説明

レーザ加工装置

【課題】 加工対象物の幅が広くなっても、微細な加工を行うことができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】 送り機構が加工対象物を送り方向に送る。加工対象物の、被加工面とは反対側の表面に、支持装置が対向し、支持領域において、加工対象物の高さ方向の位置を規定する。加工対象物の被加工面から間隙を介して、遮光部材が配置されている。遮光部材に、送り方向と交差する方向に延在するスリットが設けられており、このスリットは、支持領域と少なくとも一部で重なる。ビーム断面の一部の領域が遮光部材のスリットと重なり、他の領域が遮光部材で遮光される状態で、レーザ照射装置が加工対象物にレーザビームを入射させ、スリットの延在する方向にレーザビームを走査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り方向に送られる帯状の加工対象物をレーザビームで走査しながらレーザ加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の加工対象物を長さ方向に送りながら、レーザビームを幅方向に走査してレーザ加工を行う技術が知られている。集光レンズでレーザビームを収束光線束にした後、ビーム走査器でレーザビームを、加工対象物の幅方向に走査する。加工対象物上でビームスポットが最小になるように、加工対象物と集光レンズとの間の光路長が設定される。
【0003】
ガルバノスキャナ等のビーム走査器でレーザビームを走査すると、ビーム走査器と加工対象物との間の光路長が変化する。集光レンズから加工対象物までの光路長を一定に維持するために、ビーム走査器による走査に同期させて、集光レンズを光軸方向に移動させる。これにより、幅方向への1走査の走査開始から走査終了まで、加工対象物上でビームスポットが最小になる状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−320952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工対象物の幅が広くなると、加工対象物からビーム走査器までの距離を長くしなければならない。そうすると、集光レンズから加工対象物までの光路長が長くなるため、ビームスポットを小さく絞ることが困難になる。このため、従来の方法は、微細な加工には適さない。
【0006】
本発明の目的は、加工対象物の幅が広くなっても、微細な加工を行うことができるレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
加工対象物を送り方向に送る送り機構と、
前記加工対象物の、被加工面とは反対側の表面に対向し、支持領域において、前記加工対象物の高さ方向の位置を規定する支持装置と、
前記加工対象物の前記被加工面から間隙を介して配置され、前記送り方向と交差する方向に延在するスリットが設けられており、該スリットは、前記支持領域と少なくとも一部で重なる遮光部材と、
ビーム断面の一部の領域が前記遮光部材の前記スリットと重なり、他の領域が前記遮光部材で遮光される状態で、前記加工対象物にレーザビームを入射させ、前記スリットの延在する方向に該レーザビームを走査するレーザ照射装置と
を有するレーザ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
レーザビームの一部が遮光部材で遮られる、スリットを通過したレーザビームのみが加工対象物に入射する。このため、ビームスポットがスリット幅より大きくても、スリット幅に対応した微細な加工を行うことができる。支持装置により、加工対象物の高さ方向の位置が規定されるため、遮光部材と加工対象物との間隔の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例によるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】実施例によるレーザ加工装置の概略図である。
【図3】実施例によるレーザ加工装置の遮光部材、加工対象物、及び支持ローラの平面図である。
【図4】実施例によるレーザ加工装置の支持ローラ、遮光部材、加工対象物、及びレーザビームの位置関係を示す図である。
【図5】(5A)は、加工対象物の断面図であり、(5B)は、加工後の加工対象物の平面図である。
【図6】(6A)は、他の実施例によるレーザ加工装置の光学系の概略図であり、(6B)は、ガルバノスキャナと加工対象物の位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、実施例によるレーザ加工装置の概略図を示す。理解を容易にするために、xyz直交座標系を定義する。鉛直上向きを、z軸の正の向きとする。
【0011】
送り機構10が、フィルム状の加工対象物30をy軸の正の方向に送る。送り機構10は、繰出しローラ11、巻取りローラ12、中間ローラ13、14、15、16、及びモータ17を含む。フィルム状の加工前の加工対象物30が、繰出しローラ11に巻かれている。繰出しローラ11から繰り出された加工対象物30が、中間ローラ13〜16を通過した後、巻取りローラ12に巻取られる。モータ17が巻取りローラ12を回転させる。繰出しローラ11、巻取りローラ12、及び中間ローラ13〜16の回転軸は、x軸に平行である。
【0012】
中間ローラ14と15との間において、加工対象物30はy軸の正の方向に送られる。中間ローラ14と15との間の加工対象物30の上側の表面(z軸の正の向きを向く表面)が被加工面である。支持ローラ18が、中間ローラ14と15との間において、加工対象物30の背面(被加工面とは反対側の表面)に接する。支持ローラ18の回転軸も、x軸に平行である。支持ローラ18が加工対象物30に接触する領域は、送り方向(y軸方向)に直交する方向(x軸方向)に長い。この領域を「支持領域19」ということとする。
【0013】
中間ローラ14、15の円筒状の側面の最高点は同一の高さに設定されており、支持ローラ18の円筒状の側面の最高点は、中間ローラ14、15の側面の最高点よりも高い位置に配置される。繰出しローラ11によって、加工対象物30にバックテンションが印加される。支持ローラ18に接している加工対象物30がy軸の正の方向に送られると、加工対象物30と支持ローラ18との接触面の摩擦力により、支持ローラ18が回転する。加工対象物30を送り方向に送ると、ローラとローラとの間において、加工対象物30がばたつく場合がある。実施例では、支持領域19において、加工対象物30の高さ方向の位置が支持ローラ18によって規定される。
【0014】
中間ローラ14と15との間に、開始終了点検出器22が配置されている。開始終了点検出器22には、例えばレーザセンサ、フォトセンサ等が用いられる。加工対象物30に、開始点及び終了点を示す標識が付されている。開始終了点検出器22は、加工対象物30に付された標識を検出し、検出結果を制御装置23に送信する。
【0015】
支持ローラ18の上方に、加工対象物30から間隙を隔てて遮光部材20が配置されている。遮光部材20に、スリット21が形成されている。スリット21は、送り方向(y軸方向)と交差する方向に延在し、少なくとも一部が支持領域19と重なる。
【0016】
集光レンズ25で収束光線束とされたパルスレーザビームが、ガルバノスキャナ(ビーム走査器)27で反射され、スリット21を通過して加工対象物30に入射する。遮光部材20が配置された位置において、レーザビームのビームスポットはスリット21の幅よりも大きい。このため、ビーム断面の一部の領域がスリット21と重なり、他の領域は、遮光部材20で遮光される。ガルバノスキャナ27は、スリット21が延在する方向にレーザビームを走査する。加工対象物30の表面において、時間軸上で隣り合う2つのレーザパルスのビーム断面が部分的に重なるように、走査速度及びパルス周波数が選択される。
【0017】
図2に、実施例によるレーザ加工装置の、y軸方向に平行な視線で見た概略図を示す。支持ローラ18の側面の、上方を向く領域に加工対象物30が接触している。支持ローラ18の上方に遮光部材20が配置されている。遮光部材20の一端が、支軸41により支持されている。遮光部材20は、支軸41を回転中心として、xy面内で回転可能である。遮光部材20の他方の端部に、姿勢調節装置42が配置されている。姿勢調節装置42は、制御装置23からの制御を受けて、遮光部材20の回転方向の姿勢を変化させる。姿勢調節装置42は、例えば円弧状のレール及び駆動コイルにより構成される。遮光部材20の、回転方向の姿勢が変化すると、送り方向(y軸方向)と、スリット21の延在する方向とのなす角度が変化する。
【0018】
回転速度検出器43が、支持ローラ18の回転速度を検出し、検出結果を制御装置23に送出する。回転速度検出器43には、例えばパルスカウンタが用いられる。
【0019】
レーザ光源32が、パルスレーザビームを出射する。レーザ光源32から出射されたパルスレーザビームは、アッテネータ33、ビームエキスパンダ34、及び集光レンズ25を通過して、ガルバノスキャナ27に入射する。ガルバノスキャナ27は、ガルバノドライバ28から制御されることにより、パルスレーザビームをx軸方向に走査する。x軸方向に走査されたパルスレーザビームは、スリット21を透過して、加工対象物30に入射する。
【0020】
変位機構35が、集光レンズ25を光軸方向に変位させる。集光レンズ25を変位させることにより、ガルバノスキャナ27でレーザビームが走査されても、集光レンズ25から加工対象物30の入射位置までの光路長が、集光レンズ25の焦点距離と等しくなるように維持される。これにより、加工対象物30の表面において、ビームスポットが最小になる。
【0021】
レーザ光源32、変位機構35、及びガルバノドライバ28は、制御装置23により制御される。
【0022】
図3に、実施例によるレーザ加工装置の遮光部材20、支持ローラ18、及び加工対象物30の平面図を示す。遮光部材20に形成されたスリット21が、加工対象物30と交差している。姿勢調節機構42が遮光部材20にトルクを印加する。遮光部材20は、姿勢調節機構42から与えられたトルクにより、支軸41を中心として回転し、その姿勢を変化させる。姿勢が変化した後の遮光部材を、破線20aで示す。遮光部材20の姿勢が変化すると、送り方向に直交する方向(x軸方向)と、スリット21が延在する方向とのなす角度が変化する。スリット21の延在する方向がx軸方向からずれた場合でも、平面視において、スリット21と加工対象物30とが重なる領域は、支持領域19の内部に含まれ、支持領域19の外側までは広がらない。
【0023】
ガルバノスキャナ27は、レーザビームをスリット21に沿って走査する。スリット21の延在する方向がx軸からずれている場合には、レーザビームをx軸方向のみならずy軸方向にも走査する必要がある。y軸方向の走査のために、ガルバノスキャナ27として、x軸走査用及びy軸走査用の2つの揺動ミラーを持つものを用いる。なお、スリット21の延在する方向がx軸からずれている場合でも、走査の軌跡は直線である。従って、ガルバノスキャナ27として、1つの揺動ミラーを持つものを用い、遮光部材20の姿勢の変化に合わせて、揺動ミラーの回転中心軸の方向を変化させてもよい。
【0024】
レーザビームを、スリット21に沿って走査すると、加工対象物30に、幅方向に延在するレーザビームの加工痕が残る。加工対象物30の送りを停止させた状態でレーザビームの走査を行う場合には、スリット21の延在する方向と、送り方向(y軸方向)とを直交させる。これにより、加工対象物30に、送り方向と直交する加工痕36を形成することができる。
【0025】
加工対象物30の送りを停止させることなく、y軸方向に送りながら、レーザビームを走査する場合には、スリット21の延在する方向を、x軸方向からずらす。レーザビームを、x軸の正の方向に走査する場合には、スリット21の、x軸の正の側の端部が、負の側の端部よりy軸の正の側に位置するように、遮光部材20の姿勢を調節する。加工対象物30の送り速度、及びレーザビームの走査速度に基づいて、スリット21の延在する方向と、x軸方向とのなす角度を調節することにより、x軸方向に平行な加工痕36を形成することができる。
【0026】
次に、x軸方向に平行な加工痕36を形成するための、遮光部材20の姿勢調節方法の一具体例について説明する。回転速度検出器43(図2)により支持ローラ18の回転速度を検出する。制御装置23は、支持ローラ18の回転速度から、支持ローラ18の側面の周方向の速度を算出する。この周方向の速度は、加工対象物30の送り速度に一致する。さらに、制御装置23は、レーザビームの走査速度が一定になるように、ガルバノスキャナ27を制御する。
【0027】
加工対象物30の送り速度と、レーザビームの走査速度とから、スリット21の延在する方向とx軸とのなす角度を算出することができる。制御装置23は、スリット21の延在する方向とx軸とのなす角度が、算出された角度になるように、姿勢調節機構42を制御する。
【0028】
図4に、図3の一点鎖線4−4における断面図(すなわち、レーザビームのx軸の正の向きへの振れ角が最大のの位置の断面図)を示す。支持ローラ18の円筒状側面のうち支持領域19に、加工対象物30が接触している。支持領域19の上方に遮光部材20が配置されている。レーザビームLBの中心近傍の光線束が、スリット21を通過して加工対象物30に入射する。破線20aは、図3において、スリット21の延在する方向がx軸方向からずれた状態の遮光部材に対応する。
【0029】
図4に示した遮光部材20のスリット21を通過したレーザビームの中心光線CRは、図2において、x軸の正の向きへの振れ角が最大のときの中心光線に対応する。このため、中心光線CRは、z軸に平行ではなく、z軸からx軸方向に傾斜している。中心光線CRは、支持ローラ18の側面のうち最も高い位置に入射する。
【0030】
集光レンズ25(図2)の焦点距離Lを2m、集光レンズ25の出側のビーム径ρを10mmとすると、集光レンズ25の開口数NAは、0.005になる。レーザビームの波長λを355nmとすると、レーザビームのスポットサイズが最小の位置におけるビーム径SPは、0.6×λ/NAで表され、約43μmになる。スリット21の幅は、ビーム径SPよりも狭く、例えば20μmである。レーザビームの焦点深度DFは、λ/NAで表され、約14mmになる。
【0031】
遮光部材20を配置することにより、ビームスポットの最小寸法SPよりも微細な加工を行うことができる。また、レーザ加工時に加工対象物30から飛散して、スリット21を通過し、遮光部材20の上方まで達した飛散物が、加工対象物30に再付着することを防止することができる。
【0032】
加工対象物30の幅(x軸方向の寸法)を1mとすると、レーザビームの振れ角は、高々14°程度である。遮光部材20と加工対象物30との間隔の最小値をGとすると、中心光線CRの光路長は、間隔Gの高々1.03倍である。
【0033】
遮光部材20の姿勢が変化して、遮光部材20の端部が破線20aの位置まで移動した場合を考える。中心光線CRaが入射する位置は、中心光線CRが入射する位置よりも高さLだけ低くなる。このため遮光部材20から、中心光線CRaの入射位置までの間隔が広がり、G+Lになる。中心光線CRaは、z軸からx軸方向に傾斜するのみではなく、y軸方向へも傾斜する。ただし、y軸方向の傾斜は極僅かである。y軸方向への傾斜を無視すると、中心光線CRaの光路長は、G+Lの高々1.03倍である。
【0034】
遮光部材20及び加工対象物30は、レーザビームの焦点深度DF内に収まるように位置決めされている。
【0035】
一例として、支持ローラ18の半径rを100mm、加工対象物30の送り速度を100mm/s、レーザビームの走査速度を10m/sとする。支持ローラ18の円筒状側面の周方向の速度が、加工対象物30の送り速度と同一になるため、支持ローラ18の回転速度RSは、約1.05rad/sになる。走査すべき幅を1mとすると、1走査に必要な時間は0.1sであるため、1走査期間中の支持ローラ18の回転角度αは、約0.105radになる。図4に示した高低差Lは、約0.55mmになる。
【0036】
間隔Gが1mmであるとき、中心光線CRaの光路長1.03×(G+L)は、約1.6mmである。この値は、レーザビームの焦点深度DFに比べて十分小さい。従って、遮光部材20及び加工対象物30を、レーザビームの焦点深度DFの範囲内に配置することが可能である。
【0037】
支持ローラ18が、支持領域19において加工対象物30の高さ方向の位置を規定する。このため、加工対象物30と遮光部材20との間隔の変動を抑制することができる。さらに、加工対象物30の被加工点が、焦点深度DFの範囲から外れてしまうことを防止することができる。
【0038】
図5Aに、加工対象物30の断面図を示す。ポリイミド等の樹脂ベースフィルム60の表面に、銀等の金属膜61、アモルファスシリコン膜62、透明電極膜63がこの順番に積層されている。樹脂ベースフィルム60の反対側の表面に、銀等の金属膜64が形成されている。樹脂ベースフィルム60、金属膜61、アモルファスシリコン膜62、透明電極膜63、及び反対側の金属膜64の厚さは、例えば、それぞれ50μm、300nm、500nm、70nm、及び300nmである。透明電極膜63にレーザビームを入射させて、透明電極膜63、アモルファスシリコン膜62、及び金属膜61を除去することにより、樹脂ベースフィルム60まで達する溝65を形成する。
【0039】
図5Bに、溝65の平面図を示す。加工対象物30の表面に、幅方向に延在する複数の溝65が形成される。このレーザ加工は、上記実施例によるレーザ加工装置を用いて行われる。遮光部材20(図1)に設けられたスリット21を介してレーザ加工が行われるため、微細な溝65を形成することができる。同様に、反対側の金属膜64に微細な溝を形成することも可能である。
【0040】
なお、加工対象物30は、図5Aに示した積層構造を持つものに限らない。帯状で、かつ支持ローラ18の円筒状側面に沿って変形する柔軟性を持つものであれば、実施例によるレーザ加工装置で加工することが可能である。
【0041】
図6Aに、他の実施例によるレーザ加工装置の概略図を示す。以下の説明では、図1〜図4に示した実施例との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。レーザ光源32から出射されたレーザビームが、アッテネータ33を通過し、ポーラライザ50に入射する。ポーラライザ50を通過したレーザビームがビームスプリッタ51に入射する。ポーラライザ50は、制御装置23からの制御により、レーザビームの偏光方向を、ビームスプリッタ51に対してP偏光成分またはS偏光成分になるように変化させる。
【0042】
ビームスプリッタ51は、レーザビームのP偏光成分を直進させ、S偏光成分を反射する。ビームスプリッタ51を直進したレーザビームは、ビームエキスパンダ34A、集光レンズ25Aを経由して、ガルバノスキャナ27Aに入射する。ビームスプリッタ51で反射されたレーザビームは、反射鏡52で反射され、ビームエキスパンダ34B、集光レンズ25Bを経由して、ガルバノスキャナ27Bに入射する。ガルバノスキャナ27A及び27Bは、それぞれガルバノドライバ28A及び28Bにより駆動される。ガルバノドライバ28A及び28Bは、制御装置23により制御される。
【0043】
ポーラライザ50でレーザビームの偏光方向を制御することにより、レーザビームを、ガルバノスキャナ27Aを含む第1の経路55A及びガルバノスキャナ27Bを含む第2の経路55Bのいずれかに振り分けることができる。このように、ポーラライザ50及びビームエキスパンダ51は、ビーム振分器として作用する。
【0044】
図6Bに示すように、第1の経路55Aに振り分けられたレーザビームは、ガルバノスキャナ27Aで走査された後、加工対象物30に入射する。第2の経路55Bに振り分けられたレーザビームは、ガルバノスキャナ27Bで走査された後、加工対象物30に入射する。
【0045】
ガルバノスキャナ27Aによる走査範囲、及びガルバノスキャナ27Bによる走査範囲の各々は、x軸方向に関して走査すべき範囲の一部分であり、両者を合成した領域は、走査開始点から走査終了点まで連続する。両者の接続部分においては、相互に部分的に重なる。
【0046】
加工対象物30が静止した状態で、レーザビームを走査する場合には、ガルバノスキャナ27Aによる走査可能範囲と、もう一方のガルバノスキャナ27Bによる走査可能範囲とが重なる領域において、ビームスポットのオーバラップ率を制御すればよい。両者の走査のタイミング及び走査方向は、同期していなくてもよい。
【0047】
加工対象物30が送られている状態で走査を行う場合には、走査開始点から走査終了点まで、加工対象物30上において、レーザビームの入射位置の軌跡が、スリット21に沿って連続するように、ポーラライザ50及びガルバノスキャナ27A、27Bが制御される。具体的には、ガルバノスキャナ27Aによる走査からガルバノスキャナ27Bによる走査に切り替わる時点で、ビームスポットの走査速度が変化しないように、走査が行われる。
【0048】
1つのガルバノスキャナを用いる場合には、加工対象物30の幅が広くなると、加工対象物30からガルバノスキャナ27までの高さを高くしなければならない。これに合わせて、集光レンズ25の焦点距離を長くしなければならない。焦点距離が長くなると、ビームスポットを小さく絞り込むことが困難になるため、所望のパルスエネルギ密度を確保するために、高出力をレーザ光源を用いなければならない。
【0049】
図6A及び図6Bに示した実施例では、加工対象物30の幅が広くなっても、加工対象物30からガルバノスキャナ27A、27Bまでの高さの増加を抑制することができる。このため、集光レンズ25A、25Bとして、焦点距離の短いものを用いることができる。
【0050】
図6A、図6Bでは、レーザビームを2つの経路に振り分ける例を示したが、3つ以上の経路に振り分けてもよい。
【0051】
上記実施例では、支持ローラ18により、支持領域19において加工対象物30を支持したが、他の構造物によって加工対象物30を支持してもよい。例えば、平面状の支持面から気体を吐出及び吸引して、支持面上に加工対象物を非接触で支持する支持装置を用いてもよい。この支持装置は、例えば特許第4426276号公報、特開2006−273576号公報等に開示されている。
【0052】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0053】
10 送り機構
11 繰出しローラ
12 巻取りローラ
13、114、15、16 中間ローラ
18 支持ローラ
19 支持領域
20 遮光部材
21 スリット
22 開始終了点検出器
23 制御装置
25、25A、25B 集光レンズ
27、27A、27B ガルバノスキャナ
28、28A、28B ガルバノドライバ
30 加工対象物
32 レーザ光源
33 アッテネータ
34、34A、34B ビームエキスパンダ
35 変位機構
36 加工痕
41 支軸
42 姿勢調節機構
43 回転速度検出器
50 ポーラライザ
51 ビームスプリッタ
52 反射鏡
55A 第1の経路
55B 第2の経路
60 樹脂ベースフィルム
61 金属膜
62 アモルファスシリコン膜
63 透明電極膜
64 金属膜
65 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の加工対象物を送り方向に送る送り機構と、
前記加工対象物の、被加工面とは反対側の表面に対向し、支持領域において、前記加工対象物の高さ方向の位置を規定する支持装置と、
前記加工対象物の前記被加工面から間隙を介して配置され、前記送り方向と交差する方向に延在するスリットが設けられており、該スリットは、前記支持領域と少なくとも一部で重なる遮光部材と、
ビーム断面の一部の領域が前記遮光部材の前記スリットと重なり、他の領域が前記遮光部材で遮光される状態で、前記加工対象物にレーザビームを入射させ、前記スリットの延在する方向に該レーザビームを走査するレーザ照射装置と
を有するレーザ加工装置。
【請求項2】
前記支持装置は、前記加工対象物の、前記被加工面とは反対側の表面に、前記支持領域において接触し、前記加工対象物からの作用により送り方向に回転する支持ローラである請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
さらに、前記送り方向と、前記スリットの延在する方向との角度が変化するように、前記遮光部材の姿勢を変化させる姿勢可変機能を有する請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
さらに、前記レーザ照射装置によるレーザビームの走査、及び前記遮光部材の姿勢を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記加工対象物の送り速度、及び前記レーザビームの走査速度に基づいて、前記加工対象物上でレーザビームの入射位置の軌跡が前記送り方向と直交するように、前記遮光部材の姿勢を調整する請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記スリットが、長さ方向に関して複数の単位走査領域に区分されており、
前記レーザ照射装置は、
1台のレーザ発振器と、
レーザビームを走査する複数のビーム走査器と、
前記レーザ発振器から出射されたレーザビームを、前記複数のビーム走査器から選択された1台のビーム走査器に振り分けるビーム振分器と
を有し、
前記ビーム走査器の各々の走査可能範囲は、前記スリットの長さ方向の走査開始点から走査終了点までの間の一部分のみであり、前記複数のビーム走査器の走査可能範囲を合成すると、前記走査開始点から前記走査終了点まで連続し、
前記制御装置は、前記加工対象物が前記送り方向に送られている状態で前記レーザビームを照射し、前記スリットの走査開始点から走査終了点まで、前記加工対象物上において、レーザビームの入射位置の軌跡が連続するように、前記ビーム振分器及び前記ビーム走査器を制御する請求項3または4に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106252(P2012−106252A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255539(P2010−255539)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】