説明

レーザ加工装置

【課題】複数の加工予定ラインのピッチが小さい場合でも、複数の光学ユニットを並べて複数の加工予定ラインに沿って同時にレーザ光を照射することができるようにする。
【解決手段】このレーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器2と、第1光学ユニット41及び第2光学ユニット42と、を備えている。第1光学ユニット41及び第2光学ユニット42は、それぞれ、レーザ発振器2からのレーザ光を複数のレーザ光に分岐する回折光学素子52と、回折光学素子52からの複数のレーザ光を基板上の1つの直線に沿って並ぶように集光させるレンズ53と、を有する。そして、第1光学ユニット41によって基板上に集光させられる複数のビームスポットを結んだ第1直線L1と、第2光学ユニット42によって基板上に集光させられる複数のビームスポットを結んだ第2直線L2とは、互いに平行でずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、特に、基板上の複数の加工予定ラインに沿ってレーザ光を照射するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の製造においては、基板上の薄層に対して複数のラインに沿ってレーザ光が照射され、複数のサブセルに分割される。そして、分割されたサブセルが相互に接続される。
【0003】
このような太陽電池基板にレーザ光を照射して加工するパターニング工程では、所定ピッチの多数の加工予定ラインに沿ってレーザ光が照射される。
【0004】
例えば特許文献1の装置では、それぞれが4本のレーザビームを出力可能な複数の光学ユニットが設けられている。そして、複数の光学ユニットを走査することによって、所定ピッチの複数のスクライブ溝が形成される。
【0005】
また、特許文献2では、回折光学素子(DOE)とf-sinθレンズとを組み合わせて光学ユニットが構成されている。ここでは、所定ピッチの多数のレーザ光のビームスポットが基板上に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−509067号公報
【特許文献2】特開2001−62578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載された装置を使用して加工を行うことにより、多数のパターニングラインを短時間で加工することが可能になる。
【0008】
ここで、パターニングラインの本数が1つの光学ユニットのビーム数を越える場合は、複数の光学ユニットを並べて配置することにより、同様に加工時間を短くすることができる。
【0009】
しかし、複数のパターニングラインのピッチが小さい場合、複数の光学ユニットによって等ピッチで同時に加工することができない。すなわち、光学ユニットは、一般的にレンズ等の光学素子が内蔵された鏡筒を有しているので、隣り合う鏡筒を最大限接近させても、一方の鏡筒内部に形成されたビームスポットと、他方の鏡筒内部に形成されたビームスポットとの間には、互いの鏡筒の厚み分の距離があくことになる。このため、パターニングラインのピッチが小さい場合は、隣り合う光学ユニット間のパターニングラインのピッチが、他のパターニングラインのピッチより大きくなることになる。
【0010】
本発明の課題は、複数の加工予定ラインのピッチが小さい場合でも、複数の光学ユニットを並べて複数の加工予定ラインに沿って同時にレーザ光を照射することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るレーザ加工装置は、基板上の複数の加工予定ラインに沿ってレーザ光を照射する装置であって、レーザ光を出射するレーザ光出射装置と、第1光学ユニット及び第2光学ユニットと、を備えている。第1光学ユニット及び第2光学ユニットは、それぞれ、レーザ光出射装置からのレーザ光を複数のレーザ光に分岐する回折光学素子と、回折光学素子からの複数のレーザ光を基板上の1つの直線に沿って並ぶように集光させるレンズと、を有する。そして、第1光学ユニットによって基板上に集光させられる複数のビームスポットを結んだ第1直線と、第2光学ユニットによって基板上に集光させられる複数のビームスポットを結んだ第2直線とは、互いに平行でずれている。
【0012】
ここでは、第1光学ユニットと第2光学ユニットとが、多数のビームスポットが並ぶ方向において段違いで配置されている。このため、複数の加工予定ラインのピッチが小さく、かつ各光学ユニットの鏡筒等の枠体の厚みが厚い場合でも、複数の光学ユニットによって、複数の加工予定ラインに沿って同時にレーザ光を照射することが可能になる。
【0013】
第2発明に係るレーザ加工装置は、第1発明の装置において、第1光学ユニットのレンズの中心と第2光学ユニットのレンズの中心とを結んだ直線は、第1及び第2直線に対して傾斜している。
【0014】
第3発明に係るレーザ加工装置は、第1又は第2発明の装置において、第1光学ユニット及び第2光学ユニットは、同じ直径の円筒状の鏡筒を有している。そして、第1光学ユニット及び第2光学ユニットの中心間距離は鏡筒の直径以上である。
【0015】
この場合は、2つの光学ユニットの干渉を避けて、小さいピッチの複数の加工予定ラインに沿ってレーザ光を照射することができる。
【0016】
第4発明に係るレーザ加工装置は、第1から第3発明のいずれかの装置において、第1光学ユニット及び第2光学ユニットの中心間距離は、第1直線及び第2直線に沿った第1光学ユニットの中心と第2光学ユニットの中心との間の距離より長い。
【0017】
第5発明に係るレーザ加工装置は、第1から第4発明のいずれかの装置において、第1光学ユニットは、レーザ光出射装置からのレーザ光を分岐するビームスプリッタをさらに有している。そして、第2光学ユニットは、ビームスプリッタからのレーザ光を反射して第2光学系の回折光学素子に導く反射ミラーをさらに有している。
【0018】
ここでは、簡単な構成で、複数の加工予定ラインに沿ってレーザ光を照射することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、複数の加工予定ラインのピッチが小さい場合でも、複数の光学ユニットを並べて複数の加工予定ラインに沿って同時にレーザ光を照射することができ、加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザ加工装置の概略構成図。
【図2】複数の光学ユニットの配置を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明の一実施形態によるレーザ加工装置の模式図を示す。レーザ加工装置1は、レーザ光を出射するレーザ発振器2と、レンズ・ミラー機構3と、第1〜第4光学ユニット41〜44と、太陽電池パネル用の基板Gが載置されるXYステージ5と、を備えている。ここでは、基板Gの複数の加工予定ラインに沿ってレーザ光のビームスポットを走査し、基板G上に複数のサブセルを形成する場合の加工を例にとって説明する。
【0022】
レンズ・ミラー機構3は、レーザ光を平行光にするためのコリメートレンズ3aと、反射ミラー3bと、ビームスプリッタ3cと、を有している。
【0023】
第1光学ユニット41は、反射ミラー51と、回折光学素子52と、f-sinθレンズ53と、を有している。反射ミラー51は、第2光学ユニット42からのレーザ光を回折光学素子52に反射する。回折光学素子52はレーザ光を複数のレーザ光に分岐する。f-sinθレンズ53は複数のレーザ光のそれぞれをXYステージ5上の基板Gに集光する。この第1光学ユニット41によって、図2に示すように、基板G上に、分岐された複数のビームスポットが第1直線L1上に並んで照射される。
【0024】
第2光学ユニット42は、ビームスプリッタ55と、回折光学素子52及びf-sinθレンズ53と、を有している。ビームスプリッタ55は、レンズ・ミラー機構3からのレーザ光を、第1光学ユニット41の反射ミラー51と下方の回折光学素子52とに分岐する。回折光学素子52及びf-sinθレンズ53は、第1光学ユニット41と同様である。この第2光学ユニット42によって、図2に示すように、基板G上に、分岐された複数のビームスポットが第2直線L2上に並んで照射される。なお、第2直線L2は第1直線L1と平行な直線である。
【0025】
第3光学ユニット43は、ビームスプリッタ55と、回折光学素子52及びf-sinθレンズ53と、を有している。ビームスプリッタ55は、第2光学ユニット42のビームスプリッタと同様の構成であり、レンズ・ミラー機構3からのレーザ光を、第4光学ユニット44と下方の回折光学素子52とに分岐する。回折光学素子52及びf-sinθレンズ53は、第1光学ユニット41と同様である。この第3光学ユニット43によって、図2に示すように、基板G上に、分岐された複数のビームスポットが第1直線L1上に並んで照射される。
【0026】
第4光学ユニット44は、反射ミラー51と、回折光学素子52と、f-sinθレンズ53と、を有している。反射ミラー51は、第1光学ユニット41の反射ミラーと同様の構成であり、第3光学ユニット43からのレーザ光を回折光学素子52に反射する。回折光学素子52及びf-sinθレンズ53は第1光学ユニット41と同様である。この第4光学ユニット44によって、図2に示すように、基板G上に、分岐された複数のビームスポットが第2直線L2上に並んで照射される。
【0027】
図2は、4つの光学ユニット41〜44の配置を示す模式的な平面図である。この図2に示すように、第1光学ユニット41と第3光学ユニット43によって基板G上に照射される多数のビームスポットを結んだ第1直線L1と、第2光学ユニット42と第4光学ユニット44によって基板G上に照射される多数のビームスポットを結んだ第2直線L21とは、互いに平行でずれている。言い換えれば、隣接する光学ユニットの中心を結んだ直線は、第1直線L1及び第2直線L2に対して角度αだけ傾斜している。
【0028】
また、図2に示すように、4つの光学ユニット41〜44は、同じ直径Dで、かつ同じ厚みの円筒状の鏡筒41a,42a,43a,44aを有している。そして、隣接する光学ユニット間の中心間距離Cはすべて同じであり、鏡筒41a〜44aの直径Dと同じ距離に設定されている。言い換えれば、隣接する光学ユニットの中心間距離C(=D)は、第1直線L1及び第2直線L2に沿った隣接する光学ユニットの中心間距離Eより長い。
【0029】
さらに、この実施形態では、各光学ユニット41〜44によって形成される複数のビームスポットBは、所定のピッチPで直線上に並んで照射されている。そして、各光学ユニット41〜44の配置は、互いに隣接する光学ユニットの最も外側に形成された他方の光学ユニットに最も近い位置のビームスポットB同士の、第1直線L1及び第2直線L2に沿った距離Fが、各光学ユニット431〜44によって形成された複数のビームスポットBのピッチPと同じになるように設定されている。より具体的には、第1直線L1及び第2直線L2に沿った隣接する光学ユニットの中心間距離Eは、1つの光学ユニットによって形成される複数のビームスポットBの最も外側に位置する2つのビームスポットB間の距離Gに、各光学ユニットによって形成される複数のビームスポットB間のピッチPを加えた長さに設定されている。このような配置によって、光学ユニット41〜44によって形成される多数のビームスポットBの位置は、第1直線L1及び第2直線L2に垂直な方向から見て等間隔になる。
【0030】
XYステージ5は、基板Gを載置するテーブルであり、互いに直交するX方向及びY方向に移動可能である。このXYステージ5をX方向及びY方向に所定の速度で移動させることにより、XYステージ5に載置された基板Gとレーザ光との相対位置を自在に変更することができる。通常は、XYステージ5を移動させて、基板Gの加工予定ラインに沿ってレーザ光が走査される。
【0031】
このレーザ加工装置では、レーザ発振器2から発射されたレーザ光は、コリメートレンズ3aによって平行光にされ、反射ミラー3bによって下方に反射される。反射ミラー3bからのレーザ光は、ビームスプリッタ3cによって、第2光学ユニット42と第3光学ユニット43とに分岐される。第2光学ユニット42に入射したレーザ光は、ビームスプリッタ55によって下方と第1光学ユニット41とに分岐される。第1光学ユニット41に入射したレーザ光は、反射ミラー51によって下方に反射される。一方、第3光学ユニット43に入射したレーザ光は、ビームスプリッタ55によって下方と第4光学ユニット44とに分岐される。第4光学ユニット44に入射したレーザ光は、反射ミラー51によって下方に反射される。
【0032】
以上のようにして各光学ユニット41〜44の回折光学素子52に入射したレーザ光は、複数のレーザ光に分岐され、さらにf-sinθレンズ53を通過して、基板Gの複数の加工予定ライン上に同時にビームスポットとして照射される。
【0033】
以上のようにして、基板G上に多数のビームスポットが照射された状態で、XYステージ5を駆動して基板Gを一方向に移動させれば、複数の加工予定ラインに沿ってビームスポットが走査されて加工される。この実施形態では、基板Gを第1直線L1及び第2直線L2に垂直な方向に移動させることにより、光学ユニット41〜44によって形成される多数のビームスポットによって加工されたラインは、等間隔になる。
【0034】
この実施形態では、複数の光学ユニット41〜44が互い違いに配置されている。このため、加工予定ラインのピッチが小さい場合でも、複数の光学ユニット41〜44によって形成されるビームスポットのピッチをすべて同じにすることができる。
【0035】
なお、基板Gを第1直線L1及び第2直線L2に垂直な方向以外の方向に移動させて加工を行う場合には、光学ユニットによって形成される多数のビームスポットBの位置が基板Gの移動方向から見て等間隔になるように、各光学ユニットの間隔を調整すればよい。
【0036】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0037】
(a) なお、前記実施形態では、太陽電池パネル用基板上にサブセルを形成する場合について説明したが、本発明は、太陽電池用の基板上に塗布されたドーパント層にレーザ光を照射し、ドーパントを基板中に取り込む場合にも同様に適用することができる。
【0038】
(b) 前記実施形態の光学ユニットの個数や配置は一例であって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。また、各光学ユニットの構成についても限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1 レーザ加工装置
2 レーザ発振器
3 レンズ・ミラー機構
41〜44 光学ユニット
41a〜44a 鏡筒
52 回折光学素子
53 f-sinθレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の複数の加工予定ラインに沿ってレーザ光を照射するレーザ加工装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光出射装置と、
それぞれ、前記レーザ光出射装置からのレーザ光を複数のレーザ光に分岐する回折光学素子と、前記回折光学素子からの複数のレーザ光を基板上の1つの直線に沿って並ぶように集光させるレンズと、を有する第1光学ユニット及び第2光学ユニットと、
を備え、
前記第1光学ユニットによって基板上に集光させられる複数のビームスポットを結んだ第1直線と、前記第2光学ユニットによって基板上に集光させられる複数のビームスポットを結んだ第2直線とは、互いに平行でずれている、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1光学ユニットのレンズの中心と前記第2光学ユニットのレンズの中心とを結んだ直線は、前記第1及び第2直線に対して傾斜している、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1光学ユニット及び前記第2光学ユニットは、同じ直径の円筒状の鏡筒を有しており、
前記第1光学ユニット及び前記第2光学ユニットの中心間距離は前記鏡筒の直径以上である、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1光学ユニット及び前記第2光学ユニットの中心間距離は、前記第1直線及び前記第2直線に沿った前記第1光学ユニットの中心と前記第2光学ユニットの中心との間の距離より長い、
請求項1から3のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1光学ユニットは、前記レーザ光出射装置からのレーザ光を分岐するビームスプリッタをさらに有し、
前記第2光学ユニットは、前記ビームスプリッタからのレーザ光を反射して前記第2光学系の回折光学素子に導く反射ミラーをさらに有している、
請求項1から4のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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