説明

レーザ誘導装置

【課題】レーザ発振部と受信部を備えた飛しょう体において、目標と背景を高精度で分離し、背景への誤追尾を防止し、目標に対して精密に誘導することのできる誘導装置を得る。
【解決手段】レーザ発振部103と受信部104を備えた飛しょう体1において、目標2を含む走査範囲にレーザ発振部103で発振したレーザ光を照射する。反射光を受信部104で検出し、反射光の受信強度と発振から受信までの遅延時間を用いて画像生成部105において走査範囲の強度画像と3次元画像を生成する。目標認識部106において3次元画像から走査範囲の各位置における高度値の標準偏差を計算し、平面領域と非平面領域とを判定し、非判定領域に対して強度画像と3次元画像を組み合わせた目標認識処理を行って目標と背景を分離することにより、目標の認識確率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛しょう体に搭載する誘導装置に関するものであり、特に、目標の検出にレーザ光を利用する誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体に搭載する誘導装置としては、例えば誘導装置内あるいは外部装置のレーザ照射装置から目標にレーザ光を照射し、目標からの反射レーザ光を誘導装置内のレーザ検知器によって検出することによって目標の方向を求めるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−195900号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛しょう体を目標に向けて誘導する誘導装置の要求性能として、複雑な背景下に存在する目標にも対処可能なように目標とその目標以外の背景とを高精度に分離し、分離した目標に向けて精密に飛しょう体を誘導する誘導性能が挙げられる。
目標とその目標以外の背景とを高精度で分離するためには、レーザ光を用いて目標を含む領域を3次元計測して得られる高度情報を使用した目標認識処理が有効であるが、背景が起伏のある地面である場合には、起伏により高度変化があった箇所を目標であると誤認識し、誤って認識したその起伏のある箇所に向けて飛しょう体を誘導してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、レーザ光を利用し、目標と背景を高精度で分離、追尾維持しつつ誘導することのできる誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のレーザ誘導装置は、レーザ光を目標方向に走査しながら照射し、前記目標及びその背景領域で反射された反射光に基き目標を認識し、当該目標に向けて飛しょう体を誘導するレーザ誘導装置であって、前記反射光を用いて、前記目標及び前記背景領域の強度画像と高さ情報を含む3次元画像とを生成する画像処理部と、前記3次元画像の中からその一部の領域にあたる部分領域を複数個所抽出し、抽出した前記部分領域において3次元画像の高さに関する標準偏差を算出し、当該標準偏差に基き前記部分領域が平面であるか否かを判定して平面でない前記部分領域の強度画像から目標を認識する目標認識部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明のレーザ誘導装置によれば、背景に起伏のある場合であっても目標と背景とを正しく分離して、目標を高精度に追尾維持しつつ誘導可能なレーザ誘導装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る飛しょう体誘導装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るレーザ距離計の一部を構成する送信系光学部101と受信系光学部102と光学系駆動部108の動作を説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る飛しょう体誘導装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】実施の形態1の画像生成部、目標認識部及び追尾処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1の平面判定処理部が実行する平面判定処理のための高度標準偏差計算範囲及び平面判定処理の一例を説明する図である。
【図6】実施の形態1の平面判定処理部が出力する位置に対する高度標準偏差の結果の一例である。
【図7】実施の形態2の追尾処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、実施の形態1のレーザ誘導装置について図を参照して説明する。
図1はこの発明に係る実施の形態1のレーザ誘導装置の構成とその運用状態を説明する図である。レーザ誘導装置10は飛しょう体1に搭載され、レーザ光を目標2の方向に向けて走査範囲3の範囲内で照射する。そして、目標とその背景となる背景領域で反射された反射光に基き作成した画像から目標2を認識し、誘導信号を生成する。
【0010】
レーザ誘導装置10は、レーザ光を発振するレーザ発振部103と、レーザ光を所定の方向に向けて照射する送信系光学部101と、目標やその背景4で反射された反射レーザ光を受光する受信系光学部102と、送信系光学部101と受信系光学部102を駆動する光学系駆動部108と、反射レーザ光を検出する受信部104と、受信部で検出した信号から走査範囲3の強度画像及び3次元画像を生成する画像生成部105と、画像生成部で生成した強度画像及び3次元画像から目標を認識する目標認識部106と、目標認識部で認識した目標を追尾し誘導信号を算出する追尾処理部117から構成される。
【0011】
レーザ発振部103は、例えば1.5[μm]程度の波長の赤外レーザである。送信系光学部101と受信系光学部102とレーザ発振部103と受信部104と光学系駆動部108とで、レーザ距離計(Laser Range Finder、LRF)を構成する。
送信系光学系101はレーザ発信部103からのレーザ光を集光して目標方向にレーザ光を照射する。受信系光学系102は所定のエリアから反射されたレーザ光を受光して受信部104に出力する。光学系駆動部108は例えばジンバルなどの回転台である。送信系光学系101と受信系光学系102は、別途設けられる制御部(図示せず)から制御信号を入力した光学系駆動部106により回転方向の制御がなされ、所望のエリアに対しレーザ光を照射し走査可能となっている。光学系駆動部108の座標系(x'、y'、z')は飛しょう体1の機軸(z軸)を基準に設定されており、回転制御は各座標軸(x'、y'、z’)における回転角(φ’、θ’、ψ’)で制御される。
【0012】
画像生成部105は、受信部104で検出した信号に基づき走査範囲3の強度画像及び3次元画像を生成する。目標認識部106は画像生成部で生成した強度画像及び3次元画像から目標を認識する。目標認識部106が目標を認識する動作については後で説明する。
飛しょう体1はGPS受信器や3軸ジャイロ等からなる測位部を備え、自己位置や自己の姿勢方位の情報を取得する。なお、飛しょう体1には測位部108や誘導装置10以外の機器も多数搭載されているが、ここでは説明を省略する。
【0013】
図2は、レーザ距離計の一部を構成する送信系光学部101と受信系光学部102と光学系駆動部108の動作を説明する図である。
図2において光学系駆動部108は走査範囲3の画像を生成するために、送信系光学部101及び受信系光学部102をアジマス方向及びエレベーション方向に駆動する。このようにアジマス方向及びエレベーション方向に駆動することで走査範囲3全体にレーザ光を照射し、受信系光学部102は走査範囲3に関してN×M画素分の反射レーザ光を受光する。
【0014】
図3は実施の形態1のレーザ誘導装置の動作を説明するフローチャートであり、以下、このフローチャートに基き動作を説明する。
送信系光学部101を経由して、レーザ発振部103で発振したレーザ光を照射する。レーザ光の照射範囲は送信系光学部の構成によって決定される(ステップS01)。
ステップS01で照射したレーザ光の目標2あるいは背景4からの反射レーザ光を、受信系光学部102を経由して受光し、単一あるいは複数の検出素子を備えた受信部104で検出し、受信信号を画像生成部105へ出力する(ステップS02)。
走査範囲3のうち未だレーザ光を照射していない範囲が残っていればステップS04へ移る。走査範囲3の全体に対してレーザ光を照射し、図2に示す走査範囲3をN×M画素に分割した各画素からの反射レーザ光の検出が完了していればステップS05へ進む(ステップS03)。
送信系光学部101及び受信系光学部102を光学系駆動部108により駆動することにより、レーザ光を照射及び受光する範囲を変化させ、走査を実施する(ステップS04)。
【0015】
次に、画像生成部105は、受信部104から入力された受信信号を用いて走査範囲3の強度画像及び3次元画像を生成する(ステップS05)。
【0016】
図4は画像生成部105、目標認識部106の各々の構成を示すブロック図である。
画像生成部105は、ピーク検出部109と測距部110と強度画像生成部111と3次元画像生成部112から構成される。画像処理部105のピーク検出部109は、受信部104から受信した走査範囲3のN×Mの各画素(図2参照)に対応した受信信号について、各受信信号の強度のピーク値を検出する。そして受信信号強度のピーク値に基いて、強度画像生成部111は走査範囲3の強度画像を生成する。一方、測距部110はレーザ光の送信から反射レーザ光のピーク検出までの経過時間を用いて飛しょう体から各画素までの距離を算出する。距離の算出は通常のLRFの動作と同じである。3次元画像生成部112は、距離情報に基づいて走査範囲3の3次元画像を生成する。
【0017】
目標認識部106は、3次元画像生成部112から3次元画像を受けて平面判定処理を実行する平面判定処理部113と、強度画像生成部111からの強度画像と平面判定処理部113の平面判定の結果に基き目標認識を行う認識処理部114とから構成される。
平面判定処理部113は、3次元画像生成部112で生成した3次元画像を用いて、平面判定処理部113で、走査範囲3のうち平面と判定される領域と非平面と判定される領域とを分離する(ステップS06)。
【0018】
図5は、平面判定処理部113が実行する平面判定処理のための高度標準偏差計算範囲及び平面判定処理の一例を説明する図である。
平面判定処理部113はN×M画素からなる走査範囲3のうち、N×M画素の中の任意の画素位置(i、j)を中心としたn画素×m画素を抽出し(図5(a)を参照)、抽出した高度標準偏差計算範囲5(画素位置(i、j)を中心としたn画素×m画素の範囲)について、n×m個の各画素の高度値の標準偏差を計算する。すなわち、走査範囲3を走査したLRF相当の構成(送信系光学部101と受信系光学部102とレーザ発振部103と受信部104と光学系駆動部108)の動作により、走査した範囲の高度(高さ)情報を取得できるが、この高度情報を用いて、所定の高度標準偏差計算範囲内(選択した画素位置(i、j)を中心としたn画素×m画素の範囲内)で高度に関する標準偏差を算出して、算出対象の高度標準偏差計算範囲5の中心の画素位置(i、j)と関連付けする。なお、選択した画素位置(i、j)を中心としたn画素×m画素の範囲の大きさについては、目標やその背景の状況に応じて適宜設定をする。
中心となる画素位置(i、j)の位置を走査範囲3の全範囲で移動させ(i=1〜N、j=1〜M)、走査範囲3の各画素について、それを中心とした高度に関する標準偏差である高度標準偏差118を計算する。
図5(b)は、高度標準偏差計算範囲5内の位置における高度標準偏差118の結果の一例をグラフ化したものである。
高度標準偏差118の値が大きいことは、高度標準偏差計算範囲5内での高度(高さ)の分布が大きいことを示している。一方、高度標準偏差118の値が小さいことは、高度標準偏差計算範囲5内での高度差が小さいことを示している。そこで実施の形態1では、平面判定処理部113は、計算により得られた高度標準偏差118が事前に設定した平面判定閾値を超えない画素は平面領域と判定するようにした。また、高度標準偏差118が平面判定閾値を超える画素については非平面領域と判定するようにした。
【0019】
認識処理部114は、強度画像生成部111において生成した強度画像と、平面判定処理部113において非平面領域と判定された範囲の3次元画像とを用いて、目標を認識、選択する(ステップS07)。
認識処理部114には、事前情報として目標の形状、画像データなどを格納し、強度画像及び3次元画像と照合することにより、強度画像及び3次元画像の中で目標に該当する部分のみを選択する。
追尾処理部117は、認識処理部114で選択した目標を追尾し、飛しょう体を目標に向かって誘導するための誘導信号を算出する(ステップS08)。
【0020】
図6は位置に対する高度標準偏差の結果の一例である。認識処理部114は、従来のレーザ走査により得られた3次元画像からは、図6のAで示した領域を1つの物体であると誤って判定する場合があった。しかしながら、実施の形態1のレーザ誘導装置は判定処理部113を備え、判定処理部113は図6のAで示した領域には平面判定閾値を超えない画素が続くことからAで示した領域は平面領域であると判定を行い、その結果を認識処理部114に出力する。平面判定処理部113からの平面判定処理の結果を受けた認識処理部114は、3次元画像と、平面判定処理の結果と、強度画像生成部111からの強度画像とから、平面領域である領域Aに車両が存在することを推定する。
【0021】
このように、実施の形態1のレーザ誘導装置では、従来、背景が起伏のある地面である場合には起伏により高度変化があった箇所を目標であると誤認識し、誤って認識した箇所に向けて飛しょう体を誘導してしまうという課題があったが、この誤認識の課題を解決して、起伏のある地面上の物体(図6の例では車両)を正しく認識して飛しょう体を誘導することができる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明したレーザ誘導装置に、追尾処理部117の前処理として、目標との距離を改めて演算する距離演算部と、演算で得られた目標との距離情報に基いて画像を再生する画像再生部を備える。
【0023】
図7は、実施の形態2に係る距離演算・追尾処理部107の構成を示すブロック図である。距離演算・追尾処理部107以外の画像処理部105、目標処理部106については実施の形態1と同じであり説明を省略する。
距離演算・追尾処理部107は、認識処理部114で認識した目標情報を取得して、その目標までの距離を算出する距離演算部115と、距離演算部115の距離情報と認識処理部114で認識した目標情報を入力して、目標との相対距離に応じた大きさで目標の強度画像を再生する画像再生部116と、画像再生部116で再生された画像に基き目標を追尾し、飛しょう体を目標に向かって誘導するための誘導信号を算出する追尾処理部117とからなる。
【0024】
追尾処理部117は、目標との相対距離に応じた目標の強度画像に基き追尾処理を実行できるので、飛しょう体1の背景への誤追尾を防ぎ、目標に対して追尾を維持しつつ飛しょう体1を精密に誘導することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 飛しょう体、2 目標、3 画像生成のための走査範囲、4 背景、5 高度標準偏差計算範囲、10 誘導装置、101 送信系光学部、102 受信系光学部、103 レーザ発振部、104 受信部、105 画像生成部、106 目標認識部、107 距離演算・追尾処理部、108 光学系駆動部、109 ピーク検出部、110 測距部、111 強度画像生成部、112 3次元画像生成部、113 平面判定処理部、114 認識処理部、115 距離演算部、116 画像再生部、117 追尾処理部、118 高度標準偏差。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を目標方向に走査しながら照射し、前記目標及びその背景領域で反射された反射光に基き目標を認識し、当該目標に向けて飛しょう体を誘導するレーザ誘導装置であって、
前記反射光を用いて、前記目標及び前記背景領域の強度画像と高さ情報を含む3次元画像とを生成する画像処理部と、
前記3次元画像の中からその一部の領域にあたる部分領域を複数個所抽出し、抽出した前記部分領域において3次元画像の高さに関する標準偏差を算出し、当該標準偏差に基き前記部分領域が平面であるか否かを判定して平面でない前記部分領域の3次元画像と強度画像から目標を認識する目標認識部と、
を備えることを特徴とするレーザ誘導装置。
【請求項2】
前記目標認識部は前記標準偏差と予め定めた閾値とを比較し、前記標準偏差が前記閾値よりも小さいときに、前記標準偏差を算出した部分領域が平面であると判定することを特徴とする請求項1記載のレーザ誘導装置。
【請求項3】
前記目標認識部で認識した前記目標までの距離を算出する距離演算部と、
前記目標までの距離に応じた大きさで前記目標の強度画像を再生する画像再生部と、
前記画像再生部で再生された目標に向けて飛しょう体を誘導する追尾処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1、2いずれか記載のレーザ誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−237067(P2011−237067A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107220(P2010−107220)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】