信号に従って前記フォーカス機構を制御できる請求項12〜15のいずれか1項記載のレーザ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−105066(P2008−105066A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290987(P2006−290987)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】