説明

レーザ加工装置、及び、レーザ加工方法

【課題】 加工対象物の一部が欠損している場合であっても加工を行う。
【解決手段】 レーザビームを出射するレーザ光源と、加工対象物を保持する保持台と、記レーザ光源を出射したレーザビームを、保持台に保持された加工対象物に入射させる光学系と、保持台に保持された加工対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置で撮像された加工対象物の外形に基づいて、加工対象物に欠けた部分があるときには、欠けた部分に掛からないように、加工対象物上にレーザビームの走査範囲を決定し、走査範囲にレーザビームが入射するように、光学系及び前記保持台の少なくとも一方の動作を制御する制御装置とを有するレーザ加工装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物にレーザビームを照射して加工を行うレーザ加工装置、及び、レーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不純物を注入した半導体基板にレーザビームを照射し、注入された不純物を活性化させる技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に活性化アニールに用いられるレーザ加工装置に配置された半導体ウエハ50を示す。
【0004】
半導体ウエハ50は、たとえば厚さが80μmであり、その薄さゆえにハンドリングが困難である。このため半導体ウエハ50は、ハンドリング用のフィルム51、たとえばPETフィルムに接着されてハンドリングされ、フィルム51とともにレーザ加工装置のワークチャックに載せられる。本図に示すように、円形の半導体ウエハ50の周囲にはフィルム51が露出した領域があり、更にその周囲に支持枠52が配置される。
【0005】
パルスレーザビームが、本図紙面垂直手前方向から半導体ウエハ50表面に照射されて、活性化アニールが行われる。本図には1ショットのレーザパルスが入射する領域を、ビーム入射領域60として示した。レーザアニールは、複数のレーザパルスが図の左右方向に、たとえば重複率50%で走査されて行われる。
【0006】
また、本図には、半導体ウエハ50上に画定される複数のチップ領域53を示した。たとえば後工程において、活性化アニールされた1つのチップ領域53に1つの半導体デバイスが形成される。なお、本図に示したチップ領域53は説明の便宜のためのものであって、半導体ウエハ50表面(レーザビーム照射面)は描画パターンを有さず、無地である。
【0007】
半導体ウエハ50は高価であり、その上に最大数のチップ領域53を画定することが望まれるため、ウエハ50は外周付近まで利用される。また、一部が欠けた半導体ウエハ50上にもデバイス製造が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−152888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、加工対象物の一部が欠損している場合であっても加工を行うことの可能なレーザ加工装置を提供することである。
【0010】
また、加工対象物の一部が欠損している場合であっても加工を行うことの可能なレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、レーザビームを出射するレーザ光源と、加工対象物を保持する保持台と、前記レーザ光源を出射したレーザビームを、前記保持台に保持された加工対象物に入射させる光学系と、前記保持台に保持された加工対象物を撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像された加工対象物の外形に基づいて、該加工対象物に欠けた部分があるときには、該欠けた部分に掛からないように、該加工対象物上にレーザビームの走査範囲を決定し、該走査範囲にレーザビームが入射するように、前記光学系及び前記保持台の少なくとも一方の動作を制御する制御装置とを有するレーザ加工装置が提供される。
【0012】
また、本発明の他の観点によると、(a)加工対象物の形状を認識する工程と、(b)前記工程(a)で認識した加工対象物の外形に基づいて、該加工対象物に欠けた部分があるときには、該欠けた部分に掛からないように、レーザビームの走査範囲を決定する工程と、(c)前記工程(b)で決定された走査範囲にレーザビームを入射させる工程とを有するレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工対象物の一部が欠損している場合であっても加工を行うことの可能なレーザ加工装置を提供することができる。
【0014】
また、加工対象物の一部が欠損している場合であっても加工を行うことの可能なレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は第1の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図であり、(B)は、XYステージ20上に載置される半導体ウエハ50を示す図である。
【図2】第1のレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法について説明するためのフローチャートである。
【図3】変形例によるレーザ加工方法を説明するための図である。
【図4】第2の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図5】活性化アニールに用いられるレーザ加工装置に配置された半導体ウエハ50を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)は第1の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第1の実施例によるレーザ加工装置は、レーザ光源10、シャッタ11、プロファイル均一光学系12、マスク13、イメージングレンズ14、CCDカメラ15、制御装置16、及びXYステージ20を含んで構成される。
【0017】
レーザ光源10は、たとえばNd:YLFレーザ発振器及び非線形光学結晶を含み、パルスレーザビーム30を出射する。パルスレーザビーム30は、波長527nmのNd:YLFレーザの2倍高調波である。あるいは半導体LD(たとえば波長800nm前後)をパルス化したものであってもよい。更に、ディスクレーザの、たとえば波長1030nm前後の基本波や、波長515nm前後の2倍高調波を用いることができる。
【0018】
パルスレーザビーム30は、レーザビームを透過させ、または遮蔽するシャッタ11に入射する。シャッタ11を透過したパルスレーザビーム30は、プロファイル均一光学系12でビーム断面内の光強度を均一化された後、透光領域と遮光領域とを備えるマスク13で断面形状を、たとえば長尺状に整形される。マスク13を透過したパルスレーザビーム30は、イメージングレンズ14を経由してXYステージ20上に保持された加工対象物である半導体ウエハ50に入射する。イメージングレンズ14は、マスク13の位置におけるパルスレーザビーム30の断面を半導体ウエハ50表面に結像させる。
【0019】
XYステージ20が半導体ウエハ50をその面内方向に移動させることによって、半導体ウエハ50上におけるパルスレーザビーム30の入射位置を移動させることができる。
【0020】
半導体ウエハ50には不純物が注入されており、入射したパルスレーザビーム30によって不純物を活性化させる活性化アニールが行われる。
【0021】
CCDカメラ15は、パルスレーザビーム30の照射に先立って、XYステージ20上に載置された半導体ウエハ50を撮影し、その画像データを制御装置16に送信する。
【0022】
なお、制御装置16はレーザ光源10からのパルスレーザビーム30の出射、シャッタ11の開閉によるパルスレーザビーム30の透過と遮蔽、XYステージ20の駆動による半導体ウエハ50の移動等を制御する。
【0023】
図1(B)に、XYステージ20上に載置される半導体ウエハ50を示す。本図に示す半導体ウエハ50は、欠落部分50aを備える点で図5に示したそれとは異なる。欠落部分50aとは半導体ウエハ50の一部が欠けた領域であり、欠落部分50aにおいてはフィルム51が露出している。
【0024】
図2を参照して、第1のレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法について説明する。
【0025】
まず、ステップS101において、CCDカメラ15でXYステージ20上に載置された半導体ウエハ50の全体形状を撮影し、その画像データを制御装置16に送信する。
【0026】
ステップS102において、制御装置16は半導体ウエハ50の全体形状を認識し、制御装置16内の記憶領域に記憶する。そして半導体ウエハ50上に、パルスレーザビーム30の走査範囲を決定する。この際、撮像された半導体ウエハ50の外形に基づいて、半導体ウエハ50に欠けた部分があるときには、その欠けた部分に掛からないように、走査範囲を決定する。
【0027】
ステップS103において、XYステージ20を駆動し、半導体ウエハ50をパルスレーザビーム30の照射領域に移動する。その後、レーザ光源10からパルスレーザビーム30を出射して、ステップS102で決定された走査範囲に入射させ、活性化アニールを行う。
【0028】
活性化アニールにおいて、制御装置16は、CCDカメラ15で撮影された半導体ウエハ50の形状に基づいて、パルスレーザビーム30が、欠落部分50aに掛からないように、半導体ウエハ50以外の領域に入射しないように、たとえば露出したフィルム51に照射されないように、XYステージ20による半導体ウエハ50の移動を制御する。
【0029】
半導体ウエハ50の移動により、パルスレーザビーム30は、たとえば図1(B)の左右方向に50%の重複率で走査される。図1(B)には、パルスレーザビーム30が走査され、活性化アニールが行われる半導体ウエハ50上の領域の一部を、ビーム走査領域60aとして示した。
【0030】
本レーザ加工方法によれば、CCDカメラ15で撮影された半導体ウエハ50の形状に基づいて、パルスレーザビーム30の入射位置を決定するため、半導体ウエハ50の一部が欠落している場合でも、活性化アニールを行うことができる。
【0031】
図3を参照して、変形例によるレーザ加工方法を説明する。図3と図1(B)とは、ビーム走査領域60aの範囲が異なっている。
【0032】
ステップS101において、CCDカメラ15により半導体ウエハ50を撮像することで、その全体形状が把握される。
【0033】
制御装置16の記憶領域には、チップ領域53の位置が記憶されている。図3においては、欠落部分50aに掛かるチップ領域53は示されていないが、記憶領域には、半導体ウエハ50上のすべてのチップ領域53の位置が記憶されている。
【0034】
ステップS102において、制御装置16は、半導体ウエハ50上に、欠落部分50aに掛からないチップ領域53を計算で求め、計算で求められたチップ領域53を走査範囲に決定する。
【0035】
そしてステップS103において、走査範囲に、パルスレーザビーム30を入射させる。
【0036】
変形例によるレーザ加工方法によれば、確保されるチップ領域53の数を減らすことなく、加工の時間効率及びエネルギ効率を向上させることができる。
【0037】
図4は第2の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第2の実施例によるレーザ加工装置は、レーザ光源10、シャッタ11、プロファイル均一光学系12、マスク13、コリメートレンズ21、折り返しミラー22、画像取り込み用ミラー23、ガルバノメータ24、fθレンズ25、CCDカメラ15、制御装置16、及びXYステージ20を含んで構成される。
【0038】
Nd:YLFレーザ発振器及び非線形光学結晶を含むレーザ光源10から、Nd:YLFレーザの2倍高調波であるパルスレーザビーム30が出射する。パルスレーザビーム30はシャッタ11を透過して、プロファイル均一光学系12でビーム断面内の光強度を均一化された後、マスク13で断面形状を、たとえば長尺状に整形される。マスク13を透過したパルスレーザビーム30は、コリメートレンズ21で平行光とされ、折り返しミラー22で反射され、画像取り込み用ミラー23を透過して、2枚の揺動鏡を含んで構成されるガルバノメータ24に入射する。画像取り込み用ミラー23として、ハーフミラーまたはダイクロイックミラーを用いることができる。
【0039】
パルスレーザビーム30は、ガルバノメータ24で出射方向を変化された後、fθレンズ25を経由してXYステージ20上に載置された半導体ウエハ50に垂直上方から入射する。fθレンズ25によって、マスク13の位置におけるパルスレーザビーム30の断面が半導体ウエハ50表面に結像される。
【0040】
ガルバノメータ24でパルスレーザビーム30の出射方向を変化させることによって、半導体ウエハ50上におけるパルスレーザビーム30の入射位置を移動させることができる。
【0041】
半導体ウエハ50には不純物が注入されており、入射したパルスレーザビーム30によって不純物を活性化させる活性化アニールが行われる。
【0042】
CCDカメラ15は、パルスレーザビーム30の照射に先立ち、画像取り込み用ミラー23、ガルバノメータ24、及びfθレンズ25を介して、XYステージ20上に載置された半導体ウエハ50を撮影し、その画像データを制御装置16に送信する。パルスレーザビーム30を、半導体ウエハ50の中心に入射させるようなガルバノメータ24の位置合わせ状態において、CCDカメラ15は半導体ウエハ50の全体形状を撮影することができる。
【0043】
制御装置16はレーザ光源10からのパルスレーザビーム30の出射、シャッタ11の開閉によるパルスレーザビーム30の透過と遮蔽、ガルバノメータ24の駆動による半導体ウエハ50上におけるパルスレーザビーム30の入射位置の移動等を制御する。
【0044】
第2のレーザ加工装置を用いて行うレーザ加工方法は、第1のレーザ加工装置を用いて行うそれと同様であるが、半導体ウエハ50上におけるパルスレーザビーム30の入射位置の移動にガルバノメータ24を用いる点において異なっている。また、第2のレーザ加工装置を用いた場合、CCDカメラ15による撮像の後、XYステージ20を駆動して半導体ウエハ50をパルスレーザビーム30の照射領域に移動させる必要はない。
【0045】
第2のレーザ加工装置は、第1のレーザ加工装置よりも小型に製造可能である。更に、第2のレーザ加工装置を用いると、第1のレーザ加工装置を使用した場合よりも短い加工時間で活性化アニールを行うことができる。
【0046】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0047】
たとえば第1の実施例によるレーザ加工装置において、加工光光軸に対して撮像光軸(アライメント光軸)をオフアクシスとしたところ、これをオンアクシスとしてもよい。
【0048】
また、第2の実施例によるレーザ加工装置において、加工光光軸に対して撮像光軸(アライメント光軸)をオンアクシスとしたところ、これをオフアクシスとしてもよい。
【0049】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0050】
レーザ加工一般、殊にレーザアニールに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 レーザ光源
11 シャッタ
12 プロファイル均一光学系
13 マスク
14 イメージングレンズ
15 CCDカメラ
16 制御装置
20 XYステージ
21 コリメートレンズ
22 折り返しミラー
23 画像取り込み用ミラー
24 ガルバノメータ
25 fθレンズ
30 パルスレーザビーム
50 ウエハ
50a 欠落部分
51 フィルム
52 支持枠
53 チップ領域
60、60a ビーム走査領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射するレーザ光源と、
加工対象物を保持する保持台と、
前記レーザ光源を出射したレーザビームを、前記保持台に保持された加工対象物に入射させる光学系と、
前記保持台に保持された加工対象物を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像された加工対象物の外形に基づいて、該加工対象物に欠けた部分があるときには、該欠けた部分に掛からないように、該加工対象物上にレーザビームの走査範囲を決定し、該走査範囲にレーザビームが入射するように、前記光学系及び前記保持台の少なくとも一方の動作を制御する制御装置と
を有するレーザ加工装置。
【請求項2】
前記加工対象物が、デバイスを形成される領域を複数画定されたシリコンウエハであり、
前記制御装置は、前記デバイスを形成される領域の位置を記憶する記憶領域を備え、前記加工対象物に欠けた部分があるときには、該欠けた部分に掛からない前記デバイスを形成される領域を前記走査範囲と決定し、該走査範囲にレーザビームが入射するように、前記光学系及び前記保持台の少なくとも一方の動作を制御する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記光学系の一部を介して、前記保持台に保持された加工対象物を撮像する請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
(a)加工対象物の形状を認識する工程と、
(b)前記工程(a)で認識した加工対象物の外形に基づいて、該加工対象物に欠けた部分があるときには、該欠けた部分に掛からないように、レーザビームの走査範囲を決定する工程と、
(c)前記工程(b)で決定された走査範囲にレーザビームを入射させる工程と
を有するレーザ加工方法。
【請求項5】
前記加工対象物が、デバイスを形成される領域を複数画定されたシリコンウエハであり、
前記工程(b)において、該欠けた部分に掛からない前記デバイスを形成される領域を、レーザビームの走査範囲とする請求項4に記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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