説明

レーザ記録方法、及び該方法で得られたレーザ印字を有する包装体、もしくはラベル

【課題】レーザ発色層を内部に有している記録材にレーザマーキングする時、表面保護層の剥離、膨れ等をなくする印字方法の提供。
【解決手段】レーザ発色層を有する記録材へ印字する時、その印字物のト゛ットが独立し、不連続になるレーザ照射条件にすることを特徴とする。
【構成】 レーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材にレーザで記録する時、記録材に記録されたレーザのト゛ットが周囲のト゛ットと連続していなく、独立しているレーザ記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射による記録方法、および該方法によるレーザ印字を有する包装体、もしくはラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料容器、化粧品容器、医薬品容器、電子部品等の表面に製造年月日、賞味期限、流通番号等を表記する方法として、非接触で且つマーキング速度が速く、幅広い素材にマーキングが可能なレーザマーキングが普及してきた。また、PL法(製造物責任法)が施工され、包装体、ラヘ゛ル等には多種の印字が必要になっている。偽造、欠陥等の事故を防ぐ為にセキュリティー、あるいはトレーサビリティの観点から、表示の重要性が高まっている。
【0003】
かかる表示は、具体的には製造年月日、賞味期限の他、型式や規格、、会社ロゴマーク、産地表示、肥培管理表示、遺伝子組み替え表示、添加物表示、アレルギーに関する表示、栄養表示、成分表示、包装に関する表示であり、法で定められた情報の他、消費者が望む情報付加、生産者、販売者の商品戦略を反映した内容が必要になっている。
【0004】
従来、包装資材、ラベル、キャップ、フィルム、容器等への印刷は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法などの有版方式で行われてきた。また、賞味期限、製造年月日、ロット番号等の可変印字は、スタンプ印刷法、インクジェット印刷法、感熱転写リボン法、刻印印刷法等で行われている。
【0005】
可変文字の他、産地表示、肥培管理表示、栄養表示、成分表示などを行う場合、可変印字ではないにしても、小さなロットになるのは避けられない。市場ニーズ、商品戦略を反映するためには少量多品種になるが、それを有版方式で行うことは、高価な版を多数用意することになり、版コストの他、版の管理など極めて高コストで煩雑な作業となる。
【0006】
レーザマーキング法は、レーザ光源を利用して各種素材にマーキングを施す方法であり、対象となる素材により光源の波長、レーザ出力等を適宜選択する必要がある。レーザ光源の出力には、連続出力、非連続(ドット)出力があり、それぞれ対象素材、目的とする印字品質等により選択される。
【0007】
レーザマーキングの多くは、対象素材がプラスチック、金属であり、マーキングにより最表面に物理的、化学的変化を起こさせ、非マーキング部分との形状、光学的、色相的差異により印字が認識される。最近は、レーザに吸収を有する発色材を樹脂に練りこんだり、或いは印刷インキ、塗工液として記録素材の内部層に組み込んだ記録材が報告されている。それらレーザ発色層を内部に組み込んだ記録材においては、記録材の表面層は記録材の保護層としての役割があり、レーザ照射時にその保護層が破壊、飛散、膨れが生じなく、また、印字後も印字前と同等な密着性、接着性、耐溶剤性、耐剥離性を有していることが要求される。レーザ発色層が内部に存在すると一般に印字に伴う発熱で、発色層の構成物、例えば樹脂、添加剤、発色剤自身の分解が起こり、表面の保護層が膨れたり、剥離することが多く、それにより印字品質の低下を招く問題があった。
【特許文献1】特開平8−25809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はレーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材にレーザで記録する時、表面の保護層の膨れ、剥離性をなくするレーザ記録方法、及び該方法で印字された包装体、もしくはラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、レーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材にレーザで記録する時、記録材に記録されたレーザのト゛ットが周囲のト゛ットと連続していなく、独立しているレーザ記録方法に関する。
【0010】
また、本発明は、記録材にレーザで記録する時、そのレーザ印字条件が
(1) 4000≧走査速度(mm/秒)≧10
・ 100≧Q−スイッチ(kHz)≧2 (式中、Q−スイッチはパルスを発生させる周波数を表す。)
であることを特徴とする上記レーザ記録方法に関する。
【0011】
また、本発明は、記録材が表面保護層を有し、その表面保護層が、プラスチックフイルム、オーバ−コーテイング層、もしくは放射線硬化性ワニスの何れかで形成されることを特徴とする上記レーザ記録方法に関する。
【0012】
また、本発明は、記録材が非金属からなり、レーザ印字条件が
(1) 2000≧走査速度(mm/秒)≧200
(2) 30≧Q−スイッチ(kHz)≧3 (式中、Q−スイッチはパルスを発生させる周波数を表す。)
であることを特徴とする上記レーザ記録方法に関する。
【0013】
また、本発明は、レーザによるドット印字において、文字線幅と線数の比が
0.2mm/本 ≧文字線幅/線数 ≧0.01mm/本
であることを特徴とする上記レーザ記録方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、レーザ記録が、YAGレーザ、もしくはYVOレーザーで行われることを特徴とする上記レーザ記録方法に関する。
さらに、本発明は、上記レーザ記録方法で記録された包装体に関する。
さらに、本発明は、上記レーザ記録方法で記録されたラベルに関する。
【発明の効果】
【0015】
本態様のレーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材にレーザで記録する時、記録材に記録されたレーザのト゛ットが周囲のト゛ットと連続していなく、独立しているレーザ記録方法は、印字後に表面の膨れ、剥離等がなく、優れた耐水性、耐油性、耐摩耗性を付与することができる。
また、該レーザ記録方法による包装体、もしくはラベルを使用するとコントラストが鮮明な文字、図形、情報を有すコードを記録でき、商品、製品の製造管理、流通管理、販売において管理、広告、宣伝機能を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明をなす記録材は、その基本構成として、レーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有しており、レーザ発色層は、レーザ発色剤を樹脂へ練り込み、それをフイルム、シートととしてして貼り合わせたり、発色剤を印刷インキもしくは塗工液にして、印刷、塗工により形成する方法で得られる。好ましくは印刷インキである。レーザ発色印刷インキはレーザ発色性を有する材料から選ばれる1種以上の材料の他に、通常はバインダー樹脂を含有し、さらに必要に応じて、インキ適性、印刷適性などを向上させる添加剤などを含有する。
【0017】
記録材の保護層は、これらレーザ発色層の上に直接、或いは1層以上を介して形成され、具体的には各種プラスチックフイルム、オーバープリント層、放射線硬化層等からなる。具体的な記録材構成としては、例えばプラスチックフイルム/レーザ発色層/プラスチックフイルム、オーバープリント層/レーザ発色層/紙、プラスチックフイルム/アンカーコート層/レーザ発色層/アルミ箔等がある。
これらの構成を基本とした記録材は、袋、箱としての包装体、もしくはラベルとし、製造することができる。包装体がプラスチックフイルムを主構成とする袋の場合、積層構成において少なくともヒートシール性フイルムを有していることが好ましい。
【0018】
レーザ発色性を有する材料としては、無機材料、有機材料がある。本態様に用いられる無機材料は、例えば、1)金属単体、2)金属塩、3)金属水酸化物、4)金属の酸化物等を示す。
【0019】
1)金属の単体としては、鉄、亜鉛、スズ、ニッケル、銅、銀、金等が挙げられる。
2)金属の塩としては、炭酸銅、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、炭酸ランタン、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸カドミウム、硝酸亜鉛、硝酸コバルト、硝酸鉛、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸パラジウム、硝酸ランタン、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸カドミウム、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸パラジウム、塩化銅、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銀、塩化亜鉛、リン酸銅、リン酸鉄、リン酸コバルト、ピロリン酸銅、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸コバルト、シュウ酸銅、シュウ酸鉄、シュウ酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸鉄、安息香酸コバルト、芳香環を有するホスホン酸銅などが挙げられる。
3)金属の水酸化物としては、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アンチモン、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化ランタン等が挙げられる。
4)金属の酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マンガン、酸化モリブテン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化パラジウム、酸化ランタン、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、銅−モリブテン複合酸化物(42−903A、東缶マテリアル・テクノロジー株式会社製)等が挙げられる。 金属酸化物としては、層状構造を有する、マイカ、モンモリロナイト、スメクタイト等を用いることもできる。
【0020】
無機材料の中では、銅化合物、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物、クロム化合物、ジルコニウム化合物、またはアンチモン化合物から選ばれる1種以上の材料、より好ましくは、銅化合物、モリブデン化合物、クロム化合物、ニッケル化合物を有する材料、さらに好ましくは、銅−モリブデン複合酸化物などが挙げられる。特に、銅−モリブテン複合酸化物は自己発色性が強く、また銅−モリブデン複合酸化物自身の近傍の樹脂なども黒化させやすいため、視認性の優れた印字物が得られる。
【0021】
レーザーが照射されても無機材料自身の発色はなく、近傍のバインダー樹脂、添加剤などが炭化、分解、気化し発色する場合も有る。 レーザ発色層を有する記録材にレーザ照射することで鮮明性、コントラスト、視認性に優れた文字、図形を有する包装体、ラベルが得られる。
【0022】
顔料は印字物のバックグランドとして鮮明性、コントラスト、視認性を向上させる機能がある。レーザ発色層はレーザ発色剤の他、黄色、紅色、藍色、もしくは白色顔料等を必要に応じて併用することにより視認性の高いレーザー発色性有する記録材を得ることができる。とりわけ白色顔料として酸化チタンを使用し、レーザー発色性印刷インキ層を成す印刷インキの着色剤の一部、もしくは全部として用いると視認性の優れた印字物が得られる。酸化チタンとしてはアナターゼ、ルチル型共に使用できる。
【0023】
レーザ発色性を有する有機材料として染料も使用することが出来る。染料としては、特に制限はないが、記録材の使用目的、用途、使用環境に合わせて適宜選択可能である。染料として、特に通常の感熱記録において使用される公知の発色剤や顕色剤を使用すれば視認性の高い印字物を得ることができる。
【0024】
例えば発色剤としては通常の感熱記録において電子供与体として使われている発色性化合物が使用できる。例えば、フルオラン系、フェノチアジン系、スピロピラン系、トリフェニルメタフタリド系、ローダミンラクタム系等のロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−アミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ニトロフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(3−ジメチルアミノ)−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0025】
顕色剤は通常、発色剤と共に用いられる。
顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される物質、例えばフェノール系化合物である4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジヒドロキシジフェニル、2,2−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンジフェノール、4,4−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4−エチレンビス(2−メチルフェノール)等、その他酸性白土カオリン、ゼオライト、芳香族カルボン酸、その無水物、有機スルホン酸を用いることができる。なかでもフェノール系化合物が好ましい。
【0026】
本態様の発明では、発色材は印刷インキ、塗工液として上記発色剤と顕色剤の比率は、発色剤1重量部に対して、顕色剤2〜10重量部が好ましい。また、発色剤と顕色剤の合計がレーザ発色層中で占める割合は30〜90重量%であることが好ましい。
【0027】
ロイコ染料はレーザーの熱による発色性が良好なことから、好適に用いられる。本態様において、特に染料を用いる場合は、記録材に表面保護層があっても、染料が溶出する可能性があるため、製品の製造工程でボイル、レトルト等がないことが好ましい。
【0028】
レーザー発色層中でレーザ発色剤の合計が、レーザー発色層100重量部中に0.1〜90.0重量部含まれていると、レーザー発色層の皮膜強度、凝集力と発色性のバランスの点で好ましい。特に好ましくは、5.0〜60.0重量部である。0.1重量部未満では皮膜としての凝集力はあるものの発色性が劣る。また、90重量部を超えると、皮膜の強度、凝集力が低下し、レーザー照射により積層された記録材の折り曲げ耐性が低下し、場合によっては層間で剥離する。
【0029】
次に、レーザー発色層を構成するバインダー樹脂としてはアクリル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、 スチレン/アクリル樹脂、エチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアマイド樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独、または2種以上混合することで得られる。
【0030】
これら樹脂の中でウレタン樹脂は特にフイルムへの密着性が良く、熱的緩和性にも優れていることから記録材として好適に用いられる。また、セルロース系樹脂、特にニトロセルロース樹脂は、レーザーによる発色性が良好で、発色剤等のレーザ吸収性が乏しくても、印刷インキ皮膜層としての発色性を向上させる。
【0031】
また、バインダー樹脂として光硬化性樹脂等も使用可能である。具体的には、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエン/ポリチオール系樹脂、スピラン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂等が挙げられる。これら樹脂と必要に応じて紫外線硬化性モノマーなどの各種モノマー、プレポリマー、光重合開始剤が使用される。
【0032】
レーザー発色層中におけるバインダー樹脂の含有量は、レーザー発色層100重量部中に、10.0〜99.9重量部含まれていると、皮膜の凝集力、基材への密着性の点で好ましい。10.0重量部未満では樹脂分が少ないため皮膜の基材への密着性、皮膜の凝集力が劣るため、記録材としの耐折り曲げ性、経時安定性等の低下をまねく。また、99.9重量部を超えると、レーザー発色性が劣る。
【0033】
添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、ワックス、シランカップリング剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、難燃剤、顕色剤などを挙げることができる。
これら添加剤は、特にレーザー発色性インキの印刷適性、印刷効果等の改善を目的に使用され、その種類、使用量は、印刷方法、印刷基材、印刷条件により適宜選択できる。
【0034】
レーザー発色層は、記録材中で全体、或いは一部にベタ印刷し、使用に供される。そのレーザー発色層は、レーザー発色性印刷インキをに印刷後、溶剤乾燥、放射線硬化などの過程を経て形成される。このようなレーザー発色性印刷インキは、例えば、グラビア印刷用インキ、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、シルクスクリーン印刷用インキなどとして調整することができる。本態様の記録材では、レーザ発色性印刷インキから形成されるレーザ発色層が記録材の内部に存在しており印字時、使用中おいて印字面の剥離、飛散、摩耗等を防ぐことが可能となる。
【0035】
レーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材にはその表面保護層として1)プラスチックフイルム、2)オーバープリント層、もしくは3)放射線硬化層等が設けられる。オーバープリント層は印刷インキ、塗工液を、印刷、塗布後に乾燥することで得られる。放射線硬化層は同様に印刷、塗布、必要に応じて乾燥後、さらに紫外線、電子線照射硬化で形成する。
【0036】
表面保護層としてプラスチックフイルムを使用する場合、必要に応じてアンカーコート層、プライマー層を設ける事も可能である。表面保護層としてのフイルムは通常の印刷、塗工に使用できる透明フイルムなら、特に制限はない。具体的には、低密度ポリエチレン、無延伸および延伸ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリビニルアルコールフイルム等、及びポリ塩化ビニリデン等をコーテイングしたポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セロファン等のフイルムも挙げられる。また、蒸着フイルム、例えばシリカなどを蒸着したPETフイルムも用いることができる。フイルムの厚みは特に限定されない。例えばPETの場合、12〜40μm、OPPの場合は20〜50μmが好適に用いられる。
【0037】
表面保護層がオーバープリント層である場合、その厚みは特に限定されないが、好ましくは1μm以上である。厚みが薄いとレーザ照射した場合、レーザ波長、オーバープリント層の種類によってはレーザ照射に伴う熱でその表面がダメージを受け、積層体内部までが露出し、記録材としての印字性、耐溶剤性、耐摩耗性等が低下する。
【0038】
オーバープリント層は、印刷インキ、塗工液から形成され、そののバインダー樹脂として、例えば水溶性の、セルロース、メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カゼイン、ゼラチン、スチレン/無水マレイン酸共重合体塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン樹脂、アクリル/スチレン樹脂等が挙げられる。溶剤型樹脂としてはスチレン/マレイン酸、アクリル/スチレン樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネイト、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル等がある。オーバープリント用の印刷インキ、塗工液には、オーバープリント層の膜強度、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の向上を目的に硬化剤を併用することができる。硬化剤としてはイソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、エチレンイミン系等が使用できる。
【0039】
オーバープリント層となる塗工液には、塗工性、皮膜物性向上のため必要に応じて消泡剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、硬化剤等の添加剤、また塗工性、印刷適性向上を目的にイソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノール、トルエン等の溶剤も使用できる。
【0040】
また、表面保護層として放射線硬化型の層を設ける場合、エチレン性不飽和結合を一つ以上有するモノマー、プレポリマーオリゴマー等を用いる。本発明に使用可能なモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、スチレン、アクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートエチル、3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能モノマー、その他5官能以上のモノマーとしてジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。放射線硬化型組成物としてモノマー、プレポリマー、オリゴマーを用いる場合3官能以上のモノマー、プレポリマー、オリゴマーは20〜95重量%以内で使用することが好ましい。20重量%以下では放射線硬化層の膜密度、膜強度が低く、場合によっては印字面の平滑性が低下したり、耐水性、耐油性、耐摩耗性等の物性も低下する。95重量%以上の場合、放射線硬化層が硬くなり過ぎ印字物を折れ曲げた時、オーバープリント層の剥離が起こりやすくなる。放射線硬化層の厚さは、特に制限はないが薄い場合、レーザ照射した場合、レーザ波長によってはレーザ照射に伴う熱でその表面がダメージを受け、積層体内部までが露出し、記録材としての印字性、耐溶剤性、耐摩耗性等が低下する。好ましくは1μm以上である。
【0041】
放射線硬化型組成物には、紫外線で硬化させる場合、光重合開始剤、必要に応じて増感剤が必要となる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、ベンゾインメチルエーテル系等、増感剤としてはN−メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等のアミン系化合物、トリーn−ブチルホスフイン、ミヒラーケトン等を使用することができる。電子線硬化の場合上記の光重合開始剤、増感剤等が使用しなくても硬化させることが可能である。
【0042】
放射線硬化型組成物を硬化させるには、1)紫外線照射として超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ等が使用される。2)電子線照射の場合、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000eVのエネルギーを持つ電子を照射する。
【0043】
また、本態様の記録材は、レーザ照射により発色する層を内部に含んでおり、 表面には保護層が存在する。表面保護層とは使用形態において視認する側の最上部に存在する層で記録材をなす積層体の積層、印刷、塗工順序には直接関係していない。例えば透明フイルムを基材とし、印刷により記録材を構成する場合、順序は1)透明基材の上にレーザー発色層を印刷、2)更にプラスチックフイルムをドライラミネーション、エクストルージョン等の方法で貼り合わせることも可能である。ここでいう表面保護層とは、使用形態、即ちどちら側で視認するかにより最初の透明フイルム、或いは最後に貼り合わせたプラスチックフイルムにもなる。紙も記録材の構成要素とする場合、例えば1)紙にレーザ発色性インキを印刷、2)アンカーコート層を印刷、3)最後に透明フイルムを貼り合わせる。この場合、視認する方向は透明フイルム側からであるので、表面保護層とは一番最後に積層した透明フイルムとなる。
【0044】
基材上にオーバープリント層、レーザー発色層、必要に応じてアンカーコート層を設ける方法は特に限定されず、何れも液状の場合、インクジェット、浸漬、スピンコーティング、印刷などの方法を用いることができる。本態様に於いては印刷が好ましい。
【0045】
レーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材に、本発明であるレーザのト゛ットが周囲のト゛ットと連続していなく、独立しているレーザ記録方法で記録する場合、この記録材はアンカーコート層を有し、その構成がプラスチックフイルム/アンカーコート層/レーザ発色層の構成を有していることが好ましい。アンカーコート層の存在により、印字濃度の向上、記録材の表面状態が良好となる。
【0046】
次にレーザ照射により発色するレーザ発色層を有する記録材の生産工程について一例を説明する。
【0047】
・ レーザー発色性印刷インキの調整
印刷インキにレーザ発色剤を添加する場合、そのの種類によってはそのまま添加、攪拌しただけではインキ中への分散が不十分であったり、また分散した場合でも粒径が大き過ぎると印刷適性、印刷効果が劣ったり、或いは発色が不十分になりやすい。そのためレーザ発色剤の種類に応じて、予め分散剤、樹脂等を用いて有機溶剤、水等からなる液状溶媒に分散しておくことが好ましい。用いる樹脂、分散剤はレーザ発色剤の分散に適していることが必要がある。レーザ発色剤の使用量は添加後の最終印刷インキの全成分量に対して1〜60重量%が好ましい。より好ましくは2〜50重量%である。レーザ発色剤の含有量が60重量%を超えると分散不良を起こしやすく、記録材の記録特性を損なう可能性がある。1重量%未満の場合、発色性の低下が大きくなる。
【0048】
レーザ発色剤を有機溶剤、水等の液状媒体中に分散して塗工液を調製する際に使用する分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)等が挙げられる。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。
【0049】
有機溶剤としては、印刷用に用いられる公知の溶剤を用いることが可能であり、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、メチルイソブチルケトン、1−メトキシー2−プロパノール、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0050】
該レーザ発色性印刷インキは必要に応じて他の印刷インキ、例えば黄色インキ、紅インキ、藍インキ、白色インキにそのまま添加、混合することで、インキ色相の異なるレーザ発色性印刷インキを得る事が可能となる。
【0051】
特に、レーザー発色により黒化するレーザ発色剤を含むインキを製造し、白色印刷インキに添加した場合、レーザー発色によりコントラストの高い、視認性に優れた印字物が得られる。
【0052】
2)フイルム、紙などで構成される基材への印刷
本態様に用いられる印刷基材としては、プラスチックフイルム、紙が挙げられる。プラスチックフイルムとしては低密度ポリエチレン、無延伸および延伸ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、ポリビニルアルコールフイルム等、及びポリ塩化ビニリデン等をコーテイングしたポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セロファン等のフイルムも挙げられる。また、蒸着フイルム、例えばシリカなどを蒸着したPETフイルムも用いることができる。紙としてはアート紙、コート紙、上質紙、和紙、合成紙等が使用できる。
【0053】
基材の厚みは特に限定されない。プラスチックフイルムの場合、通常印刷に用いられるフイルムがそのまま適用できる。例えばPETの場合、12〜40μm、OPPの場合は20〜50μmが好適に用いられる。
【0054】
記録材の製造においては、使用形態により、レーザ発色性印刷インキと異なる色相の印刷インキをレーザ発色性印刷インキ層の直接の下地となるよう重ね刷りするとバックグランドとのコントラストで視認性の高い印字が得られる。また、レーザ発色性印刷インキを重ね刷りすることで印字濃度を向上させることができる。
【0055】
上記の構成により得られた記録材のレーザ発色層の厚みは特に限定されないが、好ましくは1〜100μm/層である。1μm未満であると発色層が薄いことからレーザー発色濃度が低下し、視認性が劣る。100μmを超えると発色性は十分なものの発色層の強度が十分でないと記録材としての力学的耐性に問題が出る。
【0056】
このようにして、得られたレーザ発色性を有する記録材には製品名、製造者名、製造年月日、ロット番号、規格、賞味期限、会社ロゴマーク、産地表示、肥培管理表示、遺伝子組み替え表示、添加物表示、アレルギーに関する表示、栄養表示、成分表示、バーコード、RSSコード、2次元コード等をレーザ照射により印字できる。記録材の内部にレーザ発色層が存在しているので、従来の印刷物で問題となっていた印字の剥離、傷つきをなくすができ、また油、水分との接触による字のかすれを無くすることができる。
【0057】
レーザによる印字は、英数字、ひらがな、漢字等で目的とする内容を表示する他、バーコード、或いは2次元バーコードとして、更に多量の各種情報を書き込むことも可能である。2次元コードとしては、QR(モデル1)、QR(モデル2)、マイクロQR、DataMatrix等がある。↑
次いで、本態様の記録方法について説明する。本態様に好適に使用できるレーザーとしては、例えば炭酸ガスレーザー(10640nm)、YAGレーザー(1064nm)、YVOレーザー(1064nm)等が挙げられる。
【0058】
好ましくはYAGレーザー、YVOレーザーであり、更に好ましくはレーザー光の強度分布がシングルモードのパワー分布であるYVOレーザーであり、これによりより精細な印字が可能となる。
【0059】
YAGレーザー、若しくはYVOレーザーの照射は1)LD%、2)Q−スイッチ周波数、及び3)走査速度により印字品質を制御できる。
【0060】
LD%は、レーザー出力の相対的な強さを表す。LD%によりレーザーパワーを制御できるが、大きくし過ぎると表面保護層がダメージを受けやすい。また、小さすぎると印字が不鮮明になる。
【0061】
Q−スイッチは、パルスを発生させる周波数を表す。Q−スイッチも印字品質に影響を及ぼし、大きすぎても、小さすぎても印字性が低下する。
走査速度は印字ドットの間隔、印字時間等を制御するもので遅過ぎると印字ドットが集中し、場合によってはレーザー発色層、表面保護層がダメージを受ける。また、早過ぎるとと、印字ドット間が広くなり場合によっては印字濃度、印字品質の低下がみられる。
【0062】
本態様のレーザ発色性を有する記録材にレーザで記録する記録方法においては、レーザのト゛ットが周囲のト゛ットと連続していなく、独立していることが必要である。ドットが何れかの方向でも連続的になればその線上に沿って表面保護層との接着、密着が低下することが一因である。そのため文字、図形、コードを形成するあるドットに注目した時、そのドットは周囲の何れのドットとも連続していなく、独立していることである。少なくともレーザドット径の3分の1程度の距離は離すことが好ましい。レーザマーキングに使用するレーザのドット径は、一般にシングルモードの場合約20〜70μm程度、マルチモードの場合は約100μmである。使用しているレーザマーキング装置のドット径を考慮した間隔が必要となる。ドットの間隔は、その走査線上の間隔の他、隣の線をなすドットとの間隔もある。それは、線の種類、単線或いは太線、太線の場合、線幅、線数といったものにも関係する。
単線は、レーザドットの1列のみからなり、その文字の視認性は、一般には太線より劣る。太線は、基本的には何本かの単線より構成され、文字の線幅或いはその線幅中に描く線数を調整することでその印字濃度を大きく変化させることができる。
【0063】
レーザによるドット印字において、文字線幅と線数の比は、好ましくは
0.3mm/本 ≧文字線幅/線数 ≧0.005mm/本
である。文字線幅/線数が0.3mm/本より大きいと印字濃度が劣る。逆に0.05mm/本より小さいと印字濃度は高いもののレーザドットの密度、重なりが多くなり、印字物の表面がダメージを受け、耐溶剤性、耐摩耗性の低下を招く。更に好ましくは
・ 2mm/本 ≧文字線幅/線数 ≧0.01mm/本
である。
【0064】
また、その時のレーザ照射条件として、好ましくは
(1) 4000≧走査速度(mm/秒)≧10
・ 100≧Q−スイッチ(kHz)≧2 (式中、Q−スイッチはパルスを発生させる周波数を表す。)
である。
【0065】
走査速度、Q−SW周波数はドット間隔を決める重要な要素でもあり、走査速度が4000mm/秒以上ではドット間隔を独立させるには十分な条件だが、印字濃度のとの両立が困難になる。逆に10mm/秒以下では印字濃度は高いものの、ドット間隔の調整がQ−SW周波数でを変えても困難となる。
【0066】
Q−SW周波数についても同様なことが言える。即ち100kHz以上では、ドット間隔が密になり過ぎ、走査速度の調整でも印字濃度とドット間隔を同時に満足できない。また2kHz以下ではピークパスルが強すぎる為、印字対象によっては表面へのダメージが多く、走査速度、或いはレーザパワーの調整によっても適正なドット間隔、印字濃度が得にくい。
【0067】
記録材の種類によってもドット間隔の適性化が必要である。記録材が非金属からなる場合、例えば、プラスチックフイルム/レーザ発色層/プラスチックフイルム、プラスチックフイルム/レーザ発色層/紙等の場合、レーザ印字条件が
(1) 2000≧走査速度(mm/秒)≧200
(2) 30≧Q−スイッチ(kHz)≧3 (式中、Q−スイッチはパルスを発生させる周波数を表す。)
であれば表面保護層の剥離、膨れをより防止でき、また適正な印字濃度が得られる。これは記録材に金属、例えばアルミ箔、アルミ蒸着フイルム等を含んでいれば、その反射にも影響されるためと思われる。特にフイルムにおいては、ある程度レーザ光が透過するため例えばQ−SW周波数を低くし、ピークパルスが強い条件下でも表面保護層の剥離、膨れの防止と適正な印字濃度が得られると推定される。
【0068】
本発明はラベルにも有用で、表面保護層の膨れ、剥離がなく視認性の高いバーコードラベル、商品表示ラベル等、或いは類似の機能を有する荷物用タッグ、ワッペン、シール、ステッカー等が得られる。
【0069】
ラベルの基本構成としては基材/粘着剤層/剥離紙である。基材としては本発明の記録方法が適用されるレーザ記録が可能な記録材がそのまま使用できる。粘着剤層は、天然ゴム、合成ゴム、ポリイソブチレン、2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート等を用いたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の塗工液を塗工、乾燥した塗膜で形成される。塗工液には必要応じて、アビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体等の粘着付与剤、イソシアネート系、エポキシ系硬化剤を併用することができる。
【0070】
剥離紙としては、紙基材にシリコーン系、フッ素系剥離剤を塗付した離型紙、ポリオレフイン系樹脂を被覆したラミネート紙等が利用できる。レーザ記録は、ラベルを対象とするものに貼付する前、或いは貼付した後でも可能である。
【0071】
[実施例]
以下、実施例に基づき本態様をさらに詳しく説明する。実施例中、部は重量部を表す。
(合成例1)ウレタン樹脂の合成
攪拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにポリテトラメチレングリコール(分子量2000、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフイで測定される数平均分子量を示す)1000部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素雰囲気下、85℃で5時間反応させた。次いで、40℃に冷却後イソホロンジアミン82部、ジ−n−ブチルアミン7.8部、トルエン1244部、メチルエチルケトン1244部およびイソプロピルアルコール573部を添加し、攪拌下40℃で5時間反応させた。このようにして得られたウレタン樹脂の固形分は30%、粘度は350cps(25℃)であった。
(合成例2)アクリル樹脂の合成
攪拌機、温度計、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにイソプロピルアルコール600部を仕込み、攪拌下、窒素雰囲気下で80℃迄昇温した。次に、予め調整して置いたアクリル酸28部、アクリル酸メチル20部、メタクリル酸メチル420部、アクリル酸ブチル130部およびアゾビスイソブチロニトリル12部の混合液を2時間で滴下した。滴下後1時間経て、アゾビスイソブチロニトリル2部を加え、更に2時間反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンで固形分の調整を行った。このようにして得られたアクリル樹脂の固形分は30%、粘度は340cps(25℃)であった。
(合成例3)フェニルホスホン酸銅の合成
水1350部に、フェニルホスホン酸130部を溶解させた。これに硫酸銅5水和物103部を添加し、室温下で2時間攪拌した。析出物を濾過し、水で洗浄を行い、100℃で減圧乾燥させ、フェニルホスホン酸銅35部を得た。
【0072】
表面保護層をなす塗工液としてUVニスを用いた。UVニスの組成を以下に示す。
UVニス:ペンタエリスリトールヘキサアクリレート3部/ペンタエリスリトールトリアクリレート3部/トリプロピレングリコールジアクリレート30部/3−フェノキシプロピルアクリレート8部/イルガキュアー184(チバガイギー社製)6部/IPA50部
(実施例1)
レーザ発色性インキ
合成例3で得たレーザ発色剤フェニルホスホン酸銅30部、合成例1で得たウレタン樹脂80部、メチルエチルケトン10部の混合物をペイントシェーカで練肉し、レーザ発色性印刷インキを得た。得られた印刷インキを更に、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比50:40:10)で希釈し、ザーンカープ#3(離合社製)で17秒(25℃)に調整し、レーザ発色性希釈インキを得た。
白色インキの調整
チタニックスJR805(テイカ株式会社製)を30部、合成例1で得たウレタン樹脂80部、メチルエチルケトン10部の混合物をペイントシェーカで練肉し、印刷インキを得た。得られた印刷インキを更に、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比50:40:10)で希釈し、ザーンカープ#3(離合社製)で17秒(25℃)に調整し、希釈インキを得た。
記録材の作成
基材フイルムとしてコロナ放電処理PET(東洋紡績社製「エステルE5102」、膜厚12μm)の処理面側に、版深35μmのグラビア版を用いて印刷速度80m/分、乾燥温度60℃で印刷し、印刷物を得た。得られたPET印刷物を接着剤「EL540/CAT−RT80」(東洋モートン社製)を塗布し、乾燥させた。塗布面側に溶融ポリエチレンを中間層として低密度ポリエチレン「TUX−FCD」(トーセロ製、膜厚40μm)を貼り合わせる溶融押し出しラミネーションを行った。得られたラミネート印刷物は40℃で2日間エージングを施し、最終的にレーザー発色性印刷インキ層がラミネートされた記録材を得た。
(実施例2〜11、比較例1,2)
実験例2〜11、比較例1,2に用いたレーザ発色性印刷インキ、及び記録材の作成方法は実験1と同様である。実施例2〜11、比較例1,2に用いた顔料、レーザ発色剤、バインダー樹脂の種類、重量部、記録材の印刷基材を表1に示す。尚、実施例5〜7はレーザ発色剤と顔料を樹脂、溶剤と混合した後にペイントシェーカで分散した。実施例11については、PET/レーザ発色層/PETに粘着剤「オリバインBPS−1109」(東洋インキ製造(株)製)を固形分量で25g/mになるよう塗工し、更に離型紙「ノンカール」(王子化工(株)製)を貼り合わせ、レーザ記録可能なラベルを作成した。
また、実施例3では表面保護層としてUVニスを用いた。UVニスは塗布後、乾燥し、引き続き80W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離、コンベア速度10m/分の条件下で2パス通した。
【0073】
記録材の構成は
実施例1、2:(レーザ照射側)PET/レーザ発色層/PE
実施例3:( 〃 )放射線硬化型ワニス/レーザ発色層/紙
実施例4:( 〃 )PET/レーザ発色層/白インキ層/アルミ蒸着PET
実施例5〜7:( 〃 )Ny/レーザ発色層/PE
実施例8〜10:( 〃 )PET/レーザ発色層/PE
実施例11:( 〃 )PET/レーザ発色層/PET
比較例1,2:( 〃 )PET/レーザ発色剤/PE
である。
【0074】
【表1】

* ATO被覆マイカ(レーザフレア825、メルク株式会社製)
* Ny:「ON−RT」(ユニチカ社製)
* アルミ蒸着PET
実施例1〜11および比較例1〜2で得られた記録材について、YVOレーザー「キーエンス社製MD-9600」、YAGレーザー「キーエンス社製MD―H9800」、でレーザーによる印字を行い、ドットの状態 膨れ/剥がれ性、視認性の試験を評価した。各試験方法について以下に説明する。
【0075】
ドットの状態:各印字条件におけるドットの状態を表す。
連続:ドットが連続している
不連続:ドットが連続していなく、独立している。
【0076】
膨れ/剥がれ性:3段階で評価した。結果を表2に示す。
○:表面保護層の膨れ、剥がれがない。
△:表面保護層の膨れ、剥がれが少しある
×:表面保護層の膨れ、剥がれが甚だしい。
【0077】
視認性:3段階で評価した。結果を表2に示す。
◎印字濃度が極めて高く、視認性が極めて良好
○:印字濃度が高く、視認性が良好。
△:印字濃度があまり高くなく、視認性があまり良くない。
×:印字濃度、視認性が殆どない。
【0078】
実施例、比較例から分かるようにト゛ットが連続の場合、膨れ、剥がれが生じやすい。また、印字方向のト゛ットが連続の場合、印字濃度が一見高くなりそうであるが、印字の線幅/線数の値が大きいと逆に濃度が低くなり、視認性が低下する。また、場合によっては表面の膨れ、剥がれによっても濃度の低下をまねく場合もある。
【0079】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照射により発色するレーザ発色層を内部に有する記録材にレーザで記録する時、記録材に記録されたレーザのト゛ットが周囲のト゛ットと連続していなく、独立しているレーザ記録方法。
【請求項2】
記録材にレーザで記録する時、そのレーザ印字条件が
(1) 4000≧走査速度(mm/秒)≧10
・ 100≧Q−スイッチ(kHz)≧2 (式中、Q−スイッチはパルスを発生させる周波数を表す。)
であることを特徴とする請求項1記載のレーザ記録方法。
【請求項3】
記録材が表面保護層を有し、その表面保護層が、プラスチックフイルム、オーバ−コーテイング層、もしくは放射線硬化性ワニスの何れかで形成されることを特徴とする請求項1または2記載のレーザ記録方法。
【請求項4】
記録材が非金属からなり、レーザ印字条件が
(1) 2000≧走査速度(mm/秒)≧200
(2) 30≧Q−スイッチ(kHz)≧3 (式中、Q−スイッチはパルスを発生させる周波数を表す。)
であることを特徴とする請求項1から3何れか記載のレーザ記録方法。

【請求項5】
レーザによるドット印字において、文字線幅と線数の比が
0.2mm/本 ≧文字線幅/線数 ≧0.01mm/本
であることを特徴とする請求項1から4何れか記載のレーザ記録方法。
【請求項6】
レーザ記録が、YAGレーザ、もしくはYVOレーザーで行われることを特徴とする請求項1から5何れか記載のレーザ記録方法。
【請求項7】
請求項1から6何れか記載のレーザ記録方法で記録された包装体。
【請求項8】
請求項1から6何れか記載のレーザ記録方法で記録されたラベル。




【公開番号】特開2007−313875(P2007−313875A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219524(P2006−219524)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】