説明

レーザ誘起光学破壊(LIOB)を使用する心臓アブレーション用システム及び方法

レーザ誘起光学破壊(LIOB)を用いて表面下の高度に空間選択的な心臓アブレーションを達成するシステム及び方法が開示される。目標ではない心臓及び動脈/静脈組織に対するダメージは本開示によって最小化される。カテーテルが、例えば静脈を介して、心臓に入り、カテーテルの場所が決定/確認される。レーザパルスは、前記カテーテル内の光学経路を通ってガイドされ、前記カテーテルの端部において又は近くに、前記目標ではない静脈/心臓組織を通るレーザ放射線を目標組織に集束させる集束構造が提供される。前記集束構造において、レーザ誘起LIOBが生じ、関連する機械的効果が前記目標組織に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間選択的な組織アブレーションを達成するシステム及び方法、より具体的には、レーザ誘起光学破壊(LIOB、laser induced optical breakdown)を用いて空間選択的な心臓アブレーションを始めるシステム及び方法を対象にする。開示されるシステム及び方法は、インビボ(in-vivo)臨床応用に対して適合され、組織表面下の器官/構造に関して実施されることができる。
【背景技術】
【0002】
心房細動及び他の不整脈は、特にこのような病気の有病率が年齢とともに増大する先進国世界において、医療従事者にとって主要な課題になっている。これらの状態は、一般に、速い心拍、目まい、息切れ、痛み及び持久力の欠如により表れ、虚血、脳卒中及び心不全のような心臓の深刻な病気に対する個人の感受性を増大する可能性がある。
【0003】
通常の哺乳類の心臓において、心房筋及び心室筋は、(右心房の壁で見つかる)洞房(SA)結節において生成される活動電位から生じる同期刺激(synchronized excitation)によって収縮する。前記活動電位は、心房内の規則的な伝導経路に沿って房室(AV)結節に伝搬し、前記心房を収縮させる。前記AV結節から、前記活動電位は、次いで、ヒス・プルキンエの束を通って伝播し、ここで心室の収縮を引き起こす。
【0004】
心房細動の根本原因は、心房で散乱し、心拍の上昇並びに発作性頻脈又は慢性頻脈のいずれかを起こす電気インパルスの非同期的な渦の不規則な伝導を引き起こす心臓組織の病理状態である。従来の治療は、薬理学的及び外科的介入を含み、両方とも重大な副作用を引き起こす可能性がある。薬物療法にうまく反応しない患者は、埋め込み除細動装置、又はコックス−メイズ(Cox-Maze)として知られる外科処置に対する候補でありうる。この処置は、心房壁における複数の切り込みの作成を含み、後に縫合が続き、心房細動を引き起こす非同期インパルスの伝導をブロックする迷路のようなパターンを作成する。加えて、左心房への肺静脈の口(開口)は、時々、非同期インパルスの大部分がそこで生じることを示唆する証拠が存在するので、前記Cox-Maze処置中に電気的に絶縁される。この技術は、非常に高度に訓練された個人によってのみ実行され、長い手術/外科時間期間を要する。
【0005】
Cox-Maze処置をエミュレートすることを意図されたアブレーション技術及び/又は治療が開発されている。例えば、カテーテルが、選択された場所における心筋組織の壊死を熱的に誘起する(約60℃)ために心房に差し込まれることができる。前記壊死は、瘢痕組織の形成を引き起こし、これによりCox-Mazeにより達成されるような非同期インパルスに対する伝導ブロックを引き起こす。しかしながら、暗示されることができるように前記組織が除去される又は穴をあけられるべきでないことに注意することは重要である。複数の異なるエネルギ源が、このようなカテーテルベースのアブレーションシステムにおいて使用されており、最も人気のあるエネルギ源は無線周波数(RF)及びクライオサーマル(cryothermal)である。最近になって、超音波、マイクロ波及びレーザエネルギ源が、RF及びクライオサーマルの代替として増大する関心を受けている。
【0006】
標準的なRFアブレーションにおいて、抵抗加熱が生じ、前記カテーテルが理論的には大きな瘢痕組織、例えば直径5mmかつ深さ3mmになる瘢痕組織を作ることができるが、この効果は、心臓内の状態及び特に心房内を流れる血液の冷却効果により制限される。表面組織は、しばしばRFの使用により逆に作用され、絶縁を引き起こし、エネルギの効率的な使用を減少する前記組織に対する前記カテーテルの不所望な付着及び炭化のような結果を生じる。瘢痕が貫壁性ではない(すなわち心筋の全層を貫通しない)場合、完全な伝導ブロックは保証されることができず、心房壁の厚さは、1つのアブレーションライン内で大幅に、例えば10倍で異なりうる。したがって、アブレーション深度の制御は、前記処置の効力において重要である。加えて、Thomas他('Production of Narrow but Deep Lesions...,' Las. Surg. Med. 38:375-380 (2001))は、RFアブレーションのラインが広く、心房質量の損失が機能を損ない、脳卒中の増大されたリスクを引き起こしうることを主張している。
【0007】
対照的に、Thomasは、レーザカテーテルにより作成された瘢痕をより深くかつより狭くすることを記載している。Fried他('Linear lesions in heart tissue using diffused laser radiation,' Lasers in Surgery, Proc. SPIE Vol. 3907 (2000))も心房組織のアブレーションにおいてより適切なエネルギ源としてレーザを関与させ、より深い組織加熱の可能性並びに(血栓塞栓事象を引き起こす可能性がある)表面凝固及び蒸発の減少されたリスクを記載している。
【0008】
心臓アブレーション用の最新のレーザカテーテルシステムは、放射性拡散先端及び軸上放射線を供給する先端を持つ光ファイバベースの装置を含む。大多数は、20ないし80Wのパワーの供給で近赤外又は赤外範囲(典型的には980nm又は1064nm)の波長で動作する。バルーンが、肺静脈の口を取り囲むような形で前記エネルギをガイド及び分配するように設計される。しかしながら、肺静脈狭窄(閉鎖)のリスクのためにこの概念を囲む問題が依然として存在する。
【0009】
特許文献を参照すると、幾つかの特許関連文献が言及される。Maguire他の米国特許公開番号2005/0165391A1は、組織アブレーション装置/アセンブリ及び心房壁から肺静脈口を電気的に絶縁する方法を開示している。Maguireの組織アブレーションシステムは、アブレーション素子を持つ円周アブレーション部材を使用して、肺静脈が心房から延在する場所における組織の円周領域を除去することにより心房性不整脈を処置する。前記円周アブレーション部材は、一般に、デリバリシースを通る心房内への供給及び前記アブレーション素子と前記組織の円周領域との間の除去可能結合の両方を可能にするように異なる構成間で調節可能である。
【0010】
Brucker他の米国特許公開番号2005/0143722A1は、心房細動に対するレーザベースのメイズ処置を開示している。前記Brucker文献によると、損傷形成ツールが、アクセスされる表面に対して配置される。前記ツールは、ファイバ先端から光エネルギを放出するために選択された波長のコヒーレント波形をファイバ先端にガイドする光ファイバを含む。前記波長は、前記光が前記組織の全厚さを貫通し、前記素子の厚さを通る壊死組織の体積を形成するように選択される。前記ツールは、前記ファイバ先端に結合されたガイド先端をも含み、前記ガイド先端は、前記ファイバ先端から組織表面まで障害の無い光経路を規定するように前記ファイバ先端と位置合わせされた放出孔を持つように構成される。前記ガイド先端は前記組織表面に対して配置され、前記ガイド先端は前記組織表面に沿ってスライド可能である。前記Brucker損傷形成ツールは、経路の長さを延長する前記組織内の貫壁性損傷を形成するように前記組織表面に対向する前記放出孔を維持しながら前記経路において前記組織表面上で前記ガイド先端を引き出すように操作されることを意図される。
【0011】
Intintoli他に対する米国特許番号6893432B2は、光を前面端部から横に分散させる光分散プローブを開示している。光分散及び光透過媒体は、ハウジング内に入れられる。前記媒体は、マトリクス内に異なる密度の光分散材料を含むセクションに分割され、前記セクションは、非分散スペーサにより分離される。前記プローブの先端には、光を前記分散媒体に反射して返す鏡である。これらのフィーチャにより、放射される光の方向性及び強度分布が制御されることができる。
【0012】
Abboud他に対するUS2005/0182393A1は、カテーテルの交換無しで様々なアブレーション処置が実行されることを可能にするマルチエネルギアブレーションステーションを開示している。エネルギデリバリアンビリカルシステムを介して、カテーテル又はプローブのような1以上のエネルギ治療装置に接続されたコンソールが提供される。前記コンソール内のプロセッサは、いずれのタイプのエネルギが前記アンビリカルシステム内に放たれ、前記エネルギ治療装置に供給されるかをユーザが選択的に制御することを可能にする。レーザエネルギと同様に低温流体、RFエネルギ、マイクロ波又は直流は、幅広い範囲のアブレーション技術をカバーするために供給されることができる。この統合型アブレーションシステムは、市販のカテーテルと同等であり、より深くより幅広い損傷性能及び/又はより広い温度アブレーションスペクトルが望まれる場合に順次的な又は同時のアブレーション及びマッピング処置が実行されることを可能にする。
【0013】
Farr他に対する米国特許公開番号2005/0171520A1は、組織内に環状の損傷を形成する光線治療波ガイド装置を対象とする。前記Farr文献に開示された光学装置は、光透過光ファイバと通信するパターン形成光波ガイドを含む。エネルギは、放射線が前記光ファイバを通って伝搬され、前記波ガイドが組織上に環状の光パターン、例えば円又はハロー(halo)を投影するように前記光ファイバを通って送られる。
【0014】
背景技術の関心のある追加の特許文献は、PCT文献WO0311160A2を含み、これは、心不整脈のアブレーションに対する冷却レーザカテーテルを記載している。前記カテーテルは、心筋内の組織を凝固しながら表面組織に対するダメージを制限する。損傷は、平均で心臓表面の1mm下で生じる。前記カテーテルは、心臓の電気生理学的マッピングする手段をも含むことができる。Yoshihara他に対する米国特許番号5826941は、肥大前立腺組織を治療するレーザプローブを記載している。レーザビームは、体組織内に集束させることができ、Abela他に対する米国特許番号5651786は、レーザを持つマッピングカテーテルを記載している。前記カテーテルは、心室性不整脈焦点を局部にとどめ、レーザエネルギを加えることにより破壊することができる。
【0015】
特定的にレーザベースの技術を参照すると、レーザは、連続波光より数桁高いピークパワーであるが低い平均パワーで、光が材料とナノ秒/フェムト秒の期間において相互作用することを可能にする。興味深いことに、入射レーザ光の線形吸収を持たない光学的に透明な材料は、フェムト秒パルスレーザの高強度照射下で強い非線形吸収を持ちうる。この非線形吸収は、速い拡大する高温プラズマを生成することにより前記材料の光切断(photodisruption)を引き起こすことができる。例えば、"Laser-induced breakdown in aqueous media," Paul K Kennedy, Daniel X Hammer, Benjamin A Rockwell, Prog. Quant. Electr. 21:3:155-248 (1997)、"Laser induced plasma formation in water at nanosecond to femtosecond time scale: Calculation of thresholds, absorption coefficents and energy density," Joachim Noack, Alfred Vogel, IEEE Journal of Quantum Electronics, 38:8 (1999)を参照のこと。
【0016】
前記プラズマの副次的効果は、衝撃波放射、温度増加、及びキャビテーション気泡生成を含む。固体材料のマイクロマシニング、組織のマイクロ手術、及び高密度光学データ記憶のようなレーザ誘起光学破壊(LIOB)の多くの応用が近年開発されている。LIOBは、十分に高い閾値強度がレーザ焦点において達成され、プラズマ形成を誘起する場合に生じる。プラズマ形成は、非線形エネルギ吸収と、衝撃波放射、熱伝導及びキャビテーション気泡(すなわち光切断)を含む測定可能な副次的効果とを引き起こす。これらの破壊特性の存在及び強度は、材料のLIOB閾値を決定するのに使用される。したがって、LIOBの生成に使用されるパラメータは、一般に、特定の材料の性質に適合するように設計されることができる。ナノ秒/フェムト秒パルスレーザを用いるLIOBは、生物医学システム、材料特性及びデータ記憶を含む様々な応用において使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
今日までの努力にかかわらず、空間選択的な組織アブレーションを達成するのに効果的であるシステム及び方法に対する必要性は残っている。加えて、臨床的に関連したパラメータによって正確な場所において所望の深さまでアブレーションすることができるシステム及び方法に対する必要性が残っている。更に、心臓アブレーションに対する特定の応用可能性を持ち、心筋の厚さにより所望の深さまで及び制御化された幾何構成でアブレーションするのに効果的であるシステム及び方法に対する必要性が残っている。更に、目標ではない心臓及び動脈/静脈組織に対する潜在的ダメージを最小化及び/又は解消しながら、所定のレベルの心臓アブレーションを達成するのに効果的であるシステム及び方法に対する必要性が残っている。これら及び他の必要性は、ここに記載されるように、開示されたシステム及び方法により満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
開示されるシステム及び方法は、有利には、空間選択的な組織アブレーションを実現するように構成される。模範的実施例によると、空間選択的な心臓アブレーションが、レーザ誘起光学破壊(LIOB)を用いて実現される。開示されるシステム及び方法は、インビボ臨床応用に適合され、組織表面の下の器官/構造に対して実施されることができる。加えて、目標ではない心臓及び動脈/静脈組織に対する潜在的なダメージが最小化される。
【0019】
本開示の模範的実施例において、カテーテルが、治療されるべき組織の近くに及び/又は隣接して前記心臓に差し込まれる。光学経路は、前記カテーテル、例えば1以上の光ファイバ内に規定される。一般に、代替的な最小侵襲技術が使用されることができるが、静脈が心臓までの通路として使用される。検出手段は、一般に、前記治療、例えば従来の非侵襲型イメージング技術に対する正確な場所を決定するのに使用される。一度所望の臨床的場所に配置されると、レーザパルスは前記カテーテル内の光学経路を通ってガイドされる。前記カテーテル端部において又は隣接して、集束手段が、中間の目標ではない静脈、心臓及び/又は他の組織を通って目標組織にレーザ放射線を集束させるように機能する。模範的な集束手段は、適合集束構造/機構、流体集束レンズシステム、レンズ及び/又は鏡のような固定集束構造、並びにこれらの組み合わせを含む。焦点領域において、LIOBが生じ、このようなLIOBにより生成される機械的効果、例えば衝撃波は、有利には、前記目標組織に対する所望のレベルのアブレーションに作用する。
【0020】
心臓及び静脈組織が両方とも近赤外(NIR)領域において同様の光学性質を持つ混濁媒体であると見なされることができるので、表面組織自体を損傷せずに前記組織表面下の高度に空間選択的な心臓アブレーションを実行することが可能である。レーザ関連パラメータ、例えばパルスエネルギ及びパルス持続時間等の制御及び/又は修正を通して、臨床医は、所望のアブレーション結果を達成するために開示されるシステム/方法の動作に対するあるレベルの制御を発動することができる。
【0021】
開示されるシステム及び方法と関連する追加のフィーチャ、機能及び利点は、特に添付の図面と合わせて読まれるとこの後に続く記載から明らかになる。
【0022】
当業者が開示されるシステム及び方法を作る及び使用するのを助けるために、添付の図面が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
開示されるシステム及び方法は、目標組織に対する空間選択的な組織アブレーションを実現する。空間選択的な心臓アブレーションは、レーザ誘起光学破壊(LIOB)及びこれにより生成される機械的効果によって、少なくとも部分的に、達成される。前記開示されるシステム及び方法は、インビボ臨床応用、例えばカテーテルベースの臨床処置に対して構成され、組織表面の下の器官/構造に対して実施されうる。目標ではない心臓及び動脈/静脈組織に対する潜在的ダメージは、有利には、本開示のLIOBベースのアブレーション技術及びシステムにより最小化される。
【0024】
一般に、本開示のシステム及び方法は、強力に集束された、短パルスのレーザパルスを生成し、臨床的関心領域に供給するように構成される。前記レーザパルスは、心臓及び静脈組織により最小に吸収及び散乱され、前記目標ではない組織を通って治療されるべき組織内に/上に集束される波長において有利に生成/供給される。レーザ焦点と関連した電場が、材料を非常に局所的にイオン化するのに十分に強い場合、光学破壊が生じ、前記関連した機械的効果(例えば衝撃波)が、焦点領域の周りにうまく閉じ込められたダメージアレイを引き起こす。前記機械的効果の影響範囲は、レーザパラメータ(例えばパルスエネルギ及びパルス持続時間)を調節することにより設計/制御されることができる。
【0025】
本開示によりLIOBを達成する技術及びパラメータは、一般に、所望の臨床結果を達成するように選択される。より具体的には、様々な波長、パルス時間、パワー密度及び関連した動作パラメータが、LIOB減少に基づいて所望の機械的効果を達成するのに使用されることができる。実際に、Van Hal他に対する"A Device for Shortening Haris by Means of Laser Induced Optical Breakdown Effects"と題された同一出願人によるPCT特許文献(WO2005/011510A1)に記載される範囲の動作パラメータは、ここに記載されるように、心臓アブレーションの目的で所望のLIOB効果を達成するのに効果的であることが分かっている。前述のPCT文献の全体的な内容は、参照によりここに組み込まれる。
【0026】
本開示の模範的実施例によると、単一焦点、単一パルスモードで目標領域を処置することが可能である。しかしながら、代替実施例において、後で引火されるパルス及び/又は同時に生成される焦点は、前記臨床関心領域に供給されることができる。前記後に印加されるパルス及び/又は同時に生成される焦点は、一般に、前記目標領域の中で同様な数の同時に生じるLIOB中心を生じる。
【0027】
本開示の模範的実施例において、及び図1を参照すると、長いレーザ結合光ファイバと、心臓内マッピングにより規定される場所において組織の光学破壊を誘起するようにエネルギを方向づける集束手段(3)とを含むデリバリ装置が提供される。レーザエネルギ源(1)は、心臓組織に向けられた場合に、当該組織において光学破壊を誘起するエネルギを生成するのに十分な手段である。光ファイバデリバリシステム(2)は、単一の又は複数の光ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、ファイバレーザ及び/又はこれらの組み合わせを含み、一般に、バルーン形状光学ガイド及び/又は他の従来のカテーテル技術と両立することができる。
【0028】
前記開示されるシステム/方法の模範的実施例によると、心臓組織内の電気刺激を測定するマッピングツール(蛍光透視法の間に可視である)は、前記デリバリ装置内に一体化される。代わりに、前記マッピングツールは、別個のプローブと関連付けられることができる。前記マッピングツールは、様々な形を取ることができるが、模範的実施例において、このようなマッピングツールは、四重極(quadripolar)プローブを含む。肺静脈から左心房に挿入され、除去される場合、前記四重極プローブは、心房電位の存在と連動してインピーダンスの突然の減少を記録するように構成される(例えば、'Atrial Electroanatomic Remodelling...,' Pappone et al, Circulation 2001:104:2539-2544を参照のこと)。
【0029】
臨床的観点から、前記デリバリ装置、例えばカテーテルは、心内膜に対するアクセスのために首又は鼠径部の欠陥に挿入されることができ、最小侵襲又はバイパス手術の両方の間に使用されることができる。前記デリバリ装置は、心外膜にも応用されることができる。前記光ファイバデリバリシステムは、一般に、MRI、X線蛍光透視法及び他のイメージングモダリティと両立することができ、これにより関心の組織に対する前記カテーテル及び関連するLIOBベースの集束手段の配置を容易化する。アブレーション中の基板に対する電気的、光学的又は機械的変化を測定するのに使用される素子、例えば圧電素子、光学若しくは電気センサ及び/又はこれらの組み合わせは、前記デリバリ装置に組み込まれることができる。更に、前記デリバリ装置は、前記関心領域に供給されるエネルギが、全体的に又は部分的にマッピング装置により規定されるエネルギ要件に適合されることができるように、調節可能な制御システムを用いて制御されることができる。
【0030】
図2を参照すると、本開示による高度に空間選択的な心臓アブレーションを達成する模範的方法/技術が提供される。関心領域にレーザエネルギを送るデリバリ装置、例えばカテーテルが提供される。前述のように、前記デリバリ装置/カテーテルは、従来のカテーテル技術、例えばガイドワイヤ、バルーン形状ガイド等と協働/相互作用するように構成されることができる。加えて、前記デリバリ装置/カテーテルは、例えば蛍光透視法のような従来のイメージング技術により、最小侵襲型配置及び位置監視を容易化するように有利に構成される。
【0031】
前記デリバリ装置/カテーテルは、例えば中に位置する内腔を通る、光ファイバを含むか又は受けるように構成される。前記光ファイバは、一方の端部(すなわち近位端)においてレーザ源と結合されるように構成され、反対側の端部(すなわち遠位端)において集束手段と光学的に通信する。前記レーザ源は、ここに記載されるように、適切なエネルギパルスを生成及び供給するように構成される。臨床医は、一般に、レーザ動作パラメータ、例えばパルスエネルギ及びパルス持続時間を制御及び/又は選択することを可能にされるが、プリセット動作条件が前記レーザシステムに対して提供されてもよく、これによりオペレータエラーに対する可能性を減少する。前記集束手段は、心臓内マッピングにより規定される場所における組織の光学破壊を誘起するように前記レーザエネルギを集束/方向づけするように有利に構成される。
【0032】
集束されたエネルギにより誘起される前記レーザ誘起光学破壊は、少なくとも部分的に、このようなLIOBにより生成された機械的効果、例えば衝撃波に基づいて、組織をアブレーションするのに効果的である。本開示による集束手段は、様々な形式、例えば、適合集束構造/機構、流体集束レンズシステム、レンズ及び/又は鏡のような固定集束構造、並びにこれらの組み合わせを取ることができる。前記開示された方法/技術によるアブレーションは、有利には、周りの組織、例えば目標ではない心臓組織及び動脈/静脈組織に対してほとんど又は全くダメージを与えない。
【0033】
したがって、本開示は、レーザ誘起光学破壊(LIOB)インビボを用いて表面下の高度に空間選択的な心臓アブレーションを達成する有利なシステム及び方法を提供する。本開示は、模範的実施例及びその実施を参照して記載されているが、本開示は、このような模範的実施例に又はこのような模範的実施例により限定されない。むしろ、本開示は、本開示の精神又は範囲から逸脱することなくここに提供された記載に基づいて更に向上、修正及び/又は変更されてもよい。したがって、本開示は、全てのこのような向上、修正及び/又は変更を範囲内に明確に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本開示による模範的なシステムの概略図を提供する。
【図2】本開示による模範的な処置方法に対するフローチャートを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓アブレーション方法において、
a.関心領域に隣接して位置するように構成され、かつ寸法を決められ、光ファイバ及び集束手段を含むデリバリ装置を提供するステップと、
b.前記光ファイバを通って前記集束手段にレーザエネルギを供給するステップと、
c.組織の光学破壊を誘起するように前記集束手段を通して前記レーザエネルギを集束することによりレーザ誘起光学破壊(LIOB)を達成するステップと、
d.前記LIOBの機械的効果に基づいて目標組織をアブレーションするステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記LIOBが、表面組織の下にある目標組織をアブレーションするのに効果的であり、前記表面組織が実質的に無傷で残される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面組織が、目標ではない組織を規定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記LIOBが、高度に局所化された焦点領域における組織の光学破壊を誘起するのに効果的である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記目標組織のアブレーションが、目標ではない組織及び/又は動脈/静脈組織を実質的に損傷することなく達成される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記デリバリ装置がカテーテルである又はカテーテルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デリバリ装置が、アブレーション中の前記組織に対する電気的、光学的又は機械的変化を測定する1以上の素子、例えば圧電素子、光学若しくは電気センサ及び/又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デリバリ装置が、光ファイバデリバリシステムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光ファイバデリバリシステムが、単一の又は複数の光ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、ファイバレーザ及び/又はこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記関心領域が心臓組織である、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記LIOBが、心臓内マッピングを通して選択された領域において達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記デリバリ装置が、イメージング技術、例えばMRI、X線、及び蛍光透視法等と両立することができる、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記心臓組織内の電気刺激を測定するマッピングツールを更に有する、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記マッピングツールが前記デリバリ装置に一体化される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マッピングツールが前記デリバリ装置に対して独立した構造である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記マッピングツールが、心房電位の存在と連動してインピーダンスの突然の減少を記録するように構成される四重極プローブを含む、請求項13、14又は15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−533126(P2009−533126A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504867(P2009−504867)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051177
【国際公開番号】WO2007/119187
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】