説明

レーザ溶接装置

【課題】 本発明は、パウダの溶着率が高く、高品質の溶接を行うレーザ溶接装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光7の集光部分の近傍にパウダ状の溶融物を供給するための供給用出口5を前記レーザ光軸を略中心として複数有するチップ4と被加工物6の間隔WDを5mmから10mm、パウダ噴射孔5の直径Aを0.6mmから1.0mm、パウダ噴射孔5の数を8から16、レーザ集光径Bを2mmから4mm、レーザエネルギー密度を200W/mmから1000W/mm、パウダ送給量を30g/分から60g/分に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の溶接において、溶加材としてパウダ状の溶融物(以下パウダ)を用いたレーザ溶接装置(以下、パウダレーザ溶接装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
パウダレーザ溶接装置としては、レーザ光照射ノズルの外周に、これと同軸にパウダの噴射ノズルを設け、被加工物に対するレーザ光の照射点の溶融域の近傍へ、前記噴射ノズルからパウダを噴射して溶接を行うものがあった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−84684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の装置においては、溶接に寄与しないパウダの多くが被加工物の周囲に飛散すると共に、この飛散したパウダにより加工性能が低下したり、レーザ光の光学部品に付着したり、疵が付くという課題を有していた。
【0004】
本発明は、上記従来の課題を改善するものであり、パウダの溶着率を高めることができるパウダレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明のレーザ溶接装置は、レーザ光を集光する集光手段と、前記集光手段を保持するヘッドと、前記レーザ光の集光部分の近傍にパウダを供給するための供給用出口を前記レーザ光軸を略中心として複数有する供給手段を備え、
被加工物と前記供給用出口の距離を5mmから10mm、前記供給手段のパウダの供給用出口径を0.6mmから1.0mm、前記供給手段のパウダの供給用出口数を8から16、前記被加工物に対する前記ヘッドの倒れ角を0°から25°、前記パウダが供給される部分のレーザ集光径を2mmから4mm、前記レーザのエネルギー密度を200W/mmから1000W/mm、前記供給手段のパウダの供給量を30g/分から60g/分としたことにより、溶接に寄与しないパウダを減らすことができる。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明では、パウダの被加工物への溶着率が高く、高品質の溶接を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(実施の形態)
以下、本発明実施の形態について、図1、図2を用いて説明する。
【0008】
図1、図2において、1はレーザヘッド、このレーザヘッド1の内部はレーザ光7を通す空間を設けており、この空間にレーザ光7を被加工物6へ集光するレンズなどの集光光学素子2を配置している。
【0009】
そして、レーザヘッド1の外周には、このレーザヘッド1と同軸上にパウダ送給外筒3を設けており、前記レーザ光7の集光部分の近傍にパウダを供給するための供給用出口となる複数のパウダ噴射孔5をレーザ光軸を略中心として複数配置したチップ4を前記パウダ送給外筒3に繋げている。
【0010】
なお、8は前記パウダ噴射孔5から被溶接物6へ噴出するパウダの流れである。
【0011】
パウダ送給外筒3はパウダ供給管13を介してパウダ供給装置9と接続していて、パウダホッパー10内のパウダをパウダ供給装置9から供給している。
【0012】
このパウダ供給装置9にはキャリアガス配管11を接続しており、キャリアガスをパウダの供給に使用している。
【0013】
また、パウダ供給装置9にはシールド用不活性ガス配管12を接続しており、シールド用不活性ガス供給管14でレーザヘッド1にシールド用不活性ガスを供給している。
【0014】
以上のように構成された溶接装置について説明する。
【0015】
レーザヘッド1には図では示していないがレーザ発振器からレーザ光7が供給され、集光光学素子2により集光されたレーザ光7が被加工物6に集光照射される。
【0016】
レーザヘッド1にはシールドガス用不活性ガス供給管14によってシールド用不活性ガスが供給されており、溶接部のシールドに用いられ、パウダ供給装置9により、シールド用不活性ガス管12から送られるシールドガスの制御を行う。
【0017】
パウダ供給装置9はパウダホッパー10から落下するパウダを、内蔵される回転円板上に受け、これをキャリアガス配管11から供給されるガスの圧力により、パウダ供給管13からパウダ送給外筒3へ供給するように構成している。
【0018】
パウダ供給装置9は前述の回転円板の回転数を制御し、金属粉末の供給量を調整すると共に、キャリアガス配管11から送られるキャリアガスの制御を行う。
【0019】
そしてパウダ送給外筒3に供給されたパウダがチップ4に設けたパウダ噴射孔5から溶融部位に噴射され溶接が行われる。
【0020】
次に本発明の各条件について説明する。パウダ噴射孔5から噴射されたパウダは拡がりながら被加工物6の溶融部位に供給される。そのためチップ4と被加工物6の間隔WDが狭くなるほどパウダ噴射孔5と被加工物6の距離が短くなるため、パウダの拡がりが小さくパウダを効率的に被加工物6の溶融部位に供給することができる。しかし間隔WDを狭くすると被加工物6からのレーザ光7の反射光がチップ4に及ぼす影響が大きくなり、チップ4が反射光により破損する可能性があるので、間隔WDは5mmから10mmとする。
【0021】
パウダ噴射孔5の直径Aは小さいほど噴射されるパウダの収束性は良くなり、パウダを効率的に被加工物6の溶融部位に供給することができる。しかし直径Aを小さくするとパウダの送給性が悪化し、溶融部位へのパウダの供給が不安定となり、健全な溶接を得ることができないので、直径Aは0.6mmから1.0mmとする。
【0022】
パウダ噴射孔5の数は噴射するパウダの均一性を考えると数が多いほど有利である。しかしパウダ噴射孔5の数が増えるとパウダの噴射力が弱まり溶融部位へのパウダの供給が不安定となり、健全な溶接を得ることができないので、パウダ噴射孔5の数は8から16個とする。
【0023】
被加工物6に対するレーザヘッド1の倒れ角Cは溶融部位に供給されるパウダの均一性を考えると倒れ角Cが小さいほど有利であるので、倒れ角Cは0°から25°とする。
【0024】
レーザ集光径Bは大きくなるほど被加工物6上の加熱部位は大きくなり、加熱部位上にパウダを供給しやすくなる。しかしレーザ集光径Bが大きくなるとエネルギー密度が低下するためパウダが溶融しにくくなるので、レーザ集光径Bは2mmから4mmとする。
【0025】
レーザエネルギー密度は大きいほどパウダは溶融しやすくなる。しかしレーザエネルギー密度が大きくなると被加工物6に対する熱影響が大きくなり欠損する可能性があるので、レーザエネルギー密度は200W/m2から1000W/m2とする。
【0026】
パウダ供給量を多くすると被加工物6の溶融池が大きくなり、溶融池にパウダを供給しやすくなる。しかしパウダ供給量を多くしすぎるとパウダを溶融するためのエネルギーが不足し、溶融しきれないパウダが出てくるので、パウダ供給量は30g/分から60g/分とする。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のレーザ溶接装置は、パウダの被加工物への溶着率が高く、高品質の溶接を行うことができ、パウダを用いたレーザ溶接装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のレーザ溶接装置の実施の形態における全体構成図
【図2】本発明のレーザ溶接装置の実施の形態における要部構成図
【符号の説明】
【0029】
1 レーザヘッド
2 集光光学素子
3 パウダ送給外筒
4 チップ
5 パウダ噴射孔
6 被加工物
7 レーザ光
8 パウダの流れ
9 パウダ供給装置
10 パウダホッパー
11 キャリアガス配管
12 シールド用不活性ガス配管
13 パウダ末供給管
14 シールド用不活性ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を集光する集光手段と、前記集光手段を保持するヘッドと、前記レーザ光の集光部分の近傍にパウダ状の溶融物を供給するための供給用出口を前記レーザ光軸を略中心として複数有する供給手段を備え、
被加工物と前記供給用出口の距離を5mmから10mm、前記供給手段のパウダ状の溶融物の供給用出口径を0.6mmから1.0mm、前記供給手段のパウダ状の溶融物の供給用出口数を8から16、前記被加工物に対する前記ヘッドの倒れ角を0°から25°、前記パウダ状の溶融物が供給される部分のレーザ集光径を2mmから4mm、前記レーザのエネルギー密度を200W/mmから1000W/mm、前記供給手段のパウダ状の溶融物の供給量を30g/分から60g/分としたレーザ溶接装置。

【図1】
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【図2】
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