説明

レーダ処理装置および位置特定プログラム

【課題】得られた位置情報の分布に基づいて、測定対象物が存在する位置を推定することにより、測定対象物の位置情報の取得精度を向上させることが可能なレーダ制御装置および位置特定プログラムを提供すること。
【解決手段】反射波から、距離方向、方位方向および高低方向のうち2または3方向のマトリックスを用いてマトリックス状の受信データを順次取得しながら、取得したマトリックス状の受信データに基づいて前記測定対象物の位置を推定し、前記測定対象物の位置情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信した電波の反射波を受信することにより測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置、および前記レーダ制御装置において測定対象物の位置を特定するための位置特定プログラムに関し、特に、方位方向、高低方向、距離方向等の位置情報を取得し、これらの位置情報の中から少なくとも2種類以上から構成される位置情報について、2次元以上のマトリックスを用いてより正確な位置情報を特定するレーダ制御装置および位置特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーダ装置は、半導体技術等の向上から高い性能をもつハードウエアにより構成されてきており、より高い性能および機能が求められている。また、同時に、信号処理の形態は、高機能性、利便性、低コスト化等の観点から、これまでのハードウエア処理から高度なアルゴリズムを実現することが可能なソフトウエア処理へと移行してきている。
【0003】
通常、レーダ装置の主な目的は、目標となる測定対象物までの測距であるが、距離以外の情報の獲得も可能である。例えば、ドップラ速度、方位方向、高低方向、測定対象物形状などが挙げられる。これらは、レーダ装置の目的に合わせて、必要な情報を取得できる仕組みを組み込むことになる。
【特許文献1】特開2003−177010号公報
【特許文献2】特開2001−264440号公報
【特許文献3】特開2005−9926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レーダ装置の監視範囲を機械走査(送信アンテナを機械的に動かすことにより発信する電波を走査する手法)と電子走査(送信アンテナは固定しておき、発信する電波の方向を制御することにより走査する手法)の組み合わせ、または電子走査のみで走査すると電波照射されているビーム位置が不連続性を持つことになり、監視範囲が離散的なビームによりサンプリングされることになる。測定対象物の反射レベルが大きい場合や複数の測定対象物が存在する場合、多数のビーム位置で測定対象物情報が得られてしまい、その中から真の位置情報(方位方向、高低方向)を確定することが困難になるという問題点があった。
【0005】
図1は、単一の目標対象物の検出パターンの例を示す図であり、図2は、互いに隣接した2つの目標対象物の検出パターンの例を示す図である。
レーダ装置の一般的なアンテナ走査方式は、所定の範囲を一定の速度で機械的にあるいは電気的にアンテナを走査しながら、レーダ装置が送信した送信波が目標対象物で反射し、その反射波をレーダ装置が受信することにより実行される。この際に、測定対象物が存在していると、走査方向、例えば方位方向への1次元の検出パターン10が得られる。
【0006】
測定対象物が単一の場合は、図1に示すように、検出パターン10の信号レベルの最も高い個所の周辺に測定対象物が存在するであろうことが判別できる。しかし、図2に示すように、2つ以上の測定対象物が存在する場合は、1つの測定対象物の検出パターン21および他の測定対象物の検出パターン22が互いに干渉して検出パターン20として検出されてしまったり、さらにノイズ等が影響したりするため、測定対象物の位置を判別することが困難となる。図2に示すような複数の測定対象物の検出パターン20を分離するには、分解能を満たし且つデータサンプリング数を出来るだけ細かくする必要がある。従っ
て、実際の測定対象物の分離および検出は、そのサンプリング分を考慮したものとなり、サンプリングが悪いと検出性能が低下してしまう。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためのもので、レーダ装置を制御するためのレーダ制御装置であって、得られた位置情報の分布に基づいて、測定対象物が存在する位置を推定することにより、測定対象物の位置情報の取得精度を向上させることが可能なレーダ制御装置および位置特定プログラムを提供することを目的とする。
【0008】
また、互いに接近している複数の測定対象物をそれぞれ別々に捕捉することが可能なレーダ制御装置および位置特定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明のレーダ処理装置は、送信波を送信するとともに前記送信波の測定対象物での反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段を制御することにより前記送信波および前記反射波の送受信方向を所定の走査範囲で繰り返し走査させる走査手段と、前記送受信手段により送信された送信波および受信された反射波に基づいて前記測定対象物の位置情報を測定する測定手段とを備えることにより前記測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置である。
【0010】
そして、本発明のレーダ処理装置は、前記測定手段が、前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向のうち2方向の2次元マトリックスを用いて2次元マトリックス状の受信データを取得する2次元マトリックスデータ取得手段と、前記2次元マトリックスデータ取得手段によって取得した2次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段とを備え、更に前記2次元マトリックスデータ取得手段が、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、本発明のレーダ処理装置は、前記測定手段が、前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向の3次元マトリックスを用いて3次元マトリックス状の受信データを取得する3次元マトリックスデータ取得手段と、前記3次元マトリックスデータ取得手段によって取得した3次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段とを備え、更に前記3次元マトリックスデータ取得手段が、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のレーダ処理装置は、前記推定手段が、前記2次元マトリックスデータ取得手段によって取得した2次元マトリックス状の受信データまたは前記3次元マトリックスデータ取得手段によって取得した3次元マトリックス状の受信データのうち、中心の受信データが周辺の受信データに比較して最大値であると判断された場合、前記中心の受信データおよび前記周辺の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定することが望ましい。
【0013】
また、本発明のレーダ処理装置は、前記推定手段が、前記中心の受信データおよび前記周辺の受信データを用いて比例配分計算または2次関数近似計算によって前記測定対象物の位置を推定することが望ましい。
【0014】
また、本発明のレーダ処理装置は、前記推定手段が、前記2次元マトリックス状の受信
データまたは前記3次元状のマトリックスデータを、前記2次元マトリックスまたは前記3次元マトリックスを分解能以上の位置まで順次読み出し、読み出した各マトリックスデータに基づいて、前記測定対象物の各位置を一時的な測定対象物候補として測定対象物候補データベースに格納し、前記走査の後、前記測定対象物候補データベースから測定対象物候補を読み出し、単数または複数の測定対象物位置が同一測定対象物でないかをそれぞれの位置差を比較して、最終的な測定対象物の位置を推定することが望ましい。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、本発明の位置特定プログラムは、送信波を送信するとともに前記送信波の測定対象物での反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段を制御することにより前記送信波および前記反射波の送受信方向を所定の走査範囲で繰り返し走査させる走査手段と、前記送受信手段により送信された送信波および受信された反射波に基づいて前記測定対象物の位置情報を測定する測定手段とを備えることにより前記測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置のコンピュータを機能させるための位置特定プログラムである。
【0016】
そして、本発明の位置特定プログラムは、レーダ処理装置のコンピュータを、前記測定手段が備える、前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向のうち2方向の2次元マトリックスを用いて2次元マトリックス状の受信データを取得する2次元マトリックスデータ取得手段、前記2次元マトリックスデータ取得手段によって取得した2次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段、前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段として機能させるための位置特定プログラムであって、更に前記2次元マトリックスデータ取得手段が、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とする位置特定プログラムである。
【0017】
また、本発明の位置特定プログラムは、レーダ処理装置のコンピュータを、前記測定手段が備える、前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向の3次元マトリックスを用いて3次元マトリックス状の受信データを取得する3次元マトリックスデータ取得手段、前記3次元マトリックスデータ取得手段によって取得した3次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段、前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段として機能させるための位置特定プログラムであって、更に前記3次元マトリックスデータ取得手段が、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とする位置特定プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サンプリングされた反射波の信号レベル分布から測定対象物の位置を推定しているため、サンプリング以上の精度で測定対象物の位置情報の取得が可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、分解能を満たしている複数の測定対象物でビーム照射サンプリングの具合により複数の測定対象物が単一の測定対象物に見える場合であっても、反射波の信号レベル分布から複数の測定対象物として分離可能であり、レーダ装置の主目的である測定対象物を探知する能力を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明を適用した実施の形態を説明する。
図3は、本発明を適用したレーダ装置の構成を示す図である。
図3において、レーダ装置30は、送信部31、空中線部32、受信部33、レーダ処理部34、出力部35および制御部36を備え、制御部36が制御信号を用いて送信部3
1、空中線部32、受信部33、レーダ処理部34および出力部35を制御する。また、レーダ処理部34は、測定対象物位置確定処理部37、測定対象物情報分布記録部38および測定対象物候補記録部39を備える。
【0021】
このように構成されたレーダ装置30は、制御部36からの制御信号により、送信部31から空中線部32を通して送信波を送信して、測定対象物40で反射した反射波を空中線部32により受信する。そして、反射波を受信した受信部33は、レーダ処理部34が扱える形式に信号変換し、変換した受信信号をレーダ処理部34へ入力する。
【0022】
また、前記制御手段36からの制御信号に基づいて、前記送信波および前記反射波の送受信方向が所定の走査範囲で繰り返し走査されることにより、反射波が所定間隔でビームサンプリングされる。
【0023】
図4は、電子走査を使用した場合の反射波のビームサンプリングを示す図である。
図4に例示されたビームサンプリングは、距離方向と方位方向の2次元の捜査範囲を所定間隔でサンプリングされている例である。
【0024】
図3の説明に戻る。
レーダ処理部34は、入力された受信信号を測定対象物情報として測定対象物情報分布記録部38に格納する。
【0025】
図5は、測定対象物情報の配列の例を示す図である。
図5において、測定対象物情報の配列を示す測定対象物情報配列50は、距離方向と方位方向の7×7の2次元マトリックスであり、図4に示したビームサンプリングから得られる信号レベルを、対応するセルに格納する。
【0026】
図3の説明に戻る。
測定対象物位置確定処理部37は、測定対象物情報分布記録部38に格納された測定対象物情報がアンテナ走査でのビームサンプリング、距離サンプリング、分解能等から決定した3個以上のデータ配列からなる判定ゲートのデータ配列以上になったら、測定対象物情報分布記録部38から測定対象物位置確定処理部37へ測定対象物情報を取り出し、判定ゲートによる測定対象物位置の推定を行う。ここで、判定ゲートとは、その形状が、距離方向、方位方向、高低方向のうち何れかで構成される1次元(距離方向、方位方向、高低方向の単独)のデータ列、距離方向、方位方向、高低方向のうち何れかの2つで構成される2次元の2次元マトリックス、または、距離方向、方位方向、高低方向で構成される3次元マトリックスで構成される。
【0027】
図6は、判定ゲートの例を示す図である。
図6に例示された判定ゲート60は、距離方向に3列と方位方向に3行である3×3の2次元のマトリックスの例である。このマトリックスの中心のセルを中心セル61と呼び、他の周辺のセルをサブセル62と呼ぶ。判定ゲート内の各次元方向のデータ数は、分解能やデータサンプリング数により決定されるが、対象データの両側からの影響を踏まえるため、望ましくは3列以上または3行以上とする。
【0028】
判定ゲート60の形状は、距離方向、方位方向、高低方向からの組合せで1次元(距離方向、方位方向、高低方向の単独)のデータ列、2次元(距離方向、方位方向、高低方向からの2つの組合せ)のマトリックス、3次元(距離方向、方位方向、高低方向)のマトリックスの何れかで構成される。
【0029】
図3の説明に戻る。
測定対象物位置確定処理部37は、測定対象物情報分布記録部38から取出して測定対象物情報配列50に格納した測定対象物情報に、前記判定ゲート60を当てはめ、判定ゲート60を走査させながら測定対象物40が存在しそうな位置を推定する。
【0030】
図7は、測定対象物情報配列50に対する判定ゲート60の走査を説明するための図である。
図7に示したように、判定ゲート60を検出レベルや位置サンプルの情報で構成されている測定対象物情報配列(検出データ群)50に順次当てはめ、判定ゲート60内で測定対象物40が存在しそうな位置を推定する。判定ゲート60の走査は、判定ゲート60の幅に相当するデータサンプリング情報が得られたら時点で実行することにより、リアルタイムにその判定ゲート60の処理結果を出力し、1サンプリング毎に判定ゲート60をスライディングさせながら、測定対象物情報の分布配列を全走査する。
【0031】
判定ゲート60による測定対象物40位置の推定は、判定ゲート60を測定対象物情報の分布配列上で1サンプリング毎に走査させ、その判定ゲート60中の中心セル61が他の全ての周辺セル62と比較して最大の信号レベルをもつセル71やセル72を抽出する。この場合に、判定ゲート60を中心にして測定対象物40が存在しえると推定する。逆に、最大の信号レベルが中心セル61ではない場合は、測定対象物情報分布記録部38から次の測定対象物情報を読込み、判定ゲート60を当てはめていく。
【0032】
なお、リアルタイム性が求められない場合は、所定の範囲を記憶装置に格納して、測定対象物情報分布配列50を広めの判定ゲート60に用いることで、全体の影響を考慮することになり、測定対象物40の位置推定がより向上する。
【0033】
他方、測定対象物40が存在しうる位置では信号レベルが大きいため、判定ゲート60内の中心セル61が全てのサブセル62より大きい信号レベルが得られた場合は、中心セル61およびサブセル62のレベル分布に基づいて、2次関数近似計算や比例配分計算等にて測定対象物40が存在しえる位置(角度もしくは距離)を推定する。
【0034】
図8は、測定対象物40が存在しえる位置を推定する手法として2次関数近似計算を用いる例を説明するための図である。
図8において、測定対象物40が存在しえる位置86(θ4)は、次にようにして求める。
【0035】
まず、3つのサンプリングポイントθ1、θ2、θ3における信号レベル81(Pr1)、82(Pr2)、83(Pr3)を用いた下記式(1)(2)(3)から、係数a、b、cを算出する。
【0036】
a×θ12+b×θ1+c=Pr1 ・・・式(1)
a×θ22+b×θ2+c=Pr2 ・・・式(2)
a×θ32+b×θ3+c=Pr3 ・・・式(3)
そして、算出した係数a、b、cを用いた2次関数84の極値85を求め、そのサンプリングポイント軸方向の値が測定対象物40が存在しえる位置86(θ4)となる。
【0037】
なお、サンプリングポイントは、方位方向、高低方向または距離方向の何れでも同様である。
図9は、測定対象物40が存在しえる位置を推定する手法として比例配分計算を用いる例を説明するための図である。
【0038】
図9において、測定対象物40が存在しえる位置96(θ5)は、下記式(5)を用い
て算出する。
θ5=(Pr1×θ1+Pr2×θ2+Pr3×θ3)/(Pr1+Pr2+Pr3)
・・・式(5)
図3の説明に戻る。
【0039】
測定対象物40が存在しえる位置を推定した後、測定対象物位置確定処理部37は、この推定された位置を測定対象物40の候補位置(測定対象物候補)として測定対象物候補記録部39に格納する。さらに、測定対象物位置確定処理部37は、測定対象物情報分布記録部38から次の測定対象物情報を読込み、判定ゲート60を1サンプル走査させて、同様に処理を繰り返す。
【0040】
予め想定される分解能以上の位置まで測定対象物情報分布配列上を走査したら、測定対象物位置確定処理部37は、測定対象物情報分布記録部38から測定対象物候補を呼出し、単数または複数の測定対象物40の位置が同一の測定対象物40であるのか否かをそれぞれの位置差を比較して、最終的な測定対象物40の位置を確定する。
【0041】
そして、測定対象物40の位置が確定されたら、測定対象物40に関するデータを出力部35へ送り、出力部35が測定対象物の位置の表示などを実行する。
なお、判定ゲート60の次元は、方位方向、高低方向、距離方向があり、最低1次元以上を利用し、次元数が増えれば測定対象物情報が増えるために測定対象物位置の推定精度が上がる。また、次元数が増えると判定するデータ数が増えるため処理時間が増加するが、近年の計算機能力の向上を利用することで解決できる。
【0042】
次に、レーダ装置30において実行される測定対象物40の位置を確定するための測定対象物位置確定処理の流れを説明する。
図10は、本発明を適用したレーダ装置において実行される測定対象物位置確定処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
まず、ステップS1001において、受信信号(信号レベル、高低角、方位角、距離)をデータ入力し、サンプル毎に測定対象物情報分布データとして測定対象物情報分布記録部38へ書き込む。
【0044】
次に、ステップS1002において、判定ゲート60の大きさ以上のデータ数の測定対象物情報分布データが測定対象物情報分布記録部38に書き込まれたか否かを判断する。
判定ゲート60の大きさ以上の書き込みが未だされていないと判断された場合(ステップS1002:No)は、ステップS1001に戻り、他方、判定ゲート60の大きさ以上の書き込みが実行されたと判断された場合(ステップS1002:Yes)は、ステップS1003において、測定対象物情報分布記録部38から判定ゲート60のデータ数の測定対象物情報分布データを読み出す。
【0045】
次に、ステップS1004において、ステップS1003で読み出した判定ゲート60のデータ数の測定対象物情報分布データのうち、中心セル61の信号レベルが他の全てのサブセル62の信号レベルより大きいか否かを判断する。
【0046】
中心セル61の信号レベルが他の全てのサブセル62の信号レベルより大きくないと判断された場合、すなわち、中心セル61の信号レベルが何れかのサブセル62の信号レベルより小さい場合(ステップS1004:No)は、ステップS1005において、判定ゲート60を1サンプリング分だけ走査してステップS1001に戻る。他方、中心セル61の信号レベルが他の全てのサブセル62の信号レベルより大きいと判断された場合(ステップS1004:Yes)、ステップS1006において、2次関数近似計算や比例
配分計算等を用いて測定対象物40の位置を推定する。
【0047】
次に、ステップS1007において、分解能以上の位置まで走査が完了したか否かを判断し、完了していないと判断された場合(ステップS1007:No)は、ステップS1005に進み、他方、完了したと判断された場合(ステップS1007:Yes)は、ステップS1008において、測定対象物40の位置を確定し、ステップS1009において、その確定した測定対象物40の位置に関する情報を、出力部35を用いて出力、例えばディスプレイ画面に表示する。
【0048】
以上説明したように、本発明を適用したレーダ装置30は、ビームサンプリングによる測定対象物40の位置の曖昧さがあることによる測定対象物検出能力の劣化を改善することができ、レーダ装置30全体としての性能向上を実現することができるようになる。
【0049】
なお、上述の実施の形態の説明では、測定対象物40の位置を精度よく確定することを述べたが、判定ゲート60内に入るクラッタのような広範囲に広がる不要測定対象物パターンを予め推定しておき、実際に得られた判定ゲート60内のパターンと推定パターンとを比較することにより、本発明はクラッタ除去機能としても作用することが可能である。従って、不要な測定対象物を除去し、真の測定対象物40のみを検出することができる。また、逆にクラッタパターンからクラッタのみを検出して、クラッタの元となる地形パターンを検出することも可能である。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明してきたが、本発明が適用されるレーダ装置は、その機能が実行されるのであれば、上述の実施の形態に限定されることなく、単体の装置であっても、複数の装置からなるシステムあるいは統合装置であっても、LAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであってもよいことは言うまでもない。
【0051】
また、図11に示したように、バス1108に接続されたCPU1101、ROMやRAMのメモリ1102、入力装置1103、出力装置1104、外部記録装置1105、媒体駆動装置1106、可搬記録媒体1109、ネットワーク接続装置1107で構成されるシステムでも実現できる。すなわち、前述してきた実施の形態のシステムを実現するソフトェアのプログラムコードを記録したROMやRAMのメモリ1102、外部記録装置1105、可搬記録媒体1109を、レーダ装置に供給し、そのレーダ装置のコンピュータがプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0052】
この場合、可搬記録媒体1109等から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した可搬記録媒体1109等は本発明を構成することになる。
【0053】
プログラムコードを供給するための可搬記録媒体1109としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROMカード、電子メールやパソコン通信等のネットワーク接続装置1107(言い換えれば、通信回線)を介して記録した種々の記録媒体などを用いることができる。
【0054】
また、図12に示すように、コンピュータがメモリ1102上に読み出したプログラムコードを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【0055】
さらに、可搬型記録媒体1109から読み出されたプログラムコードやプログラム(データ)提供者から提供されたプログラム(データ)が、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリ1102に書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU1101などが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0056】
すなわち、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】単一の目標対象物の検出パターンの例を示す図である。
【図2】互いに隣接した2つの目標対象物の検出パターンの例を示す図である。
【図3】本発明を適用したレーダ装置の構成を示す図である。
【図4】電子走査を使用した場合の反射波のビームサンプリングを示す図である。
【図5】測定対象物情報の配列の例を示す図である。
【図6】判定ゲートの例を示す図である。
【図7】測定対象物情報配列50に対する判定ゲート60の走査を説明するための図である。
【図8】測定対象物40が存在しえる位置を推定する手法として2次関数近似計算を用いる例を説明するための図である。
【図9】測定対象物40が存在しえる位置を推定する手法として比例配分計算を用いる例を説明するための図である。
【図10】本発明を適用したレーダ装置において実行される測定対象物位置確定処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明におけるレーダ処理装置の構成図である。
【図12】本発明における位置特定プログラムのコンピュータへのローディングを説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
10 検出パターン
20、21、22 検出パターン
30 レーダ装置
31 送信部
32 空中線部
33 受信部
34 レーダ処理部
35 出力部
36 制御部
37 測定対象物位置確定処理部
38 測定対象物情報分布記録部
39 測定対象物候補記録部
40 測定対象物
50 測定対象物情報分布配列
60 判定ゲート
61 中心セル
62 サブセル
71、72 セル
81、82、83 信号レベル
84 2次関数
85 極値
86 位置(θ4)
96 位置(θ5)
1101 CPU
1102 メモリ
1103 入力装置
1104 出力装置
1105 外部記録装置
1106 媒体駆動装置
1107 ネットワーク接続装置
1108 バス
1109 可搬記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送信するとともに前記送信波の測定対象物での反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段を制御することにより前記送信波および前記反射波の送受信方向を所定の走査範囲で繰り返し走査させる走査手段と、前記送受信手段により送信された送信波および受信された反射波に基づいて前記測定対象物の位置情報を測定する測定手段とを備えることにより前記測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置において、
前記測定手段は、
前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向のうち2方向の2次元マトリックスを用いて2次元マトリックス状の受信データを取得する2次元マトリックスデータ取得手段と、
前記2次元マトリックスデータ取得手段によって取得した2次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段と、
を備え、
更に前記2次元マトリックスデータ取得手段は、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とするレーダ処理装置。
【請求項2】
送信波を送信するとともに前記送信波の測定対象物での反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段を制御することにより前記送信波および前記反射波の送受信方向を所定の走査範囲で繰り返し走査させる走査手段と、前記送受信手段により送信された送信波および受信された反射波に基づいて前記測定対象物の位置情報を測定する測定手段とを備えることにより前記測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置において、
前記測定手段は、
前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向の3次元マトリックスを用いて3次元マトリックス状の受信データを取得する3次元マトリックスデータ取得手段と、
前記3次元マトリックスデータ取得手段によって取得した3次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段と、
を備え、
更に前記3次元マトリックスデータ取得手段は、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とするレーダ処理装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記2次元マトリックスデータ取得手段によって取得した2次元マトリックス状の受信データまたは前記3次元マトリックスデータ取得手段によって取得した3次元マトリックス状の受信データのうち、中心の受信データが周辺の受信データに比較して最大値であると判断された場合、前記中心の受信データおよび前記周辺の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定することを特徴とする請求項1または2に記載のレーダ処理装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記中心の受信データおよび前記周辺の受信データを用いて比例配分計算または2次関数近似計算によって前記測定対象物の位置を推定することを特徴とする請求項3に記載のレーダ処理装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記2次元マトリックス状の受信データまたは前記3次元状のマトリックスデータを、前記2次元マトリックスまたは前記3次元マトリックスを分解能以上の位置まで順次読み出し、読み出した各マトリックスデータに基づいて、前記測定対象物の
各位置を一時的な測定対象物候補として測定対象物候補データベースに格納し、前記走査の後、前記測定対象物候補データベースから測定対象物候補を読み出し、単数または複数の測定対象物位置が同一測定対象物でないかをそれぞれの位置差を比較して、最終的な測定対象物の位置を推定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のレーダ処理装置。
【請求項6】
送信波を送信するとともに前記送信波の測定対象物での反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段を制御することにより前記送信波および前記反射波の送受信方向を所定の走査範囲で繰り返し走査させる走査手段と、前記送受信手段により送信された送信波および受信された反射波に基づいて前記測定対象物の位置情報を測定する測定手段とを備えることにより前記測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置のコンピュータを、
前記測定手段が備える、
前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向のうち2方向の2次元マトリックスを用いて2次元マトリックス状の受信データを取得する2次元マトリックスデータ取得手段、
前記2次元マトリックスデータ取得手段によって取得した2次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段、
前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段、
として機能させるための位置特定プログラムであって、
更に前記2次元マトリックスデータ取得手段は、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とする位置特定プログラム。
【請求項7】
送信波を送信するとともに前記送信波の測定対象物での反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段を制御することにより前記送信波および前記反射波の送受信方向を所定の走査範囲で繰り返し走査させる走査手段と、前記送受信手段により送信された送信波および受信された反射波に基づいて前記測定対象物の位置情報を測定する測定手段とを備えることにより前記測定対象物を捕捉するレーダ装置を制御するためのレーダ処理装置のコンピュータを、
前記測定手段が備える、
前記送受信手段が受信した反射波から、距離方向、方位方向および高低方向の3次元マトリックスを用いて3次元マトリックス状の受信データを取得する3次元マトリックスデータ取得手段、
前記3次元マトリックスデータ取得手段によって取得した3次元マトリックス状の受信データに基づいて、前記測定対象物の位置を推定する推定手段、
前記推定手段によって推定した前記測定対象物の位置情報を出力する出力手段、
として機能させるための位置特定プログラムであって、
更に前記3次元マトリックスデータ取得手段は、前記送受信手段が受信した反射波から順次受信データを取得することを特徴とする位置特定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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