レーザ加工方法
【課題】レーザ溶接を安定して行うことができるレーザ加工方法を提供すること。
【解決手段】レーザ加工方法は、断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、円弧部の外周面側同士を当接させ、この当接した部分に、レーザ光を照射して溶接する。このレーザ加工方法は、一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップST1と、仮想平面上に所定半径の円を生成するステップST2と、この生成した円を、ワーク同士の当接した部分に向かって移動して、一対のワークの両方に当接させ、この円と前記一対のワークとの接点を求めるステップST3と、円の中心と接点とが成す角度を二等分する角度を演算するステップST4と、この演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップST5と、を備える。
【解決手段】レーザ加工方法は、断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、円弧部の外周面側同士を当接させ、この当接した部分に、レーザ光を照射して溶接する。このレーザ加工方法は、一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップST1と、仮想平面上に所定半径の円を生成するステップST2と、この生成した円を、ワーク同士の当接した部分に向かって移動して、一対のワークの両方に当接させ、この円と前記一対のワークとの接点を求めるステップST3と、円の中心と接点とが成す角度を二等分する角度を演算するステップST4と、この演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップST5と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関する。詳しくは、断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークを対向させ、この対向した部分にレーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ溶接により、2つのワークをフレア溶接する方法が知られている。例えば、2つのワークの端部を曲げ加工し、断面円弧状の円弧部を形成する。その後、これら円弧部の外周面同士を対向させて、この対向させた部分にろう材を供給しつつ、レーザ光を照射することにより、ろう材および母材を溶かして溶接する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以上のレーザ溶接では、母材の入熱が大きくなり過ぎるとワークが変形するため、ろう材を完全に溶かしつつ、母材の入熱量を調整することが重要である。したがって、レーザ光の照射方向および位置が重要となる。
【0004】
そこで、レーザセンサを用いて、レーザ光の照射方向を決定することが行われている。
すなわち、図13に示すように、溶接対象となる一対のワーク50A、50Bの円弧部51A、51Bを対向させておき、レーザセンサでこの一対のワーク50A、50Bの表面を走査することにより、円弧部51A、51Bの形状を仮想平面上に表現する。そして、この円弧部51A、51Bの端縁に接線V、Wを引き、これら接線V、Wに平行にレーザ光を照射する。
この方法によれば、ワーク50A、50Bの円弧部51A、51Bの形状に応じて、レーザ光の照射方向を調整できる。
【特許文献1】特開2003−225784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の手法では、円弧部51A、51Bをレーザセンサのレーザ光で走査する必要があるが、このレーザ光が円弧部51A、51Bの端縁まで到達せず、円弧部51A、51Bの形状を正確に検出できない場合がある。この場合、レーザ光の照射方向を正確に決定できず、レーザ溶接を安定して行うことが困難となる。
【0006】
本発明は、一対のワークの円弧部同士を対向させ、この対向した部分にレーザ光を照射して溶接する際に、ワークの円弧部の端縁を検出できない場合でも、レーザ溶接を安定して行うことができるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザ加工方法は、断面円弧状の円弧部(例えば、後述の51A、51B)をそれぞれ含む一対のワーク(例えば、後述の50A、50B)について、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、前記仮想平面上に所定半径の円(例えば、後述の円C)を生成するステップと、当該生成した円を、前記ワーク同士の対向した部分に向かって移動して、前記一対のワークの両方に当接させ、当該円と前記一対のワークとの接点(例えば、後述の接点P、Q)を求めるステップと、前記円の中心(例えば、後述の中心R)と前記接点とが成す角度(例えば、後述の角度θ)を二等分する角度(例えば、後述の直線L)を演算するステップと、当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ワークの円弧部の端縁を検出できなくても、この円弧部全体の形状に応じてレーザ光の照射方向を決定できるから、レーザ溶接を安定して行うことができる。
【0009】
この場合、ろう材を用いて溶接し、前記円の中心と前記接点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することが好ましい。
【0010】
この発明によれば、円の中心と前記接点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整したので、ろう材を完全に溶かしつつ、母材の溶け込み量を容易に調整できる。
【0011】
この場合、前記円の中心の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、円の中心の位置に基づいてレーザ光の焦点位置を決定したので、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を適量に設定できる。
【0013】
本発明のレーザ加工方法は、断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、前記仮想平面上に前記一対のワークのそれぞれから所定距離だけ離れた点を、第1点(例えば、後述の第1点S)として求めるステップと、当該第1点から前記一対のワークのそれぞれに垂線を下ろし、当該垂線と前記一対のワークのそれぞれとの交点を第2点(例えば、後述の第2点T、U)として求めるステップと、前記第1点と前記第2点とが成す角度(例えば、後述の角度θ)を二等分する角度(例えば、後述の直線L)を演算するステップと、当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【0015】
この場合、ろう材を用いて溶接し、前記第1点と前記第2点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することが好ましい。
【0016】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【0017】
この場合、前記第1点の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することが好ましい。
【0018】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワークの円弧部の端縁を検出できなくても、この円弧部全体の形状に応じてレーザ光の照射方向を決定できるから、レーザ溶接を安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ加工方法が適用されたレーザ加工システム1の概略構成を示す図である。
【0021】
レーザ加工システム1は、一対のワーク50A、50Bをレーザ光でフレア溶接するものであり、レーザ測定装置10と、レーザ溶接装置20と、これらレーザ測定装置10およびレーザ溶接装置20を制御する制御部30と、を備える。
ここで、一対のワーク50A、50Bは、それぞれ、断面円弧状の円弧部51A、51Bを含んでいる。円弧部51Aの曲率半径は、円弧部51Bの曲率半径と異なっている。これら一対のワーク50A、50Bは、円弧部51A、51Bの外周面側同士が対向するように配置されている。
レーザ加工システム1は、ワーク50A、50Bの対向した部分にレーザ光を照射して溶接する。
【0022】
レーザ測定装置10は、一対のワーク50A、50Bの形状を検出するものであり、レーザ光を照射する測定光照射部11と、測定光照射部11の向きを変化させる駆動部12と、レーザ光が照射された照射点までの距離を検出するカメラ13と、を備える。
【0023】
レーザ溶接装置20は、一対のワーク50A、50Bの間にろう材を供給しながらレーザ光を照射して溶接するものであり、レーザ光を照射する溶接光照射部21と、溶接光照射部21の向きおよび位置を変化させる駆動部22と、を備える。
溶接光照射部21は、図示しないが、レーザ光を発振するレーザ発振器と、このレーザ発振器で発振されたレーザ光を集光して照射する集光部と、を備える。
【0024】
制御部30は、ワーク形状測定部31と、ワーク形状生成部32と、溶接光照射方向算出部33と、ワーク溶接部34と、を備える。
【0025】
ワーク形状測定部31は、レーザ測定装置10を用いて、ワークの表面形状を測定する。
すなわち、ワーク形状測定部31は、測定光照射部11および駆動部12を制御して、レーザ光でワーク50A、50Bの表面を走査するとともに、カメラ13により、走査線上の照射点の像を結像することで、カメラ13から照射点までの距離を検出する。そして、測定光照射部11のレーザ光の照射方向と、カメラ13から照射点までの距離と、に基づいて、照射点の3次元上の位置を求める。
【0026】
ワーク形状生成部32は、ワーク50A、50Bの表面形状を仮想平面上に生成する。すなわち、ワーク形状測定部31で検出した照射点を2次元の仮想平面上にプロットして、これらプロットした点を直線や近似曲線で結ぶことで、ワーク50A、50Bの表面形状を生成する。
【0027】
溶接光照射方向算出部33は、ワーク形状生成部32で生成したワーク50A、50Bの形状に基づいて、レーザ溶接装置20から照射するレーザ光の照射方向を求める。
ワーク溶接部34は、溶接光照射部21および駆動部22を制御して、溶接光照射方向算出部33で求めた照射方向でレーザ光を照射して、ワーク50A、50Bをレーザ溶接する。
【0028】
以上のレーザ加工システム1の動作を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ST1では、ワーク形状測定部31により、一対のワーク50A、50Bの形状を測定し、ワーク形状生成部32により、図3に示すように、これら一対のワーク50A、50Bの断面を仮想平面上に生成する。
ST2では、溶接光照射方向算出部により、図4に示すように、仮想平面上に所定半径d1の円Cを生成する。
【0029】
ST3では、この生成した円Cを、ワーク50A、50B同士の対向した部分に向かって移動して、図5に示すように、一対のワーク50A、50Bの両方の表面に当接させ、この円Cと一対のワーク50A、50Bとの接点P、Qを求める。
ST4では、図6に示すように、円Cの中心Rと接点P、Qとが成す角度θを二等分する角度(図6中、直線Lで示す)を演算する。
ST5では、ワーク溶接部34により、この演算した角度、つまり、直線Lをレーザ光の照射方向として、レーザ光を照射する。
【0030】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ワーク50A、50Bの円弧部51A、51Bの端縁を検出できなくても、この円弧部51A、51B全体の形状に応じてレーザ光の照射方向を決定できるから、レーザ溶接を安定して行うことができる。
【0031】
[第2実施形態]
本実施形態では、溶接光照射方向算出部33の動作が、第1実施形態と異なる。
そこで、本実施形態におけるレーザ加工システム1の動作を、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
ST1では、第1実施形態と同様に、図3に示すように、一対のワーク50A、50Bの断面を仮想平面上に生成する。
ST2では、仮想平面上で、一対のワーク50A、50Bのそれぞれから所定距離d2だけ離れた点を、第1点Sとして求める。具体的には、図8に示すように、ワーク50A、50Bから所定距離だけ離れた線M、Nを引き、これら線Mと線Nとの交点を第1点Sとする。
【0032】
ST3では、図9に示すように、第1点Sから一対のワーク50A、50Bのそれぞれに垂線を下ろし、これら垂線とワーク50A、50Bとの交点を第2点T、Uとして求める。
ST4では、図10に示すように、第1点Sと第2点T、Uとが成す角度θを二等分する角度(図6中、直線Lで示す)を演算する。
ST5では、ワーク溶接部34により、この演算した角度、つまり、直線Lをレーザ光の照射方向として、レーザ光を照射する。
【0033】
本実施形態によれば、上述の(1)と同様の効果がある。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態において、角度θの大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整してもよい。
具体的には、レーザ光の入熱量を調整する場合、制御部30により、レーザ溶接装置20の集光部を制御して、焦点Fの位置を調整し、これにより、レーザ光の集光径を変化させて、一対のワーク50A、50Bに対する入熱量を調整する。この場合、焦点Fの位置を、第1実施形態における円Cの中心Rの位置、あるいは、第2実施形態における第1点Sの位置に基づいて決定する。
【0035】
角度θが大きい場合には、ワーク50A、50B間の間隔が大きいと判断し、ろう材の供給量を増加するとともに、図11に示すように、焦点Fの位置をレーザ光の射出口寄りに設定して、レーザ光の入熱量を大きくする。一方、角度θが小さい場合には、ワーク50A、50B間の間隔が小さいと判断し、ろう材の供給量を減少させるとともに、図12に示すように、焦点Fの位置をワーク50A、50B寄りに設定して、レーザ光の入熱量を小さくする。
【0036】
このようにすれば、角度θの大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整したので、ろう材を完全に溶かしつつ、母材の溶け込み量を容易に調整できる。
また、円の中心Rの位置あるいは第1点Sの位置に基づいてレーザ光の焦点Fの位置を決定したので、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を適量に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工方法が適用されたレーザ加工システムの概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係るレーザ加工システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上にワークの断面を生成した状態を示す図である。
【図4】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に円を生成した状態を示す図である。
【図5】前記実施形態に係るレーザ加工システムで円をワークに当接させた状態を示す図である。
【図6】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に直線を生成した状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るレーザ加工方法が適用されたレーザ加工システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に線を引いた状態を示す図である。
【図9】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に垂線を生成した状態を示す図である。
【図10】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に直線を生成した状態を示す図である。
【図11】前記2つの実施形態に係るレーザ加工システムについて、角度θが大きい場合のレーザ光の照射面積を示す図である。
【図12】前記2つの実施形態に係るレーザ加工システムについて、角度θが小さい場合のレーザ光の照射面積を示す図である。
【図13】本発明の従来例に係るレーザ加工方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
50A ワーク
50B ワーク
51A 円弧部
51B 円弧部
θ 角度
C 円
L 直線
P 接点
Q 接点
S 第1点
T 第2点
U 第2点
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関する。詳しくは、断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークを対向させ、この対向した部分にレーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ溶接により、2つのワークをフレア溶接する方法が知られている。例えば、2つのワークの端部を曲げ加工し、断面円弧状の円弧部を形成する。その後、これら円弧部の外周面同士を対向させて、この対向させた部分にろう材を供給しつつ、レーザ光を照射することにより、ろう材および母材を溶かして溶接する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以上のレーザ溶接では、母材の入熱が大きくなり過ぎるとワークが変形するため、ろう材を完全に溶かしつつ、母材の入熱量を調整することが重要である。したがって、レーザ光の照射方向および位置が重要となる。
【0004】
そこで、レーザセンサを用いて、レーザ光の照射方向を決定することが行われている。
すなわち、図13に示すように、溶接対象となる一対のワーク50A、50Bの円弧部51A、51Bを対向させておき、レーザセンサでこの一対のワーク50A、50Bの表面を走査することにより、円弧部51A、51Bの形状を仮想平面上に表現する。そして、この円弧部51A、51Bの端縁に接線V、Wを引き、これら接線V、Wに平行にレーザ光を照射する。
この方法によれば、ワーク50A、50Bの円弧部51A、51Bの形状に応じて、レーザ光の照射方向を調整できる。
【特許文献1】特開2003−225784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の手法では、円弧部51A、51Bをレーザセンサのレーザ光で走査する必要があるが、このレーザ光が円弧部51A、51Bの端縁まで到達せず、円弧部51A、51Bの形状を正確に検出できない場合がある。この場合、レーザ光の照射方向を正確に決定できず、レーザ溶接を安定して行うことが困難となる。
【0006】
本発明は、一対のワークの円弧部同士を対向させ、この対向した部分にレーザ光を照射して溶接する際に、ワークの円弧部の端縁を検出できない場合でも、レーザ溶接を安定して行うことができるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザ加工方法は、断面円弧状の円弧部(例えば、後述の51A、51B)をそれぞれ含む一対のワーク(例えば、後述の50A、50B)について、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、前記仮想平面上に所定半径の円(例えば、後述の円C)を生成するステップと、当該生成した円を、前記ワーク同士の対向した部分に向かって移動して、前記一対のワークの両方に当接させ、当該円と前記一対のワークとの接点(例えば、後述の接点P、Q)を求めるステップと、前記円の中心(例えば、後述の中心R)と前記接点とが成す角度(例えば、後述の角度θ)を二等分する角度(例えば、後述の直線L)を演算するステップと、当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ワークの円弧部の端縁を検出できなくても、この円弧部全体の形状に応じてレーザ光の照射方向を決定できるから、レーザ溶接を安定して行うことができる。
【0009】
この場合、ろう材を用いて溶接し、前記円の中心と前記接点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することが好ましい。
【0010】
この発明によれば、円の中心と前記接点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整したので、ろう材を完全に溶かしつつ、母材の溶け込み量を容易に調整できる。
【0011】
この場合、前記円の中心の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、円の中心の位置に基づいてレーザ光の焦点位置を決定したので、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を適量に設定できる。
【0013】
本発明のレーザ加工方法は、断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、前記仮想平面上に前記一対のワークのそれぞれから所定距離だけ離れた点を、第1点(例えば、後述の第1点S)として求めるステップと、当該第1点から前記一対のワークのそれぞれに垂線を下ろし、当該垂線と前記一対のワークのそれぞれとの交点を第2点(例えば、後述の第2点T、U)として求めるステップと、前記第1点と前記第2点とが成す角度(例えば、後述の角度θ)を二等分する角度(例えば、後述の直線L)を演算するステップと、当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【0015】
この場合、ろう材を用いて溶接し、前記第1点と前記第2点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することが好ましい。
【0016】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【0017】
この場合、前記第1点の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することが好ましい。
【0018】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワークの円弧部の端縁を検出できなくても、この円弧部全体の形状に応じてレーザ光の照射方向を決定できるから、レーザ溶接を安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ加工方法が適用されたレーザ加工システム1の概略構成を示す図である。
【0021】
レーザ加工システム1は、一対のワーク50A、50Bをレーザ光でフレア溶接するものであり、レーザ測定装置10と、レーザ溶接装置20と、これらレーザ測定装置10およびレーザ溶接装置20を制御する制御部30と、を備える。
ここで、一対のワーク50A、50Bは、それぞれ、断面円弧状の円弧部51A、51Bを含んでいる。円弧部51Aの曲率半径は、円弧部51Bの曲率半径と異なっている。これら一対のワーク50A、50Bは、円弧部51A、51Bの外周面側同士が対向するように配置されている。
レーザ加工システム1は、ワーク50A、50Bの対向した部分にレーザ光を照射して溶接する。
【0022】
レーザ測定装置10は、一対のワーク50A、50Bの形状を検出するものであり、レーザ光を照射する測定光照射部11と、測定光照射部11の向きを変化させる駆動部12と、レーザ光が照射された照射点までの距離を検出するカメラ13と、を備える。
【0023】
レーザ溶接装置20は、一対のワーク50A、50Bの間にろう材を供給しながらレーザ光を照射して溶接するものであり、レーザ光を照射する溶接光照射部21と、溶接光照射部21の向きおよび位置を変化させる駆動部22と、を備える。
溶接光照射部21は、図示しないが、レーザ光を発振するレーザ発振器と、このレーザ発振器で発振されたレーザ光を集光して照射する集光部と、を備える。
【0024】
制御部30は、ワーク形状測定部31と、ワーク形状生成部32と、溶接光照射方向算出部33と、ワーク溶接部34と、を備える。
【0025】
ワーク形状測定部31は、レーザ測定装置10を用いて、ワークの表面形状を測定する。
すなわち、ワーク形状測定部31は、測定光照射部11および駆動部12を制御して、レーザ光でワーク50A、50Bの表面を走査するとともに、カメラ13により、走査線上の照射点の像を結像することで、カメラ13から照射点までの距離を検出する。そして、測定光照射部11のレーザ光の照射方向と、カメラ13から照射点までの距離と、に基づいて、照射点の3次元上の位置を求める。
【0026】
ワーク形状生成部32は、ワーク50A、50Bの表面形状を仮想平面上に生成する。すなわち、ワーク形状測定部31で検出した照射点を2次元の仮想平面上にプロットして、これらプロットした点を直線や近似曲線で結ぶことで、ワーク50A、50Bの表面形状を生成する。
【0027】
溶接光照射方向算出部33は、ワーク形状生成部32で生成したワーク50A、50Bの形状に基づいて、レーザ溶接装置20から照射するレーザ光の照射方向を求める。
ワーク溶接部34は、溶接光照射部21および駆動部22を制御して、溶接光照射方向算出部33で求めた照射方向でレーザ光を照射して、ワーク50A、50Bをレーザ溶接する。
【0028】
以上のレーザ加工システム1の動作を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ST1では、ワーク形状測定部31により、一対のワーク50A、50Bの形状を測定し、ワーク形状生成部32により、図3に示すように、これら一対のワーク50A、50Bの断面を仮想平面上に生成する。
ST2では、溶接光照射方向算出部により、図4に示すように、仮想平面上に所定半径d1の円Cを生成する。
【0029】
ST3では、この生成した円Cを、ワーク50A、50B同士の対向した部分に向かって移動して、図5に示すように、一対のワーク50A、50Bの両方の表面に当接させ、この円Cと一対のワーク50A、50Bとの接点P、Qを求める。
ST4では、図6に示すように、円Cの中心Rと接点P、Qとが成す角度θを二等分する角度(図6中、直線Lで示す)を演算する。
ST5では、ワーク溶接部34により、この演算した角度、つまり、直線Lをレーザ光の照射方向として、レーザ光を照射する。
【0030】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ワーク50A、50Bの円弧部51A、51Bの端縁を検出できなくても、この円弧部51A、51B全体の形状に応じてレーザ光の照射方向を決定できるから、レーザ溶接を安定して行うことができる。
【0031】
[第2実施形態]
本実施形態では、溶接光照射方向算出部33の動作が、第1実施形態と異なる。
そこで、本実施形態におけるレーザ加工システム1の動作を、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
ST1では、第1実施形態と同様に、図3に示すように、一対のワーク50A、50Bの断面を仮想平面上に生成する。
ST2では、仮想平面上で、一対のワーク50A、50Bのそれぞれから所定距離d2だけ離れた点を、第1点Sとして求める。具体的には、図8に示すように、ワーク50A、50Bから所定距離だけ離れた線M、Nを引き、これら線Mと線Nとの交点を第1点Sとする。
【0032】
ST3では、図9に示すように、第1点Sから一対のワーク50A、50Bのそれぞれに垂線を下ろし、これら垂線とワーク50A、50Bとの交点を第2点T、Uとして求める。
ST4では、図10に示すように、第1点Sと第2点T、Uとが成す角度θを二等分する角度(図6中、直線Lで示す)を演算する。
ST5では、ワーク溶接部34により、この演算した角度、つまり、直線Lをレーザ光の照射方向として、レーザ光を照射する。
【0033】
本実施形態によれば、上述の(1)と同様の効果がある。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態において、角度θの大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整してもよい。
具体的には、レーザ光の入熱量を調整する場合、制御部30により、レーザ溶接装置20の集光部を制御して、焦点Fの位置を調整し、これにより、レーザ光の集光径を変化させて、一対のワーク50A、50Bに対する入熱量を調整する。この場合、焦点Fの位置を、第1実施形態における円Cの中心Rの位置、あるいは、第2実施形態における第1点Sの位置に基づいて決定する。
【0035】
角度θが大きい場合には、ワーク50A、50B間の間隔が大きいと判断し、ろう材の供給量を増加するとともに、図11に示すように、焦点Fの位置をレーザ光の射出口寄りに設定して、レーザ光の入熱量を大きくする。一方、角度θが小さい場合には、ワーク50A、50B間の間隔が小さいと判断し、ろう材の供給量を減少させるとともに、図12に示すように、焦点Fの位置をワーク50A、50B寄りに設定して、レーザ光の入熱量を小さくする。
【0036】
このようにすれば、角度θの大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整したので、ろう材を完全に溶かしつつ、母材の溶け込み量を容易に調整できる。
また、円の中心Rの位置あるいは第1点Sの位置に基づいてレーザ光の焦点Fの位置を決定したので、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を適量に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーザ加工方法が適用されたレーザ加工システムの概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態に係るレーザ加工システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上にワークの断面を生成した状態を示す図である。
【図4】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に円を生成した状態を示す図である。
【図5】前記実施形態に係るレーザ加工システムで円をワークに当接させた状態を示す図である。
【図6】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に直線を生成した状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るレーザ加工方法が適用されたレーザ加工システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に線を引いた状態を示す図である。
【図9】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に垂線を生成した状態を示す図である。
【図10】前記実施形態に係るレーザ加工システムで仮想平面上に直線を生成した状態を示す図である。
【図11】前記2つの実施形態に係るレーザ加工システムについて、角度θが大きい場合のレーザ光の照射面積を示す図である。
【図12】前記2つの実施形態に係るレーザ加工システムについて、角度θが小さい場合のレーザ光の照射面積を示す図である。
【図13】本発明の従来例に係るレーザ加工方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
50A ワーク
50B ワーク
51A 円弧部
51B 円弧部
θ 角度
C 円
L 直線
P 接点
Q 接点
S 第1点
T 第2点
U 第2点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、
前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、
前記仮想平面上に所定半径の円を生成するステップと、
当該生成した円を、前記ワーク同士の対向した部分に向かって移動して、前記一対のワークの両方に当接させ、当該円と前記一対のワークとの接点を求めるステップと、
前記円の中心と前記接点とが成す角度を二等分する角度を演算するステップと、
当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、
ろう材を用いて溶接し、前記円の中心と前記接点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工方法において、
前記円の中心の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、
前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、
前記仮想平面上に前記一対のワークのそれぞれから所定距離だけ離れた点を、第1点として求めるステップと、
当該第1点から前記一対のワークのそれぞれに垂線を下ろし、当該垂線と前記一対のワークのそれぞれとの交点を第2点として求めるステップと、
前記第1点と前記第2点とが成す角度を二等分する角度を演算するステップと、
当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工方法において、
ろう材を用いて溶接し、前記第1点と前記第2点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のレーザ加工方法において、
前記第1点の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項1】
断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、
前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、
前記仮想平面上に所定半径の円を生成するステップと、
当該生成した円を、前記ワーク同士の対向した部分に向かって移動して、前記一対のワークの両方に当接させ、当該円と前記一対のワークとの接点を求めるステップと、
前記円の中心と前記接点とが成す角度を二等分する角度を演算するステップと、
当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、
ろう材を用いて溶接し、前記円の中心と前記接点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工方法において、
前記円の中心の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
断面円弧状の円弧部をそれぞれ含む一対のワークについて、当該円弧部の外周面側同士を対向させ、この対向した部分に、レーザ光を照射して溶接するレーザ加工方法であって、
前記一対のワークの断面を仮想平面上に生成するステップと、
前記仮想平面上に前記一対のワークのそれぞれから所定距離だけ離れた点を、第1点として求めるステップと、
当該第1点から前記一対のワークのそれぞれに垂線を下ろし、当該垂線と前記一対のワークのそれぞれとの交点を第2点として求めるステップと、
前記第1点と前記第2点とが成す角度を二等分する角度を演算するステップと、
当該演算した角度を照射方向としてレーザ光を照射するステップと、を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工方法において、
ろう材を用いて溶接し、前記第1点と前記第2点とが成す角度の大きさに応じて、レーザ光の入熱量およびろう材の供給量を調整することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のレーザ加工方法において、
前記第1点の位置に基づいて、レーザ光の焦点位置を決定することを特徴とするレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−290096(P2008−290096A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136498(P2007−136498)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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