説明

レーザ加工装置

【解決手段】 レーザ加工装置1は、第1噴射孔14aを有する第1噴射ノズル14と、第1噴射ノズルよりも被加工物2側に設けられた第2噴射孔31aを有する第2噴射ノズル15と、上記第1噴射ノズルに液体を供給する第1液体通路17Aと、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に形成されて上記第2噴射ノズルに液体を供給する第2液体通路17Bとを備えている。
上記第1噴射孔は被加工物に向けて縮径するテーパ形状を有し、上記第2噴射孔は上記第1噴射孔の被加工物側の開口部よりも大径に形成されている。
そして上記第2液体通路の液体は、上記第2噴射孔に向けてレーザ光Lの光軸に直交する方向に流動した後、上記第2噴射孔において光軸と平行な方向に折れ曲がり、上記第1噴射孔より噴射された液体を囲繞して噴射される。
【効果】 アライメント調整が容易で、かつ液柱の形状を保つことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置に関し、詳しくは液体供給手段から供給された液体を液体通路を介して噴射孔から液柱にして外部に噴射させるとともに、集光レンズによって上記液柱にレーザ光を導光して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴射孔を有する噴射ノズルと、高圧の液体を供給する液体供給手段と、上記液体供給手段と上記噴射ノズルの噴射孔とを連通させる液体通路と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズとを備え、上記液体供給手段から供給された液体を液体通路を介して噴射孔から液柱にして外部に噴射させるとともに、集光レンズによって上記液柱にレーザ光を導光して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置が知られている。
このようなレーザ加工装置として、上記噴射ノズルの噴射孔を被加工物に向けて縮径させたテーパ形状としたものが知られ、このテーパ形状の内面にレーザ光を反射させて上記液柱に導光することで、レーザ光を液柱に導光する際のアライメント調整を容易にしている(特許文献1)。
この他のレーザ加工装置として、上記液体通路を流通する液体が噴射孔に向けてレーザ光の光軸に直交する方向に流動した後、該噴射孔においてレーザ光の光軸と平行な方向に折れ曲がるようにしたものが知られ、上記噴射孔より噴射される液柱の周囲にエアクッションを形成することにより、安定した液柱を噴射するようになっている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−255768号公報
【特許文献2】特許第3680864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のレーザ加工装置の場合、噴射孔より噴射された液柱が、該液柱の周囲に形成される気流等によって乱れ、安定した液柱が得にくいという問題があった。
また特許文献2のレーザ加工装置の場合、レーザ光を上記液柱の内部に導光する際、レーザ光が上記噴射孔における集光レンズ側の平坦面に照射されて噴射ノズルを損傷させ、またこの平坦面で反射したレーザ光がレーザ加工装置内部を損傷させるという問題があることから、アライメントの調整を精密に行う必要があり、アライメント調整が煩雑になるという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明はアライメント調整が容易で、かつ安定した液柱を噴射することが可能なレーザ加工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明にかかるレーザ加工装置は、噴射孔を有する噴射ノズルと、液体を供給する液体供給手段と、上記液体供給手段の液体を上記噴射ノズルの噴射孔へと流通させる液体通路と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズとを備え、
上記液体供給手段が供給した液体を上記噴射ノズルの噴射孔から液柱にして噴射するとともに、上記集光レンズが上記液柱にレーザ光を導光することで被加工物の加工を行うレーザ加工装置において、
上記噴射ノズルを、第1噴射孔を有する第1噴射ノズルと、第1噴射ノズルよりも被加工物側に設けられるとともに上記第1噴射孔と同軸上に設けられた第2噴射孔を有する第2噴射ノズルとから構成し、
上記第1噴射孔は被加工物に向けて縮径するとともにその内面でレーザ光を反射させて上記液柱の内部に導光するテーパ形状を有し、上記第2噴射孔を上記第1噴射孔の被加工物側の開口部よりも大径に形成し、
上記液体通路は、上記第1噴射ノズルに液体を供給する第1液体通路と、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に形成されて上記第2噴射ノズルに液体を供給する第2液体通路とを備え、
上記第2液体通路を流通する液体は、上記第2噴射ノズルの第2噴射孔に向けてレーザ光の光軸に直交する方向に流動するとともに、上記第2噴射孔においてレーザ光の光軸と交差する方向に折れ曲がり、上記第1噴射ノズルの第1噴射孔より噴射された液体を囲繞して被加工物に向けて噴射されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、第1噴射ノズルの第1噴射孔はテーパ形状を有しているため、第1噴射孔の内面にレーザ光を反射させて液柱の内部に導光することができ、しかも第1噴射孔の被加工物側の開口部が第2噴射孔よりも小径となっているため、レーザ光が第2噴射孔の開口部近傍に照射されることがなく、アライメント調整を容易に行うことができる。
また、第1噴射ノズルよりも被加工物側に第2噴射ノズルを設け、該第2噴射ノズルに液体を供給する第2液体通路は、液体を第2噴射孔に向けてレーザ光の光軸に直交する方向に流動させるとともに、上記第2噴射孔においてレーザ光の光軸と平行な方向に折れ曲がるようにしている。
これにより第2噴射孔より噴射された液体は上記第1噴射孔より噴射された液体を囲繞して液柱を構成し、その際、当該液柱の周囲にエアポケットを形成することができるため、安定した液柱を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施例にかかるレーザ加工装置の断面図
【図2】加工ヘッドの拡大図
【図3】液体通路プレートについての平面図
【図4】第1噴射孔および第2噴射孔についての拡大図
【図5】第2実施例にかかるレーザ加工装置のハウジングの平面図
【図6】図4におけるV−V部の断面図
【図7】図4におけるVI−VI部の断面図
【図8】第2実施例における第1噴射孔および第2噴射孔についての拡大図
【図9】第3実施例における第1噴射孔および第2噴射孔についての拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は第1実施例にかかるレーザ加工装置1を示し、液体の噴射により形成した液柱Wにレーザ光Lを導光することで、被加工物2を所要形状に切断加工する装置となっている。
このレーザ加工装置1は、上記被加工物2を支持する加工テーブル3と、レーザ光Lを発振するレーザ発振器4と、液体を供給する液体供給手段5と、被加工物2に向けて液体を液柱Wとして噴射するとともに、レーザ光Lを上記液柱Wに導光する加工ヘッド6とを備えている。
本実施例において、上記被加工物2は板厚の薄い半導体ウエハであって、この他にもエポキシ樹脂板や樹脂と金属からなる複合材料なども切断加工することができる。また、切断加工のほかにも、被加工物2表面に対して溝加工を行うことも可能である。
上記加工テーブル3は従来公知であるので詳細な説明をしないが、上記被加工物2を加工ヘッド6に対して水平方向に移動させるようになっており、また上記加工ヘッド6は図示しない昇降手段によって垂直方向に移動するようにされている。
また上記レーザ発振器4はYAGレーザであり、加工に応じてCW発振又はパルス発振が可能であり、またその出力やパルスの発振周期を適宜調整できるようになっている。
さらに、レーザ発振器4としてこの他にも半導体レーザやCOレーザ等を用いることも可能であるが、COレーザのように照射されるレーザ光Lが水に吸収されやすい波長である場合には、加工ヘッド6より噴射される液体をレーザ光Lが吸収されないような液体にすればよい。
上記液体供給手段5は、所定の圧力で純水を供給するようになっており、その他液状のシリコン等の液体も供給することが可能となっている。
【0009】
上記加工ヘッド6はレーザ発振器4から発振されたレーザ光Lを集光する集光レンズ7の下方に設けられ、昇降手段を構成する支持部材11に固定されたハウジング12と、該ハウジング12に固定されてレーザ光Lを透過させる石英ガラス13と、該石英ガラス13よりも被加工物2側に設けられた第1噴射ノズル14と、第1噴射ノズル14よりも被加工物2側に設けられた第2噴射ノズル15と、これら第1、第2噴射ノズル14、15をハウジング12に固定するノズルホルダ16とを備えている。
また上記加工ヘッド6の内部には、上記液体供給手段5より供給される液体を流通させる液体通路17が形成されており、この液体通路17は後に詳述するように上記第1噴射ノズル14に液体を供給する第1液体通路17Aと、第2噴射ノズル15に液体を供給する第2液体通路17Bとに分岐している。
図2は加工ヘッド6の拡大図を示しており、上記第1噴射ノズル14と第2噴射ノズル15との間には、下記第2液体通路17Bの形成された円盤状の液体通路プレート18が介装されている。
【0010】
上記ハウジング12の中央には径の異なる階段状に形成されたレーザ通路21が穿設され、上記石英ガラス13は上記レーザ通路21の最小径部21aの上部に液密に嵌合し、レーザ通路21の内面に螺合する円柱状のナット22によってハウジング12に固定されている。
また上記レーザ通路21における最小径部21aの下方には、該最小径部21aよりも大径で第1噴射ノズル14が嵌合する小径部21b、該小径部21bよりも大径の中径部21c、該中径部21cよりも大径で上記第2噴射ノズル15が嵌合する大径部21dとが形成されている。
上記ノズルホルダ16はリング状の部材であって、上記ハウジング12に図示しない連結手段によって連結されることにより、上記第1、第2噴射ノズル14、15および液体通路プレート18を上記ハウジング12との間で挟持するようになっている。
また上記ノズルホルダ16の下方には、中央に上記液柱Wが通過可能な径で貫通孔23aの形成された整流板23が設けられており、この貫通孔23aは被加工物2に向けて広がるテーパ状に形成されている。
この整流板23により、液柱Wが被加工物2に到達した後に跳ね返った液体が加工ヘッド6に付着することを防止し、また跳ね返った液体による液柱Wの乱れを防止して安定した液柱を形成するものとなっている。
【0011】
上記第1噴射ノズル14は、中央に第1噴射孔14aを有する単結晶ダイヤモンドによって製造されたノズル部材14Aと、該ノズル部材14Aの外周を囲繞するように形成されたステンレス製の保持部材14Bとから構成された略円盤状の部材となっている。
この上記第1噴射ノズル14の略上半分は上記ハウジング12に形成されたレーザ通路21の小径部21bの一部に嵌合し、略下半分が上記小径部21bより上記中径部21cに突出するように設けられており、この第1噴射ノズル14により小径部21bと中径部21cとが液密に区画されるようになっている。
上記第1噴射孔14aは被加工物2に向けて縮径するテーパ形状を有しており、該第1噴射孔14aの内面にはレーザ光Lを反射させるためのメッキ加工や鏡面加工が施されている。
【0012】
上記第2噴射ノズル15は、第2噴射孔31aを有する円盤状のノズル部材31と、該ノズル部材31を保持する保持部材32と、該保持部材32の側面を囲繞するリングホルダ33とから構成されている。
上記ノズル部材31は単結晶ダイヤモンドによって製造され、ノズル部材31の上面と上記保持部材32の上面とが面一となるように加工され、この上面はレーザ光Lの光軸に対して直交する開口平坦面31bとなっている(図4参照)。
上記第2噴射孔31aは、その内面がレーザ光Lと平行に形成された円柱部分と、該円柱部分の下方に連続して設けられた被加工物2に向けて拡径するテーパ部分とから構成され、上記円柱部分の径は上記第1噴射孔14aにおける被加工物2側の開口部よりも大径に形成されている。
本実施例では、第1噴射孔14aの被加工物2側の開口部を40μmとし、第2噴射孔31aにおける第1噴射ノズル14側の開口部を75μmとしている。
【0013】
上記第2噴射ノズル15の保持部材32は、上記第1噴射ノズル14の外径と同径に形成されており、上記ノズル部材31の保持位置よりも下方には、上記第2噴射孔31aのテーパ部分よりも大径な円柱状の通路と、該円柱状の通路の下方に連続して形成された被加工物2に向けて拡径するテーパ状の通路とからなる整流通路32aが設けられている。
このような整流通路32aを形成することにより、上記第2噴射孔31aより噴射される液柱Wの周囲に下方に向けた気流を形成することができ、この気流で液柱Wの周囲を覆うことにより安定した液柱Wを形成することが可能となっている。
上記リングホルダ33は上記ハウジング12に形成された大径部21dに液密に嵌合するように設けられ、上記保持部材32の上部が上記レーザ通路21の中径部21cの内部に突出するようになっている。
これにより、上記レーザ通路21の中径部21cは該リングホルダ33の上面との間で液密に区画された空間が形成されるようになっている。
【0014】
上記液体通路プレート18は、上記第1噴射ノズル14および第2噴射ノズル15の保持部材32と同径に製造された略円盤状の部材となっており、図示しない位置ズレ防止手段によって第1噴射ノズル14と第2噴射ノズル15との間に密着した状態で挟持されるようになっている。
図3に示すように、液体通路プレート18は、中央に形成された貫通孔18aと、第2噴射ノズル15側の下面に上記貫通孔18aを中心に放射状に形成された複数の溝18bとを備えている。
上記貫通孔18aは、上記第1噴射ノズル14より第2噴射ノズル15に向けて拡径するテーパ状を有しており、第1噴射ノズル14側の径は上記第1噴射孔14aにおける被加工物2側の開口部よりも大径で、第2噴射ノズル15側の径も上記第2噴射孔31aにおける第1噴射ノズル14側の開口部よりも大径に形成されている。
この貫通孔18aにより、上記第1噴射ノズル14の下面と第2噴射ノズル15の上面との間に空間が形成され、特に上記第2噴射ノズル15における第2噴射孔31aの周囲には上記開口平坦面31bが露出するようになっている。
上記溝18bは、上記貫通孔18aを中心に計12本放射状に形成され、該溝18bの内側の端部は上記貫通孔18aに連通し、外側の端部は液体通路プレート18の外周に連通するようになっている。
このような構成とすることで、液体通路プレート18を第1噴射ノズル14と第2噴射ノズル15との間で挟持すると、連結された第1噴射ノズル14、第2噴射ノズル15、液体通路プレート18の側面に上記溝18bの外側の端部が開口し、上記レーザ通路21の中径部21cと上記貫通孔18aとが連通するようになっている。
【0015】
上記液体通路17は、ハウジング12の側面に開口して上記液体供給手段5に接続され、ハウジング12の内部で上記第1噴射ノズル14に液体を供給する第1液体通路17Aと、第2噴射ノズル15に液体を供給する第2液体通路17Bとに分岐している。
上記第1液体通路17Aは、液体通路17より分岐した一方の通路と、上記石英ガラス13および第1噴射ノズル14によって区画された上記レーザ通路21の最小径部21aとによって構成されている。
上記第2液体通路17Bは、液体通路17より分岐した一方の通路と、上記第2噴射ノズル15を構成するリングホルダ33の上面によって区画されたレーザ通路21の中径部21cと、上記液体通路プレート18に形成された溝18bおよび貫通孔18aとによって構成されている。
そして、液体通路プレート18は上記中径部21cの中央に位置し、その外周には上記溝18bが開口することから、上記中径部21cに流入した液体はこれらの溝18bの外側の端部から略均等に流入し、上記貫通孔18aに向けて集中するように流動するようになっている。
また溝18bは第2噴射ノズル15側に形成されていることから、溝18bを流通する液体は上記第2噴射孔31aの周囲に形成された開口平坦面に対してレーザ光の光軸に対して直交する方向より流入するようになっている。
【0016】
以下、上記構成を有するレーザ加工装置1の動作について説明する。
はじめに、上記液体供給手段5が液体を所定の圧力で上記加工ヘッド6の液体通路17へと供給すると、液体通路17に流入した液体はそれぞれ上記第1液体通路17Aおよび第2液体通路17Bに分岐する。
図4に示すように、液体が上記第1液体通路17Aを構成する上記レーザ通路21の最小径部21bに流入すると、この液体は第1噴射ノズル14に設けられた第1噴射孔14aより被加工物2に向けて噴射される(図示2点鎖線)。
ここで、第1噴射孔14aにおける被加工物2側の開口部は、上記第2噴射孔31aの開口部の径よりも小径であるため、第1噴射孔14aより噴射された液体は第2噴射孔31aの中央部を通過することとなる。
また、第2液体通路17Bを構成する上記レーザ通路21の中径部21cに液体が流入すると、この液体は上記液体通路プレート18に形成した溝18bを介して上記第1、第2噴射ノズル14、15の間に形成された貫通孔18aへと流入し、第2噴射孔31aより噴射される。
ここで、第2噴射孔31aは第1噴射孔14aよりも大径に形成され、第2噴射孔31aの中央を上記第1噴射孔14aより噴射された液体が通過していることから、この第2噴射孔31aより噴射される液体はこの第1噴射孔14aより噴射された液体を囲繞し、液柱Wとなって被加工物2へと噴射されることとなる。
【0017】
一方、第2液体通路17Bを構成する上記溝18bは、貫通孔18aに対して放射状に形成されているため、液体はこの溝18bによって上記貫通孔18aへと集中するように流動し、かつ上記溝18bは液体通路プレート18の第2噴射ノズル15側に形成されていることから、該液体はレーザ光Lの光軸に直交する方向に流通している。
そして上記第2噴射孔31aの周囲にレーザ光Lの光軸に直交する開口平坦面31bが形成され、かつ第2噴射孔31aの内面はレーザ光Lの光軸に平行に形成されていることから、上記溝18bを介して貫通孔18aに達した液体は、第2噴射孔31aの位置でレーザ光Lの光軸に直交する方向から光軸に平行な方向へと急激に折れ曲がることとなる。
このように液体が上記開口平坦面31bから第2噴射孔31aへと折れ曲がる際、液体は第2噴射孔31aの開口部ではく離するため、上記第2噴射孔31aの内面には液柱Wは触れずに、該液柱Wを囲繞するようにエアクッションを形成することができる。
このエアクッションにより、液柱Wの形状を被加工物2に到達するまで安定して維持することができる。
また上記第2噴射ノズル15は上記ノズル部材31に形成されたレーザ光Lの光軸に平行な円柱部分の下方に被加工物2側に向けて拡径するテーパ部分を備え、さらに上記保持部材32にはこのテーパ部分のさらに下方に整流通路32aを備えている。
このような構成により、上記第2噴射孔31aより噴射された液柱Wは、整流通路32aに沿って吸い上げられてノズル部材31の直下で下方へ折り返される気流に取り囲まれるため、拡散が抑制されて被加工物2まで安定して到達することが可能となっている。
【0018】
このようにして加工ヘッド6より液柱Wが噴射されると、上記レーザ発振器4がレーザ光Lを発振する。レーザ光Lは上記集光レンズ7によって集光された後、石英ガラス13を透過して上記第1噴射ノズル14の第1噴射孔14aに入射する。
本実施例では、上記集光レンズ7における焦点を上記第2噴射ノズル15の上面近傍に設定しており、これによりレーザ光Lの外周部の光はテーパ状に形成された第1噴射孔14aの内面で反射し、被加工物2側の開口部より出射され、それ以外の光は第1噴射ノズル14には触れずに、上記第2噴射孔31aより噴射された液柱Wの内部に導光される。
そして、上記液柱W内に導光されたレーザ光Lは、該液柱Wを構成する液体とその外部の空気との境界面で反射を繰り返しながら被加工物2まで導光され、さらに上記加工テーブル3が被加工物2を水平に移動させることで、被加工物2に対して所要の加工が行われる。
【0019】
このようにレーザ光Lを液柱Wに導光する際、第1噴射孔14aにおける被加工物2側の開口部の径は、第2噴射孔31aの径よりも小径となっていることから、第1噴射孔14aによって導光されたレーザ光Lは上記第2噴射孔31aの周囲に形成された開口平坦面31bには照射されないようになっている。
このためレーザ光Lによって第2噴射ノズル15における開口平坦面31b近傍の損傷が防止され、また開口平坦面31bに反射したレーザ光Lによる加工ヘッド6内部の損傷も防止される。
つまり、レーザ加工装置1の使用準備の際、液柱Wとレーザ光Lとのアライメント調整を行うが、本実施例のレーザ加工装置1の場合、レーザ光Lを第1噴射孔14aの内部に集光するだけでレーザ光Lを液柱Wの内部に導光することができ、上記開口平坦面31bにレーザ光Lが照射されることは無いので、アライメント調整を容易に行うことができる。
【0020】
図5〜図8は第2実施例にかかるレーザ加工装置1を説明する図となっている。以下の説明において、第1実施例と共通する部分については説明を省略するものとする。
図5は本実施例における加工ヘッド6のハウジング12の平面図を示し、該ハウジング12には第1噴射ノズル14に液体を供給する第1液体通路17Aと、第2噴射ノズル15に液体を供給する第2液体通路17Bとが個別に設けられている。
図6を用いて第1液体通路17Aについて説明すると、第1液体通路17Aは第1実施例における第1液体通路17Aと同様、上記レーザ通路21に形成した最小径部21bを介して第1噴射ノズル14に液体を供給するように形成され、この第1液体通路17Aには塩水を供給する第1液体供給手段5Aが接続されている。
次に図7を用いて第2液体通路17Bについて説明すると、第2液体通路17Bは第1実施例における第2液体通路17Bと同様、上記レーザ通路21に形成した中径部21cを介して第2噴射ノズル15に連通する液体通路プレート18の溝18bに液体を供給するように形成され、この第2液体通路17Bには純水を供給する第2液体供給手段5Bが接続されている。
これ以外の構成については、第1実施例と同様の構成を有している。
【0021】
上述したように、第1液体供給手段5Aは塩水を、第2液体供給手段5Bは純水を供給するようになっており、図8に示すように上記第1噴射ノズル14の第1噴射孔14aより塩水を噴射し、第2噴射ノズル15の第2噴射孔31aより純水を噴射すると、中央に塩水が流通し、その外部を純水が囲繞する液柱Wが形成されることとなる。
そして、中央に形成された塩水の液柱Wと、これを囲繞する純水の液柱Wとの境界面においては、塩水の方が純水よりも屈折率が高いことから、上記第1噴射孔14aより出射されたレーザ光Lは、該塩水と純水との境界面で反射し、被加工物2へと導光されるようになっている。
つまり本実施例のレーザ加工装置1によれば、第1噴射ノズル14が噴射した塩水の径で被加工物2を加工することが可能となり、被加工物2を細い切断線で切断することができる。
なお、上記塩水に代えて、純水よりも屈折率が高いシリコンを用いることも可能である。また第1噴射孔14aより噴射される液体の屈折率を第2噴射孔31aより噴射される液体の屈折率よりも高くすれば、その他の組み合わせを用いることが可能である。
【0022】
次に第3実施例について説明する。構成については第2実施例と同様の構成を有しているため図5〜図7を用いて説明し、また形成される液柱Wについては第1実施例と同様となるため図4を用いて説明する。
本実施例の液体通路17も、第1噴射ノズル14に液体を供給する第1液体通路17Aと、第2噴射ノズル15に液体を供給する第2液体通路17Bとをそれぞれ個別に設けた構成となっており、これら第1、第2液体通路17A,17Bにはそれぞれ第1、第2液体供給手段5A,5Bが接続されている。
上記第1、第2液体供給手段5A,5Bは、第1実施例の液体供給手段5と同様、液体として純水を供給するようになっているものの、それぞれ異なる圧力で液体を供給するようになっている。
なお、これ以外の構成については、上記第2実施例と同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0023】
上記構成を有するレーザ加工装置1の場合も、図4に示すように加工ヘッド6から噴射される液柱Wは、第1噴射ノズル14の第1噴射孔14aより噴射される液体を、第2噴射ノズル15の第2噴射孔31aより噴射される液体が囲繞する構成となっており、レーザ光Lは純水と空気との境界面で反射しながら第2噴射孔31aより噴射される液柱Wの径で、被加工物2を加工するようになっている。
そして本実施例において、第1液体供給手段5Aが第2液体供給手段5Bよりも高圧の液体を供給する場合、第1噴射孔14aより噴射される液体の流速が速くなり、これを囲繞する第2噴射孔31aより噴射される液体との相対速度差が大きくなって外側に広げようとするため、形成される液柱Wを上記第1実施例において形成される液柱Wに対して太く形成することができる。なお、条件によっては相対速度差が大きくなりすぎるため、液柱Wを形成しないで噴射する場合がある。
一方、第1液体供給手段5Aが第2液体供給手段5Bよりも低圧の液体を供給する場合、第2噴射孔31aより噴射された液体の流速が、第1噴射孔14aから噴射される液体の流速よりも速くなる。
その結果図9に示すように、第1噴射孔14aから噴射される液体は、第2噴射孔31aより噴射された液体との相対速度差によって下方に向けて縮径するテーパ状に引き伸ばされ、これを囲繞する第2噴射孔31aより噴射される液体も下方に向けて縮径することから、液柱Wは下方に向けて縮径するテーパ状に形成されることとなる。
すなわち、本実施例におけるレーザ加工装置1によれば、噴射される液柱Wの太さを調整することが可能となり、被加工物2に形成するレーザ光Lによる加工幅を任意に設定することが可能となる。
【0024】
第2実施例および第3実施例の内容については、これを組み合わせることが可能である。つまり、第1液体供給手段5Aと第2液体供給手段5Bとが、それぞれ屈折率および圧力の異なる液体を供給することで、被加工物2に形成するレーザ光Lによる加工幅を調整することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 レーザ加工装置 2 被加工物
4 レーザ発振器 5 液体供給手段
5A,5B 第1、第2液体供給手段 6 加工ヘッド
14 第1噴射ノズル 14a 第1噴射孔
15 第2噴射ノズル 17 液体通路
17A、17B 第1、第2液体通路 18 液体通路プレート
31a 第2噴射孔 L レーザ光
W 液柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射孔を有する噴射ノズルと、液体を供給する液体供給手段と、上記液体供給手段の液体を上記噴射ノズルの噴射孔へと流通させる液体通路と、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器から発振されたレーザ光を集光する集光レンズとを備え、
上記液体供給手段が供給した液体を上記噴射ノズルの噴射孔から液柱にして噴射するとともに、上記集光レンズが上記液柱にレーザ光を導光することで被加工物の加工を行うレーザ加工装置において、
上記噴射ノズルを、第1噴射孔を有する第1噴射ノズルと、第1噴射ノズルよりも被加工物側に設けられるとともに上記第1噴射孔と同軸上に設けられた第2噴射孔を有する第2噴射ノズルとから構成し、
上記第1噴射孔は被加工物に向けて縮径するとともにその内面でレーザ光を反射させて上記液柱の内部に導光するテーパ形状を有し、上記第2噴射孔を上記第1噴射孔の被加工物側の開口部よりも大径に形成し、
上記液体通路は、上記第1噴射ノズルに液体を供給する第1液体通路と、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとの間に形成されて上記第2噴射ノズルに液体を供給する第2液体通路とを備え、
上記第2液体通路を流通する液体は、上記第2噴射ノズルの第2噴射孔に向けてレーザ光の光軸に直交する方向に流動するとともに、上記第2噴射孔においてレーザ光の光軸と交差する方向に折れ曲がり、上記第1噴射ノズルの第1噴射孔より噴射された液体を囲繞して被加工物に向けて噴射されることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
上記液体供給手段は、上記第1液体通路に液体を供給する第1液体供給手段と、上記第2液体通路に液体を供給する第2液体供給手段とから構成され、
上記第1液体供給手段が供給する液体の屈折率を、第2液体供給手段が供給する液体の屈折率よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
上記液体供給手段は、上記第1液体通路に液体を供給する第1液体供給手段と、上記第2液体通路に液体を供給する第2液体供給手段とから構成され、
上記第1液体供給手段が供給する液体の圧力と、第2液体供給手段が供給する液体の圧力とを異ならせたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
上記第2噴射孔の周囲にレーザ光の光軸と直交させて平坦面を形成して、
上記平坦面と該第2噴射孔の内面とが直角となるように形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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