説明

レーザ駆動装置

【課題】ファイバレーザを用いたパルス駆動方式のSHGレーザにおいて、ドライバ回路のオフセットに起因したサージ光の発生を防止する。
【解決手段】レーザ駆動装置100は、パルス駆動される励起用の半導体レーザ111と、励起光の波長と異なる波長の光を発光するファイバレーザ113と、波長を変換する非線形光学結晶115と、非線形光学結晶115からのレーザ出力に対する指令パルス信号を入力処理する指令パルス入力部130と、バイアス信号を発生するバイアス発生回路140と、バイアス信号を指令パルス信号に加算する加算器150と、バイアス信号が加算された指令パルス信号に応じて、半導体レーザ111を駆動するパルス電流を発生するドライバ回路120とを有する。バイアス発生回路140は、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120の出力と反対極性のバイアス信号を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ駆動装置に関し、特に、ファイバレーザを用いたパルス駆動方式のSHG(Second Harmonic Generation:2次高調波発生)レーザに好適なレーザ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体励起固体レーザでは、励起用の半導体レーザにパルス状の電流を流し、その半導体レーザからの励起光により固体レーザ媒質を励起してパルス状のレーザ出力を得る。半導体励起固体レーザでは、半導体レーザから出射される波長一定の励起光により固体レーザのレーザ発振の下準位にある電子にエネルギーを与え、このエネルギーにより電子を上準位に励起する。上準位にある電子数が下準位にある電子数を上回った状態は、反転分布状態と呼ばれる。半導体励起固体レーザでは、固体レーザ媒質の内部または外部からの光の刺激を受けて上準位にある電子が一斉に下準位に移行し、エネルギーを光の形で放出する(レーザ発振)。よって、半導体励起固体レーザでは、励起エネルギーが所定値以上固体レーザ媒質に蓄積されないと、反転分布状態が形成されず、レーザ発振は起こらない。したがって、励起エネルギーとレーザ出力との関係をグラフにとると、図15に示すようになり、励起エネルギーが非ゼロのある値に達すると、レーザ発振が始まる。この値はレーザ発振のしきい値と呼ばれる。
【0003】
従来の一般的な駆動方法では、半導体レーザに流すパルス電流の発振時電流値を固体レーザの発振しきい値に対応する電流値よりも高い値に設定し、かつ、非発振時電流値をゼロに設定して、半導体レーザの駆動電流を繰り返しオン/オフ(ON/OFF)する。半導体励起固体レーザでは、このパルス電流によって半導体レーザからの励起光をパルス動作させ、励起光を受けた固体レーザ媒質からレーザ出力を得る。
【0004】
一方、特許文献1には、別の駆動方法を用いた従来の半導体励起固体レーザ(以下単に「固体レーザ」という)が開示されている。図16に示すように、この固体レーザ1は、固体レーザ媒質3、半導体レーザ素子5aを含む励起用の半導体レーザ5、およびパルス電流制御手段7を有する。パルス電流制御手段7は、非発振時電流値可変設定部7aおよび非発振時間可変設定部7bを含み、半導体レーザ5の駆動オフ時(非発振時)には、図17に示すように、しきい値対応電流値よりもわずかに小さい値のバイアス電流を通電するようにしている。これにより、駆動電流がしきい値対応電流値に至るまでの時間が短縮されるため、レーザ出力の立上り時間が短縮され、さらには、駆動オフ時(非発振時)に流した電流により固体レーザ媒質3への蓄積エネルギー量が増えるため、駆動オン時(発振時)のオーバードライブ効果(高いピーク出力)が期待できるとされている。
【特許文献1】特開平10−321933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ファイバレーザを用いたSHGレーザ、つまり、半導体レーザを励起光源としてファイバレーザにより発光されたレーザ光を波長変換素子により波長変換して所望の波長のレーザ光を出力するレーザに対して、上記した特許文献1記載の技術を単に適用した場合、次のような問題がある。
【0006】
SHGレーザは、例えば、励起用の半導体レーザ(Laser Diode:LD)、ファイバレーザ、および波長変換素子(例えば、非線形光学結晶)からなる。このようなSHGレーザでは、半導体レーザにパルス電流を流し、その半導体レーザからのパルス状の励起光をファイバレーザに入射し、入射した励起光の波長と異なる波長の光をファイバレーザにより発光した後、波長変換素子により目的波長のパルス状のレーザ出力を得る。このとき、ファイバレーザも、特許文献1記載の固体レーザ1と同様に、レーザ発振を起こすまでには励起エネルギーの蓄積が必要であり、蓄積された励起エネルギーが非ゼロのある値(しきい値)に達すると、レーザ発振が始まる。
【0007】
特許文献1記載の技術では、上記のように、レーザ出力の立ち上がりを早くするために、半導体レーザ5の駆動オフ時(非発振時)にしきい値対応電流値よりもわずかに小さい値のバイアス電流を流して立上り時間の改善を図っている。しかし、ファイバレーザを用いたSHGレーザでは、駆動オフ時(非発振時)に励起用半導体レーザにバイアス電流を流すと、このバイアス電流による発光によりファイバレーザに励起エネルギーが蓄積され、図18に示すように、駆動オフ時に突然パルス状の光(パルス光)11を発生することが確認された。なお、このように突然発生するパルス光は、瞬間的に定常状態を超えて発生するサージパルスの一種であり、このうち、特に、エネルギーの高いパルス状のレーザ光(パルス光)は、ジャイアントパルスとも呼ばれる。以下、本明細書では、突然発生するパルス光を「サージ光」と呼ぶことにする。
【0008】
また、積極的に励起用半導体レーザにバイアス電流を流さなくても、ドライバ回路内のオフセットにより、励起用半導体レーザに微小な電流(以下「オフセット電流」という)が流れることがある。したがって、この場合にも、オフセット電流による発光によりファイバレーザに励起エネルギーが蓄積され、ファイバレーザがサージ光を発生するおそれがある。
【0009】
例えば、図19に示すように、励起用半導体レーザに所定の指令パルス信号21を加えると(図19(A))、指令パルス信号21のオン期間において、励起用半導体レーザに所定の駆動電流23が流れ(図19(B))、ファイバレーザから所定の光出力25が得られる(図19(C))。しかし、このとき、ドライバ回路内のオフセットにより、指令パルス信号21のオフ期間において、励起用半導体レーザにオフセット電流27が流れ(図19(B))、図19(C)に示すように、ファイバレーザがサージ光29を発生するおそれがある。
【0010】
このサージ光は、ディスプレイ用光源として好ましくないばかりか、非常に大きな振幅を持つことがあるため(ジャイアントパルス)、ファイバレーザの後段に位置する波長変換素子(非線形光学結晶)を破壊してしまうことがある。そのため、ファイバレーザを用いたSHGレーザでは、サージ光の発生を防止する必要がある。
【0011】
なお、サージ光は、上記のようにオフセット電流に起因して発生しうるほか、ファイバレーザ出力の立ち上がりにおいても発生しうる。例えば、励起用半導体レーザに図20(A)に示すような方形の指令パルス信号31を加えると、励起用半導体レーザに図20(B)に示すようなパルス状の駆動電流33が流れ、励起用半導体レーザの光出力(励起光)35も図20(C)に示すようにパルス状に立ち上がる。そして、このパルス状の励起光35をファイバレーザに入射すると、図20(D)に示すように、ファイバレーザの光出力37の立ち上がりにおいてサージ光39が発生する。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ファイバレーザを用いたパルス駆動方式のSHGレーザにおいて、ドライバ回路のオフセットに起因したサージ光の発生を防止することができるレーザ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のレーザ駆動装置は、パルス駆動される励起用の半導体レーザと、前記半導体レーザから出射された励起光を入射して前記励起光の波長と異なる波長の光を発光するファイバレーザと、前記ファイバレーザから出射されたレーザ光の波長を変換する波長変換素子と、前記波長変換素子からのレーザ出力に対する指令パルス信号を入力処理する指令パルス入力部と、バイアス信号を発生するバイアス発生回路と、前記バイアス発生回路によって発生されたバイアス信号を前記指令パルス入力部によって入力処理された指令パルス信号に加算する加算器と、前記加算器によってバイアス信号が加算された指令パルス信号に応じて、前記半導体レーザを駆動するパルス電流を発生するドライバ回路と、を有し、前記バイアス発生回路は、前記半導体レーザの駆動時における前記ドライバ回路の出力と反対極性のバイアス信号を発生する、構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ファイバレーザを用いたパルス駆動方式のSHGレーザにおいて、ドライバ回路のオフセットに起因したサージ光の発生を防止することができる。
【0015】
具体的には、ドライバ回路のオフセットにより励起用の半導体レーザにオフセット電流が流れ、このオフセット電流による発光によりファイバレーザに励起エネルギーが蓄積され、蓄積された励起エネルギーがしきい値を超えたときにファイバレーザが突然パルス光(サージ光)を発生することを防止することができる。また、これにより、サージ光による波長変換素子(例えば、非線形光学結晶)の破壊を防止することができる。
【0016】
すなわち、ドライバ回路のオフセットに起因してファイバレーザが励起状態に至るしきい値近辺で発生する不安定状態において、非常に大きなサージ(ジャイアントパルス)が発生して波長変換素子(非線形光学結晶)が破壊されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すレーザ駆動装置100は、ファイバレーザを用いたパルス駆動方式のSHG(2次高調波発生)レーザに好適なレーザ駆動装置であって、大別して、ファイバレーザを用いたSHGレーザ110と、ドライバ回路120と、指令パルス入力部130と、バイアス発生回路140と、加算器150とを有する。
【0020】
SHGレーザ110は、パルス駆動される励起用の半導体レーザ(LD)111と、この半導体レーザ111から出射された励起光を入射してこの励起光の波長と異なる波長の光を発光するファイバレーザ113と、このファイバレーザ113から出射されたレーザ光の波長を変換する非線形光学結晶(波長変換素子)115とを有する。この構成により、SHGレーザ110は、半導体レーザ111を励起光源としてファイバレーザ113により増幅されたレーザ光を非線形光学結晶115により波長変換して所望の波長のレーザ光を出力する。
【0021】
すなわち、このSHGレーザ110では、半導体レーザ111にパルス電流を流し、半導体レーザ111からのパルス状の励起光をファイバレーザ113に入射し、入射した励起光の波長と異なる波長の光をファイバレーザ113により発光した後、非線形光学結晶115により目的波長のパルス状のレーザ出力を得る。例えば、半導体レーザ111として波長が915nmの赤外半導体レーザを使用した場合、この915nmの光を励起光としてファイバレーザ113に入射することで、1064nmの光を発光させることができる。そして、この1064nmの光を非線形光学結晶115に入射することで、波長が半分の532nmの青紫色のレーザ光を得ることができる。
【0022】
ドライバ回路120は、入力された指令パルス信号に応じて、SHGレーザ110の駆動電流、つまり、SHGレーザ110内の半導体レーザ111を駆動するパルス電流を発生する。
【0023】
図2は、ドライバ回路120の一般的な構成例を示すブロック図である。
【0024】
上記のように、ドライバ回路120は、入力された指令パルス信号に応じて励起用の半導体レーザ111を電流駆動するための回路である。一般的な構成として、ドライバ回路120は、図2に示すように、駆動回路121、電流検出器123、および比較回路125を有する。駆動回路121は、電圧源121aおよび出力電圧制御回路121bを有する。
【0025】
すなわち、ドライバ回路120には、駆動電流を流すための電圧源121aがあり、ドライバ回路120は、この電圧源121aにより半導体レーザ111に電圧を印加する。そして、ドライバ回路120は、この電圧を印加して半導体レーザ111に流れた電流を電流検出器123で検出し、検出した電流と入力された指令パルス信号とを比較回路125で比較して差分を求める。そして、ドライバ回路120は、出力電圧制御回路121bで、その差分により電圧源121aの出力電圧を制御する。このフィードバック制御により、ドライバ回路120は、入力された指令パルス信号に応じて半導体レーザ111を電流駆動する。
【0026】
しかし、実際の電子回路において、ドライバ回路120には、素子のバラツキ(特性の不確定性)や、ドリフト(状態の変動)などに起因して、オフセットが存在する。このオフセットは、ドライバ回路120内の各素子に存在し、それぞれオフセット電圧として顕在化する。オフセット電圧とは、理想的には入力が0Vのときには出力も0Vになればよいが、入力が0Vのときに出力されてしまう電圧のことである。すなわち、オフセット電圧とは、入力を0Vにしても出力電圧が0Vにならないときのその出力電圧のことである。ここでは、以下、簡単化のため、電流検出器123にオフセット電圧が発生した場合を考える。
【0027】
図3は、オフセットを考慮したドライバ回路の構成例を示すブロック図である。なお、図3において、図2と同じ構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
図3に示すドライバ回路120aは、このドライバ回路120a内の電流検出器123にオフセット電圧が発生した場合を考えて、図2に示す理想的なドライバ回路120の構成に加えて、オフセット電圧源127および加算器129を仮想的に有する。すなわち、このドライバ回路120aは、電流検出器123に発生したオフセット電圧を電流検出器123の出力に加算する構成を有する。
【0029】
ここで、例えば、電流検出器123に負のオフセット電圧が発生した場合を考える。図4は、電流検出器123に負のオフセット電圧が発生した場合のドライバ回路120aの動作を説明するための図である。
【0030】
ドライバ回路120aにおいて、例えば、図4に示すように、入力された指令パルス信号の値がゼロであった場合、電流検出器123から比較回路125に入る信号が負の値であったとすると、比較回路125の出力は正の値となり、駆動回路121は電圧源121aの電圧を上げて半導体レーザ111に電流を流すように動作するため、電流の極性も正となる。このとき、電流検出器123の出力が電流検出器123の負のオフセット電圧により打ち消されてゼロになると、比較回路125の出力が一旦ゼロとなり、駆動回路121の電流出力がゼロになるが、負のオフセット電圧によって電流検出器123の出力が再び負の値となり、結果として半導体レーザ111に流れる電流は再び正の値となる。すなわち、これが繰り返されることで、指令パルス信号の値がゼロであっても励起用の半導体レーザ111には微小電流が流れることになる(図19(B)参照)。上記のように、本明細書では、この電流を「オフセット電流」と呼ぶことにする。
【0031】
なお、上記の説明では、電流検出器123にオフセット電圧が発生した場合を想定したが、実際には、その他素子(駆動回路121や比較回路125など)にもオフセット電圧は発生しうる。したがって、オフセット電圧源127は、ドライバ回路120a内の各素子に発生するオフセット電圧をまとめて等価的に表現したものとみることもできる。
【0032】
図5は、図1の要部詳細図であって、オフセットを考慮したドライバ回路120aを含む構成例を示している。以下の説明では、ドライバ回路120a内のオフセット電圧源127は、ドライバ回路120a内の各素子に発生するオフセット電圧をまとめて等価的に表現したものとする。
【0033】
指令パルス入力部130は、SHGレーザ110のレーザ出力に対する指令パルス信号を入力処理する。指令パルス信号は、任意のデューティ比を持つ。また、本実施の形態では、下記の理由により、パルスの立上り部分の一部に傾斜を設けた指令パルス信号を用いる(図6(A)参照)。そのため、指令パルス入力部130は、入力した指令パルス信号の波形を所定の形状に整形する、具体的には、入力した指令パルス信号に対して、パルスの立上り部分の一部に傾斜を設ける処理をも行う。なお、図6は、本実施の形態における指令パルス信号の波形形状とこれによる各部の出力波形とを示す図である。
【0034】
仮に、励起用の半導体レーザ111に理想的なパルス列である方形波の指令パルス信号(ストレートに立ち上がり、立ち下がる)を加えると(図20(A)参照)、上記のように、半導体レーザ111にパルス状の駆動電流が流れ(図20(B)参照)、半導体レーザ111の光出力(励起光)もパルス状に立ち上がる(図20(C)参照)。そして、このパルス状の励起光をファイバレーザ113に入射すると、ファイバレーザ113の光出力の立ち上がりにサージ光が発生する(図20(D)参照)。このサージ光は、ディスプレイ用光源として好ましくないばかりか、非常に大きな振幅を持つことがあるため(ジャイアントパルス)、ファイバレーザ113の後段に位置する非線形光学結晶115を破壊させることがある。すなわち、方形波の指令パルス信号のままで半導体レーザ111を駆動すると、ファイバレーザ113の光出力の立ち上がりにおいてサージ光が発生し、非線形光学結晶115を破壊することがある。
【0035】
そこで、本実施の形態では、サージ光の発生を防止するために、例えば、図6(A)に示すように、指令パルス信号161の立上り部分161aの一部に傾斜163を設けている。この傾斜163は、半導体レーザ111の発振しきい値に対応する値を横切るように設けられている。すなわち、指令パルス信号161は、パルスの立上り部分において、半導体レーザ111の発振しきい値に対応する値を挟む一部分が、他の部分よりも緩い傾斜163を有する。
【0036】
このように指令パルス信号161に傾斜163を設けることにより、半導体レーザ111の駆動電流165も図6(B)に示すように緩やかに立ち上がる。そして、これに伴い、半導体レーザ111の光出力(励起光)167も図6(C)のように緩やかに立ち上がる。そして、この励起光167をファイバレーザ113に入射すると、励起光167の立上り部分が、ファイバレーザ113が不安定な状態である、ファイバレーザ113の発振しきい値に対応する値の前後を緩やかに通過することになる。これにより、図6(D)に示すように、ファイバレーザ113の光出力169の立ち上がりにサージ光が発生するのを防止することができる。
【0037】
バイアス発生回路140は、入力された指令パルス信号(より具体的には、指令パルス入力部130による入力処理後の指令パルス信号)に付加するバイアス信号を発生する。このバイアス信号は、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120aの出力と反対極性の固定電圧である。このバイアス電圧を指令パルス信号に加算することにより、ドライバ回路120aで発生するオフセット電圧をキャンセルすることが可能になる。また、好ましくは、バイアス信号は、ドライバ回路120aのオフセット電圧と極性が同じ場合、絶対値がドライバ回路120aのオフセット電圧の絶対値よりも大きい値に設定されている。これにより、ドライバ回路120aのオフセット電圧のキャンセルを有効に行うことができる。なお、以下、バイアス発生回路140が発生するバイアス信号を「逆バイアス信号」と呼ぶことにする。
【0038】
加算器150は、バイアス発生回路140で発生した逆バイアス信号を指令パルス入力部130による入力処理後の指令パルス信号に加算する。この加算器150の出力が、ドライバ回路120aへの指令信号(制御信号)となる。このため、好ましくは、バイアス発生回路140が発生する逆バイアス信号は、加算器150の出力において、入力処理後の指令パルス信号の立上り部分に設けられた傾斜が保持されるような値に設定されている。
【0039】
図7は、ドライバ回路120aに負のオフセット電圧が発生した場合において、バイアス発生回路140を機能させない場合のドライバ回路120aの動作を説明するための図である。なお、図7は、図4に対応している。
【0040】
この場合、図7に示すように、入力された指令パルス信号の値がゼロであると、加算器150の出力もゼロになる。このため、ドライバ回路120aにおいて、比較回路125の出力は正の値となり、駆動回路121は電圧源121aの電圧を上げて半導体レーザ111に電流を流すように動作するため、電流の極性も正となる。このとき、電流検出器123の出力が電流検出器123の負のオフセット電圧により打ち消されてゼロになると、比較回路125の出力が一旦ゼロとなり、駆動回路121の電流出力がゼロになるが、負のオフセット電圧によって電流検出器123の出力が再び負の値となり、結果として半導体レーザ111に流れる電流は再び正の値となる。すなわち、指令パルス信号の値がゼロであっても励起用の半導体レーザ111にはオフセット電流が流れることになる。
【0041】
図8は、ドライバ回路120aに負のオフセット電圧が発生した場合において、バイアス発生回路140を機能させた場合のドライバ回路120aの動作を説明するための図である。
【0042】
バイアス発生回路140を機能させると、上記のように、バイアス発生回路140は、入力処理後の指令パルス信号に対して、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120aの出力と反対極性の固定電圧を逆バイアス信号として発生し、加算器150は、その逆バイアス信号を入力処理後の指令パルス信号に加算する。ここでは、図7に示すように、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120aの出力(電流)の極性は正であるため、バイアス発生回路140は、それの反対極性である負の逆バイアス信号を発生する。
【0043】
この場合、図8に示すように、入力された指令パルス信号の値がゼロであると、これにバイアス発生回路140からの負の逆バイアス信号を加算すると、加算器150の出力は、負の値となる。このとき、比較回路125の出力がゼロであったとすると、つまり、比較回路125の2つの入力端子の電圧レベルが一致したとすると、駆動回路121は、電圧源121aの電圧を下げて、半導体レーザ111に流す電流をゼロにするように動作する。そして、電流検出器123の出力が電流検出器123の負のオフセット電圧により負の値になったところで、比較回路125の出力はゼロとなり安定状態となる。すなわち、指令パルス信号の値がゼロであっても、バイアス発生回路140から負の逆バイアス信号を加算することにより、励起用の半導体レーザ111に流れる電流をゼロにすることができる。
【0044】
このように、電流検出器123が負のオフセットを持った場合でも、実際にドライバ回路120aに入力される指令パルス信号の値を負にすることで、励起用の半導体レーザ111に流れる電流をゼロにすることができる。
【0045】
なお、上記の例において、電流検出器123の負のオフセット電圧の絶対値よりもバイアス発生回路140の逆バイアス信号の絶対値の方が大きかった場合には、比較回路125の出力が負になり、電圧源121aの電圧を下げ続けることになる。しかし、電圧源121aは正の電圧しか発生しないように構成しておけば、励起用の半導体レーザ111に負の電圧が加わることはない。
【0046】
次に、上記構成を有するレーザ駆動装置100の全体動作について、図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態における指令パルス信号の波形とこれによる各部の出力波形とを示す図である。
【0047】
指令パルス入力部130では、指令パルス信号の立ち上がりにおけるサージ光の発生を防止するために、指令パルス信号161の立上り部分の一部に傾斜163を設ける(図9(A)参照)。
【0048】
一方、バイアス発生回路140では、ドライバ回路120aで発生するオフセットをキャンセルさせるために、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120aの出力と反対極性の固定電圧である逆バイアス信号を発生する(図9(B)参照)。このとき、バイアス発生回路140が発生する逆バイアス信号の値は、ドライバ回路120aのオフセット電圧と極性が同じ場合、絶対値がドライバ回路120aのオフセット電圧の絶対値よりも大きい値に設定されている。また、バイアス発生回路140が発生する逆バイアス信号の値は、加算器150の出力161aにおいて、入力処理後の指令パルス信号161aの立上り部分に設けられた傾斜163が保持されるような値に設定されている。
【0049】
そして、加算器150では、指令パルス入力部130による入力処理後の指令パルス信号161に、バイアス発生回路140で発生した逆バイアス信号を加算する(図9(C)参照)。このとき、バイアス発生回路140が発生する逆バイアス信号の値には上記の制限が設けられているため、加算器150の出力161aにおいても、入力処理後の指令パルス信号161の立上り部分に設けられた傾斜163が保持される。このように、立上り部分の一部に傾斜163を設けて、駆動時と反対極性の逆バイアス信号を加えた指令パルス信号161aを、ドライバ回路120aに加える。
【0050】
そして、ドライバ回路120aは、加算器150から入力した、立上り部分の一部に傾斜163が設けられた指令パルス信号161aに応じた駆動電流165を、励起用の半導体レーザ111に流す(図9(D)参照)。これにより、半導体レーザ111は、図9(E)に示すような光出力(励起光)167を得る。
【0051】
そして、この励起光167をファイバレーザ113に入射すると、この励起光167の緩やかな立ち上がりにより、ファイバレーザ113の発振前の不安定領域を緩やかに通過するため、ファイバレーザ113は、サージの発生なく発振に至り、図9(F)に示すような光出力169を得る。
【0052】
そして、ファイバレーザ113の光出力169を非線形光学結晶115に入射して所望の波長のレーザ光を得る。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、バイアス発生回路140および加算器150を設けて、指令パルス信号に逆バイアス信号を加えるため、ドライバ回路120a内で発生するオフセットをキャンセルして、駆動オフ時にファイバレーザ113が不安定状態に至ってサージ光が発生することを防止することができる。
【0054】
また、指令パルス信号の立上り部の一部に傾斜を設けて、半導体レーザ111の光出力が緩やかに立ち上がるようにしたため、ファイバレーザ113の光出力の立ち上がりにサージ光が発生することを防止することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、バイアス発生回路140による固定の逆バイアス信号が常に加算器150に加えられているが、これに限定されるわけではない。例えば、駆動オフ時にのみ逆バイアス信号を加えるようにしてもよいし、指令パルスがゼロのときに逆バイアスを加えるようにしてもよい。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態2は、逆バイアス信号による光出力の低下を防止して一定の光出力を確保する場合である。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態2に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図である。なお、このレーザ駆動装置200は、図1に示す実施の形態1に対応するレーザ駆動装置100と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図10に示すレーザ駆動装置200は、光検出器210および自動出力制御(Automatic Power Control:APC)部220を有する。光検出器210は、非線形光学結晶115から出射されたレーザ光を検出する。自動出力制御部220は、光検出器210の出力(非線形光学結晶115の実際の光出力)と指令パルス入力部130の出力(入力処理後の指令パルス信号)とが一致するように、ドライバ回路120aに対する制御信号(指令パルス信号)を補正(増幅)する。
【0059】
実施の形態1では、入力処理後の指令パルス信号に逆バイアス信号を加えるため、ドライバ回路120aに入力される指令パルス信号の大きさが入力処理後の指令パルス信号の大きさよりも小さくなり(図9(A)、図9(C)参照)、ドライバ回路120aから出力される駆動電流のレベルを低下させてしまう可能性がある。そこで、本実施の形態では、自動出力制御部220を設けて、光検出器210により検出された光出力の大きさ(例えば、波高値)と入力処理後の指令パルス信号の大きさ(例えば、波高値)とが一致するように、ドライバ回路120aに対する制御信号(指令パルス信号)を補正(増幅)するようにしている。なお、波高値とは、波の最大高値を意味する。
【0060】
図11は、自動出力制御部220の構成の一例を示すブロック図である。
【0061】
自動出力制御部220は、入力処理された指令パルス信号の大きさ(波高値)の平均値を算出する第1平均値回路221と、光検出器210の出力の大きさ(波高値)の平均値を算出する第2平均値回路223と、第1平均値回路221の出力と第2平均値回路223の出力を比較して差分を算出する比較回路225と、比較回路225の出力(差分)に応じて、入力処理された指令パルス信号の振幅を増幅する振幅増幅器227とを有する。第1平均値回路221および第2平均値回路223は、それぞれ、信号を入力する度に常に最新の平均値を算出する。また、振幅増幅器227は、例えば、比較回路225の出力(差分)に応じたゲインを、入力処理された指令パルス信号に乗算することにより、入力処理された指令パルス信号の波高値を加減する。
【0062】
すなわち、自動出力制御部220は、入力処理後の指令パルス信号を第1平均値回路221に通して、ここで当該指令パルス信号の波高値の平均値を算出し、また、光検出器210の出力を第2平均値回路223に通して、ここでこの光検出器210の出力の波高値の平均値を算出する。そして、自動出力制御部220は、比較回路225で、第1平均値回路221と第2平均値回路223の出力を比較する。そして、自動出力制御部220は、振幅増幅器227で、比較回路225の比較結果(差分)に応じたゲインを入力処理後の指令パルス信号に乗算して、入力処理後の指令パルス信号の波高値を加減する。
【0063】
図12は、自動出力制御部220の制御動作を説明するための図である。なお、ここでは、簡単化のため、入力処理後の指令パルス信号は方形波の形状をしている。
【0064】
まず、自動出力制御部220は、一方で、入力処理後の指令パルス信号を第1平均値回路221に通して、図12(A)に破線で示す平均値231を得る。他方で、自動出力制御部220は、光検出器210の出力を第2平均値回路223に通して、図12(B)に破線で示す平均値233を得る。そして、自動出力制御部220は、比較回路225で、第1平均値回路221の出力(平均値231)と第2平均値回路223の出力(平均値233)を比較し、振幅増幅器227で、比較回路225の比較結果(差分)に応じたゲインを入力処理後の指令パルス信号に乗算して、図12(C)に双方向矢印で示すように、入力処理後の指令パルス信号の波高値を加減する。
【0065】
なお、振幅増幅器227の出力は、加算器150で逆バイアス信号が加算された後、制御信号としてドライバ回路120aに与えられる。そして、ドライバ回路120aは、与えられた制御信号(指令パルス信号)により、励起用の半導体レーザ111を駆動する。この結果、図12(C)に示すように、自動出力制御部220の出力の波高値が加減されて、光検出器210の出力の波高値と指令パルス信号の波高値とが一致する。
【0066】
このように、本実施の形態によれば、非線形光学結晶115の光出力を検出し、検出した光出力の波高値と指令パルス信号の波高値とが一致するように、ドライバ回路120aに対する制御信号を補正するため、逆バイアスによる光出力の低下を防止して一定の光出力を確保することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、自動出力制御部220を指令パルス入力部130と加算器150の間に配置しているが、これに限定されるわけではない。自動出力制御部220は、加算器150とドライバ回路120aの間に配置してもよい。この場合、振幅増幅器は、入力処理された指令パルス信号ではなく、逆バイアスが加えられた指令パルス信号に対して、波高値の増減を行う。
【0068】
(実施の形態3)
実施の形態3は、ファイバレーザへの励起エネルギーの蓄積状態を推定し、推定結果に基づいて逆バイアス信号の値を可変したりドライバ回路を遮断したりする場合である。
【0069】
図13は、本発明の実施の形態3に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図である。なお、このレーザ駆動装置300は、図1に示す実施の形態1に対応するレーザ駆動装置100と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図13に示すレーザ駆動装置300は、光検出器310、積分器320、判定器330、およびバイアス発生回路140aを有する。
【0071】
光検出器310は、半導体レーザ111の非駆動時において半導体レーザ111から出射された励起光を検出する。上記のように、ドライバ回路120aにオフセットがあると、半導体レーザ111の非駆動時においても、ドライバ回路120aから半導体レーザ111にオフセット電流が流れ、半導体レーザ111がわずかに発光してレーザ光(励起光)を出射することがある。そして、この励起光がファイバレーザ113に入射して励起エネルギーが蓄積されると、半導体レーザ111の非駆動時においてサージ光が発生することがある。そこで、半導体レーザ111の非駆動時において半導体レーザ111から出射されてファイバレーザ113に入射される励起光を光検出器310により検出する。
【0072】
積分器320は、光検出器310の出力を積分する。具体的には、積分器320は、光検出器310により検出された半導体レーザ111の光出力を積分する。これは、ファイバレーザ113における励起エネルギーの蓄積と同等の処理を行うものである。この場合、積分器320の積分値がある値に達すると、ファイバレーザ113にサージ発生に至る励起エネルギーが蓄積されたと判断することができる。
【0073】
判定器330は、積分器320の積分値があらかじめ設定された判定基準値を超えたか否かを判定する。そして、判定器330は、積分器320の積分値が判定基準値を超えた場合には、ドライバ回路120aの動作を停止するための遮断信号をドライバ回路120aへ出力する。また、判定器330は、積分器320の積分値が判定基準値を超えていない場合には、その積分値に適当な係数をかけてバイアス発生回路140aへ出力する。ここで、係数の設定方法としては、例えば、次の基準が考えられる。積分器320の積分値とバイアス発生回路140aが発生するバイアス値(逆バイアス信号の値)との関係は、実際に使用するファイバレーザ113の特性によると考えられる。そこで、積分値が正の値になれば、係数を少しずつ大きくしていき、(1)積分値の増加が止まれば、係数を固定し、(2)積分値が増加していく場合は、係数を少しずつ大きくしていく。
【0074】
バイアス発生回路140aは、図1のバイアス発生回路140と同様に、入力処理後の指令パルス信号に付加する逆バイアス信号を発生する。この逆バイアス信号は、図1のバイアス発生回路140と同様に、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120aの出力と反対極性の電圧である。しかし、本実施の形態では、この逆バイアス信号の電圧値は、可変であって、判定器330の出力電圧によって決定される。具体的には、半導体レーザ111の非駆動時の光出力(励起光)がゼロになるように逆バイアス信号の値(バイアス値)を可変する。このように、積分値の増加具合に合わせて係数を可変してバイアス値を可変することにより、最適なバイアス値に調整することができる。
【0075】
なお、回路遮断器は、判定器330によって構成されている。また、バイアス設定回路は、判定器330およびバイアス発生回路140aによって構成されている。
【0076】
上記の構成により、指令パルス信号の駆動オフ時におけるドライバ回路120aのオフセットによる半導体レーザ111の発光により、ファイバレーザ113に励起エネルギーが蓄積される状態を、光検出器310と積分器320により推定し、推定された励起エネルギーの蓄積状態に応じて、バイアス発生回路140aで、逆バイアス信号を発生させ、指令パルス信号に加算することで、ドライバ回路120aのオフセットによる駆動電流を減少させて、ファイバレーザ113への励起エネルギーの蓄積を減少させる。また、積分器5の出力がある値(判定基準値)を超えると、非線形光学結晶115を破壊する危険があると判断して、ドライバ回路120aを遮断して半導体レーザ111の駆動を停止する。
【0077】
以上の動作により、ファイバレーザ113が励起状態に至るしきい値近辺で発生する不安定状態において、非常に大きなサージ(ジャイアントパルス)が発生して非線形光学結晶115が破壊されることを防止することができる。
【0078】
このように、本実施の形態によれば、光検出器310、積分器320、および判定器330を設けて、ファイバレーザ113への励起エネルギーの蓄積状態を推定し、この推定結果に基づいて、半導体レーザ111の非駆動時の光出力(励起光)がゼロになるように逆バイアス信号の値(バイアス値)を可変するため、推定された励起エネルギーの蓄積状態に応じて最適なバイアス値を設定することができ、ファイバレーザ113への励起エネルギーの蓄積を減少させることができる。これにより、駆動オフ時にファイバレーザ113が不安定状態に至ってサージ光が発生することを防止することができる。
【0079】
また、積分器320の出力がある値(判定基準値)を超えると、非線形光学結晶115を破壊する危険があると判断して、ドライバ回路120aを遮断して半導体レーザ111の駆動を停止するため、少なくとも、ファイバレーザ113からのサージ光の発生により非線形光学結晶115が破壊されることを確実に防止することができる。
【0080】
(実施の形態4)
実施の形態4は、積分器を用いることなく逆バイアス信号の値を可変する場合である。
【0081】
図14は、本発明の実施の形態4に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図である。なお、このレーザ駆動装置400は、図13に示す実施の形態3に対応するレーザ駆動装置300と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図14に示すレーザ駆動装置400は、判定器410を有し、積分器320を有しない点で、図13に示す実施の形態3に対応するレーザ駆動装置300と異なる。
【0083】
判定器410は、光検出器310の出力に適当な係数をかけ、得られた値をバイアス発生回路140bへ出力する。ここで、係数の設定方法としては、例えば、積分器320がある実施の形態3の場合と同様の基準を用いることができる。具体的には、光検出器310の出力(光出力)があれば、係数を少しずつ大きくしていき、(1)光出力が止まれば、係数を固定し、(2)光出力が減少しない場合は、係数を少しずつ大きくしていく。
【0084】
バイアス発生回路140bは、図1のバイアス発生回路140および図13のバイアス発生回路140aと同様に、入力処理後の指令パルス信号に付加する逆バイアス信号を発生する。この逆バイアス信号は、図1のバイアス発生回路140および図13のバイアス発生回路140aと同様に、半導体レーザ111の駆動時におけるドライバ回路120aの出力と反対極性の電圧である。しかし、本実施の形態では、この逆バイアス信号の電圧値は、図13のバイアス発生回路140aと同様に、可変であって、判定器410の出力電圧によって決定される。具体的には、半導体レーザ111の非駆動時の光出力(励起光)がゼロになるように逆バイアス信号の値(バイアス値)を可変する。このように、光検出器310の出力の状況に合わせて係数を可変してバイアス値を可変することにより、最適なバイアス値に調整することができる。
【0085】
このように、本実施の形態によれば、光検出器310および判定器410を設けて、光検出器310の出力があれば、半導体レーザ111の非駆動時の光出力(励起光)がゼロになるように逆バイアス信号の値(バイアス値)を可変するため、光検出器310の出力に応じて最適なバイアス値を設定することができ、ファイバレーザ113への励起エネルギーの蓄積を減少させることができる。これにより、駆動オフ時にファイバレーザ113が不安定状態に至ってサージ光が発生することを防止することができる。
【0086】
なお、積分器320を用いる実施の形態3は、オフセット電流により半導体レーザ111から多少励起光(赤外光)が出ても、ファイバレーザ113からサージ光を発生させないところで半導体レーザ111を停止させるという考え方に基づくものであり、逆バイアス信号の値を必要最小にすることができるという利点がある。これに対し、積分器を用いない本実施の形態は、オフセット電流による半導体レーザ111からの励起光(赤外光)を止めるという考え方に基づくものであり、半導体レーザ111からの励起光(赤外光)を発生させないという利点がある。しかし、この場合は、逆バイアス信号の値が必要最小でなくなるため、自動出力制御(APC)を利用しないときは、SHGレーザ110の光出力が低下するおそれがある。したがって、この場合は、実施の形態2の構成を併用することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係るレーザ駆動装置は、ファイバレーザを用いたパルス駆動方式のSHGレーザにおいて、ドライバ回路のオフセットに起因したサージ光の発生を防止することができるレーザ駆動装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図
【図2】図1のドライバ回路の一般的な構成例を示すブロック図
【図3】図2のドライバ回路に対して、オフセットを考慮したドライバ回路の構成例を示すブロック図
【図4】電流検出器に負のオフセット電圧が発生した場合のドライバ回路の動作を説明するための図
【図5】図3のドライバ回路を含む、図1の要部詳細図
【図6】本実施の形態における指令パルス信号の波形形状とこれによる各部の出力波形とを示す図
【図7】図3のドライバ回路に負のオフセット電圧が発生した場合において、バイアス発生回路を機能させない場合のドライバ回路の動作を説明するための図
【図8】図3のドライバ回路に負のオフセット電圧が発生した場合において、バイアス発生回路を機能させた場合のドライバ回路の動作を説明するための図
【図9】本実施の形態における指令パルス信号の波形とこれによる各部の出力波形とを示す図
【図10】本発明の実施の形態2に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図
【図11】図10の自動出力制御(APC)部の構成の一例を示すブロック図
【図12】図10の自動出力制御(APC)部の制御動作を説明するための図
【図13】本発明の実施の形態3に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図
【図14】本発明の実施の形態4に係るレーザ駆動装置の構成を示すブロック図
【図15】励起エネルギーとレーザ出力との関係を示すグラフ
【図16】従来の半導体励起固体レーザの構成の一例を示すブロック図
【図17】駆動オフ時の励起電流を説明するための図
【図18】駆動オフ時のサージ光の一例を示す図
【図19】駆動オフ時のサージ光の発生を説明するための図
【図20】ファイバレーザ出力の立ち上がりにおけるサージ光の発生を説明するための図
【符号の説明】
【0089】
100、200、300、400 レーザ駆動装置
110 SHGレーザ
111 励起用半導体レーザ(LD)
113 ファイバレーザ
115 非線形光学結晶
120、120a ドライバ回路
121 駆動回路
121a 電圧源
121b 出力電圧制御回路
123 電流検出器
125、225 比較回路
127 オフセット電圧源
129、150 加算器
130 指令パルス入力部
140、140a バイアス発生回路
210、310 光検出器
220 自動出力制御(APC)部
221 第1平均値回路
223 第2平均値回路
227 振幅増幅器
320 積分器
330、410 判定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス駆動される励起用の半導体レーザと、
前記半導体レーザから出射された励起光を入射して前記励起光の波長と異なる波長の光を発光するファイバレーザと、
前記ファイバレーザから出射されたレーザ光の波長を変換する波長変換素子と、
前記波長変換素子からのレーザ出力に対する指令パルス信号を入力処理する指令パルス入力部と、
バイアス信号を発生するバイアス発生回路と、
前記バイアス発生回路によって発生されたバイアス信号を前記指令パルス入力部によって入力処理された指令パルス信号に加算する加算器と、
前記加算器によってバイアス信号が加算された指令パルス信号に応じて、前記半導体レーザを駆動するパルス電流を発生するドライバ回路と、を有し、
前記バイアス発生回路は、
前記半導体レーザの駆動時における前記ドライバ回路の出力と反対極性のバイアス信号を発生する、
レーザ駆動装置。
【請求項2】
前記バイアス信号は、前記ドライバ回路のオフセット電圧と極性が同じ場合、絶対値が前記ドライバ回路のオフセット電圧の絶対値よりも大きい値に設定されている、
請求項1記載のレーザ駆動装置。
【請求項3】
前記指令パルス信号は、パルスの立上り部分において、前記半導体レーザの発振しきい値に対応する値を挟む一部分が、他の部分よりも緩い傾斜を有する、
請求項2記載のレーザ駆動装置。
【請求項4】
前記バイアス信号は、前記加算器の出力において前記傾斜が保持されるような値に設定されている、
請求項3記載のレーザ駆動装置。
【請求項5】
前記波長変換素子から出射されたレーザ光を検出する光検出器と、
前記光検出器の出力の大きさと前記指令パルス入力部によって入力された指令パルス信号の大きさとが一致するように前記ドライバ回路に対する制御信号を補正する補正回路と、
をさらに有する請求項1記載のレーザ駆動装置。
【請求項6】
前記半導体レーザの非駆動時において前記半導体レーザから出射された励起光を検出する光検出器と、
前記光検出器の出力に応じて、前記バイアス発生回路によって発生されるバイアス信号の値を設定するバイアス設定回路と、
をさらに有する請求項1記載のレーザ駆動装置。
【請求項7】
前記半導体レーザの非駆動時において前記半導体レーザから出射された励起光を検出する光検出器と、
前記光検出器の出力を積分する積分器と、
前記積分器の出力に応じて、前記バイアス発生回路によって発生されるバイアス信号の値を設定するバイアス設定回路と、
をさらに有する請求項1記載のレーザ駆動装置。
【請求項8】
前記半導体レーザの非駆動時において前記半導体レーザから出射された励起光を検出する光検出器と、
前記光検出器の出力を積分する積分器と、
前記積分器の出力が所定の判定基準値以上の場合、前記ドライバ回路を遮断する回路遮断器と、
を有する請求項1記載のレーザ駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−16257(P2010−16257A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176113(P2008−176113)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】