説明

レーザ加工装置

【課題】応答時間の異なるセンサを用いても、加工対象物に対する加工位置精度を向上することのできるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】応答時間設定手段19にてトリガセンサ4の応答遅れ時間が設定され、設定した応答遅れ時間が設定間隔パルス生成手段20や計数手段18等で構成される応答時間補正手段にて加工対象物3の移動量に変換・出力され、その移動量を加味した加工パターンの座標データが生成されて、加工パターンの位置が補正されることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の照射によるマーキング加工等を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレーザ加工装置は、例えば工場の生産ライン等に設置され、ベルトコンベア等の搬送装置によって搬送される加工対象物にレーザ光を照射することで、その表面に文字や図形のマーキング加工等を行っている。また、工場の生産ラインにおいては、時間あたりの製造数を向上させるため、搬送装置を常時動作されて加工対象物を移動させながら、加工対象物に対して文字等のレーザ加工がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第2565096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したレーザ加工装置を用い、搬送装置によって搬送される加工対象物に対し移動させながら文字等をマーキングする場合、一般的に、レーザ加工装置より上流に加工対象物が搬送されてきたか否かを検出するトリガセンサが設けられている。トリガセンサにより加工対象物が所定位置まで搬送されてきたことを検出すると、レーザ加工装置はその搬送されてきた加工対象物に対するレーザ加工のための種々の準備がなされるようになっている。
【0004】
しかしながら、上述したトリガセンサは、仕様によってセンサの応答時間が異なるため、その応答時間の違いによって加工対象物への照射位置(マーキング位置)がずれることがあった。特に、IC等の小型な加工対象物に対しては、マーキングする文字等も小さくする必要があり、応答時間の違いは照射位置のずれとしてより顕著に表れる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、応答時間の異なるセンサを用いても、加工対象物に対する加工位置精度を向上することのできるレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、搬送手段による搬送移動中の加工対象物にその搬送速度変化分を加味してレーザ光を照射して加工パターンを加工するものであり、加工位置よりも搬送方向上流側に設けられる対象物検出手段による前記加工対象物の検出に基づいて加工動作を開始するレーザ加工装置であって、前記対象物検出手段の応答遅れ時間を設定する応答時間設定手段と、設定した前記応答遅れ時間を前記加工対象物の移動量に変換し、その移動量を前記加工パターンの座標データに加算する応答時間補正手段とを備えたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、応答時間設定手段にて対象物検出手段の応答遅れ時間が設定され、設定した応答遅れ時間が応答時間補正手段にて加工対象物の移動量に変換・出力されて、その移動量に応じて加工パターンの位置が補正される。これにより、対象物検出手段の応答遅れ時間が吸収され、加工位置精度を向上することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記搬送速度を検出する搬送速度検出手段を備え、前記応答時間補正手段は、前記応答遅れ時間に係る前記加工対象物の移動量を前記搬送速度に応じて変更し、前記加工パターンの位置を補正することをその要旨とする。
【0009】
この発明では、応答時間補正手段にて応答遅れ時間に係る加工対象物の移動量が搬送速度に応じて変更されて加工パターンの位置が補正される。これにより、応答遅れ時間による補正に搬送速度変化による補正も加わり、加工位置精度をより向上することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ光を駆動電圧に基づいて走査して前記加工パターンを加工する光走査手段を備えるものであり、前記応答時間設定手段は、前記対象物検出手段の応答遅れ時間に応じたオフセット電圧を設定し、前記応答時間補正手段は、前記光走査手段を駆動するための駆動電圧に前記オフセット電圧を加算し、前記加工パターンの位置を補正することをその要旨とする。
【0011】
この発明では、応答時間設定手段にて対象物検出手段の応答遅れ時間に応じたオフセット電圧が設定され、応答時間補正手段にて光走査手段の駆動電圧にオフセット電圧が加算されて加工パターンの位置が補正される。ここで、光走査手段は、加工パターンの座標データに基づく駆動電圧の印加によりレーザ光の走査を行っているが、その駆動電圧に補正分のオフセット電圧を印加して補正することで、座標データに応答遅れ時間に応じた補正データを反映させる態様と比べてその時の演算を省略でき、制御装置での制御負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0012】
従って、上記記載の発明によれば、応答時間の異なるセンサを用いても、加工対象物に対する加工位置精度を向上することのできるレーザ加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るレーザ加工装置1は、搬送装置2上に配置され、該搬送装置2によって一方向(x方向)に搬送されてくる加工対象物3にレーザ光を照射して加工対象物3を移動させつつ文字や図形等のマーキング加工を行なっている。搬送装置2は、レーザ加工装置1よりも上流側に、加工対象物3が所定位置まで搬送されたことを検出するトリガセンサ4が設けられ、加工対象物3を検出するとトリガ信号を出力するようになっている。また、搬送装置2を駆動させている駆動軸5付近にはロータリエンコーダ6が設けられており、搬送装置2の搬送量(加工対象物の移動量)に応じたパルス信号を出力するようになっている。トリガセンサ4が出力するトリガ信号とロータリエンコーダ6が出力するパルス信号はレーザ加工装置1に入力されている。
【0014】
レーザ加工装置1は、加工用のレーザ光を出射するレーザ光源10を備えており、レーザ光源10からのレーザ光のレーザ径をビームエキスパンダ(図示略)にて拡大し、その拡大させたレーザ光をガルバノミラー等の光走査手段11を介して集束レンズ(図示略)にて加工対象物3上で一定の径までレーザ光を収束させる。そして、レーザ加工装置1は、内部の制御装置12にて光走査手段11を制御して照射方向を変更し、文字や図形等のマーキング加工を行っている。
【0015】
レーザ加工装置1の制御装置12内では、加工対象物3にマーキング加工する文字や図形等の情報と、照射時間や線幅等を調整するスキャン速度の情報等が加工情報設定手段13に設定されて格納されている。座標データ生成・出力手段14は、トリガセンサ4からのトリガ信号の入力に基づいて、加工情報設定手段13での情報を基に加工対象物3にマーキング加工する文字や図形等の座標データが生成される。因みに、この座標データは、加工対象物3が静止状態としてマーキング加工を行う場合のものであり、基準座標データとして用いられる。制御装置12は、その基準座標データに対し、搬送による加工対象物3の移動量、及びトリガセンサ4の応答遅れ時間に対応した補正量を第1加算器15にて加算して加工用座標データに変換し、その加工用座標データに基づく駆動電圧を印加してレーザ光を走査する光走査手段11を制御する。
【0016】
搬送装置2に設けられた前記ロータリエンコーダ6は、搬送量(加工対象物3の移動量)に応じたパルス信号を出力し、積算手段16は、そのパルス信号に基づいてカウントを行っており、座標データに対応した単位搬送量毎にカウントアップする設定となっている。積算手段16は、トリガセンサ4からのトリガ信号の入力に基づいてカウント値をクリアし、新たにカウントを開始している。そして、積算手段16で生成したカウント値は、第2加算器17を介して前記第1加算器15に入力され、前記基準座標データに対し加工対象物3の移動量(搬送速度変化分を含む)として反映され、これにより移動しながらのマーキング加工を可能としている。
【0017】
また、前記ロータリエンコーダ6からのパルス信号は、計数手段18に入力されている。計数手段18は、そのパルス信号に基づいてカウントを行っている。ここで、応答時間設定手段19では、トリガセンサ4の仕様から得られる応答遅れ時間が予め使用者等による外部入力によって設定され、設定間隔パルス生成手段20では、その応答時間設定手段19に設定された応答遅れ時間に応じた間隔のスタートパルスとエンドパルスとが生成される。計数手段18では、スタートパルスとエンドパルスの2つのパルス間に入力されるロータリエンコーダ6からのパルス数をカウントして、ラッチ手段21によってそのカウントした値をラッチしている。
【0018】
即ち、ラッチ手段21にてラッチしているカウント値は、応答遅れによる補正量としてラッチされている。そして、ラッチ手段21でラッチしているカウント値は、ゲート手段22を介して、応答遅れに係る補正値として第2加算器17に出力される。因みに、ゲート手段22は、トリガセンサ4からのトリガ信号の入力に基づいてゲートを開放し、1つの加工対象物3をマーキング加工する間は少なくとも応答遅れに係る補正値が第2加算器17側に出力され続ける。これにより、応答遅れに係る補正値は、加工対象物3の移動量に加算されて第1加算器15にて基準座標データに加算され、加工用座標データに含まれる。
【0019】
このような構成のレーザ加工装置1では、搬送装置2に設けられたトリガセンサ4が加工対象物3を検知すると、出力されたトリガ信号に基づいて座標データ生成・出力手段14にて基準座標データが生成される。例えば、加工対象物3に「AB」という文字列をマーキングする場合、マーキングの基準点P0(x0,y0)に対し、文字列の単位マーキング点がPa1(xa1,ya1)、Pa2(xa2,ya2)・・・として設定される。
【0020】
加えて、積算手段16からは、加工対象物3の移動方向(搬送方向)がx方向であることから、全座標データ毎のx座標にそれぞれ対応する移動量が加算される。これにより、各単位マーキング点Pa1,Pa2では、Pa1(xa1+α1,ya1)、Pa2(xa2+α2,ya2)と変更される。更に、ラッチ手段21からは、トリガセンサ4の応答遅れに係る補正量βが全座標データに加算される。これにより、各単位マーキング点Pa1,Pa2では、Pa1(xa1+α1+β,ya1)、Pa2(xa2+α2+β,ya2)と変更される。そして、レーザ加工装置1の制御装置12は、こうして得られた加工用座標データに基づいて光走査手段11を制御し、トリガセンサ4の応答遅れが加味された移動体のマーキング加工が行われ、応答時間の異なるトリガセンサ4を用いても加工対象物3のマーキング位置ずれが抑制された位置精度の高いマーキング加工が可能となっている。
【0021】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態では、応答時間設定手段19にてトリガセンサ4の応答遅れ時間が設定され、設定した応答遅れ時間が設定間隔パルス生成手段20や計数手段18等で構成される応答時間補正手段にて加工対象物3の移動量に変換・出力されて、その移動量を加味した加工パターンの座標データが生成され、加工パターンの位置が補正される。これにより、トリガセンサ4の応答遅れ時間が吸収され、加工位置精度を向上することができる。特に、加工対象物3がIC等の小型なものに対しては、マーキングする文字等も小さくその応答遅れ時間によるマーキングの位置ずれが顕著となるため、本実施の形態のように応答遅れ時間分を補正して加工位置精度を向上する意義は大きい。
【0022】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、トリガセンサ4の応答遅れ時間による補正に搬送装置2の搬送速度変化を加味してもよい。例えば、ロータリエンコーダ6のパルス信号を入力し、その入力したパルス信号から搬送速度を検出する搬送速度検出手段23を設け、搬送速度の変化の影響を受ける応答遅れの補正値にその速度変化分を加える(設定間隔パルス生成手段20でのパルス間隔を速度に応じて調整する等)。このようにすれば、搬送速度変化に応じた補正を応答遅れ時間による補正にも反映でき、加工位置精度をより向上することができる。尚、外部で検出した搬送速度の入力や、操作者による搬送速度の外部入力により、応答遅れの補正値に速度変化分を加えるようにしてもよい。
【0023】
・上記実施の形態では、操作者等が外部入力として予めトリガセンサ4の仕様から得られる応答遅れ時間を設定しているが、こうした構成に限らず、応答遅れ時間を自動で設定する手段を設けて、その手段が設定した応答遅れ時間を利用してもよい。
・上記実施の形態では、応答遅れ時間分の加工対象物3の移動量を座標データに加算して加工パターンの位置を補正したが、こうした構成に限らず、例えば応答遅れ時間相当のオフセット電圧を光走査手段11の駆動電圧に加算し、加工パターンの位置を補正してもよい。このようにすれば、座標データに応答遅れ時間に応じた補正データを反映させる上記実施の形態と比べてその時の演算を省略でき、制御装置12での制御負荷を軽減することができる。
【0024】
・上記実施の形態では、一つ一つの加工対象物3から得られる補正値を算出して、その補正値をそれぞれの加工対象物3のマーキング加工に反映させているが、こうした構成に限らず、例えば、加工対象物3は略一定間隔で搬送装置2により搬送されるため、搬送装置2から一番最初に搬送されてくる加工対象物3の補正値を算出して、その補正値を搬送されてくる全ての加工対象物3に適用してもよい。これにより、計数手段18や積算手段16等の演算負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態におけるレーザ加工装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1…レーザ加工装置、2…搬送手段としての搬送装置、3…加工対象物、4…対象物検出手段としてのトリガセンサ、11…光走査手段、18…応答時間補正手段としての計数手段、19…応答時間設定手段、20…応答時間補正手段及び速度補正手段としての設定間隔パルス生成手段、21…応答時間補正手段としてのラッチ手段、22…応答時間補正手段としてのゲート手段、23…搬送速度検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段による搬送移動中の加工対象物にその搬送速度変化分を加味してレーザ光を照射して加工パターンを加工するものであり、加工位置よりも搬送方向上流側に設けられる対象物検出手段による前記加工対象物の検出に基づいて加工動作を開始するレーザ加工装置であって、
前記対象物検出手段の応答遅れ時間を設定する応答時間設定手段と、
設定した前記応答遅れ時間を前記加工対象物の移動量に変換し、その移動量に応じて前記加工パターンの位置を補正する応答時間補正手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記搬送速度を検出する搬送速度検出手段を備え、
前記応答時間補正手段は、前記応答遅れ時間に係る前記加工対象物の移動量を前記搬送速度に応じて変更し、前記加工パターンの位置を補正することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ光を駆動電圧に基づいて走査して前記加工パターンを加工する光走査手段を備えるものであり、
前記応答時間設定手段は、前記対象物検出手段の応答遅れ時間に応じたオフセット電圧を設定し、
前記応答時間補正手段は、前記光走査手段を駆動するための駆動電圧に前記オフセット電圧を加算し、前記加工パターンの位置を補正することを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−6394(P2009−6394A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172714(P2007−172714)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】