レーザ加工方法
【課題】 レーザビームにより被加工物の切断加工を行うレーザ加工方法において、ピアシング穴径を縮小し、飛散する溶融金属量を低減し、かつ短時間で貫通穴を形成するレーザ加工方法を得る。
【解決手段】 第1のピアシング条件にてビームを照射する第1の工程と、一旦ビーム照射を停止する第2の工程と、第2のピアシング条件にて再度ビームを照射する第3の工程からピアシング加工を行うことにより、ピアシング中における酸化燃焼反応を抑制し、飛散する溶融金属量を低減させる。
【解決手段】 第1のピアシング条件にてビームを照射する第1の工程と、一旦ビーム照射を停止する第2の工程と、第2のピアシング条件にて再度ビームを照射する第3の工程からピアシング加工を行うことにより、ピアシング中における酸化燃焼反応を抑制し、飛散する溶融金属量を低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームにより被加工物の切断加工を行う際に、被加工物の所定位置に切断加工のスタート点となる貫通穴を形成するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物の所定位置に、切断加工のスタート点である貫通穴(以下ピアシング穴とも呼ぶ)を形成し、この貫通穴からレーザビーム切断加工を行う工程において、一般的にスタート点に貫通穴を開けるピアシング工程と、このピアシング工程後に、貫通穴から任意の形状に切断加工を行う切断加工工程とからなる。
従来、炭素鋼やステンレス鋼等の厚板におけるレーザ加工では、ピアシング条件に入熱を抑制する効果のあるパルス出力を使用するのが一般的であったが、この方法では板厚の増大に伴いピアシング時間が指数関数的に増大し、生産性向上の妨げとなり、ピアシング時間短縮のために各種方法が提案されてきた。
【0003】
ピアシング時間短縮に対しては、連続的にビームを出力するCW(Continuous Wave:連続波形)モードによるビーム照射やデフォーカスビームの照射により金属の酸化燃焼反応を促進させることが効果的であるが、ピアシング時間が短縮される反面、ピアシング穴径の増大、飛散溶融物(以下スパッタと呼ぶ)の増大、被加工物への蓄熱増大など、切断加工に支障を与える多くの問題があった。具体的には、ピアシング穴径の増大は切断加工穴径を増大させ、また、材料の歩留まりを悪化させる。スパッタの増大は、それらが被加工物上に堆積する事により切断時の加工不良確率を増大させ、また、光路系部品、駆動系部品など加工機の損傷の原因となりうる。また、被加工物への蓄熱増大はピアシング加工後の切断加工時の異常燃焼原因となり、切断不良確率を増大させる。
【0004】
図13はPW(Pulse Wave:パルス波形)モードとCWモードによるピアシング加工により形成される穴断面の模式図を示したものである。一般に、パルスのオン・オフの繰り返しによるPWモードによるピアシング加工は、図13(a)に示すように被加工物W表面近傍にレーザビームLの焦点を合わせることにより、被加工物への入熱量を低減させ、0.5〜1mm程度の開孔径にて加工が可能である。しかし、ピアシング穴h貫通途中での被加工物壁面でのエネルギ吸収が無視できず、板厚の増大に伴いピアシング時間は指数関数的に増大するという欠点がある。それに対し、CWモードによるピアシングは図13(b)に示すように被加工物Wの酸化燃焼反応を促進させるため、デフォーカスされたレーザビームLを照射し、厚板であっても短時間での貫通が可能である。しかし、被加工物の溶融金属量が多いためピアシング穴hの径は5〜10mmと大きく、またピアシング穴hの周囲にスパッタが堆積するという問題がある。
【0005】
そこで、ピアシング開始時にレーザ出力を連続出力に設定し、ピアシングの進行途中に前記レーザ出力をパルス出力に変更してピアシングを行うことにより被加工物より生ずるスパッタを低減し、かつピアシング時間を低減させる加工方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−323781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、特許文献1に開示の方法によれば、CWモードによる加工方法に比べ、スパッタの低減が可能となり、PWモードに比べ加工時間の短縮が可能となる。しかし、特許文献1においては、ピアシング進行途中でCWモードから直ちに連続的にPWモードにレーザ出力条件を変化させるため、CWモードのビーム照射による熱量が、PWモードによる加工においても残留するため、PWモードにおける加工において酸化燃焼反応を効果的に抑制することは困難である。そのため、ピアシング途中で直ちに連続的にパルス出力に変更しても、スパッタが比較的多く、ピアス穴径も大きくなってしまうという問題があった。また、PWモードを併用しているため、加工時間の短縮にも限度があり、更なる改善が必要であった。
【0008】
また、レーザビームの出力条件のみを変更することでピアシング加工を実施しているため、ピアシング加工中に発生するスパッタはピアス穴周囲に残存、固着してしまう。そのため、ピアシング加工の次工程である切断加工において、スパッタとノズルとの接触、スパッタに起因するレーザビームの反射、アシストガスの乱れなど、切断性能が大幅に低下するという問題が依然残っている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ピアシング穴径を小さく、スパッタ量を低減させ、かつピアシング時間を短縮したピアシング加工を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るレーザ加工方法においては、ピアシング加工を行うレーザ加工方法において、第1のピアシング条件にてレーザビームを被加工物に照射しピアシング加工を行う第1の工程と、第1の工程後、レーザビームの照射を停止する第2の工程と、第2の工程後、第1の工程にて加工した部分に第2のピアシング条件にてレーザビームを被加工物に照射しピアシング加工を完了する第3の工程とを備えるとともに、前記第2の工程におけるレーザビームの照射を停止する時間を、この停止する時間の増加に対してスパッタ量が一定値から減少し再度一定値に達した時間としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ピアシング加工途中にビーム停止期間を設けることで、ピアシング加工時に発生するスパッタ量を低減し、短時間で貫通穴を形成することができ、レーザ加工全体の加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1を示すレーザ加工装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法を実施するためのレーザ出力等の時間変化を示すグラフである。
【図3】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法を実施するための動作のフローを示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法を実施した場合のピアシング穴断面を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法におけるビーム停止時間とスパッタ量の関係を示すグラフである。
【図6】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法による加工と従来のCWモードでの加工との比較表である。
【図7】この発明の実施の形態2を示すレーザ加工装置の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態2であるレーザ加工方法を実施するためのレーザ出力等の時間変化を示すグラフである。
【図9】この発明の実施の形態2であるレーザ加工方法を実施するための動作のフローを示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2であるレーザ加工方法によるピアシング品質と実施の形態1とを比較した図である。
【図11】この発明の実施の形態3であるレーザ加工方法を実施するためのレーザ出力等の時間変化を示すグラフである。
【図12】この発明の実施の形態3であるレーザ加工方法による加工と実施の形態1および2との比較表である。
【図13】従来のPWモードおよびCWモードでのレーザ加工方法を実施した場合のピアシング穴断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明を実施するための実施の形態1に係るレーザ加工方法に用いられるレーザ加工装置を示した装置構成図である。
図1において、レーザ発振器1から出射されたレーザビームLは、単数もしくは複数のミラー2により所定の光路を導かれ、加工ヘッド3に入射される。加工ヘッド3内には、レーザビームLを被加工物W上に集光するためのレンズ4が設けられている。レーザビームLは、レンズ4で集光され、加工ヘッド3の先端に設けられたノズル5より被加工物W上に照射される。レーザ発振器1の出力やON/OFFは、加工プログラムが入力されたNC装置からの指令値に基づき、レーザ発振制御回路14により制御される。
被加工物Wは、図示していない加工テーブル上に載置されており、加工テーブルと加工ヘッド3は、図示していない駆動源であるサーボモーター等により、X,Y,Z軸方向に相対的に移動して、所望の加工が行われる。サーボモーター等は、加工プログラムが入力されたNC装置からの指令値に基づき、サーボ制御回路12により制御される。
また、ノズル5と被加工物Wとの距離は、ノズル5もしくはノズル5の近傍に設けられた、図示していないギャップセンサにより検出される。検出された情報はギャップコントローラ11に送られ、ギャップコントローラ11は、NC装置13からの指令値と測定値とを比較し、補正指令をサーボ制御回路12に送り、常にノズル5の高さを指令値に一致させる。
また、NC装置13からの指令値により、アシストガス供給装置6は所定の圧力や種類のアシストガスAを、加工ヘッド内に供給する。供給されたアシストガスAは、ノズル5先端よりレーザビームLと同軸上に噴出されて、被加工物Wの溶融促進および溶融金属の除去等に使用される。
【0014】
図2は、本発明を実施するための実施の形態1におけるレーザ加工方法を示すための、レーザ発振器のレーザ発振出力、加工ヘッドの上下動、および加工ヘッドの上下動により制御される被加工物上のビームスポット径の時間変化を示した図である。また、図3は動作のフローを説明するフローチャート図である。以下、図2および図3を用いピアシング加工に関する動作を詳細説明する。
【0015】
図2において、ピアシング開始からt1の時間を第1の工程、第1の工程後のt2の時間を第2の工程、第2の工程後のt3の時間を第3の工程と呼ぶことにする。すなわち、本実施の形態では、第1〜第3の工程によりピアシング加工を完了するものである。また、第1の工程にて行われるピアシング加工を第1のピアシング加工と呼び、その加工条件を第1のピアシング条件と呼ぶ。さらに、第3の工程にて行われるピアシング加工を第2のピアシング加工と呼び、その加工条件を第2のピアシング条件と呼ぶ。図3においては、ステップS01とS02が第1の工程に対応し、ステップS03が第2の工程に対応し、ステップS04からS06が第3の工程に対応する。
【0016】
第1の工程では、第1のピアシング条件にて被加工物WにレーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔を開始し(S01)、溶融金属の除去効果を高めるべく、加工ヘッドを所定の高さまで上昇させることでビームスポット径を増大させる(S02)。ここで、加工ヘッド3の上下動は図2に示したように、ジャストフォーカス位置(Hjf)からデフォーカス位置(Hdf)に上昇させる。デフォーカス位置(Hdf)は、従来のCWモードのみでピアシング加工を行う場合のデフォーカス位置と同等の位置である。第1の工程は、溶融金属の除去効果を高める必要があるので、デフォーカス位置で加工を行ってもよいが、上記のように、ジャストフォーカス位置からデフォーカス位置へ変化させることで、デフォーカス位置のみで加工するよりも、さらにスパッタ量を低減することができる。
続く第2の工程では、ピアシング加工が完了する前に酸化燃焼反応を遮断すべく、ビーム照射およびアシストガス噴射を一旦停止させ、停止時間t2を設ける。この段階で溶融穿孔現象は停止し、ピアシング穴径の拡大を抑制する(S03)。
続いて第3の工程では、第2のピアシング条件にて、第1の工程にて加工した部分に、所定の高さ(Hdf)から再度レーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔現象を再開させるが、過剰の酸化燃焼反応による穴径拡大を防止させるために、加工ヘッド3をジャストフォーカスの位置(Hjf)まで再び被加工物に接近させ貫通を完了させる(S05)。第3の工程は、スパッタ量を低減する必要があるので、ジャストフォーカス位置で加工を行ってもよいが、前記のように、デフォーカス位置からジャストフォーカス位置へ変化させることで、ジャストフォーカス位置のみで加工するよりも、さらに加工時間を短縮することができる。
以上の動作でピアシング加工は完了となり(S06)、この後、切断条件にて切断が開始される(S07)。
【0017】
図4は、上記方法により加工されたピアシング穴断面の模式図であり、図4(a)は第1の工程後の図であり、図4(b)は第3の工程後の図である。図4(a)に示したように、第1の工程で選択された第1のピアシング条件により、被加工物Wの板厚の途中までピアシング穴hが形成される。続く第2の工程にてビーム照射が一旦停止することから、途中まで進行した酸化燃焼反応は遮断される。続く第3の工程でレーザビームLが再度照射されるが、余剰な入熱が存在しないため、図4(b)に示したように、小径のピアシング穴hを形成することができる。これにより、スパッタ量を減らすとともに加工時間を短縮することができるのである。
【0018】
これらの工程は加工条件も含め、全てNC装置13にプログラムとして入力されており、NC装置13からの指令値に基づき、レーザ発振制御回路14によりレーザビームLの照射および出力が制御され、ギャップコントローラ11およびサーボ制御回路12により加工ヘッド3の上下動が制御され、アシストガス供給装置6によりアシストガスAの噴射が制御される。
【0019】
ここで、第2の工程におけるビーム停止時間が短すぎると、第1の工程にて発生する熱量が残存し、続く第3の工程におけるビーム照射により過剰な溶融現象を誘発するため、一定以上の時間を設定する必要がある。しかしながら、第2の工程におけるビーム停止時間が長すぎると、結果としてピアシング加工に要する時間、さらにはレーザ加工全体の加工時間が長くなってしまい、レーザ加工の生産性に支障を来たす。よって、第2の工程の時間t2は適切に設定する必要がある。
【0020】
図5は、第2の工程におけるビーム停止時間を変化させたときのスパッタ量を測定した実験結果である。本実験にて使用した被加工物等の条件および第1のピアシング条件と第2のピアシング条件は以下の通りである。
<共通条件>
被加工物の材質・板厚:軟鋼(SS400)t19mm
加工レンズ:焦点距離f190.5mm
ノズル径:φ1.7mm
<第1ピアシング条件>
レーザビーム出力:2000W(CWモード)
Z軸移動速度:15000mm/min
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.08MPa
ビームオン時間:0.4sec
ビーム照射開始時の加工ヘッド高さ:材料表面より4.0mm(Hjf)
ビーム照射終了時の加工ヘッド高さ:材料表面より19.0mm(Hdf)
<第2ピアシング条件>
レーザビーム出力:4000W(CWモード)
Z軸移動速度:1000mm/min
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.07MPa
ビームオン時間:0.9sec
ビーム照射開始時の加工ヘッド高さ:材料表面より19.0mm(Hdf)
ビーム照射終了時の加工ヘッド高さ:材料表面より4.0mm(Hjf)
【0021】
図5により、t2が0.3秒を超えるとスパッタ量が減少し始め、0.5秒以上で略一定となることが判る。よって、スパッタ量の減少という観点からは、第2の工程におけるビーム停止時間を約0.5秒以上とすればよい。更に加工時間の短縮を考慮すると、t2を約0.5秒に設定することが適切である。
また、図5においては板厚19mmの軟鋼(SS400)の加工結果を示したが、板厚が12mm、16mm、22mmのものについても同様の実験を行い、図4と同様の結果が得られており、板厚によらずt2は0.5秒程度が最適値であるといえる。
【0022】
ここで、上記第1のピアシング条件と第2のピアシング条件は、本実施の形態に係る加工方法の一例であり、特に上記条件に限定されるものではなく、被加工物の板厚や材質によって適宜設定すればよい。ただし、加工品質と加工時間を考慮し、以下の条件を満たすことが望ましい。
第1のピアシング条件は、板厚途中までの穿孔と急速にビームスポット径を増大させるために、第2のピアシング条件と比較し、低出力かつZ軸の上方への移動速度を大きくし、ビーム照射時間を短く設定することが望ましい。また、第2のピアシング条件は、板厚途中まで穿孔が進行したピアシング穴に対し、酸化燃焼反応を再び促進させ、かつ穿孔効率を高めることから、第1のピアシング条件と比較し、高出力かつZ軸の下方への移動速度を小さくし、ビーム照射時間を長く設定することが望ましい。
【0023】
次に、本実施の形態における加工方法の効果を説明する。図6は、従来のCWモードによるピアシング加工と、本実施の形態によるピアシング加工による、ピアシング穴径、ピアシング時に発生するスパッタ量、加工時間の比較をしたものである。本実施の形態の加工条件は、上記加工条件とし、第2の工程の時間t2は、0.5秒とした。被加工物は、上記と同様の板厚19mmの軟鋼SS400材を使用した。従来のピアシング条件は以下の通りである。
<従来のピアシング条件>
レーザビーム出力:4000W(CWモード)
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.08MPa
ビームオン時間:1.0sec
ビーム照射時の加工ヘッド高さ:材料表面より19.0mm(一定)
【0024】
本実施の形態の加工時間は、
0.4秒(第1の工程)+0.5秒(第2の工程)+0.9秒(第3の工程)=1.8秒
となり、図6に示したように、従来のCWモードによる加工方法の加工時間1.0秒と比較し、やや悪化している。しかし、ピアシング穴径は40%小さくなり、これによりスパッタ量も約30%以上低減させることができる。
【0025】
また、従来のPWモードによるピアシング加工条件で、板厚19mmの軟鋼SS400に貫通穴を加工した場合、加工時間は約20秒必要であり、本実施の形態はPWモードに比べ1/10以下の時間で貫通穴を加工することができる。
【0026】
このように、被加工物の所定位置に切断加工のスタート点である貫通穴を開けるピアシング加工の加工方法において、第1のピアシング条件にてビームを照射する第1の工程と、一旦ビーム照射を停止する第2の工程と、第2のピアシング条件にて再度ビームを照射する第3の工程からなる加工方法を用いることにより、ピアシング穴径を小さくすることができスパッタ量を低減することができる。さらには加工時間の短縮、生産性の向上を図ることができる。
【0027】
実施の形態2.
実施の形態1においては、ピアシング加工中に、レーザ出力、加工ヘッドの上下動により制御できる被加工物上のビームスポット径を変化させ、ビーム停止時間を設け、スパッタ量を減少させた。本実施の形態においては、それらの動作に加え、エアーおよびスパッタ付着防止剤をピアシング穴付近に噴射することにより、ピアシング穴周囲のスパッタの残存、固着を防止するものである。
【0028】
図7は、本発明を実施するための実施の形態2に係るレーザ加工方法に用いられるレーザ加工装置を示した装置構成図である。実施の形態1のレーザ加工装置の図1に、サイドノズルからエアーを噴射する機構、およびスパッタ付着防止剤を噴射する機構を加えた構成となっている。以下、図1からの追加部分について説明する。
図7において、NC装置13からの指令値により、サイドガス供給装置8は所定の圧力のエアーSをサイドノズル7に供給する。供給されたエアーSは、サイドノズル7より被加工物W上のピアシング穴h周辺に噴射されて、ピアシング穴h周囲のスパッタの除去に使用される。ここで、サイドノズル7は加工ヘッド3に固定されており、加工ヘッド3とともに上下動する。
また、NC装置13からの指令値により、スパッタ付着防止剤供給装置9は所定の圧力のスパッタ付着防止剤Oをスパッタ付着防止剤噴射ノズル10に供給する。ここで、スパッタ付着防止剤とは、被加工物Wへのスパッタの固着を防止するための、離型剤もしくは油分を成分とするものである。供給されたスパッタ付着防止剤Oは、スパッタ付着防止剤噴射ノズル10より被加工物W上のピアシング穴h周辺に噴射されて、ピアシング穴周囲のスパッタ固着の防止に使用される。サイドノズル7は加工ヘッド3とともに上下動するが、スパッタ付着防止剤噴射ノズル10は、スパッタ付着防止剤Oがノズル5等に付着しないように、独立して固定されている。そして、スパッタ付着防止剤Oを噴射するときは、加工ヘッド3は退避位置まで上昇しておく。
【0029】
図8は、本発明を実施するための実施の形態2におけるレーザ加工方法を示すための、レーザ発振器のレーザ発振出力、加工ヘッドの上下動、加工ヘッドの上下動により制御される被加工物に照射されるビームスポット径、スパッタ付着防止剤の吹き付け圧、およびサイドノズルエアー圧の時間変化を示した図である。また、図9は動作のフローを説明するフローチャート図である。
【0030】
図8において、実施の形態1と同様に、第1〜第3の工程の時間はそれぞれt1〜t2に対応する。また図9においては、ステップS20〜S02が第1の工程に対応し、ステップS21とS22が第2の工程に対応し、ステップS04〜S06が第3の工程に対応する。実施の形態1と異なる点は、第1の工程にて第1のピアシング加工前にスパッタ付着防止剤を噴射する点と、第2の工程でエアーおよびスパッタ付着防止剤を噴射する点と、第3の工程で第2のピアシング加工後にエアーを噴射する点である。
【0031】
以下、図8および図9を用いピアシング加工に関する動作を詳細説明する。
まず、第1の工程にて、加工ヘッド3を退避位置(He)まで上昇させ、スパッタ付着防止剤噴射ノズル9よりスパッタ付着防止剤Oを噴射する(S20)。次に、第1のピアシング条件にて被加工物にレーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔を開始する(S01)。そして、穿孔途中に加工ヘッド3を所定の高さまで上昇させることでビームスポット径を増大させ、溶融穿孔現象を促進させる(S02)。加工ヘッド3の上下動させる高さの設定は、実施の形態1と同様である。
続く第2の工程では、ビーム照射およびアシストガス噴射を一旦停止し、サイドノズル7よりエアーSを噴出させ、第1の工程にて発生したスパッタを加工部から除去する(S21)。この段階で溶融穿孔現象は停止し、ピアシング穴径の拡大が抑制される。その後、加工ヘッド3を退避位置(He)まで上昇させ、再度スパッタ付着防止剤Oを加工部分に噴射する(S22)。これは最初に噴射したスパッタ付着防止剤Oが第1ピアシング加工のビーム照射およびアシストガス噴射により揮発、除去されるためである。
続いて第3の工程で、加工ヘッド3を所定の高さ(Hdf)にし、第1の工程にて加工した部分に再度レーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔現象を再開させるが、過剰の酸化燃焼反応による穴径拡大を防止させるために、加工ヘッド3をジャストフォーカスの位置(Hjf)まで再び被加工物に接近させ貫通を完了させる(S05)。その後、ビーム照射およびアシストガスの噴射を停止する。そして、サイドノズル7よりエアーSを噴射することで、第2ピアシング加工のビーム照射にて発生したスパッタを加工部より除去する(S23)。以上の動作でピアシング加工は完了となり(S06)、この後、切断条件にて切断が開始される(S07)。
【0032】
上記のように、第1のピアシング加工と第2のピアシング加工の各加工前に、スパッタ付着防止剤を噴射することでスパッタを付着し難くし、各加工後に、サイドノズルよりエアーを噴射させスパッタを吹き飛ばして除去することにより、ピアシング穴周囲のスパッタの残存、固着を効果的に防止することができる。
【0033】
次に、本実施の形態の実施結果を説明する。加工条件は、被加工物等および第1のピアシング条件と第2のピアシング条件は実施の形態1と同一とする。加工時間は以下の通りとなる。第1の工程は、スパッタ付着防止剤の噴射工程が約1.2秒必要であるので、計t1=1.2+0.4=1.6秒となり、第3の工程は、エアーの噴射工程が約1.0秒必要であるので、計t3=0.9+1.0=1.9秒となる。第2の工程は、スパッタ付着防止剤およびエアーの噴射工程に約1.9秒必要であるが、図5よりビーム停止時間は0.5秒以上であればスパッタ量は変化しないので、t2=1.9秒に設定した。よって、加工時間はt1+t2+t3=5.4秒となり、実施の形態1の加工時間1.8秒に比較すると3倍の時間が必要となる。また、ピアシング穴径およびスパッタ量は、実施の形態1と同等である。
【0034】
図10は、実施の形態1と本実施の形態におけるピアシング穴周囲のスパッタの付着状況を比較したものである。これより実施の形態1のピアシング条件ではピアシング穴周囲にスパッタが大きく残留、固着しているのに対し、実施の形態2においては、それらが極めて少ないことが確認できる。
【0035】
このように、実施の形態2においては、実施の形態1に比較し加工時間は増加するが、ピアシング加工中に発生するスパッタのピアス穴周囲への残存、固着を効果的に抑制することができる。これにより、ピアシング加工の次工程である切断加工において、溶融飛散物とノズルとの接触、スパッタに起因するレーザビームの反射、アシストガスの乱れなど、切断性能が大幅に低下させる要因を取り除き、高品質で安定なレーザ加工を実現することができる。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態1および2においては、第1のピアシング条件および第2のピアシング条件ともCWモードであった。本実施の形態では、実施の形態1および2よりもピアシング穴径をさらに小さくし、ピアシング穴の品質向上を優先した加工方法を提供するものであり、第2のピアシング条件をPWモードとしたものである。
【0037】
図11は、本発明を実施するための実施の形態3におけるレーザ加工方法を示すための、レーザ発振器のレーザ発振出力、加工ヘッドの上下動、および加工ヘッドの上下動により制御される被加工物上のビームスポット径の時間変化を示した図である。実施の形態1の図2と比較した場合、第3の工程が異なる。実施の形態1における第2のピアシング加工は、デフォーカスからジャストフォーカスに変化させたCWモードを使用したが、本実施の形態では、第2のピアシング加工にジャストフォーカスさせた集光ビームによるPWモードを使用することが特徴である。
第3工程にてPWモードを用いることにより、第3工程でのピアシング穴径をさらに小さくすることができ、ピアシング穴の品質向上を図ることができる。
【0038】
次に、本実施の形態の実験結果を説明する。実験にて使用した被加工物等および第1のピアシング条件は、実施の形態1と同条件である。また、第2工程のビーム停止時間も、実施の形態1と同様の0.5秒の設定である。第2のピアシング条件は以下の通りである。
<第2ピアシング条件>
レーザ出力:1000W(PWモード)
パルス周波数:100Hz
パルスデューティ:20%
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.07MPa
ビームオン時間:3.0sec
ビーム照射時の加工ヘッド高さ:材料表面から4.0mm(一定)
【0039】
図12は、上記条件による加工のピアシング時間、ピアシング穴径、スパッタ量を、実施の形態1および2と比較した表である。ここで、ピアシング穴径は被加工物Wの表面の穴径であり、実施の形態1〜3までは第1のピアシング条件は同一であるので、同一の径となる。しかし、本実施の形態は、第2のピアシング条件にPWモードを採用しているため、被加工物の加工底面の穴径が他の実施の形態よりも小さくなっており、スパッタ量が少なくなっている。ここで定めるピアシング加工時間は、ビーム照射時間以外の工程も含めた時間である。
実施の形態1〜3においては、一般にピアシング時間が長いほどスパッタ量は少なくなる傾向にあるが、要求される加工時間、加工品質、加工安定性に応じて適正なピアシング方法を選択することが可能である。例えば、多数の穴開けのためにピアシング加工の回数が多くなる場合には、加工時間短縮のために実施の形態1を採用することが望ましく、複雑な切断加工線のためピアシング穴付近を加工ヘッドが横切る場合が多い加工においては、固着したスパッタによる加工品質の劣化や、固着したスパッタと加工ヘッドの衝突を防止するために、スパッタの付着が少ない実施の形態2、もしくはスパッタ量自体が少ない実施の形態3を採用することが望ましい。
【0040】
なお、実施の形態3では、実施の形態2で行ったようなスパッタの除去を目的としたサイドエアーの噴射、スパッタの残存、固着の防止を目的としたスパッタ付着防止剤の噴射の動作を実行していないが、これらの動作を含めることによりさらにピアシング能力を向上させる効果があることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 レーザ発振器、2 ミラー、3 加工ヘッド、4 レンズ、5 ノズル、6 アシストガス供給装置、7 サイドガスノズル、8 サイドガス供給装置、9 スパッタ付着防止剤供給装置、10 スパッタ付着防止剤噴射ノズル、11 ギャップコントローラ、12 サーボ制御回路、13 NC装置、14 レーザ発振制御回路、L レーザビーム、A アシストガス、W 被加工物、h ピアシング穴、S エアー、O スパッタ付着防止剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームにより被加工物の切断加工を行う際に、被加工物の所定位置に切断加工のスタート点となる貫通穴を形成するレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物の所定位置に、切断加工のスタート点である貫通穴(以下ピアシング穴とも呼ぶ)を形成し、この貫通穴からレーザビーム切断加工を行う工程において、一般的にスタート点に貫通穴を開けるピアシング工程と、このピアシング工程後に、貫通穴から任意の形状に切断加工を行う切断加工工程とからなる。
従来、炭素鋼やステンレス鋼等の厚板におけるレーザ加工では、ピアシング条件に入熱を抑制する効果のあるパルス出力を使用するのが一般的であったが、この方法では板厚の増大に伴いピアシング時間が指数関数的に増大し、生産性向上の妨げとなり、ピアシング時間短縮のために各種方法が提案されてきた。
【0003】
ピアシング時間短縮に対しては、連続的にビームを出力するCW(Continuous Wave:連続波形)モードによるビーム照射やデフォーカスビームの照射により金属の酸化燃焼反応を促進させることが効果的であるが、ピアシング時間が短縮される反面、ピアシング穴径の増大、飛散溶融物(以下スパッタと呼ぶ)の増大、被加工物への蓄熱増大など、切断加工に支障を与える多くの問題があった。具体的には、ピアシング穴径の増大は切断加工穴径を増大させ、また、材料の歩留まりを悪化させる。スパッタの増大は、それらが被加工物上に堆積する事により切断時の加工不良確率を増大させ、また、光路系部品、駆動系部品など加工機の損傷の原因となりうる。また、被加工物への蓄熱増大はピアシング加工後の切断加工時の異常燃焼原因となり、切断不良確率を増大させる。
【0004】
図13はPW(Pulse Wave:パルス波形)モードとCWモードによるピアシング加工により形成される穴断面の模式図を示したものである。一般に、パルスのオン・オフの繰り返しによるPWモードによるピアシング加工は、図13(a)に示すように被加工物W表面近傍にレーザビームLの焦点を合わせることにより、被加工物への入熱量を低減させ、0.5〜1mm程度の開孔径にて加工が可能である。しかし、ピアシング穴h貫通途中での被加工物壁面でのエネルギ吸収が無視できず、板厚の増大に伴いピアシング時間は指数関数的に増大するという欠点がある。それに対し、CWモードによるピアシングは図13(b)に示すように被加工物Wの酸化燃焼反応を促進させるため、デフォーカスされたレーザビームLを照射し、厚板であっても短時間での貫通が可能である。しかし、被加工物の溶融金属量が多いためピアシング穴hの径は5〜10mmと大きく、またピアシング穴hの周囲にスパッタが堆積するという問題がある。
【0005】
そこで、ピアシング開始時にレーザ出力を連続出力に設定し、ピアシングの進行途中に前記レーザ出力をパルス出力に変更してピアシングを行うことにより被加工物より生ずるスパッタを低減し、かつピアシング時間を低減させる加工方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−323781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、特許文献1に開示の方法によれば、CWモードによる加工方法に比べ、スパッタの低減が可能となり、PWモードに比べ加工時間の短縮が可能となる。しかし、特許文献1においては、ピアシング進行途中でCWモードから直ちに連続的にPWモードにレーザ出力条件を変化させるため、CWモードのビーム照射による熱量が、PWモードによる加工においても残留するため、PWモードにおける加工において酸化燃焼反応を効果的に抑制することは困難である。そのため、ピアシング途中で直ちに連続的にパルス出力に変更しても、スパッタが比較的多く、ピアス穴径も大きくなってしまうという問題があった。また、PWモードを併用しているため、加工時間の短縮にも限度があり、更なる改善が必要であった。
【0008】
また、レーザビームの出力条件のみを変更することでピアシング加工を実施しているため、ピアシング加工中に発生するスパッタはピアス穴周囲に残存、固着してしまう。そのため、ピアシング加工の次工程である切断加工において、スパッタとノズルとの接触、スパッタに起因するレーザビームの反射、アシストガスの乱れなど、切断性能が大幅に低下するという問題が依然残っている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ピアシング穴径を小さく、スパッタ量を低減させ、かつピアシング時間を短縮したピアシング加工を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るレーザ加工方法においては、ピアシング加工を行うレーザ加工方法において、第1のピアシング条件にてレーザビームを被加工物に照射しピアシング加工を行う第1の工程と、第1の工程後、レーザビームの照射を停止する第2の工程と、第2の工程後、第1の工程にて加工した部分に第2のピアシング条件にてレーザビームを被加工物に照射しピアシング加工を完了する第3の工程とを備えるとともに、前記第2の工程におけるレーザビームの照射を停止する時間を、この停止する時間の増加に対してスパッタ量が一定値から減少し再度一定値に達した時間としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ピアシング加工途中にビーム停止期間を設けることで、ピアシング加工時に発生するスパッタ量を低減し、短時間で貫通穴を形成することができ、レーザ加工全体の加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1を示すレーザ加工装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法を実施するためのレーザ出力等の時間変化を示すグラフである。
【図3】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法を実施するための動作のフローを示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法を実施した場合のピアシング穴断面を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法におけるビーム停止時間とスパッタ量の関係を示すグラフである。
【図6】この発明の実施の形態1であるレーザ加工方法による加工と従来のCWモードでの加工との比較表である。
【図7】この発明の実施の形態2を示すレーザ加工装置の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態2であるレーザ加工方法を実施するためのレーザ出力等の時間変化を示すグラフである。
【図9】この発明の実施の形態2であるレーザ加工方法を実施するための動作のフローを示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2であるレーザ加工方法によるピアシング品質と実施の形態1とを比較した図である。
【図11】この発明の実施の形態3であるレーザ加工方法を実施するためのレーザ出力等の時間変化を示すグラフである。
【図12】この発明の実施の形態3であるレーザ加工方法による加工と実施の形態1および2との比較表である。
【図13】従来のPWモードおよびCWモードでのレーザ加工方法を実施した場合のピアシング穴断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明を実施するための実施の形態1に係るレーザ加工方法に用いられるレーザ加工装置を示した装置構成図である。
図1において、レーザ発振器1から出射されたレーザビームLは、単数もしくは複数のミラー2により所定の光路を導かれ、加工ヘッド3に入射される。加工ヘッド3内には、レーザビームLを被加工物W上に集光するためのレンズ4が設けられている。レーザビームLは、レンズ4で集光され、加工ヘッド3の先端に設けられたノズル5より被加工物W上に照射される。レーザ発振器1の出力やON/OFFは、加工プログラムが入力されたNC装置からの指令値に基づき、レーザ発振制御回路14により制御される。
被加工物Wは、図示していない加工テーブル上に載置されており、加工テーブルと加工ヘッド3は、図示していない駆動源であるサーボモーター等により、X,Y,Z軸方向に相対的に移動して、所望の加工が行われる。サーボモーター等は、加工プログラムが入力されたNC装置からの指令値に基づき、サーボ制御回路12により制御される。
また、ノズル5と被加工物Wとの距離は、ノズル5もしくはノズル5の近傍に設けられた、図示していないギャップセンサにより検出される。検出された情報はギャップコントローラ11に送られ、ギャップコントローラ11は、NC装置13からの指令値と測定値とを比較し、補正指令をサーボ制御回路12に送り、常にノズル5の高さを指令値に一致させる。
また、NC装置13からの指令値により、アシストガス供給装置6は所定の圧力や種類のアシストガスAを、加工ヘッド内に供給する。供給されたアシストガスAは、ノズル5先端よりレーザビームLと同軸上に噴出されて、被加工物Wの溶融促進および溶融金属の除去等に使用される。
【0014】
図2は、本発明を実施するための実施の形態1におけるレーザ加工方法を示すための、レーザ発振器のレーザ発振出力、加工ヘッドの上下動、および加工ヘッドの上下動により制御される被加工物上のビームスポット径の時間変化を示した図である。また、図3は動作のフローを説明するフローチャート図である。以下、図2および図3を用いピアシング加工に関する動作を詳細説明する。
【0015】
図2において、ピアシング開始からt1の時間を第1の工程、第1の工程後のt2の時間を第2の工程、第2の工程後のt3の時間を第3の工程と呼ぶことにする。すなわち、本実施の形態では、第1〜第3の工程によりピアシング加工を完了するものである。また、第1の工程にて行われるピアシング加工を第1のピアシング加工と呼び、その加工条件を第1のピアシング条件と呼ぶ。さらに、第3の工程にて行われるピアシング加工を第2のピアシング加工と呼び、その加工条件を第2のピアシング条件と呼ぶ。図3においては、ステップS01とS02が第1の工程に対応し、ステップS03が第2の工程に対応し、ステップS04からS06が第3の工程に対応する。
【0016】
第1の工程では、第1のピアシング条件にて被加工物WにレーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔を開始し(S01)、溶融金属の除去効果を高めるべく、加工ヘッドを所定の高さまで上昇させることでビームスポット径を増大させる(S02)。ここで、加工ヘッド3の上下動は図2に示したように、ジャストフォーカス位置(Hjf)からデフォーカス位置(Hdf)に上昇させる。デフォーカス位置(Hdf)は、従来のCWモードのみでピアシング加工を行う場合のデフォーカス位置と同等の位置である。第1の工程は、溶融金属の除去効果を高める必要があるので、デフォーカス位置で加工を行ってもよいが、上記のように、ジャストフォーカス位置からデフォーカス位置へ変化させることで、デフォーカス位置のみで加工するよりも、さらにスパッタ量を低減することができる。
続く第2の工程では、ピアシング加工が完了する前に酸化燃焼反応を遮断すべく、ビーム照射およびアシストガス噴射を一旦停止させ、停止時間t2を設ける。この段階で溶融穿孔現象は停止し、ピアシング穴径の拡大を抑制する(S03)。
続いて第3の工程では、第2のピアシング条件にて、第1の工程にて加工した部分に、所定の高さ(Hdf)から再度レーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔現象を再開させるが、過剰の酸化燃焼反応による穴径拡大を防止させるために、加工ヘッド3をジャストフォーカスの位置(Hjf)まで再び被加工物に接近させ貫通を完了させる(S05)。第3の工程は、スパッタ量を低減する必要があるので、ジャストフォーカス位置で加工を行ってもよいが、前記のように、デフォーカス位置からジャストフォーカス位置へ変化させることで、ジャストフォーカス位置のみで加工するよりも、さらに加工時間を短縮することができる。
以上の動作でピアシング加工は完了となり(S06)、この後、切断条件にて切断が開始される(S07)。
【0017】
図4は、上記方法により加工されたピアシング穴断面の模式図であり、図4(a)は第1の工程後の図であり、図4(b)は第3の工程後の図である。図4(a)に示したように、第1の工程で選択された第1のピアシング条件により、被加工物Wの板厚の途中までピアシング穴hが形成される。続く第2の工程にてビーム照射が一旦停止することから、途中まで進行した酸化燃焼反応は遮断される。続く第3の工程でレーザビームLが再度照射されるが、余剰な入熱が存在しないため、図4(b)に示したように、小径のピアシング穴hを形成することができる。これにより、スパッタ量を減らすとともに加工時間を短縮することができるのである。
【0018】
これらの工程は加工条件も含め、全てNC装置13にプログラムとして入力されており、NC装置13からの指令値に基づき、レーザ発振制御回路14によりレーザビームLの照射および出力が制御され、ギャップコントローラ11およびサーボ制御回路12により加工ヘッド3の上下動が制御され、アシストガス供給装置6によりアシストガスAの噴射が制御される。
【0019】
ここで、第2の工程におけるビーム停止時間が短すぎると、第1の工程にて発生する熱量が残存し、続く第3の工程におけるビーム照射により過剰な溶融現象を誘発するため、一定以上の時間を設定する必要がある。しかしながら、第2の工程におけるビーム停止時間が長すぎると、結果としてピアシング加工に要する時間、さらにはレーザ加工全体の加工時間が長くなってしまい、レーザ加工の生産性に支障を来たす。よって、第2の工程の時間t2は適切に設定する必要がある。
【0020】
図5は、第2の工程におけるビーム停止時間を変化させたときのスパッタ量を測定した実験結果である。本実験にて使用した被加工物等の条件および第1のピアシング条件と第2のピアシング条件は以下の通りである。
<共通条件>
被加工物の材質・板厚:軟鋼(SS400)t19mm
加工レンズ:焦点距離f190.5mm
ノズル径:φ1.7mm
<第1ピアシング条件>
レーザビーム出力:2000W(CWモード)
Z軸移動速度:15000mm/min
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.08MPa
ビームオン時間:0.4sec
ビーム照射開始時の加工ヘッド高さ:材料表面より4.0mm(Hjf)
ビーム照射終了時の加工ヘッド高さ:材料表面より19.0mm(Hdf)
<第2ピアシング条件>
レーザビーム出力:4000W(CWモード)
Z軸移動速度:1000mm/min
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.07MPa
ビームオン時間:0.9sec
ビーム照射開始時の加工ヘッド高さ:材料表面より19.0mm(Hdf)
ビーム照射終了時の加工ヘッド高さ:材料表面より4.0mm(Hjf)
【0021】
図5により、t2が0.3秒を超えるとスパッタ量が減少し始め、0.5秒以上で略一定となることが判る。よって、スパッタ量の減少という観点からは、第2の工程におけるビーム停止時間を約0.5秒以上とすればよい。更に加工時間の短縮を考慮すると、t2を約0.5秒に設定することが適切である。
また、図5においては板厚19mmの軟鋼(SS400)の加工結果を示したが、板厚が12mm、16mm、22mmのものについても同様の実験を行い、図4と同様の結果が得られており、板厚によらずt2は0.5秒程度が最適値であるといえる。
【0022】
ここで、上記第1のピアシング条件と第2のピアシング条件は、本実施の形態に係る加工方法の一例であり、特に上記条件に限定されるものではなく、被加工物の板厚や材質によって適宜設定すればよい。ただし、加工品質と加工時間を考慮し、以下の条件を満たすことが望ましい。
第1のピアシング条件は、板厚途中までの穿孔と急速にビームスポット径を増大させるために、第2のピアシング条件と比較し、低出力かつZ軸の上方への移動速度を大きくし、ビーム照射時間を短く設定することが望ましい。また、第2のピアシング条件は、板厚途中まで穿孔が進行したピアシング穴に対し、酸化燃焼反応を再び促進させ、かつ穿孔効率を高めることから、第1のピアシング条件と比較し、高出力かつZ軸の下方への移動速度を小さくし、ビーム照射時間を長く設定することが望ましい。
【0023】
次に、本実施の形態における加工方法の効果を説明する。図6は、従来のCWモードによるピアシング加工と、本実施の形態によるピアシング加工による、ピアシング穴径、ピアシング時に発生するスパッタ量、加工時間の比較をしたものである。本実施の形態の加工条件は、上記加工条件とし、第2の工程の時間t2は、0.5秒とした。被加工物は、上記と同様の板厚19mmの軟鋼SS400材を使用した。従来のピアシング条件は以下の通りである。
<従来のピアシング条件>
レーザビーム出力:4000W(CWモード)
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.08MPa
ビームオン時間:1.0sec
ビーム照射時の加工ヘッド高さ:材料表面より19.0mm(一定)
【0024】
本実施の形態の加工時間は、
0.4秒(第1の工程)+0.5秒(第2の工程)+0.9秒(第3の工程)=1.8秒
となり、図6に示したように、従来のCWモードによる加工方法の加工時間1.0秒と比較し、やや悪化している。しかし、ピアシング穴径は40%小さくなり、これによりスパッタ量も約30%以上低減させることができる。
【0025】
また、従来のPWモードによるピアシング加工条件で、板厚19mmの軟鋼SS400に貫通穴を加工した場合、加工時間は約20秒必要であり、本実施の形態はPWモードに比べ1/10以下の時間で貫通穴を加工することができる。
【0026】
このように、被加工物の所定位置に切断加工のスタート点である貫通穴を開けるピアシング加工の加工方法において、第1のピアシング条件にてビームを照射する第1の工程と、一旦ビーム照射を停止する第2の工程と、第2のピアシング条件にて再度ビームを照射する第3の工程からなる加工方法を用いることにより、ピアシング穴径を小さくすることができスパッタ量を低減することができる。さらには加工時間の短縮、生産性の向上を図ることができる。
【0027】
実施の形態2.
実施の形態1においては、ピアシング加工中に、レーザ出力、加工ヘッドの上下動により制御できる被加工物上のビームスポット径を変化させ、ビーム停止時間を設け、スパッタ量を減少させた。本実施の形態においては、それらの動作に加え、エアーおよびスパッタ付着防止剤をピアシング穴付近に噴射することにより、ピアシング穴周囲のスパッタの残存、固着を防止するものである。
【0028】
図7は、本発明を実施するための実施の形態2に係るレーザ加工方法に用いられるレーザ加工装置を示した装置構成図である。実施の形態1のレーザ加工装置の図1に、サイドノズルからエアーを噴射する機構、およびスパッタ付着防止剤を噴射する機構を加えた構成となっている。以下、図1からの追加部分について説明する。
図7において、NC装置13からの指令値により、サイドガス供給装置8は所定の圧力のエアーSをサイドノズル7に供給する。供給されたエアーSは、サイドノズル7より被加工物W上のピアシング穴h周辺に噴射されて、ピアシング穴h周囲のスパッタの除去に使用される。ここで、サイドノズル7は加工ヘッド3に固定されており、加工ヘッド3とともに上下動する。
また、NC装置13からの指令値により、スパッタ付着防止剤供給装置9は所定の圧力のスパッタ付着防止剤Oをスパッタ付着防止剤噴射ノズル10に供給する。ここで、スパッタ付着防止剤とは、被加工物Wへのスパッタの固着を防止するための、離型剤もしくは油分を成分とするものである。供給されたスパッタ付着防止剤Oは、スパッタ付着防止剤噴射ノズル10より被加工物W上のピアシング穴h周辺に噴射されて、ピアシング穴周囲のスパッタ固着の防止に使用される。サイドノズル7は加工ヘッド3とともに上下動するが、スパッタ付着防止剤噴射ノズル10は、スパッタ付着防止剤Oがノズル5等に付着しないように、独立して固定されている。そして、スパッタ付着防止剤Oを噴射するときは、加工ヘッド3は退避位置まで上昇しておく。
【0029】
図8は、本発明を実施するための実施の形態2におけるレーザ加工方法を示すための、レーザ発振器のレーザ発振出力、加工ヘッドの上下動、加工ヘッドの上下動により制御される被加工物に照射されるビームスポット径、スパッタ付着防止剤の吹き付け圧、およびサイドノズルエアー圧の時間変化を示した図である。また、図9は動作のフローを説明するフローチャート図である。
【0030】
図8において、実施の形態1と同様に、第1〜第3の工程の時間はそれぞれt1〜t2に対応する。また図9においては、ステップS20〜S02が第1の工程に対応し、ステップS21とS22が第2の工程に対応し、ステップS04〜S06が第3の工程に対応する。実施の形態1と異なる点は、第1の工程にて第1のピアシング加工前にスパッタ付着防止剤を噴射する点と、第2の工程でエアーおよびスパッタ付着防止剤を噴射する点と、第3の工程で第2のピアシング加工後にエアーを噴射する点である。
【0031】
以下、図8および図9を用いピアシング加工に関する動作を詳細説明する。
まず、第1の工程にて、加工ヘッド3を退避位置(He)まで上昇させ、スパッタ付着防止剤噴射ノズル9よりスパッタ付着防止剤Oを噴射する(S20)。次に、第1のピアシング条件にて被加工物にレーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔を開始する(S01)。そして、穿孔途中に加工ヘッド3を所定の高さまで上昇させることでビームスポット径を増大させ、溶融穿孔現象を促進させる(S02)。加工ヘッド3の上下動させる高さの設定は、実施の形態1と同様である。
続く第2の工程では、ビーム照射およびアシストガス噴射を一旦停止し、サイドノズル7よりエアーSを噴出させ、第1の工程にて発生したスパッタを加工部から除去する(S21)。この段階で溶融穿孔現象は停止し、ピアシング穴径の拡大が抑制される。その後、加工ヘッド3を退避位置(He)まで上昇させ、再度スパッタ付着防止剤Oを加工部分に噴射する(S22)。これは最初に噴射したスパッタ付着防止剤Oが第1ピアシング加工のビーム照射およびアシストガス噴射により揮発、除去されるためである。
続いて第3の工程で、加工ヘッド3を所定の高さ(Hdf)にし、第1の工程にて加工した部分に再度レーザビームLを照射しアシストガスAを噴射することにより溶融穿孔現象を再開させるが、過剰の酸化燃焼反応による穴径拡大を防止させるために、加工ヘッド3をジャストフォーカスの位置(Hjf)まで再び被加工物に接近させ貫通を完了させる(S05)。その後、ビーム照射およびアシストガスの噴射を停止する。そして、サイドノズル7よりエアーSを噴射することで、第2ピアシング加工のビーム照射にて発生したスパッタを加工部より除去する(S23)。以上の動作でピアシング加工は完了となり(S06)、この後、切断条件にて切断が開始される(S07)。
【0032】
上記のように、第1のピアシング加工と第2のピアシング加工の各加工前に、スパッタ付着防止剤を噴射することでスパッタを付着し難くし、各加工後に、サイドノズルよりエアーを噴射させスパッタを吹き飛ばして除去することにより、ピアシング穴周囲のスパッタの残存、固着を効果的に防止することができる。
【0033】
次に、本実施の形態の実施結果を説明する。加工条件は、被加工物等および第1のピアシング条件と第2のピアシング条件は実施の形態1と同一とする。加工時間は以下の通りとなる。第1の工程は、スパッタ付着防止剤の噴射工程が約1.2秒必要であるので、計t1=1.2+0.4=1.6秒となり、第3の工程は、エアーの噴射工程が約1.0秒必要であるので、計t3=0.9+1.0=1.9秒となる。第2の工程は、スパッタ付着防止剤およびエアーの噴射工程に約1.9秒必要であるが、図5よりビーム停止時間は0.5秒以上であればスパッタ量は変化しないので、t2=1.9秒に設定した。よって、加工時間はt1+t2+t3=5.4秒となり、実施の形態1の加工時間1.8秒に比較すると3倍の時間が必要となる。また、ピアシング穴径およびスパッタ量は、実施の形態1と同等である。
【0034】
図10は、実施の形態1と本実施の形態におけるピアシング穴周囲のスパッタの付着状況を比較したものである。これより実施の形態1のピアシング条件ではピアシング穴周囲にスパッタが大きく残留、固着しているのに対し、実施の形態2においては、それらが極めて少ないことが確認できる。
【0035】
このように、実施の形態2においては、実施の形態1に比較し加工時間は増加するが、ピアシング加工中に発生するスパッタのピアス穴周囲への残存、固着を効果的に抑制することができる。これにより、ピアシング加工の次工程である切断加工において、溶融飛散物とノズルとの接触、スパッタに起因するレーザビームの反射、アシストガスの乱れなど、切断性能が大幅に低下させる要因を取り除き、高品質で安定なレーザ加工を実現することができる。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態1および2においては、第1のピアシング条件および第2のピアシング条件ともCWモードであった。本実施の形態では、実施の形態1および2よりもピアシング穴径をさらに小さくし、ピアシング穴の品質向上を優先した加工方法を提供するものであり、第2のピアシング条件をPWモードとしたものである。
【0037】
図11は、本発明を実施するための実施の形態3におけるレーザ加工方法を示すための、レーザ発振器のレーザ発振出力、加工ヘッドの上下動、および加工ヘッドの上下動により制御される被加工物上のビームスポット径の時間変化を示した図である。実施の形態1の図2と比較した場合、第3の工程が異なる。実施の形態1における第2のピアシング加工は、デフォーカスからジャストフォーカスに変化させたCWモードを使用したが、本実施の形態では、第2のピアシング加工にジャストフォーカスさせた集光ビームによるPWモードを使用することが特徴である。
第3工程にてPWモードを用いることにより、第3工程でのピアシング穴径をさらに小さくすることができ、ピアシング穴の品質向上を図ることができる。
【0038】
次に、本実施の形態の実験結果を説明する。実験にて使用した被加工物等および第1のピアシング条件は、実施の形態1と同条件である。また、第2工程のビーム停止時間も、実施の形態1と同様の0.5秒の設定である。第2のピアシング条件は以下の通りである。
<第2ピアシング条件>
レーザ出力:1000W(PWモード)
パルス周波数:100Hz
パルスデューティ:20%
アシストガス種類:酸素
アシストガス圧力:0.07MPa
ビームオン時間:3.0sec
ビーム照射時の加工ヘッド高さ:材料表面から4.0mm(一定)
【0039】
図12は、上記条件による加工のピアシング時間、ピアシング穴径、スパッタ量を、実施の形態1および2と比較した表である。ここで、ピアシング穴径は被加工物Wの表面の穴径であり、実施の形態1〜3までは第1のピアシング条件は同一であるので、同一の径となる。しかし、本実施の形態は、第2のピアシング条件にPWモードを採用しているため、被加工物の加工底面の穴径が他の実施の形態よりも小さくなっており、スパッタ量が少なくなっている。ここで定めるピアシング加工時間は、ビーム照射時間以外の工程も含めた時間である。
実施の形態1〜3においては、一般にピアシング時間が長いほどスパッタ量は少なくなる傾向にあるが、要求される加工時間、加工品質、加工安定性に応じて適正なピアシング方法を選択することが可能である。例えば、多数の穴開けのためにピアシング加工の回数が多くなる場合には、加工時間短縮のために実施の形態1を採用することが望ましく、複雑な切断加工線のためピアシング穴付近を加工ヘッドが横切る場合が多い加工においては、固着したスパッタによる加工品質の劣化や、固着したスパッタと加工ヘッドの衝突を防止するために、スパッタの付着が少ない実施の形態2、もしくはスパッタ量自体が少ない実施の形態3を採用することが望ましい。
【0040】
なお、実施の形態3では、実施の形態2で行ったようなスパッタの除去を目的としたサイドエアーの噴射、スパッタの残存、固着の防止を目的としたスパッタ付着防止剤の噴射の動作を実行していないが、これらの動作を含めることによりさらにピアシング能力を向上させる効果があることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 レーザ発振器、2 ミラー、3 加工ヘッド、4 レンズ、5 ノズル、6 アシストガス供給装置、7 サイドガスノズル、8 サイドガス供給装置、9 スパッタ付着防止剤供給装置、10 スパッタ付着防止剤噴射ノズル、11 ギャップコントローラ、12 サーボ制御回路、13 NC装置、14 レーザ発振制御回路、L レーザビーム、A アシストガス、W 被加工物、h ピアシング穴、S エアー、O スパッタ付着防止剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアシング加工を行うレーザ加工方法において、
第1のピアシング条件にてレーザビームを被加工物に照射し被加工物の板厚の途中までピアシング穴を形成する加工を行う第1の工程と、
第1の工程後、レーザビームの照射を所定の時間停止する第2の工程と、
第2の工程後、第1の工程にて加工した部分に第2のピアシング条件にてレーザビームを照射しピアシング穴を貫通させる加工を完了する第3の工程とを備えるとともに、
前記第2の工程における所定の時間は、
前記第2工程にてレーザビームの照射を停止する時間の増加に対して、前記第1から第3の工程によるピアシング加工により発生するスパッタ量が一定値から減少し再度一定値へと変化する関係において、このスパッタ量が減少し再度一定値に達した時間を前記所定の時間としたレーザ加工方法。
【請求項2】
前記第1のピアシング条件にて、連続波形モードを選択したことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第1のピアシング条件にて、ビームスポット径を変化させることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記ビームスポット径の変化は、ジャストフォーカス状態からデフォーカス状態へ変化させることを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記第2のピアシング条件にて、連続波形モードを選択したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記第2のピアシング条件にて、ビームスポット径を変化させることを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記ビームスポット径の変化は、デフォーカス状態からジャストフォーカス状態へ変化させることを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記第2のピアシング条件にて、パルス波形モードを選択したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記第2のピアシング条件にて、ビームスポット径を一定としたことを特徴とする請求項8に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記第1の工程は、レーザビームの照射前に被加工物の加工部付近にスパッタ付着防止剤を噴射し、
前記第2の工程におけるレーザ停止時に、被加工物の加工部付近にエアーを噴射することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記第2の工程におけるレーザ停止時に、被加工物の加工部付近にスパッタ付着防止剤を噴射し、
前記第3の工程でのレーザビームの照射後に、被加工物の加工部付近にエアーを噴射することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
ピアシング加工を行うレーザ加工方法において、
第1のピアシング条件にて連続波形モードのレーザビームを被加工物に照射し被加工物の板厚の途中までピアシング穴を形成する加工を行う第1の工程と、
第1の工程後、レーザビームの照射を所定の時間停止する第2の工程と、
第2の工程後、第1の工程にて加工した部分に第2のピアシング条件にて連続波形モードのレーザビームを被加工物に照射しピアシング穴を貫通させる加工を完了する第3の工程とを備えるとともに、
前記第2の工程における所定の時間は、
前記第2工程にてレーザビームの照射を停止する時間の増加に対して、前記第1から第3の工程によるピアシング加工により発生するスパッタ量が一定値から減少し再度一定値へと変化する関係において、このスパッタ量が減少し再度一定値に達した時間を前記所定の時間としたレーザ加工方法。
【請求項1】
ピアシング加工を行うレーザ加工方法において、
第1のピアシング条件にてレーザビームを被加工物に照射し被加工物の板厚の途中までピアシング穴を形成する加工を行う第1の工程と、
第1の工程後、レーザビームの照射を所定の時間停止する第2の工程と、
第2の工程後、第1の工程にて加工した部分に第2のピアシング条件にてレーザビームを照射しピアシング穴を貫通させる加工を完了する第3の工程とを備えるとともに、
前記第2の工程における所定の時間は、
前記第2工程にてレーザビームの照射を停止する時間の増加に対して、前記第1から第3の工程によるピアシング加工により発生するスパッタ量が一定値から減少し再度一定値へと変化する関係において、このスパッタ量が減少し再度一定値に達した時間を前記所定の時間としたレーザ加工方法。
【請求項2】
前記第1のピアシング条件にて、連続波形モードを選択したことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第1のピアシング条件にて、ビームスポット径を変化させることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記ビームスポット径の変化は、ジャストフォーカス状態からデフォーカス状態へ変化させることを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記第2のピアシング条件にて、連続波形モードを選択したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記第2のピアシング条件にて、ビームスポット径を変化させることを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記ビームスポット径の変化は、デフォーカス状態からジャストフォーカス状態へ変化させることを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記第2のピアシング条件にて、パルス波形モードを選択したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記第2のピアシング条件にて、ビームスポット径を一定としたことを特徴とする請求項8に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記第1の工程は、レーザビームの照射前に被加工物の加工部付近にスパッタ付着防止剤を噴射し、
前記第2の工程におけるレーザ停止時に、被加工物の加工部付近にエアーを噴射することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記第2の工程におけるレーザ停止時に、被加工物の加工部付近にスパッタ付着防止剤を噴射し、
前記第3の工程でのレーザビームの照射後に、被加工物の加工部付近にエアーを噴射することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
ピアシング加工を行うレーザ加工方法において、
第1のピアシング条件にて連続波形モードのレーザビームを被加工物に照射し被加工物の板厚の途中までピアシング穴を形成する加工を行う第1の工程と、
第1の工程後、レーザビームの照射を所定の時間停止する第2の工程と、
第2の工程後、第1の工程にて加工した部分に第2のピアシング条件にて連続波形モードのレーザビームを被加工物に照射しピアシング穴を貫通させる加工を完了する第3の工程とを備えるとともに、
前記第2の工程における所定の時間は、
前記第2工程にてレーザビームの照射を停止する時間の増加に対して、前記第1から第3の工程によるピアシング加工により発生するスパッタ量が一定値から減少し再度一定値へと変化する関係において、このスパッタ量が減少し再度一定値に達した時間を前記所定の時間としたレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【公開番号】特開2012−677(P2012−677A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219079(P2011−219079)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2005−269738(P2005−269738)の分割
【原出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2005−269738(P2005−269738)の分割
【原出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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