レーザ加工装置
【課題】光量変化が小さい加工不良であっても検出可能であり、加工状態の良否を確実に判定できるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、レーザ光2を被加工材1に向けて照射するための加工ヘッド3と、被加工材1を加工ヘッド3に対して相対移動させるための加工ステージ5と、レーザ光2の照射時に被加工材1の加工点6から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出するための光センサ11,12と、第1方向で検出した信号強度Iaと第2方向で検出した信号強度Ibとの比率Ia/Ibを演算するための信号処理部21と、レーザ加工時に、加工状態とともに前記比率を記憶するための記憶部22と、記憶部22に登録した基準比率と、実際のレーザ加工時に取得した比率とを比較して、加工状態の良否判定を行う判定部23などで構成される。
【解決手段】レーザ加工装置は、レーザ光2を被加工材1に向けて照射するための加工ヘッド3と、被加工材1を加工ヘッド3に対して相対移動させるための加工ステージ5と、レーザ光2の照射時に被加工材1の加工点6から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出するための光センサ11,12と、第1方向で検出した信号強度Iaと第2方向で検出した信号強度Ibとの比率Ia/Ibを演算するための信号処理部21と、レーザ加工時に、加工状態とともに前記比率を記憶するための記憶部22と、記憶部22に登録した基準比率と、実際のレーザ加工時に取得した比率とを比較して、加工状態の良否判定を行う判定部23などで構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関し、特に、加工状態のモニタ機能を有するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いた切断加工では、一般に、レーザ発振器から発生したレーザビームを光学系により伝播させ、加工レンズにより被加工材に集光するとともに、同軸上に配置されたノズルにより加工ガスを供給させた状態で、レーザビームと被加工材を相対移動させることによって、切断加工が実施される。このとき調整すべき加工条件として、ビームモード、出力、パルス条件、加工ガス種、加工ガス圧、ノズル径、焦点位置、ノズルワーク間距離などの各種パラメータがある。作業者は、良好な切断加工を得るために、上記パラメータを適切に選択する必要がある。
【0003】
パラメータ選択は、被加工材の材質、厚さ、切断形状により異なるため、複雑で熟練を要する作業である。通常、被加工材の種類、加工品質に応じて予め決められた良好切断条件を選択することによって、通常の作業者でも良好な切断加工が得られるように、加工機メーカより加工条件表が提供される。
【0004】
加工条件が適切で無い場合には、良好切断面が得られないことになる。例えば、典型的には、完全な切断ができないガウジングや、入熱過多の場合のバーニングと呼ばれる現象が発生する。
【0005】
ガウジングやバーニングが発生すると、切断加工中に通常とは異なる強烈な発光現象が認められる。従って、作業者が目視で監視することにより、不良発生時に加工機を停止することで対応可能である。しかし、ガウジングやバーニングほど顕著ではないが、被加工材の裏面に付着するドロスや、切断面の面粗さが規定外といった加工不良においては、加工中の目視による判別では、微妙な差を判定することは困難である。この場合、切断加工終了後に、裏面または切断面を目視で確認することにより、良品/不良品の判別を行うことが必要になる。
【0006】
他のNC(数値制御)加工装置と同様にレーザ加工装置においても、省ランニングコスト、省人化が進められており、長時間の無人連続運転によるレーザ切断加工が実施されるようになってきている。しかしながら、長時間連続運転中に、加工レンズへのスパッタ付着など、なんらかの加工条件の修正が必要となる事態が発生した場合、途中で加工条件を修正しなければ、大量の不良切断部材が発生してしまう。その結果、材料の廃棄、再加工、もしくは、グラインダ等による手直しが必要となり、多大なロスが発生する可能性がある。従って、こうした無人運転の場合でも、加工済みの被加工材を作業者が目視確認することにより良品/不良品の判別を行うことが必要になりが、作業コストの増加を招く。
【0007】
こうした有人監視の問題に関して、レーザ加工装置を用いてレーザ切断を実施する際に、加工点の状況をモニタするために、音響センサ、光センサ、カメラ等を用いて切断加工の良/不良を判定し、加工装置を停止したり、より適正な加工条件に修正するための方法が種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、レーザ切断時に加工部から発生する光を光センサで検出し、検出光量レベルを、予め取得して、加工装置の制御装置のデータベースに登録済みの良好切断時の光量レベル範囲と比較することが提案されている。この検出光量が、良好切断時の光量レベル範囲外であれば、加工不良と判定し、前記データベースに登録済みの良好切断条件から切断条件が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−249560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、加工ヘッドに加工点からの光量をモニタするセンサを具備したために、ガウジングやバーニングなど、加工点からの光量が大きく変化するような加工不良は検出可能である。しかしながら、ドロス付着や、切断面粗さが規定範囲外といった場合には、加工点からの光量変化は微量であるため、良品/不良品の判別が困難である。
【0010】
また、実際の加工においては、被加工材のさび、汚れといった表面状態の違いにより、レーザビームの吸収率が変化することから、最適なレーザ出力を修正する必要がある。しかし、特許文献1における良好切断時のデータベースのみでは、どのように加工条件を選択してよいのかが不明である。
【0011】
さらに、実際にレーザ加工装置を連続運転する場合、加工レンズ、伝送光学系、発振器ミラーなどの光学部品への汚れ付着により、加工点でのビーム径、焦点位置がシフトしてしまうため、最適な加工条件を逐次修正していく必要がある。しかし、特許文献1における良好切断時のデータベースのみでは、どの加工条件を選択してよいのか不明である。
【0012】
従って、特許文献1のように、加工点からの光量を単一のセンサを用いてモニタするだけでは、レーザ出力またはビーム焦点位置のどちらを修正をすべきかが不明である。
【0013】
しかも、センサの光学窓の汚れまたはセンサ自身の感度変化によってもセンサ信号強度が変化してしまうため、最適加工条件を判定することは困難である。
【0014】
このように特許文献1に係る構成では、ガウジングやバーニングなどの加工不良は検出可能であっても、光量変化が小さい加工不良については検出が困難である。
【0015】
本発明の目的は、光量変化が小さい加工不良であっても検出可能であり、加工状態の良否を確実に判定できるレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光を被加工材に向けて照射するための加工ヘッドと、
被加工材を加工ヘッドに対して相対移動させるための移動機構と、
レーザ光の照射時に被加工材の加工点から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出するための光検出部と、
第1方向で検出した信号強度と第2方向で検出した信号強度との比率を演算するための信号処理部と、
レーザ加工時に、加工状態とともに前記比率を記憶するための記憶部と、
記憶部に登録した基準比率と、実際のレーザ加工時に取得した比率とを比較して、加工状態の良否判定を行う判定部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加工点から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出し、各信号強度の比率を演算することによって、加工状態における切断フロントの状況をモニタすることができ、加工状態の良否を確実に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】光センサの配置の一例を示す平面図である。
【図3】被加工材の加工点付近の様子を示す斜視図である。
【図4】図3に示す良好切断時と比べて焦点位置が変化したときの加工状態を示し、図4(a)は焦点位置が上方に変位した場合を示し、図4(b)は焦点位置が下方に変位した場合を示す。
【図5】光センサの信号強度変化を示すグラフである。
【図6】図3に示す良好切断時と比べて切断速度またはレーザ出力が変化したときの加工状態を示し、図6(a)は高い切断速度または低いレーザ出力の場合を示し、図6(b)は低い切断速度または高いレーザ出力の場合を示す。
【図7】本発明の実施の形態2を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態3を示す平面図である。
【図9】複数の光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態4を示す構成図である。
【図11】単一の光センサを用いた場合の加工方法の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態5を示す構成図である。
【図13】本発明の実施の形態6を示す構成図である。
【図14】2つの光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。
【図15】2つの光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態7を示す平面図である。
【図17】光センサを回転させる様子を示す説明図である。
【図18】光センサを回転させる様子を示す説明図である。
【図19】光センサの信号強度の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示す構成図である。レーザ加工装置は、レーザ発振器(不図示)から伝送光学系を経由して供給されるレーザ光2を被加工材1に向けて照射するための加工ヘッド3と、被加工材1を所望の方向に移動したり、所望の位置に位置決めするための加工ステージ5などで構成される。ここで、理解容易のため、加工ステージ5の法線方向をZ方向とし、Z方向の直交方向をX方向およびY方向とする。
【0020】
加工ヘッド3は、中空筒状の部材であり、内部にはレーザ光2を集光するための加工レンズ4が配置され、被加工材1の加工点6において所望の光スポットを形成する。加工ヘッド3の先端は、ノズル状に形成され、加工レンズ4によって集光されたレーザ光2が通過するとともに、ワークWに向けてアシストガスを供給する機能を有する。アシストガスとして、一般に酸素、空気、窒素、アルゴン等が使用され、蒸発気体の排除、ドロス付着防止などの役割を果たす。
【0021】
加工ステージ5は、X方向、Y方向、Z方向の変位を独立に駆動するXアクチュエータ、YアクチュエータおよびZアクチュエータと連結されており、各アクチュエータは、レーザ加工装置全体の動作を制御するコントローラ(不図示)によって制御される。レーザ加工の際、コントローラは、加工ステージ5の3次元位置だけでなく、例えば、ビームモード、ビーム出力、パルス条件、加工ガス種、加工ガス圧、ノズル径、焦点位置、ノズルワーク間距離などの各種パラメータを管理し制御する。
【0022】
本実施形態において、レーザ加工装置はさらに、光センサ11,12と、信号処理部21と、記憶部22と、判定部23などを備える。
【0023】
光センサ11,12は、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCDなどで構成され、レーザ光2の照射時に被加工材1の加工点6から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出する機能を有する。
【0024】
図2は、光センサ11,12の配置の一例を示す平面図である。光センサ11,12は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。光センサ11は、レーザ光の加工方向(図2では−X方向)に対して側方から加工点を望む方向、好ましくはYZ面内に配置される。一方、光センサ2は、レーザ光の加工方向に対して後方から加工点を望む方向、好ましくはZX面内に配置される。
【0025】
図1に戻って、信号処理部21は、光センサ11で検出した信号強度Iaと光センサ12で検出した信号強度Ibとの比率Rab(=Ia/Ib)を演算する機能を有する。
【0026】
記憶部22は、上述のコントローラとも接続されており、レーザ加工を行う際に、上述のような各種パラメータと、実際の加工状態(例えば、ガウジングやバーニングの発生状況、ドロス付着の有無、規格外の切断面粗さの有無など)と、信号強度の比率Rabとの対応関係を、データベース化して記憶する機能を有する。
【0027】
判定部23は、記憶部22に登録した基準比率RSと、実際のレーザ加工時に取得した比率Rabとを比較して、加工状態の良否判定を行う機能を有する。基準比率RSとして、一般に、良品と判定したときの信号強度の比率Rabが設定される。
【0028】
なお、信号処理部21、記憶部22および判定部23は、個別のハードウエアで構成してもよく、単一のハードウエア上で個別のソフトウエアとして実現してもよい。
【0029】
次に、動作について説明する。レーザ光2を被加工材1の加工点6に集光した状態で、加工ステージ5を相対移動させることによって、被加工材1を所望の加工形状に切断できる。このとき被加工材1には切断溝8が形成され、加工点6の近傍からは、熱輻射やプラズマ形成による光放射7が発生する。
【0030】
図2に示すように、被加工材1がX方向に移動する場合、X方向と平行な切断溝8が形成される。このとき光センサ11は、加工点6からの光放射7をYZ面内の斜め上方から検出して、信号強度Iaを出力する。一方、光センサ12は、加工点6からの光放射7をZX面内の後方斜め上方から検出して、信号強度Ibを出力する。
【0031】
図3は、被加工材1の加工点付近の様子を示す斜視図である。レーザ光2は、被加工材1の加工点に集光されており、切断溝8の先端には、切断フロント9と呼ばれる傾斜を有する面が形成される。切断フロント9においては被加工材1は溶融しており、被加工材1からはプルームと呼ばれる高温の噴出物が放出される。切断フロント9およびプルームはともに高温であるために熱輻射を行う。
【0032】
プルームは、被加工材1の表面より上方に位置して等方的な放射光を発生するため、光センサ11,12に到達する光量はほぼ同じレベルになる。一方、切断フロント9は、被加工材1の中に位置しているため、切断フロント9からの放射光の一部が加工溝8の壁面で遮られ、後方の光センサ12に到達する光量と比べて側方の光センサ11に到達する光量が少ない。
【0033】
図3は、良好切断時の切断フロント9を示しており、切断フロント9の傾斜角に応じて光センサ12に到達する光量が顕著に変化する。そのため光センサ12の信号強度Ibを監視することによって、切断条件による切断フロント9の変化を高感度に検出することが可能である。
【0034】
図4は、図3に示す良好切断時と比べて焦点位置が変化したときの加工状態を示し、図4(a)は焦点位置が上方に変位した場合を示し、図4(b)は焦点位置が下方に変位した場合を示している。図4(a)では、レーザ光2のビーム径が被加工材1の中で拡大しているため、入熱密度が低下するとともに、切断溝8の幅が増加し、必要除去量が増大することに伴って切断フロント9の傾斜角が緩やかになる。このとき切断フロント9の法線が光センサ12により接近するため、光センサ12の信号強度Ibは増加する。
【0035】
一方、図4(b)では、レーザ光2のビーム径が被加工材1の中で小さくなるため、入熱密度が上昇するとともに、切断溝8の幅は減少し、切断フロント9の傾斜角は急峻になる。このとき切断フロント9の法線は光センサ12から遠ざかるため、光センサ12の信号強度Ibは減少する。
【0036】
従って、レーザ光2の焦点位置が変化した場合、光センサ11の信号強度変化が比較的緩やかであることに対し、光センサ12の信号強度は大きく変化する。そのため光センサ11の信号強度Iaと光センサ12の信号強度Ibとを比較し、両者の比率Ia/Ibを演算することによって、レーザ光2の焦点位置の変化を監視することが可能である。
【0037】
図5は、光センサ11,12の信号強度変化を示すグラフである。例えば、良好切断時の光センサ11と光センサ12の信号強度の関係を取得し、両者が等しくなるように予めゲイン調整しておく(グラフ中央)。
【0038】
その後、レーザ光2の焦点位置が良好切断時より上方に変位した場合、図4(a)に対応して、光センサ12の信号強度Ibは光センサ11の信号強度Iaより大きくなる(Ia<Ib)。一方、レーザ光2の焦点位置が良好切断時より下方に変位した場合、図4(b)に対応して、光センサ12の信号強度Ibは光センサ11の信号強度Iaより小さくなる(Ia>Ib)。
【0039】
そこで、Ia=Ibとなるように、加工ステージ5のZ位置を調整することによって、最適な焦点位置の再設定が可能になる。
【0040】
これまでは、焦点位置により入熱密度が変化することで切断フロント9の傾斜角が変化し、その結果、光センサ11,12の信号強度比率Ia/Ibを演算することによって、レーザ光2の焦点位置の変化を監視・最適位置への再設定が可能であることを示した。入熱密度を変化させるものとして、焦点位置の他に、ビーム径、切断速度、レーザ出力などが挙げられるが、これらの変化についても光センサ11、12の信号強度比率Ia/Ibを演算することにより、同様に監視可能であることを以下に述べる。
【0041】
図6は、図3に示す良好切断時と比べて切断速度またはレーザ出力が変化したときの加工状態を示し、図6(a)は入熱密度が低い、即ち、高い切断速度または低いレーザ出力の場合を示し、図6(b)は入熱密度が高い、即ち、低い切断速度または高いレーザ出力の場合を示している。図6(a)では、加工点に供給される熱量が減少するため、切断溝8の幅は減少し、切断フロント9の傾斜角は緩やかになる。このとき切断フロント9の法線が光センサ12により接近するため、光センサ12の信号強度Ibは増加する。
【0042】
一方、図6(b)では、加工点に供給される熱量が増加するため、切断溝8の幅は増加し、切断フロント9の傾斜角は急峻になる。このとき切断フロント9の法線が光センサ12から遠ざかるため、光センサ12の信号強度Ibは減少する。
【0043】
従って、光センサ11の信号強度Iaと光センサ12の信号強度Ibとを比較し、両者の比率Ia/Ibを演算することによって、上述のような焦点位置変化だけでなく、加工速度の変化、レーザ出力の変化等も監視可能である。また、これらの監視結果に基づいて、最適な加工条件、即ち、焦点位置、ビーム径、加工速度、レーザ出力等の再設定が可能になる。
【0044】
本実施の形態で述べた光センサの信号強度比率Ia/Ibの演算だけでは、複数あるパラメータのうち、どのパラメータを優先的に調整すべきかは、被加工材の表面状態等を含めた他のパラメータが良好切断時から変化していないことが明らかな場合を除き一意的に決めることはできないため、信号強度比率Ia/Ibの変化の時間速度を加味して、予め設定した加工速度優先、加工品質優先、あるいは加工安定性優先等の各加工作業者毎の優先順位により定められる規則から、優先的に調整すべきパラメータを決定する。
【0045】
なお、本実施形態では、光センサ11,12の配置がレーザ光2の光軸に対して垂直な平面内にあって互いに直交している場合について説明したが、切断面から側面への放射光に対する後方への放射光の影響が小さければ、必ずしも直交していなくてもよい。側方の光センサ11の位置は、光センサ12が位置するX方向から30度〜150度の範囲が好ましく、より好ましくは60度〜120度の範囲であり、こうした配置でも加工状態の良/不良の判定が可能である。
【0046】
また本実施形態において、レーザ加工の際、加工ヘッド3は固定で、被加工材1が戴置された加工ステージ5が移動する場合を例として説明したが、両者を相対的に移動させる機構であればよい。例えば、加工ステージ5が固定で、加工ヘッド3を移動させる機構でもよく、あるいは加工ヘッド3及び加工ステージ5の両方を移動させる機構でもよい。
【0047】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1と同様な構成を有するが、光センサ11,12を加工ヘッド3の外側に配置している。この場合、加工レンズによる減衰等を受けることなく、加工点6からの光放射7を直接観測可能であるため、高感度の測定が可能となる。
【0048】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3を示す平面図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、4つの光センサ11〜14を使用している。
【0049】
実施の形態1及び2においては、2つの光センサ11,12を使用しているため、加工状態の良/不良を判定する際、いずれかの光センサがレーザ光の加工方向に対して後方に位置する場合に限定され、即ち、図2において−X方向と−Y方向の2つの加工方向に限定される。
【0050】
本実施形態では、図8に示すように、加工点を原点として、Y方向に光センサ11、X方向に光センサ12、−Y方向に光センサ13、−X方向に光センサ14をそれぞれ配置している。これにより加工状態の良/不良を判定する際、光センサがレーザ光の加工方向に対して後方に位置する条件が増加して、X方向、−X方向、Y方向、−Y方向の計4つの加工方向で加工状態を判定することができる。
【0051】
ここで、光センサの個数については、実施の形態1及び2では2個、本実施形態では4個の場合を例示したが、実用的には2つ以上あれば足りる。光センサの個数を増やすことにより、良否判定可能な切断方向を増やすことができるため、実際の切断において、実切断長に対するモニタ可能な割合を増やすことができ、より多くの切断方向に対して良否判定が可能になる。
【0052】
なお、複数の光センサを用いた場合、光センサごとに、個体差および設置ずれに起因して光強度に対する感度が異なる可能性があるため、何らかの補正が必要になる。
【0053】
図9は、複数の光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。4つの光センサ11〜14を、加工点を原点としてX方向、−X方向、Y方向、−Y方向にそれぞれ配置した場合、各光センサがレーザ光の加工方向に対して後方に位置するように、例えば、矩形状の切断経路を設定する。そして、切断経路の各辺ごとに、個々の光センサの信号強度が同一となるようにゲイン調整などで規格化を行うことによって、感度ばらつきを補正できる。
【0054】
光センサの感度は、一般に経時変化したり個体差があるため、上記補正のための切断加工を定期的に実施してもよく、あるいは通常の加工において各センサに対応する方向の切断となったときの信号強度をモニタすることによって、常時補正してもよい。
【0055】
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、単一の光センサ11を使用している。光センサ11は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。なお、実施の形態2と同様に、光センサ11を加工ヘッド3の外側に配置しても構わない。
【0056】
図11は、単一の光センサを用いた場合の加工方法の一例を示す説明図である。光センサ11は、加工点を原点としてX方向に配置している。最初に、−X方向に沿って切断加工を行う。このとき光センサ11は、レーザ光の加工方向に対して後方に位置しており、信号強度Ibを検出できる。次に、Y方向に沿って切断加工を行う。このとき光センサ11は、レーザ光の加工方向に対して側方に位置しており、信号強度Iaを検出できる。従って、信号処理部21は、単一の光センサ11からの信号強度Iaと信号強度Ibとの比率Rabを演算することが可能になる。
【0057】
本実施形態では、単一の光センサを用いた場合、単なる直線方向の切断だけでは良/不良の判定は不可であるが、切断方向を少なくとも2方向とすることで、単一のセンサからの信号強度比を用いて判定が可能である。そのため、センサごとの光強度に対する感度ばらつきを補正する必要がなく、センサの経時的な感度変化にも影響されず、高精度の良否判定が可能である。
【0058】
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、単一の光センサ11を回転機構に搭載している。光センサ11は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。なお、実施の形態2と同様に、光センサ11を加工ヘッド3の外側に配置しても構わない。
【0059】
加工ヘッド3には、レーザ光2の光軸の周りに回転可能に支持された回転ブロック32と、回転ブロック32を回転駆動するための駆動機構31とが設けられる。これにより光センサ11は、レーザ光2の光軸の周りの所望の角度に位置決め可能になる。
【0060】
例えば、−X方向に沿って切断加工を行う場合、光センサ11をX方向に位置決めすることによって、レーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ibが得られる。続いて、光センサ11をY方向に位置決めすることによって、レーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ib得られる。従って、信号処理部21は、単一の光センサ11からの信号強度Iaと信号強度Ibとの比率Rabを演算することが可能になる。
【0061】
本実施形態では、単一の光センサを用いた場合でも、任意の切断方向について良/不良の判定が可能になる。
【0062】
なお本実施形態では、光センサ11を搭載した回転ブロック32を回転させる場合を示したが、加工ヘッド3全体を光軸の周りに回転させる機構でも構わない。
【0063】
実施の形態6.
図13は、本発明の実施の形態6を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、2つの光センサ11,12を回転機構に搭載している。光センサ11,12は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。なお、実施の形態2と同様に、光センサ11,12を加工ヘッド3の外側に配置しても構わない。
【0064】
加工ヘッド3には、レーザ光2の光軸の周りに回転可能に支持された回転ブロック32と、回転ブロック32を回転駆動するための駆動機構31とが設けられる。これにより光センサ11,12は、レーザ光2の光軸の周りの所望の角度に位置決め可能になる。光センサ11,12は、光軸を中心として任意の角度で交差する方向に配置してもよいが、互いに直交する方向に配置することが好ましい。
【0065】
例えば、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向にそれぞれ位置決めした場合、−X方向に沿って切断加工を行うことによって、光センサ12はレーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ibが得られる。同時に、光センサ11はレーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ib得られる。従って、信号処理部21は、信号強度Iaと信号強度Ibとの比率Rabを演算できる。
【0066】
なお、複数の光センサを用いた場合、光センサごとに、個体差および設置ずれに起因して光強度に対する感度が異なる可能性があるため、何らかの補正が必要になる。
【0067】
図14および図15は、2つの光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。図14に示すように、−X方向に沿って切断加工を行う場合、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向にそれぞれ位置決めした状態で、加工点から放射光を検出する。次に、図15に示すように、回転ブロック32を90度時計回りに回転させて、光センサ11をX方向に、光センサ12を−Y方向にそれぞれ位置決めした状態で、加工点から放射光を検出する。そして、個々の光センサの信号強度が同一となるようにゲイン調整などで規格化を行うことによって、感度ばらつきを補正できる。
【0068】
本実施形態では、2つの光センサ11,12を回転可能に支持することによって、任意の切断方向について同時に2方向の信号強度が取得可能となり、常に加工の状態の良否判定が可能となる。
【0069】
実施の形態7.
図16は、本発明の実施の形態7を示す平面図である。レーザ加工装置は、実施の形態6と同様な構成を有するが、4つの光センサ11〜14を回転機構に搭載している。光センサ11〜14は、光軸を中心として任意の角度で交差する方向に配置してもよいが、互いに直交する方向に配置することが好ましい。
【0070】
実施の形態6では、2つの光センサ11,12を回転機構に搭載しているため、例えば、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向に配置した場合、図17で示すように、X方向と45度で交差する切断方向について監視するためには、回転ブロック32を最大で135度回転する必要がある。
【0071】
本実施形態では、4つの光センサ11〜14を回転機構に搭載しているため、例えば、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向に、光センサ13を−Y方向に、光センサ14を−X方向にそれぞれ配置した場合、図18で示すように、X方向と45度で交差する切断方向について監視するためには、回転ブロック32を45度回転するだけで足りることになる。従って、2つの光センサを用いた場合と比べて1/3の回転量で済むようになり、光センサの位置決めの高速化が図られ、より常時良否判定が可能となる。
【0072】
なお、回転機構に搭載する光センサの個数について、1個については実施の形態5で、2個については実施の形態6で、4個については本実施形態で説明したが、3個または5個以上の光センサを配置してもよい。その場合、光センサ間の角度を小さくできるため、より常時判定が可能になる。また、以上の説明では、光センサの配置を円周に対して等分する配置について示したが、切断方向が予め限定される場合であれば、これに対応してセンサ数を限定してもよく、この場合は、センサ数を削減することが可能であり、回路および制御が簡略化できる。
【0073】
実施の形態8.
図19は、光センサの信号強度の経時変化の一例を示すグラフである。縦軸は、光センサ11,12の信号強度Ia,Ibであり、横軸は、時間である。このグラフは、同一の加工条件において、装置導入からの時間経過とともに光センサ11の信号強度Iaが減少し、一方、光センサ12の信号強度Ibが増加している様子を示している。
【0074】
実施の形態1〜7に係るレーザ加工装置において、上述のように信号強度の比率Rab(=Ia/Ib)を監視することによって、レーザ光2の焦点位置を判定することが可能である。
【0075】
この判定された焦点位置と、装置導入時に同一の加工条件において予め測定された焦点位置とを比較することにより、レーザ加工装置における焦点位置の経時的移動を測定することができる。この焦点位置の移動は、主として加工レンズ4の汚れに起因しており、即ち、加工レンズ4でのレーザ光の吸収量が増加して、加工レンズ4の実質焦点距離が短くなることにより発生する。
【0076】
従って、実施の形態1〜7に係るレーザ加工装置において、適切な焦点位置の変化を測定することによって、加工レンズ4の汚れに起因した劣化に追随して焦点位置を変化させることが可能であるため、加工レンズ4の交換頻度を長くできる。また、加工レンズ4の汚れを推測して、加工レンズ4の交換時期を作業者に知らせることも可能である。
【0077】
さらに、加工レンズ4の汚れが進行した場合には、焦点位置移動だけではなく、ビーム形状も劣化するために、単に焦点位置の修正だけでは、良好な加工状態を維持することが困難となる。従って、焦点位置の修正量が、予め試験的に求められる汚れに相当する値にまで大きくなる前に、加工レンズの交換時期を検出することができるため、不良加工の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 被加工材、 2 レーザ光、 3 加工ヘッド、 4 加工レンズ、
5 加工ステージ、 6 加工点、7 光放射、 8 切断溝、 9 切断フロント、
11,12,13,14 光センサ、
21 信号処理部、 22 記憶部、 23 判定部、
31 駆動機構、 32 回転ブロック。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関し、特に、加工状態のモニタ機能を有するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いた切断加工では、一般に、レーザ発振器から発生したレーザビームを光学系により伝播させ、加工レンズにより被加工材に集光するとともに、同軸上に配置されたノズルにより加工ガスを供給させた状態で、レーザビームと被加工材を相対移動させることによって、切断加工が実施される。このとき調整すべき加工条件として、ビームモード、出力、パルス条件、加工ガス種、加工ガス圧、ノズル径、焦点位置、ノズルワーク間距離などの各種パラメータがある。作業者は、良好な切断加工を得るために、上記パラメータを適切に選択する必要がある。
【0003】
パラメータ選択は、被加工材の材質、厚さ、切断形状により異なるため、複雑で熟練を要する作業である。通常、被加工材の種類、加工品質に応じて予め決められた良好切断条件を選択することによって、通常の作業者でも良好な切断加工が得られるように、加工機メーカより加工条件表が提供される。
【0004】
加工条件が適切で無い場合には、良好切断面が得られないことになる。例えば、典型的には、完全な切断ができないガウジングや、入熱過多の場合のバーニングと呼ばれる現象が発生する。
【0005】
ガウジングやバーニングが発生すると、切断加工中に通常とは異なる強烈な発光現象が認められる。従って、作業者が目視で監視することにより、不良発生時に加工機を停止することで対応可能である。しかし、ガウジングやバーニングほど顕著ではないが、被加工材の裏面に付着するドロスや、切断面の面粗さが規定外といった加工不良においては、加工中の目視による判別では、微妙な差を判定することは困難である。この場合、切断加工終了後に、裏面または切断面を目視で確認することにより、良品/不良品の判別を行うことが必要になる。
【0006】
他のNC(数値制御)加工装置と同様にレーザ加工装置においても、省ランニングコスト、省人化が進められており、長時間の無人連続運転によるレーザ切断加工が実施されるようになってきている。しかしながら、長時間連続運転中に、加工レンズへのスパッタ付着など、なんらかの加工条件の修正が必要となる事態が発生した場合、途中で加工条件を修正しなければ、大量の不良切断部材が発生してしまう。その結果、材料の廃棄、再加工、もしくは、グラインダ等による手直しが必要となり、多大なロスが発生する可能性がある。従って、こうした無人運転の場合でも、加工済みの被加工材を作業者が目視確認することにより良品/不良品の判別を行うことが必要になりが、作業コストの増加を招く。
【0007】
こうした有人監視の問題に関して、レーザ加工装置を用いてレーザ切断を実施する際に、加工点の状況をモニタするために、音響センサ、光センサ、カメラ等を用いて切断加工の良/不良を判定し、加工装置を停止したり、より適正な加工条件に修正するための方法が種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、レーザ切断時に加工部から発生する光を光センサで検出し、検出光量レベルを、予め取得して、加工装置の制御装置のデータベースに登録済みの良好切断時の光量レベル範囲と比較することが提案されている。この検出光量が、良好切断時の光量レベル範囲外であれば、加工不良と判定し、前記データベースに登録済みの良好切断条件から切断条件が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−249560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、加工ヘッドに加工点からの光量をモニタするセンサを具備したために、ガウジングやバーニングなど、加工点からの光量が大きく変化するような加工不良は検出可能である。しかしながら、ドロス付着や、切断面粗さが規定範囲外といった場合には、加工点からの光量変化は微量であるため、良品/不良品の判別が困難である。
【0010】
また、実際の加工においては、被加工材のさび、汚れといった表面状態の違いにより、レーザビームの吸収率が変化することから、最適なレーザ出力を修正する必要がある。しかし、特許文献1における良好切断時のデータベースのみでは、どのように加工条件を選択してよいのかが不明である。
【0011】
さらに、実際にレーザ加工装置を連続運転する場合、加工レンズ、伝送光学系、発振器ミラーなどの光学部品への汚れ付着により、加工点でのビーム径、焦点位置がシフトしてしまうため、最適な加工条件を逐次修正していく必要がある。しかし、特許文献1における良好切断時のデータベースのみでは、どの加工条件を選択してよいのか不明である。
【0012】
従って、特許文献1のように、加工点からの光量を単一のセンサを用いてモニタするだけでは、レーザ出力またはビーム焦点位置のどちらを修正をすべきかが不明である。
【0013】
しかも、センサの光学窓の汚れまたはセンサ自身の感度変化によってもセンサ信号強度が変化してしまうため、最適加工条件を判定することは困難である。
【0014】
このように特許文献1に係る構成では、ガウジングやバーニングなどの加工不良は検出可能であっても、光量変化が小さい加工不良については検出が困難である。
【0015】
本発明の目的は、光量変化が小さい加工不良であっても検出可能であり、加工状態の良否を確実に判定できるレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光を被加工材に向けて照射するための加工ヘッドと、
被加工材を加工ヘッドに対して相対移動させるための移動機構と、
レーザ光の照射時に被加工材の加工点から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出するための光検出部と、
第1方向で検出した信号強度と第2方向で検出した信号強度との比率を演算するための信号処理部と、
レーザ加工時に、加工状態とともに前記比率を記憶するための記憶部と、
記憶部に登録した基準比率と、実際のレーザ加工時に取得した比率とを比較して、加工状態の良否判定を行う判定部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加工点から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出し、各信号強度の比率を演算することによって、加工状態における切断フロントの状況をモニタすることができ、加工状態の良否を確実に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】光センサの配置の一例を示す平面図である。
【図3】被加工材の加工点付近の様子を示す斜視図である。
【図4】図3に示す良好切断時と比べて焦点位置が変化したときの加工状態を示し、図4(a)は焦点位置が上方に変位した場合を示し、図4(b)は焦点位置が下方に変位した場合を示す。
【図5】光センサの信号強度変化を示すグラフである。
【図6】図3に示す良好切断時と比べて切断速度またはレーザ出力が変化したときの加工状態を示し、図6(a)は高い切断速度または低いレーザ出力の場合を示し、図6(b)は低い切断速度または高いレーザ出力の場合を示す。
【図7】本発明の実施の形態2を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態3を示す平面図である。
【図9】複数の光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態4を示す構成図である。
【図11】単一の光センサを用いた場合の加工方法の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態5を示す構成図である。
【図13】本発明の実施の形態6を示す構成図である。
【図14】2つの光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。
【図15】2つの光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態7を示す平面図である。
【図17】光センサを回転させる様子を示す説明図である。
【図18】光センサを回転させる様子を示す説明図である。
【図19】光センサの信号強度の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示す構成図である。レーザ加工装置は、レーザ発振器(不図示)から伝送光学系を経由して供給されるレーザ光2を被加工材1に向けて照射するための加工ヘッド3と、被加工材1を所望の方向に移動したり、所望の位置に位置決めするための加工ステージ5などで構成される。ここで、理解容易のため、加工ステージ5の法線方向をZ方向とし、Z方向の直交方向をX方向およびY方向とする。
【0020】
加工ヘッド3は、中空筒状の部材であり、内部にはレーザ光2を集光するための加工レンズ4が配置され、被加工材1の加工点6において所望の光スポットを形成する。加工ヘッド3の先端は、ノズル状に形成され、加工レンズ4によって集光されたレーザ光2が通過するとともに、ワークWに向けてアシストガスを供給する機能を有する。アシストガスとして、一般に酸素、空気、窒素、アルゴン等が使用され、蒸発気体の排除、ドロス付着防止などの役割を果たす。
【0021】
加工ステージ5は、X方向、Y方向、Z方向の変位を独立に駆動するXアクチュエータ、YアクチュエータおよびZアクチュエータと連結されており、各アクチュエータは、レーザ加工装置全体の動作を制御するコントローラ(不図示)によって制御される。レーザ加工の際、コントローラは、加工ステージ5の3次元位置だけでなく、例えば、ビームモード、ビーム出力、パルス条件、加工ガス種、加工ガス圧、ノズル径、焦点位置、ノズルワーク間距離などの各種パラメータを管理し制御する。
【0022】
本実施形態において、レーザ加工装置はさらに、光センサ11,12と、信号処理部21と、記憶部22と、判定部23などを備える。
【0023】
光センサ11,12は、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCDなどで構成され、レーザ光2の照射時に被加工材1の加工点6から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出する機能を有する。
【0024】
図2は、光センサ11,12の配置の一例を示す平面図である。光センサ11,12は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。光センサ11は、レーザ光の加工方向(図2では−X方向)に対して側方から加工点を望む方向、好ましくはYZ面内に配置される。一方、光センサ2は、レーザ光の加工方向に対して後方から加工点を望む方向、好ましくはZX面内に配置される。
【0025】
図1に戻って、信号処理部21は、光センサ11で検出した信号強度Iaと光センサ12で検出した信号強度Ibとの比率Rab(=Ia/Ib)を演算する機能を有する。
【0026】
記憶部22は、上述のコントローラとも接続されており、レーザ加工を行う際に、上述のような各種パラメータと、実際の加工状態(例えば、ガウジングやバーニングの発生状況、ドロス付着の有無、規格外の切断面粗さの有無など)と、信号強度の比率Rabとの対応関係を、データベース化して記憶する機能を有する。
【0027】
判定部23は、記憶部22に登録した基準比率RSと、実際のレーザ加工時に取得した比率Rabとを比較して、加工状態の良否判定を行う機能を有する。基準比率RSとして、一般に、良品と判定したときの信号強度の比率Rabが設定される。
【0028】
なお、信号処理部21、記憶部22および判定部23は、個別のハードウエアで構成してもよく、単一のハードウエア上で個別のソフトウエアとして実現してもよい。
【0029】
次に、動作について説明する。レーザ光2を被加工材1の加工点6に集光した状態で、加工ステージ5を相対移動させることによって、被加工材1を所望の加工形状に切断できる。このとき被加工材1には切断溝8が形成され、加工点6の近傍からは、熱輻射やプラズマ形成による光放射7が発生する。
【0030】
図2に示すように、被加工材1がX方向に移動する場合、X方向と平行な切断溝8が形成される。このとき光センサ11は、加工点6からの光放射7をYZ面内の斜め上方から検出して、信号強度Iaを出力する。一方、光センサ12は、加工点6からの光放射7をZX面内の後方斜め上方から検出して、信号強度Ibを出力する。
【0031】
図3は、被加工材1の加工点付近の様子を示す斜視図である。レーザ光2は、被加工材1の加工点に集光されており、切断溝8の先端には、切断フロント9と呼ばれる傾斜を有する面が形成される。切断フロント9においては被加工材1は溶融しており、被加工材1からはプルームと呼ばれる高温の噴出物が放出される。切断フロント9およびプルームはともに高温であるために熱輻射を行う。
【0032】
プルームは、被加工材1の表面より上方に位置して等方的な放射光を発生するため、光センサ11,12に到達する光量はほぼ同じレベルになる。一方、切断フロント9は、被加工材1の中に位置しているため、切断フロント9からの放射光の一部が加工溝8の壁面で遮られ、後方の光センサ12に到達する光量と比べて側方の光センサ11に到達する光量が少ない。
【0033】
図3は、良好切断時の切断フロント9を示しており、切断フロント9の傾斜角に応じて光センサ12に到達する光量が顕著に変化する。そのため光センサ12の信号強度Ibを監視することによって、切断条件による切断フロント9の変化を高感度に検出することが可能である。
【0034】
図4は、図3に示す良好切断時と比べて焦点位置が変化したときの加工状態を示し、図4(a)は焦点位置が上方に変位した場合を示し、図4(b)は焦点位置が下方に変位した場合を示している。図4(a)では、レーザ光2のビーム径が被加工材1の中で拡大しているため、入熱密度が低下するとともに、切断溝8の幅が増加し、必要除去量が増大することに伴って切断フロント9の傾斜角が緩やかになる。このとき切断フロント9の法線が光センサ12により接近するため、光センサ12の信号強度Ibは増加する。
【0035】
一方、図4(b)では、レーザ光2のビーム径が被加工材1の中で小さくなるため、入熱密度が上昇するとともに、切断溝8の幅は減少し、切断フロント9の傾斜角は急峻になる。このとき切断フロント9の法線は光センサ12から遠ざかるため、光センサ12の信号強度Ibは減少する。
【0036】
従って、レーザ光2の焦点位置が変化した場合、光センサ11の信号強度変化が比較的緩やかであることに対し、光センサ12の信号強度は大きく変化する。そのため光センサ11の信号強度Iaと光センサ12の信号強度Ibとを比較し、両者の比率Ia/Ibを演算することによって、レーザ光2の焦点位置の変化を監視することが可能である。
【0037】
図5は、光センサ11,12の信号強度変化を示すグラフである。例えば、良好切断時の光センサ11と光センサ12の信号強度の関係を取得し、両者が等しくなるように予めゲイン調整しておく(グラフ中央)。
【0038】
その後、レーザ光2の焦点位置が良好切断時より上方に変位した場合、図4(a)に対応して、光センサ12の信号強度Ibは光センサ11の信号強度Iaより大きくなる(Ia<Ib)。一方、レーザ光2の焦点位置が良好切断時より下方に変位した場合、図4(b)に対応して、光センサ12の信号強度Ibは光センサ11の信号強度Iaより小さくなる(Ia>Ib)。
【0039】
そこで、Ia=Ibとなるように、加工ステージ5のZ位置を調整することによって、最適な焦点位置の再設定が可能になる。
【0040】
これまでは、焦点位置により入熱密度が変化することで切断フロント9の傾斜角が変化し、その結果、光センサ11,12の信号強度比率Ia/Ibを演算することによって、レーザ光2の焦点位置の変化を監視・最適位置への再設定が可能であることを示した。入熱密度を変化させるものとして、焦点位置の他に、ビーム径、切断速度、レーザ出力などが挙げられるが、これらの変化についても光センサ11、12の信号強度比率Ia/Ibを演算することにより、同様に監視可能であることを以下に述べる。
【0041】
図6は、図3に示す良好切断時と比べて切断速度またはレーザ出力が変化したときの加工状態を示し、図6(a)は入熱密度が低い、即ち、高い切断速度または低いレーザ出力の場合を示し、図6(b)は入熱密度が高い、即ち、低い切断速度または高いレーザ出力の場合を示している。図6(a)では、加工点に供給される熱量が減少するため、切断溝8の幅は減少し、切断フロント9の傾斜角は緩やかになる。このとき切断フロント9の法線が光センサ12により接近するため、光センサ12の信号強度Ibは増加する。
【0042】
一方、図6(b)では、加工点に供給される熱量が増加するため、切断溝8の幅は増加し、切断フロント9の傾斜角は急峻になる。このとき切断フロント9の法線が光センサ12から遠ざかるため、光センサ12の信号強度Ibは減少する。
【0043】
従って、光センサ11の信号強度Iaと光センサ12の信号強度Ibとを比較し、両者の比率Ia/Ibを演算することによって、上述のような焦点位置変化だけでなく、加工速度の変化、レーザ出力の変化等も監視可能である。また、これらの監視結果に基づいて、最適な加工条件、即ち、焦点位置、ビーム径、加工速度、レーザ出力等の再設定が可能になる。
【0044】
本実施の形態で述べた光センサの信号強度比率Ia/Ibの演算だけでは、複数あるパラメータのうち、どのパラメータを優先的に調整すべきかは、被加工材の表面状態等を含めた他のパラメータが良好切断時から変化していないことが明らかな場合を除き一意的に決めることはできないため、信号強度比率Ia/Ibの変化の時間速度を加味して、予め設定した加工速度優先、加工品質優先、あるいは加工安定性優先等の各加工作業者毎の優先順位により定められる規則から、優先的に調整すべきパラメータを決定する。
【0045】
なお、本実施形態では、光センサ11,12の配置がレーザ光2の光軸に対して垂直な平面内にあって互いに直交している場合について説明したが、切断面から側面への放射光に対する後方への放射光の影響が小さければ、必ずしも直交していなくてもよい。側方の光センサ11の位置は、光センサ12が位置するX方向から30度〜150度の範囲が好ましく、より好ましくは60度〜120度の範囲であり、こうした配置でも加工状態の良/不良の判定が可能である。
【0046】
また本実施形態において、レーザ加工の際、加工ヘッド3は固定で、被加工材1が戴置された加工ステージ5が移動する場合を例として説明したが、両者を相対的に移動させる機構であればよい。例えば、加工ステージ5が固定で、加工ヘッド3を移動させる機構でもよく、あるいは加工ヘッド3及び加工ステージ5の両方を移動させる機構でもよい。
【0047】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1と同様な構成を有するが、光センサ11,12を加工ヘッド3の外側に配置している。この場合、加工レンズによる減衰等を受けることなく、加工点6からの光放射7を直接観測可能であるため、高感度の測定が可能となる。
【0048】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3を示す平面図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、4つの光センサ11〜14を使用している。
【0049】
実施の形態1及び2においては、2つの光センサ11,12を使用しているため、加工状態の良/不良を判定する際、いずれかの光センサがレーザ光の加工方向に対して後方に位置する場合に限定され、即ち、図2において−X方向と−Y方向の2つの加工方向に限定される。
【0050】
本実施形態では、図8に示すように、加工点を原点として、Y方向に光センサ11、X方向に光センサ12、−Y方向に光センサ13、−X方向に光センサ14をそれぞれ配置している。これにより加工状態の良/不良を判定する際、光センサがレーザ光の加工方向に対して後方に位置する条件が増加して、X方向、−X方向、Y方向、−Y方向の計4つの加工方向で加工状態を判定することができる。
【0051】
ここで、光センサの個数については、実施の形態1及び2では2個、本実施形態では4個の場合を例示したが、実用的には2つ以上あれば足りる。光センサの個数を増やすことにより、良否判定可能な切断方向を増やすことができるため、実際の切断において、実切断長に対するモニタ可能な割合を増やすことができ、より多くの切断方向に対して良否判定が可能になる。
【0052】
なお、複数の光センサを用いた場合、光センサごとに、個体差および設置ずれに起因して光強度に対する感度が異なる可能性があるため、何らかの補正が必要になる。
【0053】
図9は、複数の光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。4つの光センサ11〜14を、加工点を原点としてX方向、−X方向、Y方向、−Y方向にそれぞれ配置した場合、各光センサがレーザ光の加工方向に対して後方に位置するように、例えば、矩形状の切断経路を設定する。そして、切断経路の各辺ごとに、個々の光センサの信号強度が同一となるようにゲイン調整などで規格化を行うことによって、感度ばらつきを補正できる。
【0054】
光センサの感度は、一般に経時変化したり個体差があるため、上記補正のための切断加工を定期的に実施してもよく、あるいは通常の加工において各センサに対応する方向の切断となったときの信号強度をモニタすることによって、常時補正してもよい。
【0055】
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、単一の光センサ11を使用している。光センサ11は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。なお、実施の形態2と同様に、光センサ11を加工ヘッド3の外側に配置しても構わない。
【0056】
図11は、単一の光センサを用いた場合の加工方法の一例を示す説明図である。光センサ11は、加工点を原点としてX方向に配置している。最初に、−X方向に沿って切断加工を行う。このとき光センサ11は、レーザ光の加工方向に対して後方に位置しており、信号強度Ibを検出できる。次に、Y方向に沿って切断加工を行う。このとき光センサ11は、レーザ光の加工方向に対して側方に位置しており、信号強度Iaを検出できる。従って、信号処理部21は、単一の光センサ11からの信号強度Iaと信号強度Ibとの比率Rabを演算することが可能になる。
【0057】
本実施形態では、単一の光センサを用いた場合、単なる直線方向の切断だけでは良/不良の判定は不可であるが、切断方向を少なくとも2方向とすることで、単一のセンサからの信号強度比を用いて判定が可能である。そのため、センサごとの光強度に対する感度ばらつきを補正する必要がなく、センサの経時的な感度変化にも影響されず、高精度の良否判定が可能である。
【0058】
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、単一の光センサ11を回転機構に搭載している。光センサ11は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。なお、実施の形態2と同様に、光センサ11を加工ヘッド3の外側に配置しても構わない。
【0059】
加工ヘッド3には、レーザ光2の光軸の周りに回転可能に支持された回転ブロック32と、回転ブロック32を回転駆動するための駆動機構31とが設けられる。これにより光センサ11は、レーザ光2の光軸の周りの所望の角度に位置決め可能になる。
【0060】
例えば、−X方向に沿って切断加工を行う場合、光センサ11をX方向に位置決めすることによって、レーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ibが得られる。続いて、光センサ11をY方向に位置決めすることによって、レーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ib得られる。従って、信号処理部21は、単一の光センサ11からの信号強度Iaと信号強度Ibとの比率Rabを演算することが可能になる。
【0061】
本実施形態では、単一の光センサを用いた場合でも、任意の切断方向について良/不良の判定が可能になる。
【0062】
なお本実施形態では、光センサ11を搭載した回転ブロック32を回転させる場合を示したが、加工ヘッド3全体を光軸の周りに回転させる機構でも構わない。
【0063】
実施の形態6.
図13は、本発明の実施の形態6を示す構成図である。レーザ加工装置は、実施の形態1及び2と同様な構成を有するが、2つの光センサ11,12を回転機構に搭載している。光センサ11,12は、レーザ光2を妨害することなく、加工点6から放射され加工レンズ4を通過した光が受光可能なように設置される。なお、実施の形態2と同様に、光センサ11,12を加工ヘッド3の外側に配置しても構わない。
【0064】
加工ヘッド3には、レーザ光2の光軸の周りに回転可能に支持された回転ブロック32と、回転ブロック32を回転駆動するための駆動機構31とが設けられる。これにより光センサ11,12は、レーザ光2の光軸の周りの所望の角度に位置決め可能になる。光センサ11,12は、光軸を中心として任意の角度で交差する方向に配置してもよいが、互いに直交する方向に配置することが好ましい。
【0065】
例えば、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向にそれぞれ位置決めした場合、−X方向に沿って切断加工を行うことによって、光センサ12はレーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ibが得られる。同時に、光センサ11はレーザ光の加工方向に対して後方から検出可能になり、信号強度Ib得られる。従って、信号処理部21は、信号強度Iaと信号強度Ibとの比率Rabを演算できる。
【0066】
なお、複数の光センサを用いた場合、光センサごとに、個体差および設置ずれに起因して光強度に対する感度が異なる可能性があるため、何らかの補正が必要になる。
【0067】
図14および図15は、2つの光センサを用いた場合の補正方法の一例を示す説明図である。図14に示すように、−X方向に沿って切断加工を行う場合、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向にそれぞれ位置決めした状態で、加工点から放射光を検出する。次に、図15に示すように、回転ブロック32を90度時計回りに回転させて、光センサ11をX方向に、光センサ12を−Y方向にそれぞれ位置決めした状態で、加工点から放射光を検出する。そして、個々の光センサの信号強度が同一となるようにゲイン調整などで規格化を行うことによって、感度ばらつきを補正できる。
【0068】
本実施形態では、2つの光センサ11,12を回転可能に支持することによって、任意の切断方向について同時に2方向の信号強度が取得可能となり、常に加工の状態の良否判定が可能となる。
【0069】
実施の形態7.
図16は、本発明の実施の形態7を示す平面図である。レーザ加工装置は、実施の形態6と同様な構成を有するが、4つの光センサ11〜14を回転機構に搭載している。光センサ11〜14は、光軸を中心として任意の角度で交差する方向に配置してもよいが、互いに直交する方向に配置することが好ましい。
【0070】
実施の形態6では、2つの光センサ11,12を回転機構に搭載しているため、例えば、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向に配置した場合、図17で示すように、X方向と45度で交差する切断方向について監視するためには、回転ブロック32を最大で135度回転する必要がある。
【0071】
本実施形態では、4つの光センサ11〜14を回転機構に搭載しているため、例えば、光センサ11をY方向に、光センサ12をX方向に、光センサ13を−Y方向に、光センサ14を−X方向にそれぞれ配置した場合、図18で示すように、X方向と45度で交差する切断方向について監視するためには、回転ブロック32を45度回転するだけで足りることになる。従って、2つの光センサを用いた場合と比べて1/3の回転量で済むようになり、光センサの位置決めの高速化が図られ、より常時良否判定が可能となる。
【0072】
なお、回転機構に搭載する光センサの個数について、1個については実施の形態5で、2個については実施の形態6で、4個については本実施形態で説明したが、3個または5個以上の光センサを配置してもよい。その場合、光センサ間の角度を小さくできるため、より常時判定が可能になる。また、以上の説明では、光センサの配置を円周に対して等分する配置について示したが、切断方向が予め限定される場合であれば、これに対応してセンサ数を限定してもよく、この場合は、センサ数を削減することが可能であり、回路および制御が簡略化できる。
【0073】
実施の形態8.
図19は、光センサの信号強度の経時変化の一例を示すグラフである。縦軸は、光センサ11,12の信号強度Ia,Ibであり、横軸は、時間である。このグラフは、同一の加工条件において、装置導入からの時間経過とともに光センサ11の信号強度Iaが減少し、一方、光センサ12の信号強度Ibが増加している様子を示している。
【0074】
実施の形態1〜7に係るレーザ加工装置において、上述のように信号強度の比率Rab(=Ia/Ib)を監視することによって、レーザ光2の焦点位置を判定することが可能である。
【0075】
この判定された焦点位置と、装置導入時に同一の加工条件において予め測定された焦点位置とを比較することにより、レーザ加工装置における焦点位置の経時的移動を測定することができる。この焦点位置の移動は、主として加工レンズ4の汚れに起因しており、即ち、加工レンズ4でのレーザ光の吸収量が増加して、加工レンズ4の実質焦点距離が短くなることにより発生する。
【0076】
従って、実施の形態1〜7に係るレーザ加工装置において、適切な焦点位置の変化を測定することによって、加工レンズ4の汚れに起因した劣化に追随して焦点位置を変化させることが可能であるため、加工レンズ4の交換頻度を長くできる。また、加工レンズ4の汚れを推測して、加工レンズ4の交換時期を作業者に知らせることも可能である。
【0077】
さらに、加工レンズ4の汚れが進行した場合には、焦点位置移動だけではなく、ビーム形状も劣化するために、単に焦点位置の修正だけでは、良好な加工状態を維持することが困難となる。従って、焦点位置の修正量が、予め試験的に求められる汚れに相当する値にまで大きくなる前に、加工レンズの交換時期を検出することができるため、不良加工の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 被加工材、 2 レーザ光、 3 加工ヘッド、 4 加工レンズ、
5 加工ステージ、 6 加工点、7 光放射、 8 切断溝、 9 切断フロント、
11,12,13,14 光センサ、
21 信号処理部、 22 記憶部、 23 判定部、
31 駆動機構、 32 回転ブロック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を被加工材に向けて照射するための加工ヘッドと、
被加工材を加工ヘッドに対して相対移動させるための移動機構と、
レーザ光の照射時に被加工材の加工点から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出するための光検出部と、
第1方向で検出した信号強度と第2方向で検出した信号強度との比率を演算するための信号処理部と、
レーザ加工時に、加工状態とともに前記比率を記憶するための記憶部と、
記憶部に登録した基準比率と、実際のレーザ加工時に取得した比率とを比較して、加工状態の良否判定を行う判定部とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
光検出部は、レーザ光の光軸周りに配置された複数の光センサを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
第1方向は、レーザ光の加工方向に対して側方から加工点を望む方向であり、
第2方向は、レーザ光の加工方向に対して後方から加工点を望む方向であることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
光検出部は、単一の光センサを含み、
光検出の際、少なくとも2つの加工方向に沿ってレーザ加工を行うことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
光検出部は、レーザ光の光軸周りに移動可能な光センサを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
判定部は、信号強度の比率に基づいてレーザ加工時の焦点位置を判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
判定部は、信号強度の比率に基づいてレーザ加工時の適正レーザ出力を判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
判定部は、信号強度の比率に基づいてレーザ加工時の適正切断速度を判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
判定部が加工状態を不良と判定した場合、レーザ加工条件を変更することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
レーザ加工条件のうち、レーザ加工時の焦点位置を変更することを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
レーザ加工条件のうち、レーザ加工時のレーザ出力を変更することを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
レーザ加工条件のうち、レーザ加工時の切断速度を変更することを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
加工ヘッドは、レーザ光を集光するための加工レンズを含み、
変更した焦点位置と所定の基準値とのずれ量に基づいて、加工レンズの汚れを推測し、加工レンズの交換時期を作業者に知らせることを特徴とする請求項10記載のレーザ加工装置。
【請求項1】
レーザ光を被加工材に向けて照射するための加工ヘッドと、
被加工材を加工ヘッドに対して相対移動させるための移動機構と、
レーザ光の照射時に被加工材の加工点から放射される光の空間分布を、少なくとも2つの方向で検出するための光検出部と、
第1方向で検出した信号強度と第2方向で検出した信号強度との比率を演算するための信号処理部と、
レーザ加工時に、加工状態とともに前記比率を記憶するための記憶部と、
記憶部に登録した基準比率と、実際のレーザ加工時に取得した比率とを比較して、加工状態の良否判定を行う判定部とを備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
光検出部は、レーザ光の光軸周りに配置された複数の光センサを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
第1方向は、レーザ光の加工方向に対して側方から加工点を望む方向であり、
第2方向は、レーザ光の加工方向に対して後方から加工点を望む方向であることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
光検出部は、単一の光センサを含み、
光検出の際、少なくとも2つの加工方向に沿ってレーザ加工を行うことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
光検出部は、レーザ光の光軸周りに移動可能な光センサを含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
判定部は、信号強度の比率に基づいてレーザ加工時の焦点位置を判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
判定部は、信号強度の比率に基づいてレーザ加工時の適正レーザ出力を判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
判定部は、信号強度の比率に基づいてレーザ加工時の適正切断速度を判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
判定部が加工状態を不良と判定した場合、レーザ加工条件を変更することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
レーザ加工条件のうち、レーザ加工時の焦点位置を変更することを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
レーザ加工条件のうち、レーザ加工時のレーザ出力を変更することを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
レーザ加工条件のうち、レーザ加工時の切断速度を変更することを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
加工ヘッドは、レーザ光を集光するための加工レンズを含み、
変更した焦点位置と所定の基準値とのずれ量に基づいて、加工レンズの汚れを推測し、加工レンズの交換時期を作業者に知らせることを特徴とする請求項10記載のレーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−206806(P2011−206806A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76708(P2010−76708)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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