説明

レーザ転写用ドナー基板及びこの基板を使用して製造される有機電界発光素子の製造方法

【課題】 レーザ転写法を用いて有機膜を形成する時、静電気の発生を制御できる有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明によるレーザ転写用ドナー基板は、基材層と、前記基材層上の全面に形成される光−熱変換層と、前記基材層上の全面にわたって前記光−熱変換層の上部に形成される帯電防止膜と、前記帯電防止膜上の全面に形成される転写層と、前記ドナー基板の外縁部に形成され、前記帯電防止膜に連結している導電性フレームと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ転写用ドナー基板及びこの基板を使用した有機電界発光素子の製造方法に関し、より詳細には、静電気を制御できるレーザ転写用ドナー基板及びこれを使用した有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、有機電界発光素子は、低電圧駆動、高発光効率、広視野角及び高速の応答速度などにより高画質の動画像を表現できるので、次世代ディスプレイとして注目を集めている。
【0003】
また、このような有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に有機発光層を含む有機膜で構成されていて、前記2つの電極に電圧を印加することによって、電子と正孔が有機発光層内で再結合して光を発生する自己発光型のものであって、LCDにおけるバックライトを必要せず、軽量薄形が可能であるだけでなく、工程を単純化させることができるという長所を有する。
【0004】
ここで、前記有機膜、特に有機発光層の材料によって、低分子型有機電界発光素子と高分子型有機電界発光素子とに分けられる。
【0005】
前記低分子型有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔抑制層、電子注入層などの機能が各々異なる多層の有機膜で構成されていて、電荷の蓄積が生じないようにドーピングを行うか、適切なエネルギーレベルを有する物質に代替することによって調節が可能である。ここで、このような有機膜は、主に真空蒸着により形成されるので、大型化したディスプレイを具現しがたいという不都合がある。
【0006】
一方、前記高分子型有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、有機発光層よりなる単層構造、又は正孔輸送層を含んだ二重構造で構成されることができるので、薄膜の有機電界発光素子を製造することができる。また、前記有機膜は、ウェットコーティングにより形成されるので、常圧下でも製作することができ、生産工程の費用を節減することができると共に、大面積化を容易に具現することができる。
【0007】
ここで、単色の素子を製作する場合において、高分子を利用した有機電界発光素子は、スピンコーティング工程を用いて簡単に素子を製作することができるが、低分子有機電界発光素子より効率及び寿命が低下するという短所がある。また、フールカラー素子である場合、上記の有機電界発光素子にR、G及びBの三原色を示す発光層をパターニングすることによって、フルカラーを具現することができる。ここで、低分子型有機電界発光素子の有機膜パターニングは、シャドウマスクを利用した蒸着によりパターニングすることができ、高分子型有機電界発光素子の有機膜パターニングは、インクジェットプリントまたはレーザ転写法(Laser Induced Thermal Imaging:LITI)により行われることができる。これらのうち、レーザ転写法は、スピンコーティング特性をそのまま利用できるので、大面積化を具現した時、画素の内部均一度に優れている。また、レーザ転写法は、ウェット工程でなく、ドライ工程であるので、溶媒による寿命が低下する問題点を解決でき、また、前記有機膜を微細にパターニングすることができる。
【0008】
前記レーザ転写法を適用するためには、基本的に、光源、有機電界発光素子基板及びドナー基板を必要とし、前記ドナー基板は、基材層、光−熱変換層、転写層で構成される。
【0009】
前記レーザ転写法は、光源から光が出て、ドナー基板の光−熱変換層に吸収され、光が熱エネルギーに変換され、変換された熱エネルギーにより、転写層に形成された有機物質が基板に転写されて形成される方法である。
【0010】
前記レーザ転写法による有機電界発光素子のパターン形成方法は、韓国特許登録第10−0342653号に開示されており、また、米国特許第5,998,085号、同第6,214, 520号及び同第6,114,085号に開示されている。
【0011】
図1a乃至図1cは、レーザ転写法による有機膜パターン過程を説明するために示す図である。
【0012】
図1aを参照すれば、前記基板10が用意され、前記基板に、基材層21、光−熱変換層22及び有機膜23で構成されるドナー基板20をラミネート(lamination)する。
【0013】
次いで、図1bに示すように、前記ドナー基板20の基材層21の第1領域aにレーザによる光を照射する。前記基材層21を通過した光が光−熱変換層22で熱に変換され、発生した前記熱により、前記第1領域aの有機膜と光−熱変換層22との接着力が弱くなる。
【0014】
次いで、図1cに示すように、接着力が弱くなった有機膜、すなわち第1領域aの有機膜が前記基板に転写された後、基板10からドナー基板20を脱着させれば、転写された有機膜23aは、基板に形成され、第2領域、すなわち光が照射されていない領域bの有機膜23bは、脱着時に、ドナー基板と同時に脱離されることによって、パターンされた有機膜23aを形成することができる。
【0015】
しかしながら、前述のようなレーザ転写法を用いてパターンされた有機膜を形成するに際して、ドナー基板20と基板10を吸着及び脱着させる過程を進行しつつ、摩擦及び外部の環境的要因に起因して静電気が発生し得る。このような静電気放電の電圧は、数千から数万Vに達するため、静電気に起因して接合部分に短絡が生じたり、素子内部の温度上昇に起因して金属が溶融されたり、接合線が断線されるなど素子の不良を誘発することができ、これにより、素子の内部回路に影響を及ぼすことができ、素子の特性を阻害し得る。
【特許文献1】韓国特許登録第10−0342653号
【特許文献2】米国特許第5,998,085号明細書
【特許文献3】米国特許第6,214,520号明細書
【特許文献4】米国特許第6,114,085号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述したような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、レーザ転写法を用いて有機膜を形成する時、静電気の発生を制御できる有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係るレーザ転写用ドナー基板は、基材層と、前記基材層上の全面に形成される光−熱変換層と、前記基材層上の全面にわたって前記光−熱変換層の上部に形成される帯電防止膜と、前記帯電防止膜上の全面に形成される転写層と、前記ドナー基板の外縁部に形成され、前記帯電防止膜に連結している導電性フレームと、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の他の態様に係るレーザ転写用ドナー基板の製造方法は、基材層が提供される段階と、前記基材層上の全面に光−熱変換層を形成する段階と、前記基材層上の全面にわたって前記光−熱変換層の上部に帯電防止膜を形成する段階と、前記帯電防止膜の上部に転写層を形成する段階と、前記段階を進行して形成されたレーザ転写用ドナー基板の外縁部に導電性フレームを形成する段階と、を備え、前記帯電防止膜と前記フレームとは連結していることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のさらに他の態様に係る有機電界発光素子の製造方法は、基板の上部に第1電極をパターン形成する段階と、前記基板を、移送可能であり且つ接地されているステージに吸着して固定する段階と、前記基板の画素領域とフレームにより固定された請求項1に記載のドナー基板とを対向するように配置する段階と、前記ドナー基板に選択的にレーザを照射し、少なくとも発光層を含んだ有機膜を転写する段階と、前記有機膜が前記基板に転写された後のドナー基板を前記基板から脱着する段階と、前記基板の全面にわたって前記有機膜上に第2電極を形成する段階と、を備えることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明は、前記製造方法により製造される有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レーザ転写法により有機電界発光素子を製造する時に発生し得る静電気を效果的に制御することができるので、静電気に起因した素子特性の劣化を防止することができ、高品質のディスプレイを具現することができる。
【0022】
また、本発明は、ドナー基板の外縁部にフレームを形成することによって、レーザ転写時に転写特性を向上させることができ、また、接着及び脱着工程が容易なので、生産性を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0024】
図2は、本発明の好ましい実施例に係るドナー基板の断面を示す図である。
【0025】
図2を参照すれば、ドナー基板は、基材層101が用意され、前記基材層101上に、光−熱変換層102、帯電防止膜103及び転写層104が順次に積層されていて、前記ドナー基板の外縁部には、導電性物質よりなるフレーム105が取り付けられている。
【0026】
前記基材層101は、光−熱変換層102に光を伝達するために、透明性を有しなければならないし、適当な光学的性質と充分の機械的安定性を有する高分子物質で構成されることがてぎる。前記基材層101は、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリエチレン及びポリスチレンよりなる群から選ばれた1つ以上の高分子物質で構成されることができる。より好ましくは、前記基材層101は、ポリエチレンテレフタレートである。
【0027】
前記光−熱変換層102は、赤外線−可視光線領域の光を吸収し、前記光の一部を熱に変換させる層であって、適当な光学密度(optical density)を有しなければならないし、光を吸収するための光吸水性物質を含むことが好ましい。ここで、前記光−熱変換層102は、Al、Ag及びこれらの酸化物及び硫化物よりなる金属膜で構成されるか、又は、カーボンブラック、黒鉛または赤外線染料を含んだ高分子よりなる有機膜で構成されることができる。ここで、前記金属膜は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法またはスパッタリングを用いて形成することができ、前記有機膜は、通常のフィルムコーティング方法として、ロールコーティング、グラビヤ、押出、スピンコーティング及びナイフコーティング法のうち1つの方法により形成することができる。
【0028】
前記帯電防止膜(inter layer)103は、前記ドナー基板を前記基板に接着したり、レーザ照射後、ドナー基板を脱着させる場合に発生し得る静電気を制御するためのものであって、前記ドナー基板の帯電防止膜と金属フレームとが連結していて、また、前記金属フレームは、接地されたステージに連結していて、静電気の発生を抑制できる。前記帯電防止膜は、有機材料、無機材料及び有機−無機の複合材料のうち1つの物質で形成できる。例えば、前記有機材料は、伝導性高分子として、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)及びポリエチレンジオキシチオフェン(poly(3、4-ethylenedioxythiophene)よりなる群から選ばれた1つの物質であることができる。このような伝導性高分子は、ウェットコーティングにより均一に膜を形成できるという長所がある。また、前記無機材料は、 ATO(antimony tin oxide)、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、Nb、ZnO及びTiNよりなる群から選ばれた1つの物質であることができる。このような無機材料は、伝導性が良くて效率的に静電気を制御でき、耐久性に優れている。また、前記有機−無機の複合材料は、ATOゾル、ITOゾル、Ag−Pd及びAg−Ruよりなる群から選ばれた1つの物質であることができる。前記有機−無機の複合材料は、ゾル状態として薄膜を形成することが有利であるだけでなく、伝導性が良いという長所を有する。
【0029】
前記転写層104は、有機発光層、正孔注入性有機膜、正孔輸送性有機膜、正孔抑制有機膜、電子注入性有機膜及び電子輸送性有機膜よりなる群から選ばれた1つで構成されるか、又は、これらの積層膜で構成されることができる。
【0030】
このような前記転写層104は、押出、スピンコーティング、ナイフコーティング、真空蒸着法及びCVDなどの方法により形成されることができる。
【0031】
また、前記帯電防止膜103と前記転写層104との間に、転写特性を向上させるために中間層をさらに備えることができる。ここで、前記中間層は、ガス生成層、バッファ層及び金属反射膜のうち1つ以上で構成されることができる。
【0032】
前記ガス生成層は、光または熱を吸収すれば、分解反応を起こして、窒素ガスや水素ガスなどを放出することによって転写エネルギーを提供する役目を行い、四硝酸ペンタエリスリトールまたはトリニトロトルエンなどよりなることができる。
【0033】
前記バッファ層は、光−熱吸水性物質が後続工程で形成されるべき転写層を汚染または損傷させることを防止し、転写層との接着力を制御して、転写パターン特性を向上させる役目をする。ここで、前記バッファ層は、金属酸化物、非金属無機化合物または不活性高分子よりなることができる。
【0034】
前記金属反射膜は、ドナー基板の基材層に照射されたレーザを反射させることで、光−熱変換層にさらに多くのエネルギーが伝達されるようにする役目をするだけでなく、ガス生成層が導入される場合において、前記ガス生成層から発生するガスが転写層に侵入することを防止する役目をする。
【0035】
次いで、上記のように形成されたドナー基板の外縁部に形成されたフレーム(frame)は、導電性の物質で形成されることが好ましい。ここで、導電性物質は、有機材料、無機材料及び有機−無機の複合材料のうち1つの物質であることができる。例えば、前記有機材料は、伝導性高分子として、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)及びポリエチレンジオキシチオフェン(poly(3、4-ethylenedioxythiophene)よりなる群から選ばれた1つの物質であることができる。また、前記無機材料は、 ATO(antimony tin oxide)、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、Nb、ZnO及びTiNよりなる群から選ばれた1つの物質であることができる。 このような無機材料は、伝導性が良くて效率的に静電気を制御でき、耐久性に優れている。さらに、前記有機−無機の複合材料は、ATOゾル、ITOゾル、Ag−Pd及びAg−Ruよりなる群から選ばれた1つの物質であることができる。
【0036】
前記ドナー基板の帯電防止膜とフレームとは、直接連結していてもよく、又は、電気的に連結していてもよい。前記フレームは、レーザ転写工程時、接地されたステージに接地されているので、レーザ転写工程で発生し得る静電気を制御できる。
【0037】
この際、前記フレームは、前記ドナー基板を平らに保持する役目をするので、後続工程であるレーザ転写工程において、基板とドナー基板とを接着する時、屈曲や垂れが生じることなく、接着することができるので、転写特性を向上させることができる。また、前記フレームを用いてレーザ転写により転写層を形成した後、前記ドナー基板を容易に脱着させることができる。
【0038】
以下、図3a乃至図3cを参照して、本発明に係るドナー基板を使用したレーザ転写法による有機電界発光素子の製造方法を説明する。
【0039】
図3aを参照すれば、基板200を、接地されている基板吸着ステージ300に供給する。
【0040】
ここで、前記基板200は、絶縁基板201上に通常の方法により第1電極202を形成し、第1電極上に、画素部を定義する画素定義膜203を形成する。また、前記基板は、薄膜トランジスタ及び多数の絶縁膜を含むことができる。前記第1電極202が陽極である場合に、仕事関数が高い金属としてITO又はIZOよりなる透明電極で構成されるか、又は、Pt、Au、Ir、Cr、Mg、Ag、Ni、Al及びこれらの合金よりなる群から選ばれた反射電極で構成されることができる。
【0041】
また、前記第1電極202が陰極である場合に、仕事関数が低い金属としてMg、Ca、Al、Ag、Ba及びこれらの合金よりなる群から選ばれた、薄膜の透明電極、又は厚膜の反射電極で構成されることができる。
【0042】
一方、前記基板吸着ステージ300は、接地されていて、基板200を吸入部300aにより吸着し固定して移動する手段である。
【0043】
これとは別に、本発明の一実施例により外縁部に導電物質よりなるフレーム105が取り付けられているドナー基板100を製造する。前記ドナー基板は、基材フィルム101、光−熱変換層102、帯電防止膜103及び転写層104を含む。ここで、ドナー基板の帯電防止膜とフレームとは連結していることが好ましい。
【0044】
次いで、図3bに示すように、前記フレームを具備したドナー基板100を、前記ステージに吸着固定されている基板の画素領域に対向するように配置し接着する。ここで、前記ドナー基板の帯電防止膜102は、フレームに連結していて、前記フレームは、前記接地されたステージに連結していることが好ましい。
【0045】
その後、前記ドナー基板の所定領域にレーザを照射して、前記転写層104を前記第1電極202上の画素領域に転写する。
【0046】
ここで、前記転写層は、少なくとも有機発光層を含み、素子の特性を向上させるために、正孔注入層、正孔輸送層、正孔抑制層、電子輸送層及び転写注入層よりなる群から選ばれた1つ以上をさらに含むことができる。
【0047】
前記有機発光層は、赤色発光材料であるAlq3(ホスト)/DCJTB(蛍光ドーパント)、Alq3(ホスト)/DCM(蛍光ドーパント)、CBP(ホスト)/PtOEP(燐光有機金属錯体)などの低分子物質と、PFO系高分子、PPV系高分子などの高分子物質を使用することができ、緑色発光材料であるAlq3、Alq3(ホスト)/C545tドーパント、CBP(ホスト)/IrPPy(燐光光有機金属錯体)などの低分子物質と、PFO系高分子、PPV系高分子などの高分子物質を使用することができる。また、青色発光材料であるDPVBi、スピロ−DPVBi、スピロ−6P、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジスチリルアリレーン(DSA)などの低分子物質と、PFO系高分子、PPV系高分子などの高分子物質を使用することができる。
【0048】
前記第1電極がアノード電極である場合に、前記第1電極202の上部に正孔注入層が形成され、前記第1電極201と界面接着力が高くて且つイオン化エネルギーが低い材料で正孔注入層を形成することによって、正孔注入を容易にすると共に、素子の寿命を延長させることができる。前記正孔注入層は、アリルアミン系化合物、ポルフィリン系の金属錯体及びスターバースト(Starburst)型アミン類などよりなることができる。より詳細には、4、4’、4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、1、3、5−トリス[4−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(m−MTDATB)及びフタロシアニン銅(CuPc)などよりなることができる。
【0049】
前記正孔輸送層は、正孔を容易に発光層に運搬させるだけでなく、前記第2電極から発生した電子が発光領域に移動することを抑制させることによって、発光効率を高めることができる役目をする。前記正孔輸送層は、アリーレンジアミン誘導体、スターバースト型化合物、スピロ基を有するビフェニルジアミン誘導体及び梯子型化合物などよりなることができる。より詳細には、N、N−ジフェニル−N、N’−ビス(4−メチルフェニル)−1、1’−ビフェニル−4、4’−ジアミン(TPD)であるか、又は、4、4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)である。
【0050】
前記正孔抑制層は、有機発光層内において電子移動度より正孔移動度が大きく、発光層において形成される励起子が広い領域にわたって分布するので、発光効率が劣化することを防止する役目をする。前記正孔抑制層は、2−ビフェニル−4−イル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1、3、4−オキシジアゾール(PBD)、スピロ−PBD及び3−(4’−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4’−ビフェニル)−1、2、4−トリアゾール(TAZ)よりなる群から選ばれた1つの物質で構成されることができる。
【0051】
前記電子輸送層は、前記有機発光層の上部に積層され、電子が良く収容できる金属化合物よりなり、第2電極から供給された電子を安定に輸送できる特性に優れた8−ハイドロキノリンアルミニウム塩(Alq3)よりなることができる。
【0052】
ここで、前記のような有機膜は、スピンコーティングや蒸着法により形成したり、前記ドナー基板の転写層を形成する時、有機発光層及び前記有機膜のいずれかを積層して、レーザ転写時、同時に形成することができる。
【0053】
図3cに示すように、前記第1電極上に転写層が転写された後、前記ドナー基板を脱着させることによって、有機膜パターン104’を形成する。次いで、前記有機膜パターン上に第2電極を形成した後、図示してはいないが、封止基板または金属キャップで封止することによって、有機電界発光素子を完成する。
【0054】
前記第2電極204が陰極である場合に、前記有機膜104’の上部に形成され、仕事関数が低い導電性の金属として、Mg、Ca、Al、Ag及びこれらの合金よりなる群から選ばれた1つの物質よりなる薄膜の透明電極、又は厚膜の反射電極で構成されることができる。
【0055】
また、前記第2電極204が陽極である場合に、仕事関数が高い金属として、ITOまたはIZOよりなる透明電極、又は、Pt、Au、Ir、Cr、Mg、Ag、Ni、Al及びこれらの合金よりなる反射電極で構成されることができる。
【0056】
以上において説明した本発明は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であるので、上述した実施例及び添付された図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1a】レーザ転写法に係る有機膜パターン過程を説明するための図である。
【図1b】レーザ転写法に係る有機膜パターン過程を説明するための図である。
【図1c】レーザ転写法に係る有機膜パターン過程を説明するための図である。
【図2】本発明の好ましい実施例に係るドナー基板の断面を示す図である。
【図3a】本発明によるドナー基板を使用したレーザ転写法による有機電界発光素子の製造方法を説明するための図である。
【図3b】本発明によるドナー基板を使用したレーザ転写法による有機電界発光素子の製造方法を説明するための図である。
【図3c】本発明によるドナー基板を使用したレーザ転写法による有機電界発光素子の製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
100 ドナー基板
101 基材層
102 光−熱変換層
103 帯電防止膜
104 転写層
105 フレーム
200 基板
300 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層上の全面に形成される光−熱変換層と、
前記基材層上の全面にわたって前記光−熱変換層の上部に形成される帯電防止膜と、
前記帯電防止膜上の全面に形成される転写層と、
前記ドナー基板の外縁部に形成され、前記帯電防止膜に連結している導電性フレームと、を備えることを特徴とするレーザ転写用ドナー基板。
【請求項2】
前記導電性フレームは、有機材料、無機材料及び有機−無機の複合材料のうち1つの物質で構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項3】
前記有機材料は、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)及びポリエチレンジオキシチオフェン(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)よりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする 請求項2に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項4】
前記無機材料は、ATO(antimony tin oxide)、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、Nb、ZnO、TiN及び金属物質よりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項5】
前記有機−無機の複合材料は、ATOゾル、ITOゾル、Ag−Pd及びAg−Ruよりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項6】
前記帯電防止膜は、導電性物質で構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項7】
前記導電性物質は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びポリエチレンジオキシチオフェン、ATO、ITO、IZO、 Nb、 ZnO、TiN、ATOゾル、ITOゾル、Ag−Pd及びAg−Ruよりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項6に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項8】
前記光−熱変換層は、光吸収物質を含んだ有機膜、金属、前記金属の酸化物または硫化物及びこれらの合金よりなる群から選ばれた1つの物質で構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項9】
前記基材層は、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンよりなる群から選ばれた1種の透明性高分子、又はガラス基板で形成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項10】
前記レーザ転写用ドナー基板は、前記帯電防止膜と前記転写層との間に中間層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項11】
前記中間層は、ガス生成層、バッファ層及び金属薄膜層よりなる群から選ばれた1つ以上で形成されることを特徴とするレーザ請求項10に記載の転写用ドナー基板。
【請求項12】
前記転写層は、有機発光層、正孔注入性有機膜、正孔輸送性有機膜、正孔抑制有機膜、電子注入性有機膜及び電子輸送性有機膜よりなる群から選ばれた1つで構成されるか、または積層膜で構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ転写用ドナー基板。
【請求項13】
基材層が用意される段階と、
前記基材層上の全面にわたって前記基材層上の全面に光−熱変換層を形成する段階と、
前記光−熱変換層の上部に帯電防止膜を形成する段階と、
前記帯電防止膜の上部に転写層を形成する段階と、
前記段階を進行して形成されたレーザ転写用ドナー基板の外縁部に導電性フレームを形成する段階と、を備え、
前記帯電防止膜と前記フレームとは連結していることを特徴とするレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項14】
前記導電性フレームは、有機材料、無機材料及び有機−無機の複合材料のうち1つの物質で構成されることを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項15】
前記有機材料は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン及びポリエチレンジオキシチオフェンよりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項14に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項16】
前記無機材料は、ATO、ITO、IZO、Nb、ZnO、TiN及び金属物質よりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項14に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項17】
前記有機−無機の複合材料は、ATOゾル、ITOゾル、Ag−Pd及びAg−Ruよりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項14に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項18】
前記帯電防止膜は、導電性物質で形成されることを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項19】
前記導電性物質は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ATO、ITO、IZO、Nb、ZnO、TiN、ATOゾル、ITOゾル、Ag−Pd及びAg−Ruよりなる群から選ばれた1つの物質であることを特徴とする請求項18に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項20】
前記転写層は、有機発光層、正孔注入性有機膜、正孔輸送性有機膜、正孔抑制有機膜、電子注入性有機膜及び電子輸送性有機膜よりなる群から選ばれた1つで構成されるか、又は、これらの積層膜で構成されることを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項21】
前記転写層は、蒸着またはウェット工程により形成されることを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項22】
前記基材層は、ポリエステル、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンよりなる群から選ばれた1種の透明性高分子、又はガラス基板で形成されることを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項23】
前記光−熱変換層は、光吸収物質を含んだ有機膜、金属、前記金属の酸化物または硫化物及びこれらの合金よりなる群から選ばれた1つの物質で構成されることを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法
【請求項24】
前記光−熱変換層は、金属膜である場合に、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法及びスパッタリング方法のうち1つの方法を用いて形成し、有機膜である場合に、ロールコーティング、グラビヤ、押出、スピン及びナイフコーティング方法のうち1つの方法を用いて形成することを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項25】
前記レーザ転写用ドナー基板は、前記帯電防止膜と転写層との間に、ガス生成層、バッファ層及び金属薄膜層よりなる群から選ばれた1層以上の中間層を形成する段階をさらに備えることを特徴とする 請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法.
【請求項26】
前記転写層は、押出、スピンコーティング、ナイフコーティング、真空蒸着法及びCVDの方法により形成することを特徴とする請求項13に記載のレーザ転写用ドナー基板の製造方法。
【請求項27】
基板の上部に第1電極をパターン形成する段階と、
前記基板を、移送可能であり且つ接地されているステージに吸着して固定する段階と、
前記基板の画素領域と、フレームにより固定された請求項1に記載のドナー基板とを対向するように配置する段階と、
前記ドナー基板に選択的にレーザを照射し、少なくとも発光層を含んだ有機膜を転写する段階と、
前記有機膜が前記基板に転写された後のドナー基板を前記基板から脱着する段階と、
前記基板の全面にわたって前記有機膜上に第2電極を形成する段階と、を備えることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項28】
前記第1電極は、アノード電極、又はカソード電極であることを特徴とする請求項27に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項29】
前記ドナー基板のフレームは、前記ステージに接地されていることを特徴とする請求項27に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項30】
前記有機膜は、正孔注入性有機膜、正孔輸送性有機膜、正孔抑制有機膜、電子注入性有機膜及び電子輸送性有機膜よりなる群から選ばれた1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項31】
請求項27に記載の製造方法により製造される有機電界発光素子。



【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公開番号】特開2006−73521(P2006−73521A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248336(P2005−248336)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】