レーザ加工装置、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工方法
【課題】レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工対象物に付着するデブリを削減する。
【解決手段】入射レーザ光を透過する透過窓9と、透過窓9を透過したレーザ光を通す開口部20と、内部に気体を導入する導入孔41と、内部の雰囲気を外部へ排出する排気孔16と、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔18と、第1通気孔18と対向する位置に設けられ加工対象物7のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔17と、透過窓9と開口部20の間に配置され、透過窓9を透過したレーザ光を通す開口42a、並びに、該開口42a、導入孔41及び排気孔16を連通する通気部44とが形成されてなる遮蔽板42aとを有するレーザ加工ヘッドを備える。これにより、レーザ加工時に発生する加工飛散物21を、遮蔽板42でトラップする。
【解決手段】入射レーザ光を透過する透過窓9と、透過窓9を透過したレーザ光を通す開口部20と、内部に気体を導入する導入孔41と、内部の雰囲気を外部へ排出する排気孔16と、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔18と、第1通気孔18と対向する位置に設けられ加工対象物7のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔17と、透過窓9と開口部20の間に配置され、透過窓9を透過したレーザ光を通す開口42a、並びに、該開口42a、導入孔41及び排気孔16を連通する通気部44とが形成されてなる遮蔽板42aとを有するレーザ加工ヘッドを備える。これにより、レーザ加工時に発生する加工飛散物21を、遮蔽板42でトラップする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の多層薄膜上の樹脂膜又は金属薄膜をパターン加工する技術に係わり、特に、加工対象物の表面にレーザ光を照射して、アブレーション、熱溶融あるいはそれらの複合作用によるレーザ加工時に発生する加工飛散物(デブリ:debris)を除去・回収するためのレーザ加工装置とレーザ加工ヘッド、及びレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD(フラットパネルディスプレイ)の高精細化、低コスト化の競争は、より激しくなってきており、製造現場でもさらに高品質、高生産性が要求されている。
【0003】
FPDを構成する表示パネルは、従来、フォトリソグラフィー法によって製造されていた。しかし、フォトリソグラフィー方法は、装置の大型化、現像液などの薬液使用による環境保全、さらには同じパターン加工であってもレジストや現像液が異なるため、フォトリソグラフィー工程が2回必要となるなど、種々の問題点があった。そこで、フォトリソグラフィー法に代わって、余分なフォトリソグラフィー工程を省略し製造工程を簡略化するために、レーザ光を用いて加工対象膜を直接加工する技術が普及している。
【0004】
前述したレーザによる直接加工においては、一例としてエキシマレーザのような短波長レーザを用いている。エキシマレーザ(excited dimmer laser)は、化学結合を切断できる高いフォトンエネルギーを有している。加工対象物に短波長の短パルスレーザを照射することで、アブレーション(ablation)と呼ばれる光化学分解、光熱分解過程を生じさせ、熱的な影響を抑えつつ加工対象物を除去、微細加工することができる。このようなアブレーションによるレーザ加工技術が注目を集めている。エネルギー密度を調整したエキシマレーザ光を照射することにより、プラスチック(高分子材料)、金属、セラミックス等、種々の物質をアブレーション加工することができる。
【0005】
レーザによるアブレーション加工では、レーザ光の照射を受けた加工対象物の表面より飛散物が加工領域周辺に付着する。これを一般にデブリ(debris)と呼んでいる。加工領域周辺にデブリの付着が発生すると、所望の加工品質、加工精度を得られないこともある。そこで、このデブリを低減する方法が研究、開発されている。
【0006】
例えば、加工領域近傍の表面に空気等の流体を噴出する流体送出装置を設け、流体噴出口の反対側に流体を吸引する吸引ダクトを設置して加工飛散物やデブリを加工領域から吹き去り、同時にこれを吸引して除去する手法(以下、手法1と言う。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、加工飛散物の発生量を低減するために、加工対象物へのレーザ光の照射とともにレーザ光照射領域周辺にアシストガスを吹き付けることが有効であることが知られている。レーザ加工ヘッドに内側ノズルと、その外周面を取り囲むように外側ノズルを配置して、内側ノズルから加工領域に向けてアシストガスを噴出し、噴出したアシストガスを外側ノズルで吸引してデブリを排出する手法(以下、手法2と言う。)が提案されている(特許文献2参照)。また、加工飛散物の発生そのものを制御する方法としては、所定の雰囲気ガスによって加工飛散物を分解、あるいは再付着を防止する方法が知られている。さらに、真空度10[Pa](10−2Torr)程度の減圧下でレーザ加工を行うことにより、加工対象物上に堆積するデブリの付着量を大幅に減少できることが知られている。
【0008】
また、図8に示すように、例えば基板108aに加工対象膜108bが積層されている加工対象物107の直上に開口部120を設け、マスク又は可変アパーチャ104と開口部120とで囲まれた領域を閉空間部として減圧する排気手段を備え、加工対象物107にレーザ光102を照射して生じた加工飛散物を排気するとともにデブリ121が開口部120に堆積して、加工対象物107に堆積しない手法(以下、手法3と言う。)が提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平10−99978号公報
【特許文献2】特開平9−192870号公報
【特許文献3】特開2004−230458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、手法1のように加工領域近傍の表面でデブリを吹き去って吸引・排出しようとしてもデブリが飛散してしまい、たとえ吸引力を上げてもデブリを完全に除去、回収することは困難であった。
【0011】
また、手法2のように内側ノズルから加工領域にアシストガスを吹き付けても、デブリは拡散して加工領域周辺に再付着してしまい、外側ノズルの吸引力を強くしても十分に除去することはできなかった。
【0012】
また、手法3のように開口部を設けて閉空間部内を減圧したとしても、デブリが必ずしも開口部に堆積するわけではなく、加工領域の中心部のデブリが加工対象物表面に再付着してしまうという問題があった。
【0013】
加工対象膜が金属薄膜の場合、レーザ光の波長、エネルギー強度、パルス幅、照射パルス数、加工対象物の物性、膜厚、膜構成により適正条件が大きく変わる。レーザ光照射によって加熱アブレーションと熱的な反応により加工対象物を除去、微細加工することができる。また、パルス幅が短いほど熱的影響を少なくすることができる。しかし、上記手法2のように、アシストガスを吹き付けてデブリを拡散することはできるが、加工部周辺のドロス(熱影響による加工生成物)やデブリの再付着により、電極として用いられる薄膜の場合は短絡など品質の影響が問題となる。
【0014】
例えば、多層膜上の金属薄膜は、その照射面がレーザ光を吸収して熱を発生し、溶融・蒸発してエッチングが進む。その際の溶融温度は樹脂と比較して高いため、樹脂層が下層にある場合は、樹脂膜が熱の影響を受けて溶融・気化が起こり、金属薄膜のエッチングに影響を与える。例えば、金属薄膜の下層にある樹脂膜が盛り上がったり、金属薄膜を突き破ったりしてしまう。このように、下層の樹脂層に影響を与えずに金属薄膜だけをエッチングしようとすると、加熱溶融・蒸発させる温度を下げてそのデブリを回収する機構の開発が必要とされる。
【0015】
また、加工対象膜が樹脂膜(高分子材料)の場合、光化学分解や光熱分解によるアブレーションによって熱損傷のない加工が可能である。レーザ光の照射エネルギーとパルス数を変えることでエッチング深さをコントロールすることができ、また再現性を得られることから三次元加工への応用等が期待されている。しかし上記のアブレーション時に発生するデブリの堆積は所望の表面微細構造を得られず品質に大きく影響する。
【0016】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工対象物に付着するデブリを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ加工装置は、レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工装置において、加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、レーザ加工ヘッドの底部に形成され透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、該第1通気孔と対向する位置に設けられ加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、透過窓と開口部の間に配置され、透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、導入孔及び排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板と、を有するレーザ加工ヘッドを備え、加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する第2の通気孔から排気するとともに、遮蔽板の開口周辺部に付着させることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、簡単な構成によりレーザ照射領域近傍を減圧雰囲気下にすることができるとともに、加工飛散物を遮蔽板でトラップできるので、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収できる。
【0019】
また、本発明のレーザ加工ヘッドは、レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うためのレーザ加工ヘッドであって、加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、レーザ加工ヘッドの底部に形成され透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、該第1通気孔と対向する位置に設けられ加工対象物の前記レーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、透過窓と開口部の間に配置され、透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、導入孔及び排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板とを有し、加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する第2の通気孔から排気するとともに、遮蔽板の開口周辺部に付着させることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、簡単な構成によりレーザ照射領域近傍を減圧雰囲気下にすることができるとともに、加工飛散物を遮蔽板でトラップできるので、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収できる。
【0021】
また、本発明のレーザ加工方法は、入射されたレーザ光を透過する透過窓、該透過窓を透過したレーザ光を通す開口部、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する第1導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する第1排気孔、並びに、透過窓と開口部の間に配置され、透過窓を透過したレーザ光を通す開口と、該開口、第1導入孔及び第1排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板が設けられたレーザ加工ヘッドを用いて、加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工方法において、レーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2導入孔より加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する工程と、第1導入孔より遮蔽板の通気部に気体を導入する工程と、加工対象物に第1のレーザ光を照射する工程と、加工対象物を載置するステージを導入された気体の流れと反対方向に所定距離移動させる工程と、加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気をレーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2排気孔より排出する工程と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を遮蔽板の開口より取り込み通気部を通じて第1排気孔より排気する工程と、第1排気孔及び第2排気孔より排気中に、加工対象物に対し第2のレーザ光による第1照射領域と一部重なるように第2のレーザ光を照射する工程とを有する。
【0022】
上記構成によれば、レーザ照射領域近傍に一方向の気流を作りレーザ光照射することにより加工飛散物を所望の領域にまとめ、かつ第1照射領域と第2照射領域が重なるようにレーザ光を照射することにより、加工対象物の加工面に残った加工飛散物を除去、回収することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレーザ加工装置、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工方法によれば、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工対象物に付着するデブリを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための第1の実施形態の例について、図1〜図7を参照して説明する。本発明に用いるレーザ加工装置は、レーザ光源と、レーザ光源から出射されるレーザ光を加工対象物の加工面に所定パターンで光学的に投影する光学系とを有し、加工面をアブレーション加工するレーザ加工装置である。
【0025】
図1は、本発明が適用されるレーザ加工装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示すレーザ加工装置15は、レーザ光源1と、ビーム整形器3と、マスク又は可変アパーチャ4と、投影レンズ5と、ステージ6と、減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)と、ラフィングポンプ等の排気手段12と、気体導入手段13を有しており、レーザ光源1からレーザビームを出射し、加工対象物7の加工面をアブレーション加工する。
【0026】
レーザ光源1には、例えば、エキシマレーザを用いる。エキシマレーザには、レーザ媒質の異なる複数の種類が存在し、レーザ媒質としては、波長の長いほうからXeF(351nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)、F2(157nm)がある。
【0027】
エキシマレーザが熱エネルギーを利用した加工を行うYAGレーザ(基本波:1.06μm)、及びCO2レーザ(10.6μm)、と大きく異なる点は、発振波長が紫外線の領域にあることである。エキシマレーザは本質的にパルス発振であり、短パルス(数ns〜数十ns以下)である。また、エキシマレーザは、アブレーションと呼ばれる、光化学分解、光熱分解過程により、短波長の短パルスレーザを用いることで、熱的な影響を受けにくい加工を行うため、加工面のエッジの仕上がりが非常にシャープとなる。これに対して、YAGレーザ、CO2レーザでは熱的影響が大きく、加工周辺部が熱の影響で丸くなり、端面とならない。
【0028】
さらに、エキシマレーザは、レーザ光源1から出射直後のビーム断面が約10×10mmの寸法を有し、このレーザビームをビーム整形器3にて、加工目的に応じて縮小化、長面積化、あるいは大面積化することができる。大面積化することにより比較的広い面積を一括して加工できる。したがって、大面積の領域を同時に加工するのにエキシマレーザは適している。また縮小化した場合、高精細な微細加工を行うことができる。ステップ・アンド・リピートにてパターニングすることで比較的広い面積の加工も可能である。
【0029】
ビーム整形器3は、レーザ光源1からのレーザビームを整形、ビーム強度の均一化を行い出力する。
【0030】
マスク又は可変アパーチャ4は、ビーム整形器3で整形されたレーザビームを通過又は透過させる所定パターンを有している。このマスク又は可変アパーチャ4は、例えば金属材料で形成された穴明きマスク、透明なガラス材料や金属薄膜で形成されたフォトマスク、誘電体材料で形成された誘電体マスク等が用いられる。
【0031】
投影レンズ5は、マスク又は可変アパーチャ4のパターンを通過したレーザビームを所定倍率でステージ6上の加工対象物7の加工面に投影する。
【0032】
ステージ6は、投影レンズ5から投影されるレーザビームが加工対象物7の加工面に合焦するように配置されている。このステージ6は、レーザビームが加工対象物7の加工面上を走査可能なように、レーザビームの光路2(光軸)に垂直な平面に沿って移動位置決めが可能なX−Yステージ或いは3軸ステージ等から構成される。
【0033】
上記構成のレーザ加工装置15では、レーザ光源1にエキシマレーザを用いることにより、加工対象物7の加工面に所定パターンのレーザビームを照射し、アブレーション加工する。加工対象物7の加工面は、アブレーション加工により、加工面を形成する材料に応じた加工飛散物(デブリ)が発生する。このデブリが加工面に付着すると、加工品質、加工精度等に影響を及ぼすことがあるので、本発明により付着を防ぐ。
【0034】
図1に示すように、レーザ光がステージ6上の加工対象物7に照射される直前のレーザ光路2上に、例えばKrFレーザの場合は石英、ArFレーザの場合はフッ化カルシウムで作られた減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)を設けている。この減圧チャンバー11は、エキシマレーザが透過する上部透過窓9を備える略円筒状の、アルミニウム又はステンレスなどからなるチャンバーである。減圧チャンバー11は、底部10に局所排気機能を備え、排気手段12により減圧チャンバー11内部の気体が外部に排出され、気体導入手段13により減圧チャンバー11内部に気体が導入されるよう構成されている。
【0035】
本実施形態のレーザ加工装置15は、減圧チャンバー11の底部10を、例えば樹脂膜又は金属薄膜等の加工対象膜が成膜された加工対象物7に極近接して配置する。そして、加工対象膜のレーザ光照射面近傍の雰囲気を排気孔より排気する。このようにすることにより、簡単な構成で加工対象膜のレーザ光照射面を減圧雰囲気にでき、レーザ光照射時の加工対象膜、例えば金属薄膜の下層の例えば樹脂層より離脱する際の昇華圧が高くなる。その結果、加工に要する照射エネルギーを低減できるとともに、レーザ光照射によって樹脂層より離脱し除去されたデブリを排気孔を通して除去、回収することができる。この樹脂層より離脱したデブリの除去は、加工領域近傍の表面に設けられる空気等の流体を噴出する流体送出装置(気体導入手段)によって行われる。
【0036】
図2は減圧チャンバー11の概略断面図、図3は減圧チャンバー11の下面図をそれぞれ示すものである。減圧チャンバー11は中心部に透過孔14が形成された略円筒形状をしており、例えば基板8b上に樹脂膜又は金属薄膜等の加工対象膜8bを含む多層膜が成膜された加工対象物7の表面と所定距離に配置される。多層膜を構成する加工対象膜8bは例えば樹脂層(図示略)などの上に成膜されている。勿論この例に限るものではない。
【0037】
減圧チャンバー11は上側部分と下側部分から構成されており、上側部分には透過孔14と連通する排気孔16が形成されて配管16aを通じて排気手段12と接続している。減圧チャンバー11の下側部分は、透過孔14と連通し互いに対向するように通気孔17,18が設けられている。また減圧チャンバー11の底部10の略中心には上部透過窓9を透過したレーザ光が通過する開口部20が設けられ、またその外周部周辺の同心円周上に気体噴出溝19(図3参照)が設けられている。通気孔17は配管17aを通じて排気手段12と接続し、通気孔18は配管18aを通じて気体導入手段13と接続している。通気孔17,18は内部を流れる気体が加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に導入、及びレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排気できるよう、底部10に対して所定の角度をもって開口部20近傍の空間と接続している。本例では、減圧チャンバー11の通気孔17,18及び開口部20が設けられた下側部分を、気体導入排気部11aと称する。
【0038】
減圧チャンバー11に外付けした排気手段12によって、減圧チャンバー11内部を真空引きし(本例では最大10−2Torr程度)、排気孔16及び通気孔17を通して加工対象物7表面周辺の雰囲気の排気を行う。開口部20の径は最大加工ビームサイズと略同等もしくは若干大きい程度である。例えば、最大加工ビームサイズ+1mm以下とする。
【0039】
この減圧チャンバー11の底部10と加工対象物7の照射面(加工対象膜表面)との距離は、浮上用気体導入手段(図示略)より供給される気体を環状の気体噴出溝19から噴出することによって100μm以下に保たれている。これにより、排気孔16,17を通して排気する際のコンダクタンスは小さくなっているため、減圧チャンバー11の底部10と加工対象物7との空間の真空度は1気圧より小さくなる。この減圧下でレーザ光照射され、除去された加工対象膜8bは、1気圧でレーザ光照射された場合よりも、その下層の例えば樹脂層(図示略)などの界面から離脱する際の昇華圧が高まるので、レーザ光の照射エネルギー密度を小さくすることができる。さらに、除去された加工対象膜8bは排気孔16と通気孔17を通り、回収される。
【0040】
なお、図示されていないが排気手段12と排気孔にフィルタを設けてデブリを回収している。また、排気手段12において排気する配管を切り替えて、排気孔16と通気孔17から個々に排気することも可能である。また、排気手段を2つ設けて排気孔16と通気孔17から個々に排気することも可能である。
【0041】
このように、局所排気機能を設けた簡単な構成でレーザ光照射面を減圧雰囲気とし、この減圧雰囲気でレーザ光照射することで、生産性を損なうことなく、加工エネルギーの低減、並びにデブリの除去及び回収を図ることができる。
【0042】
図4A,Bは、本発明によるレーザ加工を実施した際のデブリの飛散例を示したものであり、Aは加工領域近傍の上面図、Bは加工領域近傍の側面図である。
【0043】
本例では図3に示すように、レーザ加工の際、配管18aを通じて通気孔18から減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)へ気体を導入し、ほほ同時に配管16a,17aを通じて排気孔16及び通気孔17から排気を行う。これにより加工対象物7のレーザ光照射領域近傍には図3に示すような気流が生じる。このとき加工対象物7の所定の加工領域にレーザ光を照射すると、発生した加工飛散物のうち排気孔16及び通気孔17から排気しきれなかった加工飛散物26が気流に流されて照射領域22周辺の一方(図5の例では照射領域22の左側)に偏り、堆積する(図4A参照)。
【0044】
そこで、前述したように減圧チャンバー11の開口部20の径、及び減圧チャンバー11の底部10と加工対象物7の照射面との距離Lを適切に調節(設定)する。これにより、加工飛散物26が加工領域周辺に堆積してデブリとなる面積を小さくできるとともに、例え加工領域周辺に飛散した場合でも開口部20周辺の斜面11bに堆積するので、加工対象物7への堆積量を抑制することができる。
【0045】
このように、レーザ光を用いたアブレーション加工により発生する加工飛散物26(デブリ)の飛散範囲を開口部20で規制するとともに、加工飛散物26を開口部20の周辺に堆積させることで、加工飛散物26が加工対象物7表面へ再付着することを防ぐことができる。
【0046】
次に、上記構成のレーザ加工装置により行われるレーザ加工方法について、図5を参照しながら説明する。この図5は、加工対象物7のパターン加工方向に気体を導入して第1ショットのレーザビーム(第1のレーザ光)で除去できなかった加工飛散物(デブリ)に第2ショットのレーザビーム(第2のレーザ光)を重ねて照射する加工方法について示したものである。
【0047】
まず、排気孔16及び通気孔17の排気流量と、通気孔18の気体導入流量を調整して減圧チャンバー11の内圧を所定の減圧下に制御した後、気体噴出孔19より浮上用気体を噴出し、減圧チャンバー11の底面10と加工対象物7の加工面との距離を一定の距離に維持する。
【0048】
そして、レーザ加工領域近傍に対し図5の右から左の方向に気流ができるように気体を導入し、1回目のレーザ光を照射する。このとき略同時に排気を行う。レーザ光が照射された加工対象物7の第1照射領域23の左側にデブリ27が堆積する。次に、加工対象物7が載置されているステージ6をパターン加工方向、つまり本例では導入された気流と反対向きに移動させる。そして、上述同様、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入するとともに当該雰囲気を排出しつつ、加工対象物7に対し第1ショットのレーザビームによる第1照射領域23と第2ショットのレーザビームによる第2照射領域24が一部、例えば例えば約50%重なるようにレーザビームを照射する。
【0049】
第1ショットのレーザビームにより発生し再付着したデブリ27は、オーバーラップ照射することにより、排気孔16及び通気孔17から除去、回収することができる。このとき、第2照射領域24の気流方向つまり左側にデブリ28が新たに発生する。
【0050】
同様にして加工対象物7を載置したステージ6を気流と反対側(パターン加工方向)に移動させ、レーザビームを照射する工程を繰り返し、第nショットまでレーザビームを照射すると、第n照射領域における気流風下側にデブリ29が加工領域に堆積するとともに、第1〜第(n−1)ショットまでの第1〜第(n−1)照射領域に再付着するデブリを除去、回収することができる。
【0051】
なお、本例では加工ビームの重ね合わせ量は例えば約50%のオーバーラップ量とするが、重ね合わせ量はこれに限るものではない。また、本例において、気体導入手段13から送出される気体として、例えば酸素(O2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、等が用いられる。
【0052】
次に、上述した本発明の第1の実施形態の変形例について説明する。
実際の加工対象物7は、フラットディスプレイなどのアレイ基板(多層膜基板)などであるから、図6に示すように、パターン加工方向の転換、つまりレーザ照射順路を複数回変更する必要がある。この場合、通気孔17に、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排気する機能に加え、レーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能を付加する。また通気孔18に、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能に加え、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排気する機能を付加する。それにより、加工対象物7のパターン加工方向に応じて、通気孔17と通気孔18間における気体の導入及び排気の方向を切り替えられるようにする。一例として、通気孔17及び通気孔18を排気手段12及び気体導入手段13と各々接続するとともにその接続経路の途中に電磁弁等の開閉手段を設置し、開閉手段の開閉を制御することにより気体の導入及び排気を切り替えるなどの構成がある。
【0053】
すなわち、図6において右から左へレーザ加工を行うときは、図3に示すような右から左(配管18aから配管17a)へ流れる気流方向とし、レーザ加工の向きを切り替えて左から右へレーザ加工を行うときは、図3において図中左から右(配管17aから配管18a)へ流れる気流を作るようにする。
【0054】
このように、気体導入排気部11aに形成した通気孔17,18を流れる流体の気流方向の切り替えをパターン加工方向に応じて制御することにより、パターン加工方向の転換に対応することができる。
【0055】
また、上述した本発明の第1の実施形態の他の変形例について説明する。
この実施形態では、減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)下側の通気孔17,18が形成された気体導入排気部11aに、レーザ光の光路と略平行な回転軸を持つ回転機構を設ける。そして、加工対象物7のパターン加工方向に応じて気体導入排気部11aを回転させ、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に対する通気孔17,18を流れる気体の導入及び排気の方向を切り替えるようにする。これにより、パターン加工方向の転換(図6参照)に対応できる構成とする。このような構成とすることにより、容易にかつ自動で気流方向を切り替えることができる。
【0056】
例えば、図3を参照して説明すると、パターン加工方向が180度転換する場合、減圧チャンバー11を180度回転させて、気流方向を左から右へと反転させる。また図3の下から上へパターン加工が必要となる場合には、減圧チャンバー11を90度右回転させ、上から下への気流方向に変更する。
【0057】
なお、上述の説明において、気体導入排気部11aを回転、すなわち減圧チャンバー11の一部のみを回転させていたが、減圧チャンバー11の一部だけではなく全体が回転する機構としてもよいことは勿論である。
【0058】
さらに、上述した本発明の第1の実施形態のさらに他の変形例について説明する。
図7は、本実施形態に係る減圧チャンバー11の下面図を示すものである。図7の例は、図3に示す吸気(気体導入)と排気の組合せをさらに90度方向に配置することでX方向、Y方向の2方向におけるパターニングでの切り替え時間を短縮することを可能としたものである。
【0059】
図7において、減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)は、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入又はレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する、互いに対向してかつそれぞれ配管17a(通気孔17)及び配管18a(通気孔18)と90度の位置に配管31a,32a、つまり第3及び第4の通気孔を形成する。そして、加工対象物7のパターン加工方向に応じて、通気孔17及び通気孔18からなる通気孔対、あるいは第3及び第4の通気孔(配管31a,32a)からなる通気孔対のいずれを使用するか選択し切り替えられる構成とする。
【0060】
本実施の形態によれば、通気孔が90度ごとに設けられているため、パターンニング時に加工方向を切り替える際、回転移動の必要がなく切り替え時間を短縮することができる。また、回転移動が必要ないので、図3の例と比較すると、機械精度に起因する誤差が発生せず、精度のよいパターン加工が実施可能である。
【0061】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、レーザ光による、アブレーションもしくは熱溶融によるレーザ加工時に、熱的な影響を少なくしてレーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工面へのデブリの付着量を削減することができる。
【0062】
この結果、精密なレーザ加工が実現でき、しかもデブリの付着を防止することができるという優れた効果が得られ、レーザ加工の応用が広がり、微細パターンを高精度でありながら低コストで形成することが可能となる。
【0063】
次に、本発明を実施するための第2の実施形態の例について、図8〜図11を参照して説明する。
【0064】
多層膜上の金属薄膜のレーザアブレーションは、基本的にレーザ光照射による照射面の熱溶融による蒸発によって起きている。減圧雰囲気により照射エネルギーを低減し、適正エネルギー条件とショット数を制御することにより、レーザアブレーションによる加工部周辺への熱影響を抑えることができる。しかし、レーザ光照射によって発生したデブリはプルームと呼ばれる風船状の塊となり、初速度数十m/secで上昇すると同時にcosρの法則に従い広がっていく。そのため減圧チャンバー11に流体を送出、排気するだけでは完全にデブリを回収することが困難であり、図7に示す減圧チャンバー11の上部透過窓9にデブリが付着してしまい、所望のレーザ加工品質を得られなくなってしまうことがある。そこで、溶融・蒸散時の初速流体だけでは回収困難なデブリについては、遮蔽板を用いてデブリをトラップすることにより、上部透過窓9へのデブリ付着が抑えられる構成を提案する。
【0065】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る減圧チャンバーの概略断面図である。図8において、図2と対応する部分に同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図8に示す減圧チャンバーは、図2に示すものと比較して相違点が2点ある。第1の相違点は、中央部分に開口が形成された遮蔽板が設置されている点であり、この遮蔽板は減圧チャンバー11の上部透過窓9と開口部20の間に配置される。図8の例では、2つの遮蔽板42及び遮蔽板43を組み合わせて構成されている。また、第2の相違点は、減圧チャンバー11の円筒面のレーザ光光軸を挟んで排気孔16と反対側に導入孔41が形成されている点である。導入孔41は、遮蔽板41の通気部44に気体を導入するためのものである。
【0066】
図9は遮断板42の概観を示す図であり、Aは上面図、BはX−X線断面図である。図10は遮断板43の外観を示す図であり、Aは上面図、BはY−Y線断面図である。図9A,Bに示すように、遮蔽板42は高さが低く開口が形成された有底の筒状、あるいは、両底面に開口を有する高さの低い円柱である。遮蔽板42の一方は完全に開口しており、他方は底面に所定の大きさの開口42aが形成されている。遮蔽板42は、底面と反対側の開口端から開口42aに向かって落ち込んでいくような、略すり鉢状の形状をしている。
【0067】
遮蔽板42aの底面に形成された開口42aの大きさは、遮断板42を通過するレーザ光のビームサイズ(対角寸法)と同等か若干大きい程度が望ましい。本例では、ビームサイズに対して、例えば+0.5mm〜1mmの大きさとする。これにより、加工対象物7のレーザ光照射領域にて発生し上部透過窓9に向かって上昇してくる加工飛散物21のうち、遮蔽板42,43の開口42a,43aを通る加工飛散物の量を最小限に抑えることができる。
【0068】
図10A,Bに示すように、遮蔽板43は、遮蔽板42の上下を逆さにしたものであり、開口43aを有し遮蔽板42と同形状である。
【0069】
図8に示すように、遮蔽板42と遮蔽板43の各々の開口42a,43aが形成された底面が所定間隔離れた状態で組み合わされて配置される。遮蔽板42と遮蔽板43の双方の底面を対向させた状態で設置することで、遮蔽板42と遮蔽板43の間に、通気部44となる空間が形成される。
【0070】
遮蔽板42及び遮蔽板43からなる遮蔽板は、減圧チャンバー11内部の、排気孔16及び導入孔41と同じ高さに設置される。それにより、遮蔽板42及び遮蔽板43により形成された通気部44と導入孔41及び排気孔16が連通する。導入孔41から遮蔽板の通気部44への気体の導入は、気体導入排気部11aの通気孔17又は通気孔18による気体導入のタイミングに合わせて実行する。
【0071】
そして、加工対象物7のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物21を、減圧チャンバー11の底部に設けられた開口部20と連通する通気孔17から排気するのに合わせて、排気孔16から減圧チャンバー11内の雰囲気を外部へ排気する。このとき、通気孔17より排気しきれなかった加工飛散物21は、遮蔽板42の下面でトラップされ、開口42aの周辺部に付着する。
【0072】
さらに遮蔽板42でトラップしきれなかった加工飛散物は、遮断板42及び遮断板43の各々の開口42及び開口43から通気部44へ取り込まれる。取り込まれた加工飛散物は、導入孔41から導入される気体によって、例えば図9Aに示すように通気部44内で排気孔16に向かう方向へと流される。このように流された加工飛散物が通気部44から排気孔16より排気される。
【0073】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態よる作用効果に加え、さらに、遮蔽板を用いることで多層薄膜上の加工対象膜(樹脂膜又は金属薄膜)をパターン加工する際のデブリをトラップしてレーザ光の透過窓へのデブリ付着を抑えることができる。
【0074】
この結果、さらに精密なレーザ加工が実現でき、しかもデブリの付着を防止することができるという優れた効果が得られ、レーザ加工の応用が広がり、微細パターンを高精度でありながら低コストで形成することが可能となる。また、このレーザ加工方法により、デブリやパターン加工エッジ部の熱影響を削減して平坦化し、パターン加工部の残渣を無くして歩留りの向上と消費電力の低減を実現でき、高品質のディスプレイパネルの製造が可能となる。
【0075】
次に、上述した本発明の第2の実施形態の他の変形例について、図11を参照して説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態の他の変形例である遮蔽板43を示す図であり、Aは上面図、BはZ−Z線断面図、Cは側面図である。本例の遮蔽板43は、図9及び図10に示す二つの遮蔽板42,43を各々の底面を対向させた状態で所定間隔離して組み合わせた形状である。加えて、遮蔽板43内部に形成する通気部46を、開口45aを貫く直線状としている。これにより、遮蔽部43を減圧チャンバー11内に設置したとき、導入孔41と排気孔16が通気部46によって直線に連通する。したがって、本例は図9の例とは異なり、遮蔽板45の開口45aから取り込まれた加工飛散物が、通気部46を通って直線的に排気孔16へ流されるので、加工飛散物の除去及び回収の効率が向上する。
【0076】
なお、上述した各実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、材料の種類や数値限定など技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る減圧チャンバーの概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る減圧チャンバー下面図(1)である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るデブリの飛散例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工方法の説明に供する図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工順路の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る減圧チャンバー下面図(2)である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る減圧チャンバーの概略断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る遮断板(1)を示す図であり、Aは上面図、BはX−X線断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る遮断板(2)を示す図であり、Aは上面図、BはY−Y線断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る遮断板(3)を示す図であり、Aは上面図、BはZ−Z線断面図、Cは側面図である。
【図12】従来のレーザ加工装置における開口部近傍の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1…レーザ光源、6…ステージ、7…加工対象物、9…上部透過窓、10…底部、11…減圧チャンバー(レーザ加工ヘッド)、12…排気手段、13…気体導入手段、14…透過孔、15…レーザ加工装置、16…排気孔、16a,17a,18a,31a,32a…配管、17…通気孔、18…通気孔、20…開口部、21…加工飛散物(デブリ)、22…照射領域、23…第1照射領域、24…第2照射領域、25…第n照射領域、26,27,28…加工飛散物(デブリ)、41…導入孔、42,43,45…遮断板、42a,43a,45a…開口、44,46…通気部
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の多層薄膜上の樹脂膜又は金属薄膜をパターン加工する技術に係わり、特に、加工対象物の表面にレーザ光を照射して、アブレーション、熱溶融あるいはそれらの複合作用によるレーザ加工時に発生する加工飛散物(デブリ:debris)を除去・回収するためのレーザ加工装置とレーザ加工ヘッド、及びレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD(フラットパネルディスプレイ)の高精細化、低コスト化の競争は、より激しくなってきており、製造現場でもさらに高品質、高生産性が要求されている。
【0003】
FPDを構成する表示パネルは、従来、フォトリソグラフィー法によって製造されていた。しかし、フォトリソグラフィー方法は、装置の大型化、現像液などの薬液使用による環境保全、さらには同じパターン加工であってもレジストや現像液が異なるため、フォトリソグラフィー工程が2回必要となるなど、種々の問題点があった。そこで、フォトリソグラフィー法に代わって、余分なフォトリソグラフィー工程を省略し製造工程を簡略化するために、レーザ光を用いて加工対象膜を直接加工する技術が普及している。
【0004】
前述したレーザによる直接加工においては、一例としてエキシマレーザのような短波長レーザを用いている。エキシマレーザ(excited dimmer laser)は、化学結合を切断できる高いフォトンエネルギーを有している。加工対象物に短波長の短パルスレーザを照射することで、アブレーション(ablation)と呼ばれる光化学分解、光熱分解過程を生じさせ、熱的な影響を抑えつつ加工対象物を除去、微細加工することができる。このようなアブレーションによるレーザ加工技術が注目を集めている。エネルギー密度を調整したエキシマレーザ光を照射することにより、プラスチック(高分子材料)、金属、セラミックス等、種々の物質をアブレーション加工することができる。
【0005】
レーザによるアブレーション加工では、レーザ光の照射を受けた加工対象物の表面より飛散物が加工領域周辺に付着する。これを一般にデブリ(debris)と呼んでいる。加工領域周辺にデブリの付着が発生すると、所望の加工品質、加工精度を得られないこともある。そこで、このデブリを低減する方法が研究、開発されている。
【0006】
例えば、加工領域近傍の表面に空気等の流体を噴出する流体送出装置を設け、流体噴出口の反対側に流体を吸引する吸引ダクトを設置して加工飛散物やデブリを加工領域から吹き去り、同時にこれを吸引して除去する手法(以下、手法1と言う。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、加工飛散物の発生量を低減するために、加工対象物へのレーザ光の照射とともにレーザ光照射領域周辺にアシストガスを吹き付けることが有効であることが知られている。レーザ加工ヘッドに内側ノズルと、その外周面を取り囲むように外側ノズルを配置して、内側ノズルから加工領域に向けてアシストガスを噴出し、噴出したアシストガスを外側ノズルで吸引してデブリを排出する手法(以下、手法2と言う。)が提案されている(特許文献2参照)。また、加工飛散物の発生そのものを制御する方法としては、所定の雰囲気ガスによって加工飛散物を分解、あるいは再付着を防止する方法が知られている。さらに、真空度10[Pa](10−2Torr)程度の減圧下でレーザ加工を行うことにより、加工対象物上に堆積するデブリの付着量を大幅に減少できることが知られている。
【0008】
また、図8に示すように、例えば基板108aに加工対象膜108bが積層されている加工対象物107の直上に開口部120を設け、マスク又は可変アパーチャ104と開口部120とで囲まれた領域を閉空間部として減圧する排気手段を備え、加工対象物107にレーザ光102を照射して生じた加工飛散物を排気するとともにデブリ121が開口部120に堆積して、加工対象物107に堆積しない手法(以下、手法3と言う。)が提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平10−99978号公報
【特許文献2】特開平9−192870号公報
【特許文献3】特開2004−230458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、手法1のように加工領域近傍の表面でデブリを吹き去って吸引・排出しようとしてもデブリが飛散してしまい、たとえ吸引力を上げてもデブリを完全に除去、回収することは困難であった。
【0011】
また、手法2のように内側ノズルから加工領域にアシストガスを吹き付けても、デブリは拡散して加工領域周辺に再付着してしまい、外側ノズルの吸引力を強くしても十分に除去することはできなかった。
【0012】
また、手法3のように開口部を設けて閉空間部内を減圧したとしても、デブリが必ずしも開口部に堆積するわけではなく、加工領域の中心部のデブリが加工対象物表面に再付着してしまうという問題があった。
【0013】
加工対象膜が金属薄膜の場合、レーザ光の波長、エネルギー強度、パルス幅、照射パルス数、加工対象物の物性、膜厚、膜構成により適正条件が大きく変わる。レーザ光照射によって加熱アブレーションと熱的な反応により加工対象物を除去、微細加工することができる。また、パルス幅が短いほど熱的影響を少なくすることができる。しかし、上記手法2のように、アシストガスを吹き付けてデブリを拡散することはできるが、加工部周辺のドロス(熱影響による加工生成物)やデブリの再付着により、電極として用いられる薄膜の場合は短絡など品質の影響が問題となる。
【0014】
例えば、多層膜上の金属薄膜は、その照射面がレーザ光を吸収して熱を発生し、溶融・蒸発してエッチングが進む。その際の溶融温度は樹脂と比較して高いため、樹脂層が下層にある場合は、樹脂膜が熱の影響を受けて溶融・気化が起こり、金属薄膜のエッチングに影響を与える。例えば、金属薄膜の下層にある樹脂膜が盛り上がったり、金属薄膜を突き破ったりしてしまう。このように、下層の樹脂層に影響を与えずに金属薄膜だけをエッチングしようとすると、加熱溶融・蒸発させる温度を下げてそのデブリを回収する機構の開発が必要とされる。
【0015】
また、加工対象膜が樹脂膜(高分子材料)の場合、光化学分解や光熱分解によるアブレーションによって熱損傷のない加工が可能である。レーザ光の照射エネルギーとパルス数を変えることでエッチング深さをコントロールすることができ、また再現性を得られることから三次元加工への応用等が期待されている。しかし上記のアブレーション時に発生するデブリの堆積は所望の表面微細構造を得られず品質に大きく影響する。
【0016】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工対象物に付着するデブリを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ加工装置は、レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工装置において、加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、レーザ加工ヘッドの底部に形成され透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、該第1通気孔と対向する位置に設けられ加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、透過窓と開口部の間に配置され、透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、導入孔及び排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板と、を有するレーザ加工ヘッドを備え、加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する第2の通気孔から排気するとともに、遮蔽板の開口周辺部に付着させることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、簡単な構成によりレーザ照射領域近傍を減圧雰囲気下にすることができるとともに、加工飛散物を遮蔽板でトラップできるので、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収できる。
【0019】
また、本発明のレーザ加工ヘッドは、レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うためのレーザ加工ヘッドであって、加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、レーザ加工ヘッドの底部に形成され透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、該第1通気孔と対向する位置に設けられ加工対象物の前記レーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、透過窓と開口部の間に配置され、透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、導入孔及び排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板とを有し、加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する第2の通気孔から排気するとともに、遮蔽板の開口周辺部に付着させることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、簡単な構成によりレーザ照射領域近傍を減圧雰囲気下にすることができるとともに、加工飛散物を遮蔽板でトラップできるので、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収できる。
【0021】
また、本発明のレーザ加工方法は、入射されたレーザ光を透過する透過窓、該透過窓を透過したレーザ光を通す開口部、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する第1導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する第1排気孔、並びに、透過窓と開口部の間に配置され、透過窓を透過したレーザ光を通す開口と、該開口、第1導入孔及び第1排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板が設けられたレーザ加工ヘッドを用いて、加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工方法において、レーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2導入孔より加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する工程と、第1導入孔より遮蔽板の通気部に気体を導入する工程と、加工対象物に第1のレーザ光を照射する工程と、加工対象物を載置するステージを導入された気体の流れと反対方向に所定距離移動させる工程と、加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気をレーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2排気孔より排出する工程と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を遮蔽板の開口より取り込み通気部を通じて第1排気孔より排気する工程と、第1排気孔及び第2排気孔より排気中に、加工対象物に対し第2のレーザ光による第1照射領域と一部重なるように第2のレーザ光を照射する工程とを有する。
【0022】
上記構成によれば、レーザ照射領域近傍に一方向の気流を作りレーザ光照射することにより加工飛散物を所望の領域にまとめ、かつ第1照射領域と第2照射領域が重なるようにレーザ光を照射することにより、加工対象物の加工面に残った加工飛散物を除去、回収することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のレーザ加工装置、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工方法によれば、レーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工対象物に付着するデブリを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための第1の実施形態の例について、図1〜図7を参照して説明する。本発明に用いるレーザ加工装置は、レーザ光源と、レーザ光源から出射されるレーザ光を加工対象物の加工面に所定パターンで光学的に投影する光学系とを有し、加工面をアブレーション加工するレーザ加工装置である。
【0025】
図1は、本発明が適用されるレーザ加工装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示すレーザ加工装置15は、レーザ光源1と、ビーム整形器3と、マスク又は可変アパーチャ4と、投影レンズ5と、ステージ6と、減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)と、ラフィングポンプ等の排気手段12と、気体導入手段13を有しており、レーザ光源1からレーザビームを出射し、加工対象物7の加工面をアブレーション加工する。
【0026】
レーザ光源1には、例えば、エキシマレーザを用いる。エキシマレーザには、レーザ媒質の異なる複数の種類が存在し、レーザ媒質としては、波長の長いほうからXeF(351nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)、F2(157nm)がある。
【0027】
エキシマレーザが熱エネルギーを利用した加工を行うYAGレーザ(基本波:1.06μm)、及びCO2レーザ(10.6μm)、と大きく異なる点は、発振波長が紫外線の領域にあることである。エキシマレーザは本質的にパルス発振であり、短パルス(数ns〜数十ns以下)である。また、エキシマレーザは、アブレーションと呼ばれる、光化学分解、光熱分解過程により、短波長の短パルスレーザを用いることで、熱的な影響を受けにくい加工を行うため、加工面のエッジの仕上がりが非常にシャープとなる。これに対して、YAGレーザ、CO2レーザでは熱的影響が大きく、加工周辺部が熱の影響で丸くなり、端面とならない。
【0028】
さらに、エキシマレーザは、レーザ光源1から出射直後のビーム断面が約10×10mmの寸法を有し、このレーザビームをビーム整形器3にて、加工目的に応じて縮小化、長面積化、あるいは大面積化することができる。大面積化することにより比較的広い面積を一括して加工できる。したがって、大面積の領域を同時に加工するのにエキシマレーザは適している。また縮小化した場合、高精細な微細加工を行うことができる。ステップ・アンド・リピートにてパターニングすることで比較的広い面積の加工も可能である。
【0029】
ビーム整形器3は、レーザ光源1からのレーザビームを整形、ビーム強度の均一化を行い出力する。
【0030】
マスク又は可変アパーチャ4は、ビーム整形器3で整形されたレーザビームを通過又は透過させる所定パターンを有している。このマスク又は可変アパーチャ4は、例えば金属材料で形成された穴明きマスク、透明なガラス材料や金属薄膜で形成されたフォトマスク、誘電体材料で形成された誘電体マスク等が用いられる。
【0031】
投影レンズ5は、マスク又は可変アパーチャ4のパターンを通過したレーザビームを所定倍率でステージ6上の加工対象物7の加工面に投影する。
【0032】
ステージ6は、投影レンズ5から投影されるレーザビームが加工対象物7の加工面に合焦するように配置されている。このステージ6は、レーザビームが加工対象物7の加工面上を走査可能なように、レーザビームの光路2(光軸)に垂直な平面に沿って移動位置決めが可能なX−Yステージ或いは3軸ステージ等から構成される。
【0033】
上記構成のレーザ加工装置15では、レーザ光源1にエキシマレーザを用いることにより、加工対象物7の加工面に所定パターンのレーザビームを照射し、アブレーション加工する。加工対象物7の加工面は、アブレーション加工により、加工面を形成する材料に応じた加工飛散物(デブリ)が発生する。このデブリが加工面に付着すると、加工品質、加工精度等に影響を及ぼすことがあるので、本発明により付着を防ぐ。
【0034】
図1に示すように、レーザ光がステージ6上の加工対象物7に照射される直前のレーザ光路2上に、例えばKrFレーザの場合は石英、ArFレーザの場合はフッ化カルシウムで作られた減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)を設けている。この減圧チャンバー11は、エキシマレーザが透過する上部透過窓9を備える略円筒状の、アルミニウム又はステンレスなどからなるチャンバーである。減圧チャンバー11は、底部10に局所排気機能を備え、排気手段12により減圧チャンバー11内部の気体が外部に排出され、気体導入手段13により減圧チャンバー11内部に気体が導入されるよう構成されている。
【0035】
本実施形態のレーザ加工装置15は、減圧チャンバー11の底部10を、例えば樹脂膜又は金属薄膜等の加工対象膜が成膜された加工対象物7に極近接して配置する。そして、加工対象膜のレーザ光照射面近傍の雰囲気を排気孔より排気する。このようにすることにより、簡単な構成で加工対象膜のレーザ光照射面を減圧雰囲気にでき、レーザ光照射時の加工対象膜、例えば金属薄膜の下層の例えば樹脂層より離脱する際の昇華圧が高くなる。その結果、加工に要する照射エネルギーを低減できるとともに、レーザ光照射によって樹脂層より離脱し除去されたデブリを排気孔を通して除去、回収することができる。この樹脂層より離脱したデブリの除去は、加工領域近傍の表面に設けられる空気等の流体を噴出する流体送出装置(気体導入手段)によって行われる。
【0036】
図2は減圧チャンバー11の概略断面図、図3は減圧チャンバー11の下面図をそれぞれ示すものである。減圧チャンバー11は中心部に透過孔14が形成された略円筒形状をしており、例えば基板8b上に樹脂膜又は金属薄膜等の加工対象膜8bを含む多層膜が成膜された加工対象物7の表面と所定距離に配置される。多層膜を構成する加工対象膜8bは例えば樹脂層(図示略)などの上に成膜されている。勿論この例に限るものではない。
【0037】
減圧チャンバー11は上側部分と下側部分から構成されており、上側部分には透過孔14と連通する排気孔16が形成されて配管16aを通じて排気手段12と接続している。減圧チャンバー11の下側部分は、透過孔14と連通し互いに対向するように通気孔17,18が設けられている。また減圧チャンバー11の底部10の略中心には上部透過窓9を透過したレーザ光が通過する開口部20が設けられ、またその外周部周辺の同心円周上に気体噴出溝19(図3参照)が設けられている。通気孔17は配管17aを通じて排気手段12と接続し、通気孔18は配管18aを通じて気体導入手段13と接続している。通気孔17,18は内部を流れる気体が加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に導入、及びレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排気できるよう、底部10に対して所定の角度をもって開口部20近傍の空間と接続している。本例では、減圧チャンバー11の通気孔17,18及び開口部20が設けられた下側部分を、気体導入排気部11aと称する。
【0038】
減圧チャンバー11に外付けした排気手段12によって、減圧チャンバー11内部を真空引きし(本例では最大10−2Torr程度)、排気孔16及び通気孔17を通して加工対象物7表面周辺の雰囲気の排気を行う。開口部20の径は最大加工ビームサイズと略同等もしくは若干大きい程度である。例えば、最大加工ビームサイズ+1mm以下とする。
【0039】
この減圧チャンバー11の底部10と加工対象物7の照射面(加工対象膜表面)との距離は、浮上用気体導入手段(図示略)より供給される気体を環状の気体噴出溝19から噴出することによって100μm以下に保たれている。これにより、排気孔16,17を通して排気する際のコンダクタンスは小さくなっているため、減圧チャンバー11の底部10と加工対象物7との空間の真空度は1気圧より小さくなる。この減圧下でレーザ光照射され、除去された加工対象膜8bは、1気圧でレーザ光照射された場合よりも、その下層の例えば樹脂層(図示略)などの界面から離脱する際の昇華圧が高まるので、レーザ光の照射エネルギー密度を小さくすることができる。さらに、除去された加工対象膜8bは排気孔16と通気孔17を通り、回収される。
【0040】
なお、図示されていないが排気手段12と排気孔にフィルタを設けてデブリを回収している。また、排気手段12において排気する配管を切り替えて、排気孔16と通気孔17から個々に排気することも可能である。また、排気手段を2つ設けて排気孔16と通気孔17から個々に排気することも可能である。
【0041】
このように、局所排気機能を設けた簡単な構成でレーザ光照射面を減圧雰囲気とし、この減圧雰囲気でレーザ光照射することで、生産性を損なうことなく、加工エネルギーの低減、並びにデブリの除去及び回収を図ることができる。
【0042】
図4A,Bは、本発明によるレーザ加工を実施した際のデブリの飛散例を示したものであり、Aは加工領域近傍の上面図、Bは加工領域近傍の側面図である。
【0043】
本例では図3に示すように、レーザ加工の際、配管18aを通じて通気孔18から減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)へ気体を導入し、ほほ同時に配管16a,17aを通じて排気孔16及び通気孔17から排気を行う。これにより加工対象物7のレーザ光照射領域近傍には図3に示すような気流が生じる。このとき加工対象物7の所定の加工領域にレーザ光を照射すると、発生した加工飛散物のうち排気孔16及び通気孔17から排気しきれなかった加工飛散物26が気流に流されて照射領域22周辺の一方(図5の例では照射領域22の左側)に偏り、堆積する(図4A参照)。
【0044】
そこで、前述したように減圧チャンバー11の開口部20の径、及び減圧チャンバー11の底部10と加工対象物7の照射面との距離Lを適切に調節(設定)する。これにより、加工飛散物26が加工領域周辺に堆積してデブリとなる面積を小さくできるとともに、例え加工領域周辺に飛散した場合でも開口部20周辺の斜面11bに堆積するので、加工対象物7への堆積量を抑制することができる。
【0045】
このように、レーザ光を用いたアブレーション加工により発生する加工飛散物26(デブリ)の飛散範囲を開口部20で規制するとともに、加工飛散物26を開口部20の周辺に堆積させることで、加工飛散物26が加工対象物7表面へ再付着することを防ぐことができる。
【0046】
次に、上記構成のレーザ加工装置により行われるレーザ加工方法について、図5を参照しながら説明する。この図5は、加工対象物7のパターン加工方向に気体を導入して第1ショットのレーザビーム(第1のレーザ光)で除去できなかった加工飛散物(デブリ)に第2ショットのレーザビーム(第2のレーザ光)を重ねて照射する加工方法について示したものである。
【0047】
まず、排気孔16及び通気孔17の排気流量と、通気孔18の気体導入流量を調整して減圧チャンバー11の内圧を所定の減圧下に制御した後、気体噴出孔19より浮上用気体を噴出し、減圧チャンバー11の底面10と加工対象物7の加工面との距離を一定の距離に維持する。
【0048】
そして、レーザ加工領域近傍に対し図5の右から左の方向に気流ができるように気体を導入し、1回目のレーザ光を照射する。このとき略同時に排気を行う。レーザ光が照射された加工対象物7の第1照射領域23の左側にデブリ27が堆積する。次に、加工対象物7が載置されているステージ6をパターン加工方向、つまり本例では導入された気流と反対向きに移動させる。そして、上述同様、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入するとともに当該雰囲気を排出しつつ、加工対象物7に対し第1ショットのレーザビームによる第1照射領域23と第2ショットのレーザビームによる第2照射領域24が一部、例えば例えば約50%重なるようにレーザビームを照射する。
【0049】
第1ショットのレーザビームにより発生し再付着したデブリ27は、オーバーラップ照射することにより、排気孔16及び通気孔17から除去、回収することができる。このとき、第2照射領域24の気流方向つまり左側にデブリ28が新たに発生する。
【0050】
同様にして加工対象物7を載置したステージ6を気流と反対側(パターン加工方向)に移動させ、レーザビームを照射する工程を繰り返し、第nショットまでレーザビームを照射すると、第n照射領域における気流風下側にデブリ29が加工領域に堆積するとともに、第1〜第(n−1)ショットまでの第1〜第(n−1)照射領域に再付着するデブリを除去、回収することができる。
【0051】
なお、本例では加工ビームの重ね合わせ量は例えば約50%のオーバーラップ量とするが、重ね合わせ量はこれに限るものではない。また、本例において、気体導入手段13から送出される気体として、例えば酸素(O2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、等が用いられる。
【0052】
次に、上述した本発明の第1の実施形態の変形例について説明する。
実際の加工対象物7は、フラットディスプレイなどのアレイ基板(多層膜基板)などであるから、図6に示すように、パターン加工方向の転換、つまりレーザ照射順路を複数回変更する必要がある。この場合、通気孔17に、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排気する機能に加え、レーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能を付加する。また通気孔18に、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能に加え、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排気する機能を付加する。それにより、加工対象物7のパターン加工方向に応じて、通気孔17と通気孔18間における気体の導入及び排気の方向を切り替えられるようにする。一例として、通気孔17及び通気孔18を排気手段12及び気体導入手段13と各々接続するとともにその接続経路の途中に電磁弁等の開閉手段を設置し、開閉手段の開閉を制御することにより気体の導入及び排気を切り替えるなどの構成がある。
【0053】
すなわち、図6において右から左へレーザ加工を行うときは、図3に示すような右から左(配管18aから配管17a)へ流れる気流方向とし、レーザ加工の向きを切り替えて左から右へレーザ加工を行うときは、図3において図中左から右(配管17aから配管18a)へ流れる気流を作るようにする。
【0054】
このように、気体導入排気部11aに形成した通気孔17,18を流れる流体の気流方向の切り替えをパターン加工方向に応じて制御することにより、パターン加工方向の転換に対応することができる。
【0055】
また、上述した本発明の第1の実施形態の他の変形例について説明する。
この実施形態では、減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)下側の通気孔17,18が形成された気体導入排気部11aに、レーザ光の光路と略平行な回転軸を持つ回転機構を設ける。そして、加工対象物7のパターン加工方向に応じて気体導入排気部11aを回転させ、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に対する通気孔17,18を流れる気体の導入及び排気の方向を切り替えるようにする。これにより、パターン加工方向の転換(図6参照)に対応できる構成とする。このような構成とすることにより、容易にかつ自動で気流方向を切り替えることができる。
【0056】
例えば、図3を参照して説明すると、パターン加工方向が180度転換する場合、減圧チャンバー11を180度回転させて、気流方向を左から右へと反転させる。また図3の下から上へパターン加工が必要となる場合には、減圧チャンバー11を90度右回転させ、上から下への気流方向に変更する。
【0057】
なお、上述の説明において、気体導入排気部11aを回転、すなわち減圧チャンバー11の一部のみを回転させていたが、減圧チャンバー11の一部だけではなく全体が回転する機構としてもよいことは勿論である。
【0058】
さらに、上述した本発明の第1の実施形態のさらに他の変形例について説明する。
図7は、本実施形態に係る減圧チャンバー11の下面図を示すものである。図7の例は、図3に示す吸気(気体導入)と排気の組合せをさらに90度方向に配置することでX方向、Y方向の2方向におけるパターニングでの切り替え時間を短縮することを可能としたものである。
【0059】
図7において、減圧チャンバー11(レーザ加工ヘッド)は、加工対象物7のレーザ光照射領域近傍に気体を導入又はレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する、互いに対向してかつそれぞれ配管17a(通気孔17)及び配管18a(通気孔18)と90度の位置に配管31a,32a、つまり第3及び第4の通気孔を形成する。そして、加工対象物7のパターン加工方向に応じて、通気孔17及び通気孔18からなる通気孔対、あるいは第3及び第4の通気孔(配管31a,32a)からなる通気孔対のいずれを使用するか選択し切り替えられる構成とする。
【0060】
本実施の形態によれば、通気孔が90度ごとに設けられているため、パターンニング時に加工方向を切り替える際、回転移動の必要がなく切り替え時間を短縮することができる。また、回転移動が必要ないので、図3の例と比較すると、機械精度に起因する誤差が発生せず、精度のよいパターン加工が実施可能である。
【0061】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、レーザ光による、アブレーションもしくは熱溶融によるレーザ加工時に、熱的な影響を少なくしてレーザ加工により発生する加工飛散物を効率よく除去、回収し、加工面へのデブリの付着量を削減することができる。
【0062】
この結果、精密なレーザ加工が実現でき、しかもデブリの付着を防止することができるという優れた効果が得られ、レーザ加工の応用が広がり、微細パターンを高精度でありながら低コストで形成することが可能となる。
【0063】
次に、本発明を実施するための第2の実施形態の例について、図8〜図11を参照して説明する。
【0064】
多層膜上の金属薄膜のレーザアブレーションは、基本的にレーザ光照射による照射面の熱溶融による蒸発によって起きている。減圧雰囲気により照射エネルギーを低減し、適正エネルギー条件とショット数を制御することにより、レーザアブレーションによる加工部周辺への熱影響を抑えることができる。しかし、レーザ光照射によって発生したデブリはプルームと呼ばれる風船状の塊となり、初速度数十m/secで上昇すると同時にcosρの法則に従い広がっていく。そのため減圧チャンバー11に流体を送出、排気するだけでは完全にデブリを回収することが困難であり、図7に示す減圧チャンバー11の上部透過窓9にデブリが付着してしまい、所望のレーザ加工品質を得られなくなってしまうことがある。そこで、溶融・蒸散時の初速流体だけでは回収困難なデブリについては、遮蔽板を用いてデブリをトラップすることにより、上部透過窓9へのデブリ付着が抑えられる構成を提案する。
【0065】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る減圧チャンバーの概略断面図である。図8において、図2と対応する部分に同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図8に示す減圧チャンバーは、図2に示すものと比較して相違点が2点ある。第1の相違点は、中央部分に開口が形成された遮蔽板が設置されている点であり、この遮蔽板は減圧チャンバー11の上部透過窓9と開口部20の間に配置される。図8の例では、2つの遮蔽板42及び遮蔽板43を組み合わせて構成されている。また、第2の相違点は、減圧チャンバー11の円筒面のレーザ光光軸を挟んで排気孔16と反対側に導入孔41が形成されている点である。導入孔41は、遮蔽板41の通気部44に気体を導入するためのものである。
【0066】
図9は遮断板42の概観を示す図であり、Aは上面図、BはX−X線断面図である。図10は遮断板43の外観を示す図であり、Aは上面図、BはY−Y線断面図である。図9A,Bに示すように、遮蔽板42は高さが低く開口が形成された有底の筒状、あるいは、両底面に開口を有する高さの低い円柱である。遮蔽板42の一方は完全に開口しており、他方は底面に所定の大きさの開口42aが形成されている。遮蔽板42は、底面と反対側の開口端から開口42aに向かって落ち込んでいくような、略すり鉢状の形状をしている。
【0067】
遮蔽板42aの底面に形成された開口42aの大きさは、遮断板42を通過するレーザ光のビームサイズ(対角寸法)と同等か若干大きい程度が望ましい。本例では、ビームサイズに対して、例えば+0.5mm〜1mmの大きさとする。これにより、加工対象物7のレーザ光照射領域にて発生し上部透過窓9に向かって上昇してくる加工飛散物21のうち、遮蔽板42,43の開口42a,43aを通る加工飛散物の量を最小限に抑えることができる。
【0068】
図10A,Bに示すように、遮蔽板43は、遮蔽板42の上下を逆さにしたものであり、開口43aを有し遮蔽板42と同形状である。
【0069】
図8に示すように、遮蔽板42と遮蔽板43の各々の開口42a,43aが形成された底面が所定間隔離れた状態で組み合わされて配置される。遮蔽板42と遮蔽板43の双方の底面を対向させた状態で設置することで、遮蔽板42と遮蔽板43の間に、通気部44となる空間が形成される。
【0070】
遮蔽板42及び遮蔽板43からなる遮蔽板は、減圧チャンバー11内部の、排気孔16及び導入孔41と同じ高さに設置される。それにより、遮蔽板42及び遮蔽板43により形成された通気部44と導入孔41及び排気孔16が連通する。導入孔41から遮蔽板の通気部44への気体の導入は、気体導入排気部11aの通気孔17又は通気孔18による気体導入のタイミングに合わせて実行する。
【0071】
そして、加工対象物7のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物21を、減圧チャンバー11の底部に設けられた開口部20と連通する通気孔17から排気するのに合わせて、排気孔16から減圧チャンバー11内の雰囲気を外部へ排気する。このとき、通気孔17より排気しきれなかった加工飛散物21は、遮蔽板42の下面でトラップされ、開口42aの周辺部に付着する。
【0072】
さらに遮蔽板42でトラップしきれなかった加工飛散物は、遮断板42及び遮断板43の各々の開口42及び開口43から通気部44へ取り込まれる。取り込まれた加工飛散物は、導入孔41から導入される気体によって、例えば図9Aに示すように通気部44内で排気孔16に向かう方向へと流される。このように流された加工飛散物が通気部44から排気孔16より排気される。
【0073】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態よる作用効果に加え、さらに、遮蔽板を用いることで多層薄膜上の加工対象膜(樹脂膜又は金属薄膜)をパターン加工する際のデブリをトラップしてレーザ光の透過窓へのデブリ付着を抑えることができる。
【0074】
この結果、さらに精密なレーザ加工が実現でき、しかもデブリの付着を防止することができるという優れた効果が得られ、レーザ加工の応用が広がり、微細パターンを高精度でありながら低コストで形成することが可能となる。また、このレーザ加工方法により、デブリやパターン加工エッジ部の熱影響を削減して平坦化し、パターン加工部の残渣を無くして歩留りの向上と消費電力の低減を実現でき、高品質のディスプレイパネルの製造が可能となる。
【0075】
次に、上述した本発明の第2の実施形態の他の変形例について、図11を参照して説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態の他の変形例である遮蔽板43を示す図であり、Aは上面図、BはZ−Z線断面図、Cは側面図である。本例の遮蔽板43は、図9及び図10に示す二つの遮蔽板42,43を各々の底面を対向させた状態で所定間隔離して組み合わせた形状である。加えて、遮蔽板43内部に形成する通気部46を、開口45aを貫く直線状としている。これにより、遮蔽部43を減圧チャンバー11内に設置したとき、導入孔41と排気孔16が通気部46によって直線に連通する。したがって、本例は図9の例とは異なり、遮蔽板45の開口45aから取り込まれた加工飛散物が、通気部46を通って直線的に排気孔16へ流されるので、加工飛散物の除去及び回収の効率が向上する。
【0076】
なお、上述した各実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、材料の種類や数値限定など技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る減圧チャンバーの概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る減圧チャンバー下面図(1)である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るデブリの飛散例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工方法の説明に供する図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工順路の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る減圧チャンバー下面図(2)である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る減圧チャンバーの概略断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る遮断板(1)を示す図であり、Aは上面図、BはX−X線断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る遮断板(2)を示す図であり、Aは上面図、BはY−Y線断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る遮断板(3)を示す図であり、Aは上面図、BはZ−Z線断面図、Cは側面図である。
【図12】従来のレーザ加工装置における開口部近傍の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1…レーザ光源、6…ステージ、7…加工対象物、9…上部透過窓、10…底部、11…減圧チャンバー(レーザ加工ヘッド)、12…排気手段、13…気体導入手段、14…透過孔、15…レーザ加工装置、16…排気孔、16a,17a,18a,31a,32a…配管、17…通気孔、18…通気孔、20…開口部、21…加工飛散物(デブリ)、22…照射領域、23…第1照射領域、24…第2照射領域、25…第n照射領域、26,27,28…加工飛散物(デブリ)、41…導入孔、42,43,45…遮断板、42a,43a,45a…開口、44,46…通気部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工装置において、
前記加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、
レーザ加工ヘッドの底部に形成され前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、
前記レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、
前記レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、
前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、
前記第1通気孔と対向する位置に設けられ前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、
前記透過窓と前記開口部の間に配置され、前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、前記導入孔及び前記排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板と、
を有するレーザ加工ヘッドを備え、
前記加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、前記レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する前記第2の通気孔から排気するとともに、前記遮蔽板の開口周辺部に付着させる
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記遮蔽板に設けられた開口の大きさは、通過する前記レーザ光の径と略同等である
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、前記第2の通気孔が排気するのに合わせて、前記遮蔽板の開口より取り込み前記通気部を通じて前記排気孔より排気する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記多層膜上に積層された金属薄膜の下層に樹脂膜が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記遮蔽板に設けられた通気部は、前記導入孔と前記排気孔を略直線に連通している
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ加工ヘッドの開口部の径、及び前記加工対象物の前記多層膜表面と前記レーザ加工ヘッドの底部との距離を調節して、前記加工飛散物の前記加工対象物への堆積量を抑制する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記加工対象物に第1のレーザ光を照射した後、前記加工対象物を載置するステージを前記レーザ加工ヘッドの前記第1通気孔から前記第2通気孔へ向かう気流と反対方向に所定距離移動させ、前記加工対象物に対し前記第1のレーザ光による第1照射領域と一部重なるように第2のレーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記第1通気孔は、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能に加え、前記レーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する機能を有し、
また前記第2通気孔は、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する機能に加え、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能を有し、
前記加工対象物のパターン加工方向に応じて、前記第1通気孔と前記第2通気孔間における気体の導入及び排気の方向を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
さらに前記レーザ加工ヘッドは、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入又は前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する、互いに対向してかつそれぞれ前記1通気孔及び第2通気孔と90度の位置に設置された第3通気孔及び第4通気孔を備え、
前記加工対象物のパターン加工方向に応じて、前記第1通気孔と前記第2通気孔からなる通気孔対、又は前記第3通気孔と前記第4通気孔からなる通気孔対のいずれを使用するか選択し切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記レーザ加工ヘッドの一部に、前記第1及び第2通気孔が形成され、かつ前記レーザ光の光路と略平行な回転軸を持つ回転機構を有し、
前記加工対象物のパターン加工方向に応じて前記回転機構を回転させ、前記加工対象物の前記レーザ光照射領域近傍に対する前記第1通気孔と前記第2通気孔と間における気体の導入及び排気の方向を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うためのレーザ加工ヘッドであって、
前記加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、
前記レーザ加工ヘッドの底部に形成され前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、
前記レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、
前記レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、
前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、
該第1通気孔と対向する位置に設けられ前記加工対象物の前記レーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、
前記透過窓と前記開口部の間に配置され、前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、前記導入孔及び前記排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板とを有し、
前記加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、前記レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する前記第2の通気孔から排気するとともに、前記遮蔽板の開口周辺部に付着させる
ことを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項12】
入射されたレーザ光を透過する透過窓、該透過窓を透過したレーザ光を通す開口部、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する第1導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する第1排気孔、並びに、前記透過窓と前記開口部の間に配置され、前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口と、該開口、前記第1導入孔及び前記第1排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板が設けられたレーザ加工ヘッドを用いて、加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工方法において、
前記レーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2導入孔より前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する工程と、
前記第1導入孔より前記遮蔽板の通気部に気体を導入する工程と、
前記加工対象物に第1のレーザ光を照射する工程と、
前記加工対象物を載置するステージを前記導入された気体の流れと反対方向に所定距離移動させる工程と、
前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を前記レーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2排気孔より排出する工程と、
前記レーザ加工ヘッド内の雰囲気を前記遮蔽板の開口より取り込み前記通気部を通じて前記第1排気孔より排気する工程と、
前記第1排気孔及び第2排気孔より排気中に、前記加工対象物に対し前記第2のレーザ光による第1照射領域と一部重なるように第2のレーザ光を照射する工程とを有する
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項1】
レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工装置において、
前記加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、
レーザ加工ヘッドの底部に形成され前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、
前記レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、
前記レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、
前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、
前記第1通気孔と対向する位置に設けられ前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、
前記透過窓と前記開口部の間に配置され、前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、前記導入孔及び前記排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板と、
を有するレーザ加工ヘッドを備え、
前記加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、前記レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する前記第2の通気孔から排気するとともに、前記遮蔽板の開口周辺部に付着させる
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記遮蔽板に設けられた開口の大きさは、通過する前記レーザ光の径と略同等である
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、前記第2の通気孔が排気するのに合わせて、前記遮蔽板の開口より取り込み前記通気部を通じて前記排気孔より排気する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記多層膜上に積層された金属薄膜の下層に樹脂膜が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記遮蔽板に設けられた通気部は、前記導入孔と前記排気孔を略直線に連通している
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ加工ヘッドの開口部の径、及び前記加工対象物の前記多層膜表面と前記レーザ加工ヘッドの底部との距離を調節して、前記加工飛散物の前記加工対象物への堆積量を抑制する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記加工対象物に第1のレーザ光を照射した後、前記加工対象物を載置するステージを前記レーザ加工ヘッドの前記第1通気孔から前記第2通気孔へ向かう気流と反対方向に所定距離移動させ、前記加工対象物に対し前記第1のレーザ光による第1照射領域と一部重なるように第2のレーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記第1通気孔は、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能に加え、前記レーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する機能を有し、
また前記第2通気孔は、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する機能に加え、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する機能を有し、
前記加工対象物のパターン加工方向に応じて、前記第1通気孔と前記第2通気孔間における気体の導入及び排気の方向を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
さらに前記レーザ加工ヘッドは、前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入又は前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する、互いに対向してかつそれぞれ前記1通気孔及び第2通気孔と90度の位置に設置された第3通気孔及び第4通気孔を備え、
前記加工対象物のパターン加工方向に応じて、前記第1通気孔と前記第2通気孔からなる通気孔対、又は前記第3通気孔と前記第4通気孔からなる通気孔対のいずれを使用するか選択し切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記レーザ加工ヘッドの一部に、前記第1及び第2通気孔が形成され、かつ前記レーザ光の光路と略平行な回転軸を持つ回転機構を有し、
前記加工対象物のパターン加工方向に応じて前記回転機構を回転させ、前記加工対象物の前記レーザ光照射領域近傍に対する前記第1通気孔と前記第2通気孔と間における気体の導入及び排気の方向を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
レーザ光を利用して加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うためのレーザ加工ヘッドであって、
前記加工対象物に照射されるレーザ光を透過する透過窓と、
前記レーザ加工ヘッドの底部に形成され前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口部と、
前記レーザ加工ヘッド内に気体を導入する導入孔と、
前記レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する排気孔と、
前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する第1通気孔と、
該第1通気孔と対向する位置に設けられ前記加工対象物の前記レーザ光照射領域近傍の雰囲気を排出する第2通気孔と、
前記透過窓と前記開口部の間に配置され、前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口、並びに、該開口、前記導入孔及び前記排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板とを有し、
前記加工対象物のレーザ光照射領域より発生する加工飛散物を、前記レーザ加工ヘッドの底部に設けられた開口部と連通する前記第2の通気孔から排気するとともに、前記遮蔽板の開口周辺部に付着させる
ことを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項12】
入射されたレーザ光を透過する透過窓、該透過窓を透過したレーザ光を通す開口部、レーザ加工ヘッド内に気体を導入する第1導入孔と、レーザ加工ヘッド内の雰囲気を外部へ排出する第1排気孔、並びに、前記透過窓と前記開口部の間に配置され、前記透過窓を透過したレーザ光を通す開口と、該開口、前記第1導入孔及び前記第1排気孔を連通する通気部とが形成されてなる遮蔽板が設けられたレーザ加工ヘッドを用いて、加工対象物に形成された多層膜上の樹脂膜又は金属薄膜のパターン加工を行うレーザ加工方法において、
前記レーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2導入孔より前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍に気体を導入する工程と、
前記第1導入孔より前記遮蔽板の通気部に気体を導入する工程と、
前記加工対象物に第1のレーザ光を照射する工程と、
前記加工対象物を載置するステージを前記導入された気体の流れと反対方向に所定距離移動させる工程と、
前記加工対象物のレーザ光照射領域近傍の雰囲気を前記レーザ加工ヘッドの所定位置に設けられた第2排気孔より排出する工程と、
前記レーザ加工ヘッド内の雰囲気を前記遮蔽板の開口より取り込み前記通気部を通じて前記第1排気孔より排気する工程と、
前記第1排気孔及び第2排気孔より排気中に、前記加工対象物に対し前記第2のレーザ光による第1照射領域と一部重なるように第2のレーザ光を照射する工程とを有する
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−114252(P2008−114252A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299526(P2006−299526)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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