説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】直線、円形や、リング(ドーナツ型)等のレーザ光溶接等の多様なレーザ光の照射の仕方が可能であり、そのレーザ光照射に均一なレーザ光照射が可能であり、半導体レーザ素子や光ファイバが故障しても容易に対応できる 。
【解決手段】 複数の半導体レーザ素子5と光ファイバ7を介して連結される接続コネクタ6と、光ファイバ4の照射側先端4aが連結される多芯コネクタ3と、多芯コネクタ3に接続される第1の光ファイバ4と、接続コネクタ3と半導体レーザ素子5とを接続する第2の光ファイバ7であって半導体レーザ素子5に着脱自在な第2の光ファイバ7を備え、前記接続コネクタ6は、着脱自在な構成であり第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7と連結され構造であり、前記第1の光ファイバのうちのいくつかを接続してスイッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザ素子と複数の光ファイバを連結させて、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体レーザ素子と複数の光ファイバを連結させて、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置としては、レーザはんだ付け機等で実用化されているが、このようなレーザ加工装置には種々様々なものがある。
特許文献1は、複数の発光点を有するレーザ光源部と、前記レーザ光源部の隣接する複数の発光点から出射された複数のレーザ光を出射部にそれぞれ集光する複数の光回路と、矩形断面を有し、前記光回路の出射部から出射されたレーザ光を伝達する複数の矩形状光ファイバと、前記複数の矩形状光ファイバの出射端を矩形断面の短辺方向に重ねて固定したバンドル部とを備える。
特許文献2は、複数の発光源を有する半導体レーザ素子又は1つの発光源を有する複数の半導体レーザ素子と、一方の端面に形成されたレーザ光入射部と、他方の端面に形成され、かつ各レーザ光入射部に入射された前記各発光源からのレーザ光を連結して出射する1以上のレーザ光出射部と、が形成された光導波路を有する光導波路デバイスと、冷却機能を有し、前記半導体レーザ素子及び前記光導波路デバイスが設置された設置基板と、を備えた半導体レーザ素子用集光系である。
また、特許文献3は、レーザ光を発光する複数の発光手段と、前記発光手段から発光したレーザ光を入射して伝達するための光伝達手段と、前記光伝達手段の出射端から出射したレーザ光を被照射部に集光させる集光手段と、前記集光手段によって集光されたレーザ光の光強度分布を任意に設定できる光強度分布設定手段と、前記光強度分布設定手段によって設定された光強度分布となるように前記各発光手段に供給する各電流値を制御する制御手段を備えたーザ装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−361655号公報
【特許文献2】特開2002−374031号公報
【特許文献3】特開平11−254160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、レーザ加熱加工する場合、半導体レーザ素子と連結される光ファイバが故障した場合には、これを交換する必要があるが、複数本のうちの一つを見つけることが困難になる場合があった。また、半導体レーザ素子側の配置は通常定まっているのに対して、集光機側はユーザごとに対応してカスタマイズさせる必要があり、例えば、加熱する対象や位置によって種々の形態(レーザ光の照射の仕方)があり、それに対応したレーザ光溶接装置が求められる。
しかしながら、上記半導体レーザ素子や光ファイバの故障などを考慮した上での上記レーザ光の照射の仕方に対応させるものは従来なかった。すなわち、従来では、いずれも集光器や光ファイバ等をすべて交換する必要がある。
【0005】
また、レーザ光溶接する場合を例に説明すると、レーザ光が当たる箇所を一律に光照射することが溶接の均一化のために求められるが、レーザ光照射する対象やレーザ光の照射の仕方によって、レーザ光が当たる箇所を一律にレーザ照射することが困難な場合や、均一な溶接をするとしても、多数の光ファイバのうちのすべてを使用しなくとも、均一な照射ができる場合がある。例えば、図15は、直線の場合のレーザ溶接の場合の例であるが、溶接対象ワークの目的とするレーザ光溶接箇所L1の両側L2,L3で温度が違う場合がある。ここでは、図15中上側の温度が高く、かつ、下側の温度が低いとすると、レーザ光溶接する箇所に均一なレーザ光が照射されても、その両側で温度が異なると、その中心のレーザ光溶接する箇所がその影響を受けて、目的とするレーザ光溶接する箇所L1の均一なレーザ溶接ができなくなる問題を有していた。多数の光ファイバのうちのすべてを使用しなくとも均一な照射ができる場合としては、直線、円形や、リング(ドーナツ型)等のレーザ光溶接等の多様なレーザ光の照射の仕方があるが、例えば、リング(ドーナツ型)の溶接の場合は中央に照射のための光ファイバを配置しても、その中央の光ファイバは使用しない。
【0006】
そこで本発明の目的は、直線、円形や、リング(ドーナツ型)等のレーザ光溶接等の多様なレーザ光の照射の仕方が可能であり、光ファイバが故障してもそのスイッチングにより影響を少なくし、そして集光器側をユーザに応じてカスタマイズさせること容易なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の半導体レーザ素子と複数の光ファイバを連結させて、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置又はレーザ加工方法であって、複数の半導体レーザ素子と光ファイバを介して連結される接続手段と、光ファイバの照射側先端が連結される多芯コネクタと、多芯コネクタに接続される第1の光ファイバと、接続手段と半導体レーザ素子とを接続する第2の光ファイバを備え、前記第1の光ファイバのうちのいくつかを接続してスイッチングすることを特徴とする。
本発明によれば、複数の第1の光ファイバのうちのいくつかを接続して選択的にスイッチングすることで、第1の光ファイバからレーザ光が照射される。その場合の組み立ては、多芯コネクタに連結されている第1の光ファイバと半導体レーザ素子に連結されている第2の光ファイバとを接続手段により接続されて組み立てられる。したがって、集光機側はユーザごとに対応してカスタマイズさせる必要がある場合(例えば、加熱する対象や位置によって種々の形態がある場合)でも、柔軟の対応した接続が可能である。
本発明の前記接続手段としては、第1の光ファイバと第2の光ファイバの一端と他端とが連結される着脱可能な接続コネクタとしての構造であったり、又、ミラーと該ミラーの位置をX方向とY方向に移動させる移動手段であり、前記第1の光ファイバと第2の光ファイバとがX方向とY方向に対応して配列されて連結される構造であったりすることで対応可能である。
第1の光ファイバと第2の光ファイバの一端と他端とが連結される着脱可能な接続コネクタとしての構造であれば、組み立てが容易でありこれら光ファイバが故障した場合は、これらの交換が容易である。ミラーの位置をX方向とY方向に移動させる構造であれば、ミラーの反射を利用して、第1の光ファイバと第2の光ファイバとを線や部材(機械的・物理的な物体)等で連結する必要がなく、両者が離れていても連結させることができる。
【0008】
本発明としては、前記第1の光ファイバの数が前記第2の光ファイバの数よりも多いことが好ましい。ここで、前記第2の光ファイバと前記半導体レーザ素子との接続状態を着脱可能な構造にして、前記第2の光ファイバの数が前記半導体レーザ素子の数よりも多くしても良い。なお、半導体レーザ素子には、冷却手段が必要なこともあり、その小型化には限界があり、最小限度の数の半導体レーザ素子を配置するものとし、半導体レーザ素子の数を少なくして効率的なレーザ加工を行う。
本発明によれば、前記第1の光ファイバのうちのいくつかを接続してスイッチングするが、第1の光ファイバの数が第2の光ファイバの数よりも多いので、例えば、第1の光ファイバが故障したとしても、その第1の光ファイバを接続コネクタから外して、他の第1の光ファイバに連結させるか、或いは、そもそも使用しない第1の光ファイバがある選択的スイッチングでは、そのままにして使用しても良い。半導体レーザ素子はすべて使用する状態になることが効率的である。したがって、任意の形状のレーザ光をワークに照射できるとともに、第1と第2の光ファイバが故障しても直ちに交換する必要がないので、レーザ溶接作業に支障が生じることがなく、レーザ加工の効率化が図られる。
【0009】
本発明としては、前記第1の光ファイバと第2の光ファイバの径の大きさが異なることが好ましい。例えば、集光器側の第1の光ファイバの径の太さを第2の光ファイバの径の太さをよりも小さくすることにより、集光器側の集光状態を揃えやすくできるとともに、第2の光ファイバの確実で安定した接続状態を確保することができる。
【0010】
本発明としては、集光レンズが配される集光器であって前記多芯コネクタが着脱自在に取り付けられる集光器を備え、前記多芯コネクタが前記集光器に対して、その取り付け位置を変更可能に取り付けられているか、又は、多芯コネクタを集光器に対して回転可能に構成していることが好ましい。
本発明によれば、前記多芯コネクタは複数の光ファイバの光照射側を揃えることで(ソケットに接着剤を充填するなどして複数の光ファイバの光照射側を揃える)、集光器に取り付けし易くなっているが、前記多芯コネクタが前記集光器に対して、その取り付け位置を変更可能であることから、例えば、故障した第1の光ファイバがある場合は、その故障した第1の光ファイバからのレーザ光が集光器の集光レンズに入らない位置に移動させることできる。また、例えば、所定形状のレーザ光を生成するために、多芯コネクタの片側のみの第1の光ファイバを使用するような場合は、その片寄った部分を集光レンズに対する中央に移動させたり、また、多芯コネクタを集光器に対して回転可能に構成したりすることで、仮に使用する第1の光ファイバの多くが故障したとしても、第1の光ファイバを交換することなく加工することができる。
【0011】
本発明のレーザ加工方法としては、前記複数の第1の光ファイバの照射出力を変えてレーザ光照射することを特徴とする。加工対象のワークによって好条件に対応させるためであるが、本発明によれば、その対応が容易で様々な対応が可能である。
例えば、前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて縦横に配され、この縦横の外周側のレーザ光を使用し、その中心側のレーザ光を使用しないレーザ加工方法や、前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて中心から放射状に広がるように配され、この放射状の外周側にレーザ光を照射し、その中心側にはレーザ光を照射しないことを特徴とするレーザ加工方法によれば、一様な加熱が行われる。すなわち、ある面積でレーザ工を照射すると、その中心部の温度が高くなるが、中心側にはレーザ光を照射しないことにより、一様な加熱が施される。
また、例えば、前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて縦横に配され、目的とするレーザ光照射ラインと、そのラインを挟む両側をレーザ光照射することが好ましい。また、前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて中心から放射状に広がるように配され、目的とするレーザ光照射ラインと、そのラインを挟む両側をレーザ光照射することが好ましい。
本発明によれば、前記多芯コネクタの一側面に揃えられた第1の光ファイバからのレーザ光照射により、直線、円形やリング(ドーナツ型)等の任意形状の溶接ラインや溶接スポットのレーザ光を照射することが可能である。そして、その照射位置を挟む両側をレーザ照射で加熱させながら行うことにより、目的とするレーザ光照射の位置の左右や上下や周上のラインで温度が異なるような場合でも、その箇所にもレーザ光を照射するので、目的とする箇所(上記溶接ラインや溶接スポット)には均一なレーザ光照射が行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の光ファイバと第2の光ファイバが着脱自在な接続コネクタにより着脱自在に連結されるので、レーザ加工装置として組み立てが容易であり、第1の光ファイバが故障した場合は、これらの交換が容易である。また、例えば、第1の光ファイバを第2の光ファイバの径よりも小さなものを使用することができ、この場合、小型の光ファイバの集積による大きな出力のレーザ光加工装置として使用可能であるとともに、ユーザがカスタマイズさせる集光機側を小型に製作して使用しやすくすることが出来る。そして、半導体レーザ素子よりも第2の光ファイバの数が多くすることで、これら第1と第2の光ファイバに故障が生じても、交換したりしなくても、その影響を少なくしてレーザ光照射を行うこと可能になるとともに、半導体レーザ素子はすべて使用可能な状態にすることで、最低限度の数の半導体レーザ素子の効率的な使用が可能になる。
また、本発明によれば、目的とするレーザ光照射の位置の左右や上下や周上の内外ラインで温度が異なるような場合でも、目的とする箇所(例えば溶接ラインや溶接スポット)には均一なレーザ光照射すること可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態のレーザ加工装置の配置構成を示す図である。
【図2】上記実施形態の多芯コネクタを示す斜視図である。
【図3】上記実施形態のレーザ加工装置の基台に配される半導体レーザ素子を示す斜視図である。
【図4】上記実施形態のレーザ加工装置の接続コネクタと光ファイバを示す斜視図である。
【図5】上記実施形態のレーザ加工装置により溶接する例を説明する図である。
【図6】上記実施形態のレーザ加工装置により溶接する例を説明する図である。
【図7】上記実施形態のレーザ加工装置により溶接する例を説明する図である。
【図8】上記実施形態のレーザ加工装置により溶接する例を説明する図である。
【図9】上記実施形態のレーザ加工装置により溶接する例を説明する図である。
【図10】上記実施形態のレーザ加工装置により溶接する溶接ベローズの溶接部位を示す破断図である。
【図11】上記実施形態の多芯コネクタの他の例を説明する斜視図である。
【図12】上記実施形態の多芯コネクタの他の例を説明する斜視図である。
【図13】上記実施形態の多芯コネクタの他の例を説明する図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面側の断面図である。
【図14】本発明を適用した第2の実施形態のレーザ加工装置の連結手段を示す斜視図である。
【図15】従来のレーザ溶接装置による溶接の例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明の一実施形態のレーザ加工装置1を模式的に示す図であり、図2は接続コネクタ6を示す図であり、図3と図4はレーザ加工装置1の接続コネクタ6と半導体レーザ素子5等を示す斜視図である。
本実施形態のレーザ加工装置1は、集光レンズ2rが配される集光器2と、集光器2に取り付けられる多芯コネクタ3と、多芯コネクタ3に接続される第1の光ファイバ4と、半導体レーザ素子5と、半導体レーザ素子5と接続される第2の光ファイバ7と、第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7とを接続する接続コネクタ6とを備え、制御部10により制御されて、レーザ光をワークWに照射する。
【0016】
集光器2は、複数の束としての光ファイバのレーザ光を集光レンズ2rが配されるものであり、矩形状の集光器2の内部に複数の集光レンズ2rが配されている。矩形状の集光器2には、多芯コネクタ3が取り付けられる。本実施の形態の集光器2は、多芯コネクタ3が集光器2に対してその取り付け位置を変更可能に取り付けられている(図1中の矢印を参照)。図2に示す符号3bは、集光器2の多芯コネクタ3の差込口に係止する係止片である。また、図7(b)や図9(c)の矢印で示すように、多芯コネクタ3を集光器2に対して回転可能に構成することで、故障が生じた第1の光ファイバ4の使用位置を変更可能としている。
【0017】
半導体レーザ素子5は、所定の基台9上に配列されている。基台9には、半導体レーザ素子5を冷却する冷却機構9bが備えられている。基台9上の半導体レーザ素子6は、制御部10に接続されており、制御部10では、レーザ光を発振させる半導体レーザ素子5の制御(スイッチング)を行う。制御部10での制御は、複数の半導体レーザ素子5のうちのいくつかを選択してスイッチングする(図10)。なお、上記基台9としては、各半導体レーザ素子5に対応する一つずつの基台9であって、各々の基台9に冷却機構9bを備えるものでも良い。
【0018】
多芯コネクタ3は、複数の第1の光ファイバ4の光照射側4aを所定形状に揃えるものであり、内部中空のケース3cの一側面3aに第1の光ファイバ4の先端4aを揃えて取り付けられている。すなわち、ケース3cの一側面3aには、縦横に穴が所定間隔で形成されており、この穴に複数の第1の光ファイバ4の先端4aを通過させた状態にして、ケース3cに樹脂を充填して接着している。熱可塑性樹脂(PPS)製フェルールであり、ケース3cの一側面3aに第1の光ファイバ4の先端4aを揃えるために、接着樹脂が硬化した後、ケース3cの一側面3aを研磨することで先端4aを揃えている。
接続コネクタ6は、図4に示すように、一方部材6aと他方部材6bとが着脱自在に構成され、一方部材6aに第1の光ファイバ4が接続され、他方部材6bに第2の光ファイバ7が取り付けられている。合成樹脂製の円筒状部材の一方部材6aを同じく合成樹脂性の他方部材6bが外周から嵌め込むような構成であり、互いの抜き差しにより着脱する。すなわち、合成樹脂製のフェルール(光コネクタ内で光ファイバを保持するための部品(プラグ6p))と、スリーブ(光ファイバの端面同士を正確に位置決めする部品)6s等から構成されている。
【0019】
光ファイバ4,7は、第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7が使用され、これらが多芯コネクタ3と接続コネクタ9に着脱自在に接続されている。第1の光ファイバ4の後端(一端)は、接続コネクタ6に着脱自在に接続されている。本実施の形態では、縦横にX方向に8列、Y方向に3列の24個の第1の光ファイバ4が取り付けられているが(X方向とY方向に間隔を揃えて配されているが)、これらの個数に限られるものではなく、所定数束ねるように配されるものであれば良い。例えば、後述する中心から放射状に広がるように配されるものでも良く、楕円形状等でも良い。
【0020】
第2の光ファイバ7は、半導体レーザ素子5と接続コネクタ9との間を連結するものであり、その一方の先端が接続コネクタ6と接続され、他方の後端が半導体レーザ素子5と連結されている。そして、本実施の形態では、第1の光ファイバ4の数の方が第2の光ファイバ7の数の方よりも少なく配されている。また、第2の光ファイバ7の数が半導体レーザ素子5の数よりも多い。本実施の形態では、直線、円形や楕円、リング(ドーナツ型)のレーザ溶接等を可能にするが、そのために余裕のある光ファイバの数が配され、そのうちでも半導体レーザ素子5と接続されるもののみを使用する。第2の光ファイバ7は、半導体レーザ素子5と着脱自在なものを使用しても良い。
【0021】
ここで、第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7の径は同じ大きさでも良いが、第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7の径の太さが異なるものを使用可能である。例えば、集光器2側の第1の光ファイバ4の径の太さを第2の光ファイバの径の太さをよりも小さくすることにより、集光器2側の集光状態を揃え易くすることができるとともに、第2の光ファイバ7の確実で安定した接続状態を確保することができる。例えば、図11は、多芯コネクタ3が筒状に形成されているものであるが、第1の光ファイバ4の径の太さを第2の光ファイバの径の太さをよりも小さくすることにより、図12や図13(a)(b)に示すように、多芯コネクタ3が円錐台形状を呈して、集光器2側の集光状態を揃え易くしている。図12は、多芯コネクタ3の先端面3bが平坦であるが、図13(a)(b)は、多芯コネクタ3の先端面3dが内側にくぼむ曲面状を呈するもので、これらにより、第1の光ファイバ4の先端側4aが一点Oに揃えやすい形状になっている。
他方、集光器側の第1の光ファイバ4の径の太さを第2の光ファイバ7の径の太さよりも大きくすることができ、この場合は、集光器2側の確実で安定した接続状態を確保することができ、半導体レーザ素子5側を揃えやすくすることができる。
【0022】
次に、本実施の形態のレーザ加工装置1を組み立てる場合は、前記集光器2と多芯コネクタ3とを接続する。また、接続コネクタ6の一方部材6aと他方部材6bとを連結する。そして、第2の光ファイバ4と半導体レー5のうちのいくつかを選択してスイッチングすると、第1の光ファイバ4の先端からレーザ光が照射され、それが集光レンズ2rに集められてワークWに照射される。
【0023】
次に、本実施の形態のレーザ加工装置がレーザ溶接機であるとして、その溶接の仕方を説明する。
直線の溶接をする場合は、中央のラインL1の第1の光ファイバ4までを使用して溶接する(図5(a))。
また、中央のラインL1の第1の光ファイバ4の上下のラインの第1の光ファイバ4を使用して溶接することも可能である。例えば、図6中の中央のラインL1の第1の光ファイバ4までを使用して溶接するとして、その上下のライン(図中グレーのラインを参照)L2,L3にもレーザ光を照射しながら第1の光ファイバ4を使用して溶接する。すなわち、本実施の形態のレーザ溶接としては、目的とするレーザ照射(L1)を、その照射位置を挟む両側のラインL2,L3をレーザ照射で加熱させながら行う。上記上下ラインL2,L3では光強度分布に差異を設けてもよい。これは、図9中上側のラインL2の温度が高くて、かつ、下側のラインL3の温度が低いとすると、レーザ光溶接する箇所に均一なレーザ光が照射されても、その両側L2,L3で温度が異なると、その中心のレーザ光溶接する箇所L1がその影響を受けて、目的とするレーザ光溶接する箇所L1の均一なレーザ溶接ができなくなることを防止するためである。
また、レーザ光を楕円スポットとしてワークWに照射する場合は、例えば図5(b)の黒色A1の第1の光ファイバ4からレーザ光を照射すれば良い。また、レーザ光をリングスポット(ドーナツ型スポット)としてワークWに照射する場合は、例えば図5(c)の黒色A2の第1の光ファイバ4からレーザ光を照射すれば良い。なお、図5(c)の黒色A2のような内側を使用しない中央の空間Sと呼ぶ。
【0024】
また、図7(c)に示すように、四角形状の板状の加工面に均一な加熱を施そうとすると、中央が最も温度が高くなるので、第1の光ファイバ4の外周側R1のみ照射して中央側Raを照射しないようにすると、均一な温度の加工が出来る。同じく、図9(c)に示すように、円形状の加工面に均一な加熱を施そうとすると、中央が最も温度が高くなるので、第1の光ファイバ4の外周側R1のみ照射して中央側Raを照射しないようにすると、均一な温度の加工が出来る。なお、楕円形状の場合もこれと同様に、第1の光ファイバ4の外周側R1のみ照射して中央側Raを照射しないようにすると、均一な温度の加工が出来る。このため、前記第1の光ファイバ4の数が前記第2の光ファイバの数7よりも多いが、その多い分を上記中央側Raとすると、効率的な使用が可能である。なお、図9(c)の黒色A2のような内側を使用しない中央の空間Sと呼ぶ。
【0025】
ここで、多芯コネクタ3に対する第1の光ファイバ4の配置に関しては、前記第1の光ファイバ4の数が複数の第2の光ファイバ7の数の2倍以上である構成でも良い(図7(a)。すなわち、少なくとも照射対象ワークにレーザ光を照射する第1の照射領域D1と第2の照射領域D2とを有する多芯コネクタ3とすれば、仮に第1の照射領域D1の第1の光ファイバ4のすべてが故障したとしても、第2の照射領域D2の第1の光ファイバ4を使用すれば、支障なくレーザ光照射が行える。このために、前記多芯コネクタ3が前記集光器2に対してその取り付け位置を変更可能に取り付けられている。
すなわち、図7(a)に示すように、多芯コネクタ3に対する第1の光ファイバ4の配置の数の2倍以上であり、照射対象ワークWにレーザ光を照射する第1の照射領域D1と第2の照射領域D2とを有することにより、仮に第1の照射領域D1の第1の光ファイバ4のすべてが故障したとしても、第2の照射領域D2の第1の光ファイバ4を使用すれば、支障なくレーザ光照射が行える。
【0026】
次に、前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタ3の一側面3aに揃えられて中心から放射状に広がるように配される場合の例で説明する(図8(a)(b)(c))。まず、レーザ光を円形スポットとしてワークWに照射する場合は、例えば図8(b)の黒色R1,R2の第1の光ファイバ4からレーザ光を照射すれば良い。また、目的とするレーザ照射を、その照射位置を挟む両側のラインR3,R4をレーザ照射で加熱させながら行うことも可能である(図5(b))。また、図10に示すベローズWbの内周エッジ溶接y1やy2を必要とする場合には、また図8(c)に示すように、ワークWの内周R5と外周ラインR6の同時溶接することも可能である。なお、上記ラインR5,R6では光強度分布に差異を設けてもよい。
【0027】
次に、第1の光ファイバ4のいくつかが故障した場合を説明する。図9(a)(b)を用いて説明すると、ここでは、半導体レーザ素子5の数が中央の円形ラインR1の18個であり、第2の光ファイバ7の数が中央の円形ラインR1の他その内外のラインR2,R3を含めた個数(14個+24個=38個)であり、第1の光ファイバ4の数が中心部の7個(白抜きの丸)をさらに含めた数(45個)とする。
図9(a)に示すように、円形の溶接スポット(黒色)R1にレーザ光を照射する場合において、そのくちの一つ(B1)に故障があるとした場合、これと点対称の位置の第1の光ファイバ4(B2)を敢えて使用しないことにより(故障していないが、使用しない。)、円形の溶接スポットとしてのレーザ光照射が可能である。つまり、円形の溶接スポット(黒色)に第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7を介して半導体レーザ素子5に接続されている限り、上記符号B1とB2の箇所を使用しなくとも円形スポットの溶接が可能である。同様のことは、第2の光ファイバ7や、目的とするレーザ照射ラインの上下や左右のラインのレーザ光照射による加熱ライン(グレー)にも同様に当てはまる。第1の光ファイバ4の数の方が第2の光ファイバ7の数の方よりも少なく、また、第2の光ファイバ7の数が半導体レーザ素子5の数よりも多いので、故障した第1の光ファイバ4や第2の光ファイバ7をそのままにして(交換しないで)、選択的スイッチングによりレーザ光照射が行われる可能性が高くなる。なお、図5〜図9において、白抜きの丸の第1の光ファイバ4は、そもそも選択的スイッチングによりレーザ光照射を行わないものであるから、これらが故障した場合でも、目的とするレーザ光照射に支障はない。また、図9(d)に示すように、X方向とY方向に第1の光ファイバ4を配列するものでも良い。
【0028】
(第2の実施形態)
図14は本発明の第2の実施形態の接続手段を示す斜視図である。
本実施形態の接続手段は、ミラーM1,M2と該ミラー10の位置をX方向とY方向に移動させる移動手段11であり、前記第1の光ファイバ(出力側ファイバ)4と第2の光ファイバ(入力側ファイバ)7とX方向とY方向に対応して縦横に各々対応するように配列されている。複数の第2の光ファイバ(入力側ファイバ)7の端部には、各々ミラーM4が配されている。第1の光ファイバ4と第2の光ファイバ7との間の空間には、L字状の板で構成される移動手段11が複数配されており、この移動手段11には、その板の上に第1から第3のミラーM1〜M3が配されている。移動手段1は、X方向(水平方向)とY方向(垂直方向)に各々移動可能に構成されている。
移動手段11には、第1のミラーM1が第1の光ファイバ(出力側ファイバ)4の一方端面に対応する位置に所定角度で配され、第2のミラーM2がL字状の角に所定角度で配され、第3のミラーM3がL字状の端部に所定角度で配されている。L字状の端部には、開口11aが形成されており、その開口11aから前記第4のミラーM4に第2の光ファイバ7からの光を第1の光ファイバ4に送ることが出来るようになっている。
【0029】
したがって、縦横に配置される複数の前記第1の光ファイバ(出力側ファイバ)4のいずれも、上記ミラーM1〜M4等により、第2の光ファイバ(入力側ファイバ)7に接続できる。上記構成の移動手段11は、上述した縦横に配される第1と第2の光ファイバ4,7を使用しない中央の空間Sを利用して、縦横に移動する移動手段11を配置しても良い。また、本実施の形態のX方向とY方向に移動させることは、上記縦横(四角形状)の配列に限らず、円形状の配列にも該当するものである。
【0030】
以上、本実施の形態では、溶接加工の例で説明したが、肉盛加工、焼き入れや、レーザロウ付けや、レーザ表面熱処理等にも適用可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 レーザ加工装置、
2 集光器、
3 多芯コネクタ
4 第1の光ファイバ、4a 第1の光ファイバの先端、
5 半導体レーザ素子、
6 集光レンズ、
7 第2の光ファイバ、
8 チルトテーブル、
9 接続コネクタ(接続手段)、
11 移動手段(接続手段)、
M1〜M4 ミラー(接続手段)、
W,Wb ワーク、
L1,R1,R4,y1 溶接ライン(目的とするレーザ光照射ライン)
R1〜R6 加熱処理ライン、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザ素子と複数の光ファイバを連結させて、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工装置であって、
複数の光ファイバの光照射側を揃える多芯コネクタと、複数の半導体レーザ素子と光ファイバを介して連結される接続手段と、多芯コネクタに接続される第1の光ファイバと、接続手段と半導体レーザ素子とを接続する第2の光ファイバを備え、前記第1の光ファイバのうちのいくつかを接続してスイッチングすることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記接続手段は、第1の光ファイバと第2の光ファイバの一端と他端とが連結される着脱可能な接続コネクタとしての構造であることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記接続手段は、ミラーと該ミラーの位置をX方向とY方向に移動させる移動手段であり、前記第1の光ファイバと第2の光ファイバとがX方向とY方向に対応して配列されて連結される構造であることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1の光ファイバの数が前記第2の光ファイバの数よりも多いことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1の光ファイバと第2の光ファイバの径の大きさが異なることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
集光レンズが配される集光器であって前記多芯コネクタが着脱自在に取り付けられる集光器を備え、前記多芯コネクタが前記集光器に対してその取り付け位置を変更可能に取り付けられているか、又は、多芯コネクタを集光器に対して回転可能に構成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
複数の半導体レーザ素子と複数の光ファイバを連結させて、光ファイバからレーザ光を照射するレーザ加工方法であって、
複数の光ファイバの光照射側を揃える多芯コネクタと、複数の半導体レーザ素子と光ファイバを介して連結される接続コネクタと、多芯コネクタに接続される第1の光ファイバと、接続コネクタと半導体レーザ素子とを接続する第2の光ファイバであって半導体レーザ素子に着脱自在な第2の光ファイバを備え、前記接続コネクタは、第1の光ファイバと第2の光ファイバとが連結される着脱可能な構造であり、前記第1の光ファイバのうちのいくつかを接続してスイッチングすることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項8】
集光レンズが配される集光器であって前記多芯コネクタが着脱自在に取り付けられる集光器を備え、前記多芯コネクタが前記集光器に対してその取り付け位置を変更可能に取り付けられているか、又は、多芯コネクタを集光器に対して回転可能に構成していることを特徴とする請求項7記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて縦横に配され、この縦横の外周側にレーザ光を照射し、その中心側にはレーザ光を照射しないことを特徴とする請求項7記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて中心から放射状に広がるように配され、この放射状の外周側のレーザ光を使用し、その中心側にはレーザ光を使用しないことを特徴とする請求項7記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて縦横に配され、目的とするレーザ光照射ラインと、そのラインを挟む両側をレーザ光照射することを特徴とする請求項7記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
前記第1の光ファイバの照射先端側が多芯コネクタの一側面に揃えられて中心から放射状に広がるように配され、目的とするレーザ光照射ラインと、そのラインを挟む両側をレーザ光照射することを特徴とする請求項7記載のレーザ加工方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−227269(P2011−227269A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96562(P2010−96562)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(598044866)株式会社村谷機械製作所 (6)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【Fターム(参考)】