説明

レーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニット

【課題】レーザ加工用のレーザダイオードの出力状態を戻り光に影響されることなく正確に検出することができ、高品質のレーザ加工を施すことができるレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットを提供すること。
【解決手段】レーザ加工用の2個のレーザダイオード9a、9bの出力光の進行方向側に光が順方向および逆方向に進行する光学系が設けられているレーザダイオード9a、9bの出力光の強度を検出するレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置であって、光学系の途中に2個のレーザダイオード9a、9bの出力光を合流させて同一方向に出力する光コンバイナ18を有し、該光コンバイナ18は、順方向の光は出力するが逆方向の光は出力しない選択出力部18aを有し、光コンバイナ18の選択出力部18aには、2個のレーザダイオード9a、9bの出力光のみの強度を検出する検出手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザダイオードを励起用レーザ光の光源とするレーザ加工装置が提案されている(例えば、特許文献1、図1参照)。
【0003】
このレーザ加工装置においては、レーザ光の進行方向に従って概略して説明すると、最初に、レーザ加工用のレーザダイオードによって励起用レーザ光を励起させ、続いて、励起用レーザ光を発振ファイバによって所定波長のファイバレーザ光として取り出し、続いて、光ファイバ等の導光手段によって加工ヘッドに導光し、続いて、加工ヘッドによって加工対象物にファイバレーザ光を照射してレーザ加工を施すように形成されている。
【0004】
このように形成されているレーザ加工装置においては、金属等の加工対象物に対して大エネルギを必要とする溶接、切断等の加工を円滑かつ確実に施すために、光源として20W以上の大出力に形成されているレーザ加工用のレーザダイオードが用いられている。更に、より一層の大出力を得るために2個のレーザダイオードを用いたり、大エネルギを発振するために高温となるレーザダイオードを前記発振ファイバと独立したユニットとして形成している。また、ファイバレーザ光の出力を設定値に保持して適正なレーザ加工を施したり、レーザダイオードの劣化を検出するためのフォトセンサをユニット内に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−010274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザダイオードユニットにおいては、レーザダイオードからの出力光を光ファイバの方向へ反射して折り返すための折返しミラーが当該ユニット内に設けられている。そして、その折返しミラーの反射面の裏側にレーザダイオードが出力する光の出力値を検出するためのフォトセンサが設置されてる。ところが、前記フォトセンサの従来の位置には、折返しミラーより出力光の進行方向後流側に設置されている導光手段や光学部品から反射して逆方向に戻る戻り光も同時に受光することがある。これにより、当該フォトセンサの出力が大きく変動してしまい、レーザダイオードの劣化判定を正確に行うことができないという不都合があった。
【0007】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、レーザ加工用のレーザダイオードの出力状態を戻り光に影響されることなく正確に検出することができ、高品質のレーザ加工を施すことのできるレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の1態様は、2個のレーザダイオードの出力光の進行方向側に光が順方向および逆方向に進行する光学系が設けられている前記レーザダイオードの出力光の強度を検出するレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置であって、前記光学系の途中に前記2個のレーザダイオードの出力光を合流させて同一方向に出力する光コンバイナを有し、該光コンバイナは順方向の光は出力するが逆方向の光は出力しない選択出力部を有し、前記光コンバイナの前記選択出力部には、前記2個のレーザダイオードの出力光のみの強度を検出する検出手段を設けたことを特徴とする。これにより本発明によれば、レーザ加工用のレーザダイオードの出力状態を戻り光に影響されることなく正確に検出することができ、高品質のレーザ加工を施すことができる。
【0009】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の他の態様は、前記偏光ビームスプリッタには、前記選択出力部から前記検出手段に向かう出力光を拡散させる拡散手段が設けられていることを特徴とする。これにより本発明によれば、マルチエミッタ構造のレーザダイオードを用いても、レーザダイオードの出力を精度よく検出することができる。
【0010】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の他の態様は、前記フォトダイオードには、散乱光の入光を遮蔽する遮蔽手段が設けられていることを特徴とする。これにより本発明によれば、散乱光に影響されることなく、レーザダイオードの出力を精度よく検出することができる。
【0011】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の他の態様は、前記光コンバイナは偏光ビームスプリッタであり、前記検出手段はフォトダイオードであることを特徴とする。これにより本発明によれば、偏光ビームスプリッタによって2個のレーザダイオードの出力光のみを検出手段に出力させることができ、レーザダイオードの出力を精度よく検出することができる。
【0012】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の他の態様は、前記2個のレーザダイオードの一方からの出力光は横偏光の光として前記偏光ビームスプリッタに入力され、他方からの出力光は縦偏光の光として前記偏光ビームスプリッタに入力されることを特徴とする。これにより本発明によれば、横偏光の光を偏光ビームスプリッタを透過させて直進させ、縦偏光の光を偏光ビームスプリッタによって反射させて、2個のレーザダイオードを適正に用いることができる。
【0013】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の他の態様は、前記光学系の後流側にはレーザ加工部に前記2個のレーザダイオードの出力光を導く導光手段が配設され、前記逆方向の光は前記導光手段において反射する反射光であることを特徴とする。これにより本発明によれば、レーザダイオードの光学系の後流側に接続されているとともにレーザ加工部に2個のレーザダイオードの出力光を導く導光手段側からの戻り光に影響されることなく、レーザダイオードの出力を精度よく検出することができる。
【0014】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置の他の態様は、前記導光手段は、前記2個のレーザダイオードの出力光を導く光ファイバ系または発振器ユニットであることを特徴とする。これにより本発明によれば、2個のレーザダイオードの出力光を導く光ファイバ系または発振器ユニット側からの戻り光に影響されることなく、レーザダイオードの出力を精度よく検出することができる。
【0015】
また、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードユニットの態様は、前記各態様のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置を備えていることを特徴とする。これにより本発明によれば、レーザ加工用のレーザダイオードの出力状態を戻り光に影響されることなく正確に検出することができ、高品質のレーザ加工を施すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットは、レーザ加工用のレーザダイオードの出力状態を戻り光に影響されることなく正確に検出することができ、高品質のレーザ加工を施すことができるなどの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットの一実施形態を適用したレーザ加工装置を示す概念図
【図2】本発明のレーザ加工用のレーザダイオードユニットの一実施形態を示す平面図
【図3】図2のB羽根矢視図
【図4】図2のA−A線にそった断面図
【図5】2個のレーザダイオードから出力された各レーザ光の位置制御の状態を示す図2の伝送用の光ファイバの端面における集光図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットを図1から図5により説明する。
【0019】
図1は本発明のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットの実施形態を備えたレーザ加工装置1を示している。
【0020】
このレーザ加工装置1は、レーザ光の進行順に、レーザ発振部2、レーザ入射部3、ファイバ伝送部4、レーザヘッド部5および加工テーブル6を備えている。
【0021】
レーザ発振部2は、レーザ光MBを発振するレーザ加工用のレーザダイオードユニット9と、レーザ光MBを発振用の光ファイバ(以下、「発振ファイバ」という)10によって所定波長のファイバレーザ光FBとして取り出して出力する発振器ユニット8とを有している。
【0022】
まず、ファイバレーザ光FBの発振について説明すると、本実施形態においては、発振器ユニット8において、発振ファイバ10を介して光学的に相対向する一対の光共振器ミラー11、12が配置されている。各光共振器ミラー11、12と発振ファイバ10の端面との間にはそれぞれ光学レンズ13、14が配置されている。一方の光学レンズ13は、レーザダイオードユニット9側から出力されるとともに励起用として利用されるレーザ光MBを発振ファイバ10の一端面に集光入射させる。レーザダイオードユニット9と光学レンズ13との間に配置されている光共振器ミラー11は、レーザダイオードユニット9側から入射した励起用のレーザ光MBを透過させ、発振ファイバ10側から入射した発振光線を共振器の光軸上で全反射するように形成されている。発振ファイバ10は、発光元素としてたとえば希土類元素のイオンをドープしたコアと、このコアを同軸に取り囲むクラッドとを有しており、コアを活性媒体とし、クラッドを励起光の伝播光路としている。前記のようにして発振ファイバ10の一端面に入射した励起用のレーザ光MBは、クラッド外周界面の全反射によって閉じ込められながら発振ファイバ10の中を軸方向に伝播し、その伝播中にコアを何度も横切ることでコア中の希土類元素イオンを光励起する。こうして、コアの両端面から軸方向に所定波長の発振光線が放出され、この発振光線が光共振器ミラー11、12の間を何度も行き来して共振増幅され、部分反射ミラーからなる片側の共振器ミラー12より該所定波長を有するファイバレーザ光FBが取り出されて、順方向に進行する。光学レンズ13、14は、発振ファイバ10の端面から放出されてきた発振光線を平行にコリメートして光共振器ミラー11、12で反射して戻ってきた発振光線を発振ファイバ10の端面に集光させる。また、発振ファイバ10を通り抜けた励起用のレーザ光MBは、光学レンズ14および光共振器ミラー12を透過したのちに折り返しミラー15にて側方のレーザ吸収体16に向けて折り返される。光共振器ミラー12より出力されたファイバレーザ光FBは、この折り返しミラー15をまっすぐ透過し、レーザ入射部3に進行する。
【0023】
次に、レーザダイオードユニット9を説明する。
【0024】
このレーザダイオードユニット9は、いわゆるFC−LD(Fiber Coupling - Laser Diode)として形成されており、ユニット9内において発振されたレーザ光MBの出力部分に伝送用の光ファイバ7が接続された構造とされている。この光ファイバ7の端面7aが2個のレーザダイオードから出力されるレーザ光のユニット9からの出力基準面となる。
【0025】
本実施形態においては、図2に示すように、レーザ加工用の大出力を得るために20W以上の出力を有する2個のレーザダイオード9a、9bを、密閉可能な箱型に形成されているチャンバ17内に各出力光となるレーザ光MBa、MBbを互いに直行させて出力するように配置している。両レーザダイオード9a、9bは、大出力を得るために複数のエミッタが並設されたマルチエミッタ構造(図示せず)とすると好適である。マルチエミッタ構造のレーザダイオード9a、9bにおいては、出力されるレーザ光MBa、MBbの断面が一方向に長い棒状となる。両レーザダイオード9a、9bにはレーザ電源部22から励起電力が通電されてレーザ光MBa、MBbを出力するように形成されている。両レーザダイオード9a、9bから出力された両レーザ光MBa、MBbは、その後、図2に示す光学系に沿って順方向に進行し、反射光が戻り光として逆方向に進行する。ここで言う反射光とは、例えばレーザダイオードユニット9に接続されている伝送用の光ファイバ7の端面7aで反射する光や、その前後に配設された光学素子からの反射光等のことである。両レーザダイオード9a、9bから互いに直行させて出力された両レーザ光MBa、MBbの交点位置には、レーザ光MBa、MBbを合流させて同一方向に出力するとともに、順方向の光は出力するが逆方向の光は出力しない選択出力部18aを有する光コンバイナ18を設けている。この光コンバイナ18は、互いに直行させて出力された両レーザ光MBa、MBbに対して45度に傾斜している傾斜面19aを備えた偏光ビームスプリッタ19により形成されている。一方のレーザダイオード9aから出力された横偏光の光からなるレーザ光MBaは、大部分が前記傾斜面19aを裏面側から表面側に透過して直進し、その一部(たとえば1%)が傾斜面19aの裏面側において反射して選択出力部18aとなる端面から出力される。他方のレーザダイオード9bから出力されて後述する波長板40を透過した縦偏光の光からなるレーザ光MBbは、大部分が前記傾斜面19aの表面側において反射されて、当該傾斜面19aを裏面側から表面側に透過した一方のレーザ光MBaと合流して順方向に進行し、その一部(たとえば1%)が当該傾斜面19aを表面側から裏面側に透過して選択出力部18aとなる端面から出力される。偏光ビームスプリッタ19の選択出力部18aを形成する端面に対向して2個のレーザダイオード9a、9bの出力光のみの強度を検出する検出手段としてのフォトダイオード20を設置している。また、偏光ビームスプリッタ19の選択出力部18aには、当該選択出力部18aを形成する端面からの出力光を拡散させる拡散手段を設けるとよい。たとえば、拡散手段としては、選択出力部18aを形成する端面をすりガラス状(図示せず)に形成したり、選択出力部18aを形成する端面に拡散板(図示せず)を添設するとよい。これにより両レーザダイオード9a、9bとしてマルチエミッタ構造を採用することによりレーザ光MBa、MBbが細長い棒状であっても、選択出力部18aを形成する端面からは拡散されて出力することとなり、均一化された光がフォトダイオード20によって受光されて正確な検出が実行される。また、このフォトダイオード20には、チャンバ17内の散乱光が入光することを遮蔽する遮蔽手段としての遮蔽板21を設けることが好ましい。これにより2個のレーザダイオード9a、9bの出力光のみの検出精度を向上させることができる。
【0026】
前記傾斜面19aの表面側において反射されたレーザ光MBbを出力するレーザダイオード9bと偏光ビームスプリッタ19との間には、当該レーザ光MBbの振動方向を回転させる波長板40が、レーザ光MBbの光軸と直行するとともに図2において紙面と平行な回動軸41をもって回動自在に支持されて、光軸に対する直交位置から傾斜可能に配設されている。本実施形態においては1/2波長板40が設けられている。1/2波長板40を回動させると透過したレーザ光MBbの光軸を、図3の実線と破線とに示すように、高さ方向に移動させることができる。両レーザダイオード9a、9bから出力される両レーザ光MBa、MBbは、それぞれ図2において紙面に平行で光軸に対して直行する方向(矢印a、b参照)に振動している。レーザ光MBbは1/2波長板40を通過すると振動方向が紙面と垂直方向(図2において黒丸によって表示参照)に回転させられる。これにより偏光ビームスプリッタ19の傾斜面19aの表面側から進行する合成後のレーザ光MBa、MBbは、一方のレーザ光MBaが紙面と平行に振動し、他方の励起用レーザ光MBbが紙面と垂直方向に振動するものとなる(図2において傾斜面19aの後流側の光軸上の矢印および黒丸によって表示参照)。本実施形態においては、図5に示すように、伝送用の光ファイバ7の端面7a(出力の基準面)に到達する入射光となる両レーザ光MBa、MBbの入射点(集光位置)の高さ位置が同図(a)に示すようにずれている場合には、1/2波長板40を回動させて、一方のレーザ光MBbの高さ位置を移動させて、同図(b)に示すように、両レーザ光MBa、MBbの高さ位置を一致させることができる。
【0027】
図2において、偏光ビームスプリッタ19の光学系の後流側には合流された両レーザ光MBa、MBbを光路上の集光レンズ23a、23bに向けて反射させる反射板24が設置されている。このように反射板24によって光路を屈曲させることにより、レーザダイオードユニット9の長尺化を防止して、小型化を図ることができる。反射版24によって反射されたレーザ光MBa、MBbは、それぞれ集光レンズ23a、23bによってレーザダイオードユニット9のチャンバ17に接続具25をもって接続されている伝送用の光ファイバ7の一方の端面7aに焦点を合わせるようにして集光させられ、光ファイバ7を通してユニット9の外部へ出射される。この時、各レーザ光MBa、MBbは、それぞれfast側の集光レンズ23aによってレーザ光MBa、MBbの幅方向(図2の紙面に平行方向)に集光され、続いてslow側の集光レンズ23bによってレーザ光MBa、MBbの高さ方向(図2の紙面に垂直方向)に集光される。このようにして集光されるレーザ光MBa、MBbは、レーザダイオードユニット9の設定時には、光ファイバ7に変えてCCDカメラの入射部を取り付けて、前記端面7aにおける各レーザ光MBa、MBbの集光位置を測定しながら、1/2波長板40を回動させて両レーザ光MBa、MBbの集光位置を一致させるようにして設定される(図5参照)。その後、本実施形態においては、この光ファイバ7の他方の端面7bから出射したレーザ光MBa、MBbはコリメートレンズ23cによってコリメートされて、光共振器ミラー11に入射して、励起用のレーザ光MBとして使用されるように形成されている。
【0028】
各レーザダイオード9a、9bは、発振による発熱を放熱するために、図4に示すように、密封可能な箱型に形成されている金属製のチャンバ17内の底板17aの上面にペルチェ素子25を積層し、当該ペルチェ素子25の上部に(本実施形態においては金属板26を介装して)レーザダイオード9a、9bを積層して配置するとともに、チャンバ17の底板17aの下面にヒートシンク27を取付けている。更に、チャンバ17の底板17a部分から側壁17bや蓋部17cの上部に熱が伝達されることを阻止するために断熱層28を設けている。この断熱層28としては、チャンバ17の底板17aに連設されている側壁17bの全周に亘って形成するとよく、また、樹脂材料(例えば、PPS:ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の断熱効率の高い素材によって形成するとよい。ペルチェ素子25には外部より冷却用の電力が供給されるようになっている。なお、前記金属板26は省略することができる。
【0029】
図1に戻って、レーザ入射部3より先の光学系をファイバレーザ光FBの進行順に説明する。すなわち、レーザ入射部3に入ったファイバレーザ光FBは、最初にベントミラー29で所定方向に折り返され、次いで入射ユニット30内で集光レンズ31により集光されてファイバ伝送部4の伝送用光ファイバ32の一端面に入射する。伝送用光ファイバ32は、たとえばSI(ステップインデックス)形ファイバからなり、入射ユニット30内で入射したファイバレーザ光FBをレーザヘッド部5の出射ユニット33まで伝送する。出射ユニット33は、伝送用光ファイバ32の終端面より出たファイバレーザ光FBを平行光にコリメートするコリメートレンズ34と、平行光のファイバレーザ光FBを所定の焦点位置に集光させる集光レンズ35とを有しており、加工テーブル6に載置されている被加工物36の加工点Wにファイバレーザ光FBを集光照射する。
【0030】
次に、本実施形態のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置およびこれを備えたレーザ加工用のレーザダイオードユニットの作用を説明する。
【0031】
まず、準備としてペルチェ素子25に通電して両レーザダイオード9a、9bを放熱可能とする。
【0032】
次に、レーザ電源部22からレーザ発振部2の両レーザダイオード9a、9bに励起電流が供給されると、両レーザダイオード9a、9bはそれぞれレーザ光MBa、MBbを発振する。
【0033】
一方のレーザダイオード9aから出力された横偏光の光からなるレーザ光MBaは、大部分が光コンバイナ18となる偏光ビームスプリッタ19の傾斜面19aを裏面側から表面側に透過して直進し、その一部(たとえば1%)が傾斜面19aの裏面側において反射して選択出力部18aとなる端面から出力される。他方のレーザダイオード9bから出力された横偏光の光からなるレーザ光MBbは、1/2波長板40を透過することによって偏光方向が45°回転され、縦偏光の光になる。縦偏光の光となったレーザ光MBbは、一方のレーザ光MBaの光ファイバ7の端面7aにおける入射点(集光位置)と自身の入射点(集光位置)とを一致させられ、その後に大部分が前記傾斜面19aの表面側において反射されて、当該傾斜面19aを裏面側から表面側に透過した一方のレーザ光MBaと合流して順方向に進行し、その一部(たとえば1%)が当該傾斜面19aを表面側から裏面側に透過して選択出力部18aとなる端面から出力される。
【0034】
この偏光ビームスプリッタ19の選択出力部18aを形成する端面から出力された2個のレーザダイオード9a、9bの出力光であるレーザ光MBa、MBbの一部がフォトダイオード20に受光されてその強度が検出される。これにより、レーザダイオード9a,9bの出力を正確に検出できる。
【0035】
光コンバイナ18には後流側より戻り光が逆方向に進行してくることがある。この戻り光は、レーザダイオードユニット9に接続された光ファイバ7の入射側の端面7aにおける反射光や、当該光ファイバ7の前後に設けられた種々の光学素子における反射光等である。。一方のレーザ光MBaの戻り光については、光コンバイナ18の傾斜面19aを表面側から裏面側に透過するので、フォトダイオード20には進行することはない。他方のレーザ光MBbの戻り光については、光コンバイナ18の傾斜面19aの表面側において反射してレーザダイオード9bに向かうので、フォトダイオード20には進行することはない。このように本実施形態においては、レーザ加工用のレーザダイオード9a、9bの出力状態を戻り光に影響されることなく正確に検出することができ、高品質のレーザ加工を施すことができる。
【0036】
また、偏光ビームスプリッタ19の選択出力部18aに、当該選択出力部18aを形成する端面からの出力光を拡散させる拡散手段を設けると、両レーザダイオード9a、9bとしてマルチエミッタ構造を採用することによりレーザ光MBa、MBbが細長い棒状であっても、選択出力部18aを形成する端面からは拡散されて出力することとなり、均一化された光がフォトダイオード20によって受光されて正確な検出が実行される。この場合、マルチエミッタ構造のレーザダイオード9a、9bの一部に不調がっても、拡散手段によって均一化されたレーザ光MBa、MBbをフォトダイオードによって検出することができる。
【0037】
また、フォトダイオード20にチャンバ17内の散乱光が入光することを遮蔽する遮蔽手段としての遮蔽板21を設けると、2個のレーザダイオード9a、9bの出力光のみの検出精度を向上させることができる。
【0038】
両レーザダイオード9a、9bから出力されて光コンバイナ18によって合流されたレーザ光MBa、MBbは、反射板24によって折り返すように反射され、集光レンズ23a、23bによって光ファイバ7の入射端面7aに集光入射される。光ファイバ7に入射されたレーザ光MBa、MBbは光ファイバ7内を伝播して出射側の端面7bから出射されて、レーザ加工用に利用される。
【0039】
本実施形態においては、レーザ光MBa、MBbは励起用として利用されるために、光ファイバ7内を伝播して出射側の端面7bから光共振器ミラー11に向けて出射される。すると、光共振器ミラー11は、合流された励起用レーザ光MBを透過させるとともに、発振ファイバ10側から入射した発振光線を全反射する。光学レンズ13は合流された励起用レーザ光MBを発振ファイバ10の一端面に集光入射させる。また、光学レンズ13は、発振ファイバ10の端面から放出されてきた発振光線を平行光にコリメートする。
【0040】
次に、発振ファイバ10の一端面に入射した合流された励起用レーザ光MBa、MBbは、クラッド外周界面の全反射によって閉じ込められながら発振ファイバ10の内部を軸方向に伝播し、その伝播中にコアを何度も横切ることによってコアのイオンを光励起する。これにより、コアの両端面から軸方向に所定の波長の発振光線が放出される。この発振光線が光学レンズ13、14を通して光共振器ミラー11、12の間を何度も行き来することによって共振増幅され、光共振器ミラー12を透過したときに所定の波長のファイバレーザ光FBが得られる。
【0041】
光共振器ミラー12より出力されたファイバレーザ光FBは、折り返しミラー15をまっすぐ透過し、ベントミラー29に反射されてレーザ入射部3に入射して、被加工物36の加工に供される。一方、所定の波長のファイバレーザ光FBを得る前に合流した励起用レーザ光MBが光学レンズ13および光共振器ミラー14を透過した場合には、折り返しミラー15によってレーザ吸収体16の方向に折り返される。
【0042】
レーザ入射部3に入ったファイバレーザ光FBは、最初にベントミラー29で所定方向に折り返され、次いで入射ユニット30内で集光レンズ31により集光されてファイバ伝送部4の伝送用光ファイバ32の一端面に入射する。伝送用光ファイバ32は、入射ユニット30内で入射したファイバレーザ光FBをレーザヘッド部5の出射ユニット33まで伝送する。出射ユニット33は、加工テーブル6に載置されている被加工物36の加工点Wにファイバレーザ光FBを集光照射して、レーザ加工を施す。
【0043】
このようにして本実施形態においては、適正な出力のファイバレーザ光FBをもって高品位なレーザ加工を実行することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0045】
例えば、図2の破線に示すように、フォトダイオード20の出力をレーザ電源部22の出力を制御する制御部42にフィードバックしてレーザダイオード9a、9bの出力を制御することもできる。制御部42は、フォトダイオード20からの検出出力と両レーザダイオード9a、9bの設定出力とを比較して、両レーザダイオード9a、9bが設定出力を維持するようにレーザ電源部22へ出力を指示する。これにより両レーザダイオード9a、9bはフィードバックによって指示された励起電力の通電をレーザ電源部22から受けて適正なレーザ光MBa、MBbを出力することができる。これにより、レーザ加工装置の励起光を適切に制御することができる。
【0046】
なお、このようにフォトダイオードの出力を制御部にフィードバックする構成は、レーザダイオードユニットが出力するレーザ光を直接に被加工物に照射して加工する、いわゆるLDダイレクト方式のレーザ加工装置に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザ加工装置
2 レーザ発振部
8 発振器ユニット
9 レーザダイオードユニット
9a、9b レーザダイオード
10 発振ファイバ
18 光コンバイナ
19 偏光ビームスプリッタ
20 フォトダイオード
21 遮蔽板
22 レーザ電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個のレーザダイオードの出力光の進行方向側に光が順方向および逆方向に進行する光学系が設けられている前記レーザダイオードの出力光の強度を検出するレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置であって、
前記光学系の途中に前記2個のレーザダイオードの出力光を合流させて同一方向に出力する光コンバイナを有し、
該光コンバイナは、順方向の光は出力するが逆方向の光は出力しない選択出力部を有し、
前記光コンバイナの前記選択出力部には、前記2個のレーザダイオードの出力光のみの強度を検出する検出手段が設けられていることを特徴とするレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項2】
前記光コンバイナには、前記選択出力部から前記検出手段に向かう出力光を拡散させる拡散手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項3】
前記検出手段には、散乱光の入光を遮蔽する遮蔽手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項4】
前記光コンバイナは偏光ビームスプリッタであり、前記検出手段はフォトダイオードであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項5】
前記2個のレーザダイオードの一方からの出力光は横偏光の光として前記偏光ビームスプリッタに入力され、他方からの出力光は縦偏光の光として前記偏光ビームスプリッタに入力されることを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項6】
前記光学系の後流側にはレーザ加工部に前記2個のレーザダイオードの出力光を導く導光手段が配設され、前記逆方向の光は前記導光手段において反射する反射光であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項7】
前記導光手段は、前記2個のレーザダイオードの出力光を導く光ファイバ系または発振器ユニットであることを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレーザ加工用のレーザダイオードの出力モニタ装置を備えていることを特徴とするレーザ加工用のレーザダイオードユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−204760(P2012−204760A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70165(P2011−70165)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000161367)ミヤチテクノス株式会社 (103)
【Fターム(参考)】