説明

レーダーシステム及びその製造方法

送信アセンブリ(10)、受信アセンブリ(20)、制御部(30)及び信号処理部(40)を含むレーダーシステム(100)について述べる。送信アセンブリ(10)は、入力信号(31)を受信し、入射レーダー信号(2)を送信する。送信アセンブリ(10)は、レンズキャビティ(74)、複数のビームポート(60)、複数のアレイポート(62)及びパッチアンテナアセンブリ(14)を有するRotmanレンズ(12)を含む。レンズキャビティ(74)は、10ミクロン〜120ミクロン、好ましくは40ミクロン〜60ミクロンのレンズギャップ(h)を有する。パッチアンテナアセンブリ(14)は、Rotmanレンズ(12)から複数の時間遅延同相信号を受信し、入射レーダー信号(2)をターゲット(4)に向けて送信するように動作可能な複数のアンテナアレイ(130)を含む。受信アセンブリ(20)は、反射レーダー信号(6)を受け取り、出力信号を生成する。信号処理部(40)は、入力信号(31)を出力信号と比較し、ターゲット(4)のレンジ、速度及び位置を決定するアルゴリズムを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2010年3月5日に出願された米国仮特許出願No.61/282595に対して米国特許法第119条(e)項の利益を請求する。
【0002】
本発明は、ターゲットの位置、速度及びレンジを測定するための微小電気機械システム(MEMS)レーダーシステム及びその製造方法に関する。より詳細には、好ましい実施形態で説明されるように、本発明は、受動ビーム形成、レーダー信号の送受信における電気信号から電磁気信号への処理の回路集積化、及び多様機能を含むレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電磁波を使用して対象物とターゲットとを検出するレーダーシステムは、当該技術分野で周知である。従来より、電波又はパルスが、レーダー用パラボラアンテナ又はアンテナによって送信されてその経路内の対象物ではね返される。次に、反射波が、受信機に返され、最初に送信された電波と比較される。既知の方法を使用するとき、ターゲットから受信機に反射された信号が、送信機と受信機に対するターゲットの位置及び/又は速度の両方を示すために使用される。
【0004】
一般のレーダーシステムは、送信信号(即ち、レーダー信号)を所望のターゲット方向に導くために様々な方法を使用する。先行技術の幾つかのレーダーシステムは、機械式に回転するアンテナを使用するか、レーダー信号を導くための機械的手段を備えるように構成されていた。他の先行技術のレーダーシステムは、一組のアンテナからなる電子制御式位相アレイを使用するように設計されており、その場合、アンテナから送信される信号は、アレイの有効放射パターンが所望の伝播方向で強化されるように同相で追加される。位相アレイを使用するレーダーシステムは、レーダー信号の角度方向を一定位置から迅速かつ正確に制御することができる。また、位相アレイシステム、単一アンテナの低い送信出力要件から恩恵を受け、特定の出力定格のアンテナからのレーダー信号を強化することができる。
【0005】
位相アレイレーダーシステム内の様々なアンテナからの信号を追加するために、当該技術分野で様々なタイプの移相器が知られている。レーダーシステムに微小電気機械システム(MEMS)式RFスイッチを使用する研究が行われており、MEMS式移相器は、低挿入損失、高アイソレーション及び高速応答時間を小型パッケージで実現する。しかしながら、MEMS式RFスイッチを使用して位相アレイを構成するのに必要な回路は複雑なことがあり、そのようなアレイの電力要件は高いことがある。
【0006】
Rotmanレンズは、レーダー信号をビーム形成し導くための受動装置である。Rotmanレンズの設計は、最初に、Walter Rotmanによって米国特許第3,170,158号(Rotman特許)と更に米国特許第4,381,509号で述べられており、これらの文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。Rotmanレンズは、レンズキャビティの幾何学形状を利用して、高周波(RF)スイッチ式移相器の必要なしに、複数の入力ビームの位相を調整して実時間のビーム形成とビームステアリングを提供する。更に、Rotmanレンズが、いかなる形態のマイクロエレクトロニクス信号処理もなしに、レンズキャビティの物理的特性を利用し得てレーダー信号を形成するので、ビーム形成に必要な制御回路の複雑さが著しく減少する。
【0007】
自動車の例示的な先行技術の使用例では、Mercedes、BMW、Lexus、Jaguar、Volvo、Fordなどの高級メーカーは、Bosch、Continental、Infineon、SmartMicro、M/A-Com、Hitachi、Fujitsuなどのメーカーによって開発されたレーダーシステムを使用している。現在のレーダーシステムは、2つの異なるレーダー技術に依存する。パルスレーダーは、Mercedesなどの自動車メーカーによって使用され、周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステムは、JaguarやBMWなどの自動車メーカーによって使用されている。これらの先行技術のシステムは、所望の視野を走査するために、外部モータを利用する機械式回転を必要とする。更に、幾つかの先行技術のシステムは、別個のアンテナアレイなどの離散系を採用している。多くの場合、これらの先行技術のシステムは、腐食を受けるが、高速時の運転の不十分な分解能と距離測定にも悩まされ、また多くの先行技術システムは、難しい運転状態で信頼性が悪化する。したがって、優れた性能を提供するために統合ソリューションを実現する改善されたレーダーシステムが必要とされている。
【0008】
最後に、機械的走査性能を必要とする先行技術のシステムは、摩耗、裂け及び熱ドリフトの影響を受ける。機械的走査を利用するパルス又はFMCWレーダーシステムは、高価過ぎてほとんどの標準車両又は大衆車両に含められない。
【0009】
したがって、発明者は、低コストの衝突防止及び衝突前警報システムが、より広い様々なメーカーと車両に入手可能ならばハイウェイ運転を著しく改善することが分かった。付加的な実施形態は、ロボット、船舶、飛行機、玩具及びセキュリティシステムを限定なしに含む更に他の車両タイプや他の用途で有効なことがある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、MEMSの技術を使用して小さい装置パッケージ内で正確で高信頼性のレーダー信号を高速で提供する改善されたタイプのレーダーシステムを提供することによって、先行技術の欠点の幾つかを少なくとも部分的に克服することである。
【0011】
一様相では、本発明は、Rotmanレンズをレーダーシステムに組み込む。Rotmanレンズは、レンズキャビティの物理的形状を活用し、移相器のマイクロエレクトロニクス式切り替えの処理要件を低くすることによって、ビーム形成に必要な複数の時間遅延同相信号を生成することができる。
【0012】
最も好ましくは、RF周波数の電気的スイッチ(RFスイッチ)を使用してRotmanレンズのビームポートを選択することができる。RFスイッチとRotmanレンズの組み合わせにより、信号処理の量が減少し、その結果、システムの複雑さが下がり、待ち持間が短くなり、サイクルタイムが速くなる。最も好ましい動作モードでは、好ましい実施形態のサイクルタイムは、50ミリ秒未満、より好ましくは約12ミリ秒に短縮されてもよい。更に、レーダーシステムにMEMS技術を使用して構成されたRotmanレンズを組み込むことにより、装置パッケージが更に小さくなる。
【0013】
本発明のレーダーシステムは、横電場(TE)モードの空気充填Rotmanレンズを利用することが好ましい。より好ましくは、Rotmanレンズは、TE10モードで動作するように選択され、MEMS技術を使用して構成される。この新しい実装は、先行技術のシステムのTEMモードマイクロストリップや導波路式Rotmanレンズと対照的である。シリコン系基板などの基板からRotmanレンズを構成するMEMS技術を利用することにより、50マイクロメートルまで小さいレンズ厚さを有するRotmanレンズの構成が可能になる。シリコン系Rotmanレンズのための容易な製作技術が開発された。レーダーシステム全体は、1/fノイズが低く、フットプリント面積が小さく、他のユーザ及びパルスレーダー信号からの干渉が少なく、反射強度が高く、レーダー断面積(RCS)が大きい。更に、MEMSの技術を使用してRotmanレンズを構成することにより、レーダーシステム全体を小さい装置パッケージに組み込むことができる。
【0014】
ほとんどの好ましい構造では、本発明は、レーダーシステムに属する。レーダーシステムは、送信アセンブリ、受信アセンブリ、制御部、及び信号処理部を含む。送信アセンブリは、入力信号を受信し、入射レーダー信号を送信する。送信アセンブリは、レンズキャビティ、複数のビームポート、複数のアレイポート、及びパッチアンテナアセンブリを有するRotmanレンズを含む。レンズキャビティは、下部、上部及び側壁によって画定され、下部は、10ミクロン〜120ミクロン、好ましくは40ミクロン〜60ミクロンのレンズギャップを形成するように上部から分離される。複数のビームポートは、レンズキャビティと通信し、第1端の方に離間され、各ビームポートは、選択波長(λ)の周波数を有する電磁波のレンズキャビティ内への伝播を可能にするように構成される。複数のアレイポートは、レンズキャビティと通信し、第1端とは反対のレンズキャビティの第2端の方に離間され、複数のアレイポートの間隔は、各ビームポートから全てのアレイポートまでの電磁波の移相に影響を及ぼすように構成される。更に、複数のアレイポートは、複数のビームポートのうちの1つからレンズキャビティに入る電磁波に基づいて複数の時間遅延同相信号を出力する。パッチアンテナアセンブリは、複数のアンテナアレイを含み、各アンテナアレイは、複数のアレイポートのうちの1つと通信し、複数のアンテナアレイは、Rotmanレンズから複数の時間遅延同相信号を受信し、入射レーダー信号をターゲットに向いた選択方向に送信することができる。受信アセンブリは、ターゲットから反射レーダー信号を受信し出力信号を生成する。制御部は、レーダーシステムを操作するためのものである。信号処理部は、送信アセンブリに送られる入力信号と、受信アセンブリによって生成された出力信号とを比較して、ターゲットのレンジ、速度及び位置を決定するアルゴリズムを実現する。
【0015】
別の態様では、本発明は、Rotmanレンズを製造する方法に属する。この方法は、Rotmanレンズの下部を構成する第1の基板を提供するステップと、リソグラフィ法を使用して第1の基板上に酸化物マスクを配置するステップと、ディープ・リアクティブ・イオン・エッチ(DRIE)法を使用して第1の基板をエッチングして下部を形成するステップと、Rotmanレンズの上部を形成する第2の基板を提供するステップと、最後に熱圧着及び導電性エポキシ樹脂を使用してRotmanレンズの上部と下部を接合してRotmanレンズを作成するステップとを含む。
【0016】
本発明の更にその他の特徴は、実施形態の以下の詳細な説明から当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
次に、添付図面と共に行われる以下の詳細な説明を参照する。
【図1】本発明の一実施形態によるレーダーシステムの概略図
【図2A】本発明の一実施形態によるレーダー信号を生成し送信する機能ブロック図
【図2B】本発明の一実施形態によるレーダー信号を受信し処理する機能ブロック図
【図3A】Rotmanレンズとパッチアンテナアセンブリの機能概略図
【図3B】本発明の一実施形態による切断線A−Aに沿った図3Aに示されたRotmanレンズの断面図
【図4】本発明の一実施形態によるMEMS技術を使用して構成されたRotmanレンズの横断面の拡大図
【図5】本発明の一実施形態によるRotmanレンズを通る電磁気波形のシミュレートパターン
【図6】本発明の一実施形態によるRotmanレンズの製造方法のフローチャート
【図7A】製造方法によるRotmanレンズの下部をスパッタ被覆する段階を示す図
【図7B】製造方法によるRotmanレンズの上部をスパッタ被覆する段階を示す図
【図7C】製造方法によるRotmanレンズの下部を熱圧着する段階を示す図
【図8】MEMS技術で実現された単投単極スイッチの機能図
【図9】本発明の一実施形態によるMEMS技術で実現された単極三投スイッチ(SP3T)を示す図
【図10A】本発明の一実施形態によるマイクロストリップパッチの線形アレイを含む単一モードで動作可能なパッチアンテナアセンブリを示す図
【図10B】図10Aに示されたような線形アレイのインサートマイクロストリップパッチ形成部分を示す図
【図11】本発明の一実施形態によるRFスイッチのアレイを含む複数モードで動作可能なパッチアンテナアセンブリを示す図
【図12】本発明の一実施形態による複数モードで動作するレーダーシステムの性能のハイウェイ実例を示す図
【図13A】本発明の一実施形態による短レーダーレンジモードで動作するレーダーシステムのモードを示す図
【図13B】本発明の一実施形態による中レーダーレンジモードで動作するレーダーシステムのモードを示す図
【図13C】本発明の一実施形態による長レーダーレンジモードで動作するレーダーシステムのモードを示す図
【図14A】本発明の一実施形態による帯域幅チャーピングを利用して複数モードで動作するレーダーシステムの入力信号の周波数パターンを示す図
【図14B】帯域幅チャーピングを利用して複数モードで動作するレーダーシステムの入力信号の代替周波数パターンを示す図
【図15A】本発明の代替実施形態による変調チャープ帯域幅信号を利用するレーダーシステムの入力信号の周波数パターンを示す図
【図15B】複数モードで動作するレーダーシステムにおいて反射レーダー信号を処理する周波数逓倍器回路の概略図
【図16A】本発明の一実施形態による層状パッケージに収容されたレーダーシステムの等角図
【図16B】主構成要素の配置を示す異なる観点からの、図16Aに示されたような層状パッケージに収容されたレーダーシステムの等角図
【図17A】本発明の方法によるプラスチック射出成形工程を使用してRotmanレンズの一部分を形成する工程を示す図
【図17B】本発明の方法によるプラスチック射出成形工程を使用してRotmanレンズの一部分を形成する工程を示す図
【図18】本発明の代替実施形態による送信及び受信アセンブリを有するレーダーシステムの例示的概略図
【図19】本発明の更に他の好ましい実施形態による単一の送信/受信アセンブリを有するレーダーシステムの例示的概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるレーダーシステム100を概略的に示す。レーダーシステム100は、ホスト車両8(図12)のバンパー上又はバンパー内に取り付けることができるように選択された全体サイズを有する。レーダーシステム100は、送信アセンブリ10、受信アセンブリ20、制御部30、及び信号処理部40を含む。後述するように、送信アセンブリ10は、入射レーダー信号2をターゲット車両4に送信するように動作できる。受信アセンブリ20は、ターゲット車両4からの反射レーダー信号6を受信するように動作可能であり、反射レーダー信号6は、信号処理部40によって処理されてターゲット車両4の位置、速度及び/又は方向に関する情報が抽出され、次に出力5としてユーザに提供される。反射レーダー信号6は、必要に応じて、信号処理部40に渡される前にアナログフィルタ処理にかけられる。例えば、アナログフィルタアセンブリ50が、混合器52を使用して反射レーダー信号6を入射レーダー信号2と混合するために使用される。更に、低域フィルタ(LPF)54などのフィルタアセンブリ50に1つ又は複数のフィルタが組み込まれてもよい。
【0019】
反射レーダー信号6を入射レーダー信号2と比較することによって、信号処理部40は、ターゲット位置、ターゲット速度、ターゲットレンジなどのターゲット車両4のパラメータを決定するように動作してもよい。この情報は、ドライバ通知情報を出力可聴信号又は視覚表示42の形で提供するために、ホスト車両ナビゲーションシステム(図示せず)、ダッシュボード、及び/又は他のタイプの表示装置などに送られてもよい。代替実施形態では、出力情報は、例えばコントローラエリアネットワークバス(CANバス)44などを介して、自律車両又は半自律ナビゲーション及び/又は制御のために制御システムに直接送られてもよい。信号処理部40は、デジタル信号処理を実現する。トランシーバがチャープ信号を生成する同調電圧を生成するために、デジタルアナログ変換器(DAC)回路が使用される。選択範囲の中間周波信号(IF)をフィルタリングし増幅するために低域フィルタが使用され、中間周波信号(IF)は、次に、アナログデジタル変換器(ADC)46を用いてデジタル信号に変換される。
【0020】
後述するように、送信アセンブリ10は、ビーム形成のための送信Rotmanレンズ12Tと、入射レーダー信号2を送信するための送信パッチアンテナアセンブリ14Tとを含む。前述したように、送信Rotmanレンズ12Tは、入力信号の位相を調整し、実時間のビーム形成とビームステアリングを提供するために使用される。
【0021】
受信アセンブリ20は、好ましくは、送信アセンブリ10と同様に構成され、受信Rotmanレンズ12Rと受信パッチアンテナアセンブリ14Rを含む。Rotmanレンズ12T,12Rとパッチアンテナアセンブリ14T,14Rは、実質的に同一構成を有してもよく、同一でなくても類似のパラメータで動作するように構成されてもよい。次に、レーダーシステム100内のRotmanレンズ12に戻ると、図3Aは、送信アセンブリ10又は受信アセンブリ20の一部分として示されたような、Rotmanレンズ12の基本機能を示す。送信アセンブリ14と組み合わされたRotmanレンズ12の動作を混乱させないように、送信アセンブリ10と受信アセンブリ20の幾つかの構成要素を省略したことを理解されたい。図3Bは、図3Aの切断線A−Aに沿って得られたレンズ12の断面図300を示す。各Rotmanレンズの概略的な構造は、図3A、図3B、図4及び図5に最もよく示され、各パッチアンテナアセンブリ14T,14Rは、図10A、図10B及び図11に最もよく示され、全体でそれぞれRotmanレンズ12とパッチアンテナアセンブリ14と呼ばれる。
【0022】
図3Aを簡単に参照すると、Rotmanレンズ12は、第1の一端の方に離間された3つのビームポート60(α,β,γで示された)と、第2の他端の方に離間された5つのアレイポート62を有する。幾つかマイクロ波相互接続素子86がそれぞれ、各ビームポート60及びアレイポート62とそれぞれ関連付けられ、電気信号を電磁波に変換しまたその逆に変換するように動作できる。図3Bに最もよく示されたように、Rotmanレンズ12は、概略平行に離間された上壁76及び下壁78と、周囲に延在する側壁80とによって画定される。上壁76と下壁78は、レンズ12を介して伝播される電磁波の波長の2分の1(λ/2)未満に選択されることが好ましいレンズギャップhだけ互いに離間される。ビームポート60とアレイポート62は、概略的に空気キャビティ74の両側に延在するように、図4と図5に最もよく示される。最も好ましくは、それぞれ一連のビームポート60とアレイポート62は、それぞれ実質的に同じ幾何学形状と長さで提供される。Rotmanレンズ12は、また、レンズキャビティ74と通信する複数のビームポート60と、レンズキャビティ74と通信する複数のアレイポート62とを有するように構成される。ビームポート60は、レンズキャビティ74の一端で離間され、アレイポート62は、ビームポート60と反対側のレンズキャビティ74の他方で離間される。Rotmanレンズ12の設計に、任意数のビームポート60と任意数のアレイポート62を含めることができるが、当該技術分野では、アレイポート62に対するビームポート60の一般的な組み合わせが周知である。例えば、図3Aで示されたRotmanレンズは、α,β,γで示された3つのビームポート60と、I、II、III、IV及びVで示された5つのアレイポートを有する。
【0023】
送信アセンブリ10の一部分のとき、Rotmanレンズ12Tのビームポート60は、入力信号31を受信するように動作し、アレイポート62は、それに対応する信号を送信パッチアンテナアセンブリ14Tに出力するように動作する。機能的な説明として、入力信号31は、送信Rotmanレンズ12Tのキャビティ74を横切って伝播するように、その入力ビームポート60(α,β,γ)で電磁波に変換される。これに関して、一連の関連したマイクロ波相互接続素子86は、各ビームポート60内に位置決めされ、入力電気信号31をレンズ12Tを介して伝播される電磁気信号に変換するように動作できる。送信Rotmanレンズのアレイポート62における出力信号12Tは、ビームポート60のうちの受信した1つのビームポートから伝播され全てのアレイポート62に到達する入電磁波に基づく。各アレイポート62で受信された電磁気信号は、別のマイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、アレイポート62によって時間遅延同相電気信号として一括して出力される。送信パッチアンテナアセンブリ14Tは、Rotmanレンズ12Tのアレイポート62から半剛性同軸ケーブルを介して時間遅延同相電気信号を受信するように構成され、電気信号を送信パッチアンテナアセンブリ14Tで電磁気信号に戻す。したがって、電磁気信号は、Rotmanレンズ12Tの幾何学形状とパッチアンテナアセンブリ14Tの組み合わせを顧慮して選択された方向66に入射レーダー信号2として送信される。
【0024】
信号発生器32によって生成された入力信号31が、信号発生器32から電気信号として出力されてもよいことを理解されたい。したがって、入力信号31は、適切なマイクロ波相互接続素子86によって電気信号と電磁気信号の間で変換されなければならない。好ましくは、マイクロ波相互接続素子86は、Corning Gilbert社によるG3POTM Interconnect Seriesであり、これは、より高実装密度、より低重量、より高周波での性能の産業需要に応えて開発された超小型プッシュオン式高性能マイクロ波相互接続素子である。したがって、マイクロ波相互接続素子86は、入力信号31を電磁波に変換するために送信Rotmanレンズ12Tの各ビームポート60内に取り付けられ、また各電子波動を複数の時間遅延同相信号に変換する送信Rotmanレンズ12Tの各アレイポート内に取り付けられてもよい。
【0025】
後述するように、受信アセンブリ20の一部として動作するRotmanレンズ12Rは、送信アセンブリ10のRotmanレンズ12Tと似ているが逆の順序で動作する。
【0026】
本出願人は、本発明によって、Rotmanレンズ12が、時間遅延同相信号を生成するために複雑で高価なRFスイッチ式移相器を必要としないことが分かった。したがって、送信アセンブリ10と受信アセンブリ20内のRotmanレンズ12は、受動素子であり、したがって、制御回路が不要なので複雑さが減少し効率が改善される。更に、Rotmanレンズ12は、動作に電力を必要とせず、既知の導波技術を使用して挿入損失が低くなるように設計することができる。
【0027】
図1に戻ると、受信アセンブリ20が、多数の異なる形態をとることができることを理解されたい。例えば、一実施形態では、受信アセンブリ20は、受動装置(受信Rotmanレンズ12Rを含む受信アセンブリ20など)より改善された分解能を提供する能動装置(図示せず)を含んでもよい。別の実施形態では、送信アセンブリ10は、入射レーダー信号2をターゲット車両4に送信し、同じ構成要素を使用して反射レーダー信号6を受信するように動作できる。そのような構成では、レーダーシステム100は、単純な送信機/受信機アセンブリを含んでもよく、送信アセンブリ10及び受信アセンブリ20より構成要素を減らすために多重化又はサーキュレータ構成要素と、特別なフィルタリングとを実装してもよい。単一の送信機/受信機アセンブリを使用する例示的な実施形態を図19に示し、以下に説明する。
【0028】
レーダーシステム100では、制御部30は、レーダーシステム100の全体的な操作のために提供される。制御部30は、専用プロセッサを備えてもよく、あるいはマイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コンピュータなどに実装されてもよい。制御部30と信号処理部40は、ASICやFPGAなどの同じ装置に実装されることが好ましいことがある。更に、制御部30の幾つかの資源は、レーダーシステム100の制御に使用されてもよく、他の資源は、反射レーダー信号6の解析に利用されてもよい。
【0029】
制御部30は、レーダーシステム100を操作する複数の制御信号を提供することが好ましい。例えば、制御部30は、送信アセンブリ10に送信される入力信号31を生成する信号発生器32を活動化するために使用される。制御部30は、信号発生器32の適切な動作を保証するための位相ロックループモジュール34を内蔵してもよい。例えば、制御部30は、位相ロックループモジュール34を介して基準信号33を信号発生器32に送るように動作してもよい。制御部30は、また、レーダーパッチアンテナアセンブリ100の様々な構成要素に送られる制御信号を生成してもよい。制御部30は、制御信号を、送信アセンブリ10及び/又は受信アセンブリ20と関連付けられた切替装置36T,36Rに送るように動作できることが好ましい。切替装置36Tは、信号発生器32をRotmanレンズ12Tの送信アセンブリ10に接続するように電子的に動作できる。切替装置36Rは、アナログフィルタアセンブリ50とADC46を介して、受信アセンブリ20のRotmanレンズ12Rをアセンブリ信号処理部40に電子的に接続するように動作できる。切替装置36T,36Rは、最も好ましくは、本明細書では切替装置36と呼ばれる同一構造を有し、後で図9を参照して述べるような単極三投(SP3T)スイッチ900として提供される。
【0030】
システムレベルで見ると、例えば図12に概略的に示されたように、レーダーシステム100は、入射レーダー信号2を生成/送信し、その後で1つ又は複数のターゲット車両4から反射レーダー信号6を受信/処理するように分離されてもよい。
【0031】
図2Aは、本発明の一実施形態による入射レーダー信号2を生成するための生成及び送信システム200の機能ブロック図を示す。最初に、入力信号31が、信号発生器32によって生成される。多くの周波数が可能であるが、好ましくは、信号発生器32は、20GHz〜100GHz、より好ましくは70GHz〜85GHzのより高い周波数を達成するように選択された電気信号31を提供するように動作できる。車両レーダー用途に使用されるとき、レーダーシステム100は、約77GHz±1GHzで動作するように構成されることが最も好ましいが、様々な用途に代替周波数が可能であることを理解されたい。
【0032】
次に、入力信号31は、切替装置36Tに送られ、切替装置36Tは、制御部30によって調整され、複数のビームポート60のどれが入力信号31を受信するかを選択する。送信アセンブリ10の一部として動作するとき(即ち、図3Aで左から右)、所定の時間にレンズキャビティ74を横切って電磁波を伝播することができるのは、送信Rotmanレンズ12Tのビームポート60のうちの1つのビームポートだけである。しかしながら、レンズキャビティ74を横切って伝播される電磁波の場合、アレイポート62はそれぞれ、各ビームポートα,β,γから各アレイポートI,II,III,IV,Vまでの経路長に基づいて時間遅延同相信号を出力する。例えば、特定のビームポートαで入力信号31を受信した場合、マイクロ波相互接続素子86によって電磁波に変換された電気信号は、レンズキャビティ74の形状によりレンズキャビティ74を横切って伝播する。次に、電磁波は、各アレイポート62に異なる時間であるが同相で到達する。次に、複数の時間遅延同相信号は、アレイポート62にある追加のマイクロ波相互接続素子86によって電気信号に戻され、送信パッチアンテナアセンブリ14Tによって受信され入射レーダー信号2として送信される。各ビームポートα,β,γは、選択方向66(即ち、固有の送信角度66α,66β,66γ)で入射レーダー信号2と関連付けられる。
【0033】
次に、送信Rotmanレンズ12Tによって複数の時間遅延同相信号が出力される。時間遅延同相信号は、送信パッチアンテナアセンブリ14Tによって入射レーダー信号2として送信される前に、送信モノリシックマイクロ波集積回路増幅器(MMIC増幅器)16Tのアレイによってバッファされかつ/又は増幅されることが好ましい。
【0034】
送信MMIC増幅器16Tは、電気信号だけで動作できる。したがって、送信MMIC増幅器16Tが、送信Rotmanレンズ12Tのアレイポート62からの時間遅延同相信号をバッファしかつ/又は増幅するために使用される場合、送信Rotmanレンズ12Tと送信パッチアンテナアセンブリ14Tの間に追加のマイクロ波相互接続素子86が取り付けられてもよい。
【0035】
発明者は、信号を入射レーダー信号2として送信する前に電気信号と電磁気信号間で変換することが、レーダーシステム100のサイズを小さくするのに有益であることが分かった。これにより、マイクロ波相互接続素子86は、電気信号から電磁気信号への変換、又は電磁気信号から電気信号への変換を達成するように動作する。次に、電気信号を変換することができる増幅器とスイッチを、MEMS及びストリップ線路/マイクロストリップ技術を使用して設計することができる。更に、発明者は、電磁気信号で動作する受動装置(即ち、Rotmanレンズ12T)を電気的アセンブリに組み込むことによって、レーダーアセンブリ100の信号処理要件が大幅に下がり、更にコストが削減されることが分かった。更に、電磁気構成要素と電気構成要素の両方を実装する複合システムは、専ら電気的構成要素又は専ら電磁的構成要素に依存するシステムと比較してレーダーシステム100の速度を改善する。
【0036】
図2Bは、反射レーダー信号6を受信する受信及び処理システム250の機能ブロック図を示す。受信/処理システム250の設計は、受信した反射レーダー信号6の伝播が逆に行われること以外は、図2Aに示されたような生成/送信システム200を反映してもよい。具体的には、受信/処理システム250は、受信Rotmanレンズ12Rと受信パッチアンテナアセンブリ14Rの両方を含む。受信/処理システム250の受信パッチアンテナアセンブリ14Rは、入射レーダー信号2を送信する代わりに、反射レーダー信号6を受信するように動作できる。受信Rotmanレンズ12Rは、送信アセンブリ10と生成/送信システム200内の送信Rotmanレンズ12Tと逆の動作で、複数の時間遅延同相信号を受信し、電磁波を出力するように動作する。
【0037】
図2Bに示されたように、反射レーダー信号6は、受信/処理システム250の受信パッチアンテナアセンブリ14Rで受信され、電気信号に接続されることが好ましい。反射電気信号は、受信MMIC増幅器16Rによって増幅される。次に、増幅された信号は、必要に応じて、適切な電気的フィルタ18によってフィルタリングされ、複数の時間遅延同相信号として受信Rotmanレンズ12Rの各アレイポート62に送られる。受信Rotmanレンズ12Rの各アレイポート62内に配置されたマイクロ波相互接続素子86は、MMIC増幅器16Rによって出力された電気信号を、レンズ12Rのキャビティ74を介してビームポート60に伝播させるための電磁波に変換する。単一の電磁波は、受信Rotmanレンズ12Rのビームポート60から出ると、各ビームポート60に配置されたマイクロ波相互接続素子86によって電気信号に戻される。次に、出力電気信号は、アナログデジタル変換器(ADC)46によってデジタル信号に変換される。次に、デジタル信号は、信号処理部40に供給されてもよい。あるいは、電磁波は、変換前にフィルタリング(フィルタリングアセンブリ50などによって)されてもよい。更に、電子信号は、ADC46によってサンプリングされる前に中間周波数(IF)にシフトされて、あまり高性能でないアナログデジタル変換器46(例えば、サンプルレートが遅い)の使用を可能にする。
【0038】
信号処理部40では、FFTモジュール48によって信号を時間領域信号から周波数領域信号に変換してもよく、周波数領域信号は、次に、インタフェース部52と、デジタル信号処理部(DSP)54と統合能動的車両安全システム(IAVSS)56に送られてもよい。レーダーシステム100から得られた情報は、更なる処理と意志決定のために、レーダーシステム100のオペレタータに表示されかつ/又は高度制御システム(図示せず)に伝達されてもよい。
【0039】
レーダーシステム100の動作において、波面線64(図3A)を、それぞれのビームポートα,β,γで受信した入力信号31に関する入射レーダー信号2の波面64α,64β,64γと見なすこともできる。波面64α,64β,64γは、パッチアンテナアセンブリ14によって送られた時間遅延同相信号のアライメントを示す。各波面64α,64β,64γは、入射レーダー信号2の伝播方向又は選択方向66に対して直角であり、選択方向66α,66β,66γはそれぞれ、ビームポート60とアレイポート62両方の数と配置、及びパッチアンテナアセンブリ14の設計を含む、Rotmanレンズ12の構成によって決定される。したがって、特定のビームポートα,β,γで電磁波を受け取ると、図3Aに示されたように、選択方向66の入射レーダー信号2は、その対応する波面64α,64β,64γに対して直角になる。
【0040】
一般的に言うと、複数のビームポート60と複数のアレイポート62の配列は、ビーム形成と構成を容易にするためにRotmanレンズ12の中心軸にほぼ対称的になる。例えば、特定のビームポートα,β,γと特定のアレイポートI,II,III,IV,Vは、特定のビームポートβの選択方向66が、パッチアンテナアセンブリ14に対して0°又は直角になるように対称的に配列される。更に、特定のビームポートαとγの選択方向66はそれぞれθと−θになるように構成されてもよい。
【0041】
受信Rotmanレンズ12Rは、受信アセンブリ20(図3Aで右から左)の一部として動作するとき、反射レーダー信号6を受信パッチアンテナアセンブリ14Rで受信する。受信パッチアンテナアセンブリ14Rは、反射レーダー信号6を様々な物理位置で受信して、複数の時間遅延同相信号が得られるように動作できる。次に、それらの信号が、Rotmanレンズ12Rのアレイポート62に送られ、そこで、各アレイポート62にあるマイクロ波相互接続素子86によって電磁気信号に変換される。受信した時間遅延同相信号は、弱い可能性が高いので、反射レーダー信号6の信号強度を強めるために増幅器16Rのアレイ(図2Bに受信/処理システム250で示されたような)が含まれる。
【0042】
特定のアレイポート62 I,II,III,IV,Vは、受信パッチアンテナアセンブリ14Rから各信号を、連続時間遅延同相で、順番に受信するように動作できる。次に、信号は、同相電磁波として、Rotmanレンズ12のレンズキャビティ74を介してビームポート60に戻される。次に、ビームポート60は、レンズキャビティ74から複数の時間遅延同相信号を受信し、その信号をビームポート60のうちの1つで単一の電磁波に結合する。Rotmanレンズ12が、受動装置であるとき、全てのビームポート60で、任意の反射レーダー信号6の出力が測定できる可能性が高いことを理解されたい。しかしながら、選択方向66から受信した反射レーダー信号6の場合、電磁波は、最初に、Rotmanレンズ12Tの送信ビームポート60に対応するビームポート60で受信される。次に、特定のビームポート60 α,β,γでの単一の電磁波が、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、レーダーシステム100に出力される。
【0043】
Rotmanレンズ12Rは、受信アセンブリ20の一部として働くとき、複数の時間遅延同相信号を単一の電磁波に受動的に結合するように設計される。Rotmanレンズ12Rの幾何学的形状(即ち、各アレイポート62 I,II,III,IV,Vを各特定のビームポート60 α,β,γまでのビーム経路長)とパッチアンテナアセンブリ14の設計とに基づいて、特定のビームポートα,β,γによって出力された有効な電磁波は、送信アセンブリ10と同じ選択方向66から受信した電磁波である。例えば、波面64βと垂直な方向(即ち、パッチアンテナアセンブリ14と直角)の選択方向66βからパッチアンテナアセンブリ14で受信された反射レーダー信号6は、ビームポート60βに単一電磁波として到達する。選択方向66βは、入力信号が送信アセンブリ10によって特定のビームポート60 βから送信されたときに入射レーダー信号2がとる方向である。同様に、最初に送信アセンブリ10の対応するビームポートγによって送信されたとき、選択方向66γからパッチアンテナアセンブリ14で受信した反射レーダー信号6は、ビームポートγに単一電磁波として到達する。 したがって、受信アセンブリ20内の各ビームポート60 α,β,γは、選択方向66(即ち、固有の走査角度66α,66β,66γ)からの反射レーダー信号6の受信と関連付けられ、この反射レーダー信号6は、送信アセンブリ10内で対応するビームポート60 α,β,γを介して最初に送信された入射レーダー信号2に対応する。
【0044】
好ましい動作モードでは、送信Rotmanレンズ12Tと受信Rotmanレンズ12Rを介した入射レーダー信号2の送信と反射レーダー信号6の受信は、以下の通り。
【0045】
(A)送信Rotmanレンズ12T内のビームポート60αを使用する入射レーダー信号2の送信と、受信Rotmanレンズ12R内のビームポート60 αを使用する反射レーダー信号6の受信
【0046】
i)送信アセンブリ10において、
・切替装置36Tが、送信Rotmanレンズ12Tのビームポート60 αに電気信号を送る。
・マイクロ波相互接続素子86による変換後、電磁波が、レンズキャビティ74を横切って伝播される。
・時間遅延同相信号が、アレイポート62 I,II,III,IV,Vに順番に到達する。
・時間遅延同相信号が、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、送信パッチアンテナアセンブリ14Tに送られる。
・入射レーダー信号2が、送信パッチアンテナアセンブリ14Tによって選択方向66αに送信される。
・入射レーダー信号2が、ターゲット車両4からはね返る。
【0047】
ii)受信アセンブリ20において、
・受信パッチアンテナアセンブリ14Rが、反射レーダー信号6を選択方向66αから受信する。
・反射レーダー信号6が、受信Rotmanレンズ12R内のアレイポート62 V,IV,III,II,Iに順番に到達する。
・マイクロ波相互接続素子86によって変換された後、時間遅延同相信号が、レンズキャビティ74を横切って受信Rotmanレンズ12Rのビームポート60に伝播する。
・ビームポート60 αの電磁気信号が、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、受信切替装置36Rに出力される。
・出力信号が、受信切替装置36Rによる処理のために信号処理部40に導かれる。
【0048】
(B)送信Rotmanレンズ12T内のビームポート60 βを使用する入射レーダー信号2の送信と、受信Rotmanレンズ12R内のビームポート60 βを使用する反射レーダー信号6の受信
【0049】
i)送信アセンブリ10において、
・切替装置36Tが、送信Rotmanレンズ12Tのビームポート60 βに電気信号を送る。
・マイクロ波相互接続素子86による変換後、電磁波が、レンズキャビティ74を横切って伝播される。
・時間遅延同相信号が、アレイポート62 I,II,III,IV,Vに同時に到達する。
・時間遅延同相信号が、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、送信パッチアンテナアセンブリ14Tに送られる。
・入射レーダー信号2が、送信パッチアンテナアセンブリ14Tによって選択方向66βに送信される。
・入射レーダー信号2が、ターゲット車両4からはね返る。
【0050】
ii)受信アセンブリ20において、
・受信パッチアンテナアセンブリ14Rが、反射レーダー信号6を選択方向66βから受信する。
・反射レーダー信号6が、受信Rotmanレンズ12R内のアレイポート62 V,IV,III,II,Iに同時に到達する。
・マイクロ波相互接続素子86による変換後、時間遅延同相信号が、レンズキャビティ74を横切って受信Rotmanレンズ12Rのビームポート60に伝播する。
・ビームポート60 βの電磁気信号は、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、受信切替装置36Rに出力される。
・出力信号が、受信切替装置36Rによって処理のために信号処理部40に導かれる。
【0051】
(C)送信Rotmanレンズ12T内のビームポート60 γを使用する入射レーダー信号2の送信と、受信Rotmanレンズ12R内のビームポート60 γを使用する反射レーダー信号6の受信
【0052】
i)送信アセンブリ10において、
・切替装置36Tが、電気信号を送信Rotmanレンズ12Tのビームポート60 γに送る。
・マイクロ波相互接続素子86による変換後、電磁波が、レンズキャビティ74を横切って伝播される。
・時間遅延同相信号が、アレイポート62V,IV,III,II,Iに順番に到達する。
・時間遅延同相信号が、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、送信パッチアンテナアセンブリ14Tに送られる。
・入射レーダー信号2が、送信パッチアンテナアセンブリ14Tによって選択方向66γに送信される。
・入射レーダー信号2が、ターゲット車両4からはね返る。
【0053】
ii)受信アセンブリ20において、
・受信パッチアンテナアセンブリ14Rが、反射レーダー信号6を選択方向66γから受信する。
・反射レーダー信号6が、受信Rotmanレンズ12Rのアレイポート62 I,II,III,IV,Vに順番に到達する。
・マイクロ波相互接続素子86による変換後、時間遅延同相信号が、レンズキャビティ74を横切って受信Rotmanレンズ12Rのビームポート60まで伝播される。
・ビームポート60 γでの電磁気信号が、マイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、受信切替装置36Rに出力される。
・出力信号が、受信切替装置36Rによって処理のために信号処理部40に導かれる。
【0054】
次に、図3Bを参照すると、MEMS技術を使用するRotmanレンズ12の構造が最もよく分かる。図3Bは、図3Aに示されたRotmanレンズ12の切断線A−Aに沿った断面図300である。従来のRotmanレンズは、一般にインチの範囲内で測定される大きさであるが、本発明は、大量生産のために、Rotmanレンズ12のサイズを縮小し、小型一体型レーダーパッケージ内に収めることを可能にする新規の設計と製造方法を提供する。詳細には、従来のRotmanレンズは、マイクロストリップ又は導波路技術を使用して横電磁界モード(TEM)で動作するように設計された。77GHzで動作するレーダーシステムの場合、TEMモードで動作する従来のRotmanレンズは、ほぼ数センチメートル程度のレンズギャップhを有しなければならない。
【0055】
本発明のRotmanレンズ12は、有利には、横電界(TE)モードで動作するように設計されることがある。より具体的には、Rotmanレンズ12は、主動作モードとしてTE10モードで動作するように構成される。70GHz〜80GHzの範囲で動作するレーダーシステム100の場合、Rotmanレンズ12は、厚さ500マイクロメートルのシリコン基板上に製造されてもよい。
【0056】
Rotmanレンズ12が、TE10モードで動作しているとき、レンズキャビティ74は、導波路として動作する。したがって、発明者は、レンズキャビティ74の遮断周波数が、垂直寸法に依存せず、これにより、TE10モードで動作するRotmanレンズ12は、レンズギャップhを小さくできることが分かった。最適動作のため、レンズギャップは、動作周波数の波長の半分(λ/2)未満に選択されることが最も好ましい。レンズギャップhは、TE10モードで動作するときにλ/2より小さいことが好ましい。好ましい実施形態では、約77GHzで動作するレーダーシステム100の場合、入射レーダー信号2の波長が、約3.89ミリメートルであり、レンズギャップhの高さは、約50以下μmであることが好ましい。
【0057】
従来より、従来のRotmanレンズのレンズキャビティ内には、レンズキャビティ内の伝播経路を変更してレンズサイズを小さくするために、酸化アルミニウム結晶などの絶縁体が使用される。しかしながら、本発明者は、サイズが小さいときや、固体絶縁材料が不要なことを発見した。最も単純化された設計では、Rotmanレンズ12では、レンズキャビティ74を満たすために空気が使用される。更に、この設計は、MEMSの技術を使用してRotmanレンズ12の構造を単純化する。レンズキャビティ74内の絶縁材料として空気を使用するRotmanレンズ12を提供することにより、レンズギャップhを、10マイクロメートル〜120マイクロメートル、好ましくは40マイクロメートル〜60マイクロメートルに大幅に小さくすることができる。しかしながら、他の実施形態では、やはり固体絶縁体が利用されてもよい。そのような手法により、Rotmanレンズ12のサイズを更に小さくできることがある。
【0058】
好ましい実施形態では、14.2mm×11mmのフットプリント面積を有するレンズキャビティにより、レンズギャップhを約50マイクロメートルに小さくできることがある。Rotmanレンズ12の正確な寸法は、既知のシミュレーションソフトウェアパッケージを使用してシミュレートすることができる。Rotmanレンズ12は、従来のシリコン基板ウェハ68(図3B)から製造される。約50マイクロメートル以下のレンズギャップhを有するRotmanレンズ12を作成するためにレンズキャビティ74が基板68から掘り出されることは明らかになる。
【0059】
Rotmanレンズ12の性能を改善するため、レンズキャビティ74は、反射率と導電率を提供し、またレンズキャビティ74内の電磁気信号の吸収を最小にするために、1つ又は複数の材料で被覆されてもよい。更に、材料は、非反応性材料から構成されてもよい。例えば、クロム層70と金層72が使用されてもよい。しかしながら、他の材料が可能であり、クロム層70と金層72の使用が限定と解釈されるべきでないことを理解されたい。
【0060】
【表1】

【0061】
次に、表1を参照すると、好ましい実施形態による例示的なRotmanレンズ12のパラメータが列挙される。例示的な実施形態では、Rotmanレンズ12は、3つのビームポート60と5つのアレイポート62で構成される。より好ましくは、Rotmanレンズ12は、全幅約11mm、高さ約1mm、長さ約14〜14.5mm、及びレンズギャップhが約100μm未満で設計される。様々なパラメータの値は、Rotmanレンズ12に関する既知の式を使用して選択されてもよく、全波解析ソフトウェアMATLABTMなどのコンピュータソフトウェアパッケージによるシミュレーションによって選択されてもよい。
【0062】
Rotmanレンズ12は、低挿入損失(−2dB)と高反射減衰量(−20dB)を、RF整合を容易にするための50Ωの特性インピーダンスと共に提供することができる。
【0063】
図4は、表1に列挙されたパラメータによるRotmanレンズ12の説明図400を示し、ビームポート60とアレイポート62は、レンズキャビティ74と通信する。各ビームポート60と各アレイポート62内には、G3POTMInterconnectシリーズ・マイクロ波相互接続素子86が配置される。Rotmanレンズ12は、更に、側壁80からのレンズキャビティ74を通って伝播する電磁波の反射を最小にするために、1対又は複数対のダミーポート84を有するように構成されることが好ましい。例えば、一方の対のダミーポート84が、アレイポート62からの反射を処理し、他方の対のダミーポート84が、ビームポート60からの反射を処理してもよい。各対のダミーポート84は、ビームポート60と等しい数のダミーポート84で構成され、ビームポート60と類似の寸法で構成される。
【0064】
ビームポート60とアレイポート62は、ビーム形成と送信を一貫させるために送信長が一致するように構成される。対のダミーポート84は、チャンバからの反射を吸収材料86に導くことができる。これにより、対のダミーポート84は、Rotmanレンズ12のスペースと形状に基づいて、ビームポート60とアレイポート62より長くても短くてもよい。ダミーポート84の断面は、ビームポート60とアレイポート62両方の断面と一致することが最も好ましい。
【0065】
マイクロ波相互接続素子86は、ビームポート60内とアレイポート62内のそれぞれに示されているが、これは不可欠ではない。各マイクロ波相互接続素子86は、電気信号を電磁気信号に変換するか、電磁気信号を電気信号に変換するように動作できる。これにより、生成/送信システム200の一部として働くとき、送信Rotmanレンズ12Tのビームポート60のマイクロ波相互接続素子86は、受信入力信号31を電磁波に変換し、アレイポート62内のマイクロ波相互接続素子86は、時間遅延同相信号を電磁気信号から電気信号に変換する。受信/処理システム250の一部として働くとき、受信Rotmanレンズ12Rのアレイポート62のマイクロ波相互接続素子86は、受信した時間遅延同相信号を電磁波に変換し、ビームポート60内のマイクロ波相互接続素子86は、受信時電磁波を電気信号に変換する。
【0066】
次に、図5を参照すると、説明図500は、図4に示された例示的なRotmanレンズ12の電界パターンを示し、パラメータは表1に列挙されている。図5は、両方の対のダミーポート84、ビームポート60及びアレイポート62に含むレンズキャビティ74全体の電界強度の分布を示す。
【0067】
次に、図6と図7A〜図7Cに移り、本発明の好ましい実施形態によるRotmanレンズ12の好ましい製造方法について述べる。フローチャート600で分かるように、Rotmanレンズ12の下部700を構成するために基板68が提供される。基板68は、半導体で形成されてもよく、集積回路の作成と大量生産のために既知の技術を利用するためにウェハの形態をとってもよい。基板68は、任意の半導体材料のウェハとして始まってもよく、製造を容易にするためにシリコン(Si)、砒化ガリウム(GaAs)、ゲルマニウム(Ge)などから形成されてもよい。更に、ウェハは、様々な厚さ(厚さ635マイクロメートルのシリコンウェハなどの)でよい。
【0068】
基板68は、レンズキャビティ74に形成される前に浄化されてもよい。例えば、有機汚染物質、薄い酸化物層及びイオン性汚染物質の除去などの標準的な1組のウェハ洗浄工程(即ち、RCA浄化)が実行されてもよい。次に、(ブロック104を参照)、基板68は、リソグラフィ法を使用して基板68上に酸化膜マスクを配置することによって、Rotmanレンズ12のレンズ下部700(図7A)に成形されてもよい。幾つかのプロセスでは、二酸化ケイ素の酸化膜マスクが使用されてもよい。
【0069】
次に、基板68は、ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング(DRIE)を使用して、レンズキャビティ74を構成するようにエッチングされる(図6ブロック106を参照)。DRIEは、レンズキャビティ74に急峻な壁を作成するために使用される。これは、ほぼ垂直(90°)の側壁80を作成するためにMEMS用に特別に開発された工程であった。急峻な壁は、Rotmanレンズ12の側壁80を構成する。DRIEを使用してエッチングされたレンズ下部700は、図7Aに最もよく示される。
【0070】
好ましい実施形態では、シリコンウェハは、Alcatel 601E Deep Silicon Etch(登録商標)機械によるDRIE法を使用して、60μmの深さにエッチングされる。パターンは、エッチング前にリソグラフィ法でパターン形成される酸化シリコンの薄層によって画定される。シリコンは、酸化膜マスクに対して選択的にエッチングされる。システムは、シリコンのエッチングのエッチレートを高め縦横比を高めるように最適化される。
【0071】
垂直方向の異方性ディーププラズマエッチングを実施するためにDRIEのBosch法が使用されてもよい。側壁80は、レンズキャビティ74内に二酸化ケイ素の極薄層を付着させることにより保護されてもよい。次に、IntlvacのNanochromeTM蒸着システムを使用して厚さ40nmのクロム接着層70を使用することにより100nmの金シード層層(図示せず)を付着させるために、電子ビーム蒸着法が使用されてもよい。次に、厚さ3μmの金層72が、電気めっき法を使用して付着される。しかしながら、金層72を付着させるために、スパッタリングや真空金属化などの他の方法を使用してもよい。スパッタリングは、原材料から基板上に被覆材料を射出し、被覆材料が、高エネルギーで基板68に付着されることを伴う。他の材料を使用してもよい。例えば、白金や他の非反応性材料が、下部700に付着されてもよい。あるいは、銀、銅、クロムなどの他の導電性金属が使用されてもよい。
【0072】
レンズ上部702は、図7Bに示されており、Rotmanレンズ12の上部76を形成するために別の基板(ブロック108)を使用して形成される。上部702は、ブロック110で、適切な形状になるように機械加工されてもよい。一実施形態では、Rotmanレンズ12のレンズ上部702とレンズ下部700は、同一ウェハ(基板68)上に形成されてもよい。ブロック112で、上部702は、クロム接着層70と金層72を配置することによって下部700と同じ方法で金属化されることが好ましい。代替実施形態では、クロム接着層70の上に金層72を付着させるために、電子ビーム蒸着法が使用されてもよい。
【0073】
最後に、Rotmanレンズ12のレンズ上部702と、Rotmanレンズ12のDRIEエッチングされたレンズ下部700とが、熱圧着法を使用して接合されて、Rotmanレンズ12が形成される(ブロック114を参照)。Rotmanレンズ12のレンズ上部702とレンズ下部700は、固体レンズキャビティ74を形成するまで高温及び圧縮状態で挟まれる。更に、熱圧着が、レンズギャップhを高い精度で形成することを可能にする。レンズ上部702とレンズ下部700は、半波長(λ/2)より小さいレンズギャップhを形成するように接合されてもよい。前述したように、レンズギャップhは、20μm〜100μmでよく、好ましくは40μm〜60μmでよい。好ましい実施形態では、レンズギャップは、約50μmでよい。
【0074】
代替の可能な組立てモードで、Rotmanレンズ12の製作を完了するために、側壁80は、導電性エポキシ技術を使用して上部702に接続されてもよい。
【0075】
上部76と下部78を結合してレンズキャビティ74を形成した後、対のダミーポート84内の各ダミーポートは、高粘性アブソーバ液186を使用して終端される。アブソーバ液186は、マイクロディスペンサを使用してダミーポート84に小出しされてもよい。最も好ましくは、アブソーバ液は、対のダミーポート84に挿入されたときに垂直入射信号を−20dB減衰させることができる。
【0076】
図1に簡単に戻ると、生成/送信システム200の一部のとき、送信アセンブリ10と通信する切替装置36Tは、信号発生器32からの入力信号31を、Rotmanレンズ12の複数のビームポート60の単一ビームポートα,β,γに導くことができる。同様に、切替装置が受信/処理システム200の一部であるとき、切替装置36Rは、Rotmanレンズ12の3つのビームポート60のうちの1つからの信号を信号処理部40に導くことができる。図8と図9に示されたように、好ましい実施形態では、切替装置36は、MEMS系技術を利用して、共平面導波路(CPW)を使用して集積回路(図示せず)上に構成されたMEMS式単極三投スイッチ900を含む。RF周波数でのMEMS式単極三投(SP3T)スイッチ900は、3つのMEMS式単極単投(SPST)スイッチ800を使用して構成されてもよい。
【0077】
RF周波数(SPSTスイッチ800)でのMEMS式単極単投(SPST)スイッチの概念的な幾何学形状を図8に示す。SPSTスイッチ800は、CPWライン115と、アンカー118によってSPSTスイッチ800の一方の側に接続されたカンチレバー116とを使用して構成される。カンチレバー116の真下に導電性パッド117がある。直流バイアス電圧による活動化により、導電性パッド117は、CPWライン115上でカンチレバー116を折り畳ませる静電力を作り出し、それにより、CPWライン115の間に接続が確立される。
【0078】
次に、図9を参照すると、RF周波数(SP3Tスイッチ900)でのMEMS式単極三投スイッチが、3つのSPSTスイッチ800を含む。SP3Tスイッチ900は、単一スイッチ入力120が3つのスイッチ出力122に至る交差パターンで構成される。スイッチ出力122はそれぞれ、Rotmanレンズ12の異なるビームポートα,β,γに繋がる。制御部36は、SP3Tスイッチ900内の適切なSPSTスイッチ800をバイアスすることによって、スイッチ入力120で受信した信号を(スイッチ出力122の)適切なスイッチ出力に導く。
【0079】
図9で分かるように、SP3Tスイッチ900は、幾つか不連続な接地平面124で構成される。接地平面124は、ブリッジ126によって、互いと共通接地に接続される。SP3Tスイッチ900の適切な接地は、SPSTスイッチ800のそれぞれの間の分離を高めることによって、SP3Tスイッチ900の性能を改善してもよい。
【0080】
Rotmanレンズ12が、単一SP3Tスイッチ900の出力122によって一義的に供給できる数より多いビームポート60を有するとき(即ち、3つを超えるビームポート60があるとき)、単極多投スイッチが使用されてもよいことを理解されたい(図示せず)。あるいは、不特定多数のビームポート60に一義的に供給するために、任意数のSP3Tスイッチ900が、木構造又は他の方式で接続されてもよい。制御部30は、そのようなシステム内に、信号発生器32から受け取った入力信号31を各ビームポート60に一義的に伝達するための追加の制御信号を含んでもよい。
【0081】
切替装置36Rが、受信/処理システム250の一部として動作しているとき、切替装置36Rは、前述の切替装置36と類似の方式で動作してもよい。しかしながら、受信/処理システム250で動作しているとき、信号の方向は逆になる。3つのスイッチ出力122は、入力になり、スイッチ入力120は、単一出力になる。したがって、切替装置36Rは、受信/処理システム250で動作しているとき、ビームポート60のそれぞれから信号を受け取り、信号の1つを処理装置40に伝達するように動作できる。
【0082】
前述のように、入射レーダー信号2と反射レーダー信号6の選択方向66(即ち、伝播/受信の方向)は、Rotmanレンズ12とパッチアンテナアセンブリ14の組み合わせに依存する。発明者は、レーダーシステム100が、多様なモードで動作できるようにすることにより、適切に設計されたパッチアンテナアセンブリ14が、レーダーシステム100の動作に追加の有用性を提供できることが分かった。
【0083】
当該技術分野で既知のように、RF設計では、マイクロストリップ技術は周知である。マイクロストリップは、絶縁体又は基板によって接地平面から分離された導体のストリップ又はパッチを含む伝送線路である。一般的なマイクロ波構成要素は、一般に、アンテナ、カプラ、フィルタなどのマイクロストリップ技術を使用して構成される。
【0084】
次に、図10Aと図10Bを参照すると、各パッチアンテナアセンブリ14は、複数のアンテナアレイ130で構成される。各アンテナアレイ130は、アレイポート62のうちの1つに接続される。送信アンテナアアセンブリ14の場合、アンテナアレイ130はそれぞれ、アレイポート62のうちの1つから時間遅延同相信号のうちの1つを受け取り、入射レーダー信号2をターゲット車両4に向けて選択方向66に一括して送信するように動作できる。
【0085】
各アンテナアレイ130は、線形の一連のマイクロストリップパッチ132として構成される。好ましい実施形態では、図10Aに見られる各アセンブリ14は、12つのマイクロストリップパッチ132をそれぞれ有する5つのアンテナアレイ130を有する。アンテナアレイ130はぞれぞれ、アンテナアレイ130内の第1のマイクロストリップパッチ132のマイクロストリップ入力134で、Rotmanレンズ12の対応するアレイポート62に接続される。アンテナアレイ130の数が、対応するRotmanレンズ12内のアレイポート62の数と一致するが、各アンテナアレイ130に任意数のマイクロストリップパッチ132を使用できるとことを理解されたい。更に、アンテナアレイ130内のマイクロストリップパッチ132は、送信された信号間の適切な分離を保証するために波長(λ)だけ離間させられる。
【0086】
図10Bで分かるように、各マイクロストリップパッチ132は、適切な基板(図示せず)によって接地平面から分離された細長い導体である。アンテナアレイの性能を改善するために、マイクロストリップパッチ132の幅138と長さ136は、λ/2になるように設計される(ここで、λ=修正波長)。更に、マイクロストリップパッチは、マイクロストリップ入力134の一方の側にインサート140を含むように設計される。インサート140は、挿入幅142と挿入深さ144を有するように設計され、送信電力をマイクロストリップパッチ132の中心に導くことによって、既知のエッジ効果による送信及び受信中のノイズを低減する。表2に、例示的なパッチアンテナアセンブリ14のパラメータを示す。必要に応じて、一般的な設計パラメータが使用され、次にシミュレーションによって調整された。
【0087】
【表2】

【0088】
好ましい実施形態では、パッチアンテナアセンブリ14は、単一基板、例えば厚さ125マイクロメートルのRT/duroid(登録商標)5880基板上に製造されるか、効率と利得が改善される合成誘電率を実現するためにDRIEエッチングキャビティを下部に有する微細加工シリコン基板上に製造される。標準RCA浄化処理を使用して基板を浄化した後で、基板には、下側と上側両方に金などの導体が電気めっきされる。次に、上側導体が、アンテナマスクによりパターン形成され、共通マイクロストリップエッチング技術を使用してエッチングされてアンテナアセンブリ14が構成される。
【0089】
発明者は、送信アセンブリ10又は受信アセンブリ20それぞれの入射レーダー信号2又は反射レーダー信号6の選択方向66が、2つの制御可能な因子と関連付けられることが分かった。第1の因子は、ビームポート60(即ち、ビームポートα,β,γ)のどれが、関連切替装置36によって選択されるかである。第2の因子は、各アンテナアレイ130で動作可能なマイクロストリップパッチ132の数である。したがって、Rotmanレンズ12のビームポート60の数が、レンズキャビティ74の物理パラメータによって制限され、発明者は、各アンテナアレイ130内のマイクロストリップパッチ132の数が制御され易いことが分かった。各アンテナアレイ130内のマイクロストリップパッチ132の数を修正することにより、レーダーシステム100の選択方向66の精度を高めることができる。
【0090】
図11に、本発明の更に他の実施形態による代替のパッチアンテナアセンブリ14’が示され、ここで類似の構成要素を示すために類似の参照数字が使用される。パッチアンテナアセンブリ14’は、図10Aに示されたパッチアンテナアセンブリ14の同じアンテナアレイ130を含むが、図11のパッチアンテナアセンブリ14’は、更に、高周波の1つ又は複数のスイッチアレイを含む(RFスイッチアレイ146)。
【0091】
各RFスイッチアレイ146は、各アンテナアレイ130のRFスイッチ148を含むように構成される。例えば、RFスイッチアレイ146は、好ましい実施形態では、MEMS式単極単投(SPST)スイッチのアレイを含むように構成されてもよい。各RFスイッチ148は、各アンテナアレイ130内の2つのマイクロストリップパッチ132の間に挿入される。RFスイッチアレイ146が、パッチアンテナアセンブリ14’に挿入されたとき、各アンテナアレイ130は、2つのマイクロストリップ部分150に細分され、マイクロストリップ部分150が、RFスイッチアレイ146の両側に配置される。実質的に、各RFスイッチ148は、2つのマイクロストリップ部分150,150’、150”などの間に結合される。
【0092】
RFスイッチアレイ146が、制御部30によってイネーブルされたとき、RFスイッチアレイ146内の各RFスイッチ148は、RFスイッチアレイ146の両側に2つのマイクロストリップ部分150,150’,150”を接続することができ、その結果、多数のマイクロストリップパッチ132を有するアンテナアレイ130ができる。RFスイッチアレイ146が、ディスエーブルされたとき、RFスイッチ148はそれぞれ、RFスイッチアレイ146の両側の2つのマイクロストリップ部分150,150’,150”を切断することができる。これにより、制御部30は、パッチアンテナアセンブリ14内で動作するマイクロストリップパッチ132の数を少なくするか長くすることができる。各アンテナアレイ130の長さを制御することによって、選択方向66を調整することができる。
【0093】
複数のRFスイッチアレイ146は、パッチアンテナアセンブリ14によって利用されてもよい。図11の好ましい実施形態では、パッチアンテナアセンブリ14’は、2つのRFスイッチアレイ146を含む。パッチアンテナアセンブリ14’は、複数のモード(又は、多様なモード)で動作できる。‘SWT’と‘SW2’として示されたスイッチアレイ146は、制御部30によって活動化されたとき、パッチアンテナアセンブリ14を短レンジ機能から中間レンジ機能、長レンジ機能に切り換えるように再構成する。RFスイッチアレイ146が両方とも開位置にあるとき、1つのアンテナアレイ130当たり4つのマイクロストリップパッチ132が短レンジカバレッジを提供する。RFスイッチアレイ146‘SW1’が閉じられ、‘SW2’が開かれたとき、1つのアンテナアレイ130当たり8つのマイクロストリップパッチ132が、中間レンジカバレッジを提供する。最後に、両方のRFスイッチ146‘SW1’及び‘SW2’が閉じられたとき、1つのアンテナアレイ130当たり12つのマイクロストリップパッチ132が、長レンジカバレッジを提供するように動作できる。図11における再構成可能なパッチアンテナアセンブリ14’の他の全ての性能パラメータは、図10Aに示された単一モードパッチアンテナアセンブリ14のパラメータとやはり類似している。
【0094】
多様モードで動作するレーダーシステム100の好ましい実施形態の動作を、図1と図12を参照して述べる。制御部30は、様々な構成要素に適切な時間に制御信号を送信することによってレーダーシステム100の動作を同期させるように作動される。信号発生器32は、送信アセンブリ10用の入力信号31を生成することにより入射レーダー信号2を送信するプロセスを開始する。次に、入力信号31は、切替装置36Tによって、送信Rotmanレンズ12Tの特定のビームポート60 α,β,γに電気信号として導かれる。送信Rotmanレンズ12Tに入る前に、電気信号は、各ビームポート60内のマイクロ波相互接続素子86によって電磁波に変換される。次に、電磁波が、送信Rotmanレンズ12Tのキャビティレンズ74を横切って伝播され、他の関連したマイクロ波相互接続素子86によって電気信号に変換され、送信Rotmanレンズ12Tからアレイポート62で時間遅延同相電気信号として出る。次に、信号は、パッチアンテナアセンブリ14に電気的に伝達され、入射レーダー信号2として電磁的に送信される。パッチアンテナアセンブリ14Tは、パッチアンテナアセンブリ14Tを2つ以上のセグメント150に細分化するために1つ又は複数のRFスイッチアレイ146で構成される。様々なRFスイッチアレイ146を連続した組み合わせで有効にイネーブルし、かつ/又は、ディスエーブルすることにより、各アンテナアレイ130内の接続されたマイクロストリップパッチ132の数が変化する。これにより、制御部30は、入射レーダー信号2の選択方向66を決定することができる。
【0095】
ターゲット車両4に入射した後の反射レーダー信号6は、アンテナアレイ14Rによって受信される。その後で、信号6は、類似の送信路を逆にたどって信号処理部40に至る。次に、入射レーダー信号2と反射レーダー信号6が比較されて、レーダーシステム100の経路内の任意のターゲット車両4の位置及び/又は速度が決定される。
【0096】
前述したように、入射レーダー信号2と反射レーダー信号6の選択方向66は、特定の各Rotmanレンズ12に利用されたビームポート60のビームポートα,β,γと、関連付けられたパッチアンテナアセンブリ14の各アンテナアレイ130内でイネーブルされたマイクロストリップパッチ132の数とに依存する。制御部30は、制御信号を切替装置36とパッチアンテナアセンブリの両方に送ることによってRotmanレンズ12Tのビームポート60α,β,γのどれが利用されるかを決定して、RFスイッチアレイ146に制御信号を送信することによって何個のマイクロストリップパッチ132がイネーブルされるかを決定する。ビームポート60とRFスイッチアレイの様々な組み合わせを順繰りにすることによって、レーダーシステム100は、広い視界(FOV)でターゲットを識別することができる。
【0097】
次に、図12を参照すると、本発明の一実施形態によるレーダーシステム100の動作のハイウェイ実例1200が、実装8、例えばホスト車両8で示される。レーダーシステム100は、ホスト車両8のバンパーアセンブリの好ましくは中央位置に取り付けられてもよい。レーダーシステム100は、また、ホスト車両8のフード、後バンパー又は任意の他の場所に概略外向きに取り付けられてもよく、その結果、送信アセンブリ10と受信アセンブリ20は、入射レーダー信号2と反射レーダー信号6を送受信することができる。例えば、レーダーシステム100は、ホスト車両8の前面、後面若しくは側面、又は前面グリル若しくは後面グリルに取り付けられてもよい。
【0098】
道、例えばハイウェイをナビゲートする際、レーダーシステム100は、車両のFOV内で幾つかターゲット車両4を識別することができる。レーダーシステム100は、ビームポートα,β,γの様々なパラメータとRFスイッチアレイ146の組み合わせを順繰りにすることによって、ホスト車両に対して様々な距離レンジと異なる角度で対象物を検出することができる。
【0099】
「表3:性能仕様」は、図12のハイウェイ実例の好ましい実施形態におけるレーダーシステム100の様々な性能仕様を列挙する。
【0100】
【表3】

【0101】
ビームポート60 α,β,γはそれぞれ、された伝播方向と関連付けられる。例えば、特定のビームポートβは、パッチアンテナアセンブリ14Tに対して直角の伝播方向(即ち、0°)と関連付けられる。同様に、特定のビームポート60α及びγはそれぞれ、角度θ及び−θと関連付けられる。特定のビームポートα,β,γの組み合わせとイネーブルされたスイッチSW1及びSW2 146,146’は、入射レーダー信号2と反射レーダー信号6の選択方向66を決定することができる。RFスイッチアレイ146の様々な組み合わせを選択することによって、レーダーシステム100が、短レーダーレンジ(SRR)モード、中間レーダーレンジ(MRR)モード、長レーダーレンジ(LRR)モードなどの複数のモード(又は、多様なモード)で動作することができる。ビームポート60とイネーブルされたRFスイッチアレイ146との様々な組み合わせの選択方向66への影響は、「表4:多様モードでの選択方向の角度」に示されている。レーダーシステム100は、各アンテナアレイ130内で動作可能なマイクロストリップパッチ132の数とRotmanレンズ12R内のビームポート60の配置と構成を慎重に選択することによって、代替実施形態で様々な角度で動作するように構成されてもよいことを理解されたい。更に、追加のRFスイッチアレイ146又はビームポート60が使用される場合、レーダーシステム100の追加の範囲が作成されてもよい。列挙された角度は、他の構成が可能なので、限定として解釈されるべきでない。例えば、MRR及びLRRモードには、MRRモードには25°、LRRモードには10°などのもっと広い角度が選択されてもよい。
【0102】
【表4】

【0103】
次に、図13A、図13B及び図13Cを参照すると、レーダーシステム100の動作が、好ましい実施形態による3つの異なる動作モードでの3つの異なる走査レンジ1300,1302,1304として示される。SRRモードでは、図13Aに示されたように、‘SW1’(146)=開で‘SW2’(146’)=開のとき、ホスト車両8内のレーダーシステム100は、車両8に比較的近いターゲット車両4を検出するために広い角度θを実現する。例えば、SRRモードは、車両8から0m〜20mの80°FOV内でターゲット車両4を検出するように構成されてもよい。これは、駐車時又は車両8に近接した車両の検出に有用なことがある。
【0104】
更に、SRRモードでの高分解能は、自律的又は半自律的運転に有用なことがある。車両のナビゲーションシステムが、事故を無くすか回避するために介入する必要がありえる状況では、高い確度と精度を表示するように動作可能なSRRモードが、衝突回避システムの意志決定プロセスに組み込まれてもよい。
【0105】
MRRモードでは、‘SW1’(146)=閉で‘SW2’(146’)=開のとき、レーダーシステム100は、中距離レンジのターゲット車両4を検出するように動作できる。例えば、図13Bに示された実施形態では、MRRモードは、車両ホストの前の0m〜80mでターゲット車両4を検出するように設計される。この範囲は、通常の都市部の運転状態において車両又はターゲット車両4を検出するのに有効なことがある。更に、SRRモードのレンジの外側にあるターゲット車両4を検出することができる。
【0106】
最後に、図13Cに示されたように、‘SW1’(146)=閉で‘SW2’(146’)=閉のときのLRRモードが、ハイウェイ運転用に設計されてもよい。LRRモードでは、ホスト車両8が、0m〜300m、好ましくは80m〜150mのレンジでターゲット車両4を検出することができる。更に、LRRモードは、最大200mまでのターゲット車両4を検出するために使用されてもよい。ターゲット車両4をそのようなレンジで検出するために、発明者は、レーダーシステム100が、高精度で入射レーダー信号2を導くか又は反射レーダー信号6を受信することを要求されることがあることが分かった。例えば、150mの距離にあるターゲット車両4を正確に検出するには、特定のビームポートαの選択方向66αと特定のビームポートβの選択方向66βと角度の差は、わずか2°である。したがって、送信アセンブリ10内のRotmanレンズ12と、1つ又は複数のRFスイッチアレイ146を含む構成可能なパッチアンテナアセンブリ14とを含むレーダーシステム100は、そのような分解能を提供することができる。
【0107】
レーダーシステムの性能を改善し、また重要なことにはリフレッシュレートを改善するために、帯域幅チャーピング(bandwidth chirping)を利用して、反射レーダー信号6を特定の入射レーダー信号2と関連付けるのを支援することもできる。帯域幅チャーピングは、周波数変調を使用して情報を符号化するスペクトル拡散技術である。帯域幅チャーピングは、周波数が線形に変化する正弦波信号を利用し、したがってレーダー信号又はパルスが長くなり、したがって高エネルギーになる。この手法の更に他の利点は、帯域幅チャーピングがドップラ効果の影響を受けにくいことである。好ましい実施形態では、信号発生器32は、帯域幅チャーピングを利用する送信アセンブリ10の入力信号31を生成するように動作できる。制御部30は、更に、例えば位相ロックループモジュール34によって基準信号33を生成する。基準信号33は、中心が77GHzの周波数掃引範囲を有する線形周波数変調連続波信号(LFMCW)を生成する電圧制御発振器(VCO)又は信号発生器32を変調するために使用される。一実施形態では、掃引範囲が、−2GHz〜2GHz、好ましくは−1GHz〜1GHzでもよい。
【0108】
図12と図13に関して述べたように、レーダーシステム100は、長レンジ距離(即ち、80m〜150m)用のLRR、中レンジ距離(即ち、20m〜80m)用のMRR、及び短レンジ距離(即ち、0m〜20m)用のSRRの3つの基本モードを使用する多様なモードで動作できることが好ましい。制御部30は、レーダーシステム100を制御して、あるモードから別のモードに特定の時定数で絶え間なく切り換えて近視野領域と遠視野領域を走査するアルゴリズムを実現するように動作する。例えば、制御部30は、最初にビームポート60を特定のビームポート60 α,β,γのうちの1つに設定するようにレーダーシステム100を操作してもよい。次に、レーダーシステム100は、例えば表4に示されたように、各パッチアンテナアセンブリ130内のマイクロストリップパッチ132の数を変化させることによって、SRR、MRR及びLRRの3つのモードを連続的に走査することができる。次に、制御部30は、ビームポート60を次のビームポートに切り替え、その後で次の特定のビームポートα,β,γにしたがって3つのモードを再び連続的に走査してもよい。このサイクルは、Rotmanレンズ12内のビームポート60のそれぞれにループしてもよい。更に、パターンは、無期限に繰り返してもよい。
【0109】
代替実施形態では、制御部30は、最初に特定のモード(即ち、SRR、MRR、LRR)を設定し、次に各特定のビームポートα,β,γを走査しその後で次のモードに移るように動作してもよい。ビームポート60の全ての異なる可能な組み合わせと、任意数のビームポート60のモードと、モード(例えば、SRR、MRR、LRRなど)を順繰りにする他のパターンが可能である。
【0110】
制御部30は、更に、入力信号31を調整して、帯域幅チャーピングを様々な多様モードとの組み合わせで利用することができる。入力信号31は、SRRモード、MRRモード及びLRRモードで送信される入射レーダー信号2の特定の帯域幅チャーピングパターン(即ち、チャープ)を送信するように、切替装置36及びRFスイッチアレイ146のタイミングと同期される。例えば、制御部30は、モードごとに各ビームポート(即ち、アップチャープで1ミリ秒、ダウンチャープで1ミリ秒)の2ミリ秒の掃引を行ってもよい。更に、制御部30は、様々なモードで動作するとき(即ち、SRRモード、MRRモード及びLRRモードのとき)に異なるパターンのチャープを送信してもよい。
【0111】
次に、図14Aを参照すると、帯域幅チャーピングを含む周波数波形1400が示される。周波数波形1400は、好ましい実施形態によるレーダーシステム100への入力信号31として使用されてもよい繰り返しLFMCW信号を示す。アップチャープ/ダウンチャープ/アップチャープ(例えば、0.5ミリ秒のアップチャープ、1ミリ秒のダウンチャープ、0.5ミリ秒のアップチャープ)の特定パターンは、レーダーシステム100の特定のモード又は特定のビームポートα,β,γと関連付けられてもよい。モード(例えば、SRR、MRR及びLRR)ごとの周波数波形1400で見られる様々な帯域幅は、例えば500キロ・サンプル/秒で動作するADCなどの同じADC46を使用して全ての反射レーダー信号6の中間周波数をサンプリングできるように動作できる。
【0112】
図14Aに示された周波数波形1400は、特定のビームポートα,β,γごとに繰り返された後で次の特定のビームポートβ,γ,αに切り換わる。短周期152は、レーダーシステム100がSRRモードで動作しているときに送信され、中間周期154は、レーダーシステム100がMRRモードで動作しているときに送信され、長周期156は、レーダーシステム100がLRRモードで動作しているときに送信される。レーダーシステム100は、入力信号31を受信する特定のビームポートα,β,γを切り換えるように動作し、SRR周期152、MRR周期154及びLRR周期156のサイクルを繰り返すように動作できる。周波数波形1400は、複数のビームポート60内の各ビームポートα,β,γに無期限に繰り返されてもよい。
【0113】
図14Aを参照すると、SRRモードは、好ましい実施形態で約1GHzのチャープ帯域幅を利用するように動作でき、その場合、SRRモードにおいて、レーダーシステム100内で4つのマイクロストリップパッチ132が動作できる。SRRモードで検出されたターゲットが、ホスト車両8に最も近いとき、SRRモードの電力要件が最小にされる。
【0114】
MRRモードは、約1.2GHzのチャープ帯域幅を利用することができる。レーダーシステム100でMRRモードでは8つのマイクロストリップパッチ132が動作可能であり、これにより、高い指向性が提供される。
【0115】
LRRモードは、約2GHzのチャープ帯域幅を利用するように動作できる。最大距離にあるターゲット車両4に有効な中間周波数を得るには、チャープ帯域幅を大きくしなければならない。発明者は、より高い周波数を入力信号31として使用することにより、レーダーシステム100が、入射レーダー信号2をより高い出力で送信できることが分かった。入射レーダー信号2が強いほど、ターゲット車両4から反射されたときの反射レーダー信号6が強くなる(即ち、信号強度が大きくなる)。更に、最大パッチアンテナアセンブリ14’は、動作の際に12つのマイクロストリップパッチ132と共に利用され、それにより最大の指向性と小さい走査角度が提供される。
【0116】
本発明の異なる実施形態では、レーダーシステム100が、周波数波形1400の様々な変形を利用する様々な入力信号31を利用してもよいことを理解されたい。例示的な波形1400は、限定と解釈されるべきでない。例えば、代替の周波数波形1450を図14Bに示す。
【0117】
次に、図15Aと図15Bを参照すると、代替実施形態による代替LFMCW信号1500が示される。LFMCW信号1500は、送信アセンブリ10への入力信号31として使用されてもよい。図14Aと図14Bに示された周波数波形1400と対照的に、LFMCW信号1500は、レーダーシステム100の様々なモード(例えば、SRR、MRR、LRR)に一貫した帯域幅チャーピングを利用することができる。図15に示されたように、各モードは、2ミリ秒のアップチャープとダウンチャープを受け取る。しかしながら、帯域幅チャーピングの線形周波数変調は、異なる特定のビームポート60 α,β,γ全体に一貫している。
【0118】
反射レーダー信号6が、受信アセンブリ20によって受信されたとき、受信アセンブリ20から出力された信号は、最初にフィルタリングアセンブリ50(図1)(即ち、混合器52とLPF54を有する)に渡される。前述したように、混合器52は、送信アセンブリ10によって送信された入力信号を受信アセンブリ20から出力された信号と比較して、信号処理部40によって使用される歪みを決定して、ターゲット位置、ターゲット速度及びターゲットレンジを決定する。次に、この組み合わされた信号は、フィルタリングされてもよい。フィルタリングされた混合信号は、図15Bに示されたような周波数逓倍器回路1550に渡され、その後で信号処理部40によって処理される。
【0119】
周波数逓倍器回路1550は、レーダーシステム100の異なるモード(例えば、SRR、MRR及びLRR)ごとに別個の周波数逓倍器を含んでもよい。この動作モードでは、制御部30は、処理装置40による処理前に、各モードの出力された信号を分離し、出力信号の周波数に特定の係数を掛けて、返された信号を改善するように動作できる。更に、フィルタリングアセンブリ50(即ち、混合器52とLPF54を有する)からの信号を、LRR逓倍器153、MRR逓倍器155又はSRR逓倍器157のいずれかに導くために、適切なスイッチ151が使用されてもよい。次に、信号は、更なる処理のために、ADC46と処理装置40に送られてもよい。
【0120】
少なくとも1つの実施形態では、LFMCW信号1500の帯域幅チャーピングが、レーダーシステム100をSRRモードで動作させるのに十分なので、SRR逓倍器157は不要になる。代わりに、返された信号が、スイッチ151からADC46に直接送られてもよい。
【0121】
LRR逓倍器153、MRR逓倍器155及びSRR逓倍器157の値は、全ての反射レーダー信号6の中間周波数を同じADC46を使用してサンプリングできるように選択されてもよい。例えば、周波数逓倍器回路1550の値は、LFMCW信号1500に対応するフィルタ混合信号を、図14Aに示された周波数波形1400を使用して作成されるような同等の出力信号に変換するように選択されてもよい。
【0122】
図1に戻って簡単に参照すると、レーダーシステム100の構成要素(例えば、信号発生器32、切替装置36、送信アセンブリ10、及び受信アセンブリ20)は、パッケージングのそれぞれのサイズ要件を最小にするように設計されている。生成/送信システム200(図2A)と受信/処理システム250(図2B)のRotmanレンズ12と切替装置36が、MEMS技術を使用して製造されるとき、これらの素子のフットプリントは小さい。同様に、ほとんどの構成要素が、IC製造工程を使用して製造されるので、様々な構成要素を単一ICパッケージ内に収めることができる。
【0123】
次に、図16Aと図16Bを参照すると、4層レーダーシステムパッケージ1600が単一ICパッケージ(デバイスパッケージ)で概略的に示される。もっと多いか又は少ない数の層が使用されてもよいことを理解されたい。送信アセンブリ10と受信アセンブリ20の両方のパッチアンテナアセンブリ14が、最上層192に配置される。取り付けられたとき、入射レーダー信号2と反射レーダー信号6をターゲット車両4との間で送受信するために、2つのパッチアンテナアセンブリ14T,14Rが外向きにされる。
【0124】
送信アセンブリ10と受信アセンブリ20の2つのRotmanレンズ12T,12Rが、異なる層に別々に配置されてもよい(図16B)。送信アセンブリ10内のRotmanレンズ12Tと受信アセンブリ20内のRotmanレンズ12Rを分離するために、レーダーシステム100の追加の構成要素を収容する層が、2つのRotmanレンズ12T,12Rの間に挟まれてもよい。これは、RF信号をRotmanレンズ12のそれぞれから分離することによって、レーダーシステム100のRF性能を改善することがある。例えば、送信アセンブリ10と受信アセンブリ20の分離により、40dB以上になることがある。
【0125】
更に、信号発生器32、切替装置36T,36R、制御部30、信号処理部40などのレーダーシステム100の他の構成要素を収容するために、追加の層が使用されてもよい。様々な構成要素は、単一ASICに一体化されてもよく、異なるチップパッケージ162,164,166に分離されてもよい。
【0126】
レーダーシステムパッケージ1600は、全ての構成要素又はレーダーシステム100を含んでもよい。そのようなシステムでは、レーダーシステムパッケージ1600への入力が、出力と制御入力数に限定されることがあり、出力が、ドライバ通知42に必要でかつ/又はCANバス44を介して送るのに必要な処理済みレーダー信号に限定されることがある。その場合、レーダーシステムパッケージは、選択されたホスト車両8に取り付けられてもよい。レーダーシステムパッケージ1600は、車両の前面及び/又は後面に取り付けられてもよい。更に、レーダーシステムパッケージ1600は、最上層192が対象のFOVの方に向けられるように、車両のほぼ外向きの任意の部分に取り付けられてもよい。必要に応じて、レーダーシステムパッケージを天候や小さな衝撃などの破損から守るために、1つ又は複数の保護対策を使用してもよい。そのような保護対策は、レーダーシステム100の動作を著しく干渉して動作を抑制してはならない。
【0127】
代替の実施形態では、制御部30及び/又は信号処理部40は、外部の制御と処理のためにレーダーシステムパッケージ1600から取り除かれてもよい。この構成は、ナビゲーションシステム、車両及び他の実装に組み込まれるときに追加の柔軟性を提供することがある。更に、必要に応じて、制御部30/又は信号処理部40の選択された部分が、レーダーシステムパッケージ1600に含まれてもよい。例えば、基本フィルタリングを実施しアナログデジタル変換を実施する信号処理部40の一部が、レーダーシステムパッケージ1600に含まれてもよい。次に、信号処理部40は、未処理のデジタル・データを、更なるデジタル信号処理のためにレーダーシステムパッケージ1600の外部に出力してもよい。
【0128】
レーダーシステムパッケージ1600内に実装されたレーダーシステム100が、多くの利点を提供するようにシミュレートされた。レーダーシステムパッケージは、小さいフォームファクタを有するように設計されてもよい。例えば、図16Aと図16Bに示されたレーダーシステムパッケージ1600は、30mm×40mm×10mmの寸法を有すると同時に厳しい天候で優れた分離性能、低消費電力要件、及び高いシステム安定性を実証する。送信アセンブリ10と受信アセンブリ20が、受動的Rotmanレンズ12に依存するので、先行技術のシステムで必要とされたようなビーム形成用の付加的なマイクロエレクトロニクス信号処理は必要ない。
【0129】
更に、レーダーシステム100は、短い更新率で動作できる。例えば、レーダーシステム100の更新率は、6.8ミリ秒以下でよい。これは、更新率が50ミリ秒以上の場合がある先行技術のシステムに匹敵し好ましい。
【0130】
最後に、レーダーシステム100は、バッチ製作工程を使用して製造されてもよい。構成要素の全て又は大部分を単一パッケージ内で集積回路及びMEMS技術を使用して構成することができるので、レーダーシステムパッケージ1600の製造コストを削減することができる。
【0131】
Rotmanレンズ12を製造する別の方法は、図17Aと図17Bに、DRIEエッチングと熱圧着を使用する代わりに微小成形法を使用する代替実施形態で示される。微小成形法1700は、レンズ12の適切なキャビティを様々な材料から作成することを可能にする。図6に述べられ図7A〜図7Dに示された方法で使用される基板68は、典型的には、ウェハと集積回路に共通の材料から選択されるが、微小成形法は、高分子など使用してもよい。例えば、微小成形法は、加熱可塑性材料、熱硬化性樹脂、エラストマなどの高分子172を使用してもよい。Rotmanレンズ12が、最終的に、金層72などの導体で被覆されるので、Rotmanレンズ12自体を構成するための材料要件はない。
【0132】
次に、図17Aを参照すると、微小金型178は、典型的には、2つの連結部品からなる。第1の部品180と第2の部品182が合わさって、微小金型178内にキャビティ184を構成する。更に、2つの連結部品180,182の一方は、高分子172が注入されてもよい開口186を有する。
【0133】
射出成形装置1700を使用する射出成形によってRotmanレンズ12を微小成形する基本工程を図17Aに示す。射出成形装置1700は、通常、ツールを保持する締付けプレスを有する。締付け力は、通常、成形領域1平方インチ当たり2〜3トンの範囲である。射出部170は、オーガ型テーパ付きスクリュー174であり、樹脂又は高分子172がねじの先端まで下がるときにフライトの体積が減少する。スクリュー・バレル176は、高分子172の融点より高い温度(通常は、樹脂により450°F〜650°F)に加熱され、高分子が、スクリュー・バレル176の長さより下にねじ込まれたとき、高分子は、圧力で溶融され混合される。スクリュー・バレル176の先端には一方向弁があり、高分子172は、一方向弁から押し出されて、スクリュー・バレル176の前でスクリュー174より前に蓄積される。高分子172は、スクリュー・バレル176の先端にある一方向弁によってスクリュー・バレル176内に維持される。高分子172が蓄積するとき、高分子172は、スクリュー174をスクリュー・バレル176の内側に押し返す。スクリュー174の前に十分な材料が蓄積されたとき、ツールが閉じられ、スクリュー・バレル176の先端にある弁が開かれ、スクリュー174が前方に押されて、スクリューの前でテーパ付けされ蓄積された溶融高分子172が、一方向弁によって微小金型178のキャビティ184内に押される。射出圧力は、特定の高分子172と使用される微小成形工程により3,500〜35,000psiでよい。射出圧力は、典型的には、微小成形工程の射出及び凍結サイクルの間に変更される。
【0134】
微小金型178は、微小金型178内を通る水充填冷却チャネル(図示せず)によって冷却され、高分子172が、固化して固体に戻るほど十分に冷却されたときに、微小金型178が開けられ、射出成形部品190が、機械式排出システムによって取り出される。図17Bに示されたように、Rotmanレンズ12の下部700は、射出成形装置1700を使用して製造されてもよい。上部702も同様に製造されてもよい。
【0135】
溶融高分子172の高圧力と低粘性によって、微小成形法を使用してきわめて正確で細密な形状を成型することができる。更に、微小成形法を使用することにより、Rotmanレンズ12を形成する信頼性を高めることができる。
【0136】
Rotmanレンズ12のキャビティが形成された後で、厚さ3マイクロメートルの金層が、下部700と上部702の両方にスパッタ蒸着又は電気めっきされる。他の真空金属化形態を使用してもよい。下部700と上部702は、図7Aと図7Bに関して述べたRotmanレンズ12と類似の方法で金属化されてもよい。最後に、上部702と微小成形下部700が接合される。図7Cに関して述べたように、Rotmanレンズ12の上部を下部に接合するには熱圧着が使用されてもよい。
【0137】
明示されていない代替実施形態では、複数のレーダーシステム100が、ナビゲーションシステムの一部としてホスト車両8に取り付けられてもよい。ナビゲーションシステムのFOVを大きくするために、複数のレーダーシステム100が重複するカバレッジを有してもよい。例えば、バンパーアセンブリの前面と側面などの車の前面に、複数のレーダーシステム100が前向きで配置される。複数のレーダーシステムを使用することにより、異なるFOV内で追加のターゲット車両4を検出する追加のレーダー信号が提供される。ナビゲーションシステム内のそのようなレーダーシステム100は、レーダーシステムが、単一レーダーシステム100だけより大きいカバレッジを提供するように、異なる周波数で動作してもよく、信号を分離する多重化又は他の方法を利用してもよい。異なる周波数を使用するナビゲーションシステムは、送受信する複数のレーダー信号間の分離を高め干渉を減少させることができる。例えば、複数のレーダーシステムを互いに積み重ねて、連続的な実時間の半球状又は球状カバレッジ又は360°FOVを提供することができる。代替実施形態は、単一レーダーシステム100を使用するナビゲーションシステムよりも改善されたFOVを提供することができる。
【0138】
次に、図18を参照すると、更に他の実施形態によるレーダーシステム100が概略的に示され、ここで、類似の参照番号は類似の構成要素を示すために使用される。システム100は、送信アセンブリ10と受信アセンブリ20を含む。システムは、図16Aと図16Bに示されたレーダーシステムパッケージ1600で実現されてもよい。送信アセンブリ10と受信アセンブリ20はそれぞれ、Rotmanレンズ12T,12R及びパッチアンテナアセンブリ14T,14Rを含む。使用において、電力信号は、レーダーシステム100(±12V又は±24Vなど)、ホスト車両8(図12)によって、又は別々に1つ若しくは複数のバッテリ(図示せず)によって提供されてもよい。レーダーシステム100への入力は、掃引信号入力320と走査信号入力322を含んでもよい。出力信号は、DIG BBO信号を含んでもよい。他の信号が可能であるとことを理解されたい。
【0139】
図19は、類似の参照番号が類似の構成要素を示すために使用されるとき、更に他の実施形態によるレーダーシステム100を示す。図19では、汎用Rotmanレンズ12が、送信動作モードと受信動作モードの両方で動作できる。同様に、汎用パッチアンテナアセンブリ14が、送信モードと受信モードの両方で動作できる。したがって、発明者は、レーダー信号の送受信両方に単一Rotmanレンズ12と単一パッチアンテナアセンブリ14を利用することによって、レーダーシステム100のサイズとコストを更に削減できることが分かった。
【0140】
図19では、Rotmanレンズ12とパッチアンテナアセンブリ14が、単一送信/受信アセンブリ328の一部として動作する。送信/受信アセンブリ328が、更に、Rotmanレンズ12をパッチアンテナアセンブリ14に接続するために、入力導波路330、出力導波路332、及び適切なマイクロ波相互接続素子86(図4)を更に含むことを理解されたい。受信信号から送信信号を分離しかつ信号の適正な方向を保証するために、サーキュレータ350が、サーキュレータ/スイッチアセンブリの一部として、切替装置36と共に提供される。
【0141】
切替装置36は、入力信号31(図1)を送信/受信アセンブリ328に接続するときは送信切替装置として動作し、反射レーダー信号6(図1)を装置信号処理部に導くときは受信切替装置として動作する。制御動作と信号処理動作を実施する(制御部30と信号処理部40を構成する)ためにトランシーバ334とASIC336が提供される。
【0142】
この開示は、本発明の特定の好ましい実施形態について述べ示したが、本発明が、これらの特定の実施形態に限定されず、より正確に言えば、本発明は、特定の実施形態の機能的又は機械的等価物である全ての実施形態と、本明細書で述べられ図示された特徴を含むことを理解されたい。本発明を定義するため、添付の特許請求の範囲が参照されてもよい。
【0143】
本発明の様々な特徴を、本発明の実施形態のどちらかに関して説明したが、本発明の様々な特徴と実施形態は、本明細書で述べ図示した本発明の他の特徴及び実施形態と組み合わされて使用されてもよいことを理解されたい。更に、方法を一連の工程として特定の順序で示したが、工程が、当業者に知られているような様々な順序で行われてもよいことを理解されたい。述べた順序は限定として解釈されるべきではない。
【0144】
排他的所有権又は特権を請求する本発明の実施形態は、以下のように定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受信し、入射レーダー信号を送信する送信アセンブリを備えたレーダーシステムであって、
前記送信アセンブリは、Rotmanレンズと、パッチアンテナアセンブリと、を有し、
前記Rotmanレンズは、
下部、上部及び側壁によって画定され、前記下部が10ミクロン〜120ミクロン、好ましくは40ミクロン〜60ミクロンのレンズギャップを構成するように前記上部から離されたレンズキャビティと、
前記レンズキャビティと通信し、第1端の方に離間された複数のビームポートであって、選択された波長(λ)の周波数を有する電磁波を前記レンズキャビティ内に伝播できるようにそれぞれ構成された前記複数のビームポートと、
前記レンズキャビティと通信し、前記第1端とは反対側の前記レンズキャビティの第2端の方に離間された複数のアレイポートであって、前記複数のアレイポートの前記離間が、前記複数のビームポートのそれぞれから前記複数のアレイポートの全てへの前記電磁波の移相に作用するように構成され、前記複数のビームポートのうちの1つから前記レンズキャビティに入る前記電磁波に基づいて複数の時間遅延同相信号を出力する前記複数のアレイポートと、を含み、
前記パッチアンテナアセンブリは、
複数のアンテナアレイであって、各アンテナアレイが前記複数のアレイポートのうちの1つと通信し、前記複数のアンテナアレイが、前記Rotmanレンズから前記複数の時間遅延同相信号を受け取り、前記入射レーダー信号をターゲットに向けた選択方向に送信するように動作できる前記複数のアンテナアレイと、
前記ターゲットから反射レーダー信号を受信し、出力信号を生成する受信アセンブリと、
前記レーダーシステムを操作する制御部と、
前記送信アセンブリに送信された前記入力信号と前記受信アセンブリから生成された前記出力信号を比較する信号処理部と、を含むレーダーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レーダーシステムが、11mm未満のパッケージ幅、14.5mm未満のパッケージ長、及び1mm未満のパッケージ高さを有する装置パッケージ内に封入されたレーダーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レンズギャップが空気で満たされたレーダーシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レンズギャップが、絶縁材料で満たされたレーダーシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レンズキャビティの前記レンズギャップが、前記電磁波の選択波長の半分(λ/2)未満になるように構成されたレーダーシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のレーダーシステムであって、
前記電磁波の前記周波数が15GHz〜100GHz、好ましくは70GHz〜80GHzであるレーダーシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レーダーシステムが、微小電気機械システム(MEMS)技術を使用して実現され、単一装置パッケージ内に一体化されたレーダーシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レンズキャビティが、反射面を有する導電材料で被覆されたレーダーシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のレーダーシステムであって、
前記導電材料が、金、白金、銀、銅及びクロムからなるグループから選択されたレーダーシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のレーダーシステムであって、
前記導電材料が、真空金属化又はスパッタリング技術を使用して前記レンズキャビティ上に付着されたレーダーシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のレーダーシステムであって、
前記導電材料が、電気めっきを使用して前記レンズキャビティ上に付着されたレーダーシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記レンズキャビティが、前記レンズキャビティの前記2つの端の間に中心軸を有し、
前記複数のビームポートと前記複数のアレイポートが、前記中心軸に関して対称であるレーダーシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のレーダーシステムであって、
前記Rotmanレンズが、3つのビームポート及び5つのアレイポートを有するレーダーシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記信号処理部が、前記入力信号を前記出力信号と比較して、前記入力信号と前記出力信号の2つの間の歪みを決定するレーダーシステム。
【請求項15】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記送信アセンブリが、複数のマイクロ波相互接続素子を更に有し、
前記入力信号が、電気信号であり、前記複数のマイクロ波相互接続素子のうちの1つによって電磁波に変換されるレーダーシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のレーダーシステムであって、
前記複数の時間遅延同相信号が電磁信号であり、前記パッチアンテナアセンブリが電気信号を受信するように動作でき、
前記複数の時間遅延同相信号の各々が、前記複数のマイクロ波相互接続素子のうちの1つによって電気信号に変換されるレーダーシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記入力信号を生成する信号発生器を更に含み、前記入力信号が線形周波数変調連続波(LFMCW)信号を含み、前記信号発生器が前記入力信号を前記送信アセンブリに伝達するレーダーシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のレーダーシステムであって、
前記LFMCW信号が、複数の異なる対のアップチャープとダウンチャープとを有する帯域幅チャーピングの繰り返しパターンを含み、
前記レーダーシステムが、多数のレーダーレンジモードで動作し、
各特定の対のアップチャープ及びダウンチャープは、特定のレーダーレンジモードに関連付けられ、
各特定の対のアップチャープ及びダウンチャープは、前記レーダーシステムが前記特定のレーダーレンジモードで動作しているときに、前記送信アセンブリによって送信されるレーダーシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記受信アセンブリは、
第2のRotmanレンズと、
第2の複数のアンテナアレイを有する第2のパッチアンテナアセンブリと、を備え、
前記パッチアンテナアセンブリが、前記反射レーダー信号を第2の複数の時間遅延同相信号として受信し、前記第2の複数の時間遅延同相信号を前記第2のRotmanレンズに伝達するように動作でき、
前記第2のRotmanレンズが、前記第2の複数の時間遅延同相信号を受信し、前記出力信号を前記信号処理部に伝達するように動作でき、前記出力信号が、前記第2のRotmanレンズによって受信された前記第2の複数の時間遅延同相信号に基づく第2の電磁波であるレーダーシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のレーダーシステムであって、
前記複数のアンテナアレイの各々が、直列接続された複数のマイクロストリップパッチを含み、各マイクロストリップパッチが、基板によって接地平面から分離された細長い導体を有し、
前記入射レーダー信号の前記選択方向は、前記複数のアンテナアレイのそれぞれの中のマイクロストリップパッチの数と、前記電磁波を受信する前記ビームポートとの組み合わせに対応するレーダーシステム。
【請求項21】
請求項20に記載のレーダーシステムであって、
前記制御部は切替装置を有し、
前記切替装置は、前記入力信号を受信するビームポートを選択し、
前記入力信号が前記マイクロ波相互接続素子によって電磁波に変換されるレーダーシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のレーダーシステムであって、
前記制御部は、前記入力信号を前記複数のビームポートを順繰りにするように動作でき、前記複数のアンテナアレイの各々に直列接続された前記複数のマイクロストリップパッチが一定数であるレーダーシステム。
【請求項23】
請求項21に記載のレーダーシステムであって、
前記複数のアンテナアレイの各々は、少なくとも2つのマイクロストリップ部分に細分され、各マイクロストリップ部分は、直列接続された前記複数のマイクロストリップパッチに少なくとも1つのマイクロストリップパッチを含み、
前記送信アセンブリが、
複数のRFスイッチを含むRFスイッチアレイであって、各RFスイッチが2つのマイクロストリップ部分の間に結合された前記RFスイッチアレイを更に有し、
イネーブルされたときには、各RFスイッチが前記2つのマイクロストリップ部分を接続するように動作でき、ディスエーブルされたときには、各RFスイッチが2つのマイクロストリップ部分を切断して前記複数のアンテナアレイの各々で動作可能なマイクロストリップパッチの数を減らすように動作できるレーダーシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のレーダーシステムであって、
前記レーダーシステムが、少なくとも2つの距離レンジで対象物を検出するように動作でき、
前記第1のRFスイッチアレイ内の前記RFスイッチがそれぞれディスエーブルされたとき、前記レーダーシステムは、第1の距離レンジで前記ターゲットを検出するように動作でき、
前記第1のRFスイッチアレイ内の前記RFスイッチがぞれぞれイネーブルされたとき、前記レーダーシステムは、前記第1の距離レンジより遠い第2の距離レンジで前記ターゲットを検出するように動作できるレーダーシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のレーダーシステムであって、
前記制御部は、前記入力信号を前記複数のビームポートと前記少なくとも2つの距離レンジとの異なる組み合わせで順繰りにするように動作できるレーダーシステム。
【請求項26】
請求項1に記載のレーダーシステムを複数備えたナビゲーションシステムであって、
前記複数のレーダーシステムの各々は、異なる視野のカバレッジを提供するように動作でき、
前記異なる視野が重複するナビゲーションシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のナビゲーションシステムであって、
各レーダーシステムは、異なる入力信号を利用するように動作でき、前記各入力信号は、異なる動作周波数で動作するナビゲーションシステム。
【請求項28】
Rotmanレンズを製造する製造方法であって、
ディープ・リアクティブ・イオン・エッチ(DRIE)処理を用いて第1の基板をエッチングして、レンズキャビティを形成するステップと、
前記レンズキャビティの上部を形成する第2の基板を提供するステップと、
前記第1の基板の前記レンズキャビティ上に前記第2の基板を熱圧着するステップと、
を含む製造方法。
【請求項29】
請求項28に記載の製造方法であって、
前記第1の基板が100ミクロン未満の深さまでエッチングされる製造方法。
【請求項30】
請求項28に記載の製造方法であって、
前記第1の基板上の前記レンズキャビティと前記第2の基板上の前記レンズキャビティの前記上部とに非反応性材料層を付着するステップを更に含む製造方法。
【請求項31】
請求項30に記載の製造方法であって、
前記非反応性材料を付着する処理が、電気めっき、真空金属化及びスパッタリングから成るグループから選択された処理を含む製造方法。
【請求項32】
Rotmanレンズを製造する製造方法であって、
射出成形法を用いて前記Rotmanレンズの前記レンズキャビティを形成するステップと、
前記射出成形法を用いて前記Rotmanレンズの前記上部を形成するステップと、
前記レンズキャビティの上に前記上部を熱圧着して前記Rotmanレンズを形成するステップと、
を含む製造方法。
【請求項33】
請求項32に記載の製造方法であって、
前記熱圧着のステップの前に、前記レンズキャビティと前記Rotmanレンズの前記上部に非反応性材料層を付着するステップを更に含む製造方法。
【請求項34】
請求項33に記載の製造方法であって、
前記非反応性材料を付着する工程が、電気めっき、真空金属化及びスパッタリングから成るグループから得られる製造方法。
【請求項35】
請求項34に記載の製造方法であって、
前記金属が金を含む製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−521508(P2013−521508A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556350(P2012−556350)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000232
【国際公開番号】WO2011/106881
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(511154102)ユニバーシティ・オブ・ウィンザー (2)
【Fターム(参考)】